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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1335701 |
審判番号 | 不服2016-8845 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-14 |
確定日 | 2017-12-18 |
事件の表示 | 特願2012- 93218「サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ヘッド付サスペンションと外部接続基板との組合体およびハードディスクドライブ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月28日出願公開、特開2013-222480〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成24年4月16日の出願であって、平成27年9月14日付けで拒絶理由が通知され、同年11月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月10日付けで拒絶査定されたところ、同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において平成29年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年7月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「 外部接続基板に装着されるテール領域を有するサスペンション用基板において、 絶縁層と、 前記絶縁層の一方の面に設けられた金属支持層と、 前記絶縁層の他方の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、前記テール領域に設けられると共に前記配線の各々に接続され、ボンディングツールを用いて前記外部接続基板の外部端子に超音波接合可能な複数の接続端子と、を有する前記配線層と、を備え、 前記絶縁層および前記金属支持層に、前記接続端子を露出させる開口部が設けられ、 前記接続端子は、前記ボンディングツールに押圧されるツール面と、前記外部接続基板の前記外部端子に超音波接合される接合面と、を有し、 前記接続端子の前記ツール面の表面粗さは、前記接合面の表面粗さより小さく、 前記接続端子の前記ツール面は、前記絶縁層の側に配置され、 前記接続端子の前記接合面は、前記絶縁層の側とは反対側に配置され、 前記開口部は、前記ボンディングツールが挿入可能に構成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」 2.引用発明と公知技術 (1)引用発明 当審から通知した拒絶理由に引用された特開2006-31768号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明は、磁気ヘッドに電気的に連繋された配線回路が設けられ、その配線回路の一部がフライングリードに形成されたロングテールサスペンション基板と、前記フライングリードが接合される接合端子が設けられたフレキシブルプリント基板とを備えた、ハードディスクドライブのキャリッジアセンブリ、およびその製造方法に関する。」(下線は当審で付した。以下同様。) イ.「【0005】 ロングテールサスペンション基板12は、ステンレス製の薄板状に形成され、キャリッジアーム10aの延出方向に沿って形成された溝部10b内に配置されて、キャリッジ本体10に取り付けられる。ロングテールサスペンション基板12の先端部12aは、キャリッジアーム10aの先端からさらに突出して、その磁気ディスクの対向面には、磁気ヘッド14が搭載される。 ・・・・・・ 【0007】 図4(a)に、ロングテールサスペンション基板12の平面図を示す。 ロングテールサスペンション基板12には、磁気ヘッド14に電気的に連繋された、銅等の導体材料で構成された配線回路15が片面に設けられている。配線回路15は、磁気ヘッド14が搭載された先端部12aから、キャリッジ本体10側の他端部まで、ロングテールサスペンション基板12の長手方向に沿って設けられている。 配線回路15は、一般的には、磁気ヘッド14の磁気ディスクへの書き込み用の信号線が2本と、読み出し用の信号線が2本の、計4本設けられる。 【0008】 配線回路15の表裏面(前記薄板状のステンレス板との間、および外表面)は、ポリイミド膜等の絶縁膜によって覆われて絶縁されている。 ただし、ロングテールサスペンション基板12の前記他端部側において、配線回路15は、前記薄板状のステンレス板、および前記絶縁膜から完全に露出されたフライングリード15a(図4(b)の黒塗り部分)に形成される(特許文献1 第3図等参照)。 フライングリード15aは、プリアンプ用フレキシブルプリント基板16の接合端子16aと接合するための、ロングテールサスペンション基板12側の接合端子である。 【0009】 図5に、接合端子16aとフライングリード15aとの接合部分の拡大図を示す。 ロングテールサスペンション基板12は、各フライングリード15aの並び方向がフレキシブルプリント基板16の基板面と平行となるように、前記他端部側の箇所12bが、図4(b)のB-B線において配線回路15の形成面が内側となるように直角に折り曲げられて、フライングリード15aが接合端子16aに接合される。 【0010】 図6は、キャリッジアセンブリCの従来の製造方法を示す、ロングテールサスペンション基板12のフライングリード15a側の端部における、フライングリード15aの長手方向の断面説明図である。 【0011】 図6(a)に示すように、ロングテールサスペンション基板12の前記他端部において、ステンレス板28と絶縁膜26とを除去することによって、配線回路15の一部が露出して、フライングリード15aが形成される。 続いて、図6(b)に示すように、銅製のフライングリード15aのコアの表裏面に、金めっき層20を設ける。なお、特許文献1の第3図および段落0025-0026に示されるように、フライングリード15aの前記コアと金めっき層20との間に、ニッケルめっき層を形成してもよい。 図6(c)に示すように、フレキシブルプリント基板16側の接合端子16aも、銅コアの上層に金めっき層21が形成されて構成される。そして、超音波ツールTをフライングリード15aに当接させて、超音波ツールTによりフライングリード15aを接合端子16aに押し付ける。この状態で、超音波ツールTにより、フライングリード15aに超音波振動を印加することで、フライングリード15aと接合端子16aとを超音波接合する。」 ウ.図4ないし図6(d)として以下の図面が記載されている。 上記ア.?ウ.の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、 a.上記ア.及びイ.によれば、引用例1には「ロングテールサスペンション基板12」について記載されている。そして、上記イ.の【0008】、【0009】段落、及び図5によれば「ロングテールサスペンション基板12」の他端部側において、「フライングリード15a」は、「プリアンプ用フレキシブルプリント基板16」の「接合端子16a」と接合しているから、「ロングテールサスペンション基板12」は他端部側において「プリアンプ用フレキシブルプリント基板16」に接合されるということができる。 b.上記イ.の【0005】、【0011】段落、及び図6によれば、引用例1では「絶縁膜26」の一方の面に「ステンレス板28」が形成されているといえる。 c.上記イ.の【0008】段落の「配線回路15の表裏面(前記薄板状のステンレス板との間、および外表面)は、ポリイミド膜等の絶縁膜によって覆われて絶縁されている。」という記載と、図6を参照すれば、「配線回路15」は、「絶縁膜26」(ステンレス板28と配線回路15に挟まれた絶縁膜26)の「ステンレス板28」とは反対側の面に設けられているといえる。 そして、【0007】段落によれば、「配線回路15」は一般的には計4本設けられており、また、【0008】段落によれば、「配線回路15」は「ロングテールサスペンション基板12」の他端部側において「フライングリード15a」に形成されるものである。そうしてみると、「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」と、フライングリード15aは、ともに計4本設けられていることは明らかであり、また、【0011】段落によれば、当該「フライングリード15a」は「超音波ツールT」を使用して「フレキシブルプリント基板16」側の「接合端子16a」に超音波接合されている。 したがって、「配線回路15」は、「絶縁膜26」の「ステンレス板28」とは反対側の面に設けられており、また「配線回路15」は、 (i)計4本設けられた「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」と、 (ii)「ロングテールサスペンション基板12」の他端部側において、「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」に連続して形成され、「超音波ツールT」を使用して「フレキシブルプリント基板16」側の「接合端子16a」に超音波接合される、計4本設けられる「フライングリード15a」と、 から構成されているといえる。 d.上記イ.の【0011】段落の記載、及び図6によれば、「ロングテールサスペンション基板12」の他端部側において、「ステンレス板28」と「絶縁膜26」とを除去し「フライングリード15a」を露出させているといえる。 e.上記イ.の【0011】段落の記載、及び図6(c)によれば、「フライングリード15a」には「超音波ツールT」が当接する面と、「接合端子16a」に超音波接合される面を有していることは明らかである。 そして、「超音波ツールT」が当接するフライングリード15aの面は、「絶縁膜26」側の面であり、「接合端子16a」に超音波接合されるフライングリード15aの面は、「絶縁膜26」とは反対側の面である。 f.上記イ.の【0011】段落の記載、及び図6(c)によれば、「ロングテールサスペンション基板12」の、「ステンレス板28」と「絶縁膜26」とを除去し「フライングリード15a」を露出させた部分に、「超音波ツールT」が挿入されることは明らかである。 以上を総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 他端部側においてプリアンプ用フレキシブルプリント基板16に接合されるロングテールサスペンション基板12であって、 絶縁膜26と、 前記絶縁膜26の一方の面に形成されたステンレス板28と、 前記絶縁膜26の前記ステンレス板28とは反対側の面に設けられる配線回路15であって、計4本の配線回路15からフライングリード15aを除いた構成と、前記ロングテールサスペンション基板12の他端部側において配線回路15からフライングリード15aを除いた構成に連続して形成され、超音波ツールTを使用して前記フレキシブルプリント基板16側の接合端子16aに超音波接合される、計4本設けられるフライングリード15aから構成される、前記配線回路15と、を有し 前記ステンレス板28と前記絶縁膜26とを除去し前記フライングリード15aを露出させた構成を有し、 前記フライングリード15aは、前記超音波ツールTが当接する面と、前記接合端子16aに超音波接合される面を有し、 前記超音波ツールTが当接する面は、前記絶縁膜26側の面であり、 前記接合端子16aに超音波接合される面は、前記絶縁膜26とは反対側の面であり、 前記ロングテールサスペンション基板12の、前記ステンレス板28と前記絶縁膜26とを除去しフライングリード15aを露出させた部分に、前記超音波ツールTが挿入される、ロングテールサスペンション基板12。」 (2)公知技術 当審から通知した拒絶理由に引用された特開2010-62188号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、例えばBGA(Ball Grid Array)型パッケージのような超小型・薄型化対応のCSP(chip size package)などに好適な半導体装置用TAB(Tape Automated Bonding)テープおよびその製造方法に関する。 ・・・・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、ボンディング用窓203にて露出している部分の導体箔の表面、すなわちその導体箔をパターン加工してなるインナーリード204の、ボンディングツール400と接触する方の表面や、はんだボール搭載用ビア穴206にて露出している部分の導体箔の表面は、上記のような粗面化処理によって荒らされた状態で露出している。 ・・・・・・ このため、特に上記のテープBGA型のCSP構造に用いられるTABテープのような極めて微細なインナーリード204やはんだボール搭載用ビア穴206等を有する半導体装置用TABテープにおいては、はんだボールをはんだボール搭載用ビア穴206にて露出している部分の導体箔の表面に確実に接合することが困難になり、甚だしくは、はんだボールが脱落する場合さえあるという問題や、ボンディングツール400の先端部の摩耗による劣化が激しくなり、これに起因してボンディングツール400の寿命が短命化するという問題があった。 【0009】 本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、はんだボールをはんだボール搭載用ビア穴にて露出している部分の導体箔の表面に確実に接合することを可能とし、またボンディングツールの劣化や短命化を回避することを可能とした半導体装置用TABテープおよびその製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の半導体装置用TABテープは、はんだボール搭載用ビア穴とボンディング用窓穴とを穿設してなる絶縁性基板と、前記絶縁性基板の片面に張り合わされた導体箔をパターン加工して形成された少なくともインナーリードと配線パターンとを含んだ導体パターンとを有する半導体装置用TABテープであって、前記導体パターンにおける、前記はんだボール搭載用ビア穴にて露出している部分および前記ボンディング用窓穴にて露出している部分の表面粗さが、前記絶縁性基板の片面と張り合わされている部分の表面粗さ未満であることを特徴としている。 本発明の半導体装置用TABテープの製造方法は、絶縁性基板に、はんだボール搭載用ビア穴とボンディング用窓穴とを穿設する工程と、前記絶縁性基板の片面に導体箔を張り合わせる工程と、前記導体箔をパターン加工して、少なくともインナーリードと配線パターンとを含んだ導体パターンを形成する工程とを有する半導体装置用TABテープの製造方法であって、前記導体箔における前記はんだボール搭載用ビア穴にて露出している部分および前記ボンディング用窓穴にて露出している部分の表面に対して選択的に化学研磨処理を施して、当該表面における表面粗さを、前記導体箔における前記絶縁性基板の片面に張り合わされている部分の表面粗さ未満にする工程を含むことを特徴としている。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、導体パターンにおけるはんだボール搭載用ビア穴にて露出している部分およびボンディング用窓穴にて露出している部分の表面粗さを、絶縁性基板の片面と張り合わされている部分の表面粗さ未満となるようにしたので、はんだボールをはんだボール搭載用ビア穴にて露出している部分の導体パターンの表面に確実に接合することが可能となり、またボンディングツールの早期劣化や短命化を回避することが可能となる。・・・」 上記摘記事項によれば、引用例2には、リードのボンディングに際し、ボンディングツール400の先端部の摩耗によりボンディングツール400の寿命が短命化するという課題を解決するため、導体箔におけるボンディング用窓穴にて露出している部分の表面に対して選択的に化学研磨処理を施すことにより、ボンディング用窓穴にて露出している部分の表面粗さを、絶縁性基板の片面と張り合わされている部分の表面粗さ未満としたものであり、ここで、導体箔におけるボンディング用窓穴にて露出している部分とはボンディングツール400の先端部と当接する部分であり、また、絶縁性基板の片面と張り合わされている部分の表面粗さはボンディングツール400の先端部と当接する部分の化学研磨処理をされる前の表面粗さに等しい。そうしてみると、引用例2には次の事項(以下、「公知技術」という。)について記載されているものと認められる。 (公知技術) 「リードのボンディングに際し、ボンディングツールの先端部の摩耗による短命化を回避するため、ボンディングツールの先端部と当接する部分の表面粗さを小さくする。」 3.対比・判断 本願発明を引用発明と対比すると、 引用発明の「プリアンプ用フレキシブルプリント基板16」は「ロングテールサスペンション基板12」の外部に設けられる構成であるから、本願発明の「外部接続基板」に相当する。 引用発明の「他端部」は、ヘッドが搭載される先端部に対する他端部であるから、本願発明の「テール領域」に相当する。そして、本願発明の「装着」と引用発明の「接合」とは表記が異なるだけであって実質的には差異がない。 引用発明の「絶縁膜26」、「ステンレス板28」、「超音波ツールT」は、本願発明の「絶縁層」、「金属支持層」、「ボンディングツール」にそれぞれ相当する。 引用発明の「配線回路15」は、絶縁膜26のステンレス板28とは反対側の面に設けられる構成であるから、本願発明の「配線層」に相当する。そして、引用発明の「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」は本願発明の「配線」に相当し、引用発明の「計4本の配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」は本願発明の「複数の配線」に相当する。 引用発明の「フライングリード15a」は「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」に連続して形成されるから、「フライングリード15a」は「配線回路15からフライングリード15aを除いた構成」に接続されているということができる。そして、「フライングリード15a」は超音波ツールTを使用してフレキシブルプリント基板16側の接合端子16aに超音波接合されるから、本願発明の「接続端子」に相当する。ここで、引用発明の「接合端子16a」は本願発明の「外部端子」に相当する。また、引用発明の「計4本設けられるフライングリード15a」が、本願発明の「複数の接続端子」に相当する。 引用発明の「前記ステンレス板28と前記絶縁膜26とを除去し前記フライングリード15aを露出させた構成」は、本願発明の「前記絶縁層および前記金属支持層に、前記接続端子を露出させる開口部」に相当する。 引用発明の「フライングリード15a」において、「前記超音波ツールTが当接する面」、及び「前記接合端子16aに超音波接合される面」が、本願発明の「前記ボンディングツールに押圧されるツール面」、及び「前記外部接続基板の前記外部端子に超音波接合される接合面」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「超音波ツールTが当接する面」、及び「前記接合端子16aに超音波接合される面」は、それぞれ「絶縁膜26側の面」及び「絶縁膜26とは反対側の面」として構成されるから、本願発明の「前記接続端子の前記ツール面は、前記絶縁層の側に配置され、前記接続端子の前記接合面は、前記絶縁層の側とは反対側に配置され」ることに相当する。 引用発明において「前記ロングテールサスペンション基板12の、前記ステンレス板28と前記絶縁膜26とを除去しフライングリード15aを露出させた部分に、前記超音波ツールTが挿入される」ことは、本願発明の「前記開口部は、前記ボンディングツールが挿入可能に構成されていること」に相当する。 また、引用発明の「ロングテールサスペンション基板12」は、「フライングリード15a」の「超音波ツールTが当接する面」と、「接合端子16aに超音波接合される面」の表面粗さについて特定されていない点で相違するものの、「サスペンション用基板」に含まれるから、本願発明の「サスペンション用基板」に対応する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「外部接続基板に装着されるテール領域を有するサスペンション用基板において、 絶縁層と、 前記絶縁層の一方の面に設けられた金属支持層と、 前記絶縁層の他方の面に設けられた配線層であって、複数の配線と、前記テール領域に設けられると共に前記配線の各々に接続され、ボンディングツールを用いて前記外部接続基板の外部端子に超音波接合可能な複数の接続端子と、を有する前記配線層と、を備え、 前記絶縁層および前記金属支持層に、前記接続端子を露出させる開口部が設けられ、 前記接続端子は、前記ボンディングツールに押圧されるツール面と、前記外部接続基板の前記外部端子に超音波接合される接合面と、を有し、 前記接続端子の前記ツール面は、前記絶縁層の側に配置され、 前記接続端子の前記接合面は、前記絶縁層の側とは反対側に配置され、 前記開口部は、前記ボンディングツールが挿入可能に構成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」 (相違点) 本願発明では、「前記接続端子の前記ツール面の表面粗さは、前記接合面の表面粗さより小さく」構成されているのに対して、引用発明ではこれらの面の表面粗さの特定がなされていない点。 上記相違点について検討する。 上記「2.(2)」のように「リードのボンディングに際し、ボンディングツールの先端部の摩耗による短命化を回避するため、ボンディングツールの先端部と当接する部分の表面粗さを小さくする。」技術は公知技術である。また、引用発明と上記公知技術とはリードのボンディングに係る発明である点で共通し、ツールの寿命を延ばすことは一般的な課題にすぎない。 そうしてみると、上記公知技術に接した当業者であれば、引用発明においても超音波ツールTの寿命を延ばすために公知技術を適用しようとすることは、格別困難なことではない。そして、公知技術を引用発明に適用して超音波ツールTが当接する面(本願発明の「ツール面」に相当。)の表面粗さを小さくする場合、接合端子16aに超音波接合される面(本願発明の「接合面」に相当。)よりも表面粗さを大きくしなければならない必然性はないから、超音波ツールTが当接する面の表面粗さを、接合端子16aに超音波接合される面の表面粗さよりも小さく構成することは、当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎない。 そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明及び公知技術から容易に予想できる範囲内のものである。 なお、審判請求人は平成29年7月6日付け意見書において、引用例2(意見書における「引用文献3」)の開示事項からは、導体箔11の表面7(本願発明のツール面側)の表面粗さが、光沢面(本願発明の接合面側)の表面粗さよりも大きくなっていると理解でき、本願発明における表面粗さの大小関係とは逆転しているから、これに基づいて本願発明を容易に成しえない旨の主張をしている。 しかしながら、引用例2において、光沢面の表面粗さは電極パッド101との接合に適するように決められるものであって、導体箔11の表面7の表面粗さとは直接的な技術関係を有しないから、上記判断に影響を及ぼすものではない。 したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-26 |
結審通知日 | 2017-10-27 |
審決日 | 2017-11-07 |
出願番号 | 特願2012-93218(P2012-93218) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 山本 章裕 |
発明の名称 | サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ヘッド付サスペンションと外部接続基板との組合体およびハードディスクドライブ |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 山下 和也 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 堀田 幸裕 |