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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1335986
審判番号 不服2017-89  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-05 
確定日 2018-01-23 
事件の表示 特願2015-535358「蓄電池システム,蓄電池システムの更新方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日国際公開,WO2015/033660,請求項の数(18)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年7月7日(優先権主張 平成25年9月9日)を国際出願日とする出願であって,平成28年8月19日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月24日付けで手続補正がされ,同年11月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年11月7日付けで当審より拒絶理由通知がされ,同年11月28日付けで手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願請求項1-18に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は,平成29年11月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電力を充放電する蓄電池を含み,電力系統及び電子機器と接続される蓄電池システムであって,
前記蓄電池システムを制御する制御プログラムを更新する更新プログラムを含む更新情報を取得する更新情報取得手段と,
前記蓄電池の状態が,充電中,放電中及び待機中のいずれであるかを判定するための充放電情報を取得する充放電情報取得手段と,
前記充放電情報を利用して,前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する更新タイミング決定手段と,
を有し,
前記更新情報取得手段は,
前記蓄電池システムが有する複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム,及び,更新処理を完了すべき期限を示す期限情報を含む前記更新情報を取得し,
前記更新タイミング決定手段は,
前記期限までの残り時間が所定値以上である場合,充電状態及び待機状態の間に前記複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定し,
前記期限までの残り時間が前記所定値より少ない場合,前記複数の更新プログラムを異なるタイミング又は同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する蓄電池システム。」

なお,本願発明2-18の概要は以下のとおりである。
本願発明2-本願発明16は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明17,18は,それぞれ本願発明1に対応する方法,プログラムの発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。


第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2013-50862号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

A「【0001】
本発明は,プログラム書き換えシステム及びプログラム書き換え方法に関し,特にネットワークに接続された複数の制御装置におけるプログラムの書き換え方法に関する。」

B「【0017】
実施の形態1.
図1は,本実施の形態1に係るプログラム書き換え方法が実施される車両制御システムの構成を示し,本実施の形態1に係るプログラム書き換えシステムは,図1に示す車両制御システムに含まれるものである。…(中略)…
【0018】
本実施の形態1に係る車両制御システムは,第1種ノードであるバッテリ制御装置1と,第2種ノードであるEPS(Electric Power Steering)制御装置2a及びモータ制御装置2bと,第3種ノードであるテスタ3を含み,これらは第1のネットワークである車両のCAN(Controller Area Network)ネットワーク6を介して互いに通信可能に接続されている。
【0019】
バッテリ制御装置1はバッテリ10に接続され,これを制御し,同様にEPS制御装置2aはEPS20aに,モータ制御装置2bは駆動用モータ20bに接続され,それぞれを制御している。…(中略)…
【0020】
バッテリ制御装置1の構成と機能について簡単に説明する。マイコン11は,バッテリ10の制御に関わる制御量や各種処理値を演算する。CANネットワーク用データ送受信手段であるデータ送受信手段12は,CANネットワーク6を介して,接続された他の制御装置(EPS制御装置2a,モータ制御装置2b,テスタ3を含む)とデータを送受信する。また,記録装置13は,書き換え対象であるバッテリ制御プログラムを保存する第1の記録領域を有している。バッテリ制御プログラムは,バッテリ制御装置1の動作(制御内容)を決定し,演算を行うものである。
【0021】
記録装置13の領域構成について,図2(a)を用いて説明する。記録装置13は,バッテリ制御プログラムを部分的に書き換えるためのプログラム書き換えプログラムを保存するプログラム書き換えプログラム記録領域131と,バッテリ制御プログラムを保存する第1の記録領域であるバッテリ制御プログラム記録領域132と,バッテリ10の制御に関わるデータ等を保存するバッテリ制御プログラム用記録領域(データ用)133を備えている。
【0022】
さらに,バッテリ制御装置1のプログラム書き換え手段14は,記録装置13のバッテリ制御プログラム記録領域132に保存されたバッテリ制御プログラムを部分的に書き換える。その際には,記録装置13のプログラム書き換えプログラム記録領域131に記録されたプログラム書き換えプログラムを用いる。
【0023】
また,第1の状態検出手段である状態検出手段15は,(第1種ノード)自身がバッテリ制御プログラムを書き換え可能な状態であるか否か,あるいはバッテリ制御プログラムが全て書き換えられているか否か等の状態を検出する。状態検出手段15により書き換え可能であると検出された場合は,CANネットワーク6を介してEPS制御装置2a及びモータ制御装置2bに通知し,通知を受けたEPS制御装置2a及びモータ制御装置2bは,自身が保存する分割プログラムを,CANネットワーク6を介してバッテリ制御装置1に送信する。
【0024】
バッテリ制御装置1は,EPS制御装置2aまたはモータ制御装置2bから分割プログラムを受信する度に,バッテリ制御プログラム記録領域132に保存されたバッテリ制御プログラムの該分割プログラムに該当する部分を,プログラム書き換え手段14により書き換える。」

C「【0031】
次に,テスタ3の構成と機能について簡単に説明する。マイコン31は,テスタ3の動作に関わる各種処理を実施する。データ送受信手段32は,CANネットワーク6を介して,接続された他の制御装置(バッテリ制御装置1,EPS制御装置2a,モータ制御装置2bを含む)とデータを送受信する。また,記録装置33は,図2(d)に示すように,バッテリ制御プログラムの書き換え用プログラムを保存する第3の記録領域であるバッテリ制御プログラム記録領域331を備えている。
【0032】
さらに,第1のプログラム分割手段であるプログラム分割手段34は,記録装置33のバッテリ制御プログラム記録領域331に保存された書き換え用プログラムを分割し,分割プログラムを作成する。プログラム分割手段34により作成された分割プログラムは,それぞれCANネットワーク6を介してEPS制御装置2a及びモータ制御装置2bに送信される。
【0033】
次に,本実施の形態1に係るプログラム書き換えシステムの各ノードにおける処理の流れについて,図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。図3は,第1種ノードであるバッテリ制御装置1におけるプログラム書き換えに関する処理の流れを示している。なお,バッテリ制御装置1では,バッテリ10の制御に関わる通常の処理と,バッテリ制御プログラムの書き換えに関する処理が実施される。プログラム書き換えに関する処理は,テスタ3から書き換え実施の通知(書き換え指示)があった場合に実施される。図3は,テスタ3からの書き換え実施の通知を受信した後の処理フローを示している。
【0034】
まず,ステップ301(S301)において,状態検出手段15は,バッテリ制御装置1がバッテリ10の制御に関わる通常の処理を実施しているか否かを判断する。通常の処理が実施されている場合(YES)は,ステップ302(S302)へ進み,実施されていない場合(NO)は,ステップ309(S309)へ進み,通常の書き換え処理を実施する。なお,S309の通常の書き換え処理とは,テスタ3から,バッテリ制御装置1のバッテリ制御プログラムを書き換える従来の書き換え方法によるものであり,本発明の特徴である書き換え用プログラムを分割して行うものではないため,説明を省略する。
【0035】
バッテリ制御装置1がバッテリ10の制御に関わる通常の処理を実施している場合は,その間,バッテリ制御プログラムの書き換え不可であるため,S302において,関連ノードへ分割書き換えを実施することを通知し,ステップ303(S303)へ進む。S303において,状態検出手段15は再度,通常の処理が実施されているかどうかを判断し,通常の処理が実施されていなければ,書き換え可能(YES)であるためステップ304(S304)へ進み,通常の処理が実施されている場合には,終了まで待機する。
【0036】
続いて,S304において,状態検出手段15は,記録装置13のバッテリ制御プログラム記録領域132に保存されたバッテリ制御プログラムの全ての領域(部分)が書き換えられているか否かを判断する。全て書き換えられている場合は(YES),本処理を終了し,書き換えられていなければ(NO),ステップ305(S305)へ進む。
【0037】
S305において,状態検出手段15は,バッテリ制御プログラム記録領域132に保存されたバッテリ制御プログラムが書き換え中であるか否かを判断する。いずれの部分も書き換え中でなければ(NO),ステップ306(S306)へ進み,書き換え中であれば(YES),書き換えが終了するまで待機する。
【0038】
S306において,状態検出手段15は,書き換えが終了していないバッテリ制御プログラムの部分に該当する分割プログラムを保存している第2種ノードに対し,データ送受信手段12により送信指示をし,ステップ307(S307)へ進む。S307では,データ送受信手段12により分割プログラムを受信し,ステップ308(S308)へ進む。S308において,プログラム書き換え手段14は,プログラム書き換えプログラムを用い,受信した分割プログラムに該当するバッテリ制御プログラムの部分を書き換える。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 バッテリに接続されたバッテリ制御装置であって,
前記バッテリ制御装置の動作を決定し,演算を行うバッテリ制御プログラムを書き換えるプログラム書き換えプログラムを記憶する記録装置と,
前記バッテリを制御するバッテリ制御プログラムの書き換え用プログラムを分割してなる分割プログラムを取得するデータ送受信手段と,
前記バッテリの状態に関して,バッテリ制御装置がバッテリの制御に関わる通常の処理を実施しているか否かを判断し,通常の処理を実施していると判断した場合には,終了するまで待機するよう決定し,通常の処理を実施しておらず,かつバッテリ制御プログラムが全て書き換えられていないと判断した場合には,前記分割プログラムを受信し,当該分割プログラムに該当するバッテリ制御プログラムの部分の書き換えの実施を決定する状態検出手段と,
を有する車両制御システムのバッテリ制御装置。」

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-243929号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

D「【0052】
端末装置2を,未使用時においては,電源の供給を完全に停止するのではなく,スリープモード(ハードディスクおよびディスプレイなどの動作を一時的に停止し,マウスまたはキーボードなどが操作されると,動作を再開するモード。「省エネモード」と呼ばれることもある。)になるように構成する。また,ユーザが端末装置2を使用している時間帯(通常モードである状態の時間帯)の履歴を記録しておく。そして,過去の複数の履歴に基づいて,ユーザが端末装置2を使用することがほとんどない時間帯を判別し,その時間帯になったらアップデートの処理を開始するようにする。処理を開始しようとしたときにユーザが使用している場合は,次回に延期してもよい。」

したがって,上記引用文献2には,端末装置の使用時間帯について履歴を記録し,前記履歴に基づいて,端末装置のアップデートの処理の開始を決定する,という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2009-211269号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

E「【0034】
本フローが実行されると,更新制御部117は,まずS101において更新時刻管理部118に蓄積された更新期限と時刻管理部113からの現在時刻情報を比較し,更新期限の所定時間前となったかどうかを判断する。当該時刻になっていればS102に進む。S102において,放送受信装置の電源がオフであればS103に進み,プログラムの更新処理を行う。これにより,次回電源をオンにした時に新しいプログラムが起動する。一方,電源がオンであればS104に進み,プログラム優先度に従って以下の処理を行う。
プログラム優先度が1のとき,S106に進み,強制的に更新処理を行う。S107に進み,新しいプログラムを起動する。
プログラム優先度が2のとき,S105においてユーザに更新処理を通知し,承認を促す。承認が得られればS106において更新処理を行い,S107において新しいプログラムを起動する。
プログラム優先度が3のとき,特に何もしない。
【0035】
このように,更新制御部117は,プログラム優先度が所定の基準よりも高い場合は,必ず更新期限までに自動的かつ強制的に更新処理を実行する(S103,S106)。一方,プログラム優先度が所定の基準よりも低い場合は,電源の状態に応じて自動的かつ強制的に更新処理を実行するかどうかを決定する。具体的には,電源オフ状態であれば自動的かつ強制的に更新処理を実行し(S103),電源オン状態であればユーザの承認を受けて更新処理を実行するか(S105),更新処理を実行しない。
【0036】
なお,本フローにおいて,放送受信装置は主電源と電源を有し,主電源はオンであることを前提とする。すなわち本実施例における電源オフとは放送を視聴していないスタンバイ状態を言う。また,前記所定時間とは,更新処理後再起動をした際に更新期限に間に合う時間のことをいう。例えば数十秒?数分に設定されている。さらに,プログラム優先度は,1のとき最も更新の必要性が高く,数字が大きくなるほど必要性が低くなっていく。
…(中略)…
【0040】
また,本フローにおいてプログラム優先度の判断(S104)を電源状態の判断(S102)の前に行っても良い。その場合,プログラム優先度が1なら更新期限の所定時間前に必ず自動的かつ強制的に更新処理を実行する。プログラム優先度が2なら電源状態に応じて,更新処理を実行するかユーザの承認を要求するかを選択し,プログラム優先度が3なら電源状態に応じて,更新処理を実行するか何も処理しないかを選択する。」

したがって,上記引用文献3には,プログラム優先度に応じて,プログラムの更新処理を実行するタイミングを決定するとともに,プログラム優先度が所定の基準より高い場合は,プログラムの更新処理が更新期限に間に合うよう,更新期限の所定時間前となった時点で更新処理を実行する,という技術的事項が記載されていると認められる。


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「バッテリ」は,通常,電池を意味するところ,電池は電力を充電したり,放電したりする機能を有することは広く知られているから,引用発明の「バッテリ」は,本願発明1の「電力を充放電する蓄電池」に相当する。
また,引用発明の「バッテリに接続されたバッテリ制御装置」は,バッテリを含めたシステムといえるから,引用発明の「バッテリ制御装置」は,後記の点で相違するものの,本願発明1の「蓄電池システム」に対応する。

イ 引用発明の「バッテリ制御装置の動作を決定し,演算を行うバッテリ制御プログラム」は,本願発明1の「蓄電池システムを制御する制御プログラム」に相当し,引用発明の「バッテリ制御プログラムを書き換えるプログラム書き換えプログラム」及び「書き換え用プログラムを分割してなる分割プログラム」は,本願発明1の「制御プログラムを更新する更新プログラム」に相当する。
また,引用発明の「更新プログラム」と,本願発明1の「更新情報」とは,後記の点で異なるものの,更新プログラムを含む点で共通する。
そうすると,引用発明の「書き換え用プログラムを分割してなる分割プログラムを取得するデータ送受信手段」が,本願発明1の「更新プログラム」「を取得する更新情報取得手段」に相当する。

ウ 引用発明は「バッテリの状態に関して,バッテリ制御装置がバッテリの制御に関わる通常の処理を実施しているか否かを判断」する「状態検出手段」を有するところ,上記「バッテリの制御に関わる通常の処理」が,バッテリ(電池)の充電制御や放電制御に関わる処理であることは,当該技術分野の当業者にとって明らかである。
そうすると,引用発明の「状態検出手段」は,バッテリ制御装置がバッテリ(電池)の充電制御に関わる処理を実施しているのか,放電処理に関わる処理を実施しているのか,それ以外であるかを判断しているといえるから,間接的に,バッテリ(電池)の状態が,充電中,放電中,それ以外(待機中)かを判別しているといえる。
したがって,引用発明の「バッテリの状態に関して,バッテリ制御装置がバッテリの制御に関わる通常の処理を実施しているか否かを判断」する「状態検出手段」は,本願発明1の「蓄電池の状態が,充電中,放電中及び待機中のいずれであるかを判定するための充放電情報を取得する充放電情報取得手段」に相当する。

エ 引用発明の「状態検出手段」は,「通常の処理を実施していると判断した場合には,終了するまで待機するよう決定し,通常の処理を実施しておらず,かつバッテリ制御プログラムが全て書き換えられていないと判断した場合には,前記分割プログラムを受信し,当該分割プログラムに該当するバッテリ制御プログラムの部分の書き換えの実施を決定する」ところ,通常の処理を実施しているか否かの情報を利用して,所定の時間(通常の処理の実施が終了するまで)は,分割プログラムによるバッテリ制御プログラムの書き換えを行うか否か,すなわち,バッテリ制御プログラムの書き換えを行うタイミングを決定しているといえる。
そうすると,上記イ,ウにおける検討も踏まえると,引用発明の,「通常の処理を実施していると判断した場合には,終了するまで待機するよう決定し,通常の処理を実施しておらず,かつバッテリ制御プログラムが全て書き換えられていないと判断した場合には,前記分割プログラムを受信し,当該分割プログラムに該当するバッテリ制御プログラムの部分の書き換えの実施を決定する状態検出手段」は,本願発明1の「充放電情報を利用して,前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する更新タイミング決定手段」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「電力を充放電する蓄電池を含む蓄電池システムであって,
前記蓄電池システムを制御する制御プログラムを更新する更新プログラムを含む更新情報を取得する更新情報取得手段と,
前記蓄電池の状態が,充電中,放電中及び待機中のいずれであるかを判定するための充放電情報を取得する充放電情報取得手段と,
前記充放電情報を利用して,前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する更新タイミング決定手段と,
を有する蓄電池システム。」

(相違点1)
「蓄電池システム」に関し,本願発明1では「電力系統及び電子機器と接続される」のに対して,引用発明では,そのような構成が特定されていない点。

(相違点2)
「蓄電池システム」及び「更新情報取得手段」に関し,本願発明1では,蓄電池システムは「複数のモジュール」を有し,「更新情報取得手段」は,蓄電池システムが有する「複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム」「を取得」するのに対して,引用発明では,「バッテリ制御装置」が複数のモジュールを有するか不明であって,「データ送受信手段」が,複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラムを取得することについて言及されていない点。

(相違点3)
「更新プログラムを含む更新情報」に関し,本願発明1は「更新処理を完了すべき期限を示す期限情報を含む前記更新情報」であるのに対して,引用発明では,更新プログラムに加えて,このような期限情報を取得することについて言及されていない点。

(相違点4)
「更新タイミング決定手段」に関し,本願発明1は「期限までの残り時間が所定値以上である場合,充電状態及び待機状態の間に前記複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定し,前記期限までの残り時間が前記所定値より少ない場合,前記複数の更新プログラムを異なるタイミング又は同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する」のに対して,引用発明では,「状態検出手段」が複数の更新プログラムを実行するタイミングを決定することについて言及されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2,4は相互に関連しているので,併せて検討すると,相違点2,4に係る本願発明1の「蓄電池システムが」「複数のモジュール」を有し,「更新情報取得手段は,前記蓄電池システムが有する複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム」「を取得」し,「更新タイミング決定手段は,前記期限までの残り時間が所定値以上である場合,充電状態及び待機状態の間に前記複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定し,前記期限までの残り時間が前記所定値より少ない場合,前記複数の更新プログラムを異なるタイミング又は同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定する」という構成は,上記引用文献2,3には記載も示唆もされていない。
したがって,上記相違点1,3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2,引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-16について
本願発明2-16も,本願発明1の,「蓄電池システムが」「複数のモジュール」を有し,「更新情報取得手段は,前記蓄電池システムが有する複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム」「を取得」し,これら更新プログラムを所定のタイミングで実行するよう決定する,という構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明17,18について
本願発明17,18は,本願発明1に対応する方法,プログラムの発明であり,本願発明1の,「蓄電池システムが」「複数のモジュール」を有し,「更新情報取得手段は,前記蓄電池システムが有する複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム」「を取得」し,これら更新プログラムを所定のタイミングで実行するよう決定する,という構成に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-14,16-26について上記引用文献1乃至3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成29年11月28日付け手続補正により補正された請求項1-18は,それぞれ「蓄電池システムが」「複数のモジュール」を有し,「更新情報取得手段は,前記蓄電池システムが有する複数のモジュール各々を制御する前記制御プログラムを更新するための複数の前記更新プログラム」「を取得」し,これら更新プログラムを所定のタイミングで実行するよう決定する,という構成に一致,または対応する構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1-18は,上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2,引用文献3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では,請求項1の「前記更新タイミング決定手段は,前記期限までの残り時間が所定値以上である場合,前記複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するように前記更新プログラムを実行するタイミングを決定」することについて,複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するよう,“タイミングを決定する”ことは特定するものの,更新プログラムが実行される時期が不明であるとの,特許法第36条第6項第2号に基づく拒絶の理由を通知しているが,平成29年11月28日付けの補正において,「充電状態及び待機状態の間に前記複数の更新プログラムを同じタイミングで実行するように」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-18は,当業者が引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-10 
出願番号 特願2015-535358(P2015-535358)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚田 肇  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 山崎 慎一
佐久 聖子
発明の名称 蓄電池システム、蓄電池システムの更新方法及びプログラム  
代理人 速水 進治  

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