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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1336027
審判番号 不服2014-14458  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-24 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 特願2012-515203「無線電力を輸送するためのデバイスおよびその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日国際公開、WO2010/144885、平成24年11月29日国内公表、特表2012-530482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年6月11日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理、2009年6月12日:米国、2009年11月17日:米国、2010年5月14日:米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月18日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年4月23日)、平成25年8月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成26年3月24日)、これに対し、平成26年7月24日に手続補正書の提出と共に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成27年4月20日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年4月27日)、平成27年7月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年12月22日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年1月4日)、平成28年4月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年6月17日付けで最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年6月20日)、平成28年9月15日付けで意見書が提出され、平成28年12月22日付けで最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年12月26日)、平成29年4月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.平成29年4月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年4月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
電力をデバイスに供給するための方法であって、
電子デバイスに適応するように構成されたハウジングに結合されたレシーバを使用して伝送器から無線電力を受け取るステップと、
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記輸送を終了するステップは、前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが、前記第1の閾値レベルに代えて、前記第1の閾値レベルの値より小さい値を有する第2の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子デバイスに適応するように構成された前記ハウジングに結合された前記レシーバを使用して前記伝送器から無線電力を受け取るステップが、前記ハウジングのカバーに結合されたレシーブコイルを使用して無線電力を受け取るステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子デバイスに適応するように構成された前記ハウジングに結合された前記レシーバを使用して前記伝送器から無線電力を受け取るステップが、セルラ電話、携帯型メディアプレーヤ、カメラ、ゲームデバイス、航法デバイス、ヘッドセット、工具および玩具のうちの少なくとも1つを備えた前記電子デバイス内に統合されたレシーバを使用して無線電力を受け取るステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップが、電池、ウルトラコンデンサおよび機械式蓄積デバイスのうちの少なくとも1つを充電するステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより速く充電し、また、前記第2のエネルギー蓄積デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスより長い寿命を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電子デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを備え、また、前記電子デバイスが動作している間、前記第1のエネルギー蓄積デバイスを物理的に除去することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
デバイスであって、
電子デバイスに適応するように構成されたハウジングに結合された、伝送器から無線電力を受け取るための手段と、
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段と、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段と、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段と
を備えるデバイス。
【請求項11】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギ
ーの輸送を終了するための手段は、前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが、前記第1の閾値レベルに代えて、前記第1の閾値レベルの値より小さい値を有する第2の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより速く充電し、また、前記第2のエネルギー蓄積デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスより長い寿命を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記デバイスから物理的に除去する際に、前記デバイスの動作を継続するための手段をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電するための手段をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
前記充電するための手段、および前記輸送するための手段が、1つまたは複数のプロセッサによって実行される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
デバイスであって、
第1のエネルギー蓄積デバイスと、
第2のエネルギー蓄積デバイスと、
伝送器から無線電力を受け取るように構成されたレシーバと、
コントローラであって、
前記伝送器から無線で受け取った電力を使用して、前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電し、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電し、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送の終了するように構成されたコントローラと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスに結合され、電子デバイスに適応するように構成されたハウジングと
を備えるデバイス。
【請求項18】
前記デバイスが、セルラ電話、携帯型メディアプレーヤ、カメラ、ゲームデバイス、航法デバイス、ヘッドセット、工具および玩具のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ハウジングが、スリーブ、シェル、ケージ、ケースおよびカバーのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第1のエネルギー蓄積デバイス、前記第2のエネルギー蓄積デバイス、およびレシーバの少なくとも一部のうちの少なくとも一つが前記ハウジングに結合される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ハウジングのカバーに結合されたレシーブコイルをさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ハウジングが、前記電子デバイスが前記ハウジング内に位置している間、デバイスの使用者による前記電子デバイスの操作を可能にするように構成される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ハウジングが、1つまたは複数の入力デバイスまたは出力デバイスにアクセスするための1つまたは複数のアクセス開口を備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項24】
少なくとも1つのアクセス開口内に配置された、前記ハウジング内に配置された電子デバイスのポートを前記コントローラに結合するための電気コネクタをさらに備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記コントローラを前記第2のエネルギー蓄積デバイスに結合するための電気コネクタをさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスと前記第2のエネルギー蓄積デバイスの間に動作可能に結合された電力変換器をさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを備えることに代えて、前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスのうちの少なくとも一方が前記デバイスの外部に存在する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項17に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電され、かつ、放電するように構成される、請求項17に記載のデバイス。」

本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
電力をデバイスに供給するための方法であって、
電子デバイスに適応するように構成されたハウジングに結合されたレシーバを使用して伝送器から無線電力を受け取るステップと、
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電するステップと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するステップと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記輸送を終了するステップは、前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが、前記第1の閾値レベルに代えて、前記第1の閾値レベルの値より小さい値を有する第2の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子デバイスに適応するように構成された前記ハウジングに結合された前記レシーバを使用して前記伝送器から無線電力を受け取るステップが、前記ハウジングのカバーに結合されたレシーブコイルを使用して無線電力を受け取るステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子デバイスに適応するように構成された前記ハウジングに結合された前記レシーバを使用して前記伝送器から無線電力を受け取るステップが、セルラ電話、携帯型メディアプレーヤ、カメラ、ゲームデバイス、航法デバイス、ヘッドセット、工具および玩具のうちの少なくとも1つを備えた前記電子デバイス内に統合されたレシーバを使用して無線
電力を受け取るステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップが、電池、ウルトラコンデンサおよび機械式蓄積デバイスのうちの少なくとも1つを充電するステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより速く充電し、また、前記第2のエネルギー蓄積デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスより長い寿命を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電子デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを備え、また、前記電子デバイスが動作している間、前記第1のエネルギー蓄積デバイスを物理的に除去することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
デバイスであって、
電子デバイスに適応するように構成されたハウジングに結合された、伝送器から無線電力を受け取るための手段と、
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電するための手段と、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するための手段と、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段と
を備えるデバイス。
【請求項11】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段は、前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが、前記第1の閾値レベルに代えて、前記第1の閾値レベルの値より小さい値を有する第2の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより速く充電し、また、前記第2のエネルギー蓄積デバイスが前記第1のエネルギー蓄積デバイスより長い寿命を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記デバイスから物理的に除去する際に、前記デバイスの動作を継続するための手段をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスを前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電するための手段をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
前記充電するための手段、および前記輸送するための手段が、1つまたは複数のプロセッサによって実行される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
デバイスであって、
第1のエネルギー蓄積デバイスと、
第2のエネルギー蓄積デバイスと、
伝送器から無線電力を受け取るように構成されたレシーバと、
コントローラであって、
前記伝送器から無線で受け取った電力を使用して、前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電し、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送し、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送の終了するように構成されたコントローラと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスに結合され、電子デバイスに適応するように構成されたハウジングと
を備えるデバイス。
【請求項18】
前記デバイスが、セルラ電話、携帯型メディアプレーヤ、カメラ、ゲームデバイス、航法デバイス、ヘッドセット、工具および玩具のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ハウジングが、スリーブ、シェル、ケージ、ケースおよびカバーのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第1のエネルギー蓄積デバイス、前記第2のエネルギー蓄積デバイス、およびレシーバの少なくとも一部のうちの少なくとも一つが前記ハウジングに結合される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ハウジングのカバーに結合されたレシーブコイルをさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ハウジングが、前記電子デバイスが前記ハウジング内に位置している間、デバイスの使用者による前記電子デバイスの操作を可能にするように構成される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ハウジングが、1つまたは複数の入力デバイスまたは出力デバイスにアクセスするための1つまたは複数のアクセス開口を備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項24】
少なくとも1つのアクセス開口内に配置された、前記ハウジング内に配置された電子デバイスのポートを前記コントローラに結合するための電気コネクタをさらに備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記コントローラを前記第2のエネルギー蓄積デバイスに結合するための電気コネクタをさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスと前記第2のエネルギー蓄積デバイスの間に動作可能に結合された電力変換器をさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを備えることに代えて、前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスのうちの少なくとも一方が前記デバイスの外部に存在する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗が前記第2のエネルギー蓄積デバイスの内部抵抗より小さい、請求項17に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1のエネルギー蓄積デバイスが前記第2のエネルギー蓄積デバイスより高い電圧で充電され、かつ、放電するように構成される、請求項17に記載のデバイス。」

(2)新規事項
本件補正後の請求項1には「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」と記載されている。
本件補正後の請求項1に記載された「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイス」は、段落【0044】に「エネルギー蓄積デバイス708は、本明細書においては「蓄電池708」と呼ぶことも可能である。非制限の例として、蓄電池708は、電池、ウルトラコンデンサ、機械式蓄積デバイスまたはそれらの任意の組合せを備えることができる。」とあるように、電池やコンデンサ等からなる蓄積デバイスである。
「時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」は、所定の割合の充電を、時間領域(タイムスロット)の割り当てで行うことを意味するものである。
そこで、電池やコンデンサ等の蓄積デバイスである、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとに所定の割合の充電を、時間領域(タイムスロット)の割り当てで行うという技術的事項について、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、翻訳文等という)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

翻訳文等には、以下の記載がある。
a「【0035】
複数のレシーバ300が伝送器の近距離場に存在している場合、他のレシーバをより有効に伝送器に結合することができるようにするためには、場合によっては1つまたは複数のレシーバのローディングおよびアンローディングを時間多重化することが望ましい。」

b「【0042】
当業者には理解されるように、充電可能電子デバイス(例えば移動電話)は、周期的に充電するために構成することができる(つまり1回につき数分間にわたって電荷を受け取る)。しかしながら、上で言及したように、無線充電器は、複数の充電可能電子デバイスの間で「電力を共有する」ために、充電可能電子デバイスへの電力を周期的に中断することがあり、したがって無線充電器が充電可能電子デバイスに電力を輸送(convey)することができるのは、1回につき数秒以内にすぎない。これは、充電の開始を失敗し、充電を早く終了し、および/または電池の充電状態を不正確に測定する原因になることがある。」

c「【0045】
また、電子デバイス700は、レシーバ704および蓄電池708の各々に動作可能に結合されるコントローラ710、およびコントローラ710、蓄電池708およびエネルギー蓄積デバイス706の各々に動作可能に結合されるコントローラ712を含むことも可能である。コントローラ710は、レシーバ704からエネルギーを受け取り、かつ、蓄電池708にエネルギーを輸送するように構成することができる。コントローラ712は、コントローラ710および蓄電池708の各々からエネルギーを受け取り、かつ、エネルギー蓄積デバイス706にエネルギーを移送するように構成することができる。」

d「【0046】
一例示的実施形態によれば、コントローラ712の入力の電圧レベルおよび/または電流レベルが閾値レベルに到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へコントローラ712を介してエネルギーを移送することができる。言い換えると、第2のコントローラ712は、蓄電池708の充電レベルが閾値に到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へエネルギーを移送するように構成することができる。蓄電池708およびレシーバ704から利用することができるエネルギーの量がエネルギー蓄積デバイス706を充電するには不十分になると(つまり蓄電池708の充電レベルが閾値未満に降下すると)、エネルギー蓄積デバイス706の充電を停止することができ、また、蓄電池708を再充電することができることに留意されたい。蓄電池708、レシーバ704またはそれらの組合せから利用することができるエネルギーがエネルギー蓄積デバイス706を充電するために再び十分になると、コントローラ712は、エネルギー蓄積デバイス706にエネルギーを輸送することができる。エネルギー蓄積デバイス706にエネルギーが移送されるのは蓄電池708が少なくとも閾値レベルの電荷を備えている場合のみであるため、エネルギー蓄積デバイス706は、充電中、特定の量未満のエネルギーを受け取ることは絶対にないことにさらに留意されたい。」

e「【0048】
次に、電子デバイス700の企図されている動作について説明する。最初に、アンテナ702が信号を受け取ることができ、この信号には、この例によれば無線電力が含まれている。次に、図5を参照して上で説明したレシーバ300と同様の方法で機能することができるレシーバ704がこの無線電力信号を受け取ることができる。レシーバ704は、次に、蓄電池708を充電するために、コントローラ710を介して蓄電池708にエネルギーを輸送することができる。蓄電池708の充電レベルが閾値に到達すると、蓄電池708、レシーバ704またはそれらの組合せからエネルギー蓄積デバイス706へコントローラ712を介してエネルギーを移送することができる。蓄電池708の電圧レベルが閾値または他のより低い閾値未満に降下するときはいつでも、蓄電池708からエネルギー蓄積デバイス706への電力の伝送を終了することができる。」

f「【0052】
さらに、電子デバイス750は、レシーバ704および蓄電池708の各々に動作可能に結合される電力モジュール714、およびコントローラ762を含むことも可能である。一例示的実施形態によれば、電力モジュール714は、3-ポートモジュールを備えることができる。電力モジュール714は、レシーバ704から電力を受け取り、かつ、蓄電池708に電力を輸送するように構成することができる。さらに、コントローラ762は、電力モジュール714から電力を受け取り、かつ、エネルギー蓄積デバイス706に電力を輸送するように構成することができる。一例示的実施形態によれば、電力モジュール714は、電力モジュール714から蓄電池708へ輸送されるエネルギーの量、蓄電池708から電力モジュール714へ輸送されるエネルギーの量、および電力モジュール714からコントローラ762へ輸送されるエネルギーの量を制御するように構成することができる。」

g「【0055】
次に、電子デバイス750の企図されている動作について説明する。最初に、アンテナ702が信号を受け取ることができ、この信号には、この例によれば無線電力が含まれている。次に、図5を参照して上で説明したレシーバ300と同様の方法で機能することができるレシーバ704がこの無線電力信号を受け取ることができる。レシーバ704は、次に、蓄電池708を充電するために、電力モジュール714を介して蓄電池708に電力を輸送することができる。コントローラ762の入力の電圧レベルが閾値に到達すると、蓄電池708、レシーバ704またはそれらの組合せからエネルギー蓄積デバイス706へコントローラ762を介して電力を移送することができる。蓄電池708の電圧レベルが閾値または他のより低い閾値未満に降下するときはいつでも、蓄電池708からエネルギー蓄積デバイス706への電力の伝送を停止することができる。
【0056】
上で言及したように、電力モジュール714は、蓄電池708へ輸送され、また、蓄電池708から輸送されるエネルギーの量を制御し、また、コントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送されるエネルギーの量を制御するように構成することができる。一例として、電力モジュール714は、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば25%)を蓄電池708へ輸送し、また、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば75%)をコントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送するように構成することができる。」

h「【0068】
図15は、第1の電子デバイス902および第2の電子デバイス904を含んだシステム900を示したもので、第1の電子デバイス902および第2の電子デバイス904の各々は、無線充電器906の充電領域に配置されている。第1の電子デバイス902は、上で説明した電子デバイス700または電子デバイス750のいずれかを備えることができることに留意されたい。さらに、第1の電子デバイス902は、充電可能デバイス(例えばカメラ、移動電話またはメディアプレーヤ)、あるいは充電可能デバイスを収納するように構成されたデバイス(例えばスリーブ、ケースまたはケージ)を備えることができることに留意されたい。
【0069】
当業者には理解されるように、無線電力充電器は、個々の電子デバイスに割り当てられた起動タイムスロットに基づく時間領域多重化方式に従って複数の電子デバイスに無線電力を輸送することができる。図16は、時間に対する第1の電子デバイス902のエネルギー蓄積デバイス(例えば蓄電池708)のエネルギーレベルを示すタイミング図であり、無線充電器906は、時間領域多重化方式に従って第1の電子デバイス902および第2の電子デバイス904に無線電力を輸送している。第1のタイムスロットt1の間、無線充電器906は第1の電子デバイス902に無線電力を輸送しており、その結果、蓄電池のエネルギーレベルが高くなって閾値Vthに到達する。タイムスロットt2からt5までの各々の間、蓄電池からエネルギー蓄積デバイス(例えばエネルギー蓄積デバイス706)へエネルギーが輸送されている。さらに、第2のタイムスロットt2および第4のタイムスロットt4の間、無線充電器906は第1の電子デバイス902に電力を輸送している。さらに、第3のタイムスロットt3および第5のタイムスロットt5の各々の間、無線充電器906は第2の電子デバイス904に電力を輸送しており、したがって第1の電子デバイス902の蓄電池の電圧レベルが低くなる。」

i「【0070】
図17は、時間に対する第1の電子デバイス902のエネルギー蓄積デバイス(例えば蓄電池708)のエネルギーレベルを示す他のタイミング図であり、無線充電器906は、時間領域多重化方式に従って第1の電子デバイス902および第2の電子デバイス904に無線電力を輸送している。この実施形態では、蓄電池の充電レベルが上部閾値Vth_upperに到達するまでの間、エネルギーは、蓄電池(例えば蓄電池708)からエネルギー蓄積デバイス(例えばエネルギー蓄積デバイス706)に輸送されない。さらに、蓄電池の充電レベルが上部閾値Vth_upperに到達した後、蓄電池の充電レベルが下部閾値Vth_lower未満に降下するまでの間、蓄電池からエネルギー蓄積デバイスへエネルギーが連続的に輸送される。第1のタイムスロットTlの間、無線充電器906は第1の電子デバイス902に無線電力を輸送しており、その結果、蓄電池のエネルギーレベルが高くなって上部閾値Vth_upperに到達する。タイムスロットT2からT4までの各々の間、蓄電池からエネルギー蓄積デバイスへエネルギーが輸送されている。さらに、第2のタイムスロットT2および第4のタイムスロットT4の間、無線充電器906は第2の電子デバイス904に電力を輸送しており、したがって第1の電子デバイス902の蓄電池の電圧レベルが低くなる。さらに、第3のタイムスロットT3の間、無線充電器906は第1の電子デバイス902に電力を輸送している。」

上記a、b、h、iに示される事項は、複数の充電可能デバイス(例えばカメラ、移動電話またはメディアプレーヤ)のそれぞれに時間領域(タイムスロット)を割り当てて、無線電力を与えることが開示されているものであり、充電可能デバイスのハウジングの内部に設けられる、電池やウルトラコンデンサ等の蓄積デバイスである、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスの充電を行うことは記載も示唆もない。
また、上記c?gには、レシーバから受け取るエネルギーをコントローラ等の手段によって各々のエネルギー蓄積デバイスへ輸送することや、その輸送されるエネルギーの量を制御することは記載されているが、コントローラ等の手段が、各エネルギー蓄積デバイスに時間領域(タイムスロット)を割り当てることや、第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを所定の割合で充電することが、時間領域(タイムスロット)の割り当てで制御されることは記載も示唆もない。
したがって、上記a?iには、充電可能デバイスのハウジングの内部に設けられる、電池、ウルトラコンデンサ、機械式蓄積デバイス等である、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとに所定の割合で充電することを時間領域(タイムスロット)の割り当てで行うという技術的事項を開示するものではない。
以上より、本件補正後の請求項1に記載された「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
請求項10、17も同様である。

(3)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
本件補正後の請求項1は電力をデバイスに供給するための方法に係るものであり、請求人も平成29年4月14日付けの意見書で主張するように、電力をデバイスに供給するための方法に係る本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。

本件補正前の請求項1には「第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」とあったものが、本件補正後の請求項1には「第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するステップ」とあり、本件補正前の請求項1は、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することを行っていたものが、本件補正後の請求項1は、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することのみを行うものとなっている。
本件補正により、本件補正前の請求項1から「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」事項が削除され、しかも、本件補正後の請求項1には他に実質的に当該同内容の事項は記載はされていないから、本件補正は特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
請求項10、17も同様である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でいない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
なお、請求人は、平成29年4月14日付けの意見書で、当該補正は明瞭でない記載の釈明を目的としたものであると主張しているが、「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」を削除することは不明瞭な記載の釈明となるものではないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第4項及び第6項について
本件補正後の請求項1には「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」とある。
しかし、時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電するためには何らかの回路を用いて充電しなければならないが、どの様な回路がどの様に充電するか不明であり、仮に、何らかの手段を用いることにより、レシーバを使用して伝送器から無線で受け取ったエネルギーに時間領域(タイムスロット)を割り当てることで、第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスに振り分けて供給したとしても、エネルギー蓄積デバイスの電圧よりも高い電圧でエネルギーを供給しない限り充電を行うことはできないので、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスのどちらも充電できない場合も、一方へのみ充電が可能である場合も、双方に充電可能である場合も考えられ、「第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスを時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」ことをどのようにして行うのか不明である。
また、本件補正後の請求項1には「前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送する」とあるが、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとき、レシーバは伝送器からエネルギーを受け取るのか否か不明であり、仮に、当該輸送と同時にレシーバが伝送器からエネルギーを受け取るとすると、レシーバーが受け取ったエネルギーはどこに伝送されるのか不明である。
なお、本件補正後の請求項10、17についても同様である。

発明の詳細な説明には、レシーバを使用して伝送器から無線電力を受け取り、受け取ったエネルギーを、所定の割合で第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することに関し、前記「[理由I](2)新規事項」で摘記したf、gの記載があるが、「時間領域多重化方式に従って所定の割合で充電する」ための具体的な回路構成等は記載されておらず、どのように実施するかも不明である。

したがって、本件補正後の請求項1-29の記載は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の請求項1-29の記載は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件も満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-29に係る発明は、上記した平成28年4月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-29に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成28年12月22日付で通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。



1)請求項1の「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」との訳語は、「および」が、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとが接続されて単に両者が充電可能であればよいのか、それとも、それぞれに対する充電が同時に行われることを意味するのか不明であるため明確でない。
つまり、請求項の記載から直接的に明らかなように、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとが接続されて単に両者が充電可能であればよいとした場合には、発明の詳細な説明に記載されたいずれの実施の形態に対応するのか不明である。 そうすると、「および」の記載は、異なる二つのエネルギー蓄積デバイスに同時に充電を行うことを意味すると解するほかないが、例えば、レシーバに単に2つのエネルギー蓄積デバイスを接続したとしても、エネルギー蓄積デバイス同士の端子電圧が全く同一でないかぎり、端子電圧の低い方のエネルギー蓄積デバイスにしか充電を行うことはできず、端子電圧の高い方のエネルギー蓄積デバイスが、端子電圧の低い方のエネルギー蓄積デバイスへ放電してしまうことを防ぐ必要も生じるものであるから、エネルギー蓄積デバイスの定格電圧や容量等の差異にもかかわらず同時に充電を可能とするための具体的な手段(なお、図8のモジュール714に、具体的な回路構成等は示されていない)が不可欠といえるが、請求項1には、何らそのような構成は示されていないため、同時に充電を行うことが明らかといえず、請求項の記載は明確でない。
また、上記請求項の記載に関連し、発明の詳細な説明の段落0056には、「電力モジュール714は、蓄電池708へ輸送され、また、蓄電池708から輸送されるエネルギーの量を制御し、また、コントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送されるエネルギーの量を制御するように構成することができる。一例として、電力モジュール714は、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば25%)を蓄電池708へ輸送し、また、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば75%)をコントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送するように構成することができる。」と記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、電力モジュール714が、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば25%)を蓄電池708へ輸送し、また、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば75%)をエネルギー蓄積デバイス706へ輸送することをどのようにすれば実現できるのかについての具体的な記載、例えば、電力モジュール714の具体的な回路構成及びその動作説明はない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1の「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

2)請求項1の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」の訳語は、「とともに」が、第1のエネルギー蓄積デバイスからエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して充電することとの双方が、第2のエネルギー蓄積デバイスに対して可能とされていることで足りるのか、それとも、エネルギーの輸送と、伝送器から無線で受け取ったエネルギーからの充電とが同時に行われることを意味するのか不明であるため明確でない。
請求項の記載から直接的に明らかなことは、第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方を行うことであるが、例えば、二つの電源を並列接続して給電する場合に、二つの電源同士が全く等しい電圧でない限り、電圧が高い方からしか給電がなされないことからも明らかなように、第1のエネルギー蓄積デバイスからのエネルギーの輸送と、伝送器から無線で受け取ったエネルギーからの充電とが同時に行われることを意味するものとはいえない。
一方、「とともに」が、エネルギーの輸送と、伝送器から無線で受け取ったエネルギーからの充電とが同時に行われることを意味するとした場合、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方が同時に行われるように、輸送とともに充電を行うことを可能とするための具体的な手段(なお、図8のモジュール714に、具体的な回路構成等は示されていない)が不可欠であるといえるが、請求項1には、何らそのような構成は示されていないため、輸送と充電とを同時に行うことが明らかといえず、請求項の記載は明確でない。
また上記請求項の記載に関連し、発明の詳細な説明の段落0053には、「コントローラ762の入力の電圧レベルおよび/または電流レベルが閾値レベルに到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へコントローラ762を介してエネルギーを移送することができる。言い換えると、電力モジュール714は、蓄電池708の充電レベルが閾値に到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へエネルギーを移送するように構成することができる。」と記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、電力モジュール714が、蓄電池708の充電レベルが閾値に到達した際、蓄電池708およびレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へ、どのようにすれば同時にエネルギーを移送することができるのかについての具体的な記載、例えば、電力モジュール714の具体的な回路構成及びその動作説明はない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

3)上記1)、2)は、請求項1を引用する請求項2?9についても同様である。
4)上記1)と同様、請求項10の「伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
5)上記2)と同様、請求項10の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
6)上記4)、5)は、請求項10を直接又は間接に引用する請求項11?16についても同様である。
7)上記1)と同様、請求項17の「伝送器から無線電力を受け取るように構成されたレシーバと、コントローラであって、前記伝送器から無線で受け取った電力を使用して、前記第1のエネルギー蓄積デバイスおよび前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電し」は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項17に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
8)上記2)と同様、請求項17の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電し」は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項17に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
9)上記7)、8)は、請求項17を直接又は間接に引用する請求項18?29についても同様である。」

(2)最後の拒絶の理由についての当審の判断
(ア)請求項1の「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」は、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとが受け取ったエネルギーを使用して単に第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスが充電可能であればよいことを意味するのか、それとも、第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスに対する充電は並行して同時に実施されることを意味するのか特定できないため明確でない。
仮に、「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」ことが、二つのエネルギー蓄積デバイスへの充電が並行して同時に実施されることを意味するとすると、電圧も容量も特定されていない二つのエネルギー蓄積デバイスへ並行して同時に充電を実行するには、第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスそれぞれの電圧や容量に対応して充電を行うような装置がなければ実行不可能であるが、請求項1には、何らそのような構成は示されていないため、充電が並行して同時に実施されることが明らかといえず、請求項の記載は明確でない。
なお、「第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」ことが、単に第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスの両者に充電がなされればよいことであるとしても、電圧も容量も特定されていない二つのエネルギー蓄積デバイスの両者に充電を実行するには、第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスそれぞれの電圧や容量に対応して充電を行うような装置がなければ実行不可能であることに差異はなく、請求項1には、何らそのような構成は示されていないため、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとの両者に充電できるのかも明らかといえず、請求項1の記載は明確でない。
請求項10、17も同様である。

発明の詳細な説明の段落【0056】を参照すると、「電力モジュール714は、蓄電池708へ輸送され、また、蓄電池708から輸送されるエネルギーの量を制御し、また、コントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送されるエネルギーの量を制御するように構成することができる。一例として、電力モジュール714は、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば25%)を蓄電池708へ輸送し、また、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば75%)をコントローラ762を介してエネルギー蓄積デバイス706へ輸送するように構成することができる。」と記載されているが、電力モジュール714が、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば25%)を蓄電池708へ輸送すること、及び、レシーバ704から受け取るエネルギーの特定の百分率(例えば75%)をエネルギー蓄積デバイス706へ輸送することを、どの様にして行われているのかについての具体的な開示(電力モジュール714の具体的な回路構成及びその動作説明)はなく、どの様にエネルギーの輸送を制御するのか、どの様にすればエネルギーを特定の率となるよう制御できるのかは不明である。

(イ)請求項1の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するステップ」は、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方が行われることで足りるのか、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することとが並行して同時に行われることを意味するのか特定できないため明確でない。
仮に、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することとが並行して同時に行われることを意味するとした場合、一般に、伝送器から無線で受け取ったエネルギーは、輸送されるエネルギーと比較して、常に大きな変動や断続が生じるものを含み、この場合、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方を同時に行うためには、エネルギーを輸送するとともに、変動や断続が生じるエネルギーによる充電を継続するための具体的な手段が不可欠であり、請求項1には、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを継続させるための構成は何ら示されておらず、請求項1の記載は明確でない。
仮に、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方が行われる場合、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送する手段と、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する手段の双方を単に第2のエネルギー蓄積デバイスへ接続しても、一般に、二つのエネルギー源から一つの対象に給電する場合には、電圧が高い方からしか給電がなされず、エネルギー源同士が全く等しい電圧でない限り双方からの給電は行われないが、そのようなことは通常起こり得ないことであるから、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送する手段と、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する手段とから、第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーの輸送と充電とを可能とするための具体的な手段が不可欠であり、請求項1には、エネルギーの輸送と充電との双方を行うための構成は何ら示されておらず、請求項1の記載は明確でない。
請求項10、17も同様である。

発明の詳細な説明の段落【0053】には、「コントローラ762の入力の電圧レベルおよび/または電流レベルが閾値レベルに到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へコントローラ762を介してエネルギーを移送することができる。言い換えると、電力モジュール714は、蓄電池708の充電レベルが閾値に到達すると、蓄電池708および恐らくはレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へエネルギーを移送するように構成することができる。」と記載されているが、蓄電池708およびレシーバ704からエネルギー蓄積デバイス706へエネルギーを移送するということが、具体的にどの様な手段を用いて行われるかについて開示されていない。

(ウ)したがって請求項1-29の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)当審の平成27年12月22日付けの拒絶の理由Bについて。
当審で平成27年12月22日付で通知した拒絶の理由Bの概要は以下のとおりである。
「B.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用刊行物については引用刊行物等一覧参照)
請求項1-34
刊行物1:特に、【0043】?【0052】【図4】等、本願請求項1の「伝送器(振動エネルギー放射装置2)から無線電力を受け取るステップ」と、
「伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイス(電気二重層コンデンサ341)を充電するステップ」と、
「第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイス(二次電池343)へエネルギーを輸送するステップ」とを含む「電力をデバイスに供給するための方法」に相当するものを前提構成として参照。
このような電力供給方法は、周知手法でもある。他にも、
刊行物2:特に、【0021】?【0022】【図2】等(「非接触給電装置12」は本願請求項1の「伝送器」に相当し、以下同様に、「電気二重層コンデンサ25」は、「第1のエネルギー蓄積デバイス」に、「携帯機器3」の「蓄電池」は、「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当する。)参照。
刊行物3:特に、【0028】?【0040】【図2】等(「給電装置11」は本願請求項1の「伝送器」に相当し、以下同様に、「電気二重層コンデンサ27」は、「第1のエネルギー蓄積デバイス」に、「バッテリ29」は、「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当する。)参照。
刊行物4:特に、【0028】【図3】【図4】等、本願請求項1の「第1のエネルギー蓄積デバイス(第1のエネルギー貯蔵手段)の充電レベルが第1の閾値レベルに到達する(「利用可能な充電電圧が存在する場合」、S402YES)と、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイス(電池308)へエネルギーを輸送(「充電」)するステップと、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第2の閾値レベル未満に降下する(「利用可能な電圧が不足している」、S402NO)と、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了する(「充電フラグはオフに設定され」る)ステップと
を含む方法。」に相当する第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送制御手法参照。
他にも、
刊行物5:特に、【0018】?【0019】【0022】?【0032】【図1】【図5】等、本願請求項2の「前記第1のエネルギー蓄積デバイス(コンデンサ3)の充電レベルが第1の閾値レベルに到達する(「第1の電圧V1を越える」)と、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイス(バッテリ11)へエネルギーを輸送する(「コンデンサ3に蓄積された電力が・・バッテリ11に移送されてバッテリ11を充電する」)ステップ」と、
「【請求項2】・・前記第1の閾値レベルの値より小さい値を有する第2の閾値レベル未満に降下する(「第2の電圧V2(V2<V1)を下まわる」)と、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了する(「コンデンサ3からバッテリ11への移送が停止する」)ステップ」と「を含む方法。」に相当する第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送手法参照。
第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに応じて、輸送/輸送終了する、第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送制御手法は、周知手法でもある。他にも、
刊行物6:特に、【0028】?【0032】【図1】【図8】等参照。
刊行物1?3記載の第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を、刊行物4?6記載の周知の第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送制御手法で制御することは、当業者が容易になし得る事と認める。
なお、刊行物4においては、第2のエネルギー蓄積デバイス(電池308)の電圧が90%以上の時にエネルギー輸送を行わない制御が併用されており、刊行物6においては、第2のエネルギー蓄積デバイス(リチウムイオン二次電池92)が予め決められた充電電圧に到達すると定電圧充電モードを選択する制御が併用されているが、それらの制御を併用するか否かは、当業者が適宜選択し得ることと認められる。(例えば、刊行物5の【0018】?【0019】【0022】?【0032】においては、第2のエネルギー蓄積デバイス(バッテリ11)の充電状態に対応した制御について言及せずに、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送制御手法が説明されている。)

引 用 刊 行 物 等
1.特開2001-136684号公報
2.特開2003-299255号公報
3.特開2001-25104号公報
4.特表2007-526730号公報
5.特開平8-79984号公報
6.特開2005-328662号公報」


(4)当審の平成27年12月22日付け拒絶の理由Bについての判断
(4-1)本願の請求項10に係る発明
本願の請求項10に係る発明は、上記した平成28年4月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお、請求項10の「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」は、第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスとが受け取ったエネルギーを使用して単に第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスが充電可能であればよい(充電が並行して同時に行われることまで意味しない)と解釈する。
また、請求項10の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電する」は、第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することの双方が行われる(第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することと、伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することとが並行して同時に行われることまで意味しない)と解釈する。

(4-2)引用例
ア.当審の平成27年12月22日付け拒絶の理由に刊行物1として引用された特開2001-136684号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加。)。

a「図2は、応答装置3の配置構成の一例を示す説明図である。
同図に示す応答装置3は、薄型のカード状に形成したものであり、ICチップからなる応答信号発生回路320や、幅数cm四方且つ厚さ1mm程度の電気二重層コンデンサ341等を樹脂製の基板370に配置し、更に、その周囲にプリント成形又は蒸着成形した枠状の振動エネルギー受信コイル310を配置して構成している。」(【0035】、【0036】)

b「本例の照合装置によると、応答装置は、エネルギー放射装置で放射された振動エネルギーを受信するコイルと、応答信号を発生する応答信号発生回路と、応答信号を発信するコイルと、応答信号発信回路に電力を供給する電源装置とを備え、電源装置は、振動エネルギーを受信するコイルで受信した振動エネルギーを電力として蓄える電気二重層コンデンサを備えたので、応答装置にあっては、振動エネルギーをエネルギー源として利用し、長期に亘ってより安定した電力を得ることができる。」(【0040】)

c「次に、本発明の他の具体例を図4乃至図5に基づいて説明する。
これらの図に示すように、本例の電源装置は、電圧調整器342を介して電気二重層コンデンサ341に接続された二次電池343を備え、当該二次電池343を応答信号発生回路320に接続したものである。尚、その他の基本的な構成については、前述した具体例と同様であるので、共通する部材には同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
すなわち、電源装置は、振動エネルギーコイル310で受信した振動エネルギーを電力として蓄える電気二重層コンデンサ341と、電気二重層コンデンサ341の出力電圧を調整する電圧調整器342と、電圧調整器342を介して電気二重層コンデンサ341に接続された二次電池343とを備え、二次電池343を応答信号発信回320に接続するように構成されている。
二次電池320は、充放電が繰り返し可能な電池であり、電気二重層コンデンサ341に蓄えられた電力によってチャージされる。
本例の場合、この二次電池320としては、鉛電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウム電池のいずれかを用いている。
また、電気二重層コンデンサ341の出力電圧は、電圧調整器342により、二次電池343の電圧よりも高く設定される。
本例の電圧調整器342は、コンパレータを用いて構成したものであり、電気二重層コンデンサ341の出力を交流から一旦パルス状に変換した後これを平滑し、その電圧を常に二次電池343の電圧よりも若干高く設定するものである。
従って、二次電池343は、電気二重層コンデンサ341に蓄えられた電力によって効率よくチャージされ、応答信号を発信する際、応答信号発生回路320には、二次電池343から一層安定した電力が供給される。
以上説明したように、本例の電源装置によると、空間に伝わる振動エネルギーを受信するコイルと、コイルで受信した振動エネルギーを電力として蓄える電気二重層コンデンサと、電気二重層コンデンサの出力電圧を調整する電圧調整器と、電圧調整器を介して電気二重層コンデンサに接続された二次電池とを備え、二次電池を負荷に接続したので、電気二重層コンデンサに蓄えられた電力をもって二次電池をチャージすることができ、負荷には二次電池から電力を供給することができる。従って、電力の安定性を一層向上することができる。」(【0043】-【0051】)

d 図5には、上記aの記載を参照すると、薄型のカード状に形成された応答装置3の外形を形作る基板370の周囲に、振動エネルギー受信コイル310を枠状に配置した構成を看て取ることができる。

e 図4の回路、また、上記cの記載を参照すると、エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーを電気二重層コンデンサ341に電力として蓄えるための回路手段、また、電気二重層コンデンサ341の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343をチャージするための回路手段を看て取ることができる。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「応答装置3であって、
薄型のカード状に形成された応答装置3の外形を形作る基板370の周囲に、枠状に配置された、エネルギー放射装置から振動エネルギーを受信する振動エネルギー受信コイル310と、
エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーを電気二重層コンデンサ341に電力として蓄える回路手段と、
電気二重層コンデンサ341の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343をチャージする回路手段とを有する、応答装置3。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

イ.当審の平成27年12月22日付け拒絶の理由に刊行物5として引用された特開平8-79984号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加。)。
a「以下、本発明の実施例について説明する。ここではカメラに組込む充電回路を念頭に置いて説明する。図1は、本発明の一実施例の充電回路を示す回路図である。複数個直列に接続された太陽電池1に光が照射されるとその光の照度に応じた電流I_(P)が発生し、その電流I_(P) はダイオード2を経由し、コンデンサ3に電荷が蓄積される。このコンデンサ3は、本発明にいう電力蓄積素子の一例である。このコンデンサ3の端子電圧V_(C)はコンパレータ4によりモニタされ、その電圧V_(C)が設定の第1の電圧V_(1)を越えるとコンパレータ4の出力が‘H’レベルに遷移し、発振回路5が発振を開始し、その発振信号が抵抗6を経由してトランジスタ7のゲートに印加され、そのトランジスタ7がオン/オフを繰り返す。すると、コンデンサ3に蓄積された電力が昇圧されたパルス列状の電力となってコンデンサ3から取り出され、コイル8を経由し、逆流防止用のダイオード9を経由し、さらにLED10を経由することによりそのLED10を点灯させ、バッテリ11に移送されてバッテリ11を充電する。
コンデンサ3の端子電圧V_(C)が所定の第2の電圧V_(2)(V_(2)<V_(1))を下まわると、コンパレータ4の出力が‘L’レベルとなり発振回路5の発振が停止し、トランジスタ7が遮断状態となり、コンデンサ3からバッテリ11への電力の移送が停止する。本実施例では、コンパレータ11が本発明にいう制御回路に相当し、発振回路5、トランジスタ7、およびコイル8等が本発明にいう電力変換回路に相当する。」(【0018】【0019】)

上記記載事項からみて、引用例2には「太陽電池1が発生した電流I_(P)によってコンデンサ3に電荷が蓄積され、コンデンサ3の端子電圧V_(C)が設定の第1の電圧V_(1)を越えると、発振回路5が発振を開始し、コンデンサ3に蓄積された電力が昇圧され、バッテリ11に移送され、コンデンサ3の端子電圧V_(C)が所定の第2の電圧V_(2)(V_(2)<V_(1))を下まわると、発振回路5の発振が停止し、コンデンサ3からバッテリ11への電力の移送が停止する」技術が記載されている。

ウ.当審の平成27年12月22日付け拒絶の理由に刊行物6として引用された特開2005-328662号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加。)。
a「図1は、この発明の第1の実施例である電源装置の電気的構成を示す回路図である。
この例の電源装置は、同図に示すように、太陽電池モジュール1と、第1逆流防止素子2と、電流制限素子3と、過電圧保護素子4と、電気二重層キャパシタ5と、昇圧型DC-DCコンバータ6と、充電オン/オフ制御回路7と、二次電池充電制御回路8と、二次電池パック9とから構成されている。」(【0015】)

b「図8は、図1の電源装置におけるリチウムイオン二次電池92の充電時の動作を説明するタイムチャート、図9は、リチウムイオン二次電池92の充電特性を示す図、及び図10が電気二重層キャパシタ5の充電特性を示す図である。
これらの図を参照して、この例の電源装置に用いられる制御方法について説明する。
太陽電池モジュール1に太陽光が照射されると、たとえば図2に示す日照強度に対する出力特性に基づく同太陽電池モジュール1の発電動作により、第1逆流防止素子2及び電流制限素子3を介して電気二重層キャパシタ5に対して蓄電が開始される。図8に示すように、電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが閾値電圧VLのとき、ゲートスイッチ82の接点がオフ(OFF)状態であることから、リチウムイオン二次電池92への充電動作が停止しているため、電気二重層キャパシタ5よりも後段の回路は、充電オン/オフ制御回路7の待機消費電力を除くと無負荷状態なので、同電気二重層キャパシタ5は、充電モードとなり、充電電圧Vedlcが閾値電圧VLから閾値電圧VHへ上昇していく。この間、図7に示す保持動作により、ゲートスイッチ82のオフ状態が保持されている。
時刻t1において、電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが閾値電圧VHに到達すると、充電オン/オフ制御回路7のキャパシタ電圧検出回路72により、低圧検出器721の出力側はHigh(高レベル)、及び高圧検出器722の出力側がHighとなることから、図6及び図7に示す制御動作により、ゲートスイッチ制御回路73の出力はHighとなり、ゲートスイッチ82の接点1,2がオン(ON)状態となる。これにより、ゲートスイッチ82がオン状態となってリチウムイオン二次電池92に対する充電動作が開始する。
このとき、リチウムイオン二次電池92の充電電圧に基づいて、充電方式選択スイッチ83の図示しない充電電圧検出手段により定電流又は定電圧の充電モードが選択される。
たとえば、充電モードが定電流充電モードの場合、充電方式選択スイッチ83は、接点zと接点xとが接続され、予め設定された電流値Iccでリチウムイオン二次電池92が充電される。このとき、リチウムイオン二次電池92への充電電流Ichgは、太陽電池モジュール1の出力インピーダンスでは供給できないほどの大きい電流値なので、電気二重層キャパシタ5が放電モードとなり、放電時間Ton1において、同電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが閾値電圧VHから閾値電圧VLへ降下していく。この間、図7に示す保持動作によりゲートスイッチ82のオン状態が保持されている。
時刻t2において、電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが再び閾値電圧VLに到達すると、充電オン/オフ制御回路7のキャパシタ電圧検出回路72により、低圧検出器721の出力側はLow(低レベル)、高圧検出器722の出力側がLowとなることから、図6及び図7に示す制御動作により、ゲートスイッチ制御回路73の出力がLowとなり、ゲートスイッチ82がオフ状態となる。これにより、リチウムイオン二次電池92への充電動作が停止し、電気二重層キャパシタ5よりも後段の回路は、充電オン/オフ制御回路7の待機消費電力を除くと無負荷状態なので、同電気二重層キャパシタ5は、再び充電モードとなり、充電電圧Vedlcが閾値電圧VLから閾値電圧VHへ上昇していく。この間、図7に示す保持動作により、ゲートスイッチ82のオフ状態は保持されている。
以上の動作が繰り返されることにより、リチウムイオン二次電池92が周期的に充電される。」(【0028】?【0032】)

上記記載事項からみて、引用例3には「電気二重層キャパシタ5に対して太陽電池モジュール1の発電により蓄電が開始されて電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが閾値電圧VHに到達すると、ゲートスイッチ82がオン状態となってリチウムイオン二次電池92に対する充電動作が開始し、電気二重層キャパシタ5の充電電圧Vedlcが降下して閾値電圧VLに到達すると、ゲートスイッチ82がオフ状態となり、リチウムイオン二次電池92への充電動作が停止する」技術が記載されている。

(4-3)対比
本願発明の「デバイス」は、本願発明の「電子デバイス」を含み、電子機器、電子装置等一般を意味するものである。
引用発明の「応答装置3」は、本願発明の「デバイス」に相当する。
引用発明の「基板370」によって形作られる「薄型のカード状に形成された応答装置3の外形」は、本願発明の「電子デバイスに適応するように構成されたハウジング」に相当する。
引用発明の「周囲に、枠状に配置された」態様は、本願発明の「結合された」態様に相当する。
引用発明の「エネルギー放射装置」は、本願発明の「伝送器」に相当する。
引用発明の「振動エネルギー受信コイル310」は、本願発明の「無線電力を受け取るための手段」に相当する。
引用発明の「受信した振動エネルギーを」用いる態様は、本願発明の「無線で受け取ったエネルギーを使用して」に相当する。
引用発明の「電気二重層コンデンサ341」、「二次電池343」は、それぞれ、本願発明の「第1のエネルギー蓄積デバイス」、「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当する。
引用発明の「電気二重層コンデンサ341に電力として蓄える回路手段」と、本願発明の「第1のエネルギー蓄積デバイスと第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」とは、第1のエネルギー蓄積デバイスを充電する手段である点において共通する。
引用発明の「電気二重層コンデンサ341の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343をチャージする回路手段」と、本願発明の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送するとともに、前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」とは、第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送し、前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段である点において共通する。

したがって、両者は、
「デバイスであって、
電子デバイスに適応するように構成されたハウジングに結合された、伝送器から無線電力を受け取るための手段と、
前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段と、
前記第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送し、前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段と、
を備えるデバイス。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
〔相違点1〕
伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段に関し、本願発明は「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」であるのに対し、引用発明は、エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーを電気二重層コンデンサ341に電力として蓄える回路手段である点。

〔相違点2〕
第1のエネルギー蓄積デバイスから第2のエネルギー蓄積デバイスへエネルギーを輸送することに関し、本願発明は「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると」エネルギーを輸送するものであるのに対し、引用発明は、このような特定が無い点、また、第2のエネルギー蓄積デバイスを充電することに関し、本願発明は「伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用する」ものであるのに対し、引用発明には、そのような特定が無い点。

〔相違点3〕
本願発明は「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの前記充電レベルが前記第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段」を備えるのに対し、引用発明は、そのような手段を有していない点。

(4-4)判断
相違点1について検討する。
引用発明は、エネルギー放射装置(「伝送器」に相当)から受信した振動エネルギーを、電気二重層コンデンサ341(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)に電力として蓄え、その電力で二次電池343(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)を充電するものであるから、エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーを使用して、電気二重層コンデンサ341と二次電池343とを充電するものである。
したがって、引用発明の「エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーを電気二重層コンデンサ341に電力として蓄える回路手段と、電気二重層コンデンサ341の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343をチャージする回路手段」は、実質的に本願発明の「前記伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して第1のエネルギー蓄積デバイスおよび第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」に相当し、相違点1は実質的な相違ではない。

相違点2について検討する。
引用発明の二次電池343(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)にチャージされるエネルギーは、エネルギー放射装置から受信した振動エネルギーであるといえる。
そうすると、引用発明の「二次電池343をチャージする回路手段」には、本願発明の「伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用」することを含むものであり、引用発明の「二次電池343をチャージする回路手段」は、本願発明の「伝送器から無線で受け取ったエネルギーを使用して前記第2のエネルギー蓄積デバイスを充電するための手段」に相当し、実質的な相違ではない。

引用発明は、エネルギー放射装置(「伝送器」に相当)から受信した振動エネルギーを電気二重層コンデンサ341(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)に電力として蓄える際、電気二重層コンデンサ341の電圧は零から徐々に上昇してゆくから、あるレベルに到達した時点で、電気二重層コンデンサ341の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)をチャージする(「エネルギーを輸送する」に相当)という動作が開始されるものといえる。
第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルがあるレベルに到達した時点でエネルギーを輸送する動作が開始されることは、例えば、引用例2において「太陽電池1が発生した電流I_(P) 」を受け取り充電を行う際に、「コンデンサ3(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)の端子電圧V_(C)(「充電レベル」に相当)が設定の第1の電圧V_(1)(「第1の閾値レベル」に相当)を越えると、発振回路5が発振を開始し、コンデンサ3に蓄積された電力が昇圧され、バッテリ11(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)に移送される(「エネルギーを輸送する」に相当)」ことが記載され、また、引用例3には「太陽電池モジュール1」の発電したエネルギーを受け取り充電を行う際に、「電気二重層キャパシタ5(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)の充電電圧Vedlc(「充電レベル」に相当)が閾値電圧VH(「第1の閾値レベル」に相当)に到達すると、ゲートスイッチ82がオン状態となってリチウムイオン二次電池92(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)に対する充電動作が開始(「エネルギーを輸送する」に相当)される」ことが記載されているように周知の技術であるといえる。
したがって、引用発明に、例えば、引用例2、3に記載されているような周知の技術を適用することで、本願発明の「前記第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベルに到達すると」エネルギーを輸送することは、当業者が容易に想到し得たものである。

相違点3について検討する。
引用発明は、電気二重層コンデンサ341(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)の出力を変換し、電圧を調整する電圧調整器342を介して二次電池343(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)をチャージする(「エネルギーを輸送する」に相当)と、電気二重層コンデンサ341の電圧は低下してゆき、チャージを継続することはできなくなるから、所定の時点でエネルギーの輸送を終了する必要が生じるものといえる。
所定の時点でエネルギーの輸送を終了することは、例えば、引用例2には「コンデンサ3(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)の端子電圧V_(C)(「充電レベル」に相当)が所定の第2の電圧V_(2)(V_(2)<V_(1))を下まわる(「第1の閾値レベル未満に降下」に相当)と、発振回路5の発振が停止し、コンデンサ3からバッテリ11(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)への電力の移送が停止する(「エネルギーの輸送を終了する」に相当)」ことが記載され、また、引用例3には「電気二重層キャパシタ5(「第1のエネルギー蓄積デバイス」に相当)の充電電圧Vedlc(「充電レベル」に相当)が降下して閾値電圧VLに到達する(「第1の閾値レベル未満に降下」に相当)と、ゲートスイッチ82がオフ状態となり、リチウムイオン二次電池92(「第2のエネルギー蓄積デバイス」に相当)への充電動作が停止する(「エネルギーの輸送を終了する」に相当)」ことが記載されているように、周知の技術である。
したがって、引用発明に、引用例2、3に記載されているような周知の技術を適用することで、本願発明の「第1のエネルギー蓄積デバイスの充電レベルが第1の閾値レベル未満に降下すると、前記第1のエネルギー蓄積デバイスから前記第2のエネルギー蓄積デバイスへのエネルギーの輸送を終了するための手段」を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用例2、3に記載される技術に基いて当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載される技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)むすび
したがって、請求項1-29の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項10に係る発明は、引用発明及び引用例2、3に記載される技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-04 
結審通知日 2017-08-07 
審決日 2017-08-18 
出願番号 特願2012-515203(P2012-515203)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 572- WZ (H02J)
P 1 8・ 575- WZ (H02J)
P 1 8・ 561- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 121- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 矢島 伸一
遠藤 尊志
発明の名称 無線電力を輸送するためのデバイスおよびその動作方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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