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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1336861
審判番号 不服2017-6954  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-15 
確定日 2018-02-20 
事件の表示 特願2015-519957「判定システム及び判定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日国際公開、WO2014/192912、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月30日(優先権主張 平成25年5月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月6日付けで拒絶査定されたところ、同年5月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-6、9-12に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、本願請求項7-8に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、それぞれ、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2012/074112号
2.国際公開第2010/150526号
3.特開2000-146696号公報
4.特開2004-005169号公報
5.特開2003-166696号公報
6.特開平09-068489号公報

第3 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成29年5月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1については、以下のとおり、当審にて分説し、A)?M)までの見出しを付した。

「【請求項1】
A)判定対象の液状体の状態を判定する判定システムにおいて、
B)前記液状体が入る検査部、前記検査部に対し検出光を出射する発光素子、及び前記液状体を透過した前記検出光の色情報を検出する色検出部を有する光学センサと、
C)前記光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の色成分差を演算する色成分差演算部と、
D)前記光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の明度を演算する明度演算部と、
E)前記色成分差及び前記明度に応じて前記液状体の状態を分けた判定データを、前記液状体の種類に応じて少なくとも一つ記憶する判定データ記憶部と、
F)前記液状体が適用される対象物又は該対象物の利用者を識別する識別情報、及び該識別情報に関連付けられ前記対象物に適用された液状体の種類を示す種類情報を記憶する属性情報記憶部と、
G)判定対象の前記液状体の種類を特定する種類特定部と、
H)判定対象の前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、選択した前記判定データ、及び判定対象の液状体の前記色成分差及び前記明度に基づき、前記判定対象の液状体の状態を判定する判定部と、
I)判定結果を出力する出力部と、
J)前記光学センサ、前記識別情報を入力する入力部、判定結果である前記液状体の状態を出力する前記出力部を有する判定装置と、
K)前記判定装置とネットワークを介して接続され、前記判定装置を介して登録された前記識別情報及び前記種類情報を記憶する前記属性情報記憶部、前記判定データ記憶部、前記種類特定部、前記判定部を有する属性情報サーバと、を備え、
L)前記種類特定部は、
前記属性情報記憶部に記憶された前記識別情報に関連付けられた前記種類情報から判定対象となる前記液状体の種類を特定し、
M)前記判定部は、
特定された前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、該判定データを用いて、前記判定対象の液状体の状態を判定する判定システム。」

なお、本願発明2-10の概要は以下のとおりである。

本願発明2-7は、本願発明1をさらに減縮した発明である。

本願発明8は、本願発明1の「判定対象の液状体の状態を判定する」を「機械の潤滑油の劣化状態を判定する」とした「判定システム」についての発明である。

本願発明9-10は、それぞれ、本願発明1、8に対応する方法の発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。

(引1a)「[0029] 減速機131は、減速機本体132と、減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサ137aおよび潤滑油劣化センサ137bとを備えている。
・・・
[0033] 潤滑油劣化センサ137a及び潤滑油劣化センサ137bは、ケース133に固定されている。潤滑油劣化センサ139aは、アーム112に固定されている。潤滑油劣化センサ139bは、アーム113に固定されている。
[0034] 図3は、潤滑油劣化センサ139aの正面図である。図4は、アーム112に取り付けられた状態での潤滑油劣化センサ139aの正面断面図である。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
[0035] 図3および図4に示すように、潤滑油劣化センサ139aは、潤滑油劣化センサ139aの各部品を支持するアルミニウム合金製の支持部材20と、支持部材20にネジ11によって固定されたアルミニウム合金製のホルダ30と、ホルダ30に保持された隙間形成部材40と、支持部材20にネジ12によって固定された回路基板51を備えている電子部品群50と、支持部材20にネジ13によって固定されたアルミニウム合金製のカバー60とを備えている。
[0036] 隙間形成部材40は、2つのガラス製の直角プリズム41、42によって構成されており、潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40aが2つの直角プリズム41、42の間に形成されている。
[0037] 電子部品群50は、回路基板51に実装された白色LED52と、回路基板51に実装されたRGBセンサ53と、回路基板51に対して白色LED52およびRGBセンサ53側とは反対側に配置された回路基板54と、回路基板51および回路基板54を固定する複数本の柱55と、回路基板54に対して回路基板51側とは反対側に配置された回路基板56と、回路基板54および回路基板56を固定する複数本の柱57と、回路基板54側とは反対側に回路基板56に実装されたコネクタ58とを備えている。回路基板51、回路基板54および回路基板56は、複数の電子部品が実装されている。また、回路基板51、回路基板54および回路基板56は、互いに電気的に接続されている。」

(引1b)「[0069] 次に、潤滑油劣化センサ139aの動作について説明する。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
[0070] 潤滑油劣化センサ139aは、コネクタ58を介して外部の装置から供給される電力によって白色LED52から白色の光を発する。
[0071] そして、潤滑油劣化センサ139aは、RGBセンサ53によって受けた光のRGBの各色の光量を電気信号としてコネクタ58を介して外部の装置に出力する。
・・・
[0073] 以上に説明したように、潤滑油劣化センサ139aなどの各潤滑油劣化センサは、白色LED52によって発せられた白色の光のうち油用隙間40aにおいて潤滑油131a中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、RGBセンサ53によって色を検出するので、減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の色を即時に検出することができる。つまり、各潤滑油劣化センサは、RGBセンサ53によって検出した色に基づいて減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量をコンピュータなどの外部の装置によって即時に特定可能にすることができる。したがって、減速機131などの各減速機および産業用ロボット100は、即時の故障の予知を可能にすることができる。なお、各潤滑油劣化センサは、RGBセンサ53によって検出した色に基づいて潤滑油中の汚染物質の種類および量を特定する電子部品が電子部品群50に含まれていても良い。」

(引1c)図4は、以下のようなものである。


(2)引用文献1に記載された発明
上記(引1a)-(引1b)の下線部の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
なお、引用発明の認定の根拠となった対応する段落番号等を付記した。

「減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサを備えるシステムであって([0029])、
潤滑油劣化センサ139aは、
潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40aが形成され([0036])、
白色LED52と、RGBセンサ53と、コネクタ58とを備え([0037])、
白色LED52によって発せられた白色の光のうち油用隙間40aにおいて潤滑油131a中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、RGBセンサ53によって色を検出し([0073])、
RGBセンサ53によって受けた光のRGBの各色の光量を電気信号としてコネクタ58を介して外部の装置に出力し([0071])、
RGBセンサ53によって検出した色に基づいて減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量をコンピュータなどの外部の装置によって即時に特定可能にすることができる([0073])
システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、その段落[0058]-[0067]及び図3の記載からみて、「カラーセンサによって検出された、透過光の各色成分(RGB値)を用いて、最大色差を演算するステップS116と、ΔE_(RGB)を演算するステップS118と、油の劣化の状態を、S116とS118との演算結果に基づき、判定するステップS120と、S120の判定において、制御装置は、S116で取得した最大色差と、S118で取得したΔE_(RGB)とを複合的に用いて、油の劣化の状態を判定するものであり、制御装置は、S120での判定結果に基づき、色情報および判定結果を、モニタに表示する、油状態監視装置」という技術的事項が記載されている。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の記載がある。

(引3a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等に使用するオイル・LLC等に白色光源から光を照射し、透過した光の色を数値化して、その数値を予め設定した閾値と比較することでオイル・LLC等が劣化しているかどうかを判定する装置に関する。
・・・
【0004】したがって、上記のようにオイルによって含まれている添加剤の量が異なるという点を考慮すれば、一般の自動車オーナー・カーショップ等にとっては、オイルの色に着目する方法がオイルに対するすす・劣化物・異物等の混入状態や、全体的な劣化度合を判断するのに有効である。しかし、従来よりあるオイルの色から劣化を判定する装置では、測定誤差につながる受光素子感度のばらつき・光源輝度のばらつき・経年劣化といった因子をキャンセルすることができず、オイルの色を客観的かつ正確に判定することができなかった。」

(引3b)「【0015】次に本発明実施例による「測定モード」の動作について、第2図のフローチャートをもとに説明する。劣化判定を行うオイル等の試料を試料セル4に収容した上で試料セルホルダー5にセットし、操作部13において測定モードを選択し、これから測定を行う試料の種類(ガソリン車エンジンオイル・ディーゼル車エンジンオイル・LLC・ATF)を入力すると、測定モードが実行される。白色光源1を発光させ(S11)、測定光路2において試料の透過光を検出して得られるRGB受光素子出力Vr・Vg・Vbと、参照光路3で白色光源1の光を直接検出して得られるRGB受光素子出力Vrr・Vgg・Vbbとをそれぞれ記憶する(S12)。次に前記数式1を用いてRGBデータを求め、さらにそのR・G・Bデータをもとに周知の変換式を用いて三刺激値X・Y・Zに変換する(S13)。そして、得られた三刺激値X・Y・Zを周知の変換式を用いてL*a*b*表色系に変換し、明度L*と色相角h*とを求める(S14)。次に、現在測定している試料がエンジンオイルであるか否かを判断し(S15)、エンジンオイルであれば引き続きガソリン車であるか否かを判断する(S16)。もし試料がガソリン車に使用したエンジンオイルであれば、S14で求めた明度L*および色相角h*の値が予め設定したガソリン車のしきい値以上か否か判定し(S17,S18)、しきい値以下であったら劣化状態にあると判定してオイル交換が必要であることを表示部17に表示し(S19)、同時にプリンター16から判定結果を印字して(S20)終了する。
【0016】試料がディーゼル車に使用したエンジンオイルであれば、S16の次にS21,S22を実行し、明度L*および色相角h*の値を予め設定したディーゼル車のしきい値と照らし合わせて劣化状態を判定する。
【0017】試料がLLCであれば、S15の次にS23,S24,S25を実行し、明度L*および色相角h*の値を予め設定したLLCのしきい値と照らし合わせて劣化状態を判定する。
【0018】試料がATFであれば、S15の次にS23,S26,S27を実行し、明度L*および色相角h*の値を予め設定したATFのしきい値と照らし合わせて劣化状態を判定する。
・・・
【0020】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、自動車から抜き取ったオイル等の試料を試料セルに収め、白色光源から照射されて試料セルを透過した光をRGB受光素子で検出し、検出したRGBそれぞれの電気信号を色彩表色系に置き換えて、その明度および色相角からオイル等が劣化状態にあるか否かを判定することができる。したがって人間の感覚や勘に頼らない客観的かつ定量的な劣化判定が行える。」

(引3c)図3は、以下のようなものである。


4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、その段落[0047]、[0052]及び図1、3の記載からみて、「営業所2の問診者PDA9とインターネットを介して接続されている車両問診装置3の問診履歴データベースであって、自動車14の種類を識別する車種31の情報に関連付けられて、当該自動車14に対する問診結果32、故障原因33、修理内容34の情報が記録されている、問診履歴データベース」という技術的事項が記載されている。

5 引用文献5-6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、その段落[0002]-[0003]の記載からみて、「潤滑油等の潤滑剤の劣化状態を検査する手法として、水分量の測定や金属の定量を行なう」という技術的事項が記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、その段落[0002]の記載からみて、「潤滑油の品質監理のために、微粒子、水分等の項目についての測定を行なう場合がある」という技術的事項が記載されている。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア A)について
引用発明の「減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサを備えるシステム」は、引用発明の「減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出する」ことが本願発明1の「判定対象の液状体の状態を判定する」ことに相当するから、本願発明1の「判定対象の液状体の状態を判定する判定システム」に相当する。

イ B)について
引用発明の「潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40a」、「白色LED52」及び「RGBセンサ53」は、「白色LED52によって発せられた白色の光のうち油用隙間40aにおいて潤滑油131a中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、RGBセンサ53によって色を検出」するものであるから、それぞれ、本願発明1の「前記液状体が入る検査部」、「前記検査部に対し検出光を出射する発光素子」及び「前記液状体を透過した前記検出光の色情報を検出する色検出部」に相当する。
したがって、引用発明の「潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40a」、「白色LED52」及び「RGBセンサ53」を有する「潤滑油劣化センサ」は、本願発明1の「前記液状体が入る検査部、前記検査部に対し検出光を出射する発光素子、及び前記液状体を透過した前記検出光の色情報を検出する色検出部を有する光学センサ」に相当する。

ウ C)-D)について
引用発明の「RGBセンサ53によって受けた光のRGBの各色の光量」は、本願発明1の「前記光学センサから出力された検出値」に相当する。
したがって、引用発明の「RGBセンサ53によって検出した色に基づいて減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量を」「特定」する「コンピュータなどの外部の装置」と、本願発明1の「前記光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の色成分差を演算する色成分差演算部と、前記光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の明度を演算する明度演算部」とは、「光学センサから出力された値に基づき」演算を行なうものである点で共通する。

エ E)、F)について
引用発明の「コンピュータなどの外部の装置」が、ROMやRAMなどの何らかの「記憶部」を備えていることは明らかである。
したがって、引用発明の「コンピュータなどの外部の装置」を備えるシステムと、本願発明1の「前記色成分差及び前記明度に応じて前記液状体の状態を分けた判定データを、前記液状体の種類に応じて少なくとも一つ記憶する判定データ記憶部と、前記液状体が適用される対象物又は該対象物の利用者を識別する識別情報、及び該識別情報に関連付けられ前記対象物に適用された液状体の種類を示す種類情報を記憶する属性情報記憶部」を備えるシステムとは、「記憶部」を備えている点で共通する。

オ H)、M)について
引用発明の「減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量を」「特定」ことは、それによって、引用発明は「減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出する」のであるから、本願発明1の「前記判定対象の液状体の状態を判定する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量を」「特定」する「コンピュータなどの外部の装置」と、本願発明1の「判定対象の前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、選択した前記判定データ、及び判定対象の液状体の前記色成分差及び前記明度に基づき、前記判定対象の液状体の状態を判定する判定部」であって「特定された前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、該判定データを用いて、前記判定対象の液状体の状態を判定する」「判定部」とは、「判定対象の液状体の状態を判定する」ものである点で、共通する。

カ K)について
引用発明の「コンピュータなどの外部の装置」は、「コネクタ58を介して」「潤滑油劣化センサ」に接続されていることは明らかである。
したがって、引用発明の「コンピュータなどの外部の装置」と、本願発明1の「前記判定装置とネットワークを介して接続され、前記判定装置を介して登録された前記識別情報及び前記種類情報を記憶する前記属性情報記憶部、前記判定データ記憶部、前記種類特定部、前記判定部を有する属性情報サーバ」とは、「前記判定装置と接続され、前記記憶部を有する外部の装置」である点で共通する。

キ 上記ア-カから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。

(一致点)
「判定対象の液状体の状態を判定する判定システムにおいて、
前記液状体が入る検査部、前記検査部に対し検出光を出射する発光素子、及び前記液状体を透過した前記検出光の色情報を検出する色検出部を有する光学センサと、
記憶部と、
前記判定装置と接続され、前記記憶部を有する外部の装置とを備え、
前記光学センサから出力された検出値に基づき、判定対象の液状体の状態を判定する
判定システム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の色成分差を演算する色成分差演算部」と、「前記光学センサから出力された検出値に基づき、前記液状体の明度を演算する明度演算部と」を備えるのに対し、引用発明は、「RGBセンサ53によって受けた光のRGBの各色の光量」から「色成分差」及び「明度」を演算しているのか不明である点。
(相違点2)本願発明1は、「前記色成分差及び前記明度に応じて前記液状体の状態を分けた判定データを、前記液状体の種類に応じて少なくとも一つ記憶する判定データ記憶部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような「判定データ」を利用するものであるか否かが不明である点。
(相違点3)本願発明1は、「前記液状体が適用される対象物又は該対象物の利用者を識別する識別情報、及び該識別情報に関連付けられ前記対象物に適用された液状体の種類を示す種類情報を記憶する属性情報記憶部と、判定対象の前記液状体の種類を特定する種類特定部と、判定対象の前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、選択した前記判定データ、及び判定対象の液状体の前記色成分差及び前記明度に基づき、前記判定対象の液状体の状態を判定する判定部と」を備え、「前記種類特定部は、前記属性情報記憶部に記憶された前記識別情報に関連付けられた前記種類情報から判定対象となる前記液状体の種類を特定し」、「前記判定部は、特定された前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択し、該判定データを用いて」、判定対象の液状体の状態を判定するのに対し、引用発明は、具体的な判定手法が不明である点。
(相違点4)本願発明1は、「判定結果を出力する出力部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えるか否かが不明である点。
(相違点5)本願発明1は、「前記光学センサ、前記識別情報を入力する入力部、判定結果である前記液状体の状態を出力する前記出力部を有する判定装置」を備えるのに対し、引用発明は、そのような装置を備えるか否かが不明である点。
(相違点6)本願発明1は、「前記判定装置とネットワークを介して接続され、前記判定装置を介して登録された前記識別情報及び前記種類情報を記憶する前記属性情報記憶部、前記判定データ記憶部、前記種類特定部、前記判定部を有する属性情報サーバ」を備えるのに対し、引用発明の「外部の装置」は、そのような構成を備えるか否かが不明である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
ア 引用文献2、4-6について
上記引用文献2、4-6には、「液状体の種類を特定」し「前記液状体の種類に応じて前記各判定データから少なくとも一つを選択」することに関する記載がない。
したがって、上記相違点3のその余の部分を検討するまでもなく、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献2、4-6の記載から導出されるものではない。

イ 引用文献3について
(ア)上記第4の3(引3b)の下線部及び図2の記載を総合すると、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されている。
「自動車から抜き取ったオイル等の試料を試料セルに収め、白色光源から照射されて試料セルを透過した光をRGB受光素子で検出し、検出したRGBそれぞれの電気信号を色彩表色系に置き換えて、その明度および色相角からオイル等が劣化状態にあるか否かを判定する方法又は装置であって、
これから測定を行う試料の種類(ガソリン車エンジンオイル・ディーゼル車エンジンオイル・LLC・ATF)を入力し、
現在測定している試料の種類を判断し、
試料の種類に対応してそれぞれ予め設定されたしきい値と、求めた明度L*および色相角h*の値を照らし合わせて劣化状態を判定し、
劣化状態にあると判定したら、オイル交換が必要であることを表示部16及びプリンター16に出力する、方法又は装置。」

(イ)しかしながら、引用文献3に記載された技術的事項における「これから測定を行う試料の種類(ガソリン車エンジンオイル・ディーゼル車エンジンオイル・LLC・ATF)」は、それ自身が「入力」されるものであるから、引用文献3に記載された技術的事項における「現在測定している試料の種類を判断」することが、「液状体が適用される対象物又は該対象物の利用者を識別する識別情報」「に関連付けられ前記対象物に適用された液状体の種類を示す種類情報を記憶する属性情報記憶部」を有し「前記属性情報記憶部に記憶された前記識別情報に関連付けられた前記種類情報から判定対象となる前記液状体の種類を特定」することであるとはいえない。
また、上記引用文献3に記載された技術的事項は、「試料の種類に対応してそれぞれ予め設定されたしきい値と、求めた明度L*および色相角h*の値」に基づいて判定するものであって、L*a*b*表色系における色相角h*は「色成分差」とは異なるパラメータであるから、「前記判定データ及び判定対象の液状体の前記色成分差及び前記明度に基づき」判定するものであるとはいえない。
したがって、上記相違点3のその余の部分を検討するまでもなく、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献3の記載事項から導出されるものではない。

なお、引用発明の「潤滑油劣化センサ」は、減速機本体のアームやケースに封入されている潤滑油の劣化判定を目的として減速機本体のアームやケースに固定して設けられるものであって(上記第4の1(1)(引1a)で摘記した[0033]段落を参照。)、引用文献3記載の技術的事項のように、試料セルに収容される種々の油の劣化判定を目的とするものではないため、引用発明に対して、試料の種類に対応したそれぞれのしきい値を予め設定するという引用文献3に記載された技術的事項を採用する動機もない。

エ 小括
上記ア-ウから、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2-6の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到しえたものであるとはいえない。

(3) まとめ
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6の記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7は、本願発明1の上記相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2-6の記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明8-10について
本願発明8-10は、本願発明1の上記相違点3に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2-6の記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-05 
出願番号 特願2015-519957(P2015-519957)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
松岡 智也
発明の名称 判定システム及び判定方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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