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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1337347
審判番号 不服2016-18861  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-15 
確定日 2018-02-08 
事件の表示 特願2014-238771号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 37705号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年1月24日に出願した特願2008-13907号の一部を、平成25年7月10日に新たに出願し(特願2013-144610号)、さらに、その一部を平成26年11月26日に新たに特許出願したものであって、平成27年9月3日付けで手続補正がなされ、平成27年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月3日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出されたところ、平成28年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成28年12月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされ、当審において平成29年7月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月6日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出されたものである。

第2 本願の請求項1に係る発明
平成29年10月6日付けの手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。なお、A?Mは本願発明の構成を分説するため当審で付した。

「【請求項1】
A 画像が表示される表示画面を有し、該表示画面が遊技機正面視で遊技者に視認可能となる画像表示手段と、
B 表示物を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であって前記画像表示手段に表示される画像を視認可能な透過性表示手段と、
C 前記透過性表示手段の背後に配置され且つ当該透過性表示手段を透過して視認可能に配置される演出用役物と、を備えた遊技機において、
D 前記透過性表示手段は、前記演出用役物を視認可能な状態において前記表示物を表示可能に構成されており、
E 前記画像表示手段は、前記画像表示手段で所定の演出を行う第1の位置と、当該第1の位置から前記画像表示手段を移動させて前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行う第2の位置とに、前記画像表示手段を移動可能な駆動手段と、
F 前記第2の位置に移動した前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させて、前記透過性表示手段の前記表示物との位置関係を変化可能な変位手段と、を有し、
G 前記演出用役物は、前記変位手段が前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させる態様とは異なる態様での変化が可能であって、
H 前記遊技機は、前記演出用役物の変化に合わせて、前記変位手段が前記画像表示手段を変位させるか、又は、前記画像表示手段が前記画像を変化させるかの少なくともいずれか一つを行うものであり、
I 前記演出用役物の明るさを変化させる発光手段と、
J 前記演出用役物を支持する支持手段と、
K 前記支持手段を移動可能な支持駆動手段と、を備え、
L 前記変位手段は、複数段階に変位可能である
M ことを特徴とする遊技機。」

第3 当審の平成29年7月27日付け拒絶理由の概要
当審の平成29年7月27日付けの拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、本願遡及日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その遡及日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2006-158721号公報
刊行物2:特開平04-170982号公報
刊行物3:特開2006-158720号公報

第4 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
当審の拒絶理由で引用された刊行物1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0019】
灰皿部170は、煙草の吸殻を入れるための容器であり、メダル受皿156の内側にネジ止めされている。音孔171はスロットマシン100内部に設けられているスピーカの音を外部に出力するための孔である。上部ランプ151、サイドランプ152、中央ランプ153、腰部ランプ154、下部ランプ155、受皿ランプ156は、遊技を盛り上げるための装飾用のランプである。タイトルパネル140はそのスロットマシンの機種名や各種のデザインが描かれるパネルであり、リールパネル141は絵柄表示窓113を有するパネルである。スロットマシン100の上部には演出ユニットAが設けられている。演出ユニットAの正面には演出ユニットAを保護する透明板180が設けられている。以下、演出ユニットAの構成について説明する。
【0020】
<演出ユニット>
次に、図1乃至図4を参照して演出ユニットAの構成について説明する。演出ユニットAは画像表示装置である液晶表示装置(以下、LCDという)10と、ハーフミラー20と、を備える画像表示ユニットを構成している。演出ユニットAは収納部1を有する。収納部1はその天井部、一対の側部、背部及び底部を構成する、天板1a、一対の側板1b、背板1c及び底板1dを備え、正面が開放した中空の略直方体形状をなしており、その内部にLCD10やハーフミラー20等が収納されている。収納部1の正面にはシャッタユニット50が設けられており、これはLCD10及びハーフミラー20による表示画像を視認者から遮蔽可能な遮蔽手段として機能する。詳細は後述する。
【0021】
LCD10は表示画面11に電子画像を表示可能な画像表示装置である。本実施形態ではLCDを採用するが他の種類の画像表示装置でもよい。LCD10の上面にはコネクタ部10aが形成されており、LCD10の表示制御回路のケーブルが天板1aに設けられた穴1a’を通してここに接続されることになる。LCD10の左右側面にはそれぞれ軸12が設けられており、この軸12は側板1bに設けられた軸受け1b’に軸支される。LCD10は軸12及び軸受け1b’を介して側板1bに支持されている。
・・・
【0023】
モータ30の駆動によるLCD10の回動により、LCD10は図2に示す第1の位置と、図4に示す第2の位置との間で移動する。図3はLCD10の移動途中を示している。図2に示す第1の位置においてLCD10はその表示画面11が略垂直な状態にあり、収納部1の正面に露出した状態にある。この第1の位置は、ハーフミラー20がLCD10の背後に隠れる位置であり、演出ユニットAの表示面はLCD10の表示画面11となる。換言すれば、LCD10が直接的な表示主体となる。
・・・
【0025】
次に、ハーフミラー20について説明する。ハーフミラー20は例えば光の透過率が50%程度のミラーであり、本実施形態の場合、支持体21により水平面から略45度の角度で支持されている。図2に示すようにLCD10が第1の位置にある時に演出ユニットAを正面から見ると、LCD10→ハーフミラー20の順に並んで配設されており、ハーフミラー20がLCD10の存在により隠れるように配設されている。」

(イ)「【0030】
支持体21の底板1d表面には更にボールネジ42に螺合するボールナットを有するボールナット部材21eが底板1dの中央前後端部にそれぞれ設けられている。しかして、モータ40を回転させるとボールネジ42が回転し、これによって支持体21及びハーフミラー20が演出ユニットAの奥行き方向に平行移動することになる。つまり、モータ40とボールネジ42並びにボールナット部材21eはハーフミラー20の移動手段として機能する。そして、ハーフミラー20は図4に示す表示位置と、図3に示す退避位置との間で移動する。
・・・
【0032】
さて、係る構成からなる演出ユニットAの画像表示態様について図6(a)及び(b)を参照して説明する。図6(a)は演出ユニットAによる3次元画像の表示原理の説明図であり、同図の右側の図は演出ユニットAの要部を側方から見た図であり、同図の左側の図はLCD10が第2の位置にあるときに遊技者から見える表示画像を示している。なお、同図の例では支持体21内に被合成物として立体物X1が配設されている。立体物X1は山を模した模型である。
【0033】
さて、図6(a)を参照して、LCD10が同図の破線の位置(第1の位置)にある場合、上述した通り、LCD10の表示画面11が収納部1の正面に露出した状態にあり、遊技者からは表示画面11は見えるが、ハーフミラー20や支持体21はLCD10の背後に隠れて見えない。演出ユニットAからはLCD10による2次元画像が遊技者に提示されることになる。
【0034】
一方、LCD10が同図の実線の位置(第2の位置)にある場合、LCD10の表示画面11は略水平となるので遊技者からは表示画面11が直接見えない。そして、LCD10からハーフミラー20に投影された画像(虚像)が遊技者に提示されることになる。この虚像は同図に示すように遊技者から見ると、ハーフミラー20の背後に浮かんでいるように見え、立体的感のある、3次元的な画像となる。虚像の位置はLCD10とハーフミラー20との間の距離(L1、L2)とLCD10とハーフミラー20との間の角度(本例では略45度)とによって定まり、本実施形態の場合、ハーフミラー20から奥行き方向にL1、L2だけ離れた位置に虚像が見えることになる。
【0035】
また、図6(a)の例ではハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X1が配置されている。立体物X1は実像としてハーフミラー20を透過して遊技者から見えることになる。このため、同図の左に示す表示画像では、虚像(UFO)と立体物X1とが合成された合成画像となり、遊技者から見ると、虚像(UFO)→立体物X1の順にこれらが位置しているように見える。立体物X1の存在により奥行き感が高まり、より一層3次元的な画像となる。
・・・
【0037】
次に、本実施形態では上述した通りハーフミラー20を支持体21と共に演出ユニットAの奥行き方向(遊技者の視認方向)に平行移動することができる。そして、LCD10が第2の位置にある時、つまり、3次元画像の表示時にハーフミラー20の位置を移動すると虚像の位置が変化することになる。図6(b)は図6(a)の状態からハーフミラー20を後退させた態様を示す図である。ハーフミラー20の移動の前後において、LCD10により表示される画像の表示画面11上の位置が変化しない場合(破線LcはUFOの画像の中心位置を示す。)、図6(b)に示すようにLCD10とハーフミラー20との間の距離(L3、L4)が変わるため、虚像の位置も変化することになる。
【0038】
図6(b)の例ではハーフミラー20を後退させているので、同図左に示すように表示画面上の虚像の位置は下方に下がることになる。また、虚像の位置と立体物X1とはハーフミラー20の後退と伴って後退し、UFOの虚像と立体物X1の実像との双方が後退して見える。UFOの虚像の大きさは変わらないので、遊技者から見るとUFOの虚像と立体物X1により示される山の実像との双方が遠ざかり、かつ、UFOの虚像が下降しながら山に少し近づいていくように見えることになる。」

(ウ)「【0117】
<演出ユニットAによる合成画像表示例>
次に図24を参照して、3次元画像の表示時のハーフミラー20の移動による合成画像の他の例について説明する。図6(a)及び(b)を参照して上述した例ではハーフミラー20を後退させることによりUFOの虚像と立体物X1により示される山とが後退し、かつ、UFOの虚像が下降しながら山に少し近づいていくように見せるものであったが、LCD10により表示される画像の表示画面11上の位置を変化させることで、遊技者に見えるUFOの虚像が同じ高さで後退するように見せることもできる。図24(a)及び(b)はその説明図であり、図24(b)は図24(a)の状態からハーフミラー20を後退させた態様を示す図である。」

(エ)「【0123】
この結果、図25(b)の左に示すように遊技者から見える3次元画像はUFOが立体物X1で示される山へ真っ直ぐと遠ざかっているように見える。図25(b)の右に示すように虚像の位置が後退し、かつ、UFOの虚像が縮小するので、より遠近感が強くなり、虚像の位置の後退感が強くなる。LCD10からハーフミラー20に投影する画像を、ハーフミラー20の移動に伴って変化させることで(本例ではハーフミラー20の後退に伴って画像の表示位置を徐々に変化させ、かつ、画像を徐々に縮小していく。)、虚像であるUFOが飛び去っていく様子をよりリアルに表現できる。また、これとは逆にハーフミラー20を前進させ、UFOの画像を拡大すれば、つまり、図25(b)→図25(a)と推移させれば、UFOが遊技者に迫ってくるような3次元画像を遊技者に提供できる。」

上記(ア)?(エ)の記載事項から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(e)、(g)、(h)、(j)、(k)、(m)は、本願発明の構成A?E、G、H、J、K、Mに対応した事項を示している。

(a)上記(ア)の【0021】に「LCD10は表示画面11に電子画像を表示可能な画像表示装置である。」と記載され、上記(イ)の【0033】に「LCD10が同図の破線の位置(第1の位置)にある場合、上述した通り、LCD10の表示画面11が収納部1の正面に露出した状態にあり、遊技者からは表示画面11は見える」と記載されている。
したがって、刊行物1には、電子画像を表示可能な表示画面11を有し、該表示画面11が収納部1の正面に露出した状態では、遊技者から該表示画面11が見えるLCD10が記載されているといえる。

(b)上記(イ)の【0035】に「ハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X1が配置されている。立体物X1は実像としてハーフミラー20を透過して遊技者から見えることになる。このため、同図の左に示す表示画像では、虚像(UFO)と立体物X1とが合成された合成画像となり、遊技者から見ると、虚像(UFO)→立体物X1の順にこれらが位置しているように見える。」と記載されているから、立体物X1(実像)を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であるハーフミラー20が記載されているといえる。
また、【0034】に「LCD10からハーフミラー20に投影された画像(虚像)が遊技者に提示されることになる。」と記載されているから、LCD10に表示される画像(虚像)を遊技者に提示するハーフミラー20が記載されているといえる。
したがって、刊行物1には、立体物X1(実像)を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であってLCD10に表示される画像(虚像)を遊技者に提示するハーフミラー20が記載されているといえる。

(c)上記(ア)の【0019】に「スロットマシン100の上部には演出ユニットAが設けられている。」、【0020】に「演出ユニットAは画像表示装置である液晶表示装置(以下、LCDという)10と、ハーフミラー20と、を備える画像表示ユニットを構成している。」と記載され、上記(イ)の【0032】に「立体物X1は山を模した模型である。」、【0035】に「ハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X1が配置されている。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、ハーフミラー20の背後に配置され、当該ハーフミラー20を透過して遊技者から見える山を模した模型である立体物X1と、を備えたスロットマシン100が記載されているといえる。

(d)上記(イ)の【0035】に「ハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X1が配置されている。立体物X1は実像としてハーフミラー20を透過して遊技者から見えることになる。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、ハーフミラー20は、当該ハーフミラー20を透過して立体物X1の実像が遊技者から見えるように構成されていることが記載されているといえる。

(e)上記(ア)の【0023】に「第1の位置においてLCD10はその表示画面11が略垂直な状態にあり」、と記載され、上記(イ)の【0033】に「LCD10が同図の破線の位置(第1の位置)にある場合、上述した通り、LCD10の表示画面11が収納部1の正面に露出した状態にあり、遊技者からは表示画面11は見えるが、ハーフミラー20や支持体21はLCD10の背後に隠れて見えない。演出ユニットAからはLCD10による2次元画像が遊技者に提示されることになる。」、【0034】に「LCD10が同図の実線の位置(第2の位置)にある場合、LCD10の表示画面11は略水平となるので遊技者からは表示画面11が直接見えない。そして、LCD10からハーフミラー20に投影された画像(虚像)が遊技者に提示されることになる。」と記載されているから、刊行物1には、LCD10が、その表示画面11が略垂直な状態にあり、当該状態において遊技者からは当該LCD10の表示画面11は見えるが、ハーフミラー20は当該LCD10の背後に隠れて見えないため、LCD10による2次元画像が遊技者に提示される第1の位置と、LCD10が、その表示画面11が略水平な状態にあり、当該状態においてLCD10からハーフミラー20に投影された虚像が遊技者に提示される第2の位置とがあることが記載されているといえる。
また、上記(ア)の【0023】に「モータ30の駆動によるLCD10の回動により、LCD10は図2に示す第1の位置と、図4に示す第2の位置との間で移動する。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、LCD10が、その表示画面11が略垂直な状態にあり、当該状態において遊技者からは当該LCD10の表示画面11は見えるが、ハーフミラー20は当該LCD10の背後に隠れて見えないため、LCD10による2次元画像が遊技者に提示される第1の位置と、LCD10が、その表示画面11が略水平な状態にあり、当該状態においてLCD10からハーフミラー20に投影された虚像が遊技者に提示される第2の位置との間を、当該LCD10を回動させることにより移動させるモータ30が記載されているといえる。

(g)上記(ア)の【0025】に「ハーフミラー20は例えば光の透過率が50%程度のミラーであり、本実施形態の場合、支持体21により水平面から略45度の角度で支持されている。」と記載され、上記(イ)の【0037】に「ハーフミラー20を支持体21と共に演出ユニットAの奥行き方向(遊技者の視認方向)に平行移動することができる。」、【0038】に「ハーフミラー20を後退させているので、同図左に示すように表示画面上の虚像の位置は下方に下がることになる。また、虚像の位置と立体物X1とはハーフミラー20の後退と伴って後退し、UFOの虚像と立体物X1の実像との双方が後退して見える。UFOの虚像の大きさは変わらないので、遊技者から見るとUFOの虚像と立体物X1により示される山の実像との双方が遠ざかり、かつ、UFOの虚像が下降しながら山に少し近づいていくように見えることになる。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、立体物X1の実像は、ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させることで、遊技者から見ると、UFOの虚像とともに遠ざかるように見えることが記載されているといえる。

(h)上記(ア)の【0019】に「スロットマシン100」と記載され、上記(ウ)の【0117】に「LCD10により表示される画像の表示画面11上の位置を変化させることで、遊技者に見えるUFOの虚像が同じ高さで後退するように見せることもできる。」、上記(エ)の【0123】に「LCD10からハーフミラー20に投影する画像を、ハーフミラー20の移動に伴って変化させることで(本例ではハーフミラー20の後退に伴って画像の表示位置を徐々に変化させ、かつ、画像を徐々に縮小していく。)、虚像であるUFOが飛び去っていく様子をよりリアルに表現できる。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、スロットマシン100は、ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させ、かつ、画像を徐々に縮小していくことで、虚像であるUFOが飛び去っていく様子を表現できるものであることが記載されているといえる。

(j)上記(ア)の【0025】に「ハーフミラー20は例えば光の透過率が50%程度のミラーであり、本実施形態の場合、支持体21により水平面から略45度の角度で支持されている。」と記載され、上記(イ)の【0032】に「支持体21内に被合成物として立体物X1が配設されている。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、立体物X1がその内部に配設され、かつハーフミラー20を支持する支持体21が記載されているといえる。

(k)上記(イ)の【0030】に「支持体21の底板1d表面には更にボールネジ42に螺合するボールナットを有するボールナット部材21eが底板1dの中央前後端部にそれぞれ設けられている。しかして、モータ40を回転させるとボールネジ42が回転し、これによって支持体21及びハーフミラー20が演出ユニットAの奥行き方向に平行移動することになる。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、ハーフミラー20を支持する支持体21を移動させるモータ40、ボールネジ42及びボールナット部材21eが記載されているといえる。

(m)上記(ア)の【0019】に「スロットマシン100」と記載されているから、刊行物1には、スロットマシン100が記載されている。

したがって、上記(ア)?(エ)の記載事項および上記(a)?(e)、(g)、(h)、(j)、(k)、(m)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、次の発明が記載されている(以下、「刊行物1発明」という。a?e、g’、h、j、k、mは刊行物1発明を分説するため当審で付した。)。

「a 電子画像を表示可能な表示画面11を有し、該表示画面11が収納部1の正面に露出した状態では、遊技者から該表示画面11が見えるLCD10と、
b 立体物X1(実像)を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であってLCD10に表示される画像(虚像)を遊技者に提示するハーフミラー20と、
c ハーフミラー20の背後に配置され、当該ハーフミラー20を透過して遊技者から見える山を模した模型である立体物X1と、を備えたスロットマシン100において、
d ハーフミラー20は、当該ハーフミラー20を透過して立体物X1の実像が遊技者から見えるように構成され、
e LCD10が、その表示画面11が略垂直な状態にあり、当該状態において遊技者からは当該LCD10の表示画面11は見えるが、ハーフミラー20は当該LCD10の背後に隠れて見えないため、LCD10による2次元画像が遊技者に提示される第1の位置と、LCD10が、その表示画面11が略水平な状態にあり、当該状態においてLCD10からハーフミラー20に投影された虚像が遊技者に提示される第2の位置との間を、当該LCD10を回動させることにより移動させるモータ30を有し、
g’ 立体物X1の実像は、ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させることで、遊技者から見ると、UFOの虚像とともに遠ざかるように見え、
h スロットマシン100は、ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させ、かつ、画像を徐々に縮小していくことで、虚像であるUFOが飛び去っていく様子を表現できるものであり、
j 立体物X1がその内部に配設され、かつハーフミラー20を支持する支持体21と、
k ハーフミラー20を支持する支持体21を移動させるモータ40、ボールネジ42及びボールナット部材21eと、を備える
m スロットマシン100。」

(2)刊行物2
当審の拒絶理由で引用された刊行物2の第2頁右上欄第15行目-第3頁左上欄第19行目には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「4-aは、例えば発光色がブルーグリーンの蛍光表示管VFDによりその表示パターンは第2図a、bに示す如く、7セグメント数字3桁a又は16セグメントアルファニューメリック3桁b等とし、このパターンのうち、いくつかのセグメントを選択表示することで数字あるいは文字を表現できる第1の表示器。5-aは例えば赤色高輝度LED5を複数個並べて、例えは従来例の第6図で示す如く5×7のマトリクス状に配列した組を2?3組並べてなる第2の表示器。4-1はVFDを実装したりVFDを点灯表示するための回路素子を実装した第1の表示器の回路基板、5-1はLEDを実装した第2の表示器の回路基板である。
8は、光学ミラーであって、この光学ミラーはVFD表示光量を例えば20%に低減するフィルターの役目をするだけでなく、その上方に配置したLEDの光線光路を90°曲げて遊技者の目に至らせるが、その反射光量は例えば表面反射率5%程度で規程された量だけ目に至らせる役目も兼ねる。9及び10は、第2の表示器5-aの全体を上下方向にスライドさせるための駆動機構でこの駆動機構は、不図示のスライドシリンダーを用いたり、モータ駆動軸にピニオンギヤ、ラックを用いて周知のラック&ピニオン機構等で上下にスライドさせることができる。
尚、LEDの配置位置は光学ミラー8の下方にしても表示機能としては同一であるが、この場合ミラー取付角は第4図に示したミラー法線Nを含む平面を反射面とする角度に取付ける必要がある。
次にその作用を第1図乃至第3図にもとずき説明する。
特定の穴にパチンコ玉が入った事を検出すると第1の表示器4-aのVFDでは3桁の数字又はアルファベットの文字が、スロットマシン風にくるくると表示され、ある特定時間後に表示がストップする。このストップした数字を含む文字はあらかじめ乱数発生器により定められたものである。今、スロットマシン風に3桁文字がそろった時、いわゆる大当りのときに、第2の表示器5-aを点灯すると、第1の表示器の表示像(実像)は遊技者の目の位置から見るとミラー8上の代表光路との交点Pよりaだけ奥まったところにできるが、第2の表示器5-aの表示像(虚像)は、第2の表示器5-aの配設される位置、即ち、点Pの上方b?b’の範囲により遊技者の目の位置から見ると点Pよりc?c’奥まった位置に出来る。但し、b=c、b’=c’である。しかるに遊技者は第1及び第2の表示像が同一領域(ここではミラーの大きさの範囲内)に両表示像の奥行き感に違い(LEDが奥にある様に見える)がある様に見える。
ここで、c?c’を表示結像位置と呼ぶが、この値は実際の第2の表示器の点Pからの距離をb?b’の範囲で動かすことにより容易に変化させることができるものである。
大当りしたことを検出する大当り検出器で検出すると第2の表示制御器によりスライド駆動制御器に信号が行き、例えばスライドさせながら第2の表示器を表示させると第1表示器4-aの固定された、位置的には変化のない表示像に対し、第2の表示像は遊技者に近づいてきたり、遠ざかっていったりという表示をさせることができる。」
また、第1図には、第2の表示器5-aと、当該第2の表示器5-aの下方に配置された光学ミラー8と、前記光学ミラー8の背後に配置された第1の表示器4-aとからなる構成が図示され、第2の表示器5-aが点Pの上方bに位置していると、第2の表示器5-aの表示像(虚像)は点Pよりc奥まった位置に出来ており、該第2の表示器の表示像は遊技者から近い位置に表示され、第2の表示器5-aが点Pの上方b’に位置していると、第2の表示器5-aの表示像(虚像)は点Pよりc’奥まった位置に出来ており、該第2の表示器の表示像は遊技者から遠い位置に表示されることが図示されている。
ここで、該第1図の図示内容から、第2の表示器を下から上にスライドさせると、第2の表示器の表示像(虚像)は遊技者から近い位置から遠い位置と変化するので、この場合の第2の表示器の表示像は、遊技者から見れば第2の表示器の表示像が遊技者に近い位置にある場合と比べて縮小して表示されていると認められる。
上記記載内容、図示内容および認定事項から、刊行物2には、「第2の表示器と、当該第2の表示器の下方に配置された光学ミラーと、前記光学ミラーの背後に配置され且つ当該光学ミラーを透過して視認可能に配置された第1の表示器とからなり、遊技者の目の位置からみると前記第1の表示器の表示像(実像)と前記第2の表示器の表示像(虚像)とが同一領域に両表示像の奥行き感に違いがある様に見えるようにした遊技機用表示装置において、前記第2の表示器を上方向にスライドさせることにより、前記第2の表示器の表示像(虚像)の表示結像位置を変化させて第2の表示像を遊技者からより遠い位置に、縮小して表示させる駆動機構を設ける点。」(以下「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されているといえる。

(3)刊行物3
当審の拒絶理由で引用された刊行物3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るスロットマシン100の外観図である。」
(イ)「【0051】
一方、LCD10が同図の実線の位置(第2の位置)にある場合、LCD10の表示画面11は略水平となるので遊技者からは表示画面11が直接見えない。そして、LCD10からハーフミラー20に投影された画像(虚像)が遊技者に提示されることになる。この虚像は同図に示すように遊技者から見ると、ハーフミラー20の背後に浮かんでいるように見え、立体的感のある、3次元的な画像となる。虚像の位置はLCD10とハーフミラー20との間の距離(L1、L2)とLCD10とハーフミラー20との間の角度(本例では略45度)とによって定まり、本実施形態の場合、ハーフミラー20から奥行き方向にL1、L2だけ離れた位置に虚像が見えることになる。また、本実施形態では照明ユニット60によりハーフミラーの背後が照明される。虚像の周囲が照明されるので虚像をより鮮明或いは華やかに見せることが可能となる。
【0052】
また、図6(a)の例ではハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に前に立体物X1が、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X2が配置されている。これらの立体物X1及びX2は実像としてハーフミラー20を透過して遊技者から見えることになる。このため、同図の左に示す表示画像では、虚像(UFO)と立体物X1及びX2が合成された合成画像となり、遊技者から見ると、立体物X1→虚像(UFO)→立体物X2の順にこれらが位置しているように見える。立体物X1及びX2の存在により奥行き感が高まり、より一層3次元的な画像となる。

(ウ)「【0133】
・・・同図のパターンE2は3次元画像中に照明ユニット60の冷陰極線管60aを点灯することでハーフミラー20の背後を明るくする演出である。同図のパターンE3は3次元画像中に照明ユニット60の冷陰極線管60aを点灯する途中又は消灯する途中の状態でありハーフミラー20の背後を徐々に明るく又は暗くする演出である。なお、パターンE3ではLCD10を第2の位置に位置させるがLCD10に画像を表示せず、ハーフミラー20の背後の立体物の提示と立体物を照明する照明ユニット60の照明の変化のみの演出とすることもできる。このような各種パターンを組み合わせることで、演出ユニットAは様々な演出を実現できる。」
上記(ア)-(ウ)の記載から、刊行物3には、「LCD10からハーフミラー20に投影された画像(虚像)とハーフミラー20の背後に配置されている立体物X1及びX2(実像)とが合成された合成画像を遊技者に提示するスロットマシン100において、ハーフミラーの背後を徐々に明るく又は暗くしたり、LCDに画像を表示せず、ハーフミラーの背後の立体物の提示と立体物を照明する照明ユニットの照明の変化のみの演出とするよう照明ユニットを制御する点。」(以下「刊行物3に記載された技術事項」という。)が記載されているといえる。

第5 当審の判断
(1)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。対比の見出しとしての(a)?(e)、(g’)、(h)、(j)、(k)、(m)は刊行物1発明の分説構成と対応させた。

(a)刊行物1発明の「LCD10」は、「表示画面11が収納部1の正面に露出した状態では、遊技者から該表示画面11が見える」ことから、本願発明の「表示画面が遊技機正面視で遊技者に視認可能となる画像表示手段」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「電子画像を表示可能な表示画面11を有し、該表示画面11が収納部1の正面に露出した状態では、遊技者から該表示画面11が見えるLCD10」は、本願発明の「画像が表示される表示画面を有し、該表示画面が遊技機正面視で遊技者に視認可能となる画像表示手段」に相当する。

(b)刊行物1発明の「立体物X1(実像)」、「ハーフミラー20」は、それぞれ本願発明の「表示物」、「透過性表示手段」に相当する。
したがって、上記(a)で言及したように刊行物1発明の「LCD10」は、本願発明の「画像表示手段」に相当するから、刊行物1発明の「立体物X1(実像)を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であってLCD10に表示される画像(虚像)を遊技者に提示するハーフミラー20」は、本願発明の「表示物を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であって前記画像表示手段に表示される画像を視認可能な透過性表示手段」に相当する。

(c)刊行物1発明の「立体物X1」、「スロットマシン100」は、それぞれ本願発明の「演出用役物」、「遊技機」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「ハーフミラー20の背後に配置され、当該ハーフミラー20を透過して遊技者から見える山を模した模型である立体物X1と、を備えたスロットマシン100」は、本願発明の「前記透過性表示手段の背後に配置され且つ当該透過性表示手段を透過して視認可能に配置される演出用役物と、を備えた遊技機」に相当する。

(d)上記(c)で言及したように刊行物1発明の「立体物X1」は、本願発明の「演出用役物」に相当するから、刊行物1発明の「ハーフミラー20は、当該ハーフミラー20を透過して立体物X1の実像が遊技者から見えるように構成され」ていることは、本願発明の「前記透過性表示手段は、前記演出用役物を視認可能な状態において前記表示物を表示可能に構成されて」いることに相当する。

(e)刊行物1発明の「第1の位置」は、LCD10による2次元画像が遊技者に提示されることから、本願発明の「画像表示手段で所定の演出を行う第1の位置」に相当する。同様に、刊行物1発明の「第2の位置」は、LCD10からハーフミラー20に投影された虚像が遊技者に提示されることから、本願発明の「前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行う第2の位置」に相当する。
また、刊行物1発明の「モータ30」は、本願発明の「駆動手段」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「LCD10が、その表示画面11が略垂直な状態にあり、当該状態において遊技者からは当該LCD10の表示画面11は見えるが、ハーフミラー20は当該LCD10の背後に隠れて見えないため、LCD10による2次元画像が遊技者に提示される第1の位置と、LCD10が、その表示画面11が略水平な状態にあり、当該状態においてLCD10からハーフミラー20に投影された虚像が遊技者に提示される第2の位置との間を、当該LCD10を回動させることにより移動させるモータ30」は、本願発明の「前記画像表示手段は、前記画像表示手段で所定の演出を行う第1の位置と、当該第1の位置から前記画像表示手段を移動させて前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行う第2の位置とに、前記画像表示手段を移動可能な駆動手段」に相当する。

(g’)刊行物1発明における「立体物X1の実像」は、「ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させることで、遊技者から見ると、UFOの虚像とともに遠ざかるように見え」るよう変化するものである。
したがって、刊行物1発明の「立体物X1の実像は、ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させることで、遊技者から見ると、UFOの虚像とともに遠ざかるように見え」ることと、本願発明の「前記演出用役物は、前記変位手段が前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させる態様とは異なる態様での変化が可能」であることとは、「前記演出用役物は、」「変化が可能」なものである点で共通する。

(h)刊行物1発明における「スロットマシン100」が、「ハーフミラー20の後退」に伴って、「LCD10」が「LCD10からハーフミラー20に投影する画像」の「表示位置を徐々に変化させ」ることは、本願発明における「前記遊技機」が、「前記演出用役物の変化」に合わせて、「前記画像表示手段」が「前記画像」を「変化させる」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明の「スロットマシン100は、ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させ」ることで、「虚像であるUFOが飛び去っていく様子を表現できるものであ」ることは、本願発明の「前記遊技機は、前記演出用役物の変化に合わせて、」「前記画像表示手段が前記画像を変化させる」こと「を行うものであ」ることに相当する。

(j)上記(c)で言及したように刊行物1発明の「立体物X1」は、本願発明の「演出用役物」に相当するから、刊行物1発明の「立体物X1がその内部に配設され、かつハーフミラー20を支持する支持体21」は、本願発明の「前記演出用役物を支持する支持手段」うことに相当する。

(k)上記(j)で言及したように刊行物1発明の「支持体21」は、本願発明の「支持手段」に相当するから、刊行物1発明の「ハーフミラー20を支持する支持体21を移動させるモータ40、ボールネジ42及びボールナット部材21e」は、本願発明の「前記支持手段を移動可能な支持駆動手段」に相当する。

(m)刊行物1発明の「スロットマシン100」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(e)、(g)、(h)で、(j)、(k)、(m)の検討より、本願発明と刊行物1発明とは、
「A 画像が表示される表示画面を有し、該表示画面が遊技機正面視で遊技者に視認可能となる画像表示手段と、
B 表示物を表示可能であるとともに、その裏面側が視認可能であって前記画像表示手段に表示される画像を視認可能な透過性表示手段と、
C 前記透過性表示手段の背後に配置され且つ当該透過性表示手段を透過して視認可能に配置される演出用役物と、を備えた遊技機において、
D 前記透過性表示手段は、前記演出用役物を視認可能な状態において前記表示物を表示可能に構成されており、
E 前記画像表示手段は、前記画像表示手段で所定の演出を行う第1の位置と、当該第1の位置から前記画像表示手段を移動させて前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行う第2の位置とに、前記画像表示手段を移動可能な駆動手段と、を有し、
G’ 前記演出用役物は、変化が可能であって、
H 前記遊技機は、前記演出用役物の変化に合わせて、前記変位手段が前記画像表示手段を変位させるか、又は、前記画像表示手段が前記画像を変化させるかの少なくともいずれか一つを行うものであり、
J 前記演出用役物を支持する支持手段と、
K 前記支持手段を移動可能な支持駆動手段と、を備える、
M 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「前記第2の位置に移動した画像表示手段を少なくとも画像表示手段と透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させて、透過性表示手段の表示物との位置関係を変化可能な変位手段」を備え、「変位手段は、複数段階に変位可能である」のに対して、刊行物1発明は、そのような特定を有しない点。(構成F、L)

[相違点2]
本願発明における「演出用役物」は、「前記変位手段が前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させる態様とは異なる態様」での変化が可能であるのに対して、刊行物1発明における「立体物X1」(演出用役物)は、そのような特定を有しない点。(構成G)

[相違点3]
本願発明は、「演出用役物の明るさを変化させる発光手段」を備えるのに対して、刊行物1発明は、そのような特定を有しない点。(構成I)

(2)判断
(ア)上記[相違点1]について検討する。
上記刊行物2には、上記「第4」の(2)に示したとおりの技術事項が記載されている。
そして、刊行物2記載の技術事項における「第2の表示器」を「上下方向にスライドさせる」「駆動機構」は、本願発明の「画像表示手段」を「変化可能な」「変位手段」であるといえ、刊行物2記載の技術事項において、「遊技者の目の位置からみると前記第1の表示器の表示像(実像)と前記第2の表示器の表示像(虚像)とが同一領域に両表示像の奥行き感に違いがある様に見える」ことを前提に「前記第2の表示器の表示像(虚像)の表示結像位置を変化させる」ことが可能であることは、本願発明の「画像表示手段と透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させて、透過性表示手段の表示物との位置関係を変化可能」であることに対応する構成であるから、刊行物2記載の技術事項は、相違点1に係る「画像表示手段を少なくとも画像表示手段と透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させて、透過性表示手段の表示物との位置関係を変化可能な変位手段」を備えるという事項を提示している。
また、刊行物2記載の技術事項における「駆動機構」は、「第2の表示器」を「上下方向にスライドさせる」のであるから、「第2の表示器」を「複数段階に変位可能である」ことは明らかである。
ここで、刊行物1発明においては、上記(1)の(g)で認定したとおり、ハーフミラー20の後退のみによっても、立体物X1の実像とUFOの虚像とは同程度に遠ざかるように見えるところ、(h)で認定したとおり、該後退につれてさらにUFOの画像を縮小しているのは、立体物X1の実像よりもUFOの虚像をより遠くへ飛び去るように見せる効果を意図したものであることが明らかである。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載の技術事項とは「画像表示手段と、透過性表示手段と、当該透過性表示手段の背後に配置され且つ前記透過性表示手段を透過して視認可能に配置された演出用役物とからなり、遊技者の目の位置からみると前記演出用役物の表示像(実像)と前記画像表示手段の表示像(虚像)とが同一領域に両表示像の奥行き感に違いがある様に見えるようにした遊技機用表示装置」についてのものである点で共通している。
よって、刊行物1発明において、構成hの「ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させ、かつ、画像を徐々に縮小していくことで、虚像であるUFOが飛び去っていく様子を表現」するにあたり、LCD10で画像を徐々に縮小させることに替えて、刊行物2記載の第2の表示器を上方向にスライドさせることにより、第2の表示器の表示像(虚像)の表示結像位置を変化させて第2の表示像を縮小して表示させる技術を採用し、LCD10を上下方向にスライドさせる構造に変更して、虚像であるUFOがより遠ざかって飛び去っていく様子を表現するように構成することで上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は、刊行物1発明に刊行物2記載の技術事項を適用することにより導かれる構成である。

(イ-1)上記[相違点2]について検討する。
刊行物1発明においては「ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させることで、遊技者から見ると、UFOの虚像とともに遠ざかるように見えること」(構成g)から、「立体物X1」(演出用役物)は、「ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させること」により変化が可能であるといえる。
ここで、上記(ア)で検討したとおり刊行物2記載の技術事項を適用した場合の、駆動機構がLCD10を上下方向にスライドさせる態様であって「前記変位手段が前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させる態様」と、刊行物1発明の上記「ハーフミラー20を支持する支持体21を遊技者の視認方向に平行移動させてハーフミラー20を後退させる」という態様とは、「異なる態様」であるといえる。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、刊行物1発明に刊行物2記載の技術事項を適用することにより導かれる構成である。

(ウ)上記[相違点3]について検討する。
上記刊行物3には、上記「第4」の(3)に示したとおりの技術事項が記載されている。
ここで、刊行物1発明において、立体物X1の明るさを変化させる発光手段を備えるかについては特に明記されていないものの、刊行物1の【0026】に「支持体21はその天井部、背部、底部、を構成する天板21a、背板21b、底板21cを備え、ハーフミラー20は天板21aと底板21cとの間で支持されている。」、【0035】に「図6(a)の例ではハーフミラー20の背後であって、虚像の位置よりも遊技者の視認方向に後に立体物X1が配置されている。立体物X1は実像としてハーフミラー20を透過して遊技者から見えることになる。」と記載され、立体物X1が天板21a、背板21b、底板21cにより周りを囲まれた構造であるから、前記立体物X1を「遊技者から見える」ようにするため何らかの発光手段を設けるべきことは自明である。
そうすると、刊行物1発明と刊行物3記載の技術事項とは、LCDからハーフミラーに投影された画像(虚像)とハーフミラーの背後に配置されている立体物(実像)とが合成された合成画像を遊技者に提示するスロットマシンについてのものである点で共通しているから、刊行物1発明に対して、刊行物3記載の技術事項も適用し、「ハーフミラーの背後を徐々に明るく又は暗くしたり、LCDに画像を表示せず、ハーフミラーの背後の立体物の提示と立体物を照明する照明ユニットの照明の変化のみの演出」としたりするための「発光手段」を備えるようにすることで上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の構成は、刊行物1発明に刊行物3記載の技術事項を適用することにより導かれる構成である。

(イ-2)上記[相違点2]について別途検討する。
刊行物1発明に対して、刊行物3記載の技術事項を適用し、「立体物を徐々に発光して浮かび上がるようにしたり、ハーフミラーの背後を徐々に明るく又は暗くしたり、LCDに画像を表示せず、ハーフミラーの背後の立体物の提示と立体物を照明する照明ユニットの照明の変化のみの演出」としたりした場合の「立体物X1」(実像)の「変化」の「態様」は、刊行物2記載の技術事項を適用した場合の態様、すなわち、「前記変位手段が前記画像表示手段を少なくとも前記画像表示手段と前記透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させる態様」とは「異なる態様」であることは明らかである。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、刊行物1発明に刊行物2、3記載の技術事項を適用することにより導かれる構成である。

(3)平成29年10月6日付の意見書における請求人の主張について
請求人は、平成29年10月6日付の意見書において
(イ)第4頁第25-30行目に「よって、構成要件(F)とは作用が異なるLCD10とハーフミラー20との距離(L1、L2)を変化させるために、ハーフミラー20を奥行き方向(遊技者の視認方向)に平行移動させる構成からは、構成要件(F)のように、第2の位置に移動した画像表示手段を少なくとも画像表示手段と透過性表示手段とで演出を行うことが可能な範囲内で変位させて、透過性表示手段の表示物との位置関係を変化させることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえません。」と主張している。
しかし、本願発明の構成要件(F)については、上記(1)で[相違点1]として示し、その容易想到性については(2)(ア)で説示したとおりである。
よって、請求人の当該主張は採用できない。

(ロ)第4頁第48-第5頁12行目に「したがって、刊行物1記載の発明に、刊行物2記載の技術事項「第2の表示器の全体を上下方向にスライドさせることにより第2の表示器の表示像の表示結像位置を変化させる駆動機構」を適用すると、「3次元画像表示時にもこの表示位置と退避位置との間を最大範囲としてハーフミラー20を移動する」ことがなくなり、「LCD10が第2の位置にある時のハーフミラー20の移動は、表示位置と退避位置との間におけるハーフミラー20の移動の少なくとも一部を構成しており、換言すれば、移動経路を少なくとも一部共通にしている。こうすることで、両者を別々にする場合よりも機構を簡易なものとすることができる。」とはいえなくなります。つまり、刊行物2記載の技術事項は、刊行物1記載の発明がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ないと考えられる副引用発明にあたります。よって、LCD10とハーフミラー20との距離(L1、L2)を変化させるために、ハーフミラー20を奥行き方向(遊技者の視認方向)に平行移動させる構成を開示するに留まる刊行物1記載の発明に対して、刊行物2記載の技術事項を適用して、本願の構成要件(F)に相当する構成はとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえません。」と主張している。
しかし、刊行物1発明においては、上記(1)の(g)で認定したとおり、ハーフミラー20の後退のみによっても、立体物X1の実像とUFOの虚像とは同程度に遠ざかるように見えるところ、(h)で認定したとおり、該後退につれてさらにUFOの画像を縮小しているのは、立体物X1の実像よりもUFOの虚像をより遠くへ飛び去るように見せる効果を意図したものであることが明らかである。そして、虚像であるUFOがより遠ざかって飛び去っていく様子を表現するために、ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させることに加えて行われる、画像を徐々に縮小していくことについて、刊行物1発明のLCD10で画像を徐々に縮小させることと、刊行物2記載の技術事項である第2の表示器を上方向にスライドさせることにより、第2の表示器の表示像(虚像)の表示結像位置を変化させて第2の表示像を縮小して表示させる技術とは置換可能であるから、刊行物1発明に刊行物2記載の技術事項を適用する動機付けがあるといえる。
また、上記のとおり、画像を徐々に縮小していくことは、虚像であるUFOがより遠ざかって飛び去っていく様子を表現するために、ハーフミラー20の後退に伴ってLCD10からハーフミラー20に投影する画像の表示位置を徐々に変化させることに加えて行われる場合であるから、ハーフミラー20を移動することがなくなることはなく、ハーフミラー20を奥行き方向(遊技者の視認方向)に平行移動させる構成も維持されることが明らかである。
よって、請求人の当該主張は採用できない。

(ハ)第5頁第37-47行目に「仮に、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術事項を適用することができるとすれば、刊行物1,2の記載事項からでは、単に、刊行物1に記載されるLCD10を、刊行物2に記載されるような光学ミラー8の背後に配置される第1の表示器4-aと、遊技機正面視で遊技者に見えない位置(具体的には釘7等が打ち込まれるベニヤ板2の裏面)でのみ上下方向にスライドされる第2の表示器5-aとを備えて2次元画像(例えば第1の表示器4-aの表示像(実像))と3次元画像(例えば第2の表示器5-aの表示像(虚像))とを選択的に提供するような構成に替えることが想起されるに留まります。したがいまして、刊行物2に記載される技術事項は、構成要件(F)に相当する構成を備えるという事項を提示しているとは言えませんので、仮に刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術事項を適用できたとしても、構成要件(F)に相当する構成を容易に想起できるとは言えません。」と主張している。
しかし、虚像であるUFOが飛び去っていく様子を表現するための、画像を徐々に縮小していくことを実行するために、刊行物1発明において刊行物2記載の技術を採用してLCD10を上下方向にスライドさせる構造を追加して構成することが、当業者が容易に想到し得たことであることは、上記(2)(ア)で説示したとおりである。
よって、請求人の当該主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のとおり、刊行物1発明において刊行物2、3の記載事項を適用することにより、上記相違点1-3に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことであり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-29 
結審通知日 2017-12-05 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2014-238771(P2014-238771)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 青木 洋平
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 杉谷 勉  

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