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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01V
管理番号 1337469
審判番号 不服2017-7776  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-30 
確定日 2018-03-09 
事件の表示 特願2012- 45735「照明ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-181825、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年3月1日
拒絶査定: 平成29年2月21日(送達日:同年同月28日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年5月30日
手続補正: 平成29年5月30日


第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1-5(以下、それぞれ「引用文献1」-「引用文献5」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-146098号公報
2.特開平05-258866号公報
3.特開2004-311067号公報
4.特開2009-140644号公報
5.特開2007-27957号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年5月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
照明を行う照明装置を備える照明ユニットであって、
音を出力する音響装置と、
情報を受信する受信装置と、をさらに備え、
公衆無線通信回線から供給される情報であって地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知し、
前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、
前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作し、
前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する、
ことを特徴とする照明ユニット。
【請求項2】
前記照明ユニットは、上部位置に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明ユニット。
【請求項3】
前記音響装置は、前記所定の音を出力するスピーカを備え、当該スピーカによって、所定の音声データが表す音声を再生可能である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の照明ユニット。
【請求項4】
前記照明装置は、リモートコントローラによって遠隔操作され、
前記照明装置は、前記緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに前記照明態様を変化させている間は、前記リモートコントローラからの操作に応答しない、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の照明ユニット。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0024】
この発明の一実施例の地震警報装置10は、たとえば気象庁またはその関連機関(たとえば気象業務支援センター)が設置するサーバ(便宜上「気象庁サーバ」と呼ぶ。)12を含み、この気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ(以後、単に、「サーバ」と呼ぶことがある。)16が、緊急地震速報・・・を受け取る。緊急地震速報・・・とは、簡単に説明すると、日本の気象庁が中心となって提供している地震情報であり、主要動の到達前に速報を行う早期地震警戒システムに分類される。この緊急地震速報は、少なくとも、地震発生時刻、震源地、地震の大きさ(マグニチュード)を情報として含み、震源地は典型的には緯度経度のデータと地下深さなどを含む。
【0025】
サーバ16はこのような緊急地震速報を受けたとき、同じく気象庁またはその関連機関などが提示する、地盤性状(地盤の種類など:これによって地震の伝播(到達)時間や大きさ(震度)などが決まる)や計算方法を用いて、このサーバ16と契約している家屋端末20が設置されている場所での予測震度や予測到達時間を緊急地震速報に基づいて計算する。そして、その計算した予測震度および予測到達時間をそれぞれ震度情報および予測到達時間情報として含む地震情報を、たとえばインタネットのようなネットワーク18を介して、当該家屋端末20に送信する。ただし、緊急地震速報は、大きさがあまり大きくない地震についても送られてくるが、家屋端末20の設置場所で所定の震度(たとえば震度3)を超えると予測したときだけ、サーバ16からその家屋端末20に送信する。
【0026】
家屋端末20は、たとえば、図2に示すように、ハウジング22に内蔵されたコンピュータ24を含む。このコンピュータ24にはメモリ26が設けられ、このメモリ26には後述の図5に示すプログラムや図3および図4に示す音声データが予め設定(記憶)されている。
【0027】
上記サーバ16からの地震情報は、ルータ28を経て、コンピュータ24に入力される。受信した地震情報は、メモリ26内に一時記憶される。
【0028】
コンピュータ24は、ルータ28を経て地震情報を受信したとき、この実施例では照明制御用信号として利用する地震発生信号を発生するとともに、ハウジング22に設けたLED30を一定時間たとえば20秒間、点滅させる。このLED30の点滅によって、その家屋(図示せず)に居住する人が所定震度以上の地震の到来を知ることができる。
【0029】
コンピュータ24はまた、地震情報を受信したとき、音声ガイド(警報音声)を出力するための、詳しくは図3および図4に示す音声データを出力する。この音声ガイドの基本形は、(1)「チャンリン チャンリン」(地震信号固有の警報音)、(2)「XX秒後に」、(3)「震度○の地震がきます」、(4)「チャンリン」、(5)「5 4 3 2 1」(時間カウント)を含む。ただし、(2)は音声ガイド開始時における、地震到達までの残り時間(予測到達時間)を示し、(3)は予測される予測震度を示す。(4)は(5)の時間カウントまでの時間調整のための数秒の報知音であり、「無音」のこともあるし、時間調整が必要なければこの(4)を飛ばして即座に(5)の時間カウントに進むこともある。時間カウントは
、残り秒数をカウントダウンするもので、10‐1秒の範囲だけである。」

「【0032】
たとえば、予測到達時間が、第1所定時間から第2所定時間まで、たとえば64秒‐20秒の場合、第2の音声データは、基本的に、「チャンリン チャンリン XX秒後 震度○の地震がきます」となる。ただし、この第2の音声データは、残り時間が20秒になるまで、5秒ごとに時間を更新した上で繰り返し出力される。たとえば、予測到達時間が60秒の場合、第2の音声データは、「チャンリン チャンリン 60秒後 震度○の地震がきます」の配列となり、5秒後には、「チャンリン チャンリン 55秒後 震度○の地震がきます」の配列となる。そして、ついに20秒になると、第2の音声データは、「チャンリン チャンリン 20秒後 震度○の地震がきます…10 9 8 7 6 5 4 3 2 1」の配列となり、最後にカウントダウン音声を付加した配列とされる。」

「【0036】
図2に戻って、メモリ26に記憶されているこのような音声データは、コンピュータ24によって選択的に読み出され、音声出力ボード32に出力される。したがって、家屋(図示せず)の適宜の場所、たとえば各階の天井に設置された適宜数のスピーカ341-34nから、そのような音声データに従った地震警報音声(音声ガイド)が出力される。」

「【0045】
次に、図6を参照して、この実施例のもう1つの特徴である、照明強制点灯手段について説明する。
【0046】
図5の最初のステップS1で、地震発生信号をコンピュータ24が出力するが、この地震発生信号は、図6のタイマリレー38にトリガ信号として与えられる。したがって、その地震発生信号が出力された時点からこのタイマリレー38が作動し、所定時間(実施例では3分間)だけ、そのリレー接点381‐38nをオンする。したがって、AC100Vが各接点381‐38nを通して照明器具421‐42nに与えられることになり、これらの照明器具421‐42nは点灯駆動される。そして、3分経過すると接点381‐38nがオフとなり、照明器具421‐42nは消灯される。
【0047】
なお、これら照明器具421‐42nは、避難行動経路に設けた特別のまたは専用の照明器具であってよいが、日常的に使用している照明器具であってもよい。」

上記の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「避難行動経路に設けた照明器具421‐42nを備える地震警報装置10であって、(【0024】、【0046】参照。)
各階の天井に設置された適宜数のスピーカ341-34nと、(【0036】参照。)
家屋端末20に含まれ、ルータ28を経て地震情報を受信する、ハウジング22に内蔵されたコンピュータ24と、(【0026】、【0028】参照。)を備え、
気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が緊急地震速報を受け取り、緊急地震速報に基づいて計算した予測震度および予測到達時間をそれぞれ震度情報および予測到達時間情報として含む地震情報を、たとえばインタネットのようなネットワーク18を介して、家屋端末20に送信し(【0024】、【0025】参照。)、家屋端末20のコンピュータ24は、地震情報を受信したとき、照明制御用信号として利用する地震発生信号を発生し、この地震発生信号は、トリガ信号としてタイマリレー38に与えられ、照明器具421‐42nは点灯駆動され、またハウジング22に設けたLED30を一定時間たとえば20秒間、点滅させ(【0028】、【0046】参照。)、コンピュータ24はまた、地震情報を受信したとき、「チャンリン チャンリン XX秒後 震度○の地震がきます」という音声データを出力し(【0029】、【0032】参照。)、スピーカ341-34nから、そのような音声データに従った地震警報音声(音声ガイド)が出力され、(【0036】参照。)
コンピュータ24は、気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が受け取った緊急地震速報に基づいて計算した地震情報を、たとえばインタネットのようなネットワーク18を介して受信する、(【0024】、【0025】、【0028】参照。)
地震警報装置10。(【0024】参照。)」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 交流電源に接続される主スイッチと、
前記主スイッチを介して前記交流電源に接続され、光源を電気的に接続し、この光源に点灯を行なわせる点灯手段と、
前記光源の点灯状態を設定し、設定状態を無線媒体にて送信するリモコン手段と、
前記リモコン手段により前記光源の点灯状態を制御し、前記光源を前記主スイッチにより消灯し、再度前記主スイッチにより点灯させる場合、前記光源を消灯前の点灯状態で点灯させ、かつ、前記リモコン手段により消灯し、前記主スイッチにより再度点灯される場合、前記光源を調光状態で点灯させる制御手段と、
前記交流電源に主スイッチに対して直列に接続され、感震時に瞬時電力の遮断および供給を行なう感震手段とを備えたことを特徴とした照明装置。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構造の照明装置は、地震の際に、瞬時に光源を点灯させたくても、主スイッチあるいはリモコン装置を操作しなければならず不便であり、また、リモコン装置を探すことは煩しい。このため、地震の緊急時に容易に点灯を行えず不便である問題を有している。
【0005】本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、地震の振動の感知により制御回路を制御して、リモコン装置あるいは主スイッチの操作なしに光源を点灯する照明装置を提供することを目的とする。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項2】
前記照明灯および緊急放送受信機の電源として、太陽光を受光可能に配設される太陽電池と、該太陽電池の起電力を蓄電する蓄電体と、が設けられたことを特徴とする請求項1記載の屋外用照明装置。」

「【0039】
図5?図7は他の実施形態の屋外用照明装置として、歩道などに設けられる足元灯に本発明を適用した例を示している。上記実施形態と同様な構成については、図5?図7に上記と同じ符号を付してその説明を省略する。足元灯としての本照明装置は、図5,6に示すように、上部を斜めに折り曲げた形状の支柱42の上部に、太陽電池5と照明灯部43を設け、照明灯部43から照明光を斜め下方に照射するように構成される。支柱42の高さは比較的低く設定され、歩行者の足元を主に照らすように使用される。
【0040】
照明灯部43は、凹状に形成された反射板の内側中央に、複数本の発光ダイオードなどからなる照明灯46が取り付けられて構成される。反射板と照明灯46の向きは斜め下方に設定され、反射板の前面は透明合成樹脂などの透明体により覆われている。照明灯部43の内部には、後述の制御ユニット37と小型密閉式鉛蓄電池などの蓄電体25が収納されている。さらに、照明灯部43の上部には太陽電池5が太陽光を受光可能に配設され、太陽電池5の上面も同様の透明合成樹脂などの透明体でカバーされている。
【0041】
制御ユニット37内には、図7に示すように、照明灯46を点灯するための電源となる蓄電体25、太陽電池5の起電力を蓄電体25に供給して充電する充電回路22、昼夜を判別しその信号を出力する昼夜判別回路21、照明灯46を点灯駆動する点灯回路27、ラジオ放送を受信するラジオ受信機30、試験信号の受信を確認する確認用ランプ28、及びその点灯や後述の緊急放送受信機23を制御する制御回路20が内蔵される。制御回路20は、CPU、ROM、入出力回路などを備えた演算処理回路から構成することができる。また、照明灯部43の外側には、人体の接近を検出する人感検出器26が取り付けられ、制御回路20にその検出信号を出力するように接続されている。」

「【0044】
さらに、図7に示すように、制御回路20には緊急放送受信機23が接続される。緊急放送受信機23は、アンテナに接続された同調回路、局部発信回路、中間周波増幅器、検波回路、低周波増幅器、信号識別回路などから構成され、所定の周波数の緊急警報信号を受信するように構成される。緊急警報信号は地震警報のための640Hzと津波警報のための1024Hzの信号からなり、信号識別回路は、受信され検波して取り出した低周波信号を識別して、640Hz、1024Hzの信号を検出する。
【0045】
また、制御回路20には、ラジオ受信機30が接続される。ラジオ受信機30は、アンテナに接続された同調回路、局部発信回路、中間周波増幅器、検波回路、低周波増幅器、スピーカ31などから構成され、例えばNHKなどの放送局から送信されるラジオ放送を受信するように構成される。ラジオ受信機30は、制御回路20によりその動作が制御され、緊急警報信号が緊急放送受信機23によって受信され、その信号が制御回路20に送られたとき、制御回路20は、ラジオ受信機30を受信動作させ、NHKなどの放送を受信してスピーカ31から放送を流すように動作する。」

「【0048】
一方、緊急警報が発令され、NHKなどの緊急警報放送用実験局免許を得た放送局から、地震、津波などを示す緊急警報信号が送信された場合、緊急放送受信機23でこの緊急警報信号が受信される。このとき、緊急放送受信機23から緊急警報信号の受信を示す信号が制御回路20に出力され、制御回路20は、夜間においては、緊急警報時の点灯信号を点灯回路27に出力する。これにより、点灯回路27は照明灯46の全発光ダイオードを連続して点灯駆動し、夜間には最大限の照度で歩道を照明するように動作する。これにより、本照明装置の近傍にいる人は、夜間に、照明灯46の通常時とは異なる連続点灯を見て、緊急警報が発令されたことを認識することができる。また、緊急時の道路の照度が最大となって、歩行誘導や道先案内を良好に行なって、道路上の安全を確保することができる。
【0049】
一方、昼間に、緊急放送受信機23で緊急警報信号が受信され、緊急放送受信機23から緊急警報信号の受信を示す信号が制御回路20に出力された場合、制御回路20は、ラジオ受信機30を受信動作させ、例えばNHKなどの放送局のラジオ放送を受信させ、その放送をスピーカ31から流すように動作する。これにより、本照明装置の近傍にいる人は、昼間、緊急時にラジオ放送から流れる緊急警報の情報を聞き、緊急警報が発令されたことを認識することができる。」

上記の記載から、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「照明灯部43を備える屋外用照明装置であって、(【0039】参照。)
スピーカ31などから構成されるラジオ受信機30と、(【0045】参照。)
緊急放送受信機23と、(【0044】参照。)を備え、
放送局から、地震、津波などを示す緊急警報信号が送信された場合、緊急放送受信機23でこの緊急警報信号が受信され、夜間には最大限の照度で歩道を照明するように動作し(【0048】参照。)、昼間に、緊急放送受信機23で緊急警報信号が受信された場合、ラジオ受信機30を受信動作させ、放送をスピーカ31から流すように動作し、(【0049】参照。)
照明灯部43は、複数本の発光ダイオードなどからなる照明灯46が取り付けられて構成され、照明灯部43の内部には、制御ユニット37と、照明灯および緊急放送受信機の電源としての蓄電体25が収納され(【請求項2】、【0040】参照。)、制御ユニット37内には、ラジオ放送を受信するラジオ受信機30、緊急放送受信機23を制御する制御回路20が内蔵され、(【0041】参照。)
緊急放送受信機23は、放送局からの、地震、津波などを示す緊急警報信号を受信する、(【0048】参照。)
屋外用照明装置。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0016】
図1は、本発明による照明システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態は、照明装置1と、サーバ2と、端末3と、照明装置1とサーバ2とを結ぶネットワーク100から構成されている。
【0018】
照明装置1は、図1に示すように、PLCモデム11と、無線LANアクセスポイント12と、位置ID発信機13と、照度センサ14と、人感センサ15と、スピーカー16と、光源17と、制御部18と、を有する。」

「【0048】
また、照明装置1において、上述したようにPLCモデム11を制御部18とは別の構成にするのではなく、制御部18として一体化する構成としてもよい。この場合、ステップS4の動作において、制御部18が位置信号と識別信号に加え感知信号を送信したときのみ管理部21が端末3に対してサーバ2への接続を許可することにすれば、リモート操作により端末3が不正に利用されることを防げるようになる。
【0049】
PLCモデム11と制御部18を一体化する場合、サーバ2が、避難経路を位置IDに対応付けた防災データを記憶部22に格納し、災害(地震や火災)を感知する防災システムと接続されることとしてもよい。
【0050】
上記の場合、管理部21は、防災システムより災害を感知した旨を通知されると、照明装置1に対して防災データから対応する避難経路を読み出して送信する。すると、制御部18は、避難を指示する旨の音声データをスピーカー16より出力させるとともに、無線LANアクセスポイント12を介して避難経路を端末3へ配信する。このようにすれば、照明装置1は、端末3の利用者に対して視覚および聴覚で災害の発生を通知できるため、より確実に避難誘導を行うことが可能となる。」

5.引用文献5について
原査定(平成29年2月21日付け拒絶査定)において周知技術を示す文献として新たに引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
複数の無線アクセスシステムにアクセス可能な通信インタフェースを具備するモバイルルータを備えた移動体通信システムにおいて、
前記モバイルルータは、自身に収容される端末装置がアクセスする無線アクセスシステムを前記複数の無線アクセスシステムの中から選択的に使い分け制御することを特徴とする移動体無線通信システム。」


第5 対比・判断1(引用発明1との対比・判断)
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1における「避難行動経路に設けた照明器具421‐42n」、「各階の天井に設置された適宜数のスピーカ341-34n」、及び「家屋端末20に含まれ、ルータ28を経て地震情報を受信する、ハウジング22に内蔵されたコンピュータ24」は、それぞれ本願発明1の「照明を行う照明装置」、「音を出力する音響装置」、及び「情報を受信する受信装置」に相当する。
次に、引用発明1において「家屋端末20のコンピュータ24」が受信する「地震情報」は、「気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が緊急地震速報を受け取り、緊急地震速報に基づいて計算した予測震度および予測到達時間をそれぞれ震度情報および予測到達時間情報として含む地震情報」であるから、本願発明1の「公衆無線通信回線から供給される情報であって地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報」に対して、「地震による揺れが到達することを予測した地震速報」である点で共通するといえる。そうすると、引用発明1において「気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が緊急地震速報を受け取り、緊急地震速報に基づいて計算した予測震度および予測到達時間をそれぞれ震度情報および予測到達時間情報として含む地震情報を、たとえばインタネットのようなネットワーク18を介して、家屋端末20に送信し、家屋端末20のコンピュータ24は、地震情報を受信したとき、照明制御用信号として利用する地震発生信号を発生し、この地震発生信号は、トリガ信号としてタイマリレー38に与えられ、照明器具421‐42nは点灯駆動され」、「コンピュータ24はまた、地震情報を受信したとき、「チャンリン チャンリン XX秒後 震度○の地震がきます」という音声データを出力し、スピーカ341-34nから、そのような音声データに従った地震警報音声(音声ガイド)が出力され」ることと、本願発明1において「公衆無線通信回線から供給される情報であって地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知」することとは、共に「地震による揺れが到達することを予測した地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知」する点で共通するといえる。
また、引用発明1において「コンピュータ24は、気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が受け取った緊急地震速報に基づいて計算した地震情報を、たとえばインタネットのようなネットワーク18を介して受信する」ことと、本願発明1において「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」こととは、共に「前記受信装置は、前記地震速報を受信する」点で共通するといえる。
そして、引用発明1の「地震警報装置10」と、本願発明1の「照明ユニット」とは、共に「装置」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「照明を行う照明装置を備える装置であって、
音を出力する音響装置と、
情報を受信する受信装置と、をさらに備え、
地震による揺れが到達することを予測した地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知し、
前記受信装置は、前記地震速報を受信する
ことを特徴とする装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1は、「照明ユニット」であって、「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作」するのに対し、引用発明1は複数の「照明器具421‐42n」、複数の「スピーカ341-34n」及び「コンピュータ24」を備える「地震警報装置10」であって、これらが電力供給部に接続されていることは明らかであるが、電力供給部が設けられた所定部における同じ位置に配置されているものではない点。

相違点2:本願発明1の受信装置が「公衆無線通信回線から供給される情報であって地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報」を受信し、また「携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」とされているのに対し、引用発明1のコンピュータ24が受信するのは「気象庁サーバ12から専用回線14を介して、システムサーバ16が緊急地震速報を受け取り、緊急地震速報に基づいて計算した予測震度および予測到達時間をそれぞれ震度情報および予測到達時間情報として含む地震情報」である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作」するという構成は、上記引用文献2,5には記載も示唆もされていない。一方、上記引用文献3,4には、照明装置、音響装置、及び受信装置(引用文献3の「照明灯部43」、「スピーカ31などから構成されるラジオ受信機30」、及び「緊急放送受信機23」、引用文献4の「光源17」、「スピーカー16」、及び「無線LANアクセスポイント12」)を一体に設けた(同じ位置に配置された)照明装置が記載されている。
しかしながら、引用発明1は複数の「避難行動経路に設けた照明器具421‐42n」、複数の「各階の天井に設置された適宜数のスピーカ341-34n」を構成として備える地震警報装置であるから、家屋全体に、または避難行動経路に沿って地震情報を伝えて適切な避難行動を行わせることを意図するものであることは明らかであって、これらの構成を一体化することは、その意図に反するものといえる。しかも「コンピュータ24」を内蔵する「ハウジング22」には、照明器具とは別に、地震情報の受信時に点滅駆動される「LED30」も設けられている。そうすると、これら「照明器具421‐42n」、「スピーカ341-34n」、及び「コンピュータ24」の構成を一体化することには阻害要因がある。したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作」するという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 対比・判断2(引用発明3との対比・判断)
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明3とを対比する。
まず、引用発明3における「照明灯部43」は、本願発明1の「照明を行う照明装置」に相当するから、引用発明3の「照明灯部43を備える屋外用照明装置」は、本願発明1の「照明を行う照明装置を備える照明ユニット」に相当するといえる。
また、引用発明3の「スピーカ31などから構成されるラジオ受信機30」及び「緊急放送受信機23」は、それぞれ本願発明1の「音を出力する音響装置」及び「情報を受信する受信装置」に相当する。
次に、引用発明3の「地震、津波などを示す緊急警報信号」は、本願発明1の「地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報」に相当する。また引用発明3において「最大限の照度で歩道を照明するように動作」することと、「ラジオ受信機30を受信動作させ、放送をスピーカ31から流すように動作」することとは、それぞれ本願発明1において「前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ」ることと、「前記音響装置は所定の音を出力すること」に相当し、引用文献3のこれらの動作が地震の揺れが到達する可能性があることを報知するものを含むことも明らかであるから、引用発明3において「放送局から、地震、津波などを示す緊急警報信号が送信された場合、緊急放送受信機23でこの緊急警報信号が受信され、夜間には最大限の照度で歩道を照明するように動作し、昼間に、緊急放送受信機23で緊急警報信号が受信された場合、ラジオ受信機30を受信動作させ、放送をスピーカ31から流すように動作」することと、本願発明1において「公衆無線通信回線から供給される情報であって地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知」することとは、共に「地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知」する点で共通するといえる。
さらに、引用発明3においては、「照明灯部43」、「ラジオ受信機30」、及び「緊急放送受信機23」は独立した「屋外用照明装置」が備える構成であり、また「照明灯部43の内部には、制御ユニット37と、照明灯および緊急放送受信機の電源としての蓄電体25が収納され、制御ユニット37内には、ラジオ放送を受信するラジオ受信機30、緊急放送受信機23を制御する制御回路20が内蔵され」ていることから、これら「照明灯部43」、「ラジオ受信機30」、及び「緊急放送受信機23」が同じ位置に配置されていることは明らかといえる。そうすると、引用発明3において「照明灯部43は、複数本の発光ダイオードなどからなる照明灯46が取り付けられて構成され、照明灯部43の内部には、制御ユニット37と、照明灯および緊急放送受信機の電源としての蓄電体25が収納され、制御ユニット37内には、ラジオ放送を受信するラジオ受信機30、緊急放送受信機23を制御する制御回路20が内蔵され」ることと、本願発明1において「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作」することとは、共に「前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、同じ位置に配置され、また前記照明装置と前記受信装置とは、電力供給部からの電力により動作」する点で共通するといえる。
また、引用発明3において「緊急放送受信機23は、放送局からの、地震、津波などを示す緊急警報信号を受信する」ことと、本願発明1において「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」こととは、「前記受信装置は、前記緊急地震速報を受信する」点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「照明を行う照明装置を備える照明ユニットであって、
音を出力する音響装置と、
情報を受信する受信装置と、をさらに備え、
地震による揺れが到達することを予測した緊急地震速報を前記受信装置が受信したときに、前記照明装置は照明態様を所定の態様に変化させ、前記音響装置は所定の音を出力することで、前記揺れが到達する可能性があることを報知し、
前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、同じ位置に配置され、また前記照明装置と前記受信装置とは、電力供給部からの電力により動作し、
前記受信装置は、前記緊急地震速報を受信する、
ことを特徴とする照明ユニット。」

(相違点)
相違点3:本願発明1においては、受信装置が受信する緊急地震速報は「公衆無線通信回線から供給される情報」であり、また「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」とされているのに対し、引用発明3においては「緊急警報信号」は「放送局から、・・・送信され」るものであって、「緊急放送受信機23は、放送局からの、地震、津波などを示す緊急警報信号を受信する」とされている点。

相違点4:本願発明1においては、「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、・・・前記電力供給部からの電力により動作」するのに対し、引用発明3においては、「屋外用照明装置」が何らかの電力供給部に接続されていることは明らかであるし、また、照明灯および緊急放送受信機の電源としての蓄電体25を備えているが、「屋外用照明装置」が該「蓄電体25」に接続されて「ラジオ受信機30」が「蓄電体25」からの電力により動作しているか否かは不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討すると、相違点3に係る本願発明1における、緊急地震速報は「公衆無線通信回線から供給される情報」であり、また「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」という構成は、上記引用文献1,2,4,5のいずれにも記載も示唆もされていない。
ここで、緊急地震速報の受信手段としての携帯電話機、もしくは情報の伝送を行う無線通信手段としての携帯電話機が、特に例を示すまでもなく本願出願前に周知であったと言えるとしても、引用発明3は用途として「歩道などに設けられる足元灯」(引用文献3の【0039】)などが想定される「屋外用照明装置」であるから、緊急地震速報を伝送する手段として、通信先が特定の個人に限定される携帯電話機を用いる使用形態は通常想定できないものであって、引用発明3において携帯電話機を用いることには阻害要因がある。
したがって、上記相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1における、緊急地震速報は「公衆無線通信回線から供給される情報」であり、また「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記照明ユニットは、所定部に設けられた1つの電力供給部に接続され、前記照明装置と前記音響装置と前記受信装置とは、前記照明ユニットが前記電力供給部に接続されたときに前記所定部における同じ位置に配置され、前記電力供給部からの電力により動作」するという事項、及び緊急地震速報は「公衆無線通信回線から供給される情報」であり、また「前記受信装置は、携帯電話機と無線通信を行い、前記公衆無線通信回線から当該携帯電話機に供給され当該携帯電話機により転送された前記緊急地震速報を受信する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-27 
出願番号 特願2012-45735(P2012-45735)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 秀直  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 照明ユニット  
代理人 伊佐治 創  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 中山 ゆみ  

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