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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1337629
審判番号 不服2016-19291  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-22 
確定日 2018-02-22 
事件の表示 特願2014- 98136「ユーザ装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-216502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月9日の出願であって、平成27年6月19日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで手続補正がなされ、平成28年2月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年4月15日付けで手続補正がなされ、同年9月21日付けで同年4月15日付けの手続補正の補正の却下の決定がされるとともに、同日付で拒絶査定(謄本送達日同年9月27日)がなされ、これに対し、同年12月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。



第2 平成28年12月22日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年12月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後発明
平成28年12月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年8月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項10に記載された、
「マスタ基地局とセカンダリ基地局と同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するユーザ装置におけるランダムアクセス(RA)手順を実行する方法であって、
前記セカンダリ基地局に対するRA手順の起動をトリガするRA手順起動イベントを検出するステップと、
前記RA手順を実行すると共に、タイマを起動するステップと、
トリガ元の基地局にコンフィギュレーション再設定完了通知を送信するステップと、
前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知するステップと、
を有する方法。」(以下、「本願発明」という。)

を、特許請求の範囲の請求項9として、
「マスタ基地局とセカンダリ基地局と同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するユーザ装置におけるランダムアクセス(RA)手順を実行する方法であって、
前記セカンダリ基地局に対するRA手順の起動をトリガするRA手順起動イベントを検出するステップと、
前記RA手順を実行すると共に、タイマを起動するステップと、
トリガ元の基地局にコンフィギュレーション再設定完了通知を送信するステップと、
前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知するステップと、
を有し、
前記RA手順起動イベントはセカンダリセルの追加設定であり、
前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記ユーザ装置が、前記セカンダリセルにおける全てのアップリンク送信を自律的に停止するステップを更に有する方法。」(以下、「補正後発明」という。)
に変更することを含むものである。
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)


2 補正の適否
(1)補正の目的要件、新規事項の有無、シフト補正の有無
補正後発明に係る補正は、補正前の請求項10に記載された発明の「RA手順起動イベント」及び「前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合」について、それぞれ「前記RA手順起動イベントはセカンダリセルの追加設定であり」と限定し、「前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記ユーザ装置が、前記セカンダリセルにおける全てのアップリンク送信を自律的に停止する」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする。

そして、本件補正において、特許法第17条の2第3項(新規事項)、第4項(シフト補正)に違反するところはない。


(2)独立特許要件
補正後発明に係る補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

ア.補正後発明
補正後発明は、上記「1 本願発明と補正後発明」の補正後発明のとおりと認める。


イ.引用発明等
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された、NSN, Nokia Corporation, RA and RRC Reconfiguration for SCG addition/modification, 3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85bis, R2-141611, 2014年3月21日(利用可能日), URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85bis/Docs/R2-141611.zip(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
([当審注]:下線部は当審で付した。以下同様。)


(ア)「1 Introduction
RAN#62 has approved a WI [1] of Dual Connectivity as a continuation of SI [2] for Higher Layer Enhancements for Small Cells, and several decisions related to the SeNB configuration were made as below in RAN2 #85 [3]:

- The SeNB may choose whether this requires use of RA (details FFS, e.g. the IE by which the SeNB triggers synchronized procedure)

- It is up to the SeNB to decide whether to use the procedure without RA (“unsynchronized”) or with RA (“synchronized”)
・Decision could be done e.g. depending on whether old and new PUCCH SCell belong to the same TAG

- If the SeNB chooses a synchronized reconfiguration, the UE performs a Random Access towards the SeNB. It does not matter in which order the UE sends RRCConnectionReconfigurationComplete and performs RA. The success of the RA is not required for a successful completion of the RRC procedure.

In this paper, we would like to analyze the implications of those decisions in the following sections. 」
(当審訳)
「1 イントロダクション
RAN#62はデュアルコネクティビティの作業項目(WI)[1]をスモールセルの高レイヤエンハンスメントの検討項目(SI)[2]の継続として承認した。そして、RAN2#85[3]において、以下の通りSeNBの設定に関連したいくつかの決定を行った。:

-SeNBはランダムアクセス(以下、RA)の利用を要するかどうかを選択するであろうこと。(詳細、例えば、SeNBが同期した手続をトリガするための情報要素(IE)は、更なる検討)

-RA無し(“非同期”)又はRA有り(“同期”)のいずれの手続を用いるかを決定することはSeNB次第であること。
・決定は、例えば新旧のPUCCHのセカンダリセル(以下、SCell)が同じタイミングアドバンスグループ(TAG)に属するかどうかに基づいて、なされること。

-仮にSeNBが同期した再設定を選択するならば、UEはSeNBに対してRAを実行する。UEがRRCConnectionReconfigurationCompleteを送ることとRAを実行することの順序は問わない。RAの成功はRRC手順の成功した完了を要しない。

この文書において、我々は続くセクションでこれらの決定の実装を分析したい。」

(イ)「2.2 Synchronized SeNB reconfiguration procedure (i.e. with random access))
Based on the discussion in [6], The SCG addition/modification Complete should be supported during SCG addition/MeNB triggered SCG modification procedure. The SeNB sends this message only after the successful RA and receiving complete indication of the RRC procedure from MeNB, MeNB may trigger the S1-U tunnel switching or DL data routing towards SeNB after receiving this message.
With existing specification, the SeNB may have difficulties to get the explicit success indication from UE for contention free RA procedure because HARQ is not supported for RAR message. The SeNB may consider a successful Random Access if there is no Random Access attempt during a certain period after sending RAR message. Therefore the SeNB might need some means to decide whether the RAR was successfully received to know the appropriate time to inform MeNB the complete of RA procedure. In this light, for starting the Random Access procedure, the UE may need to trigger the Regular BSR after configuring the SeNB resource. The reception of BSR could indicate the successful RA procedure to SeNB, accordingly the entire delay of the configuration procedure could be reduced.
Proposal 1: Regular BSR is triggered for initiating the Random Access procedure for synchronized SeNB reconfiguration procedure.」
(当審訳)
「2.2 同期したSeNB再設定手続(すなわちRAを伴う)
[6]の議論に基づけば、セカンダリセルグループ(以下、SCG)追加/修正完了は、SCG追加/MeNBがトリガするSCG修正手順が行われている間に行われるべきである。RAが成功すること、及び、MeNBからのRRC手順の完了指示子を受信したことの後にのみ、SeNBはこのメッセージを送る。MeNBはこのメッセージを受信した後、S1-Uトンネルスイッチ又はSeNBへのDLデータルーティングをトリガする。
存在する詳細においては、SeNBはコンテンションフリーRAのためのUEからの明示的な成功を示す指示子を獲得するのは難しいだろう。なぜならHARQがRA応答(以下、RAR)メッセージにおいてサポートされていないからである。RARメッセージ送信後の所定期間にRAの試みが無ければ、SeNBは成功したRAと考える。それゆえ、MeNBにRA手順の完了を知らせるための適切な時間を把握するために、SeNBはRARが成功裡に受信されたかどうかを決定する手段を必要とするだろう。これに照らせば、RA手順の開始のために、SeNBのためのリソースを設定した後、UEはレギュラーバッファステータスレポート(以下、レギュラーBSR)をトリガする必要があるだろう。BSRの受信はSeNBへの成功するだろうRA手順を指し示し、結果的に設定手順の全体的な遅延は減らされる。
提案1:同期したSeNB再設定手続のためのRA手順を開始するために、レギュラーBSRがトリガされる。

(ウ)「2.3 Handling of abnormal cases
・・・略・・・
2.3.2 RA failure
In case of synchronized SeNB reconfiguration procedure, the UE may re-attempt the RA procedure several times in case of errors, which may take time to detect the RA failure; therefore it is likely the RA failure is reported by UE after sending the RRC Reconfiguration complete message.
・・・略・・・
As agreed in RAN2#85, in case the RA failure associated with an SCG cell, the UE shall not trigger RRC Reestablishment procedure but report MeNB of the failure and then retain the MeNB connection. The MeNB may trigger the SCG release procedure towards SeNB to release the reserved resource for this UE in the SeNB.
Observation 4: For synchronized reconfiguration procedure, when RA failure associated to an SCG cell is detected, the failure shall be reported to MeNB and the SCG release procedure may be triggered consequently.」
(当審訳)
「2.3 異常な場合の扱い
・・・略・・・
2.3.2 RA失敗
同期したSeNBの再設定手順において、エラーの場合UEは何度かRA手順を再試行するだろう。このことは、RA失敗を検出するために時間がかかることになる。それゆえ、RRC再設定完了メッセージの送信後、UEによってRA失敗が報告されることが望ましい。
・・・略・・・
RAN2#85で合意したように、SCGセルに関連するRA失敗の場合において、UEはRRC再確立手順を行わないがMeNBに失敗を報告し、そしてそれからMeNBとの接続を維持する。SeNBにおいてこのUEのために予約したリソースを解放するため、MeNBはSeNBに対してSCG解放手順をトリガする。
観察4:同期した再設定手順において、SCGセルに関連したRA失敗が検出されたとき、失敗はMeNBに報告され、同時にSCG解放手順がトリガされる。」

(エ)「Figure 5: RA failure towards SeNB during synchronized reconfiguration procedure」

(当審訳)
「図5:同期した再設定手順の間でのSeNBに対するRA失敗」


当該技術分野の技術常識を勘案して考慮すると、引用文献1の上記各記載及び図面から以下のことが把握できる。

上記(ア)によれば、引用文献1がデュアルコネクティビティの検討に関するものであることは明らかである。そして、デュアルコネクティビティとはMeNB及びSeNBが同時通信を行う機能であることは技術常識である。
また、同(ア)には、UEがSeNBに対してRA手順を実行することが示されている。
そうすると、引用文献1のUEは、「MeNBとSeNBと同時通信するデュアルコネクティビティ機能」を有し、「RA手順を実行する」ものといえる。

上記(ア)には、UEがRRC接続再設定における完了メッセージである「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送ることと、RAを実行することの順序は問わず、RAの成功はRRC手順(RRC接続再設定)の成功完了を要しないとあるから、UEが、RRC接続再設定と独立してSeNBに対するRAを行うことが示されているといえる。
上記(イ)には、同期したSeNBの再設定手順(すなわちRAを伴う)において、SCGの追加/修正手順が行われている間にSeNBはSCG追加/修正完了を送信すること、及び、SeNBによるこの送信はRAの成功及びMeNBからのRRC手順の完了指示子受信の後にのみ行われること、が示されている。
そうすると、引用文献1では、同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順が行われる際にUEがRA手順を行うこと、が読み取れる。
また、上記(エ)を参照するに、同期したSeNBの再設定手順において、UEの最初の動作は「RRCConnectionReconfiguration」の受信であるから、同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順をUEにおいてトリガするイベントは「RRCConnectionReconfiguration」の受信と解するのが自然である。
してみれば、引用文献1のUEは、「同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順が行われる際にRA手順を実行するものであって、SCGの追加手順をUEにおいてトリガする「RRCConnectionReconfiguration」の受信というイベントを検出する」ものといえる。

上記(ウ)には、同期したSeNBの再設定手順において、UEがRA手順を試みること、及び、SCGセルに対するRA手順が失敗する場合、UEはMeNBにRA失敗を報告することが示されている。
また、上記(エ)には、引用文献1のUEが、MeNBに「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信すること、及び、その後に「RA failure report」、すなわちRA手順が完了していないことを通知すること、が示されている。
ここで、上記(イ)によれば、同期したSeNBの再設定手順としてSCGの追加手順が含まれることから、上記(ウ)及び(エ)はSCG修正のみならず、SCG追加においても行われることといえる。
そうすると、引用文献1のUEが実行することには、「MeNBに「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信」すること、及び、「「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信した後、RA失敗の場合、RA手順が完了していないことをMeNBに通知する」こと、が含まれるといえる。

以上を総合すると,引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「MeNBとSeNBと同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するUEにおけるRA手順を実行する方法であって、
同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順が行われる際にRA手順を実行するものであって、SCGの追加手順をUEにおいてトリガする「RRCConnectionReconfiguration」の受信というイベントを検出するステップと、
前記MeNBに「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信するステップと、
前記「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信した後、RA失敗の場合、前記RA手順が完了していないことを前記MeNBに通知するステップと、
を有する方法。」


[周知技術]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2009-201114号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(オ)「【0017】
UEでRRCメッセージ(例えばRRC接続再設定メッセージ)に基づいてハンドオーバープロセスを実行するとき、MACエンティティー226はそれに応じてハンドオーバープロセスに対応するランダムアクセスプロセスを起動する。それに鑑みて、本発明の実施例はプログラムコード112にランダムアクセスプロセス改善プログラムコード220を設け、UEが動作不能かアイドリング状態に陥るのを防止する。図6を参照する。図6は本発明による方法40のフローチャートである。下記方法40は無線通信システムのUEにおいてハンドオーバープロセスで起動されるランダムアクセスプロセスを改善するために用いられ、ランダムアクセスプロセス改善プログラムコード220としてコンパイルすることができる。
【0018】
ステップ400:開始。
ステップ402:ハンドオーバープロセスの実行時に、当該ハンドオーバープロセスに対応するランダムアクセスプロセスを起動する。
ステップ404:一定時間内に有効なランダムアクセス応答メッセージを受信しないか、またはランダムアクセスプロセスのコンテンションに失敗した場合に、ハンドオーバープロセスが完成するかハンドオーバープロセスの動作期間が終了するまで、ランダムアクセスプリアンブルの送信を再実行する。
ステップ406:終了。
【0019】
以上のとおり、UEでハンドオーバープロセスに対応するランダムアクセスプロセスを起動した後、一定時間内に有効なランダムアクセス応答メッセージを受信しないか、またはランダムアクセスプロセスのコンテンションに失敗した場合に、ハンドオーバープロセスが完成するかハンドオーバープロセスの動作期間が終了するまで、ランダムアクセスプリアンブルの送信を再実行する。
【0020】
本発明の実施例では、ランダムアクセスプリアンブルの伝送に回数制限がなく、またハンドオーバープロセスの動作時間がタイマーT304により制御されることが望ましい。そうすれば、本発明の実施例は、ハンドオーバープロセスが完成するかタイマーT304が終了するまで、ランダムアクセスプリアンブルの伝送を制限無く繰り返すことができる。したがって、本発明の実施例は、ランダムアクセスプロセスの終了からタイマーT304の終了まで、UEが動作不能かアイドリング状態に陥るという従来の問題を解決することができる。
【0021】
本発明の実施例による方法40は、タイマーT304の終了時にUEでハンドオーバープロセスが完成できない場合、ハンドオーバープロセスが失敗したと判定するステップを含むことができる。詳しくは前掲従来の技術の説明を参照すればよく、ここで説明を省略する。
【0022】
まとめて言えば、本発明の実施例はハンドオーバープロセスで起動されるランダムアクセスプロセスを改善する方法を提供する。UEはランダムアクセスプリアンブルの最大伝送回数に達したかどうかを問わず、ハンドオーバープロセスが完成するかタイマーT304が終了するまで、ランダムアクセスプリアンブルの伝送を制限無く繰り返すことができる。したがって、本発明の実施例はUEが動作不能かアイドリング状態に陥るのを防止することができる。」


また、国際公開WO2014/035135号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(カ)

(当審訳)
「【請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて端末がネットワークと信号を送受信する方法であって、
下りリンクセルを介して前記ネットワークから下りリンク信号を受信し、第1上りリンクセルを介して前記ネットワークに上りリンク信号を送信するステップと、
前記ネットワークから上りリンクセルを変更するための特定メッセージを受信するステップと、
前記特定メッセージによって上りリンクセルを第2上りリンクセルに変更し、前記第2上りリンクセルを介して前記ネットワークに前記上りリンク信号を送信するステップと、
を含み、
前記上りリンクセル変更時に、前記下りリンクセルは維持されることを特徴とする信号送受信方法。
【請求項2】
前記特定メッセージは、
ハンドオーバー命令メッセージ、RRC接続再設定メッセージ(Radio Resource Control connection reconfiguration message)、PDCCH命令(Physical Downlink Control Channel Order)及びコンポーネント搬送波活性化メッセージのうちの一つである、請求項1に記載の信号送受信方法。」

(キ)

(当審訳)
「【請求項7】
前記上りリンクセル変更時に、タイマー動作期間に前記第2上りリンクセルとランダムアクセス手順を行うステップをさらに含み、
前記タイマー満了時まで前記ランダムアクセス手順が完了しない場合、前記上りリンクセルを前記第1上りリンクセルに再変更するステップをさらに含む、請求項1に記載の信号送受信方法。」

(ク)

(当審訳)
「[90]
さらに、端末が現在動作するレイヤと異なるセルレイヤにランダムアクセスを試みるとき、予想せぬ端末の移動や干渉問題などからそのランダムアクセスに失敗する場合が発生しうる。この場合、端末が続けて当該セルレイヤで上りリンク送信を行おうと試みると、基本的な制御信号さえ送信できなくなることもある。そのため、事前に特定タイマーを定義し、タイマー駆動時間以内に、変更されたセルレイヤでランダムアクセスに成功できなかったら、端末は、既存に動作した上りリンクセルレイヤやPCellと連動した上りリンクセルレイヤに戻って上りリンク動作を行うように規定できる。特に、このような場合、別の指示なしでも端末がランダムアクセス過程を行うことによって新しく上りリンク同期を取るように動作できる。」

(ケ)


上記(オ)及び(カ)?(ケ)の記載を総合すれば、周知例1及び2のいずれにおいても、「RRC接続再設定メッセージに基づいてRAを行うに際し、タイマを起動させ、当該タイマの満了前にRA手順が完了しない場合にRA失敗とする」技術(以下、「周知技術」という。)が示されており、当該周知技術は、本願出願前に既に周知であると認められる。


ウ.対比・判断
以下、補正後発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「MeNB」、「SeNB」及び「UE」は、補正後発明の「マスタ基地局」、「セカンダリ基地局」及び「ユーザ装置」に対応する。
そして、引用発明の「MeNBとSeNBと同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するUEにおけるRA手順を実行する方法」は、補正後発明の「マスタ基地局とセカンダリ基地局と同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するユーザ装置におけるランダムアクセス(RA)手順を実行する方法」に対応する。

(イ)引用発明では、「同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順が行われる際」に「RA手順を実行する」から、ここでいう「SCG」には「SeNB」の管理するセルが含まれることは明らかである。
そうすると、「SCGの追加手順が行われる際」の「RA手順」は、SCGに含まれるセルを管理する「SeNB」に対して行われると解するのが自然である。
また、引用発明では、「SCGの追加手順をUEにおいてトリガする「RRCConnectionReconfiguration」の受信というイベントを検出」し、当該イベントの検出によってSCGの追加手順を行う際にRA手順を実行する。
そうすると、引用発明の「「RRCConnectionReconfiguration」の受信」は、SCGの追加手順をトリガすることに加え、RA手順の実行を起動するものでもあるから、RA手順の起動をトリガするイベントであるといえる。
してみれば、引用発明の「同期したSeNBの再設定手順であるSCGの追加手順が行われる際にRA手順を実行するものであって、SCGの追加手順をUEにおいてトリガする「RRCConnectionReconfiguration」の受信というイベントを検出するステップ」は、補正後発明の「前記セカンダリ基地局に対するRA手順の起動をトリガするRA手順起動イベントを検出するステップ」に相当する。

(ウ)上記(イ)でも示したように、引用発明ではRA手順の起動をトリガする「RRCConnectionReconfiguration」の受信に応じて「RA手順を実行する」から、タイマを起動するものではないものの、補正後発明と引用発明とは、「RA手順を実行する」ステップを有する点では共通する。

(エ)引用発明では、UEに対してSCGの追加手順をトリガするのはMeNBであって、「RRCConnectionReconfigurationComplete」とはコンフィギュレーション再設定完了通知のことであるから、引用発明の「前記MeNBに「RRCConnectionReconfigurationComplete」を送信するステップ」は、補正後発明の「トリガ元の基地局にコンフィギュレーション再設定完了通知を送信するステップ」に相当する。

(オ)上記(イ)でも示したように、引用発明の「「RRCConnectionReconfiguration」の受信」は、SCGの追加手順をトリガすることに加え、RA手順の実行を起動するものでもある。
そして、SCGの追加手順において、UEは「RRCConnectionReconfiguration」に基づいてセカンダリセルの追加設定を行うことは明らかである。
してみれば、引用発明においてRA手順の実行を起動する「「RRCConnectionReconfiguration」の受信」は「セカンダリセルの追加設定」である点で補正後発明と一致する。

(カ)引用発明では、「RA失敗の場合」をどのように判断するかや、「RA失敗の場合」にセカンダリセルについてどのような処理を行うかについて特定がないものの、補正後発明と引用発明とは、「前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、RA失敗の場合、前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知するステップ」を有する点では共通する。


以上を総合すると、補正後発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

[一致点]
「マスタ基地局とセカンダリ基地局と同時通信するデュアルコネクティビティ機能を有するユーザ装置におけるランダムアクセス(RA)手順を実行する方法であって、
前記セカンダリ基地局に対するRA手順の起動をトリガするRA手順起動イベントを検出するステップと、
RA手順を実行するステップと、
トリガ元の基地局にコンフィギュレーション再設定完了通知を送信するステップと、
前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、RA失敗の場合、前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知するステップと、
を有し、
前記RA手順起動イベントはセカンダリセルの追加設定である、
方法。」

[相違点1]
補正後発明が、「前記RA手順を実行すると共に、タイマを起動するステップ」を有し、前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、「前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合」に、RA手順が完了していないことをトリガ元の基地局に通知するのに対し、引用発明は、「RA手順を実行すると共に、タイマを起動するステップ」を有しておらず、前記コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、RA失敗の場合、前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知するステップが、どのような場合に「RA失敗の場合」とするか特定していない点。

[相違点2]
補正後発明が、「前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記ユーザ装置が、前記セカンダリセルにおける全てのアップリンク送信を自律的に停止するステップ」を更に有するのに対し、引用発明は、RA失敗の場合、セカンダリ基地局についてどのような処理を行うか特定していない点。


エ.当審の判断
(ア)相違点1について
上記「イ.引用発明等」にて周知技術として示したように、「RRC接続再設定メッセージに基づいてRAを行うに際し、タイマを起動させ、当該タイマの満了前にRA手順が完了しない場合にRA失敗とする」技術は、本願出願日前に既に周知である。

してみれば、RRC接続再設定メッセージに基づいてRAを行う引用発明1において、同じくRRC接続再設定メッセージに基づいてRAを行う上記周知技術を採用することで、引用発明において、「RA手順を実行すると共にタイマを起動」し、コンフィギュレーション再設定完了通知を送信した後、「前記RA手順が当該タイマの満了前に完了しなかった場合」を、RA失敗の場合として、「前記RA手順が完了していないことを前記トリガ元の基地局に通知する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について
RAとは、基地局の接続確立や再同期のために行われるものであって、UEは基地局に対するRA成功の場合に、基地局との接続確立や再同期が為されたとして当該基地局に通信に係るUL信号を送信するものである。
また、上記「イ.引用発明等 (ウ)」に、RA失敗の場合、UEは当該SCGセルに対するRRC再確立手順を行わないことが示されている。
これらのことから、引用文献1において、どのような場合にRA失敗としたかにかかわらず、RA失敗の場合に、RAを行っていたセルに対してUEが改めてUL送信を行う必要性が想定されないことは明らかである。
そして、「RA失敗が検出されたとき、UEはセカンダリ基地局の全てのセルへの全てのUL送信を停止する」ことは周知(必要であれば、「ETSI MCC,Report of 3GPP TSG RAN WG2 meeting #85 held in Prague, Czech Republic, February 10-14, 2014、3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85 R2-141854、第53頁、2014年4月4日(利用可能日)、URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85bis/Docs/R2-141854.zip」、「ITRI、Further Discussion on RLF Handling in Dual Connectivity、3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85bis, R2-141345、2014年3月21日(利用可能日)、URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85bis/Docs/R2-141345.zip」等参照のこと。)であったことを鑑みると、引用発明において、相違点2に係る構成とすることは当業者が適宜為し得ることである。

(ウ)作用効果について
そして、補正後発明の作用効果についても、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

(エ)その他
請求人は、審判請求書にて「引用文献1によると、セカンダリセルの解放はMeNBからの指示によるものであり、ユーザ装置がMeNB契機でなく「セカンダリセルにおける全てのアップリンク送信を自律的に停止する」本願発明とは異なります。」と主張しているので、当該主張についても検討する。
確かに、引用文献1にはSCellの解放がMeNBからの指示によることが記載されている。
しかしながら、SCell解放手順がMeNB契機であるからといって、UEがSCellにおける全てのUL送信を自律的に停止することができないとはいえない。そもそも、上記「イ.引用発明等 (ウ)」にあるように、SCell解放手順はSeNBにおいてUEのために予約したリソースを解放するために行われるものであるから、当該SCell解放手順はUEが解放するSCellへのUL送信を自律的に停止するか否かに関係なく行われるものである。
そうすると、引用文献1において、SCell解放手順がMeNB契機で行われることが記載されているからといって、引用発明のUEがSCellへのUL送信を自律的に停止することができない、ということにはならない。
そして、上記(イ)にて示したように、UEがSCellへのUL送信を自律的に停止することは当業者が適宜為し得ることである。
してみれば、請求人の上記主張は採用できない。

(オ)小括
以上のとおり、補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
よって、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年12月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 平成28年12月22日付け手続補正についての補正の却下の決定 1 本願発明と補正後発明」の「本願発明」のとおりのものと認める。


2 引用発明等
引用発明及び周知技術は,上記「第2 平成28年12月22日付け手続補正についての補正の却下の決定 2 補正の適否 (2)独立特許要件 イ.引用発明等」で認定したとおりである。


3 対比・判断
以下、本願発明と引用発明とを対比する。

まず、本願発明は、補正後発明の
.「前記RA手順起動イベントはセカンダリセルの追加設定であり、
前記RA手順が前記タイマの満了前に完了しなかった場合、前記ユーザ装置が、前記セカンダリセルにおける全てのアップリンク送信を自律的に停止するステップを更に有する」という発明特定事項を省いたものであって、他の構成は同じである。
そうすると、上記「第2 平成28年12月22日付け手続補正についての補正の却下の決定 2 補正の適否 (2)独立特許要件 ウ.対比・判断」での検討のとおり、本願発明に上記発明特定事項を付加した補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明できたものである。


4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-13 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-11 
出願番号 特願2014-98136(P2014-98136)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 昌秋  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 古市 徹
山本 章裕
発明の名称 ユーザ装置及び方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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