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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M |
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管理番号 | 1337634 |
審判番号 | 不服2017-1855 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-08 |
確定日 | 2018-02-22 |
事件の表示 | 特願2013-132260「エアクリーナ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月28日出願公開、特開2014-156854〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成25年6月25日(優先権主張平成25年1月17日)の出願であって、平成28年11月2日付けで拒絶査定され(発送日:同年11月15日)、これに対し、平成29年2月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正されたが、その後、当審において、平成29年9月21日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年11月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 (a)インレット(8)とアウトレット(9)との間に中空部(3)を有する中空状のハウジング(1、2)と、 (b)前記中空部(3)をダストサイド(4)とクリーンサイド(5)とに区画すると共に、前記インレット(8)から前記中空部(3)に導入された空気を濾過するエレメント(6)と、 (c)前記アウトレット(9)に設置されて、前記アウトレット(9)を通過する空気の流量を測定するエアフロメータ(10)と、 (d)前記エレメント(6)と前記アウトレット(9)との間に配置されて、前記エレメント(6)を通過した空気の流れを整流する整流手段(7、41、51)とを備え、 前記整流手段(7、41、51)は、その空気が通過する領域(31、42、45、52、55)の空気流れの上下流方向において、前記エレメント(6)を含む他の部品と非接触となるように配置され、 前記整流手段(41)は、前記クリーンサイド(5)側の内壁から前記クリーンサイド(5)の流路断面積を狭くする側に突出し、前記クリーンサイド(5)側の内壁に沿って流れる空気を整流する整流突起(41、44、45)を有し、 前記エレメント(6)は、不織布または濾紙よりなる濾材を山部と谷部とが交互に繰り返すように襞折りされたエレメント本体(21)を有することを特徴とするエアクリーナ。」 そして、本願発明に係る優先権の主張について、本願の優先権の主張の基礎とされた特願2013-6137の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には本願発明が記載されていないから、当該優先権は認められない。 第2 刊行物 1 刊行物1 これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2010-138755号公報(以下「刊行物1」という。)には、エアークリーナに関して、図面(特に、【図1】ないし【図5】参照)と共に、次の事項が記載されている。下線は、当審が付した。以下同様。 (1)「【0012】 以下、本発明の最良と思われる実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。 (第1実施形態) 図4に示すように、エンジン11にはインテークマニホールド12及びスロットルバルブ13を介してアウトレットホース14の一端が接続され、その他端がエアクリーナ15の送出口16側に接続されている。該エアクリーナ15の吸入口17側にはインレットダクト18が接続されている。これらのインテークマニホールド12、スロットルバルブ13、アウトレットホース14、エアクリーナ15及びインレットダクト18等により吸気通路が構成されている。図1の矢印で示すように空気は、インレットダクト18からエアクリーナ15を通ってアウトレットホース14へ流れるようになっている。アウトレットホース14には、エンジンへの吸気量を検出するエアフローセンサ19が取着されている。 【0013】 図1に示すように、エアクリーナ15の送出口16にはカラー状の連結部材20がねじを介して固定され、該連結部材20に円筒状でかつ二重構造をなすアウトレット部材21の第1フランジ部22が係合され、片持ち支持されている。図2(a)及び(b)に示すように、アウトレット部材21は円筒状をなす本体部材23の基端部(図2(a)の左端部)に第1フランジ部22が突設されると共に、先端部に第2フランジ部24が突設されている。本体部材23は二重構造に形成され、その内部空間25には潜熱蓄熱材26が充填されている。さらに、本体部材23の内部は二重構造を有する枠体27が格子状に配設されている。この格子状に形成された枠体27間の通気路28を空気が流通するようになっている。この枠体27内の空隙29にも潜熱蓄熱材26が充填されている。そして、アウトレット部材21内を通過する空気が枠体27を介して潜熱蓄熱材26と熱交換されることにより、空気の温度が高い場合にはその温度が低下し、空気の温度が低い場合にはその温度が上昇し、所定温度範囲に近づくように制御される。」 (2)「【0015】 エアクリーナ15内の中央部には、上流側にエアフィルタエレメント30、下流側に整流格子体31が配設されている。エアフィルタエレメント30は、空気中のごみ、塵、砂塵などの異物を取り除き、清浄な空気をエンジン11に送るためのものである。このエアフィルタエレメント30は、不織布を襞状にして形成されている。 【0016】 整流格子体31は、エアクリーナ15内の空気の流れを揃え、円滑にアウトレットホース14へ流通させるためのものである。図3に示すように、整流格子体31は四角箱状の容器本体32と蓋体33とより構成され、これら容器本体32と蓋体33に連通する四角筒状の通気孔34が貫設されるように格子壁35が区画形成されている。容器本体32の通気孔34以外の部分は収容空間36となっている。」 (3)「【0018】 次に、上記のように構成されたエアクリーナ15について作用を説明する。 さて、吸気通路を経てエンジン11への吸気が行われる場合、空気はまずインレットダクト18からエアクリーナ15の吸入口17を経てエアクリーナ15内に吸入される。エアクリーナ15内では、エアフィルタエレメント30により空気中のごみ、塵、砂塵等の異物が不織布に捕捉される。 【0019】 アウトレット部材21では、格子状に配設された通気路28を空気が流通する。このとき、アウトレット部材21内の内部空間25には潜熱蓄熱材26が充填されていることから、空気と潜熱蓄熱材26との間で熱交換が行われる。熱交換に際しては、通気路28が細かく分割形成されているため、接触面積が大きく、効率の良い熱交換が行われる。 【0020】 ・・・(省略)・・・ 【0021】 ・・・(省略)・・・ 【0022】 エアクリーナ15から送出された空気は、アウトレットホース14内へと導かれ、エアフローセンサ19により吸気量が検出される。アウトレットホース14内の空気は、さらにスロットルバルブ13からインテークマニホールド12を経てエンジン11内へ吹き込まれる。」 (4)「【0025】 ・ 潜熱蓄熱材26はエアクリーナ15内の空気の送出口16側に配設されていることから、空気は潜熱蓄熱材26と熱交換した後速やかにアウトレットホース14へと送られ、熱交換による効果を有効に発揮させることができる。 (第2実施形態) 続いて、本発明を具体化した第2実施形態について説明するが、本第2実施形態では主に第1実施形態と異なる点について説明する。 【0026】 本第2実施形態では、潜熱蓄熱材26は整流格子体31内に設けられている。すなわち、図5(a)及び(b)に示すように、整流格子体31を構成する容器本体32内の通気孔34以外の収容空間36に潜熱蓄熱材26が充填されている。該収容空間36に潜熱蓄熱材26が充填された状態で蓋体33が被せられて密封されている。 【0027】 さて、エンジン11への吸気が行われる場合、整流格子体31では、空気は多数の通気孔34を通過し、空気の流れが一定方向に揃えられる。このとき、整流格子体31の収容空間36には潜熱蓄熱材26が充填されていることから、空気と潜熱蓄熱材26との間で熱交換が行われる。熱交換に当っては、格子壁35が縦横に一定間隔をおいて形成され通気孔34が細かく分割形成されているため、接触面積が大きく、効率の良い熱交換が行われる。従って、通気孔34を通過する空気は効率良く冷却又は加温される。」 (5)上記(2)の「エアクリーナ15内の中央部には、上流側にエアフィルタエレメント30、下流側に整流格子体31が配設されている。エアフィルタエレメント30は、空気中のごみ、塵、砂塵などの異物を取り除き、清浄な空気をエンジン11に送るためのものである。」(段落【0015】)との記載及び図1からみて、エアクリーナ15が、中央部を有する中空状のエアクリーナ15本体と、前記中央部を非清浄側と清浄側とに区画すると共に、前記吸入口17から前記中央部に導入された空気を濾過するエアフィルタエレメント30とを備えることが理解できる。 (6)上記(2)の「整流格子体31は、エアクリーナ15内の空気の流れを揃え、円滑にアウトレットホース14へ流通させるためのものである。」(段落【0016】)との記載、上記(4)の「整流格子体31では、空気は多数の通気孔34を通過し、空気の流れが一定方向に揃えられる。」(段落【0027】)との記載及び図1からみて、エアクリーナ15が、エアフィルタエレメント30と送出口16との間に配置され、前記エアフィルタエレメント30を通過した空気の流れを整流する整流格子体31を備えることが理解できる。 これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「(a)インレットダクト18が接続された吸入口17とアウトレットホース14の他端が接続された送出口16との間に中央部を有する中空状のエアクリーナ15本体と、 (b)前記中央部を非清浄側と清浄側とに区画すると共に、前記吸入口17から前記中央部に導入された空気を濾過するエアフィルタエレメント30と、 (c)前記送出口16に接続する前記アウトレットホース14の他端に設置されて、前記送出口16を通過するエンジンへの吸気量を検出するエアフローセンサ19と、 (d)前記エアフィルタエレメント30と前記送出口16との間に配置されて、前記エアフィルタエレメント30を通過した空気の流れを整流する整流格子体31とを備え、 前記エアフィルタエレメント30は、襞状に形成された不織布を有するエアクリーナ15。」 2 刊行物2 また、当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2002-168662号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面(特に、図1(a)、図2(a)及び(b)、図5(e)参照)とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0002】 【従来の技術】例えば、流体通路の内面に流量検出部が配置された流量計において、流量計の上流側に曲り管が接続され、流量検出部近傍の流体の流れに偏りや乱れがあると測定誤差が出る。測定誤差の発生を防ぐため、整流装置を用いて、流量計の流体通路内の流体の流れを整流することが行われている。整流装置として、流量検出部の上流及び下流の流体通路内の全断面にネット(網)を配設したもの、流量計の上流側に所定長さの整流管(内径が計量計の流体通路の内径と同径の真直管)を接続したもの等がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ネットを用いた整流装置は整流効果が低く、また整流管を用いた整流装置は、整流効果は高いが整流管が長いという欠点があった。本発明は、小形で整流効果の高い整流装置及び流量計を得ることを課題とする。」 (2)「【0005】 【発明の実施の形態】図1(a) は本発明の整流装置の実施の形態第1を示す。実施の形態第1の整流装置は、真直な流体通路1内に要整流部位2が配置され、要整流部位2の所定距離だけ上流(図1(a) では左方)の流体通路1内に、流体通路壁から内方に突出する所定の大きさで突出量が均一又は略均一の内方突出部3が配設されたものである。要整流部位2は計測器の検出部等が配置される部位であり、計測器の検出部等が支持具4により流体通路1の中心線(r=0)の近傍に支持されている。実施の形態第1において、真直な流体通路を、少なくとも内方突出部から要整流部位の後方位置(要整流部位の流れに偏りや乱れを発生させない位置)とすることができる。 【0006】内方突出部3は、流体通路1の中心線に略垂直な面上で流体通路面に沿って連続している。図示の内方突出部3は、流体通路1とは別体のものであり、流体通路1の内面に内方突出部3が固定されているが、流体通路1を構成する部材と内方突出部3とを一体に形成することができる。また、図示の内方突出部3の断面の形状は四角形であるが、この断面形状は三角形、円形等の任意の形状にすることができる。好適には、流体通路1の断面は円形であり、内方突出部3はリング状である。 【0007】図2(a),(b) は、実施の形態第1の整流装置(ただし、ここでは流体通路1の断面が円形で、内方突出部3はリング状とする)の上流側に、曲り管を接続した場合と真直管を接続した場合の流体の速度分布を示し、流量を200リットル/分、600リットル/分、1000リットル/分の3通りとした。図2(a) は流体通路1の横断面(中心線に平行な断面)における流速の分布を示す。図2(a)の縦軸を流速(m/s)とし、横軸をX/d(Xは内方突出部3の後端から下流への距離,dは通路内径、ともに図1(a) 参照)とした。X/dが0の位置は、内方突出部3の後端の位置であり、X/dが0の位置から右方が下流である。流体の流速は内方突出部3の付近で速くなり、内方突出部3の内側を通過直後に最大となり、その後徐々に低下する。曲り管が接続された場合でも、内方突出部3の後端からX/dが約6の位置から流速の変化がなくなり、流体の流れに乱れが少なくなったと考えられる。 【0008】図2(b) は、図2(a) のX/dが7の位置における、流体通路1内の縦断面(中心線に垂直な断面)の流速の分布を示す。縦軸を流速(m/s)とし、横軸をr/d(rは流体通路の中心から半径方向への距離,dは通路内径,ともに図1(a) 参照)とした。流速が中心から半径方向に向かって対称的に変化し、しかも中心から離れても流速の低下は少なく、流れに偏りがないことが分かる。 【0009】図5は、実施の形態第1の整流装置(ただし、ここでは流体通路の内径がdで、内方突出部はリング状とする)の上流側に曲り管を接続し、上流から流体を流量500リットル/分で流した場合の、流れの解析結果が等速度線で示されている。図5(a) の整流装置の内方突出部は、断面形状が三角形(30°錐面)、内径が0.75d、幅が0.2である。図5(b) の整流装置の内方突出部は、断面形状が三角形(30°錐面)、内径が0.6d、幅が0.2である。図5(c) の整流装置の内方突出部は、断面形状が半円弧(円弧面)、内径が0.75d、幅が0.2である。図5(d) の整流装置の内方突出部は、断面形状が四角形、内径が0.75d、幅が0.2である。図5(e) の整流装置の内方突出部は、断面形状が四角形、内径が0.6d、幅が0.2である。図5(f) の整流装置の内方突出部は、断面形状が四角形、内径が0.7d、幅が0.2である。図5(a) ?図5(f) のいずれにおいても、整流装置の後端部で流体の流れに乱れや偏りが存在せず、整流効果が高いことが分かる。」 これらの記載事項及び図面の図示内容からみて、刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されている。 「通路壁から流路断面積を狭くする側に突出し、前記通路壁に沿って流れる流体を整流する内方突出部3を設け、流量検出部の測定誤差の発生を防ぐこと。」 3 刊行物3 当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-102077号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面(特に、図1参照)とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0002】 【従来の技術】従来、この種の装置としては例えば、実開昭62-49659 号公報に記載された吸気通路がある。この通路構造においては、エアクリーナの入口部で空気が膨張し、空気流量計が配置されているエアクリーナ出口部では入口部で膨張された空気が圧縮される通路構造をとっていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、空気通路が大きくなったエアクリーナ内の空気流れに関しては配慮されておらず、エアクリーナ内での空気流速分布の変化により空気流量測定に誤差を生じる問題があり、吸入空気流量計測精度の維持が困難である。 【0004】本発明の目的は、エアクリーナ内の空気流速分布を整流し、高精度に空気流量を測定できる吸気通路構造を提供することにある。」 (2)「【0007】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図示を参照して説明する。図1のような吸気入口12と吸気出口13と副流路5が一直線上の場合において、エアフロメータのセンサ要素を構成する発熱抵抗体1と温度補償用抵抗体2は支持ピン3,3a,4,4aに固定支持され、副流路5の中に配置される。一方、これらの支持ピン3,3a,4,4aの他端は厚膜焼成回路が形成された基板よりなる電子回路部7に接続される。そして、この電子回路部7と一体になったセンサ部6はエアフロメータの主通路8に配置され、図示してないねじなどにより固定される。ボディ9は、基本的には円筒形の主流路8を形成する。このボディ9と一体に形成された突出部10の先端には、主流路8と並行であり、主流路8の中央部に入口開口を有する副流路5が設けられている。また、この突出部10には、ボディ9の外部から貫通する穴が設けられている。ボディ9の下流には、吸気ダクト11が取付いている。次にボディ9の他端の上流には、吸気出口13がありさらにその上流にはエアクリーナエレメント14が配置され、さらにその上流には空気流れをスムーズにするためにRがつけられている吸気入口12で形状されているエアクリーナがある。エアクリーナの内壁面には、空気流路を整流する突起15,16,17,18,19,20,21,22が配置されている。さらにエアクリーナ上流には吸気ダクト23が取付いている。吸気ダクト23から入ってきた流れaは吸気入口12で空気膨張されb,c,dに別けられ、流れcはそのまま流れeとなり、副流路5に流れ込む流れjとなる。流れbは、段々に長さが長く変化している突起15,16により整流された流れfとなり、さらに長さが長く変化している突起17,18により、整流され副流路5に向かっていく流れgに変化する。流れdは、上記と同様に突起の長さが変化している19,20,21,22により副流路に向かっていく流れiになる。さらに副流路5に向かっていく流れe,g,iは空気圧縮され一つになり乱れの少ない流れjとなり、副流路5を通過し流れjとなり、吸気ダクト11と通過しエンジンに行く構成となっている。図2は、吸気入口12と吸気出口13,副流路5が同一直線上になっていない時の例である。吸気ダクト23から入ってきた流れaは、吸気入口13で流れb,c,dに分けられる。流れbは段々に長さが短くなっていく突起15,16,17,18により、副流路5に向かって整流された流れgとなり、流れは、段々に長さが大きく変化した突起19,20,21,22により、副流路に向かって整流された流れi、さらに流れcは流れeとなり、流れe,g,iは副主路に向かっていく流れjとなり副流路5に流れていく構成となっている。」 これらの記載事項及び図面の図示内容からみて、刊行物3には、次の事項(以下「刊行物3に記載された事項」という。)が記載されている。 「エアクリーナの内壁面から流路断面積を狭くする側に突出し、前記内壁面に沿って流れる空気を整流する突起15?22を設け、空気流量測定の誤差を防ぐこと。」 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「中央部を有する中空状のエアクリーナ15本体」は前者の「中空部(3)を有する中空状のハウジング(1、2)」に相当し、以下同様に、「非清浄側」及び「清浄側」は「ダストサイド(4)」及び「クリーンサイド(5)」に、「エアフィルタエレメント30」は「エレメント(6)」に、「エンジンへの吸気量を検出するエアフローセンサ19」は「空気の流量を測定するエアフロメータ(10)」に、「整流格子体31」は「整流手段(7、41、51)」に、エアフィルタエレメント30が有する「襞状に形成された不織布」はエレメント(6)が有する「不織布または濾紙よりなる濾材を山部と谷部とが交互に繰り返すように襞折りされたエレメント本体(21)」に、「エアクリーナ15」は「エアクリーナ」にそれぞれ相当する。 また、後者の「インレットダクト18が接続された吸入口17」及び「アウトレットホース14の他端が接続された送出口16」と前者の「インレット(8)」及び「アウトレット(9)」とは、「吸入部」及び「送出部」という限りで共通する。 したがって、両者は、 「(a)吸入部と送出部との間に中空部を有する中空状のハウジングと、 (b)前記中空部をダストサイドとクリーンサイドとに区画すると共に、前記送出部から前記中空部に導入された空気を濾過するエレメントと、 (c)前記送出部に設置されて、前記送出部を通過する空気の流量を測定するエアフロメータと、 (d)前記エレメントと前記送出部との間に配置されて、前記エレメントを通過した空気の流れを整流する整流手段とを備え、 前記エレメントは、不織布または濾紙よりなる濾材を山部と谷部とが交互に繰り返すように襞折りされたエレメント本体を有するエアクリーナ。」 で一致し、次の点で相違する。 〔相違点1〕 「吸入部」及び「送出部」について、本願発明は、「インレット(8)」及び「アウトレット(9)」であり、エアフロメータ(10)が「前記アウトレット(9)に設置され」るのに対し、 引用発明は、「インレットダクト18が接続された吸入口17」及び「アウトレットホース14の他端が接続された送出口16」であり、エアフローセンサ19が「前記送出口16に接続する前記アウトレットホース14の他端に設置され」る点。 〔相違点2〕 本願発明1は、「前記整流手段(7、41、51)は、その空気が通過する領域(31、42、45、52、55)の空気流れの上下流方向において、前記エレメント(6)を含む他の部品と非接触となるように配置され、」「前記整流手段(41)は、前記クリーンサイド(5)側の内壁から前記クリーンサイド(5)の流路断面積を狭くする側に突出し、前記クリーンサイド(5)側の内壁に沿って流れる空気を整流する整流突起(41、44、45)を有」するのに対し、 引用発明は、かかる構成を備えていない点。 第4 当審の判断 そこで、各相違点を検討する。 (1)相違点1について 本願発明の「インレット(8)」及び「アウトレット(9)」に関して、本願明細書には、「ハウジングは、ケース1およびキャップ2の各開口部を結合し、クランプによって結合部を締結することで一体化されている。ケース1は、合成樹脂による射出成形によって、外部に向けて突出する円筒状または角筒状のインレットダクト(以下インレット)8を有する有底角筒形状に形成されている。キャップ2は、合成樹脂による射出成形によって、外部に向けて突出する円筒状または角筒状のアウトレットダクト(以下アウトレット)9を有する有天角筒形状に形成されている。」(段落【0015】)との記載がある。 この記載からみて、本願発明の「インレット(8)」及び「アウトレット(9)」は、それぞれ外部に向けて突出する円筒状または角筒状のインレットダクト及び外部に向けて突出する円筒状または角筒状のアウトレットダクトであると解される。 そうすると、引用発明のエアクリーナ15本体の吸入口17及び送出口16には、インレットダクト18及びアウトレットホース14の他端がそれぞれ接続されているから、引用発明の「インレットダクト18が接続された吸入口17」及び「アウトレットホース14の他端が接続された送出口16」、並びにエアフローセンサ19が「前記送出口16に接続する前記アウトレットホース14の他端に設置され」ることは、本願発明の「インレット(8)」及び「アウトレット(9)」、並びにエアフロメータ(10)が「前記アウトレット(9)に設置され」ることにそれぞれ相当するといえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 (2)相違点2について 本願の出願前に、内壁から流路断面積を狭くする側に突出し、内壁に沿って流れる流体を整流する整流突起を設けることは、周知技術(例えば、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項参照)である。 引用発明の整流格子体31は、エアフィルタエレメント30を通過した空気の流れを整流するものであり、上記周知技術の整流突起と機能において共通するから、引用発明の整流格子体31を上記周知技術の整流突起に置換して、引用発明において、相違点2に係る本願発明の「前記整流手段(41)は、前記クリーンサイド(5)側の内壁から前記クリーンサイド(5)の流路断面積を狭くする側に突出し、前記クリーンサイド(5)側の内壁に沿って流れる空気を整流する整流突起(41、44、45)を有」するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明の「前記整流手段(7、41、51)は、その空気が通過する領域(31、42、45、52、55)の空気流れの上下流方向において、前記エレメント(6)を含む他の部品と非接触となるように配置され」ることに関して、本願明細書には、「整流手段を、その空気が通過する領域の空気流れの上下流方向において、エレメントを含む他の部品と非接触となるように配置することにより、整流手段の空気が通過する領域の空気流れの上下流方向には、整流手段と接触する部品(吸気抵抗または通気抵抗となる部品)は何もない。」(平成29年11月1日の手続補正書の段落【0009】)との記載、及び「整流突起41は、その吸気が通過する領域である突出部45で囲まれた空間42の吸気流れの上下流方向において、エレメント6を含む他の部品(例えばエレメント6を通り抜けた吸気を整流する整流部材)と非接触となるように配置されている。すなわち、整流突起41の突出部45は、エレメント6を含む他の部品との間に所定の距離を隔てて配置されている。」(段落【0047】)との記載がある。 これらの記載からみて、本願発明の上記「前記整流手段(7、41、51)は、その空気が通過する領域(31、42、45、52、55)の空気流れの上下流方向において、前記エレメント(6)を含む他の部品と非接触となるように配置され」ることは、整流手段が、その空気が通過する領域の空気流れの上下流方向において、吸気抵抗または通気抵抗となる部品との間に所定の距離を隔てて配置されていることと解される。 他方、刊行物1には、整流格子体31がエアフィルタエレメント30及びアウトレット部材21と所定の距離を隔てて配置されることが図示され(図1)、また、そもそも整流手段自体の機能からみて、空気流れの上下流方向において吸気抵抗または通気抵抗となる部品を設けないように配置することは通常のことである。 そうすると、引用発明に上記周知技術を適用して、引用発明の整流格子体31を上記周知技術の整流突起に置き換えたものにおいて整流突起の整流機能の発揮のために、相違点2に係る本願発明の「前記整流手段(7、41、51)は、その空気が通過する領域(31、42、45、52、55)の空気流れの上下流方向において、前記エレメント(6)を含む他の部品と非接触となるように配置され」るようにすることに格別の困難性はない。 したがって、引用発明において、上記周知技術を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)効果について 本願発明が奏する効果は、引用発明及び前記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。 なお、請求人は、平成29年11月1日の意見書において、エレメント本体21を内壁を構成する部品(ケース1およびキャップ2)により周縁部22を挟み込んで保持し、エレメント本体21の内、周縁部22に最も近い部分の襞の高さが他の襞の高さよりも低くなることを根拠に、本願発明の課題解決上の必要性や技術的優越性等を主張するが、請求項1にはエレメント本体21を内壁を構成する部品により周縁部22を挟み込んで保持することや襞の高さを特定しておらず、上記主張は、請求項1に記載した事項に基づく主張とはいえないから、採用できない。 (4)まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-12-20 |
結審通知日 | 2017-12-26 |
審決日 | 2018-01-09 |
出願番号 | 特願2013-132260(P2013-132260) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 津田 健嗣、種子島 貴裕 |
特許庁審判長 |
佐々木 芳枝 |
特許庁審判官 |
西山 智宏 冨岡 和人 |
発明の名称 | エアクリーナ |
代理人 | 石黒 健二 |
代理人 | 石黒 健二 |
代理人 | 長谷 真司 |
代理人 | 長谷 真司 |