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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C |
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管理番号 | 1337681 |
審判番号 | 不服2017-5857 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-24 |
確定日 | 2018-03-13 |
事件の表示 | 特願2012- 87878「消失点位置算出方法、及び測距方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-217745、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年4月6日の出願であって、平成28年2月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月11日付けで手続補正がなされ、平成28年8月19日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年10月11日付けで手続補正がなされたが、平成29年2月21日付けで、平成28年10月11日付けの手続補正についての補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年4月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月21日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(進歩性)について ・請求項1-3 ・引用文献1、2 <引用文献等一覧> 1.特開2002-327635号公報 2.特開平07-248370号公報 第4 本願発明 本願の請求項1-2に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成29年4月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 なお、請求項3は、削除された。 「【請求項1】 撮像手段により地面上の任意の1点である参照点を撮影した参照画像を取得し、前記参照画像上における前記参照点の位置がタップ操作で特定されることによって前記参照画像上における前記参照点の位置情報を取得するステップと、 前記撮像手段が取付けられた地上高の値、及び前記撮像手段が取付けられた位置から前記参照点までの水平方向の距離である参照距離の値を取得するステップと、 前記地上高の値と前記参照距離との比に基づいて、前記参照画像中に定められる消失点F1から前記参照点までの地上高方向の画角αの値を算出するステップと、 前記参照画像の上端から、前記取得された参照点の位置情報に基づいて特定される前記参照画像中の前記参照点までの間に地上高方向に存在する画素の数D1と、前記撮像手段により撮像された画像における各画素と画角との対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照点までの地上高方向の画角βの値を算出するステップと、 前記画角βの値から前記画角αの値を減算することにより前記参照画像の上端から前記消失点F1までの地上高方向の画角γの値を算出し、前記画角γの値と、前記対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照画像中の前記消失点F1までの間に地上高方向に存在する画素の数D2を算出するステップと、 を含む、前記参照画像における前記消失点F1の位置を算出する消失点位置算出ステップを備え、 前記対応データとして、前記撮像手段の光軸からの地上高方向の角度とその角度における1画素あたりの画角との予め取得された第1対応関係に基づいて得られる、前記撮像手段により撮像された画像の上下方向における各画素とその画素における1画素あたりの画角との第2対応関係、を利用することを特徴とする消失点位置算出方法。」 なお、本願発明2は、本願発明1に係る「消失点位置算出方法」に備わる「前記消失点位置算出ステップ」を含む、測距方法の発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-327635号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自車両前方の物体(前方車など)までの距離を認識し、その距離情報を基にして追従制御や車速制御などの走行制御を行う車両用走行制御装置の技術分野に属する。」 イ 「【0045】図1は第1実施例の車両用走行制御装置の構成を示すシステム図、図2は第1実施例の車両用走行制御装置を搭載する車両を示す斜視図であり、図1及び図2において、1は車両用走行制御装置、10はレーザレーダ(レーダ)、20は前方カメラ(撮像手段)、30は画像処理装置、40は車速センサ、50は追従制御コントローラ、80はスロットルアクチュエータ、90はブレーキアクチュエータである。 【0046】前記レーザレーダ10は、車両前方のグリル部もしくはバンパ等に取り付けられ、水平方向にスキャンしながら赤外光パルスを伝播し、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された反射波を計測し、反射波の到達時間により、複数の先行車までの車間距離とその存在方向を検出し、検出した車間距離及び方向を追従制御コントローラ50へ出力する。なお、このレーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車両の正面に対して±6deg程度であり、この領域内に存在する前方の物体が検出される。 【0047】前記前方カメラ20は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、もしくは、CMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出し、画像処理装置30へと出力する。なお、この前方カメラ20により検知領域は、水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が取り込まれる。 【0048】前記画像処理装置30は、前方カメラ20からの画像入力に対し、フィルタ処理や認識処理など各種画像処理を施し、追従制御コントローラ50と連動して、前方カメラ20の画像から複数の特徴量(物体の下影位置と複数エッジ間の距離)を算出する。 【0049】前記追従制御コントローラ50は、レーザレーダ10からの車間距離入力と、画像処理装置30からの認識結果から、自車線上の先行車までの車間距離とその確からしさを算出し、走行制御を行う。制御の内容は、先行車までの車間距離と車速に基づき、別途設定された設定車速以下で先行車に追従するよう、スロットルアクチュエータ80及びブレーキアクチュエータ90に適切な指令値を出力し、自車両の加減速を制御する。 【0050】次に、作用を説明する。 【0051】[画像処理]図3は画像処理装置30で実行される画像処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、例えば、100msecに1回の周期で連続的に行われる。 【0052】ステップS100では、前方カメラ20からの前方画像が読み込まれる。 【0053】ステップS110では、前方道路における自車走行車線及び隣接走行車線の画面無いでの領域を特定するため、白線認識処理を行う。ここでは、自車走行車線の両側の白線(レーンマーカ)の位置を検出する。 【0054】ステップS120では、ステップS110で認識された白線から、自車走行車線(両側の白線の内側)及び隣接車線(両側の白線の外側)の画面内での領域が算出される。これは、追従制御コントローラ50での処理において、認識した前方車が自車線上の先行車であるか、隣接車線上の隣接車線走行車であるかを判別するために用いられる。 【0055】ステップS130では、ステップS110で認識された白線から、画面上の道路消失点の位置とその画面内高さが算出される。道路消失点の位置は、図5に示すように、認識した両側の白線の近傍領域を直線で近似し、この2つの直線の交点を求めることにより算出される。 【0056】ステップS140では、画面内の自車走行車線領域、及び、隣接車線領域において、前方車両の下影位置が検出される。ここでの処理は、例えば、画面下端より上方に向かって、濃度値が暗く変化しており、かつ、水平方向のエッジ成分を抽出できるものを前方車両の下影候補として、その水平エッジの位置を下影位置として検出すればよい。 【0057】図6は自車両と前方車との相対関係や、前方カメラ20,レーザーレーダ10のレイアウトを側面より模式的に示した図である。また、図7は同じ状況におけるカメラ画像を示した図である。画像は図7に示すようにX軸,Y軸をとる。ここで、図中の各記号の意味は以下の通りである。 Hc:カメラ20の取付高さ(固定値;m) DL:車間距離(m) DO:車両前端とカメラ20の取付位置の前後方向距離(固定値;m) DC’:カメラ20から前方車後端までの距離(m) DC’=DL+DO …(1) YO:画面内で道路消失点位置を示すY座標値 YE:画面内での下影による水平エッジAのY座標値 dY:画面内での下影による水平エッジAの道路消失点位置に対する相対Y座標値 dY=YO-YE …(2) ここで、カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能を△θ(rad)とすると。図6,7の幾何学的関係により、以下の(3)式が成立する。 【0058】 dY=Hc/DC’/△θ …(3) (1)?(3)式より、 DL=Hc/(YO-YE)/△θ-DO …(4) となる。このように、下影のY座標値と、道路消失点のY座標値が求められれば、車間距離を推定することができる。」 ウ 「【0064】[走行制御処理]図4は追従制御コントローラ50で実行される走行制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、例えば、100msecに1回の周期で連続的に行われる。 【0065】ステップS200では、画像処理装置30における画像処理結果が読み込まれる。続いて、ステップS210では、レーザレーダ10からのレーダ検出結果が読み込まれる。 【0066】ステップS220では、レーザレーダ10による検出物体があるかどうかが判定される。レーザレーダ10による水平方向の検知領域は、図8に示すように、画像による検知領域よりも狭く設定設定されている。このステップS220において、レーザレーダ10により物体検出(距離検出)があった場合にはステップS230(対応する下影の有無判定)へ進み、レーザレーダ10による物体検出(距離検出)がない場合にはステップS270(車間距離算出)へ進む。 【0067】ステップS230では、画像処理結果により、レーザ検出物体に対応する下影検出があったかどうかが判定される。すなわち、画像による下影検出位置から(4)式を用いて車間距離DLを推定し、その値をレーザレーダ10による検出距離と比較すると共に、レーザレーダ10で検知された物体の方向を、下影検出位置のX方向と比較する。これらがほぼ同じ位置となる下影検出について、レーダ検出物体に対応する下影であるとみなし、ステップS240(道路消失点補正)へ進み、レーザ検出物体に対応する下影検出が無いと判定された場合にはステップS250(対応するエッジ幅の有無判定)へ進む。。 【0068】ステップS240では、レーダ検出距離DL’と下影高さYEにより、道路消失点のY座標値が以下のYO’に補正される(道路消失点補正手段)。 【0069】 YO’=Hc/(DL’+DO)/△θ+YE …(5) (4)式のYOに代え、この補正された道路消失点のY座標値YO’を用いることにより、(4)式にて算出される車間距離DLの推定値の精度を向上させることができる。」 エ 「【0084】(2)ステップS240において、レーダ検出距離DL’と下影高さYEにより、道路消失点のY座標値を、上記(5)式により、YO’に補正するようにしたため、(4)式のYOに代え、この補正された道路消失点のY座標値YO’を用いることにより、道路消失点の位置精度に依存する(4)式を用いた下影による車間距離DL(第二の距離)の推定精度を向上させることができる。」 オ 引用文献1の図7には、上記段落【0057】の「画像は図7に示すようにX軸,Y軸をとる。」ことに関し、「画像」の「Y軸」を、画面の下端を「0」として画面内の高さ方向に取ることが示されている。 したがって、引用文献1には、前方カメラ20とレーザレーダ10によって、補正された道路消失点のY座標値YO’を算出する、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「車両用走行制御装置は、レーザレーダ(レーダ)10、前方カメラ(撮像手段)20、画像処理装置30及び追従制御コントローラ50を含む構成であり(段落【0045】より認定した。以下同様。)、 前記レーザレーダ10は、先行車までの車間距離を検出し(【0046】)、前方カメラ20は、前方道路の状況を画像として検出し、画像処理装置30へと出力し(【0047】)、前記画像処理装置30は、前方カメラ20からの画像入力に対し、各種画像処理を施し、前方カメラ20の画像から物体の下影位置を算出(【0048】)し、 画像処理装置30で実行される画像処理の流れの各ステップにおいて(【0051】)、ステップS140では、画面内において、前方車両の下影位置が検出され、ここでの処理は、例えば、画面下端より上方に向かって、濃度値が暗く変化しており、かつ、水平方向のエッジ成分を抽出できるものを前方車両の下影候補として、その水平エッジの位置を下影位置として検出すればよく(【0056】)、 追従制御コントローラ50で実行される走行制御処理の流れの各ステップにおいて(【0064】)、ステップS230では、画像処理結果により、レーザ検出物体に対応する下影検出があったと判定された場合、レーダ検出物体に対応する下影であるとみなし、ステップS240(道路消失点補正)へ進み(【0067】)、 「画像」の「Y軸」を、画面の下端を「0」として画面内の高さ方向に取り(上記「オ」より。)、 Hc:カメラ20の取付高さ(固定値;m) DO:車両前端とカメラ20の取付位置の前後方向距離(固定値;m) YE:画面内での下影による水平エッジAのY座標値 カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能を△θ(rad)とすると(【0057】)、 ステップS240では、レーダ検出距離DL’と下影高さYEにより、道路消失点のY座標値が以下のYO’に補正され(道路消失点補正手段)(【0068】)、 YO’=Hc/(DL’+DO)/△θ+YE …(5) この補正された道路消失点のY座標値YO’を用いる、道路消失点位置補正方法(【0069】)。」 2.引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平07-248370号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、撮像装置を用いて目標の方向を測定する目標角度測定装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図7は、従来の目標角度測定装置を示す構成図である。図において、1bは歪曲収差のない光学系、2は撮像装置、3は目標検出手段、4bは角度算出手段B、5はデータ出力手段である。 【0003】次に動作について説明する。歪曲収差のない光学系1bに入射した光は、撮像装置2の素子上に結像され画像として出力される。ここでいう歪曲収差のない光学系とは、図2に示すある基準軸に対して目標のなす角θと、図3に示す基準軸の画像位置(基準点という)と目標の画像位置との画像上での距離rとが線形の関係を持つ光学系のことである。上記撮像装置2の撮像センサとして、2次元固体撮像素子またはイメージインテンシファイアと2次元固体撮像素子を組み合わせたものを用いる。これは、これらの撮像センサは、センサ自身による歪曲が発生しないためである。」 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来の目標角度測定装置は以上のように構成されているので、歪曲収差のある光学系を使用すると画像上の距離を角度に変換する場合、”数1”のような1次の換算式では、正確な目標の角度を測定できない。これは、歪曲収差のある光学系が、ある基準点に対して目標のなす角と画像上の距離とが非線形であり、それは多くの場合回転対称であるためである。一般に光学系は視野角が広くなると歪曲収差が大きくなるので従来の方式によると広視野角の光学系は使用できない。したがって、従来の狭視野角の光学系で広範囲を監視するためには、撮像装置自体を回転させるなどその範囲内で装置の視野を機械的に動かして広視野を確保する方法があるが、常時同じ視野を監視できないため、瞬発的な現象には対応できないという問題点があった。 【0008】また、歪曲収差のある広視野角の光学系を用いて、正確な角度を測定するためには、角度算出手段B4bにおいて、二次元撮像素子の1画素毎に角度を対応させたデータを持つ方法もあるが、全ての画素に対応する莫大なデータが必要であり、そのデータを測定するために莫大な時間と、莫大な処理装置の記憶容量が必要となるという問題点があった。」 よって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認めらられる。 「歪曲収差のない光学系とは、ある基準軸に対して目標のなす角θと、基準軸の画像位置(基準点という)と目標の画像位置との画像上での距離rとが線形の関係を持つ光学系のことである(段落【0003】より、以下、同様。)が、目標角度測定装置に歪曲収差のある光学系を使用すると画像上の距離を角度に変換する場合、1次の換算式では、正確な目標の角度を測定できない(【0007】)ので、歪曲収差のある広視野角の光学系を用いて、正確な角度を測定するためには、角度算出手段B4bにおいて、二次元撮像素子の1画素毎に角度を対応させたデータを持つ方法(【0008】)。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明において、「物体の下影位置」(正確には「画面内での下影による水平エッジAのY座標値」を求める際に用いられる点)が、本願発明1における「地面上」の「参照点」に相当するから、引用発明1における「前方カメラ20」が、「物体の下影位置」を含む「前方道路の状況を画像として検出し、画像処理装置30へと出力」することと、本願発明1における「撮像手段により地面上の任意の1点である参照点を撮影した参照画像を取得」することとは、「撮像手段により地面上の任意の参照点を撮影した参照画像を取得」する点で共通する。 イ 上記「ア」を踏まえると、引用発明1において、「前記画像処理装置30は、前方カメラ20からの画像入力に対し、各種画像処理を施し、前方カメラ20の画像から物体の下影位置を算出」すること、具体的には、「画像処理装置30で実行される画像処理の流れの各ステップにおいて、ステップS140では、画面内において、前方車両の下影位置が検出され、ここでの処理は、例えば、画面下端より上方に向かって、濃度値が暗く変化しており、かつ、水平方向のエッジ成分を抽出できるものを前方車両の下影候補として、その水平エッジの位置を下影位置として検出すればよ」いことと、本願発明1における「前記参照画像上における前記参照点の位置がタップ操作で特定されることによって前記参照画像上における前記参照点の位置情報を取得するステップ」とは、「前記参照画像上における前記参照箇所の位置が特定されることによって前記参照画像上における前記参照点の位置情報を取得するステップ」の点で共通する。 ウ 引用発明1における「Hc:カメラ20の取付高さ(固定値;m)」の値を求めることが、本願発明1における「前記撮像手段が取付けられた地上高の値」「を取得するステップ」に相当する。 エ 引用発明1の「(5)」式において、「DL’+DO」は、「カメラ20の取付位置」と、「レーザレーダ10」で検出された「先行車」との距離のに等しいことから、引用発明1において「前記レーザレーダ10は、先行車までの車間距離を検出し」、「レーザ検出物体」の「レーダ検出距離DL’」と「DO:車両前端とカメラ20の取付位置の前後方向距離(固定値;m)」とから、「(5)」式における「DL’+DO」の値を求めることが、本願発明1における「前記撮像手段が取付けられた位置から前記参照点までの水平方向の距離である参照距離の値を取得するステップ」に相当する。 オ 上記「ウ」、「エ」より、引用発明1の「(5)」式における「Hc/(DL’+DO)」が、本願発明1における「前記地上高の値と前記参照距離との比」に相当する。 カ 引用発明1では、「Y軸」が、「画面の下端を「0」として画面内の高さ方向に取」られているから、引用発明1の「(5)」式における「カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能」を「△θ(rad)」とすることは、「画面内の高さ方向」の「座標値1」と、角度「△θ(rad)」と対応付けるものであるといえる。よって、引用発明1における「カメラ20のY座標値1」及び角度「△θ(rad)」と、本願発明1における「前記撮像手段により撮像された画像における各画素と画角との対応データ」とは、「地上高方向の1単位と画角との対応データ」の点で共通する。 キ 引用発明1に記載された「道路消失点」が、本願発明1における「消失点F1」に相当する。 ク 上記「オ」?「キ」、及び、引用発明1における「Y軸」が、「画面の下端を「0」として画面内の高さ方向に取」られていることを踏まえると、引用発明1において、「YE:画面内での下影による水平エッジAのY座標値」、「カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能を△θ(rad)」とし、「レーダ検出距離DL’と下影高さYEにより、道路消失点のY座標値が以下のYO’に補正され(道路消失点補正手段)、 YO’=Hc/(DL’+DO)/△θ+YE …(5) 」ることと、本願発明1における「前記地上高の値と前記参照距離との比に基づいて、前記参照画像中に定められる消失点F1から前記参照点までの地上高方向の画角αの値を算出するステップと、前記参照画像の上端から、前記取得された参照点の位置情報に基づいて特定される前記参照画像中の前記参照点までの間に地上高方向に存在する画素の数D1と、前記撮像手段により撮像された画像における各画素と画角との対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照点までの地上高方向の画角βの値を算出するステップと、前記画角βの値から前記画角αの値を減算することにより前記参照画像の上端から前記消失点F1までの地上高方向の画角γの値を算出し、前記画角γの値と、前記対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照画像中の前記消失点F1までの間に地上高方向に存在する画素の数D2を算出するステップと、を含む、前記参照画像における前記消失点F1の位置を算出する消失点位置算出ステップ」とは、「前記地上高の値と前記参照距離との比と、地上高方向の1単位と画角との対応データとに基づいて、前記参照画像の端から前記参照画像中の前記消失点F1までの間に地上高方向に存在する単位の数を算出するステップと、を含む、前記参照画像における前記消失点F1の位置を算出する消失点位置算出ステップ」の点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「撮像手段により地面上の任意の参照点を撮影した参照画像を取得し、前記参照画像上における前記参照点の位置が特定されることによって前記参照画像上における前記参照点の位置情報を取得するステップと、 前記撮像手段が取付けられた地上高の値と、前記撮像手段が取付けられた位置から前記参照点までの水平方向の距離である参照距離の値を取得するステップと、 前記地上高の値と前記参照距離との比と、地上高方向の1単位と画角との対応データとに基づいて、前記参照画像の端から前記参照画像中の前記消失点F1までの間に地上高方向に存在する単位の数を算出するステップと、を含む、前記参照画像における前記消失点F1の位置を算出する消失点位置算出ステップ、 を備えることを特徴とする消失点位置算出方法。」 (相違点1) 本願発明1では、撮像手段により「地面上の任意の1点である参照点」を撮影した参照画像を取得し、さらに、「前記参照画像上における前記参照点の位置がタップ操作で特定されることによって前記参照画像上における前記参照点の位置情報を取得するステップ」を含む構成(以下、「相違点1に係る本願発明1の構成」という。)を備えるのに対し、 引用発明1では、前方カメラ20により「前方道路の状況」を画像として検出し、「画面下端より上方に向かって、濃度値が暗く変化しており、かつ、水平方向のエッジ成分を抽出できるものを前方車両の下影候補として、その水平エッジの位置を下影位置として検出」することによって、前方カメラ20の画像から「物体の下影位置を算出」している点。 (相違点2) 本願発明1では、前記地上高の値と前記参照距離との比に基づいて「前記参照画像中に定められる消失点F1から前記参照点までの地上高方向の画角αの値」を算出し、さらに、前記参照画像における前記消失点F1の位置を算出する消失点位置算出ステップが、「前記参照画像の上端から、前記取得された参照点の位置情報に基づいて特定される前記参照画像中の前記参照点までの間に地上高方向に存在する画素の数D1と、前記撮像手段により撮像された画像における各画素と画角との対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照点までの地上高方向の画角βの値を算出するステップと、前記画角βの値から前記画角αの値を減算することにより前記参照画像の上端から前記消失点F1までの地上高方向の画角γの値を算出し、前記画角γの値と、前記対応データと、に基づいて、前記参照画像の上端から前記参照画像中の前記消失点F1までの間に地上高方向に存在する画素の数D2を算出するステップと、を含む」の構成(以下、「相違点2に係る本願発明1の構成」という。)を備えるに対し、引用発明1では、「(5)」式」中に、「Hc:カメラ20の取付高さ(固定値;m)」と、「レーザ検出物体」の「レーダ検出距離DL’」及び「DO:車両前端とカメラ20の取付位置の前後方向距離(固定値;m)」の和との比である「Hc/(DL’+DO)」が示されているものの、該比から前方カメラ20の画角αを(例えば、本願明細書の段落【0043】のように、arctanの演算を施す等によって)「算出」することは示されておらず、また、道路消失点のY座標値を求める際、「カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能を△θ(rad)」とすることに基づいて、画像の上端から画面内での下影による水平エッジAまでの地上高方向の画角βを求めることも、該画角βの値から前記画角αの値を減算することにより、画像の上端から道路消失点までの地上高方向の画角γの値を算出することも、前記画角γの値と、カメラ20のY座標値1あたりの角度分解能を△θ(rad)とすることに基づいて、前記画像の上端から前記画像中の前記道路消失点までの間に地上高方向に存在する画素の数D2を算出することも、含まれていない点。 (相違点3) 本願発明1では、「対応データ」として、「前記撮像手段の光軸からの地上高方向の角度とその角度における1画素あたりの画角との予め取得された第1対応関係に基づいて得られる、前記撮像手段により撮像された画像の上下方向における各画素とその画素における1画素あたりの画角との第2対応関係、を利用する」のに対し、引用発明1では、「カメラ20のY座標値1」と角度「△θ(rad)」との対応関係を用いている点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」も、上記「相違点2に係る本願発明1の構成」も、引用文献2に記載されておらず、本願出願前に周知技術であるともいえない。 したがって、本願発明1は、相違点3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1に係る「消失点位置算出方法」に備わる「前記消失点位置算出ステップ」を含む、測距方法の発明であるから、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」及び上記「相違点2に係る本願発明1の構成」を備えるものである。 よって、本願発明2は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1、2は、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」及び上記「相違点2に係る本願発明1の構成」を備えるものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-26 |
出願番号 | 特願2012-87878(P2012-87878) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲うし▼田 真悟 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
清水 稔 須原 宏光 |
発明の名称 | 消失点位置算出方法、及び測距方法 |
代理人 | 特許業務法人栄光特許事務所 |