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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1337862 |
審判番号 | 不服2017-6681 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-10 |
確定日 | 2018-03-20 |
事件の表示 | 特願2015-551104「データマイグレーション方法、データマイグレーション装置及びストレージデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/042778、平成28年 2月 8日国内公表、特表2016-503925、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年9月24日を国際出願日とする出願であって、平成28年6月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月30日付けで手続補正がされ、平成29年1月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年1月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2011/010344号 2.特開2005-50303号公報 3.特開2007-79762号公報 4.特開2005-209140号公報 第3 本願発明 本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年5月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ストレージシステムに適用されるデータマイグレーション方法であり、前記ストレージシステムは、ディスクグループを含み、前記ディスクグループは、複数のソリッドステートディスク(SSD)を含み、前記SSDのそれぞれは、ストレージコントローラにより、同じサイズの細かいchunkに分割されるデータマイグレーション方法であって、 前記複数のSSDのそれぞれの不良ブロックの容量を監視するステップであり、前記複数のSSDのそれぞれは、複数のブロックを含み、前記複数のブロックのいくつかは不良であるステップと、 ソースSSDに含まれる不良ブロックの容量が予め設定された容量より大きい場合、前記複数のSSD内の前記ソースSSDを識別するステップであり、前記ソースSSDに含まれる不良ブロックの前記容量に関連する前記ソースSSDの容量使用率は、前記ディスクグループの平均容量使用率より大きく、前記ソースSSDの前記容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であり、前記ディスクグループの前記平均容量使用率は、前記ディスクグループの利用可能な物理容量に対する前記ディスクグループの使用された容量の割合であるステップと、 容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい前記ディスクグループ内の1つ以上の宛先SSDを選択するステップと、 前記ソースSSDの前記容量使用率と前記平均容量使用率とに従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータ量を計算するステップと、 前記ソースSSDからマイグレーションされるべきchunkの数に従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータを前記1つ以上の宛先SSDにマイグレーションするステップであり、前記chunkの数は、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データ量と各chunkのサイズとに基づいて決定され、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データは、chunkの単位でマイグレーションされるステップと を有するデータマイグレーション方法。」 本願発明2-4は、概略、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明5は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「データマイグレーション装置」の発明である。 本願発明6-8は、概略、本願発明5を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面(特に、図2、図24を参照。)とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。 (1) 段落[0004] 「[0004] 次に、格納容量削減技術について述べる。近年、ストレージシステムでは、格納容量を削減する技術が注目されている。その代表的な技術の一つが、容量の仮想化技術である。容量の仮想化技術とは、ストレージシステムがもっている物理的な容量より大きな仮想的な容量をホスト側に見せる技術である。これは、ユーザが実際にストレージを使用する場合、ユーザが定義したユーザボリューム(ユーザからみた記憶装置)の容量に対し、実際に格納するデータの量は、この定義容量には、なかなか達しないという特性を利用したものである。すなわち、容量仮想化技術がない場合には、ボリューム定義時に、定義された物理的な容量を確保していたのに対し、容量仮想化技術を適用した場合には、実際にストレージシステムにデータが格納されたとき、初めて容量を確保することになる。これによって、格納容量を削減でき、かつ、ユーザはボリューム容量を厳密に定義する必要なく、単純に大きく余裕をもった値を定義すればよいため、使い勝手も向上できる。この技術において、データが書き込まれたときに確保される物理的な記憶領域は、ページと呼ばれる。一般に、ページのサイズは、多様性にとんでいるが、本発明では、ページのサイズのほうが、フラッシュメモリの消去単位であるブロックのサイズより大きいものとする。一方、フラッシュメモリにおいては、一般的に、消去の単位は、前述したようにブロックと呼ぶのに対し、ブロックの中での読み書きの単位をページとよぶ。当然、フラッシュメモリにおいては、ブロックのサイズのほうが、ページサイズより大きくなる。しかし、本発明では、ページという言葉は、容量仮想化におけるページをさすことにする。また、繰り返しになるが、本発明においては、ページのサイズは、フラッシュメモリのブロックのサイズよりも大きいとする。」 (2) 段落[0010] 「[0010] 前記第1の課題を解決するための、本発明の第1の特徴は、階層的なウエアレベリングを行う点である。……(中略)……一方、本発明の第2の特徴は、上位レベルのウエアレベリングを、ストレージシステムの容量仮想化のために導入した、ベージ単位で行う点である。(これは、本発明の第1の特徴を実現するだけであれば、ストレージシステムのコントローラが、容量仮想化機能をもつことが必須の条件ではないことを意味している。)一方で、容量仮想化を実現しているストレージシステムにおいては、ページ単位での移動制御を行うのが今後の潮流となっており、フラッシュメモリの上位レベルのウエアレベリングをページとすることにより、このページ単位制御の一環とすることができるメリットが大きい。また、ページというブロックより大きなサイズでウエアレベリングを行うことにより、オーバヘッドを少なくできる。」 (3) 段落[0021]-[0028] 「[0021] 図2は、ストレージシステム100の構成を示す。 [0022] ストレージシステム100は、複数のフラッシュパッケージ230と、一以上のストレージコントローラ200と、キャッシュメモリ210と、共有メモリ220と、タイマ240と、これらの構成要素を接続する一以上の接続装置250とを有する。なお、一つのフラッシュパッケージ230が、1つのSSD(Solid State Drive)であっても、本発明は有効である。また、フラッシュパッケージ230に加えて、ハードディスクドライブ(HDD)などが備えられても良い。なお、本発明において、上位レベルの長寿命化制御(ウエアレベリング機能)と容量仮想化機能は、ストレージコントローラ200が実行する。一方、下位レベルの長寿命化制御(ウエアレベリング機能)と容量仮想化機能は、ストレージコントローラ200が実行しても、フラッシュパッケージ230が実行してもよい。ただし、本実施形態では、フラッシュパッケージ230が実施する形態を、中心に説明を行う。 ・・・(中略)・・・ [0028] フラッシュパッケージ230は、ストレージコントローラ200からは、一台の記憶装置に見えているものとする。ストレージコントローラ200が、高信頼化のために、所定数(例えば一台又は二台)のフラッシュパッケージ230が故障してもそのフラッシュパッケージ230のデータを回復できるRAID(Redundant Array of Independent (or Inexpensive) Disks)機能を有する。(なお、‘RAID’という用語の’D’は’Disk’の略であるが、ある記憶装置に障害が発生したときに、別の記憶装置の冗長データなどから故障した装置のデータを復元する機能は、Disk以外の記憶装置にも適用可能である。)RAID機能がある場合、複数のフラッシュパッケージ230で一つのRAID構成が構築される。そのRAID構成に従うグループを、以下、「パッケージグループ」と呼ぶ。ストレージシステム100はRAID構成を有していなくても良い。」 (4) 段落[0069] 「[0069] 本実施形態では、それぞれのフラッシュパッケージ230のパッケージコントローラ315は、下位レベルの容量仮想化機能を有する。そのため、ストレージコントローラ200には、見かけ上、実際の物理容量より大きな仮想容量が提供されている。フラッシュパッケージ230の容量仮想化の単位は、前述の通り「ブロック」である。図8で説明した通り、実ページに複数の仮想ブロックが割り当てられ、各仮想ブロックに実ブロックが割り当てられる。したがって、実ページは複数の仮想ブロックから構成されていると言うことになる。また、本実施形態では、仮想ブロックにより構成される容量空間のほうが、実ブロックにより構成される容量空間より大きい。」 (5) 段落[0096] 「[0096] 割り当て可能実ブロック数2504は、対象フラッシュパッケージ230の中で割り当て可能な実ブロックの数である。フラッシュパッケージ230中で、例えばx個の実ブロックが障害状態(不良ブロック)になると、割り当て可能実ブロック数2504が示す値からxが引かれる。下位レベルの長寿命化制御(ウエアレベリング機能)と容量仮想化機能を、フラッシュパッケージ230が実施する形態の場合、割り当て可能な実ブロックの数が減ると、パッケージコントローラ315から、ストレージコントローラ200に、割り当て可能な実ブロックの数が減ったことが通知される。」 (6) 段落[0192]-[0210] 「[0192] 図24は、ページ移動スケジュール部4400の処理フローを示す。 [0193] ページ移動スケジュール部4400は、タイマ240が、次回スケジュール時刻2702になったときに、実行を開始する。 [0194] ステップ10000:スケジュール部4400は、各フラッシュパッケージ230について、以下の(a)?(e): (a)パッケージ内実ブロック割り当て数2505に(次回スケジジュール時刻2702-前回スケジュール時刻2701)を乗算した値を、パッケージ内累積実ブロック割り当て時間2507に加える; (b)パッケージ内累積実ブロック割り当て時間2507に、パッケージ内追加実ブロック割り当て時間2509を加える; (c)ブロックパッケージ内追加実ブロック割り当て時間2509を0にする; (d)パッケージ内実ブロック割り当て数2505に、パッケージ内追加実ブロック数2506加える、 (e)パッケージ内追加実ブロック数2506を0にする、 を実行する。(a)と(b)により、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた実ブロックの割り当て時間を反映(加算)できたことになる。なぜなら、パッケージ内追加実ブロック割り当て時間2509は、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた、当該フラッシュパッケージの実ブロックごとに、(次回スケジュール実時刻2702-実ブロック割り当て時刻)が加算されてきたからである。 [0195] ステップ10001:スケジュール部4400は、各実ページについて、以下の(a)?(e): (a)実ブロック割り当て数2104に(次回スケジュール時刻2702-前回スケジュール時刻2701)を乗算した値を、累積実ブロック割り当て時間2106に加える; (b)累積実ブロック割り当て時間2106に、追加実ブロック割り当て時間2108を加える; (c)追加実ブロック割り当て時間2108を0にする; (d)実ブロック割り当て数2104に、追加実ブロック数2105を加える; (e)追加実ブロック数2105を0にする、 を実行する。(a)と(b)により、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた実ブロックの割り当て時間を反映(加算)できたことになる。なぜなら、追加実ブロック割り当て時間2108には、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた、当該実ページの実ブロックごとに、(次回スケジュール実時刻2702-実ブロック割り当て時刻)が加算されてきたからである。 [0196] ステップ10002:スケジュール部4400は、各フラッシュパッケージ230について、以下の(a)?(d): (a)パッケージ内累積実ブロック消去回数2508をパッケージ内累積実ブロック割り当て時間2507で割る; (b)パッケージ内実ブロック割り当て数2505を、割り当て可能実ブロック数2504で割る、 (c)複数のパッケージグループ280から移動元パッケージグループを決定する; (d)複数のパッケージグループ280から移動先パッケージグループを決定する、 を実行する。 ・・・(中略)・・・ [0199] (b)で得られた値は、実ページの割り当ての変更を行わなかった場合のそれぞれのフラシュパッケージ230の実ブロックの占有率になる。 [0200] 本実施形態では、この平均消去回数や実ブロックの占有率に基づき、移動元パッケージグループが決定される。以下、それぞれのケースを説明する。 [0201] <平均消去回数>。 ・・・(中略)・・・ [0204] <実ブロックの占有率>。 [0205] スケジュール部4400は、例えば、下記(X1)及び(X2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ280: (X1)実ブロックの占有率が所定の第3の閾値を越えている(フラッシュパッケージ230が満杯になる可能性がある); (X2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしていない(例えば所定の第5の閾値以下である)、 を、移動元パッケージグループとして決定する。 [0206] スケジュール部4400は、例えば、下記(Y1)及び(Y2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ: (Y1)平均消去回数が所定の第4の閾値以下である(第4の閾値は前述の第3の閾値以下); (Y2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしている(例えば所定の第6の閾値を超えている(第6の閾値は前述の第5の閾値以上))、 を、移動先パッケージグループとして決定する。 [0207] ステップ10003:スケジュール部4400は、 (a)移動元ページ(データの移動元の実ページ)と移動先ページ(データの移動先の実ページ)とを決定する(すなわち、スケジュール部4400は、移動元パッケージグループに基づく複数の実ページから移動元ページを決定し、且つ、移動先パッケージグループに基づく複数の実ページから移動先ページを決定する); (b)決定されたすべての移動元ページに対応する移動待ちフラグ2111をONに更新する; (c)移動先ページを割り当てるパッケージグループ280に対応する空きページ管理情報ポインタ2200がさす実ページ情報2100を、移動元ページのコピー先実ページ情報ポインタ2110に設定する; (d)空きページ管理情報ポインタ2200を、次の空いた状態にあるページ管理情報2100を示すように更新する、 を実行する。上記(c)及び(d)は、決定された全ての移動元ページについて実行される。これにより、移動元ページと移動先ページのペアが決まったことになる。 [0208] (a)において、スケジュール部4400は、例えば、移動元パッケージグループ280に属する各実ブロック情報2100の、累積実ブロック割り当て時間2106、累積実ブロック消去回数2107(代わりに、累積ライトデータ量2112)、実ブロック割り当て数2104などのうちの少なくとも一つを基に、移動元ページを決定する。具体的には、例えば、スケジュール部4400が決定した移動元ページは、下記(x)又は(y)の特徴: (x)決定された移動元ページの累積実ブロック消去回数2107は、その移動元ページの累積実ブロック消去回数2107と移動先ページ(移動先の実ページ)の累積実ブロック消去回数2107との差になるべく近い(好ましくは等しい); (y)決定された移動元ページの実ブロック占有率は、その移動元ページの実ブロック占有率と移動先ページの実ブロック占有率との差になるべく近い(好ましくは等しい)、 を有する。(x)の特徴を有する移動元ページは、例えば、移動元パッケージグループが上記(A1)?(A3)のいずれかに対応したグループの場合に決定される。(y)の特徴を有する移動元ページは、移動元パッケージグループが上記(B1)又は(B2)に対応したグループの場合に決定される。 [0209] ステップ10004:スケジュール部4400は、パッケージグループ160ごとに存在するページ移動処理実行部4500の中で、少なくとも一つの移動元ページを有するパッケージグループ280に対応したページ移動処理実行部4500を起動する。 [0210] ステップ10005:スケジュール部4400は、以下の(a)及び(b): (a)次回スケジュール時刻2701を前回スケジュール時刻2701にコピーする; (b)次回スケジュール時刻2701に次のスケジュール時間を設定する(例えば、次回スケジュール時刻2701を、現在の次回スケジュール時刻2701に所定の時間を加算することにより得られた時刻に更新する)、 を実行する。」 したがって、関連図面に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フラッシュメモリにおいて、消去の単位は、ブロックと呼び、 ページという言葉は、容量仮想化におけるページをさし、ページのサイズは、フラッシュメモリのブロックのサイズよりも大きく、 ストレージシステム100は、複数のフラッシュパッケージ230と、一以上のストレージコントローラ200とを有し、 一つのフラッシュパッケージ230が、1つのSSD(Solid State Drive)であって、 フラッシュパッケージ230は、RAID機能がある場合、複数のフラッシュパッケージ230で一つのRAID構成が構築され、そのRAID構成に従うグループを、「パッケージグループ」と呼び、 実ページに複数の仮想ブロックが割り当てられ、各仮想ブロックに実ブロックが割り当てられ、したがって、実ページは複数の仮想ブロックから構成され、 割り当て可能実ブロック数2504は、対象フラッシュパッケージ230の中で割り当て可能な実ブロックの数であり、フラッシュパッケージ230中で、x個の実ブロックが障害状態(不良ブロック)になると、割り当て可能実ブロック数2504が示す値からxが引かれ、 ページ移動スケジュール部4400は、タイマ240が、次回スケジュール時刻2702になったときに、実行を開始し、その処理フローは、 ステップ10000:スケジュール部4400は、各フラッシュパッケージ230について、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた実ブロックの割り当て時間を反映(加算)し、 ステップ10001:スケジュール部4400は、各実ページについて、前回スケジュール時刻2701以降に割り当てられた実ブロックの割り当て時間を反映(加算)し、 ステップ10002:スケジュール部4400は、各フラッシュパッケージ230について、パッケージ内実ブロック割り当て数2505を、割り当て可能実ブロック数2504で割り、得られた値は、実ページの割り当ての変更を行わなかった場合のそれぞれのフラシュパッケージ230の実ブロックの占有率になり、この実ブロックの占有率に基づき、移動元パッケージグループが決定され、 スケジュール部4400は、下記(X1)及び(X2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ280: (X1)実ブロックの占有率が所定の第3の閾値を越えている(フラッシュパッケージ230が満杯になる可能性がある); (X2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしていない(例えば所定の第5の閾値以下である)、 を、移動元パッケージグループとして決定し、 スケジュール部4400は、下記(Y1)及び(Y2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ: (Y1)平均消去回数が所定の第4の閾値以下である(第4の閾値は前述の第3の閾値以下); (Y2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしている(例えば所定の第6の閾値を超えている(第6の閾値は前述の第5の閾値以上))、 を、移動先パッケージグループとして決定し、 ステップ10003:スケジュール部4400は、移動元パッケージグループに基づく複数の実ページから移動元ページを決定し、且つ、移動先パッケージグループに基づく複数の実ページから移動先ページを決定し、これにより、移動元ページと移動先ページのペアが決まったことになり、 具体的には、スケジュール部4400が決定した移動元ページは、特徴: (y)決定された移動元ページの実ブロック占有率は、その移動元ページの実ブロック占有率と移動先ページの実ブロック占有率との差になるべく近い(好ましくは等しい)、 を有し、 ステップ10004:スケジュール部4400は、パッケージグループ160ごとに存在するページ移動処理実行部4500の中で、少なくとも一つの移動元ページを有するパッケージグループ280に対応したページ移動処理実行部4500を起動し、 ステップ10005:スケジュール部4400は、次回スケジュール時刻2701に次のスケジュール時間を設定する、 である、 ページ移動スケジュール部4400の処理の方法。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、段落【0084】に、以下の記載がある。 「【0084】 〔1-4-5〕第8手法 指標値算出手段61が、モニタエージェント50によってモニタされた、各瞬間において各記憶装置20に格納されているデータ総量Ui(もしくは論理記憶領域ごとのデータ格納量)と、各記憶装置20の最大利用可能総容量Tiとの比と、モニタエージェント50によってモニタされたシステム全体の使用率ρ(上記(13)式参照)との差を、前記指標値として算出する。そして、配置手段62が、指標値算出手段61によって算出された前記指標値をゼロに近づけるように(Ui/Tiを使用率ρに近づけるように)、論理記憶領域の分散配置/再配置を行なう。つまり、第8手法では、上記(17)式を用いて前記指標値を算出する。」 上記の記載を参照すると、引用文献2には、各記憶装置のデータ使用率Ui/Tiが、ストレージシステム全体の平均データ使用率ρに近づくように、データマイグレーションを行う、という技術的事項が開示されていると認められる。 3.引用文献3、引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落【0011】に、以下の記載がある。 「【0011】 フラッシュメモリ1に過多の不良ブロック12がある時には、本発明は正常ブロック11数に対して該フラッシュメモリ1の容量を調整し、その対応するセクション数と各セクション内に含む正常ブロック11数を利用する。こうして比較的少ない容量で該フラッシュメモリ1を使用することができ、該フラッシュメモリ1の管理においてフレキシブルな空間を具えることができる。」 上記引用文献4には、段落【0083】-【0084】に、以下の記載がある。 「【0083】 この場合、ホストシステム4においてゾーン#1に対応する論理ブロックアドレス空間に対して提供されたデータの全てがフラッシュメモリ2において正しく格納される保証はない。不良ブロックがデータを格納するために使用される有効ブロックから排除される場合には、ゾーン#1において有効ブロックとして使用するためのブロックが不足する。 【0084】 不良ブロックが論理ブロックアドレス空間の一部分に割り当てられたときには、ホストシステム4がその一部分に対して提供したデータは、フラッシュメモリ2において適切に格納されることができない。本発明にかかるフラッシュメモリシステム1は、複数のゾーンのそれぞれに分類される不良ブロックの数が平均化されるように、仮想ブロックアドレスVBAと物理ブロックアドレスPBAの対応関係を設定する。」 引用文献3、引用文献4のこれらの記載を参照すると、一般に、フラッシュメモリにおいて、「不良ブロックの容量」を監視して、メモリ容量を調整することによって、フラッシュメモリの利用を効率化することは、周知技術であると認められる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「ストレージシステム100」は、本願発明1の「ストレージシステム」に相当する。 「ステップ10000」?「ステップ10005」を実行する、引用発明の「ページ移動スケジュール部4400の処理の方法」は、本願発明1の「ストレージシステムに適用されるデータマイグレーション方法」に相当する。 引用発明の「一つのフラッシュパッケージ230」は、「1つのSSD(Solid State Drive)であ」るから、本願発明1の「ソリッドステートディスク(SSD)」に相当する。 複数のフラッシュパッケージ230からなる、引用発明の「パッケージグループ」は、本願発明1の「ディスクグループ」に相当する。 引用発明の「ページ」は、「容量仮想化におけるページをさし、ページのサイズは、フラッシュメモリのブロックのサイズよりも大き」いから、本願発明1の「同じサイズの細かいchunk」に相当するといえる。 よって、「ステップ10000」?「ステップ10005」を実行する、引用発明の「ページ移動スケジュール部4400の処理の方法」は、本願発明1の「ストレージシステムに適用されるデータマイグレーション方法であり、前記ストレージシステムは、ディスクグループを含み、前記ディスクグループは、複数のソリッドステートディスク(SSD)を含み、前記SSDのそれぞれは、ストレージコントローラにより、同じサイズの細かいchunkに分割されるデータマイグレーション方法」に相当する。 イ 引用発明の「ステップ10002」において、「実ブロックの占有率」などの計算で「割り当て可能実ブロック数2504」を用いる前提として、「割り当て可能実ブロック数2504」の値を求めていることは、ここで、「割り当て可能実ブロック数2504は、対象フラッシュパッケージ230の中で割り当て可能な実ブロックの数であり、フラッシュパッケージ230中で、x個の実ブロックが障害状態(不良ブロック)になると、割り当て可能実ブロック数2504が示す値からxが引かれ」る値であるから、本願発明1の「前記複数のSSDのそれぞれの不良ブロックの容量を監視するステップであり、前記複数のSSDのそれぞれは、複数のブロックを含み、前記複数のブロックのいくつかは不良であるステップ」に相当する。 ウ 引用発明の「移動元パッケージグループ」に含まれる「フラッシュパッケージ」は、本願発明1の「ソースSSD」に相当する。 引用発明の「ステップ10002」において、「スケジュール部4400は、下記(X1)及び(X2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ280:……(中略)……(X2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしていない(例えば所定の第5の閾値以下である)、を、移動元パッケージグループとして決定し」ているステップは、ここで「割り当て可能実ブロック数2504」とは、「対象フラッシュパッケージ230の中で割り当て可能な実ブロックの数であり、フラッシュパッケージ230中で、x個の実ブロックが障害状態(不良ブロック)になると、割り当て可能実ブロック数2504が示す値からxが引かれ」た値であることを考慮すると、本願発明1の「ソースSSDに含まれる不良ブロックの容量が予め設定された容量より大きい場合、前記複数のSSD内の前記ソースSSDを識別するステップ」に相当する。 引用発明の「それぞれのフラシュパッケージ230の実ブロックの占有率」は、「パッケージ内実ブロック割り当て数2505を、割り当て可能実ブロック数2504で割り、得られた値」であるから、本願発明1の「容量使用率」に相当する。 引用発明の「ステップ10002」において、「スケジュール部4400は、各フラッシュパッケージ230について、パッケージ内実ブロック割り当て数2505を、割り当て可能実ブロック数2504で割り、得られた値は、実ページの割り当ての変更を行わなかった場合のそれぞれのフラシュパッケージ230の実ブロックの占有率にな」ることは、本願発明1の「前記ソースSSDの前記容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であ」ることと、「前記ソースSSDの容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であ」る点で共通するといえる。 以上のことから、引用発明の「ステップ10002」は、本願発明1の「ソースSSDに含まれる不良ブロックの容量が予め設定された容量より大きい場合、前記複数のSSD内の前記ソースSSDを識別するステップであり、前記ソースSSDに含まれる不良ブロックの前記容量に関連する前記ソースSSDの容量使用率は、前記ディスクグループの平均容量使用率より大きく、前記ソースSSDの前記容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であり、前記ディスクグループの前記平均容量使用率は、前記ディスクグループの利用可能な物理容量に対する前記ディスクグループの使用された容量の割合であるステップ」と、「ソースSSDに含まれる不良ブロックの容量が予め設定された容量より大きい場合、前記複数のSSD内の前記ソースSSDを識別するステップであり、前記ソースSSDの容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であるステップ」である点で共通するといえる。 エ 引用発明の「移動先パッケージグループ」に含まれる「フラッシュパッケージ」は、本願発明1の「宛先SSD」に相当する。 引用発明の「ステップ10002」のうちで、「スケジュール部4400は、下記(Y1)及び(Y2)の少なくとも一つに適合するフラッシュパッケージを含んだパッケージグループ:……(中略)……(Y2)割り当て可能実ブロック数2504がある基準を満たしている(例えば所定の第6の閾値を超えている(第6の閾値は前述の第5の閾値以上))、を、移動先パッケージグループとして決定し」ていることは、本願発明1の「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい前記ディスクグループ内の1つ以上の宛先SSDを選択するステップ」と、「ディスクグループ内の1つ以上の宛先SSDを選択するステップ」である点で共通するといえる。 オ 引用発明の「ステップ10004」において、「スケジュール部4400は、パッケージグループ160ごとに存在するページ移動処理実行部4500の中で、少なくとも一つの移動元ページを有するパッケージグループ280に対応したページ移動処理実行部4500を起動し」ていることは、本願発明1の「前記ソースSSDからマイグレーションされるべきchunkの数に従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータを前記1つ以上の宛先SSDにマイグレーションするステップであり、前記chunkの数は、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データ量と各chunkのサイズとに基づいて決定され、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データは、chunkの単位でマイグレーションされるステップ」と、「前記ソースSSDからマイグレーションされるべきchunkの数に従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータを前記1つ以上の宛先SSDにマイグレーションするステップであり、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データは、chunkの単位でマイグレーションされるステップ」である点で共通するといえる。 したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「ストレージシステムに適用されるデータマイグレーション方法であり、前記ストレージシステムは、ディスクグループを含み、前記ディスクグループは、複数のソリッドステートディスク(SSD)を含み、前記SSDのそれぞれは、ストレージコントローラにより、同じサイズの細かいchunkに分割されるデータマイグレーション方法であって、 前記複数のSSDのそれぞれの不良ブロックの容量を監視するステップであり、前記複数のSSDのそれぞれは、複数のブロックを含み、前記複数のブロックのいくつかは不良であるステップと、 ソースSSDに含まれる不良ブロックの容量が予め設定された容量より大きい場合、前記複数のSSD内の前記ソースSSDを識別するステップであり、前記ソースSSDの容量使用率は、前記ソースSSDの利用可能な物理容量に対する前記ソースSSDの使用された容量の割合であるステップと、 ディスクグループ内の1つ以上の宛先SSDを選択するステップと、 前記ソースSSDからマイグレーションされるべきchunkの数に従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータを前記1つ以上の宛先SSDにマイグレーションするステップであり、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データは、chunkの単位でマイグレーションされるステップと を有するデータマイグレーション方法。」 [相違点1] 「ソースSSD」の選択に関して、本願発明1では、「前記ソースSSDに含まれる不良ブロックの前記容量に関連する前記ソースSSDの容量使用率は、前記ディスクグループの平均容量使用率より大きく」、「前記ディスクグループの前記平均容量使用率は、前記ディスクグループの利用可能な物理容量に対する前記ディスクグループの使用された容量の割合である」のに対して、引用発明の「ステップ10002」では、条件「(X2)」に従って、「割り当て可能実ブロック数2504」が「第5の閾値」以下のフラッシュパーケージを含むパッケージグループ280が、「移動元パッケージグループ」とされるものであって、「ソースSSDの容量使用率」と「前記ディスクグループの平均容量使用率」との大小関係は規定がない点。 [相違点2] 「宛先SSD」の選択に関して、本願発明1では、「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい、前記」ディスクグループ内の宛先SSDを選択するのに対して、引用発明の「ステップ10002」では、条件(Y2)に従い、「割り当て可能実ブロック数2504」が「第6の閾値」を越えているフラッシュパッケージを含むパッケージグループ280が、「宛先パッケージグループ」を選択するものであって、「平均容量使用率」との大小比較に基づくものではなく、また、同一ディスクグループ内である、「前記ディスクグループ内の」宛先SSDを選択するものではない点。 [相違点3] 本願発明1では、「前記ソースSSDの前記容量使用率と前記平均容量使用率とに従って、前記ソースSSDからマイグレーションされるべきデータ量を計算するステップ」を含み、さらに、(マイグレーションされるべき)「前記chunkの数は、前記ソースSSDからマイグレーションされるべき前記データ量と各chunkのサイズとに基づいて決定され」るのに対して、引用発明では、「移動元ページの実ブロック占有率は、その移動元ページの実ブロック占有率と移動先ページの実ブロック占有率との差になるべく近い(好ましくは等しい)」ように、ページ移動をするものであって、「平均容量使用率」を用いて、マイグレーションされるべきデータ量を計算するものではなく、さらに、そのような「前記データ量」に基づいて、マイグレーションされる「chunkの数」を計算するものではない点。 (2) 相違点についての判断 事案に鑑みて、上記[相違点2]について、先に検討する。 引用発明は、「ステップ10002」で、「移動元パッケージグループ」と「移動先パッケージグループ」とを決定して、「移動元パッケージグループ」と「移動先パッケージグループ」間で、すなわち、パッケージグループ間でデータを移動するものであって、上記[相違点2]に係る本願発明1の構成のうちの、「宛先SSD」の選択に関して、「ソースSSD」が含まれている「前記ディスクグループ内の」宛先SSDを選択する構成は備えていない。 また、引用発明は、「割り当て可能実ブロック数2504」が「第6の閾値」を越えているフラッシュパッケージを含むパッケージグループ280が、「宛先パッケージグループ」となるものであって、「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい」フラッシュパッケージ(SSD)を選択するものでもない。 また、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「宛先SSD」の選択に関して、「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい、前記ディスクグループ内の」宛先SSDを選択する構成は、引用文献2-4にも記載されておらず、また、周知技術とも認められない。 したがって、上記[相違点1]、[相違点3]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-8について 本願発明2-4は、概略、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「データマイグレーション装置」の発明であり、本願発明6-8は、本願発明5を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点2]の「宛先SSD」の選択に関して、「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい、前記ディスクグループ内の」宛先SSDを選択する構成と実質的に同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-8も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 本願発明1-8は、「宛先SSD」の選択に関して、「容量使用率が前記ディスクグループの前記平均容量使用率より小さい、前記ディスクグループ内の」宛先SSDを選択するという事項を有しており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-03-05 |
出願番号 | 特願2015-551104(P2015-551104) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 啓介 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
安久 司郎 稲葉 和生 |
発明の名称 | データマイグレーション方法、データマイグレーション装置及びストレージデバイス |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |