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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1337947 |
審判番号 | 不服2017-6008 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-26 |
確定日 | 2018-03-28 |
事件の表示 | 特願2012-251046「情報処理装置、情報処理システム、情報処理プログラム、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 99084、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年11月15日の出願であって,平成28年7月22日付けで拒絶の理由が通知され,同年9月21日に手続補正書が提出され,平成29年2月8日付けで拒絶査定(謄本送達日同年2月10日)がなされ,これに対して同年4月26日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年7月6日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,同年9月5日に上申書が提出され,平成30年1月30日付けで当審により拒絶の理由が通知され,同年2月6日に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-3,9-11 ・引用文献等 1-3 ・請求項 4-5 ・引用文献等 1-4 ・請求項 6,8 ・引用文献等 1-5 ・請求項 7 ・引用文献等 1-3,5 <引用文献等一覧> 1.特開2010-140183号公報 2.特開2009-093369号公報 3.特開2008-003861号公報 4.特開2000-207192号公報 5.特開2012-018657号公報 第3 本願発明 本願請求項1乃至11に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明11」という。)は,特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された,次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 システムソフトウェアによって制御される情報処理装置であって、 前記情報処理装置の制御に通常使用される第1のシステムソフトウェアを記憶する第1記憶手段と、 アップデート用の第2のシステムソフトウェアを記憶する第2記憶手段と、 複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動手段と、 前記第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得手段と、 前記第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得手段と、を備え、 前記第2のシステムソフトウェア又は当該第2のシステムソフトウェア上で動作する第2のアプリケーションは、前記第1更新データを用いて前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1のシステムソフトウェア又は当該第1のシステムソフトウェア上で動作する第1のアプリケーションは、前記第2更新データを用いて前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1更新データ取得手段および前記第2更新データ取得手段によって前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされるとともに、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされ、 前記第1更新データのみが取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって、前記第1更新データを用いて、前記第1のシステムソフトウェアのみがアップデートされ、 前記第2更新データのみが取得されている場合は、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって、前記第2更新データを用いて、前記第2のシステムソフトウェアのみがアップデートされる、情報処理装置。 【請求項2】 前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされた後、前記起動手段によって前記第2のシステムソフトウェアが起動され、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされる、請求項1に記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされた後、前記起動手段によって自動的に前記第2のシステムソフトウェアが起動され、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1のシステムソフトウェアが自動的にアップデートされる、請求項2に記載の情報処理装置。 【請求項4】 所定のアプリケーションを実行するための第3のシステムソフトウェアを記憶する第3記憶手段と、 前記第3のシステムソフトウェアをアップデートするための第3更新データを取得する第3更新データ取得手段と、をさらに備え、 前記起動手段は、前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェア、前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェア、及び、前記第3記憶手段に記憶された第3のシステムソフトウェアを含む複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動し、 前記起動手段によって前記第1又は第2のシステムソフトウェアが起動された場合、当該起動されたシステムソフトウェア又は当該起動されたシステムソフトウェア上で動作するアプリケーションが、前記第3更新データを用いて前記第3記憶手段に記憶された第3のシステムソフトウェアをアップデートする、請求項1から3の何れかに記載の情報処理装置。 【請求項5】 前記第1のシステムソフトウェアは、前記情報処理装置の電源がONにされたときに起動されるシステムソフトウェアである、請求項1から4の何れかに記載の情報処理装置。 【請求項6】 前記第1のシステムソフトウェアは、ユーザに所定のアプリケーションを選択させるためのメニュー機能を提供する、請求項1から5の何れかに記載の情報処理装置。 【請求項7】 前記第1のシステムソフトウェアは、ユーザに所定のアプリケーションを選択させるためのメニュー機能を提供し、 前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによる前記第2のシステムソフトウェアのアップデートは、前記メニュー機能を用いてユーザによって選択実行される、請求項1に記載の情報処理装置。 【請求項8】 前記第1及び第2のシステムソフトウェアは、予め前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段にそれぞれ記憶される、請求項1から7の何れかに記載の情報処理装置。 【請求項9】 システムソフトウェアによって制御される情報処理システムであって、 前記情報処理システムの制御に通常使用される第1のシステムソフトウェアを記憶する第1記憶手段と、 アップデート用の第2のシステムソフトウェアを記憶する第2記憶手段と、 複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動手段と、 前記第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得手段と、 前記第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得手段と、を備え、 前記第2のシステムソフトウェア又は当該第2のシステムソフトウェア上で動作する第2のアプリケーションは、前記第1更新データを用いて前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1のシステムソフトウェア又は当該第1のシステムソフトウェア上で動作する第1のアプリケーションは、前記第2更新データを用いて前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1更新データ取得手段および前記第2更新データ取得手段によって前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされるとともに、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされ、 前記第1更新データのみが取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって、前記第1更新データを用いて、前記第1のシステムソフトウェアのみがアップデートされ、 前記第2更新データのみが取得されている場合は、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって、前記第2更新データを用いて、前記第2のシステムソフトウェアのみがアップデートされる、情報処理システム。 【請求項10】 システムソフトウェアによって制御される情報処理装置のコンピュータによって実行される情報処理プログラムであって、前記コンピュータを、 前記情報処理装置の制御に通常使用される第1のシステムソフトウェア、及び、アップデート用の第2のシステムソフトウェアを含む複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動手段と、 前記第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得手段と、 前記第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得手段として機能させ、 前記第2のシステムソフトウェア又は当該第2のシステムソフトウェア上で動作する第2のアプリケーションは、前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1のシステムソフトウェア又は当該第1のシステムソフトウェア上で動作する第1のアプリケーションは、前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1更新データ取得手段および前記第2更新データ取得手段によって前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされるとともに、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされ、 前記第1更新データのみが取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって、前記第1更新データを用いて、前記第1のシステムソフトウェアのみがアップデートされ、 前記第2更新データのみが取得されている場合は、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって、前記第2更新データを用いて、前記第2のシステムソフトウェアのみがアップデートされる、情報処理プログラム。 【請求項11】 システムソフトウェアによって制御される情報処理システムにおいて実行される情報処理方法であって、 第1記憶手段に記憶された前記情報処理システムの制御に通常使用される第1のシステムソフトウェアと、第2記憶手段に記憶されたアップデート用の第2のシステムソフトウェアとを含む複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動ステップと、 前記第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得ステップと、 前記第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得ステップと、を含み、 前記第2のシステムソフトウェア又は当該第2のシステムソフトウェア上で動作する第2のアプリケーションは、前記第1更新データを用いて前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1のシステムソフトウェア又は当該第1のシステムソフトウェア上で動作する第1のアプリケーションは、前記第2更新データを用いて前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1更新データ取得ステップおよび前記第2更新データ取得ステップにおいて前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされるとともに、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされ、 前記第1更新データのみが取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって、前記第1更新データを用いて、前記第1のシステムソフトウェアのみがアップデートされ、 前記第2更新データのみが取得されている場合は、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって、前記第2更新データを用いて、前記第2のシステムソフトウェアのみがアップデートされる、情報処理方法。」 第4 引用例 1 引用例1に記載された事項 原審における平成28年7月22日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2010-140183号公報(平成22年6月24日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A 「【0002】 従来、複数のROM(Read Only Memory)を使用して各々のROMにプログラムを格納し、何れかのROMを選択させることによって動作させるプログラムを決定し、プログラムをアップデートする際には、動作していないROMを書き換える技術がある。 【0003】 また、最新のプログラムをダウンロードする場合に、BOOTプログラムおよび運用プログラムを起動するために参照されるRAM上の割り込みベクタをBOOTプログラム用に書き換えて、最新のプログラムを予備プログラム領域にダウンロードすると共に、運用プログラム領域と予備プログラム領域のアドレスを交換する切替フラグを反転し、通常動作時には割り込みベクタを運用プログラム用に書き換えるプログラム切替え制御装置がある(特許文献1を参照)。 【特許文献1】特開2005-332228号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 一般に、情報処理装置では、プログラムを最新の状態に保つために、プログラムの更新が行われる。また、プログラム更新の利便性を向上させるために、プログラムの更新情報を情報処理装置に随時通知し、更新プログラムがある場合には情報処理装置が自動でプログラムを更新する技術がある。しかし、このようなプログラム更新処理では、情報処理装置の電源断等によって、プログラムが壊れてしまう虞がある。特に、自動的なプログラム更新は、ユーザにとって更新処理の開始のタイミングが予測困難であるため、望ましくないタイミングでの電源断が発生し易い。更に、ここでシステムの起動処理を担うプログラム(所謂ブートプログラム等)が壊れてしまった場合には、システムを起動させること自体が出来なくなる虞があり、ユーザの手で修正を行うことは非常に困難となる。」 B 「【0020】 プログラムの更新は、サーバ9に保存された更新プログラム91をネットワーク経由でダウンロードし、従前のプログラムを書き換える(通常、上書きされる)ことで行われる。なお、プログラムの更新は、車載機1が搭載された車両のACCオン時にナビゲーション装置3が起動するタイミングや、ユーザ設定に基づくタイミング、ナビゲーション装置において目的地設定された地点(例えば、ユーザの自宅等)に車両が到着したタイミングで、サーバ9の更新情報を有するセンタに問合せを行い、サーバ9に更新プログラムがあることが検知されたことを契機として開始される。ここで、本実施形態における車載機1には携帯電話端末7接続用のインターフェースが設けられており、車載機1は、このインターフェースを介して接続された携帯電話端末7を用いて、インターネット等のネットワーク越しにサーバ9に接続して更新プログラム91をダウンロードする。なお、車載機1に設けられる携帯電話端末7接続用のインターフェースは、USB(Universal Serial Bus)等の有線インターフェースであってもよいし、Bluetooth等の無線インターフェースであってもよい。」 C 「【0022】 図2は、本実施形態に係るナビゲーション装置3のROMに記録されたプログラムの構成を示す図である。ナビゲーション装置3のROMには、プロセッサによって実行されることでナビゲーション装置3による各種機能を実現するためのプログラムが記録されているが、本実施形態では、このようなプログラムが記録されるROM上の領域を、ナビゲーション装置3の起動および更新処理を行うにあたって必要となる起動用プログラムが記録されるブート部31と、起動後のナビゲーション装置3において通常の機能をユーザや周辺装置等へ提供するためのアプリケーションプログラムが記録されるアプリケーション部32と、に分けている。 【0023】 更に、本実施形態では、ブート部31は、起動用プログラムが記録される第一領域(以下、「BOOT_1」とも称する)311と、第一領域311に記録される起動用プログラムと同一の起動用プログラムが記録されている第二領域(以下、「BOOT_2」とも称する)312と、実際に起動処理において実行される起動用プログラムが第一領域311に記録された起動用プログラムおよび第二領域312に記録された起動用プログラムの何れであるかを指定するための起動用プログラム指定情報が記録される指定情報記録領域(以下、「BOOT_0」とも称する)310と、に分けられる。 【0024】 ここで、指定情報記録領域310には、0から2の値が設定され、BOOT_0=0はナビゲーション装置3の起動処理において何れの領域に記録された起動用プログラムが用いられてもよいことを示し、BOOT_0=1はナビゲーション装置3の起動処理において第一領域311に記録された起動用プログラムを用いることを示し、BOOT_0=2はナビゲーション装置3の起動処理において第二領域312に記録された起動用プログラムを用いることを示す。更に、BOOT_0=0は、前回終了時にブート部31の更新処理の途中ではなかったことを示し、BOOT_0=1およびBOOT_0=2は、前回終了時にブート部31の更新処理の途中であったことを示す。」 D 「【0026】 図4は、本実施形態に係るナビゲーション装置3の、プログラム更新の流れの概要と、これに伴う指定情報記録領域310の更新の流れを示す図である。ナビゲーション装置3は、電源が投入されると、指定情報記録領域310を参照して起動用プログラムを特定し、特定された起動用プログラムを実行することで装置を起動させる。通常、この時点で指定情報記録領域310には、第一領域311および第二領域312の何れの領域に記録された起動用プログラムを用いて起動してもよい旨を意味する「0」が記録されているため、ナビゲーション装置3は、第一領域311および第二領域312に記録された起動用プログラムのうち任意のものを実行することで装置を起動させる。但し、何れの起動用プログラムを用いてもよい場合には優先的に第一領域311に記録された起動用プログラムが用いられる等、優先順位が設けられていてもよい。 【0027】 車載機1の起動後、現在ナビゲーション装置3にインストールされているプログラムが最新のプログラムでなく、サーバ9に更新プログラム91があることが検知されると、更新プログラム91のダウンロードおよび更新処理(既存プログラムへの上書き)が行われる。この際、更新は、第一領域(BOOT_1)311に記録されている起動用プログラム、第二領域(BOOT_2)312に記録されている起動用プログラム、そしてアプリケーションプログラム、の順に行われる。そして、この際、第一領域311の更新開始前には、指定情報記録領域310に2が設定され、第一領域311の更新完了後、第二領域312の更新開始前には、指定情報記録領域310に1が設定され、第二領域312の更新完了後、アプリケーション部32の更新開始前には、指定情報記録領域310に0が設定される。アプリケーション部32の更新が完了すると、プログラム更新処理は終了する。」 2 引用発明 上記記載事項A乃至Dから,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「プログラムの更新情報を情報処理装置に随時通知し,更新プログラムがある場合には情報処理装置が自動でプログラムを更新するようなプログラム更新処理では,情報処理装置の電源断等によって,プログラムが壊れてしまう虞があり,システムの起動処理を担うプログラム(所謂ブートプログラム等)が壊れてしまった場合には,システムを起動させること自体が出来なくなる虞があり,ユーザの手で修正を行うことは非常に困難となることを課題としたナビゲーション装置であって, プログラムの更新は,サーバに保存された更新プログラムをネットワーク経由でダウンロードし,従前のプログラムを書き換えることで行われ, 前記ナビゲーション装置のROMには,プロセッサによって実行されることでナビゲーション装置による各種機能を実現するためのプログラムが記録されており, 前記ROM上の領域を,起動用プログラムが記録されるブート部と,アプリケーションプログラムが記録されるアプリケーション部と,に分け, 更に,前記ブート部は,起動用プログラムが記録される第一領域(以下,「BOOT_1」とも称する)と,第一領域に記録される起動用プログラムと同一の起動用プログラムが記録されている第二領域(以下,「BOOT_2」とも称する)と,実際に起動処理において実行される起動用プログラムが前記第一領域に記録された起動用プログラムおよび前記第二領域に記録された起動用プログラムの何れであるかを指定するための起動用プログラム指定情報が記録される指定情報記録領域(以下,「BOOT_0」とも称する)と,に分けられ, 前記指定情報記録領域には,0から2の値が設定され,BOOT_0=0はナビゲーション装置の起動処理において何れの領域に記録された起動用プログラムが用いられてもよいことを示し,BOOT_0=1はナビゲーション装置の起動処理において第一領域に記録された起動用プログラムを用いることを示し,BOOT_0=2はナビゲーション装置の起動処理において第二領域に記録された起動用プログラムを用いることを示し,BOOT_0=0は,前回終了時にブート部の更新処理の途中ではなかったことを示し,BOOT_0=1およびBOOT_0=2は,前回終了時にブート部の更新処理の途中であったことを示し, 電源が投入されると,指定情報記録領域を参照して起動用プログラムを特定し,特定された起動用プログラムを実行することで装置を起動させ, 現在前記ナビゲーション装置にインストールされているプログラムが最新のプログラムでなく,サーバに更新プログラムがあることが検知されると,更新プログラムのダウンロードおよび更新処理(既存プログラムへの上書き)が行われ,この際,更新は,第一領域(BOOT_1)に記録されている起動用プログラム,第二領域(BOOT_2)に記録されている起動用プログラム,そしてアプリケーションプログラム,の順に行われ,この際,第一領域の更新開始前には,指定情報記録領域に2が設定され,第一領域の更新完了後,第二領域の更新開始前には,指定情報記録領域に1が設定され,第二領域の更新完了後,アプリケーション部の更新開始前には,指定情報記録領域に0が設定される ナビゲーション装置。」 3 引用例2に記載された事項 原審拒絶理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2009-93369号公報(平成21年4月30日公開。以下,これを「引用例2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 E 「【0057】 本発明のスティックサーバ10においては、第1のOS、第2のOSの何れか一方がサーバ装置を構成するOSとして通常起動され、他方のOSはサーバとしてのバックアップ機能を実行するために起動されるOSとして用いられるものである。 【0058】 一般にサーバ装置においては、サーバ装置としてのOSやデータをバックアップする機能と、サーバ装置としてのOS自体のバージョンアップに対処する機能とが必要になる。本発明のスティックサーバ10においては、第1のOS、第2のOSの何れか一方がサーバ装置を構成するOSとして通常起動され、他方のOSは、サーバ装置を構成するOSのバックアップ機能、サーバ装置を構成するOS自体をバージョンアップする機能を実行するために起動される。 【0059】 すなわち、第1のOSを通常起動されるサーバ装置を構成するOSとした場合、サーバ装置を構成する第1のOSのバックアップ機能、サーバ装置を構成する第1のOS自体をバージョンアップする機能を実行する場合、第2のOSを起動してそれらの機能を実行するようにされる。 【0060】 第1に、サーバ装置を構成する第1のOSのバックアップ機能を実行する場合、第2のOSを起動し、第2のOSにより第1のOSおよびデータ(第1のOSにより生成されたデータやサーバ装置に接続されたクライアント装置のデータ)を、ネットワークを介して外部(遠隔)のサーバに送りバックアップする。 また、第2に、サーバ装置を構成する第1のOS自体をバージョンアップする機能を実行する場合、第2のOSを起動し、第2のOSにより外部(遠隔)のサーバにあるOSのデータ(一般には旧バージョンのOSと新バージョンのOSとの差分データ:パッチと呼ばれる)を、ネットワークを介して取得して、第1のOSに上書きして対応するプログラムファイルなどを書き換える(パッチを当てると言われることもある)。」 4 引用例3に記載された事項 原審拒絶理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2008-3861号公報(平成20年1月10日公開。以下,これを「引用例3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 F 「【0068】 ステップSP12においてCPU30は、主領域のプログラムも副領域のプログラムも双方が正常であるため、ここでは主領域の読込プログラム及び書換プログラムを起動し、次のサブルーチンSRT3へ移る。 【0069】 図7に示したようにCPU30は、サブルーチンSRT3の開始ステップから入って次のステップSP34へ移り、上述したようにユーザによるプログラムバージョンアップの意思を2度問い合わせ、それに対する応答に応じて書換え意思を確認すると、主領域の読込プログラムによりUSBメモリ16に格納されている新たなプログラムを読み出してRAM32に一旦保持し、主領域の書換プログラムにより副領域の読込プログラム及び書換プログラムを新たなプログラム(新たな読込プログラム及び新たな書換プログラム)に書き換えることによりアップデートし、次のステップSP35へ移る。 【0070】 ステップSP35においてCPU30は、ステップSP34におけるプログラム書換処理によって副領域のプログラムが正常になったか否かを判定し、否定結果が得られるとステップSP31へ戻り、肯定結果が得られると次のステップSP36へ移る。 【0071】 ステップSP36においてCPU30は、副領域のプログラムが正常になったことを確認した後であるため、その副領域の書換プログラムに従って先程RAM32に一旦保持した新たなプログラムにより主領域の通常動作プログラム、読込プログラム及び書換プログラムを書き換えることによりアップデートし、次のステップSP37へ移る。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ナビゲーション装置」は,プログラムを更新する情報処理装置であるといえるから,本願発明1の「情報処理装置」に相当する。 (2)引用発明の「ブート部」における「第一領域」及び「第二領域」に記録されている「同一の起動用プログラム」は,本願発明1の「第1のシステムソフトウェア」及び「第2のシステムソフトウェア」に相当するといえ,また,引用発明の当該「ブート部」が存在する「ROM」は,本願発明1の「第1記憶手段」及び「第2記憶手段」と,情報を記憶する手段で共通することから,上記(1)における検討を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“第1のシステムソフトウェアを記憶する第1記憶手段”及び“第2のシステムソフトウェアを記憶する第2記憶手段”を有する点で一致する。 (3)引用発明の「指定情報記録領域」は,「実際に起動処理において実行される起動用プログラムが前記第一領域に記録された起動用プログラムおよび前記第二領域に記録された起動用プログラムの何れであるかを指定するための起動用プログラム指定情報が記録される」ものであり,「電源が投入されると,指定情報記録領域を参照して起動用プログラムを特定し,特定された起動用プログラムを実行することで装置を起動させ」ることから,引用発明と本願発明1とは,“複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動手段”を有する点で一致する。 (4)引用発明における「プログラムの更新」は,「サーバに保存された更新プログラムをネットワーク経由でダウンロードし,従前のプログラムを書き換えることで行われ」るものであり,当該「更新プログラム」は本願発明1の「更新データ」に相当するといえ,当該「更新データ」を取得する手段を有していることは明らかであるから,引用発明と本願発明1とは,“第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得手段”及び“第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得手段”を有する点で一致する。 (5)引用発明は,「電源が投入されると,指定情報記録領域を参照して起動用プログラムを特定し,特定された起動用プログラムを実行することで装置を起動」させ,「現在前記ナビゲーション装置にインストールされているプログラムが最新のプログラムでなく,サーバに更新プログラムがあることが検知されると,更新プログラムのダウンロードおよび更新処理(既存プログラムへの上書き)が行われ,この際,更新は,第一領域(BOOT_1)に記録されている起動用プログラム,第二領域(BOOT_2)に記録されている起動用プログラム,そしてアプリケーションプログラム,の順に行われ,この際,第一領域の更新開始前には,指定情報記録領域に2が設定され,第一領域の更新完了後,第二領域の更新開始前には,指定情報記録領域に1が設定され,第二領域の更新完了後,アプリケーション部の更新開始前には,指定情報記録領域に0が設定される」ことから,例えば「第一領域(BOOT_1)に記録されている起動用プログラム」を更新する場合には,「第二領域(BOOT_2)に記録されている起動用プログラム」が起動されて更新処理がされるものであることを読取ることができるから,引用発明と本願発明1とは,“第2のシステムソフトウェア”が,“第1更新データを用いて前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェアをアップデート”する点及び“第1のシステムソフトウェア”が,“第2更新データを用いて前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェアをアップデート”する点で共通する。 (6)以上,(1)乃至(5)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 システムソフトウェアによって制御される情報処理装置であって、 前記情報処理装置の制御に通常使用される第1のシステムソフトウェアを記憶する第1記憶手段と、 第2のシステムソフトウェアを記憶する第2記憶手段と、 複数のシステムソフトウェアのうちの何れか1つを起動する起動手段と、 前記第1のシステムソフトウェアをアップデートするための第1更新データを取得する第1更新データ取得手段と、 前記第2のシステムソフトウェアをアップデートするための第2更新データを取得する第2更新データ取得手段と、を備え、 前記第2のシステムソフトウェアは、前記第1更新データを用いて前記第1記憶手段に記憶された第1のシステムソフトウェアをアップデートし、 前記第1のシステムソフトウェアは、前記第2更新データを用いて前記第2記憶手段に記憶された第2のシステムソフトウェアをアップデートする、情報処理装置。 〈相違点1〉 本願発明1の「第2のシステムソフトウェア」が,「アップデート用の」ものであるのに対し,引用発明の「第二領域(BOOT_2)に記録されている起動用プログラム」は,アップデート用のものであるとの特定がなされていない点。 〈相違点2〉 本願発明1の「第1(第2)のシステムソフトウェアをアップデート」する手段が,「第2(第1)のシステムソフトウェア」又は「当該第2(第1)のシステムソフトウェア上で動作する第2(第1)のアプリケーション」であるのに対し,引用発明では,「第二(一)領域(BOOT_2(1))に記録されている起動用プログラム」によって「第一(二)領域(BOOT_1(2))に記録されている起動用プログラム」が更新されるものである点。 〈相違点3〉 本願発明1が,「前記第1更新データ取得手段および前記第2更新データ取得手段によって前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって前記第1更新データを用いて前記第1のシステムソフトウェアがアップデートされるとともに、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって前記第2更新データを用いて前記第2のシステムソフトウェアがアップデートされ」,「前記第1更新データのみが取得されている場合は、前記第2のシステムソフトウェア又は前記第2のアプリケーションによって、前記第1更新データを用いて、前記第1のシステムソフトウェアのみがアップデートされ」,さらに,「前記第2更新データのみが取得されている場合は、前記第1のシステムソフトウェア又は前記第1のアプリケーションによって、前記第2更新データを用いて、前記第2のシステムソフトウェアのみがアップデートされる」ものであるのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。 2 判断 事案に鑑み,相違点3について先に検討する。 引用発明の「起動用プログラム」につき,「第一領域に記録される起動用プログラム」と「第二領域に記録された起動用プログラム」は同一のものであるため,本願発明1の「更新データ」に相当する「更新プログラム」が,「第一領域に記録される起動用プログラム」用のものと「第二領域に記録された起動用プログラム」用のものとで2種類存在することはあり得ず,同一の「更新プログラム」が更新のために共通に用いられるものと解される。 してみると,「前記第1更新データおよび前記第2更新データの両方が取得されている場合」や「前記第1更新データのみが取得されている場合」,さらには「前記第2更新データのみが取得されている場合」といった状況が引用発明においてはそもそも想定し得ないのであるから動機付けがあるとはいえず,相違点3に係る構成を引用発明から想到することは当業者であっても容易になし得たとはいえない。 この点,さらに進んで上記「第4 引用例」の「3 引用例2に記載された事項」の項の記載事項E,とりわけ,「第1のOSを通常起動されるサーバ装置を構成するOSとした場合、サーバ装置を構成する第1のOSのバックアップ機能、サーバ装置を構成する第1のOS自体をバージョンアップする機能を実行する場合、第2のOSを起動してそれらの機能を実行するようにされる」ことや,同「4 引用例3に記載された事項」の項の記載事項F,とりわけ「ステップSP35においてCPU30は、ステップSP34におけるプログラム書換処理によって副領域のプログラムが正常になったか否かを判定し、否定結果が得られるとステップSP31へ戻り、肯定結果が得られると次のステップSP36へ移」り,「ステップSP36においてCPU30は、副領域のプログラムが正常になったことを確認した後であるため、その副領域の書換プログラムに従って先程RAM32に一旦保持した新たなプログラムにより主領域の通常動作プログラム、読込プログラム及び書換プログラムを書き換えることによりアップデートし、次のステップSP37へ移る」ことを参照したとしても,相違点3に係る構成を引用発明において想起することは当業者にとって容易であったということはできない。 したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明2乃至8について 本願発明2乃至8は,請求項1を引用するものであって,本願発明1のうち,上記相違点3に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明9乃至11について 本願発明9乃至11は,本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 当審拒絶理由について <特許法第36条第6項第2号について> 当審では,請求項1乃至11の「アップデート手段」につき構成が不明りょうであるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年2月6日付けの補正において,上記「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1乃至11は,当業者が引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-03-16 |
出願番号 | 特願2012-251046(P2012-251046) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 山崎 慎一 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理システム、情報処理プログラム、および情報処理方法 |
代理人 | 小沢 昌弘 |
代理人 | 寺本 亮 |
代理人 | 石原 盛規 |