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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1337991
審判番号 不服2016-4939  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2018-03-07 
事件の表示 特願2011-197783「二重エネルギCTのためのノッチ・フィルタを備えたイメージング・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日出願公開、特開2012- 66075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年9月12日(パリ条約による優先権主張 2010年9月22日 米国)の出願であって、平成27年6月4日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月6日付けで拒絶査定されたところ、同年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において同年12月19日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において同年3月27日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年6月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月16日付けでファクシミリで審尋を行い、同年8月23日に回答書がファクシミリで送付されたものである。

第2 平成29年6月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年6月2日付けの手続補正についての補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容

(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所を示す。)。

「X線のビーム(16)を撮像対象(22)へ向けて放出するX線源(14)と、
前記対象(22)により減弱された前記X線(16)を受光する検出器(18)と、
前記X線源(14)と前記対象(22)との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大する単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)と、
前記検出器(18)に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)(32)と、
該DAS(32)に接続されて動作するコンピュータ(36)と
を備えたイメージング・システム(10)であって、前記コンピュータ(36)は、
前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線において第一の画像データセットを取得し、
前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線において第二の画像データセットを取得して、
前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象(22)の画像を形成する
ようにプログラムされ、
前記ノッチ・フィルタ(15)は、Hf(ハフニウム)とW(タングステン)の組み合わせを含み、
前記第一のkVp(104)と前記第二のkVp(108)との間で高速な切り換えが行われる、イメージング・システム(10)。」

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」について、「単一の」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) 本願補正発明

本願補正発明は、平成29年6月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の事項により特定される発明であり、分説してA)ないしI)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

「【請求項1】
A) X線のビーム(16)を撮像対象(22)へ向けて放出するX線源(14)と、
B) 前記対象(22)により減弱された前記X線(16)を受光する検出器(18)と、
C) 前記X線源(14)と前記対象(22)との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大する単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)と、
D) 前記検出器(18)に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)(32)と、
E) 該DAS(32)に接続されて動作するコンピュータ(36)と
F) を備えたイメージング・システム(10)であって、
G) 前記コンピュータ(36)は、
G-1) 前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線において第一の画像データセットを取得し、
G-2) 前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線において第二の画像データセットを取得して、
G-3) 前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象(22)の画像を形成するようにプログラムされ、
H) 前記ノッチ・フィルタ(15)は、Hf(ハフニウム)とW(タングステン)の組み合わせを含み、
I) 前記第一のkVp(104)と前記第二のkVp(108)との間で高速な切り換えが行われる、
F) イメージング・システム(10)。」

本願補正発明における「単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」に関して、平成29年8月16日付けでファクシミリで審尋を行い、「請求項1における「単一の」の記載を、どのような意味で用いているのか」を請求人に尋ねたところ、同年8月23日に回答書がファクシミリで送付され、「請求項1における「単一の」の記載は、「スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」が一つであることを意味しております。」との回答を得た。したがって、本願補正発明のスペクトル・ノッチ・フィルタは、文字通り「単一の」ものを意味すると認める。

(2) 平成29年3月27日付け拒絶理由の概要

当審による平成29年3月27日付け拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

刊行物1:特開平6-121791号公報
刊行物2:J.A.BEARDEN et al.、Reevaluation of X-Ray Atomic Energy Levels、REVIEWS OF MODERN PHYSICS、Vol.39 No.1、1967年、pp.125-142
刊行物3:特開平5-212028号公報
刊行物4:特開平10-192266号公報

(3) 引用刊行物の記載事項

ア 刊行物1

(ア) 刊行物1の記載事項

刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。

(刊1-ア)「【請求項1】X線を照射するとともに、X線のエネルギースペクトルを切り替え可能なX線照射手段と、前記X線照射手段から照射されるX線のスペクトルを複数のエネルギーバンドに分離するフィルタと、前記フィルタで分離した複数のエネルギーバンドのX線が被検体に照射され、エネルギーバンド毎に前記被検体のX線透過強度を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段により検出されたX線透過強度を用いて演算し前記被検体中に含まれる物質の定量計算を行う演算手段とを備えたX線定量装置。
【請求項2】X線照射手段は、X線を照射するX線管と、前記X線管の管電圧を切り替えてX線のエネルギースペクトルを切り替える切替え装置から構成し、フィルタはK吸収端フィルタで構成し、X線検出手段はCdTe半導体X線検出器で構成した請求項1記載のX線定量装置。」

(刊1-イ)「【0052】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例におけるX線定量装置の構成図である。図1において、X線照射装置はX線管11と管電圧切替え装置12から構成され、X線管11はX線を照射し、管電圧切替え装置12は、X線管11から発生するX線のスペクトルを変えるために管電圧を切り替える。K吸収端フィルタ13はX線管11から照射されたX線のスペクトルを2つのエネルギーバンドに分離する。CdTe半導体X線検出器14は、それぞれのエネルギーバンドにおける、被検体15を透過したX線強度を測定する。このX線検出器14が制御装置16を介して接続される演算装置17は表示装置18に接続され、X線検出器14からの透過情報を用いて計算処理を行い、X線検出器14で検出されたX線透過強度を演算して被検体15中に含まれる物質の定量計算を行い、計算結果などを表示装置18に表示する。また、制御装置16は管電圧切替え装置12、X線検出器14および移動装置19に接続され、管電圧の切り替えやX線検出器14、移動装置19を制御する。支持体20は、X線管11、K吸収端フィルタ13とX線検出器14を支持し、移動装置19はこれらを同期して移動させる。
【0053】ここで、K吸収端フィルタ13としてはガドリニウムを用いた。ガドリニウムは50.2keVにK吸収端を持つ。X線管電圧を80kVとして、X線管11から放射されるファンビームX線21がK吸収端フィルタ13を透過した後のスペクトルを図2に示す。図2において、50keVを境に、2つのエネルギーバンドL1、H1に分離されている。L1の実効エネルギーは45keVであり、H1の実効エネルギーは65keVである。
【0054】また、管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧を80kVから120 kVに変えると、同じK吸収端フィルタ13を透過したX線スペクトルは図3のようになる。図3において、図2の場合と同様に50keVを境に、2つのエネルギーバンドL2、H2に分離されている。L2の実効エネルギーは45keV、H2の実効エネルギーは85keVである。
【0055】以上のどのエネルギーバンドにおいても、K吸収端フィルタ13の厚さは2つのエネルギーバンドを得る場合の光子数と同等である。したがって、管電圧を80kVと120 kVに切り替えることにより、実効エネルギー45kV、65keV、85keVの3つのエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射することができる。」

(刊1-ウ)「【0058】ここで、図2,3に示したエネルギーバンドを持つX線の被検体15に対する透過強度を測定するためには、1つのパルス波高弁別器24の比較電圧をノイズ成分とX線による信号パルスの境界となる電圧に設定し、他の1つのパルス波高弁別器25の比較電圧を50keVに相当するパルス波高の電圧に設定する。カウンタ26では、CdTe検出器22に吸収されたX線光子の総数がパルス数として計数される。また、カウンタ27では、50keV以上のエネルギーを持つX線光子がパルス数として計数される。したがって、管電圧切替え装置12でX線管11の管電圧を切り替えてX線のエネルギースペクトルを切り替えることにより、実効エネルギーH1 、H2 のX線光子はカウンタ27でそれぞれ計測され、実効エネルギーL1 、L2 のX線光子はカウンタ25で計数された値からカウンタ27で計数した値を減算することによりそれぞれ得られる。以上により、3つのエネルギーバンドのX線透過強度を光子数として計数することができる。本実施例の多チャンネル型CdTe半導体X線検出器14は64チャンネルで構成されており、同時に64チャンネルで以上の計測が行われる。」

(刊1-エ)「【0060】すなわち、移動装置19により、X線管11、K吸収端フィルタ13とX線検出器14を同期させて図1の矢印Rのライン方向に移動させながら被検体15としての人体28透過後のX線光子数を75ラインに渡って測定した。管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧は、各ラインごとに80kVと120 kVに切り替えられ、3つのエネルギーバンドのX線が人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、それぞれ2次元の透過情報を得た。これらは、制御装置16により制御される。
【0061】この方法で測定した値により、(数23)から(数25)を用いて、減弱係数μA 、μB 、μC に骨29、脂肪30、筋肉31の減弱係数を対応させて計算することにより、図5に示す人体28の各部における骨29、脂肪30、筋肉31の量を求めることができた。被検体15としての人体28に照射されるX線光子数が十分に多いので高い測定精度を得ることができた。」

(刊1-オ)「【0063】なお、本実施例においては、K吸収端としてガドリニウムを用いたが、これに限られるわけではなく、測定しようとする物質に好適なエネルギーバンドが得られるようなK吸収端を有する材料を用いることができる。たとえば、ガドリニウムとエルビウムを組み合わせても、50keVを境に2つのエネルギーバンドに分離できる。また、40keVでエネルギー分離を行う場合には、セリウムなどを用いることができる。
【0064】また、X線管電圧も本実施例の80kVと120 kVに限るものでなく、測定しようとする物質に好適なエネルギーバンドが得られるようにK吸収端と併せて選択することができる。」

(刊1-カ)図1




(刊1-キ)図2




(刊1-ク)図3




(刊1-ケ) 図5




(イ) 刊行物1に記載された発明の認定

上記(刊1-エ)及び(刊1-ケ)を参照すると、測定されたそれぞれの2次元の透過情報に基づき、被検体15としての人体28の画像を構成する点が見て取れる。
また、上記(刊1-カ)に示した図1を参照すると、K吸収端フィルタ13が、単一のものであることは明らかである。

よって、上記(刊1-ア)ないし(刊1-ケ)を含む刊行物1全体の記載を総合すると、刊行物1には、

「X線を照射するとともに、X線のエネルギースペクトルを切り替え可能なX線照射手段と、前記X線照射手段から照射されるX線のスペクトルを複数のエネルギーバンドに分離するフィルタと、前記フィルタで分離した複数のエネルギーバンドのX線が被検体に照射され、エネルギーバンド毎に前記被検体のX線透過強度を検出するX線検出手段と、前記X線検出手段により検出されたX線透過強度を用いて演算し前記被検体中に含まれる物質の定量計算を行う演算手段とを備えたX線定量装置であり、
前記フィルタは50.2keVにK吸収端を持つガドリニウムを用いた単一のK吸収端フィルタで構成され、
前記X線照射手段は、X線管11と管電圧切替え装置12から構成され、X線管11はX線を照射し、管電圧切替え装置12は、X線管11から発生するX線のスペクトルを変えるために管電圧を切り替え、
前記K吸収端フィルタ13はX線管11から照射されたX線のスペクトルを2つのエネルギーバンドに分離するものであり、
前記X線検出手段はCdTe半導体X線検出器14で構成され、前記CdTe半導体X線検出器14は、それぞれのエネルギーバンドにおける、被検体15を透過したX線強度を測定し、
このX線検出器14が制御装置16を介して接続される演算装置17は表示装置18に接続され、X線検出器14からの透過情報を用いて計算処理を行い、X線検出器14で検出されたX線透過強度を演算して被検体15中に含まれる物質の定量計算を行い、計算結果などを表示装置18に表示するものであり、
X線管電圧を80kVとして、X線管11から放射されるファンビームX線21がK吸収端フィルタ13を透過した後のスペクトルは、50keVを境に、2つのエネルギーバンドL1、H1に分離され、L1の実効エネルギーは45keVであり、H1の実効エネルギーは65keVであり、
管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧を80kVから120 kVに変えると、同じK吸収端フィルタ13を透過したX線スペクトルは、50keVを境に、2つのエネルギーバンドL2、H2に分離され、L2の実効エネルギーは45keV、H2の実効エネルギーは85keVであり、
管電圧を80kVと120 kVに切り替えることにより、実効エネルギー45keV、65keV、85keVの3つのエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射することができ、
移動装置19により、X線管11、K吸収端フィルタ13とX線検出器14を同期させてライン方向に移動させながら、管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧は、各ラインごとに80kVと120kVに切り替えられ、3つのエネルギーバンドのX線が被検体15としての人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、それぞれ2次元の透過情報を得、測定されたそれぞれの2次元の透過情報に基づき、被検体15の画像を構成する、
X線定量装置。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

イ 刊行物2

(ア) 刊行物2の記載事項

刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(刊2-ア)P.128 TABLE I の説明文
「TABLE I. Recomended values of atomic energy levels, and probable errors in eV.」(当審訳:原子エネルギーレベルの推奨値と、eVでの推定誤差)

(刊2-イ)P.132 TABLE I (continued)の下の部分




(刊2-ウ)P.133 TABLE I (continued)の下の部分




(イ) 刊行物2の記載より認定できる事項

(刊2-イ)に示したTABLE I (continued)の72HfのKを参照すると、Hf(ハフニウム)のK吸収端のエネルギーが65350.8±0.6eVであり、また、(刊2-ウ)に示したTABLE I (continued)の74WのKを参照すると、W(タングステン)のK吸収端のエネルギーが69525.0±0.3eVである点が理解できる。
そして、刊行物2が1967年に刊行されたものであることから、上記の各々の値は、本願優先日前において、周知であったものと認められる。

ウ 刊行物3

刊行物3には、以下の事項が記載されている。

(刊3-1)
「【請求項1】放射線発生器から被写体に照射された放射線ビーム上から発生するコンプトン散乱放射線を検出することにより前記被写体内の縦方向の断層像を得る放射線3次元画像撮影装置であって、前記コンプトン散乱放射線のエネルギー強度を検出する放射線検出器を備え、前記エネルギー強度を比較して前記被写体を構成する材料に関する情報を得る構成とした放射線3次元画像撮影装置。
【請求項2】放射線検出器に、コンプトン散乱放射線のエネルギー強度を2つのエネルギー範囲に分離して検出する2組のディスクリミネータおよびカウンタと、前記2組のディスクリミネータおよびカウンタにより分離した前記コンプトン散乱放射線のエネルギー強度情報よりなる画像情報を用いて、低エネルギー画像情報と高エネルギー画像情報の比、または、低エネルギー画像情報を対数化した画像情報と高エネルギー画像情報を対数化した画像情報の比を演算して画像情報とする画像処理部とを設けた請求項1記載の放射線3次元画像撮影装置。
【請求項3】放射線発生器と被写体の間に、前記放射線発生器から発生する放射線エネルギー強度を2つの領域に分離する、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)のうち少なくとも1元素を含みK殻吸収端を利用したKエッジフィルタを設けた請求項2記載の放射線3次元画像撮影装置。」

(刊3-2)
「【0020】このビームハードニング現象を低減する方法としては入射X線のエネルギースペクトルをできうる限り狭くすることである。この方法としては、X線を2つのエネルギー領域に前もって分離した後に被写体14に照射すればよい。その1例としてX線発生器11と被写体14の間にK殻吸収端を利用したKエッジフィルタ25を設け、Kエッジフィルタ25は、分離したいエネルギーに吸収端の存在する材料を挿入することにより、X線発生器11から発生するX線エネルギー強度を容易に2つのエネルギー帯に分離することができる。本発明の散乱X線エネルギー領域で使用するKエッジフィルタとして適したものはタンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)のうち少なくとも1元素を含むフィルタで、いずれも60?80keV に吸収端を有している。このフィルタを使用することにより、X線の実効エネルギー約60keV 、100keVが容易に得られる。また、より簡単に行うには、X線発生器11に印加する電圧をスイッチングすることによりX線エネルギーを容易に変化させることが可能であるが、この場合、X線スペクトルに重なりが生じる。なお、X線発生器11に印加する電圧をスイッチングし、発生するX線のエネルギーを交互に切り換えて被写体14に照射し、被写体14から発生するコンプトン散乱X線15をスイッチングと同期させて検出してもよい。」

エ 刊行物4

刊行物4には、以下の事項が記載されている。

(刊4-1)
「【請求項1】 X線を被検体に放射し、該被検体を通過した透過X線をX線検出手段により検出して透過X線像を収集するX線診断方法において、
X線源と前記X線検出手段との間に少なくとも3種類以上の異なるK吸収端を持つX線フィルタを交互に挿入し、これらのX線フィルタを挿入した時に得られる3種類以上の異なるX線スペクトルの画像を収集することを特徴とするX線診断方法。」

(刊4-2)
「【0037】・・・セシウム(Cs)のK吸収端は35.98keV、ガドリニウム(Gd)のK吸収端は50.23keV、ハフニウム(Hf)のK吸収端は65.34keVであり、このエネルギーのところでX線減弱が大きくなるので、それぞれのスペクトルの不連続線として現れる。」

(4) 本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本願補正発明のA)の特定事項について
引用発明の「X線を」「被検体に照射」する「X線管11」は、本願補正発明の「X線のビーム(16)を撮像対象(22)へ向けて放出するX線源(14)」に相当する。

イ 本願補正発明のB)の特定事項について
引用発明の「被検体15としての人体28を透過した後の」「X線の」「強度」を「測定」する「X線検出器14」は、本願補正発明の「前記対象(22)により減弱された前記X線(16)を受光する検出器(18)」に相当する。

ウ 本願補正発明のC)の特定事項について
(ア) 引用発明の「50.2keVにK吸収端を持つガドリニウム」は、本願補正発明の「約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質」に相当する。
(イ) 引用発明の「50.2keVにK吸収端を持つガドリニウムを用いた」「K吸収端フィルタ」は、「X線管11から照射されたX線のスペクトルを2つのエネルギーバンドに分離するものであ」り、「実効エネルギー45keV、65keV、85keVの3つのエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射する」ためのものであるから、「X線管11」と「被検体15」の間に配置されるものであることは明らかである。
(ウ) 引用発明の「K吸収端フィルタ」は、「X線管11から照射されたX線のスペクトルを2つのエネルギーバンドに分離するものであ」り、「K吸収端」において、スペクトルをノッチ状に吸収するものであることは当業者にとって明らかである。
(エ) 引用発明の「単一のK吸収端フィルタ」と、本願補正発明の「単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」は、いずれも「単一の」フィルタである点で一致する。
(オ) よって、引用発明の「単一のK吸収端フィルタ」は、本願補正発明の「単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」に相当し、両者は、X線源と、対象との間に配置されるものである点で一致する。
(カ) (刊1-キ)に示した図2と(刊1-ク)に示した図3を比較すると、50keVより低いL1とL2は同じだが、50keVより高いH1とH2は、H2の方がH1よりエネルギーが高いことが読み取れるから、引用発明の「K吸収端フィルタ」は「低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収」するものであり、「両者のエネルギ分離を拡大する」ものと認められる。
(キ) 以上のことから、引用発明の「50.2keVにK吸収端を持つガドリニウムを用いた単一のK吸収端フィルタ」と、本願補正発明の「前記X線源(14)と前記対象(22)との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大する単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」とは、「前記X線源」「と前記対象」「との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大する単一のスペクトル・ノッチ・フィルタ」である点で一致する。

エ 本願補正発明のD)の特定事項について
引用発明は、「X線が被検体15としての人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、それぞれ2次元の透過情報を得る」ものであり、引用発明の「X線検出器14により測定」し、「2次元の透過情報を得る」手段は、本願補正発明の「前記検出器(18)に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)(32)」に相当する。

オ 本願補正発明のE)の特定事項について
引用発明の「X線検出器14」に「接続される」「制御装置16」及び「X線検出器14からの透過情報を用いて計算処理を行」う「演算装置17」は、本願補正発明の「該DAS(32)に接続されて動作するコンピュータ(36)」に相当する。

カ 本願補正発明のF)の特定事項について
(ア) 引用発明の「X線定量装置」は、「測定されたそれぞれの2次元の透過情報に基づき、被検体15の画像を構成する」ものである。
(イ) よって、引用発明の「測定されたそれぞれの2次元の透過情報に基づき、被検体15の画像を構成する」「X線定量装置」は、本願補正発明の 「イメージング・システム(10)」に相当する。

キ 本願補正発明のG)の特定事項について
(ア) 引用発明の「2次元の透過情報」は、本願補正発明の「画像データセット」に相当する。
(イ) 引用発明の「80kV」は、本願補正発明の「第一のkVp(104)」に相当する。
(ウ) 引用発明の「80kVとして、X線管11から放射されるファンビームX線21がK吸収端フィルタ13を透過した後のスペクトル」を「2つのエネルギーバンドL1、H1に分離」し、「L1の実効エネルギーは45keVであり、H1の実効エネルギーは65keVであり、」「実効エネルギー」「45keV」及び「実効エネルギー」「65keV」「のエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射」し、「X線が被検体15としての人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、」「2次元の透過情報を得る」ことと、本願補正発明の「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線において第一の画像データセットを取得」することとは、「スペクトル・ノッチ・フィルタを通過した第一のkVpによるX線において第一の画像データセットを取得」する点で共通する。
(エ) 引用発明の「120 kV」は、本願補正発明の「前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)」に相当する。
(オ) 引用発明の「X線管11の管電圧を80kVから120 kVに変え」、「K吸収端フィルタ13を透過したX線スペクトル」を「2つのエネルギーバンドL2、H2に分離」し、「L2の実効エネルギーは45keV、」「H2の実効エネルギーは85keVであり、」「実効エネルギー」「45keV」及び「実効エネルギー」「85keV」「のエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射」し、「X線が被検体15としての人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、」「2次元の透過情報を得る」ことと、本願補正発明の「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線において第二の画像データセットを取得」することとは、「スペクトル・ノッチ・フィルタを通過した第二のkVpによるX線において第二の画像データセットを取得」する点で共通する。
(カ) 上記(ウ)、(オ)での検討に鑑みれば、引用発明の「80kVとして、X線管11から放射されるファンビームX線21がK吸収端フィルタ13を透過した後のスペクトル」による「実効エネルギー」「45keV」及び「実効エネルギー」「65keV」「のエネルギーバンド」による「2次元の透過情報」は、本願補正発明の「スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線」により「取得」される「第一の画像データセット」に相当し、引用発明の「X線管11の管電圧を80kVから120 kVに変え」、「K吸収端フィルタ13を透過したX線スペクトル」による「実効エネルギー」「45keV」及び「実効エネルギー」「85keV」「のエネルギーバンド」による「2次元の透過情報」は、本願補正発明の「スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した」「第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線」により「取得」される「第二の画像データセット」に相当することから、引用発明の「管電圧を80kVと120 kVに切り替えることにより、実効エネルギー45keV、65keV、85keVの3つのエネルギーバンドを有するX線を被検体15に照射することができ、」「3つのエネルギーバンドのX線が被検体15としての人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、それぞれ2次元の透過情報を得、測定されたそれぞれの2次元の透過情報に基づき、被検体15の画像を構成する」ことと、本願補正発明の「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線において第一の画像データセットを取得し、」「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線において第二の画像データセットを取得して、」「前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象(22)の画像を形成する」こととは、「スペクトル・ノッチ・フィルタ」「を通過した第一のkVp」「によるX線において第一の画像データセットを取得し、」「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ」「を通過した前記第一のkVp」「よりも大きい第二のkVp」「によるX線において第二の画像データセットを取得して、前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象」「の画像を形成する」点で一致する。
(キ) 引用発明の「制御装置16」及び「演算装置17」は、上記「オ」で検討したように、本願補正発明の「コンピュータ(36)」に相当するものであるから、「制御装置16」及び「演算装置17」が、プログラムにより動作していることは、当業者にとって明らかである。
(ク) 以上のことから、本願補正発明と引用発明は、「前記コンピュータ」「は、」「スペクトル・ノッチ・フィルタ」「を通過した第一のkVp」「によるX線において第一の画像データセットを取得し、」「前記スペクトル・ノッチ・フィルタ」「を通過した前記第一のkVp」「よりも大きい第二のkVp」「によるX線において第二の画像データセットを取得して、前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象」「の画像を形成するようにプログラムされ」る点で一致する。

ク 本願補正発明のH)の特定事項について
引用発明は、本願補正発明のH)の特定事項を具備していない。

ケ 本願補正発明のI)の特定事項について
引用発明は「管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧は、各ラインごとに80kVと120kVに切り替え」を行うものである。
よって、本願補正発明と引用発明は、「前記第一のkVpと前記第二のkVpとの間で」「切り換えが行われる」点で一致する。

そうすると、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
X線のビームを撮像対象へ向けて放出するX線源と、
前記対象により減弱された前記X線を受光する検出器と、
前記X線源と前記対象との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大する単一のスペクトル・ノッチ・フィルタと、
前記検出器に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)と、
該DASに接続されて動作するコンピュータと、
を備えたイメージング・システムであって、
前記コンピュータは、前記スペクトル・ノッチ・フィルタを通過した第一のkVpによるX線において第一の画像データセットを取得し、
前記スペクトル・ノッチ・フィルタを通過した前記第一のkVpよりも大きい第二のkVpによるX線において第二の画像データセットを取得して、
前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象の画像を形成するようにプログラムされ、
前記第一のkVpと前記第二のkVpとの間で切り換えが行われる、
イメージング・システム。

また、両者は、以下の点で相違している。

<相違点1>
スペクトル・ノッチ・フィルタが、本願補正発明では、「Hf(ハフニウム)とW(タングステン)の組み合わせを含」むものであるのに対して、引用発明では、「50.2keVにK吸収端を持つガドリニウムを用いた」ものである点。

<相違点2>
第一のkVpと第二のkVpとの間で行われる切り換えが、本願補正発明は「高速な」切り換えであるのに対して、引用発明は、高速であるとは特定されていない点。

(5) 当審の判断

上記の各相違点について以下に検討する。

ア 相違点1について
上記(刊1-オ)を参照すると、刊行物1の段落【0063】には、「なお、本実施例においては、K吸収端としてガドリニウムを用いたが、これに限られるわけではなく、測定しようとする物質に好適なエネルギーバンドが得られるようなK吸収端を有する材料を用いることができる。」と記載されており、測定対象に応じて、様々な「K吸収端を有する材料」を用いることが示唆されている。さらに、同段落には、「たとえば、ガドリニウムとエルビウムを組み合わせても、50keVを境に2つのエネルギーバンドに分離できる」と記載されているから、「K吸収端を有する材料の組み合わせ」を用いることが記載されている。また、刊行物1の段落【0064】には、「X線管電圧も本実施例の80kVと120 kVに限るものでなく、測定しようとする物質に好適なエネルギーバンドが得られるようにK吸収端と併せて選択することができる。」と記載されている。これらの記載から、引用発明は、様々な管電圧、エネルギーバンド及びK吸収端を想定したものといえる。
そして、引用発明のK吸収端フィルタは、エネルギーバンドを分離するためのものであって、当該エネルギーバンド中にK吸収端を有する材料を用いる必要があるところ、上記「2 刊行物2」「(2) 刊行物2の記載より認定できる事項」に示したように、「Hf(ハフニウム)」及び「W(タングステン)」は、当該エネルギーバンドに含まれる約65keV及び約70keVにそれぞれK吸収端を有する材料として周知であるし、「Hf(ハフニウム)」や「W(タングステン)」は、それぞれがX線撮像装置に使用されるX線フィルタの材料として周知であり(例えば刊行物3(上記(刊3-1)、(刊3-2)参照)や、刊行物4(上記(刊4-1)、(刊4-2)参照))、引用発明において、K吸収端フィルタとして、X線フィルタの材料として各々周知の「Hf(ハフニウム)」、及び、「W(タングステン)」を組み合わせて用いることは、測定対象に応じて、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、スペクトル・ノッチ・フィルタとして、「Hf(ハフニウム)とW(タングステン)の組み合わせを含」むものを採用し、本願補正発明の相違点1に係る構成を成すことは、引用発明及び周知事項に基づき、当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
本願補正発明において、「高速」の程度は特定されておらず、引用発明の切り換え速度との大小を認定することはできないところ、上記(刊1-エ)を参照すると、刊行物1の段落【0060】には、「・・・移動装置19により、X線管11、K吸収端フィルタ13とX線検出器14を同期させて図1の矢印Rのライン方向に移動させながら被検体15としての人体28透過後のX線光子数を75ラインに渡って測定した。管電圧切替え装置12により、X線管11の管電圧は、各ラインごとに80kVと120 kVに切り替えられ、3つのエネルギーバンドのX線が人体28を透過した後の強度をX線検出器14により測定し、それぞれ2次元の透過情報を得た。・・・」と記載されており、引用発明では、被検体とX線源及び検出器とを相対移動させながらライン毎に管電圧を素早く切り換える必要があることが明らかであるから、この切り換えの程度を「高速」とすることは、被検体の移動速度等に応じて、当業者が適宜なし得たことといえる。
よって、本願補正発明の相違点2に係る構成は、当業者が適宜になし得たことである。

ウ 本件補正発明の奏する作用効果
本願補正発明の作用効果は、刊行物1の記載事項及び周知事項から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

(6) 小括

よって、本願補正発明は、刊行物1の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成29年6月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年3月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「X線のビーム(16)を撮像対象(22)へ向けて放出するX線源(14)と、
前記対象(22)により減弱された前記X線(16)を受光する検出器(18)と、
前記X線源(14)と前記対象(22)との間に配置され、約30keVと80keVとの間にkエッジを有する物質を含み、低kVpと高kVpとの間のエネルギーを吸収し、両者のエネルギ分離を拡大するスペクトル・ノッチ・フィルタ(15)と、
前記検出器(18)に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)(32)と、
該DAS(32)に接続されて動作するコンピュータ(36)と
を備えたイメージング・システム(10)であって、前記コンピュータ(36)は、
前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した第一のkVp(104)によるX線において第一の画像データセットを取得し、
前記スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)を通過した前記第一のkVp(104)よりも大きい第二のkVp(108)によるX線において第二の画像データセットを取得して、
前記第一の画像データセット及び前記第二の画像データセットを用いて前記対象(22)の画像を形成するようにプログラムされ、
前記ノッチ・フィルタ(15)は、Hf(ハフニウム)とW(タングステン)の組み合わせを含み、
前記第一のkVp(104)と前記第二のkVp(108)との間で高速な切り換えが行われる、イメージング・システム(10)。」

2 引用刊行物の記載事項

当審による平成29年3月27日付け拒絶理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2 平成29年6月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2 補正の適否」「(3) 引用刊行物記載の事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成29年6月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明から、「スペクトル・ノッチ・フィルタ(15)」の限定事項である「単一の」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 平成29年6月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2 補正の適否」「(5) 当審の判断」に記載したとおり、刊行物1の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、刊行物1の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-27 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-24 
出願番号 特願2011-197783(P2011-197783)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
P 1 8・ 575- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
▲高▼橋 祐介
発明の名称 二重エネルギCTのためのノッチ・フィルタを備えたイメージング・システム  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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