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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A41D
管理番号 1338174
異議申立番号 異議2017-701106  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-24 
確定日 2018-03-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6147165号発明「防火服の上衣」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6147165号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6147165号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年11月14日を出願日とする出願であって、平成29年5月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年11月24日にその特許について、特許異議申立人本藤直子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
難燃性合成繊維糸を用いて織成された難燃性織地を用いて形成された防火服の上衣であり、該防火服を構成する前記難燃性織地が蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地により前記上衣の少なくとも肩部と胸部の一部の全周と両腕上腕部の少なくとも一部が形成され、かつ該防火服の前記蛍光色難燃性織地以外の部分は、撥水加工された難燃性織地により形成され、かつ、該上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部における少なくとも前記蛍光色難燃性織地上または前記撥水加工された難燃性織地上に、再帰反射型反射テープ材部が設けられていると共に、前記蛍光色難燃性織地が上衣の表面に露出して存在している部分の全面積Aが0.5m^(2)以上であり、前記蛍光色難燃性織地が上衣の表面に露出して存在している部分の全面積Aの60%以上が、該上衣の脇の下から5cmの位置よりも上方に配置されていることを特徴とする防火服の上衣。
【請求項2】
前記蛍光色難燃性織地が、防炎特性(ISO15025)で、残炎時間が2秒以下、残じん時間が2秒以下であることを特徴とする請求項1記載の防火服の上衣。
【請求項3】
背中部に位置する前記蛍光色難燃性織地上に、識別文字・記号が描かれていることを特徴とする請求項1または2記載の防火服の上衣。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1?7号証を提出し、本件発明1?3は、以下の【理由1】あるいは【理由2】により特許を受けることができないから、本件発明1?3のそれぞれに係る特許は、取り消されるべきであると主張している。
なお、甲第1号証等を、以下、「甲1」等といい、甲1に記載された発明あるいは事項を、以下、「甲1発明」あるいは「甲1事項」という。

【理由1】 本件発明1?3は、本件特許に係る出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。



(1)甲1発明を主引用例とする特許法第29条第2項違反について
本件発明1?3は、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、「理由1-1」という。)。

(2)甲4発明を主引用例とする特許法第29条第2項違反について
本件発明1?3は、甲4発明、甲1、6及び7事項、並びに、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、「理由1-2」という。)。

<刊 行 物 一 覧>
甲1:特開2005-199920号公報
甲2:実用新案登録第3174763号公報
甲3:特開2009-151213号公報
甲4:実用新案登録第3171957号公報
甲5:特表2006-516691号公報
甲6:国際公開第2011/010483号
甲7:実用新案登録第3108500号公報

【理由2】 本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1?3に係る特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。



(1)本件特許の請求項1には、「前記蛍光色難燃性織地が上衣の表面に露出して存在している部分の全面積Aの60%以上が、該上衣の脇の下から5cmの位置よりも上方に配置されている」との記載がある。
しかしながら、そもそも、上衣の両腕(上腕部、下腕部)は、姿勢によって、脇の下から5cmの位置よりも下側となったり、上側となったりする部分が存在することに鑑みれば、姿勢によって「該上衣の脇の下から5cmの位置よりも上方に配置されている」部分が変化するといわざるを得ない。
そうすると、上記請求項1の記載は、何をもって、その上衣の脇の下から5cmの位置よりも上方に配置されている面積が特定されるのかが不明である(以下、「理由2-1」という。)。

(2)本件特許の請求項1には、「該上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部における少なくとも前記蛍光色難燃性織地上または前記撥水加工された難燃性織地上に、再帰反射型反射テープ材部が設けられていると共に、」との記載がある。
しかしながら、その記載の「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部における」は「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部全てにおける」を特定しようとするものであるのか、それとも「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部の少なくともいずれかにおける」を特定しようとするものであるのかが不明である(なお、下線は、本件特許異議申立書26ページ11?15行の記載に倣ったものである)。そうすると、再帰反射型反射テープ材部が「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部全て」に設けられたものであるのか、それとも再起反射型反射テープ材が「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部の少なくともいずれか」に設けられておればよいのか不明である(以下、「理由2-2」という。)。

第4 当審の判断
1. 【理由1】について
(1)理由1-1
ア. 本件発明1について
(ア) 甲1発明
甲1の段落【0035】、【0040】、【0044】?【0046】、【0055】、【0062】、【図1】、【図2】の記載の、特に「実施例1」に着目すると、甲1には、次の甲1発明が記載されている。

「海難用ジャケット式救命胴衣2であり、
該海難用ジャケット式救命胴衣2の本体の表地の色を蛍光色として前記救命胴衣2の少なくとも胸の一部の全周の少なくとも一部が形成され、
かつ、該海難用ジャケット式救命胴衣2の前後表面の上部に反射シール27が設けられている、
海難用ジャケット式救命胴衣2。」

(イ) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点1で、両者は相違する。

<相違点1>
蛍光を呈する部分について、本件発明1の防火服の上衣は、蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地を用いて防火服の上衣を形成したのに対し、甲1発明の海難用ジャケット式救命胴衣2は、表地が蛍光色であるが、当該表地が難燃性織地であるか否かや、蛍光色を蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色としたことによるものであるかが不明である点。

(ウ) 判断
上記相違点1について検討する。
甲1には、甲1発明の海難用ジャケット式救命胴衣2の本体の表地を蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地とすることの記載はないし、示唆する記載もない。
甲5には、外側表皮の構造に視認性向上パネルの端部を他のパネルと縫製して組み込んだ消防士のコート130とパンツ140が記載されていて(段落【請求項1】、【0028】?【0030】)、かつ、視認性向上パネルを蛍光材料をパネルに薄表面コーティングすることによって作成する(段落【0008】?【0010】)旨、記載されている。しかし、甲5の「・・・視認性向上パネル132a-h、142a-bは、難燃性布帛の大きな片またはロールを視認性向上材料の好適なパターンで処理し、視認性向上パネルを画定する小さな片を大きな材料から切断することにより作成された。あるいは、視認性向上特徴は、パネルを切って成形した後に、個々のパネル片毎に適用することもできる。・・・」(段落【0030】)との記載から、甲5の視認性向上パネルは、消防士コートやパンツに縫製により取り付けることで、視認性を向上させる「小さな片」であって、消防士コートやパンツ自体を、蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地を用いて形成することまでは、甲5に記載されていない。さらに、そもそも甲5には、海難用ジャケット式救命胴衣に甲5事項を適用することの記載もないし、示唆もない。また、他の甲2?4、6、7においても、海難用ジャケット式救命胴衣2の本体を構成する表地を蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地とすることの記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地によって、防火服の上衣を形成することで、「蛍光色難燃性織地2が検出している面積が該上衣中で、非常に大きい」(本件特許明細書、段落【0020】)ものとすることができ、「他者は、着用者の動き・様子なども遠方からかつ暗い場所でも比較的容易に把握できて、高い安心感を得ることができる」(本件特許明細書、段落【0020】)との格別な作用効果を奏する。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲1には、「・・・上述した実施例では、救命具本体2は、浮力機能を有する海難用ジャケット式救命胴衣2であったが、本発明に係る救命具1は、外部温度が標準体温より過度に高い、或いは過度に低い場所で着用する服、例えば昼夜の気温差が大きい砂漠地帯などで着用する防弾機能を備えた防弾チョッキ、火災現場などで着用する防火機能を備えた防火服、冬山や寒冷地などで着用する防寒機能を備えた防寒服などにも適応することができる。」(段落【0064】。下線は当審で付した)との記載がある。しかし、仮に、甲1に、上記甲1発明の海難用ジャケット式救命胴衣2と同じ構成を備えた防火服が記載されていたとしても、上記したように、甲1及び甲5には、防火服自体を蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地から形成することは記載されていないし、示唆する記載もないから、本件発明1は、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ. 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものである。そうすると、上記ア.に示したように、本件発明1は、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の全ての発明特定事項を備え、さらに別の発明特定事項が付加されて技術的に限定された本件発明2及び3のいずれも、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)理由1-2
ア. 本件発明1について
(ア) 甲4発明
甲4の段落【0011】、【0013】?【0015】、【図4】の記載から、甲4には、以下の甲4発明が記載されている。
「通気性を有する生地を用いて形成された防火服1の上衣6であり、
該防火服1の上に、略全面に均一に複数のパンチング孔5が形成された、反射部3と蛍光部4を有する再帰性反射シート2が、前記上衣6の中央部に縦方向に細長に縫い付けられ、さらに両肩部、裾部及び袖口に縫い付けられ、
かつ、該防火服1のは、撥水加工された生地により形成され、
かつ、該上衣6の撥水加工された生地上に、再帰性反射シート2が設けられている、
防火服1の上衣6。」

(イ) 対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、少なくとも以下の点で、両者は相違する。

<相違点2>
本件発明1は、蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地を用いて防火服の上衣を形成したのに対し、甲4発明は、複数のパンチング孔5が形成された蛍光部4を有する再帰性反射シート2を、上衣6の中央部に縦方向に細長に縫い付けられ、さらに両肩部、裾部及び袖口に縫い付けられたものである点。

(ウ) 判断
上記相違点2について検討する。甲4には、防火服の上衣自体を、防火服を構成する難燃性織地が蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地とすることが記載されていないし、示唆する記載もない。
甲1には、「救命具本体2は、表地の色が蛍光色であり、」(段落【0055】)との記載はあるものの、当該表地を、難燃性織地を蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色された蛍光色難燃性織地を用いて形成することの記載はなく、示唆する記載もない。
他の甲号証にも、防火服の上着自体を、蛍光染料もしくは蛍光顔料で染色もしくは着色されてなる蛍光色難燃性織地を用いて形成することは記載されていないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記蛍光色難燃性織地によって、防火服の上衣を形成することで、「蛍光色難燃性織地2が検出している面積が該上衣中で、非常に大きい」(本件特許明細書、段落【0020】)ものとすることができ、「他者は、着用者の動き・様子なども遠方からかつ暗い場所でも比較的容易に把握できて、高い安心感を得ることができる」(本件特許明細書、段落【0020】)との格別な作用効果を奏する。
よって、本件発明1は、甲4発明、甲1、6及び7事項、並びに、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ. 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものである。そうすると、上記ア.に示したように、本件発明1は、甲4発明、甲1、6及び7事項、並びに、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の全ての発明特定事項を備え、さらに別の発明特定事項が付加されて技術的に限定された本件発明2及び3のいずれも、甲4発明、甲1、6及び7事項、並びに、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1?3は、甲1発明、甲2?7事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲4発明、甲1、6及び7事項、並びに、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明1?3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。

2. 【理由2】について
(1)理由2-1
請求項1には、防火服の上衣を着用した際の着用者自身の部位を特定する記載はないから、請求項1の防火服の上衣は、着用時ではなく、非着用状態の上衣自体の形状を特定するものであると理解できる。また、請求項1には、「・・・脇の下から5cmの位置よりも上方に配置されている・・・」と防火服の上衣の相対的な位置を「上方」と特定しているから、請求項1は、防火服を上衣に上下が生じるような、例えば、吊した状態にある防火服の上衣を特定するものである。そして、被着用状態で、かつ、例えば吊した状態のような上下が生じるような状態では、上衣の上腕部及び下腕部は、肩部より下方へ垂れ下がることは明らかである。したがって、請求項1の「該上衣の脇の下から5cmの位置よりも上方」とは、肩部から上腕部及び下腕部が垂れ下がった状態において、上衣の脇の下の位置から、下方へ5cm下がった位置よりも上側にある上衣の部分を特定するものであることが理解できる。
そして、本件特許の【図1】には、非着用状態の「防火服の上衣1」が記載され、上腕部及び下腕部が肩部より垂れ下がっていて、脇の下から下方へ若干下がった位置よりも上方に「蛍光色難燃性織地2」の多くの部分が存在していることが看取できる。また、【図1】についての記載である本件特許明細書の段落【0023】には、「特に、背中部分や、胸の部分は、外方から見ての視覚上、視認の容易さを決定する重要な部分であり、本発明者らの知見によれば、蛍光色難燃性織地2が上衣の表面に露出して存在している部分の全面積Aのうち、60%以上が、該上衣の脇の下位置から5cmの位置よりも上方に配置されていることがよい。・・・」との記載もある。したがって、上記のとおり理解することで、本件特許明細書や図面の記載と矛盾は生じない。
以上のとおりであるから、理由2-1によって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1?3に係る発明が明確ではないとはいえない。

(2)理由2-2
請求項1の「該上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部における少なくとも前記蛍光色難燃性織地上または前記撥水加工された難燃性織地上に、再帰反射型反射テープ材部が設けられている」との記載において、「肩部」、「胸部」、「上腕部」、「下腕部」、「裾部」はいずれも「上衣」を構成する一部分であり、それらが、「、」で列挙され、最後に「および」で接続されているから、当該記載は、上記それぞれの上衣の部分の全ての部分の蛍光色難燃性織地または撥水加工された難燃性織地と理解することが自然である。
そして、本件特許の【図1】をみると、「再帰反射型反射テープ材部4」が、防火服の上衣1の肩部、胸部、上腕部、下腕部、裾部の全ての箇所に設けられていることが看取できる。また、【図1】について、本件特許明細書の「上衣の少なくとも肩部、胸部、上腕部、下腕部および裾部における少なくとも蛍光色難燃性織地2上または撥水加工された難燃性織地3上には、再帰反射型反射テープ材部4を設けることがよい。再帰反射型の反射テープ材を使用することにより、他者が光を照射した際には、いずれの方向からの照射であってもその他者に反射光が直接的に返るものであり、いずれの位置からでも、光を照射した他者がその防火服の着用者の存在を即座に確実に知ることができ、活動の状況などを知り、把握することができる。・・・」(段落【0026】、【0027】)との記載もある。少なくとも、上衣の「肩部」、「胸部」、「上腕部」、「下腕部」、「裾部」の全ての部分に、再帰反射型反射テープ材部4があれば、着用者がどのような位置に存在し、着用者の腕等の動きが把握でき、「光を照射した他者が・・・、活動の状況などを知り、把握することができる」。一方、上記列挙された部位の1箇所のみとの解釈を可能とするならば、上記把握は困難であることは明らかであるから、上記のとおり理解することで、本件特許明細書や図面の記載と矛盾は生じない。
以上のとおりであるから、理由2-2によって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1?3に係る発明が明確ではないとはいえない。

(3)小括
上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1?3が明確でないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、上記申立理由によっては、本件発明1?3のそれぞれに係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-08 
出願番号 特願2013-235701(P2013-235701)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A41D)
P 1 651・ 537- Y (A41D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 小野田 達志
久保 克彦
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6147165号(P6147165)
権利者 帝国繊維株式会社
発明の名称 防火服の上衣  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 昼間 孝良  
代理人 境澤 正夫  

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