• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1338579
審判番号 不服2016-15984  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-26 
確定日 2018-03-15 
事件の表示 特願2012-132838「プラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開,特開2013- 33940〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成24年6月12日(優先権主張平成23年7月7日)の出願であって,平成28年1月12日付けで拒絶理由を通知し,同年3月18日に意見書と手続補正書が提出され,同年7月19日付けで拒絶査定され,同年10月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,同年12月1日に手続補正書が提出され,平成29年8月10日付けで,当審から拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し,同年10月12日に意見書と手続補正書が提出されたものである。
そして,その請求項1,2に係る発明(以下「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,平成29年10月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載されている事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
処理空間を画成する処理容器と,
前記処理空間に処理ガスを供給するガス供給部と,
前記処理ガスのプラズマを発生させるためのエネルギーを導入する導入部と,
被処理基体を保持するための保持部材であり,誘電体材料製の表面及び部分的に平端面を含む端面を有し,前記処理空間内に設けられた該保持部材と,
前記保持部材の前記端面を囲むように設けられるフォーカスリングであり,前記保持部材の前記平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有する該フォーカスリングと,
前記保持部材の前記端面と前記フォーカスリングの前記内壁面との間隙は,0より大きく,式(1)で示されるデバイの長さ(λ_(D))の3倍以下であり,
【数1】


式(1)においてT_(e)は前記間隙における電子温度であり,n_(o)は前記間隙における電子密度であり,
前記フォーカスリングは,該フォーカスリングの内縁を含む第1領域と,前記第1領域より外側の第2領域とを含み,
前記第1領域は,前記保持部材の上面の延長面に沿って設けられており,
前記第2領域は,前記保持部材の上面より上方に設けられ,
前記第1領域は,前記被処理基体が直接接触する部分を含み,前記被処理基体が前記直接接触する部分に接触することによって,前記第1領域における一部の領域が前記被処理基体との間に隙間を生じることなく覆われると共に,前記保持部材と前記フォーカスリングとの間の間隙の一部が閉鎖される,プラズマ処理装置。」

「【請求項2】
前記保持部材の前記端面と前記フォーカスリングの前記内壁面との間隙は,0より大きく350μm以下である,請求項1に記載のプラズマ処理装置。」

2 当審の拒絶理由
一方,当審において,平成29年8月10日付けで通知した拒絶理由(当審拒絶理由)の概要は以下のとおりである。
「1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・理由1
・請求項1,2
・引用文献1-5

・備考
・引例1を主引例とした検討。
<途中省略>

・引例2を主引例とした検討
引例2の請求項1,請求項8,【0008】,【0028】,【0031】-【0055】及び図1?2等を参照。
引例2の【0028】には,静電チャックとフォーカスリングとの隙間を0.05mm以上0.4mm以下とすることで,プラズマの侵入を阻止することが記載されている。
そうすると,引例2のプラズマの侵入が阻止される前記隙間の大きさは,デバイの長さ(λ_(D))の3倍以下の範囲に含まれるものに相当するものと認められる。
また,保持部材が,「部分的に平端面を含む端面を有」し,かつ,フォーカスリングが,「保持部材の前記平端面と対面する平壁面を部分的に含む」点については,引例3の【0018】,【0022】,図3,引例4の【0020】,【0028】-【0029】,図3,図6,引例5の【0037】,【0050】,図1,図3等の記載を参照されたい。

<引用文献等一覧>
1.特開2004-200353号公報
2.特開2011-108816号公報
3.特開平9-289201号公報
4.特開平7-106316号公報
5.特開平8-107139号公報
<以下省略>」

3 引用例の記載と引用発明
(1)当審拒絶理由で,「引例2」として引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1(特開2011-108816号公報)には,「基板処理装置の基板載置台」(発明の名称)に関して,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審において付した。以下同じ。)

「【請求項1】
基部と,該基部の上部平面に接着剤層よって接着され,円形の吸着面によって基板を支持する円板状の静電チャックと,該静電チャックの周囲に配置され,前記基板を囲むと共に,前記基部の前記上部平面の外周部を覆う円環状のフォーカスリングとを有し,前記静電チャックは上部円板部と該上部円板部よりも径が大きい下部円板部とを有する2段構造を呈しており,前記下部円板部の外周部及び該下部円板部と前記基部とを接着する前記接着剤層の外周部は,前記フォーカスリングで覆われていることを特徴とする基板処理装置の基板載置台。
<途中省略>
【請求項8】
前記静電チャックの前記上部円板部の外周面と前記フォーカスリングの内周面との隙間(C)は,0.05?0.4mmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置の基板載置台。」

「【0008】
このような従来の基板載置台においては,静電チャック72とフォーカスリング75との間に隙間があるために,この隙間と,ウエハWとフォーカスリング75との間の隙間を経てプラズマが進入し,有機物からなる接着剤層73がプラズマの照射を受けて消耗するという問題がある。また,静電チャック72とフォーカスリング75との間における基部71の表面71aが露出する。この露出表面71aにプラズマが照射され溶射皮膜が消耗し,やがて基部71の金属アルミニウムが露出すると異常放電(アーキング)が発生するという問題もある。接着剤層73の消耗及び異常放電の発生は,基板載置台としての機能に悪影響を及ぼし,基板載置台の寿命が短くなる原因となる。」

「【0028】
請求項8記載の基板処理装置の基板載置台によれば,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との隙間(C)は,0.05?0.4mmであるので,静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間へのプラズマの進入を阻止することができる。」

「【0031】
図1は,本発明の実施の形態に係る基板載置台を備えた基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。この基板処理装置は,基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下,単に「ウエハ」という)にプラズマエッチング処理を施す。
【0032】
図1において,基板処理装置10は,ウエハWを収容するチャンバ11を有し,チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状の基板載置台(以下,「サセプタ」という。)12が配置されている。この基板処理装置10では,チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成される。側方排気路13の途中には排気プレート14が配置されている。
【0033】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部材であり,チャンバ11の内部を上部と下部に仕切る仕切板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11内部の上部(以下,「処理室」という。)15には,後述するようにプラズマが発生する。また,チャンバ11内部の下部(以下,「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続されている。排気プレート14は処理室15に発生するプラズマの拡散を遮断し,又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0034】
排気管17には,TMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(共に図示省略)が接続され,これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして所定圧力まで減圧する。なお,チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示省略)によって制御される。
【0035】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源18が第1の整合器19を介して接続され,且つ第2の高周波電源20が第2の整合器21を介して接続されており,第1の高周波電源18は比較的低い周波数,例えば,2MHzのバイアス用の高周波電力をサセプタ12に印加し,第2の高周波電源20は比較的高い高周波,例えば60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタ12に印加する。これにより,サセプタ12は下部電極として機能する。また,第1の整合器19及び第2の整合器21は,サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への印加効率を最大にする。
【0036】
サセプタ12の上部には,静電電極板22を内部に有する静電チャック23が配置されている。静電チャック23はセラミックスで構成されており,下部円板部が上部円板部よりも径が大きい2段構造を有している。
【0037】
静電電極板22には直流電源24が接続されており,静電電極板22に正の直流電圧が印加されると,ウエハWにおける静電チャック23側の面(以下,「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板22及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ,この電位差起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により,ウエハWは静電チャック23に吸着保持される。
【0038】
静電チャック23に吸着保持されたウエハWを囲むように,フォーカスリング25が配置されている。フォーカスリング25は,例えばシリコン(Si)や炭化珪素(SiC)などによって構成される。
【0039】
サセプタ12の内部には,例えば,円周方向に延在する環状の冷媒室26が設けられている。冷媒室26には,チラーユニット(図示省略)から冷媒用配管27を介して低温の冷媒,例えば,冷却水やガルデン(登録商標)が循環供給される。冷媒によって冷却されたサセプタ12は静電チャック23を介してウエハW及びフォーカスリング25を冷却する。
【0040】
静電チャック23におけるウエハWが吸着保持されている部分(以下,「吸着面」という。)には,複数の伝熱ガス供給孔28が開口している。伝熱ガス供給孔28は,伝熱ガス供給ライン29を介して伝熱ガス供給部(図示省略)に接続され,伝熱ガス供給部は伝熱ガスとしてのHe(ヘリウム)ガスを,伝熱ガス供給孔28を介して吸着面及びウエハWの裏面の隙間に供給する。吸着面及びウエハWの裏面の隙間に供給されたHeガスはウエハWの熱を静電チャック23に効果的に伝達する。
【0041】
チャンバ11の天井部には,サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド30が配置されている。シャワーヘッド30は,上部電極板31と,この上部電極板31を着脱可能に釣支するクーリングプレート32と,クーリングプレート32を覆う蓋体33とを有する。上部電極板31は厚み方向に貫通する多数のガス孔34を有する円板状部材からなり,例えば半導電体であるシリコンによって構成される。また,クーリングプレート32の内部にはバッファ室35が設けられ,バッファ室35にはガス導入管36が接続されている。
【0042】
また,シャワーヘッド30の上部電極板31には直流電源37が接続されており,上部電極板31へ負の直流電圧が印加される。このとき,上部電極板31は正イオンの衝突により二次電子を放出して処理室15内部におけるウエハW上において電子密度が低下するのを防止する。放出された二次電子は,ウエハW上から側方排気路13においてサセプタ12の側面を囲うように設けられた半導電体である炭化珪素や珪素によって構成される接地電極(グランドリング)38へ流れる。
【0043】
このような構成のプラズマ処理装置10では,処理ガス導入管36からバッファ室35へ供給された処理ガスがガス孔34を介して処理室15内部へ導入され,導入された処理ガスは,第2の高周波電源20からサセプタ12を介して処理室15内部へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。プラズマ中のイオンは,第1の高周波電源18がサセプタ12に印加するバイアス用の高周波電力によってウエハWに向けて引き込まれ,ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0044】
基板処理装置10の各構成部材の動作は,基板処理装置10が備える制御部(図示省略)のCPUがプラズマエッチング処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0045】
図2は,図1における基板載置台を示す部分断面図である。
【0046】
図2において,サセプタ12は,基部(以下,「金属ベース」という。)41と,該金属ベース41の上部表面に接着剤層42によって接着され,円形の吸着面によってウエハWを支持する円板状の静電チャック23と,該静電チャック23の周囲に配置され,ウエハWを囲う円環状のフォーカスリング25とから主として構成されている。
【0047】
静電チャック23は,下部円板部23aが上部円板部23bよりも径が大きい2段構造(ハット型形状)を有している。下部円板部23a及び上部円板部23bの厚さは,例えば,それぞれ1mmである。金属ベース41は,セラミックスの溶射膜で覆われた金属アルミニウムからなる円筒状の部材であり,金属ベース41の上部表面には,静電チャック23の下部円板部23aが嵌合する凹部41aが設けられている。静電チャック23の下部円板部23aは,金属ベース41の凹部41aに嵌合され,接着剤層42によって凹部41aの底部平面に接着されている。
【0048】
フォーカスリング25は,金属ベース41の凹部41aを囲む上部平面41bに載置されており,フォーカスリング25は,上部平面41bを覆っている。フォーカスリング25の内周部分は,金属ベース41の上部平面41bの内周側端部よりも内周方向に突出しており,凹部41aに嵌合した静電チャック23の下部平板部23aの外周部及び接着剤層42の外周部はフォーカスリング25によって覆われている。すなわち,静電チャック23の下部円板部23aと金属ベース41の凹部41aとの嵌合部は,フォーカスリング25で覆われている。ここで,静電チャック23の下部円板部23aとフォーカスリング25との静電チャック23の半径方向における一の重なり幅(F)は,例えば0.5mm以上である。この重なり幅(F)を0.5mm以上にすることによって,プラズマの進入を阻止する効果が増大する。
【0049】
静電チャック23の下部円板部23aの厚さと,接着剤層42の厚さの合計は,金属ベース41の凹部41aの深さよりも若干薄くなっている。従って,金属ベース41の凹部41aを囲む上部平面41bに載置されたフォーカスリング25の下部平面と静電チャック23の下部円板部23aの上部平面と間には隙間(D)がある。この隙間(D)は,例えば0.4mm以下である。この隙間を0.4mmよりも大きくすると,プラズマの進入を阻止する効果が十分に得られない。
【0050】
金属ベース41の上部平面41bに載置されたフォーカスリング25の下部表面と静電チャック23の下部円板部23aとの間に隙間を設けることにより,各構成部材の製作時における製作誤差を吸収し,組立容易性を確保することができる。例えば,金属ベース41の上部平面41bと,静電チャック23の下部円板部23aの上部平面を同じ高さとし,フォーカスリング25を,金属ベース41の上部平面41b及び静電チャック23の下部円板部23aの上部平面の両方に同時に当接させて,載置しようとしても,寸法誤差の影響で41bと23aの上部平面が同じ高さとなることはないので,良好な組み立てができない。
【0051】
ウエハWは,例えば,シリコンからなる円形の板状体であり,ウエハWとフォーカスリング25とは,鉛直方向において一部,すなわちウエハWの外周部とフォーカスリング25の内周部とが重なっている。ウエハWの半径方向に沿った一の重なり部分における重なり幅(A)は0.5?1.5mmである。重なり幅(A)が0.5mmよりも少ないとプラズマの進入を防止する効果が十分でなく,1.5mmよりも大きいと静電チャック23とウエハWとの接触面積が相対的に小さくなるので,ウエハWの温度を制御する際の伝熱効率が低下する。重なり幅(A)が0.5?1.5mmであれば,伝熱効率を低下させることなく,ウエハWとフォーカスリング25との隙間をプラズマが通過するのを防止することができる。
【0052】
ウエハWとフォーカスリング25とが重なる重なり部分におけるウエハWとフォーカスリング25との隙間(B)は,例えば0.4mm以下である。隙間が0.4mmよりも大きいとプラズマの進入を阻止する効果が不十分となる。ウエハWとフォーカスリング25との隙間が0.4mm以下であれば,プラズマの進入を効果的に阻止することができる。このとき,ウエハWの下部平面とフォーカスリング25の上部平面とを当接させてもよいが,フォーカスリング25の上部平面から受ける垂直抵抗力に起因する応力による損傷を回避するためにわずかな隙間,例えば0.1mm程度の隙間を確保することが好ましい。
【0053】
静電チャック23の上部円板部23bの外周面とフォーカスリング25の内周面との間の隙間(C)は,例えば0.4mm以下,好ましくは,0.05mm以上0.4mm以下である。この隙間(C)が0.4mmよりも大きいと,プラズマの進入を阻止する効果が小さくなる。また,この隙間(C)が0.05mmよりも小さいと,静電チャック23の上部円板部23bの外周面とフォーカスリング25の内周面とが接触して損傷する虞がある。隙間(C)が0.05?0.4mmであれば,接触による損傷を防止しつつプラズマの進入を阻止することができる。隙間(D)についても同様である。
【0054】
本実施の形態によれば,静電チャック23を,上部円板部23bと該上部円板部23bよりも径が大きい下部円板部23aとを有するものとし,下部円板部23aを金属ベース41の凹部41aに嵌合する埋め込み構造とし,嵌合部をフォーカスリング25で覆うようにしたので,金属ベース41の表面(凹部41aの底部表面)や接着剤層42の外周部を,下部円板部23a及び凹部41aの嵌合部41cの下部に位置させて,金属ベース41の表面や接着剤層42の外周部へ至るプラズマの進入経路を長くすることができ,もって,プラズマが金属ベース41の表面や接着剤層42の外周部へ到達するのを抑制することができる。その結果,他の構成部材を追加することなく,接着剤層42の消耗や金属ベース41の表面におけるアーキングの発生を防止することができる。
【0055】
すなわち,本実施の形態によれば,ウエハWとフォーカスリング25を鉛直方向において一部重ね合わせ,ウエハWとフォーカスリング25との間に形成される水平方向に延びる隙間の厚さ(B),静電チャック23の上部円板部の外周面とフォーカスリング25の内周面との間に形成される鉛直方向に延びる隙間の幅(C),及びフォーカスリング25の下部平面と静電チャック23の下部円板部23aの上部平面との間に形成される水平方向の隙間の厚さ(D)を,それぞれ0.4mm以下とし,これによって,ウエハW及び静電チャック23と,フォーカスリング25との間に形成され,ウエハWの上部空間に連通する隙間を,いわゆる迷路状のラビリンス構造としたので,ウエハWにプラズマ処理を施す際のプラズマがこの隙間を介して金属ベース41の表面や接着剤層42に到達するのを阻止し,接着剤層42の消耗や金属ベース41の表面におけるアーキングの発生を防止して,これらの損傷を防ぐことができる。さらには,アーキングによるパーティクルの発生及び金属汚染を防止することもできる。」

・図2は,引用例1に記載された発明の実施の形態に係る基板載置台の部分断面図であって,上記摘記した記載,特に【0052】の「ウエハWとフォーカスリング25とが重なる重なり部分におけるウエハWとフォーカスリング25との隙間(B)は,例えば0.4mm以下である。隙間が0.4mmよりも大きいとプラズマの進入を阻止する効果が不十分となる。ウエハWとフォーカスリング25との隙間が0.4mm以下であれば,プラズマの進入を効果的に阻止することができる。このとき,ウエハWの下部平面とフォーカスリング25の上部平面とを当接させてもよい」との記載と,同図から,
静電チャックの周囲に配置される円環状のフォーカスリングが,フォーカスリングの内周面を含むフォーカスリングの内周部と,前記内周部より外側の外周部とを含み,
前記内周部の上部平面は,前記静電チャックの上面の延長面に沿って設けられており,
前記外周部の上部平面は,前記静電チャックの上面より上方に設けられ,
前記内周部の上部平面は,ウエハの下部平面が当接する部分を含み,前記ウエハが前記当接する部分に接触することによって,前記内周部の上部平面における一部の領域が前記ウエハとの間に隙間を生じることなく覆われると共に,前記静電チャックと前記フォーカスリングとの間の間隙の一部が閉鎖されるという構造を理解することができる。

そうすると,上記の記載に照らして,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シリコンからなる円形の板状体である半導体デバイス用のウエハを収容するチャンバと,
半導体デバイス用のウエハを載置する円柱状の基板載置台(以下「サセプタ」という。)と,
前記チャンバの天井部に,前記サセプタと対向するように配置されているシャワーヘッドと,
を備える,基板としての半導体デバイス用のウエハにプラズマエッチング処理を施す基板処理装置であって,
(ア)前記シャワーヘッドは,厚み方向に貫通する多数のガス孔を有する円板状部材からなる上部電極板と,この上部電極板を着脱可能に釣支するクーリングプレートと,クーリングプレートを覆う蓋体とを有し,前記クーリングプレートの内部にはバッファ室が設けられ,バッファ室には処理ガス導入管が接続されており,前記処理ガス導入管からバッファ室へ供給された処理ガスは,ガス孔を介してチャンバ内部の上部(以下「処理室」という。)へ導入されるものであり,
(イ)前記サセプタは,基部と,
該基部の上部平面に接着剤層よって接着され,円形の吸着面によって基板を支持する円板状の静電チャックと,
該静電チャックの周囲に配置され,前記基板を囲むと共に,前記基部の前記上部平面の外周部を覆う円環状のフォーカスリングとを有するものであり,
前記静電チャックは,セラミックスで構成されており,上部円板部と該上部円板部よりも径が大きい下部円板部とを有する2段構造を呈しており,下部円板部及び上部円板部の厚さは,それぞれ1mmであり,
前記下部円板部の外周部及び該下部円板部と前記基部とを接着する前記接着剤層の外周部は,前記フォーカスリングで覆われており,
(ウ)ウエハとフォーカスリングとは,鉛直方向において一部,すなわちウエハの外周部とフォーカスリングの内周部とが重なるものであり,ウエハの半径方向に沿った一の重なり部分における重なり幅(A)を0.5?1.5mmとすることで,伝熱効率を低下させることなく,ウエハとフォーカスリングとの隙間をプラズマが通過するのを防止することができるものであり,
ウエハとフォーカスリングとが重なる重なり部分において,ウエハの下部平面とフォーカスリングの上部平面とが当接し,
静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)が,0.05?0.4mmであって,接触による損傷を防止しつつプラズマの進入を阻止したものであり,
(エ)前記静電チャックの周囲に配置される円環状の前記フォーカスリングが,フォーカスリングの内周面を含むフォーカスリングの内周部と,前記内周部より外側の外周部とを含み,
前記内周部の上部平面は,前記静電チャックの上面の延長面に沿って設けられており,
前記外周部の上部平面は,前記静電チャックの上面より上方に設けられ,
前記内周部の上部平面は,ウエハの下部平面が当接する部分を含み,前記ウエハが前記当接する部分に接触することによって,前記内周部の上部平面における一部の領域が前記ウエハとの間に隙間を生じることなく覆われると共に,前記静電チャックと前記フォーカスリングとの間の間隙の一部が閉鎖され,
(オ)前記サセプタには,第2の高周波電源が第2の整合器を介して接続されており,第2の高周波電源は比較的高い高周波,例えば60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタに印加し,導入された処理ガスは,第2の高周波電源からサセプタを介して処理室内部へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる
基板処理装置。」

(2)当審拒絶理由で,「引例3」として引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2(特開平9-289201号公報)には,「プラズマ処理装置」(発明の名称)に関して,図面とともに以下の記載がある。
「【0018】前記静電チャック11の平面形態は,ウエハWの外形と相似形をなし,ウエハWよりも僅かに小さい大きさを有している。そしてこの静電チャック11における上面のセラミックス13の周縁部には,貼着・剥離自在な支持部材としてのポリイミドテープ14が,図3に示したように,ウエハWの外形と相似形をなすように貼着されている。このポリイミドテープ14の厚さは,50μmであり,図4に示したようにその幅dは3mmである(図4における斜線部はポリイミドテープ14を示している)。」

「【0022】前記サセプタ6の上面外周縁における静電チャック11の周囲には,この静電チャック11を取り囲むようにして,プラズマ中のイオンのウエハWへの入射効率を向上させるためのフォーカスリング29が設けられている。」

・図2は,引用例2に記載された発明の実施形態に係るエッチング装置における静電チャックの側面断面図,図3は,静電チャックの斜視図であって,上記摘記した記載と同図から,
部分的に平端面を含む端面を有する円形の板状体の形状を有するウエハWと,
平面形態が,前記ウエハWの外形と相似形をなし,前記ウエハWよりも僅かに小さい大きさを有している前記ウエハWを保持するための静電チャック(11)であり,表面及び部分的に平端面を含む端面を有する静電チャック(11)と,
前記静電チャック(11)の前記端面を囲むように設けられるフォーカスリング(29)であり,前記静電チャック(11)の前記平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有するフォーカスリング(29)という構造を理解することができる。

(3)当審拒絶理由で,「引例4」として引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例3(特開平7-106316号公報)には,「プラズマ処理装置」(発明の名称)に関して,図面とともに以下の記載がある。
「【0020】また前記載置台3の上面には,ウエハWの周りにウエハWを取り囲むように絶縁体例えばセラミックや石英よりなるプラズマ集中リング(フォーカスリング)6が設けられている。このフォーカスリング6は,図3に示すようにウエハWの外形と相似形状に作られると共に,内周縁から外周縁に向かって高くなるように傾斜しており,図4に示すように例えば8インチウエハに対してはフォーカスリング6のリング幅aは30mm,ウエハ表面に対する外周縁の高さbは2mm,ウエハWとリング内縁との距離cは0.5mm,ウエハ表面に対する内周縁の高さdは1.5mmに設定されている。前記フォーカスリング6は,チャンバ2内の電気力線をチャンバ中央部側へ寄せるためのものであり,この例では絶縁体で作られるが,絶縁体に限らず高低抗体(導電性高低抗体及び半導体の抵抗値を有する材質を含む)により構成してもよい。」

「【0028】フォーカスリング6の上面は上述の実施例では傾斜面とされているが,図6(a)に示すように段部を複数形成する構成,図6(b)に示すようにL字型に形成する構成,図6(c)に示すように外側を傾斜面にして内側を平坦面にする構成等を採用しても同様の効果が得られる。なおフォーカスリング6の内側はウエハWの表面より低くても同一の高さでもよく,プラズマの密度などに応じてウエハWの周縁部の平坦性を確保できるように適宜設定すればよい。
【0029】またフォーカスリング6の外側を内側よりも高くすれば,プラズマ下面の周縁部の平坦性が良くなる点で好ましいが,本発明では必ずしもフォーカスリング6の上面における外側,内側の高さ関係を上述のように限定するものではなく,高いプラズマの集中効果を得る点からすればフォーカスリング6の上面がウエハWの表面よりも高ければ例えばその上面はウエハWに並行な平面であってもよい。」

・図1及び図2は,引用例3に記載された発明の実施例に係るプラズマ処理装置例えばエッチング装置の全体構成を示す断面図,及び一部を破断した概略斜視図であり,図3は,載置台及びフォーカスリングを示す分解斜視図であって,上記摘記した記載と同図から,
部分的に平端面を含む端面を有する円形の板状体の形状を有するウエハWと,
前記ウエハWを保持するための載置台(3)であり,表面及び部分的に平端面を含む端面を有する載置台(3)と,
前記載置台(3)の前記端面を囲むように設けられるプラズマ集中リング(フォーカスリング)(6)であり,前記載置台(3)の前記平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有するプラズマ集中リング(フォーカスリング)(6)という構造を理解することができる。

(4)当審拒絶理由で,「引例5」として引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例4(特開平8-107139号公報)には,「絶縁性リング部材およびそれを用いた半導体製造装置」(発明の名称)に関して,図面とともに以下の記載がある。
「【請求項1】 プラズマを用いて半導体ウェハに処理を行う処理室内で用いる絶縁性リング部材であって,前記半導体ウェハを保持する試料台に設置され,前記半導体ウェハの側面に対応した内周面を有し,前記半導体ウェハを前記試料台に搭載した時に,前記半導体ウェハの側面と前記内周面との隙間が1mm以下であることを特徴とする絶縁性リング部材。
<途中省略>
【請求項3】 請求項1または2記載の絶縁性リング部材であって,前記絶縁性リング部材自体が石英によって形成されていることを特徴とする絶縁性リング部材。」

「【0037】図1および図3を用いて,図3に示すテストデータの実験結果について説明すると,絶縁性リング部材3の内周面3aとウェハ1の側面1aとの隙間tをパラメータとし,隙間tを0.5mm ,1.0mm ,1.5mm ,2.0mm とに変化させた場合のウェハ1の側面1aに付着した酸化膜のエッチングによる削れ量を測定したものであり,その結果,前記酸化膜の削れ量が零となったのは隙間tが0.5mm と1.0mm の場合であった。」

「【0050】さらに,本発明による絶縁性リング部材は,オリエンテーションフラットタイプのウェハであっても,ノッチタイプのウェハであってもどちらにでも適用可能なものである。」

・図1の(a),(b)は,引用例4に記載された発明の絶縁性リング部材の構造の一実施例の平面図及び断面図であって,上記摘記した記載と同図から,
オリエンテーションフラットタイプのウェハ(1)と,
前記オリエンテーションフラットタイプのウェハ(1)を保持するための静電チャック(試料台)(2)であり,表面及び部分的に平端面を含む端面を有する静電チャック(試料台)(2)と,
前記静電チャック(試料台)(2)の前記端面を囲むように設けられる絶縁性リング部材(3)であり,前記静電チャック(試料台)(2)の前記平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有する絶縁性リング部材(3)という構造を理解することができる。

4 当審の判断
(1)請求項1の進歩性について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「処理室」,「チャンバ」,「シャワーヘッド」,「『導入された処理ガス』を『処理室内部へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起』して『プラズマ』とする,『第2の高周波電源が第2の整合器を介して接続されて』いる『サセプタ』」,「ウエハ」,「静電チャック」,「セラミックス」,「『フォーカスリングの』『内周部の上部平面』」及び「『フォーカスリングの』『外周部の上部平面』」は,それぞれ本願発明1の「処理空間」,「処理容器」,「処理空間に処理ガスを供給するガス供給部」,「処理ガスのプラズマを発生させるためのエネルギーを導入する導入部」,「被処理基体」,「保持部材」,「誘電体材料」,「フォーカスリングの内縁を含む第1領域」及び「『フォーカスリングの』『第2領域』」に相当する。

(イ)引用発明の「基板としての半導体デバイス用のウエハにプラズマエッチング処理を施す基板処理装置」は,以下の相違点1,2を除いて,本願発明1の「プラズマ処理装置」に相当する。

したがって,上記の対応関係から,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりといえる。

<一致点>
「処理空間を画成する処理容器と,
前記処理空間に処理ガスを供給するガス供給部と,
前記処理ガスのプラズマを発生させるためのエネルギーを導入する導入部と,
被処理基体を保持するための保持部材であり,誘電体材料製の表面及び端面を有し,前記処理空間内に設けられた該保持部材と,
前記保持部材の前記端面を囲むように設けられるフォーカスリングであり,内壁面を有する該フォーカスリングと,
前記フォーカスリングは,該フォーカスリングの内縁を含む第1領域と,前記第1領域より外側の第2領域とを含み,
前記第1領域は,前記保持部材の上面の延長面に沿って設けられており,
前記第2領域は,前記保持部材の上面より上方に設けられ,
前記第1領域は,前記被処理基体が直接接触する部分を含み,前記被処理基体が前記直接接触する部分に接触することによって,前記第1領域における一部の領域が前記被処理基体との間に隙間を生じることなく覆われると共に,前記保持部材と前記フォーカスリングとの間の間隙の一部が閉鎖される,プラズマ処理装置。」

<相違点>
・相違点1:本願発明1の保持部材が「部分的に平端面を含む端面」を有し,フォーカスリングが「保持部材の平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面」を有するのに対して,引用発明の静電チャックは「円板状」であり,フォーカスリングは「円環状」である点。

・相違点2:保持部材の端面とフォーカスリングの内壁面との間隙が,本願発明1では,「0より大きく,式(1)で示されるデバイの長さ(λ_(D))の3倍以下」と特定されているのに対して,引用発明では,「0.05?0.4mm」とされている点。

イ 判断
・相違点1について
引用発明は,シリコンからなる円形の板状体である半導体デバイス用のウエハにプラズマエッチング処理を施す基板処理装置に係る発明である。
一方,引用例2ないし4から,半導体デバイス用のウエハとして,円形の板状体のもののほかに,部分的に平端面を含む端面を有する円形の板状体の形状を有するウエハも,オリエンテーションフラットタイプのウェハとして広く用いられており,このような形状のウエハを処理するための基板処理装置において,前記ウエハを保持するための保持部材,及び,前記保持部材を囲むように設けられるリング部材の形状を,前記ウエハの形状に対応した形状としたもの,すなわち,部分的に平端面を含む端面を有する保持部材,及び,前記保持部材の平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有するリングとした構造が周知であると理解できる。
してみれば,引用発明に係る基板処理装置を,部分的に平端面を含む端面を有する円形の板状体の形状を有するウエハのプラズマ処理に用いるにあたり,引用発明において,ウエハを保持する静電チャック及びフォーカスリングを,前記ウエハの形状に対応させて,部分的に平端面を含む端面を有する静電チャック,及び,前記静電チャックの平端面と対面する平壁面を部分的に含む内壁面を有するフォーカスリングとすること,すなわち,引用発明において,引用例2ないし4に記載された周知の構造を採用することによって,相違点1について本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことである。

・相違点2について
引用発明は,上部円板部と該上部円板部よりも径が大きい下部円板部とを有する2段構造を呈しており,下部円板部及び上部円板部の厚さがそれぞれ1mmである静電チャックの前記上部円板部の外周面と,フォーカスリングの内周面との間の隙間(C)を,0.05?0.4mmとすることによって,厚さが1mmである静電チャックの前記上部円板部の外周面と,フォーカスリングの前記内周面との間へのプラズマの進入を阻止した発明である。
そして,引用発明における,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)の大きさに係る前記特定は,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)に,プラズマの進入を阻止することを目的として設定されたものであって,前記隙間(C)へのプラズマの進入を阻止することによって,ウエハにプラズマ処理を施す際のプラズマが,金属ベースの表面や接着剤層に到達するのを阻止し,接着剤層の消耗や金属ベースの表面におけるアーキングの発生を防止して,これらの損傷を防ぎ,さらには,アーキングによるパーティクルの発生及び金属汚染を防止することができる(【0055】)という効果を奏するといえる。
さらに,引用例1の【0053】には,「この隙間(C)が0.4mmよりも大きいと,プラズマの進入を阻止する効果が小さくなりまた,この隙間(C)が0.05mmよりも小さいと,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面とが接触して損傷する虞があるので,隙間(C)が0.05?0.4mmであれば,接触による損傷を防止しつつプラズマの進入を阻止することができる」と記載されている。
そうすると,引用例1の前記記載から,引用発明において,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)を小さくするほど,プラズマの進入を阻止する効果を大きくすることができ,その結果として,前記効果をより確実に得ることができることを,当業者は理解するといえる。
してみれば,プラズマの侵入を確実に阻止して前記効果を得るために,保持部材の端面とフォーカスリングの内壁面との間隙の値を小さな値に設定することは当業者が容易に想到し得たことであり,その際,当該隙間(C)の大きさとして,本願発明1の「式(1)で示されるデバイの長さ(λ_(D))の3倍以下」の条件を満たす範囲に含まれる値を採用することは,前記「式(1)で示されるデバイの長さ(λ_(D))の3倍以下」が,その下限を特定していないことからも格別の困難は認められない。
すなわち,相違点2について,引用発明において,本願発明1の条件を満たす値を選択することは当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
引用発明において,相違点1,2について,本願発明1の構成を採用したことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものであり,格別のものとは認められない。

エ 審判請求人の主張について
審判請求人は,平成29年10月12日に提出した意見書において,以下の主張をする。
「また,引用文献2の図2及び図3においても,ウエハWとフォーカスリング25との間には,隙間Bが設けられています。」,「また,このような隙間を設けないようにする示唆するような記載も,引用文献1,2にはありません。」
しかしながら,引用例1の【0052】には,「ウエハWとフォーカスリング25とが重なる重なり部分におけるウエハWとフォーカスリング25との隙間(B)は,例えば0.4mm以下である。隙間が0.4mmよりも大きいとプラズマの進入を阻止する効果が不十分となる。ウエハWとフォーカスリング25との隙間が0.4mm以下であれば,プラズマの進入を効果的に阻止することができる。このとき,ウエハWの下部平面とフォーカスリング25の上部平面とを当接させてもよい・・・」と記載されている。
そして,ウエハWとフォーカスリング25とが「当接」するということは,フォーカスリング25は,ウエハWが直接接触する部分を含み,前記ウエハが前記直接接触する部分に接触することによって,フォーカスリング25の一部の領域が前記ウエハとの間に隙間を生じることなく覆われるものと認められる。
したがって,審判請求人の前記主張は採用することができない。

(2)請求項2の進歩性について
本願発明2と引用発明との一致点及び相違点は,上記一致点及び相違点1,2に加えて,次の相違点3を含む。

・相違点3:本願発明2では,保持部材の端面とフォーカスリングの内壁面との間隙が「0より大きく350μm以下」と特定されているのに対して,引用発明では「0.05?0.4mm」とされている点。

・相違点3について
引用発明において,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)は,プラズマの進入を阻止することを目的として設定されており,「この隙間(C)が0.4mmよりも大きいと,プラズマの進入を阻止する効果が小さくなりまた,この隙間(C)が0.05mmよりも小さいと,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面とが接触して損傷する虞があるので,隙間(C)が0.05?0.4mmであれば,接触による損傷を防止しつつプラズマの進入を阻止することができる」とされている。
そうすると,引用発明において,静電チャックの上部円板部の外周面とフォーカスリングの内周面との間の隙間(C)が小さいほど,プラズマの進入を阻止する効果が大きくなることが理解できる。
してみれば,プラズマの侵入をより確実に阻止することを目的として,保持部材の端面とフォーカスリングの内壁面との間隙の値として,引用発明において特定する範囲の上限の値を下げた0.05?0.35mmの範囲に含まれる値を選択すること,すなわち,相違点3について,本願発明2の条件を満たす値を選択することは当業者が適宜なし得たことである。

(3)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから,本願発明1及び本願発明2は,いずれも引用例1及び引用例2ないし4に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。
したがって,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおりであるから,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-10 
結審通知日 2018-01-16 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2012-132838(P2012-132838)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 将之  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
須藤 竜也
発明の名称 プラズマ処理装置  
代理人 小松 秀輝  
代理人 柏岡 潤二  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 阿部 寛  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ