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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1338674
審判番号 不服2017-1288  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-30 
確定日 2018-04-12 
事件の表示 特願2012- 81203「偏光板のセットおよび液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-210513、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月30日の出願であって、平成27年9月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、さらに、平成28年4月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月1日に意見書の提出とともに手続補正がなされた。そして、平成28年7月1日に提出された手続補正について、同年12月1日付けで補正却下の決定がなされ、同日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し平成29年1月30日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされ、同年12月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、その応答期間中の平成30年1月25日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件発明
本願の請求項1?10に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
液晶セルの一方の面に配置される第1の偏光板と、他方の面に配置される第2の偏光板を有する液晶表示装置用の偏光板のセットであって、
前記第1および第2の偏光板は、いずれも、偏光子の両面に、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層を介して、透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)である透明保護フィルムが貼り合わされている偏光板であり、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤が、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)のみをモノマー成分として含有する活性エネルギー線硬化型接着剤であって、組成物全量を100重量%としたとき、
SP値が29.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上32.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(A)を20?60重量%、
SP値が18.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上21.0(MJ/m^(3))^(1/2)未満であるラジカル重合性化合物(B)を10?30重量%、および
SP値が21.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上23.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(C)を20?60重量%含有し、
前記ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上であり、
前記接着剤層のTgが、60℃以上であり、
前記第1および第2の偏光板に用いられる透明保護フィルムが全て同じ形成材料であって、かつ透明保護フィルムの厚みの差が10μm以下であることを特徴とする偏光板のセット。
【請求項2】
前記ラジカル重合性化合物(A)が、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドおよび/またはN-メチロールアクリルアミドである請求項1記載の偏光板のセット。
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物(B)が、トリプロピレングリコールジアクリレートである請求項1または2記載の偏光板のセット。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物(C)が、アクリロイルモルホリンおよび/またはN-メトキシメチルアクリルアミドである請求項1?3のいずれかに記載の偏光板のセット。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤が、光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物;
【化1】

(式中、R^(1)およびR^(2)は-H、-CH_(2)CH_(3)、-iPrまたはClを示し、R^(1)およびR^(2)は同一または異なっても良い)を含有する請求項1?4のいずれかに記載の偏光板のセット。
【請求項6】
光重合開始剤として、さらに下記一般式(2)で表される化合物;
【化2】

(式中、R^(3)、R^(4)およびR^(5)は-H、-CH_(3)、-CH_(2)CH_(3)、-iPrまたはClを示し、R^(3)、R^(4)およびR^(5)は同一または異なっても良い)を含有する請求項5に記載の偏光板のセット。
【請求項7】
透明保護フィルムの形成材料が、ポリカーボネート系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂から選ばれるいずれか1つであることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の偏光板のセット。
【請求項8】
前記接着剤層の厚みが、0.01?7μmであることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の偏光板のセット。
【請求項9】
液晶セルの両面に、請求項1?8のいずれかに記載の偏光板のセットにおける第1の偏光板と第2の偏光板が、それぞれ配置されていることを特徴とする液晶パネル。
【請求項10】
請求項9記載の液晶パネルを有する液晶表示装置。」(以下、「請求項1?10に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明10」という。)


第3 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-81359号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付与した。以下同様。)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に透明保護フィルムを備える偏光板の製造方法であって、
前記透明保護フィルムにおいて、少なくとも前記偏光フィルムとの貼り合わせ面に易接着処理を施す工程と、
水と、少なくとも前記易接着処理を施した面と、を接触させる工程と、
前記水と接触させた前記易接着処理を施した面側が貼り合わせ面となる様に、前記偏光フィルムに前記透明保護フィルムを積層する工程と、を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記透明保護フィルムが、シクロオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、または(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記易接着処理がコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、イトロ処理、グロー処理、オゾン処理、プライマー塗布処理、およびケン化処理の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記透明保護フィルムの前記偏光フィルムへの積層が、接着剤層を介して行うことを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記水の温度が10℃?90℃の範囲内であることを特徴とする請求項1?4の何れか1項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを含有する接着剤により形成されていることを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤層が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化物層により形成されたものであることを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項8】
請求項1?7の何れか1項に記載の偏光板の製造方法により製造された偏光板。
【請求項9】
偏光フィルムと透明保護フィルムとの間の剥離力が1N/20mm以上であることを特徴とする請求項8に記載の偏光板。
【請求項10】
請求項8または9に記載の偏光板を備えた光学フィルム。
【請求項11】
請求項8または9に記載の偏光板または請求項10に記載の光学フィルムを備えた画像表示装置。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に透明保護フィルムを備える偏光板の製造方法、およびその方法により得られる偏光板に関する。また、本発明は、該偏光板を備える光学フィルム、および該偏光板または光学フィルムを備える画像表示装置に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、偏光フィルムに透明保護フィルムを積層し、接着させた直後であっても、両者の接着不良を抑制し、スループットを向上させることが可能な偏光板の製造方法、およびその方法により得られる偏光板を提供することを目的とする。また、該偏光板を備えた光学フィルム、および該偏光板または光学フィルムを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、偏光板の製造方法、およびその方法により得られる偏光板などについて検討した結果、下記構成を採用することより、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明に係る偏光板の製造方法は、上記の課題を解決する為に、偏光フィルムの少なくとも一方の面に透明保護フィルムを備える偏光板の製造方法であって、前記透明保護フィルムにおいて、少なくとも前記偏光フィルムとの貼り合わせ面に易接着処理を施す工程と、水と、少なくとも前記易接着処理を施した面と、を接触させる工程と、前記水と接触させた前記易接着処理を施した面側が貼り合わせ面となる様に、前記偏光フィルムに前記透明保護フィルムを積層する工程と、を有することを特徴とする。かかる偏光板の製造方法においては、必要に応じて、偏光フィルムに透明保護フィルムを積層する工程の後、乾燥工程を追加してもよい。
【0011】
上記方法によれば、透明保護フィルムにおける偏光フィルムとの貼り合わせ面に易接着処理を施すことにより、当該貼り合わせ面における接着性の向上が図れる。更に、少なくとも易接着処理が施された面に対し水を接触させることにより、偏光フィルムとの貼り合わせた後、積層した直後からその接着性を発現させることができる。また、水との接触により透明保護フィルム上の異物も除去することができる。即ち、上記方法であると、偏光フィルムに透明保護フィルムを積層した直後であっても、両者の接着性は良好であるため、その後の製造過程において、透明保護フィルムと偏光フィルムとが剥がれたり、フィルム浮きが発生するのを防止することができる。また、異物欠点が少なく、良好な外観の偏光板を製造することができる。
【0012】
上記の構成においては、前記透明保護フィルムが、シクロオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、または(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
【0013】
上記の構成においては、前記易接着処理がコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、イトロ処理、グロー処理、オゾン処理、プライマー塗布処理、およびケン化処理の少なくとも1種であることが好ましい。本発明においては、上記易接着処理の中でも、生産性の観点からコロナ処理および/またはプラズマ処理が好ましい。
【0014】
上記の構成において、前記透明保護フィルムの前記偏光フィルムへの積層が、接着剤層を介して行うことが好ましい。当該接着剤層には、感圧型接着剤層(粘着剤層)も含まれる。
【0015】
上記の構成において、前記水の温度が10℃?90℃の範囲内であることが好ましい。
【0016】
上記の構成において、前記接着剤層が、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)または変性ポリビニルアルコールを含有する接着剤により形成されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成において、前記接着剤層が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化物層により形成されたものであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る偏光板は、上記の課題を解決する為に、前記に記載の偏光板の製造方法により製造された偏光板であることを特徴とする。かかる偏光板において、偏光フィルムと透明保護フィルムとの剥離力を1N/20mm以上にすることにより、透明保護フィルムと偏光フィルムの間での剥がれやフィルム浮きの発生を防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る光学フィルムは、前記に記載の偏光板が少なくとも1枚積層されたものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る画像表示装置は、前記に記載の偏光板、または光学フィルムを備えたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透明保護フィルムにおける偏光フィルムとの貼り合わせ面に易接着処理を施した後、更に易接着処理が施された面と水とを接触させることにより、偏光フィルムを積層した直後から透明保護フィルムとの良好な接着性を発現させることができる。その結果、その後の製造過程において、透明保護フィルムと偏光フィルムとが剥がれたり、フィルム浮きが発生するのを防止し、スループットの向上が図れる。また、水との接触により透明保護フィルムから異物の除去が可能になるので、異物欠点が少なく外観の良好な偏光板の製造が可能になる。なお、本発明において、偏光フィルムを積層した直後から透明保護フィルムとの良好な接着性が発現する理由は明らかではないが、以下の理由が推測される。
【0022】
易接着処理、特にはコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、イトロ処理、グロー処理および/またはオゾン処理を施した場合、空気中の窒素が酸化されて、硝酸アンモニウムを主成分とする不純物が透明保護フィルムの表面に付着する。硝酸アンモニウムは、種々の接着剤、特にはポリビニルアルコール系接着剤の架橋反応を抑制し、接着剤、特にはポリビニルアルコール系接着剤の硬化遅延が発生する。かかる硬化遅延が、透明保護フィルムと偏光フィルムとの初期の接着不良を引き起こすものと推測される。また、接着剤の硬化遅延が発生しない場合であっても、硝酸アンモニウムなどの不純物が透明保護フィルムの表面に付着すると、この部分で接着剤の接着力が低下し、所謂「ハジキ」などの外観不良(接着不良)の発生が懸念される。しかしながら、本発明においては、易接着処理を施した面と水とを接触させることにより、硝酸アンモニウムなどの不純物による硬化遅延やハジキを防止することができ、結果として透明保護フィルムと偏光フィルムとの初期の接着不良が改善することができる。
【0023】
なお、ポリビニルアルコール系接着剤のような水性の接着剤を使用する場合、透明保護フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせた後に乾燥工程が一般に必要となる。しかしながら、接着剤層が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化物層により形成されたものである場合、透明保護フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせた後に要する乾燥時間を短縮化したり、乾燥工程を省略することができる。その結果、偏光板の生産性が特に高まる。」

ウ 「【0041】
(偏光板) 次に、本実施の形態に係る偏光板の製造方法により得られた偏光板について説明する。本実施の形態に係る偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わされた構造を有する。透明保護フィルムと偏光フィルムの間の剥離力は1N/20mm以上が好ましい。剥離力は、温度15?40℃、相対湿度20?80%Rh、剥離角度90度、剥離速度100?3000mm/分の測定条件でのJIS K 6854-1のはく離接着強さ試験法に準ずる方法により測定した値である。また剥離力は、偏光フィルムに透明保護フィルムを積層した後、乾燥してから1時間後に行った値である。剥離力を1N/20mm以上にすることにより、透明保護フィルムと偏光フィルムの間での剥がれやフィルム浮きの発生を防止することができる。なお、透明保護フィルムと偏光フィルムとの剥離力の上限は、特に限定されるわけではないが、例えば4N/20mm程度が例示される。」

エ 「【0042】
<偏光フィルム>
上記偏光フィルムは特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、セルロース系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエチレン系配向フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光フィルムが好適である。
【0043】
偏光フィルムの厚さとしては特に限定されず、通常は5?80μm程度である。
【0044】
偏光フィルムの製造方法としては、目的、使用材料および条件などに応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、通常、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥工程を含む一連の製造工程に供する方式が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む液中にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件などに応じて適亘設定される。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理を同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行う方法が、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。」

オ 「【0045】
<透明保護フィルム>
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(シクロオレフィン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂の使用が本発明においては好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、フィルムまたはシートの形態で使用可能である。
【0046】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば特開2010-055062の[0017]?[0043]に記載の(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0048】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば特開2010-132889の[0011]に記載の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-n-ブチルアクリレート共重合体、およびポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー)などから選択される1種、または2種以上の混合物が挙げられる。
【0049】
本発明においては、透明保護フィルムとして上記環状ポリオレフィン樹脂(シクロオレフィン系樹脂)を用いても、偏光フィルムとの接着性を好適なものにできる。シクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報などに記載されている樹脂が挙げられる。より詳細には、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンなどのα一オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びに、それらの水素化物などが挙げられる。
【0050】
シクロオレフィン系樹脂としては、ノルボルネン系樹脂などの種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」、積水化学工業株式会社製の商品名「エスシーナ」などが挙げられる。
【0051】
透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記添加剤の含有量は、好ましくは0?50重量%、より好ましくは1?50重量%、さらに好ましくは2?40重量%、特に好ましくは3?30重量%である。透明保護フィルム中の上記添加剤の含有量が50重量%より大きい場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できないおそれがある。またこれらの透明保護フィルムは延伸されていてもよい。
【0052】
透明保護フィルムの厚さは適宜に設定し得るが、一般には強度や取扱いなどの作業性、薄層性などの点より1?500μm程度である。特に1?300μmが好ましく、5?200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5?150μmの場合に特に好適である。
【0053】
尚、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料などからなる透明保護フィルムを用いてもよい。」

カ 「【0057】
<接着剤層>
本実施の形態に係る偏光板は、接着剤層(感圧型接着剤層(粘着剤層)を含む。)を介して上記偏光フィルムと透明保護フィルムが積層された構造であってもよい。
【0058】
上記接着剤層の構成材料である接着剤組成物としては、光に対し透明性を有し、かつ、光学的に等方性を有するものが好ましい。また、水性、溶剤型、エマルション系、または無溶剤型のものを限定されることなく用いることができる。水性の接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステルなどを例示できるが、好ましくは、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系接着剤であり、さらに好ましくはアセトアセチル基を有するポリビニルアルコールを主成分とする接着剤である。この様な接着剤としては、具体的には、日本合成化学(株)製(商品名「ゴーセファイマーZ」)などが挙げられる。また、接着剤組成物の構成材料としては粘着剤を使用してもよい。粘着剤としては特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを採用することができる。尚、接着剤組成物の好ましい固形分濃度は0.1?10重量%であり、より好ましくは1?6重量%である。

(中略)

【0062】
また、上記接着剤層は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化物層により形成されたものであってもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性成分として、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物などを含有する。特に(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、下記一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーを用いた場合、接着性が良好になるため好ましい。
CH_(2)=C(R^(1))-CONH_(2-m)-(X-O-R^(2))_(m) (1)
(R^(1)は水素原子またはメチル基を示し、Xは-CH_(2)-基または-CH_(2)CH_(2)-基を示し、R^(2)は-(CH_(2))_(n)-H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す。)なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。
【0063】
上記N-置換アミド系モノマーの具体例としては、例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらN-置換アミド系モノマーは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
N-置換アミド系モノマーとしては、市販品も好適に使用可能である。具体的には例えば、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名「HEAA」、興人社製)、N-メトキシメチルアクリルアミド(商品名「ワスマー2MA」、笠野興産社製)、N-エトキシメチルアクリルアミド(商品名「ワスマーEMA」、笠野興産社製)、N-メトキシメチルメタクリルアミド(商品名「ワスマー2MA」、笠野興産社製)などが挙げられる。
【0065】
硬化性成分として一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーに加えて、2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー、特に好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、接着剤層の耐水性が向上するため好ましい。接着剤層の耐水性を考慮した場合、2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーは疎水性であることがより好ましい。疎水性の2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー、特に疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、ビスフェノールA-EO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1,6-ジイソシアネートヘキサンとの重合物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0066】
硬化性成分として一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーに加えて、2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーを含有する場合、その割合が、5?50質量%であることが好ましく、9?40質量%であることがより好ましい。この割合が5質量%未満である場合にでは、十分な耐水性を得られない場合があり、一方、50質量%を超える場合には、十分な接着性を得られない場合がある。
【0067】
硬化性成分として、接着性、耐久性および耐水性を損なわない範囲内で、一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマー、2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー以外の他のモノマーを併用することができる。このようなモノマーとして、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジンなどの一般式(1)で表される以外のN-置換アミド系モノマーが挙げられる。
【0068】
また、硬化性成分として、各種の芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを使用してもよい。
【0069】
芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環およびヒドロキシ基を有する、各種の単官能の(メタ)アクリレートを用いることができる。ヒドロキシ基は、芳香環の置換基として存在してもよいが、本発明では、芳香環と(メタ)アクリレートとを結合する有機基(炭化水素基、特に、アルキレン基に結合したもの)として存在するものが好ましい。
【0070】
上記芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、芳香環を有する単官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物が挙げられる。芳香環を有する単官能のエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、t‐ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルポリエチレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートの、具体例としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルポリエチレングリコールプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0071】
また上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと、ポリウレタンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどのジオール化合物の片末端のヒドロキシル基との反応物などが挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、上述した(メタ)アクリロイル基を有する化合物を硬化性成分として用いる組成物の他、エポキシ化合物と光酸発生剤とを主体とする光カチオン型硬化性組成物を使用することもできる。使用可能なエポキシ化合物としては、例えば特開2010-145537の[0031]-[0085]に記載の化合物が挙げられる。また、光酸発生剤としては、例えば特開2009-013316の[0080]-[0095]に記載の化合物が挙げられる。
【0073】
また、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。
【0074】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。
【0075】
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV?300kVであり、さらに好ましくは10kV?250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5?100kGy、さらに好ましくは10?75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0076】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる透明保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0077】
一方、紫外線硬化型において、紫外線吸収能を付与した保護フィルムを使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に到達しないため、その重合反応に寄与しない。さらに、保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、保護フィルム自体が発熱し、偏光板のカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線硬化型を採用する場合、紫外線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380?440nmの積算照度と波長範囲250?370nmの積算照度との比が100:0?100:50であることが好ましく、100:0?100:40であることがより好ましい。このような積算照度の関係を満たす紫外線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380?440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光を光源とし、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の光を遮断して用いることもできる。
【0078】
紫外線硬化型において、紫外線を照射する前に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加温すること(照射前加温)が好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。また、紫外線を照射後に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加温すること(照射後加温)も好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。
【0079】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を電子線硬化型で用いる場合、組成物中に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。光ラジカル発生剤としては、水素引き抜き型光ラジカル発生剤と開裂型光ラジカル発生剤とが挙げられる。
【0080】
水素引き抜き型光ラジカル発生剤としては、例えば1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、2-クロロナフタレン、1-ブロモナフタレン、2-ブロモナフタレン、1-ヨードナフタレン、2-ヨードナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1,4-ジシアノナフタレンなどのナフタレン誘導体、アントラセン、1,2-ベンズアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-シアノアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン、2,6,9,10-テトラシアノアントラセンなどのアントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール、9-メチルカルバゾール、9-フェニルカルバゾール、9-プロペ-2-イニル-9H-カルバゾール、9-プロピル-9H-カルバゾール、9-ビニルカルバゾール、9H-カルバゾール-9-エタノール、9-メチル-3-ニトロ-9H-カルバゾール、9-メチル-3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、9-オクタノイルカルバゾール、9-カルバゾールメタノール、9-カルバゾールプロピオン酸、9-カルバゾールプロピオニトリル、9-エチル-3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、9-エチル-3-ニトロカルバゾール、9-エチルカルバゾール、9-イソプロピルカルバゾール、9-(エトキシカルボニルメチル)カルバゾール、9-(モルホリノメチル)カルバゾール、9-アセチルカルバゾール、9-アリルカルバゾール、9-ベンジル-9H-カルバゾール、9-カルバゾール酢酸、9-(2-ニトロフェニル)カルバゾール、9-(4-メトキシフェニル)カルバゾール、9-(1-エトキシ-2-メチル-プロピル)-9H-カルバゾール、3-ニトロカルバゾール、4-ヒドロキシカルバゾール、3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール、2-ヒドロキシカルバゾール、3,6-ジアセチル-9-エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、芳香族カルボニル化合物、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン誘導体やクマリン誘導体などが挙げられる。
【0081】
開裂型光ラジカル発生剤は、活性エネルギー線を照射することにより当該化合物が開裂してラジカルを発生するタイプの光ラジカル発生剤であり、その具体例として、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体などのアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S-フェニル類、チタノセン類、およびそれらを高分子量化した誘導体が挙げられるがこれに限定されるものではない。市販されている開裂型光ラジカル発生剤としては、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-ベンゾイル-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-ベンゾイル]-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-[4-(アクリロイルオキシエトキシ)-ベンゾイル]-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、ジフェニルケトン、フェニル-1-ヒドロキシ-シクロヘキシルケトン、ベンジルジメチルケタール、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリル-フェニル)チタン、(η6-イソプロピルベンゼン)-(η5-シクロペンタジエニル)-鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル-ホスフィンオキシド、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0082】
本発明で使用される光ラジカル発生剤、すなわち水素引き抜き型または開裂型光ラジカル発生剤は、いずれもそれぞれ単独で用いることができる他、複数を組み合わせて用いても良いが、光ラジカル発生剤単体の安定性や、本発明における組成物の硬化性の面でより好ましいものは開裂型光ラジカル発生剤の1種以上の組み合わせである。開裂型光ラジカル発生剤の中でもアシルホスフィンオキシド類が好ましく、より具体的には、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名「DAROCURE TPO」;チバ・ジャパン社製)、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)-ホスフィンオキシド(商品名「CGI 403」;チバ・ジャパン社製)、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド(商品名「IRGACURE819」;チバ・ジャパン社製)が好ましい。
【0083】
光ラジカル発生剤を使用する場合、その使用量は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の合計量に対して、0.01?10質量部であることが好ましく、0.05?5質量部であることがより好ましく、0.1?3質量部であることが特に好ましい。

(中略)

【0089】
上述した接着剤層の厚さは特に限定されないが、通常は0.01?20μmが好ましく、0.02?10μmがより好ましく、0.5?5μmが特に好ましい。接着剤層の厚さが0.01μm未満であると接着力不足が原因で剥がれが生じやすくなる場合がある。その一方、厚さが20μmを超えると、接着剤層の透明性が損なわれる場合がある。」

キ 「【0097】
本実施の形態に係る偏光板は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネセンス装置などの各種画像表示装置に好ましく用いることができる。液晶表示装置に適用する場合、本実施の形態に係る偏光板は、液晶セルの表面および裏面にそれぞれ光透過軸が直交する様に配置される。これにより、可視光の波長域における光漏れが低減され、表示画面に変色が生じるのを防止した液晶表示装置が得られる。上記液晶セルとしては特に限定されず、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型、などの任意なタイプのものを適用することができる。」

ク 「【実施例】
【0098】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0099】
(実施例1)
<偏光フィルムの作成>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴に浸漬して膨潤させた。次に、このポリビニルアルコールを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させ染色した。続いて、3重量%のホウ酸および2重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させた後、更に4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液(液温60℃)中で1分間浸漬させた状態で、初期長さに対し6倍まで延伸させた。その後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させた。更に、40℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光フィルムを得た。偏光フィルムの水分率は14重量%であった。
【0100】
<透明保護フィルム1>
透明保護フィルム1としては、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。この透明保護フィルム1の正面位相差は5nm、厚み方向位相差は45nmであった。このフィルムをケン化処理するため、60℃の水酸化ナトリウム水溶液(濃度10重量%)に30秒間浸漬させた。更に、水浴に5秒間の浸漬を2回行い、その後、水のシャワーで5秒間の洗浄を行った後、乾燥させた。乾燥条件は70℃、2分間とした。
【0101】
<透明保護フィルム2(位相差板)>
透明保護フィルム2としては、厚さ40μmのノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製,商品名:ゼオノア)の二軸延伸フィルムを用いた。この透明保護フィルム2の正面位相差は55nm、厚み方向位相差は135nmであった。
【0102】
<易接着処理>
上記ノルボルネン系樹脂フィルムの片面(偏光フィルムとの貼り合わせ面)に、大気圧にてプラズマ処理放電を施した。その際の出力は2.0kWであり、ライン速度は25m/分で行った。
【0103】
<水への浸漬処理>
プラズマ処理放電を施した上記ノルボルネン系樹脂フィルムを水浴(純水)に3回浸漬させた。水温は25℃とした。また、各浸漬はそれぞれ30秒間行った。
【0104】
<乾燥処理>
水への浸漬処理を行ったノルボルネン系樹脂フィルムに対し、オーブンを用いて、乾燥温度60℃、乾燥時間3分間の条件下で乾燥させた。
【0105】
<水性の接着剤組成物の調製>
アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とした接着剤(固形分濃度:約7重量%水溶液)[日本合成化学(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」]を39.8重量部(固形分2.79重量部)、メチロール化合物を主成分とする架橋剤[大日本インキ(株)製商品名「ウォーターゾールS-695」]を0.62重量部(うち固形分0.42重量部)、および純水を加えて4.0重量%の接着剤組成物の水溶液を調製した。
【0106】
<偏光板の作製>
続いて、小型ラミネーターを用いて、上記偏光フィルムの一方の面にトリアセチルセルロースフィルムを、他方の面にノルボルネン系樹脂フィルムを、それぞれ上記接着剤組成物を介して貼り合わせた。貼り合わせ温度は25℃とした。ノルボルネン系樹脂フィルムについては、易接着処理を行った面を偏光フィルムとの貼り合わせ面とした。次に、貼り合わせ後の積層体を空気循環式恒温オーブンを用いて、70℃、5分間の条件下で乾燥させた。乾燥後の接着剤層の厚みは150nmになるようにした。以上により、本実施例に係る偏光板を作製した。

(中略)

【0110】
(実施例4)
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、一般式(1)に記載のN-置換アミド系モノマー、興人社製)40重量部、ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、共栄社化学社製)30重量部、ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド、一般式(1)に記載のN-置換アミド系モノマー、笠野興産社製)30重量部、IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィノキサイド(光ラジカル発生剤)、チバ・ジャパン社製)1.5重量部を混合し、50℃で1時間撹拌して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0111】
<偏光板の作製> 本実施例においては、ノルボルネン系樹脂フィルムに対するコロナ放電処理の条件を2.5kWに変更し、浸漬処理の際の水温を80℃に変更したこと以外は、実施例3と同様の条件で処理した透明保護フィルム1,2の易接着処理面に、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をMCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚さ0.8μmになるように塗工し、実施例1で使用したものと同じ偏光フィルムの両面にロール機で貼り合わせた。その後、貼り合わせた透明保護フィルム側(両側)から紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを有する偏光板を作製した。上記貼り合わせのライン速度は25m/minで行い、紫外線としては385nmにピーク照度を持つLED光源より発せられるLED光を使用した。このLED光を照射するための照射装置として、パナソニック電工社製Aicure UD80(ピーク照度:3900mW/cm^(2)、積算照射量300/mJ/cm^(2)(波長380?440nm))を使用した。

(中略)

【0115】
(剥離力)
実施例1?5、比較例1?2で作成した各偏光板において、偏光フィルムとノルボルネン系樹脂フィルムとの間の剥離力を、JIS K 6854-1のはく離接着強さ試験法に準ずる方法により測定した。測定は偏光板の作製から1時間後に行った。また、測定条件は、温度25℃、相対湿度60%Rh、剥離角度90度、剥離速度300mm/分とした。
【0116】
(異物の有無)
実施例1?5、比較例1?2で作成した各偏光板において、異物の有無を目視にて観察しカウントした。結果を表1に示す。
【0117】
(結果)
下記表1から分かる通り、実施例1?3に係る偏光板では、偏光板の作製から1時間後において、剥離力が1.5N/20mmまたは1.8N/20mmを示しており、十分な接着性を発現していることが確認された。その一方、比較例1に係る偏光板では、剥離力が0.3Nであり、接着性が不十分であることが分かった。
【0118】
また、実施例4?5に係る偏光板では、剥離力が3.9N/20mmまたは4.6N/20mmを示しており、優れた接着性を発現していることが確認された。その一方、比較例2に係る偏光板では、保護フィルム2に接着剤(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)を塗工した後に接着剤のハジキが発生し、偏光板作成後はハジキ発生箇所が気泡となって、外観不良となった。また、剥離力は3.5N/20mmとなり、良好な値を示したものの、ハジキ発生箇所では部分的な接着不良が発生した。
【0119】
【表1】



(2)引用文献1の記載事項クに基づけば、引用文献1には、実施例4として、以下の発明が記載されていると認められる。
「厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴に浸漬して膨潤させ、次に、このポリビニルアルコールを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させ染色し、続いて、3重量%のホウ酸および2重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させた後、更に4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液(液温60℃)中で1分間浸漬させた状態で、初期長さに対し6倍まで延伸させ、その後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液(液温30℃)中に0.5分間浸漬させ、更に、40℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光フィルムを得て、
HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)40重量部、ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)30重量部、ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)30重量部、IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィノキサイド(光ラジカル発生剤))1.5重量部を混合し、50℃で1時間撹拌して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得て、
透明保護フィルム1としては、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用い、透明保護フィルム2としては、厚さ40μmのノルボルネン系樹脂の二軸延伸フィルムを用い、
透明保護フィルム1,2の易接着処理面に、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を厚さ0.8μmになるように塗工し、偏光フィルムの両面にロール機で貼り合わせ、その後、貼り合わせた透明保護フィルム側(両側)から紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して作製した、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを有する偏光板。」(以下、「引用発明」という。)

2 引用文献2
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2009-294649号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。また本発明は、当該偏光板を用いた、光学フィルムに関する。さらには当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置において、その画像形成方式から、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側または両側に偏光板が貼り付けられている。このような偏光板としては、通常、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着、延伸配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を介して接着したものが一般的に使用されている。
【0003】
近年では、液晶表示装置はその広範な利用に伴い高温条件下等で長期間使用される場合も多くなり、その利用される用途に応じた色相の変化の少ない液晶表示装置が求められている。例えば、液晶表示装置は車載用や携帯情報端末用として用いられることが多くなり、それに伴い偏光板にも、高温条件下に放置したときや高温高湿条件下に放置したときの光学特性が劣化しないような信頼性(耐久性)が求められている。
【0004】
偏光板の耐湿性を向上させる技術としては、透湿度の高いトリアセチルセルロースフィルム(TAC)に代えて、ノルボルネン系樹脂フィルム等の透湿度の低い樹脂フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることで、偏光板の耐湿性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、透湿度の低い樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板でも、刃物によってその端辺を切断する場合、切断の際に偏光子の端面が切断面として露出するため、その部分から偏光子が吸湿する場合がある。また、切断の際のせん断力によって部分的な界面の剥離が生じ易いため、その部分から偏光子が吸湿することにより、偏光度に変化が生じる場合がある。」

(2)「【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面側に接着剤を介して保護フィルムが貼り合わされたものである。保護フィルムは偏光子の片面側又は両面側に貼り合わされていればよい。保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、更に他の層が積層して形成されていてもよい。

(中略)

【0023】
本発明の偏光板においては、偏光子に亜鉛を含有させることも可能である。偏光子に亜鉛を含有させることは、加熱耐久時における色相劣化抑制の点で好ましい。偏光子中の亜鉛の含有量は、亜鉛元素が、偏光子中に0.002?2重量%含有される程度に調整することが好ましい。さらには、0.01?1重量%に調整することが好ましい。偏光子中の亜鉛含有量が前記範囲において、耐久性向上効果がよく、色相の劣化を抑えるうえで好ましい。
【0024】
本発明の偏光板を構成する保護フィルムとしては、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が150g/m^(2)・24h以下であるものを用いる。保護フィルムの透湿度は1?150g/m^(2)・24hであることが好ましく、3?120g/m^(2)・24hであることがより好ましく、30?100g/m^(2)・24hであることがさらに好ましい。透湿度が上記範囲を超えると、加湿条件下において偏光子が退色し、色相変化したり、偏光度の低下が発生したりする場合がある。また、透湿度が過度に低いと、乾燥時に粘着剤の剥がれを生じる場合がある。ここで、本明細書において、フィルムの透湿度はJIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定し、40℃、90%の相対湿度差で、面積1m^(2)の試料を24時間で透過する水蒸気のグラム数である。」

3 引用文献3
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-317747号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。また本発明は、当該偏光板を用いた、光学フィルムに関する。さらには当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置において、その画像形成方式から、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側または両側に偏光板が貼り付けられている。このような偏光板としては、通常、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着、延伸配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を介して接着したものが一般的に使用されている。
【0003】
近年では、液晶表示装置はその広範な利用に伴い高温条件下等で長期間使用される場合も多くなり、その利用される用途に応じた色相の変化の少ない液晶表示装置が求められている。例えば、液晶表示装置は車載用や携帯情報端末用として用いられることが多くなり、それに伴い偏光板にも、高温条件下に放置したときや高温高湿条件下に放置したときの光学特性が劣化しないような信頼性(耐久性)が求められている。
【0004】
しかし、偏光板の保護フィルムとして用いられているトリアセチルセルロースフィルムは、透湿性を持つ(透湿度が高い)ため、水分により偏光子の色相が変化して、偏光度が低下するという欠点がある。この問題を解決するために偏光板用保護フィルムの耐湿性を向上させるに、ノルボルネン系樹脂フィルム等の透湿度の低い樹脂フィルムを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、透湿度の低い樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板は、耐湿性が向上する一方で、耐熱性の悪化等により光学特性の不具合が発生することが確認されている。また、透湿度の高いトリアセチルセルロースを保護フィルムとして用いた偏光板においても、加熱時には熱による偏光子の色相変化が生じ、LCDの黒表示の際に、その色変化が顕著になるという問題が生じている。」

(2)「【0041】
保護フィルムとしては、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が150g/m^(2)・24h以下であるものを用いる。保護フィルムの透湿度は低ければ低い方が好ましく、透湿度は100g/m^(2)・24h以下、さらには10g/m^(2)・24h以下が好ましい。透湿度が、150g/m^(2)・24hを超えるものは、加湿条件下において偏光子が退色し色相変化したり偏光度の低下が発生したりする。」

4 引用文献4
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2009-139585号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を形成しうる。」

(2)「【0023】
本発明においては、第一の積層フィルム13は、偏光子11の片側のみに設けることができる他、偏光子11の他の片側には第二の積層フィルム13’を設けてもよい。図1(c)および(d)は、第一の積層フィルム13と第二の積層フィルム13’が偏光子11の両側に設けられる実施形態を示す。図1(c)の実施形態によれば、第一(および第二)の光学補償層131(131’)と第一(および第二)の透明保護フィルム132(132’)とを有する第一(および第二)の積層フィルム13(13’)が、第一(および第二)の接着剤層12(12’)を介して偏光子11のそれぞれの側に貼着されている。図1(d)の実施形態によれば、第一(および第二)の光学補償層131(131’)と第一(および第二)のアンカーコート層133(133’)と第一(および第二)の透明保護フィルム132(132’)とを有する第一(および第二)の積層フィルム13(13’)が、第一(および第二)の接着剤層12(12’)を介して偏光子11のそれぞれの側に貼着されている。偏光子11の片側に第一の光学補償層131と第一の透明保護フィルム132とを有する第一の積層フィルム13を貼着し、反対側に第二の光学補償層131’と第二のアンカーコート層133’と第二の透明保護フィルム132’とを有する第二の積層フィルム13’を貼着してもよいことは言うまでもない。なお、偏光子11の両側に第一および第二の積層フィルム13および13’を設ける場合、積層フィルム13および13’を構成する材料は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。図1(c)および(d)に例示した実施形態によれば、その対称構造に起因して、得られる偏光板のカール(反り)が非常に小さい。さらに、偏光子の両側を透明保護フィルムで保護しているので、非常に優れた耐久性を有する偏光板が得られ得る。」


第4 対比・判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「偏光フィルム」は、その両側に透明保護フィルムを貼り合わせて偏光板とするものであるから、本件発明1の「偏光子」に相当する。

イ 引用発明の「透明保護フィルム1」及び「透明保護フィルム2」は、「偏光フィルムの両面にロール機で貼り合わせ」られるものである。したがって、引用発明の「透明保護フィルム1」及び「透明保護フィルム2」は、本件発明1の「透明保護フィルム」に相当する。

ウ 引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを貼り合わせるのに用いられるものである。したがって、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化型接着剤」に相当する。
また、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に含まれる「HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)」、「ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)」、及び、「ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)」は、その化学構造から何れも重合性のモノマーとしての機能を有するものであり、光ラジカル発生剤と共に用いられて、紫外線の照射により硬化されるものである。したがって、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は、本件発明1の「ラジカル重合性化合物を含有する」という要件を満たしているといえる。
さらに、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は、「透明保護フィルム1,2の易接着処理面に、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を厚さ0.8μmになるように塗工し、偏光フィルムの両面にロール機で貼り合わせ」た後、「紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させ」ることにより、「偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを有する偏光板」を作成するのに用いられるものであるから、紫外線の照射により「硬化物層」となり偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせる「接着剤層」を形成しているといえる。したがって、引用発明は、本件発明1の「ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層」を具備しているといえる。

エ 引用発明の「偏光板」は、偏光子の両面に、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させることにより形成された接着剤層を介して、透明保護フィルムが張り合わされている。したがって、引用発明の「偏光板」と本件発明1の「偏光子の両面に、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層を介して、透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)である透明保護フィルムが貼り合わされている偏光板」とは、「偏光子の両面に、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層を介して、」「透明保護フィルムが貼り合わされている偏光板」である点で共通する。

オ N-ヒドロキシエチルアクリルアミドのSP値は29.6(MJ/m^(3))^(1/2)(本願明細書段落【0083】)であり、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートのSP値は20.3(MJ/m^(3))^(1/2)(本願明細書段落【0084】)であり、N-メトキシメチルアクリルアミドのSP値は22.9(本願明細書段落【0085】)である。したがって、引用発明の「HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)」、「ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)」、及び、「ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)」は、それぞれ、本件発明1の「SP値が29.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上32.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(A)」、「SP値が18.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上21.0(MJ/m^(3))^(1/2)未満であるラジカル重合性化合物(B)」、及び、「SP値が21.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上23.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(C)」に相当する。
そして、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に含まれる重合性モノマーは、「HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)」、「ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)」、及び、「ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)」のみであり、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」の組成物全量に対するそれぞれの重合性モノマーの含有量は、HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)が39.4重量%、ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)が29.6重量%、ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)」が29.6重量%である。
したがって、引用発明は、本件発明1の
「前記活性エネルギー線硬化型接着剤が、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)のみをモノマー成分として含有する活性エネルギー線硬化型接着剤であって、組成物全量を100重量%としたとき、
SP値が29.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上32.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(A)を20?60重量%、
SP値が18.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上21.0(MJ/m^(3))^(1/2)未満であるラジカル重合性化合物(B)を10?30重量%、および
SP値が21.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上23.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(C)を20?60重量%含有」するとの要件を満たしている。

カ N-ヒドロキシエチルアクリルアミドのホモポリマーのTgは、123℃(本願明細書段落【0130】)である。
そうすると、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に含まれる重合性モノマー「HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)」は、本件発明1の「前記ラジカル重合性化合物(A)」「のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が」「60℃以上であり、」との要件を満たしている。

キ 以上より、本件発明1と引用発明とは、
「偏光子の両面に、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層を介して、透明保護フィルムが貼り合わされている偏光板であり、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤が、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)のみをモノマー成分として含有する活性エネルギー線硬化型接着剤であって、組成物全量を100重量%としたとき、
SP値が29.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上32.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(A)を20?60重量%、
SP値が18.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上21.0(MJ/m^(3))^(1/2)未満であるラジカル重合性化合物(B)を10?30重量%、および
SP値が21.0(MJ/m^(3))^(1/2)以上23.0(MJ/m^(3))^(1/2)以下であるラジカル重合性化合物(C)を20?60重量%含有し、
前記ラジカル重合性化合物(A)のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が60℃以上である偏光板。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明1は、液晶セルの一方の面に配置される第1の偏光板と、他方の面に配置される第2の偏光板を有する液晶表示装置用の偏光板のセットであるのに対し、引用発明は、偏光板のセットとされていない点。
[相違点2]本件発明1は、透明保護フィルムが、透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)であるのに対し、引用発明は、透明保護フィルム1及び透明保護フィルム2の透湿度及びSP値を特定していない点。
[相違点3]本件発明1は、ラジカル重合性化合物(B)及び(C)のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)及び、接着剤層のTgも60℃以上であるのに対し、引用発明は、ライトアクリレートDCP-A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)及びワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)のホモポリマーのガラス転移温度及び活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、一応、判らない点。
[相違点4]本件発明1は、第1および第2の偏光板に用いられる透明保護フィルムが全て同じ形成材料であって、かつ透明保護フィルムの厚みの差が10μm以下であるのに対し、引用発明は、透明保護フィルム1としては、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用い、透明保護フィルム2としては、厚さ40μmのノルボルネン系樹脂の二軸延伸フィルムを用いる点。

(2)判断
事案に鑑みて、[相違点2]について検討する。引用文献1の記載事項オの段落【0045】には、透明保護フィルムを構成する材料として、水分遮断性に優れる熱可塑性樹脂が用いられることが記載されている。そして、例えば、引用文献2の記載事項(1)の段落【0003】、【0004】、記載事項(2)の段落【0024】、引用文献3の記載事項(1)の段落【0003】、【0004】、記載事項(2)の段落【0041】の記載に基づけば、偏光板の耐湿性の向上が求められていること、偏光板の耐湿性を向上させる技術として透湿度が150g/m^(2)・24h以下である保護フィルムを用いることは、本件出願前において周知技術であったといえる。
しかしながら、保護フィルムをSP値が特定の範囲のものとすることについては、引用文献1において何ら示唆されておらず、偏光板の保護フィルムにおいてSP値を調整して特定の範囲のものとすることが周知技術であったとする根拠も見いだせない。さらに、保護フィルムの透湿度が150g/m^(2)・24h以下であれば、SP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)となるともいえない。
さらに、本願明細書の段落【0026】の記載によれば、活性エネルギー線硬化型接着剤中のラジカル重合性化合物と低透湿度の透明保護フィルム(アクリルフィルム、シクロオレフィンフィルム)とのSP値が近いと、接着剤層と低透湿度の保護フィルムとの接着性が高まるという効果を奏するものである。
よって、引用文献1に記載された発明において、透明保護フィルムとして、透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)であるものを採用することが、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

2 本件発明2?10について
本件発明2?10も、透明保護フィルムについて、本件発明1の「透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)である」とする構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、平成27年11月20日に提出された手続補正の特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明について、特開2012-52000号公報及び引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、原査定の拒絶の理由において引用された何れの刊行物にも、本件発明1?10の、活性エネルギー線硬化型接着剤が、それぞれ特定のSP値の範囲のラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)のみをモノマー成分として含有する活性エネルギー線硬化型接着剤について開示しておらず、透明保護フィルムの透湿度が150g/m^(2)/24h以下であり、SP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)であることも開示されていない。
よって、本件補正後の請求項1?10に係る発明は、当業者であっても、原査定における引用文献に基づいて容易に発明することができたものとはいえないから、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審拒絶理由の概要及び判断は以下のとおりである。

1 理由1(サポート要件)
当審拒絶理由における理由1(サポート要件)の概要は、本件補正前の請求項1?10に係る発明は、透明保護フィルムのSP値を特定していないので、本件発明が解決しようとする課題を解決できないものを含むものといえるから、本件の請求項1?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。
これに対し、本件補正後の請求項1?10に係る発明は、いずれも透明保護フィルムのSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)に特定されている。
この結果、当審拒絶理由における理由1は解消した。

2 理由2(進歩性)
当審拒絶理由における理由2(進歩性)の概要は、本件補正前の請求項1?10に係る発明は、引用文献1?4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。
しかし、本件補正後の請求項1?10に係る発明は、透明保護フィルムについて「透湿度が150g/m^(2)/24h以下およびSP値が18?24(MJ/m^(3))^(1/2)である」とする構成を備えるものであり、上記第4において検討したとおり、引用文献1?4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものである。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明1?10は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、原査定の引用文献に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、当審拒絶理由及び原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-04-02 
出願番号 特願2012-81203(P2012-81203)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 廣田 健介小西 隆菅原 奈津子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
宮澤 浩
発明の名称 偏光板のセットおよび液晶表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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