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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1338916
審判番号 不服2017-8558  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-13 
確定日 2018-03-29 
事件の表示 特願2015-182724「測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日出願公開、特開2015-227893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月15日に出願された特願2010-6627号の一部を、平成27年9月16日に新たに出願したものであって、平成28年8月23日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月9日付けで拒絶査定されたところ、同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年6月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「供給ローラから順次、連続的に供給された、表面改質処理される前の搬送状態の対象物の表面に紫外線を照射したときに検出される蛍光の強度を出力するステップと、
前記表面改質処理される前の搬送状態の対象物に表面改質処理を施した後、前記搬送状態の対象物の表面改質処理された表面に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の表面改質処理された表面から生じる蛍光を検出してその強度を出力した後、前記対象物を巻取ローラに連続的に巻き取るステップとを備える、測定方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年10月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「供給ローラから順次供給された、表面改質処理される前の前記対象物の表面に紫外線を照射したときに検出される蛍光の強度を出力するステップと、
前記表面改質処理される前の対象物に表面改質処理を施した後、前記対象物の表面改質処理された表面に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の表面改質処理された表面から生じる蛍光を検出してその強度を出力した後、前記対象物を巻取ローラに巻き取るステップとを備える、測定方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「対象物」について、「連続的」に搬送され、「搬送状態」において表面改質処理及び蛍光検出が行われることの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「八木誠人 他、高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出への応用、電気学会論文集A、2000年、Vol.120、No.11、994?999頁」(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。)

ア 「高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出への応用」(論文タイトル)

イ 「プラズマ反応を応用した技術が、工業上あるいは環境対策上様々な分野で利用されている^((1))。プラズマ中に置かれた高分子材料表面では、材料表面でスパッタエッチングなどの物理反応あるいは極性基の形成や架橋反応による不飽和結合の形成などの化学反応が生じる。このような反応を利用して、高分子材料の表面に親水性を付与したり、濡れ性や接着性を向上させることができる^((2))。」(第994頁左欄第2行?第8行)

ウ 「高分子材料のフォトルミネセンスに着目した。フォトルミネセンスは種々の光刺激によっておきる物質の蛍光現象であり、光エネルギーによって励起された電子が脱励起する際に光エネルギーを放つものである。一般的には蛍光体と呼ばれる物質にフォトルミネセンスが認められる。高分子材料においてもフォトルミネセンスが観測され、表面改質によって極性基が導入されることにより蛍光スペクトルが変化することが考えられる。
そこで著者らは、フォトルミネセンスが高分子材料を放電で処理する際のその場検出に適用できるかを検討する。中でも高分子材料のフォトルミネセンスが、放電プラズマで処理される時に導入される極性基の種類を反映するか否かを確認し、フォトルミネセンスをその場検出法に用いる可能性を検討する。」(第995頁左欄第6行?第19行)

エ 「<2.4>フォトルミネセンス観測 フォトルミネセンスの観測は、処理された試料に励起光を照射し、その時の試料の蛍光スペクトルを観測する。」(第996頁左欄第6行?第8行)

オ 「<3.1>フォトルミネセンスの蛍光スペクトル ポリスチレンに254nmの紫外光を照射したときのフォトルミネセンスの蛍光スペクトルを図5(a)に示す。なお、発光強度のバックグラウンドは約100cpsであった。
・・・図5(a)には、処理後のスペクトルを重ねて示してある。2つのスペクトルを比較すると、320nm付近のピーク位置は一致するが、処理後には400nm付近に肩が現れている。そこで処理後のスペクトルから処理前のスペクトルの形を変えずに、ピーク強度を一致させた曲線との差を求めたものを、同図(b)に示す。」(第996頁右欄第27行?第40行)

カ 図5には、以下の図面が示されている。


上記ア?オの記載事項及び上記カの図面を含む引用文献1の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出法であって、
フォトルミネセンスの観測は、処理された試料に励起光を照射し、その時の試料の蛍光スペクトルを観測するものであり、
ポリスチレンに254nmの紫外光を照射したときのフォトルミネセンスの蛍光スペクトルを図に示し、同図には、処理後のスペクトルを重ねて示してある、その場検出法。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明において「蛍光スペクトルを観測する」ことは、上記(2)オ及びカの図5(a)に記載のとおり、蛍光の発光強度を検出することであるから、引用発明の「放電プラズマ表面改質」される前の「ポリスチレンに254nmの紫外光を照射したときのフォトルミネセンスの蛍光スペクトル」を「観測」して「図に示」すことと、本件補正発明の「供給ローラから順次、連続的に供給された、表面改質処理される前の搬送状態の対象物の表面に紫外線を照射したときに検出される蛍光の強度を出力するステップ」とは、「表面改質処理される前の対象物の表面に紫外線を照射したときに検出される蛍光の強度を出力するステップ」である点で共通する。

(イ)引用発明の「処理された試料に励起光を照射」することは、「放電プラズマ表面改質」される前の「ポリスチレン」を「放電プラズマ表面改質」した後、「放電プラズマ表面改質」「処理後」の「ポリスチレンに254nmの紫外光を照射」することであるから、引用発明の「処理された試料に励起光を照射」することと、本件補正発明の「前記表面改質処理される前の搬送状態の対象物に表面改質処理を施した後、前記搬送状態の対象物の表面改質処理された表面に紫外線を照射するステップ」とは、「前記表面改質処理される前の対象物に表面改質処理を施した後、前記対象物の表面改質処理された表面に紫外線を照射するステップ」である点で共通する。

(ウ)引用発明の「放電プラズマ表面改質」「処理後」の「ポリスチレン」表面から生じる「フォトルミネセンスの蛍光スペクトル」を「観測」して「同図に」「示」すことと、本件補正発明の「前記対象物の表面改質処理された表面から生じる蛍光を検出してその強度を出力した後、前記対象物を巻取ローラに連続的に巻き取るステップ」とは、「前記対象物の表面改質処理された表面から生じる蛍光を検出してその強度を出力するステップ」である点で共通する。

(エ)引用発明の「その場検出法」は、本件補正発明の「測定方法」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「表面改質処理される前の対象物の表面に紫外線を照射したときに検出される蛍光の強度を出力するステップと、
前記表面改質処理される前の対象物に表面改質処理を施した後、前記対象物の表面改質処理された表面に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の表面改質処理された表面から生じる蛍光を検出してその強度を出力するステップとを備える、測定方法。」

(相違点)
対象物は、本件補正発明では、「供給ローラから順次、連続的に供給され」、「搬送状態」において表面改質処理及び蛍光検出が行なわれ、その後「巻取ローラに連続的に巻き取」られるのに対し、引用発明ではこのような構成を採用していない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 引用発明のその場検出法は、上記(2)イの「プラズマ反応を応用した技術が、工業上あるいは環境対策上様々な分野で利用されている」との記載によれば、工業上利用されることを視野に入れていることが理解できる。そして、プラズマ反応を応用した表面改質処理を行う工業上の製造工程において、表面改質処理の対象をその生産効率等を考慮して、長尺体にすることは、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3:特開2001-305052号公報(図1)、引用文献4:特開平4-74525号公報(第2図)、引用文献5:特開2002-216736号公報(図1)などに記載されているように周知技術であるから、引用発明において、工業上の利用を視野に入れ、生産効率等を考慮して、表面改質処理の対象を長尺体の高分子材料とすることは、当業者が容易に想到することである。
また、表面改質処理の対象を長尺体の高分子材料とする場合、上記周知技術にあるように、順次、連続的に供給する供給ローラ、及び連続的に巻き取る巻取ローラを用い、搬送状態で表面改質処理を行なうことは、常套手段であるから、引用発明において、供給ローラ及び巻取ローラを用い、搬送状態で表面改質処理を行なう際、これに伴ない蛍光検出を搬送状態で行なうことは通常とり得る手段にすぎない。
よって、引用発明において、高分子材料(対象物)が、「供給ローラから順次、連続的に供給され」、「搬送状態」において表面改質処理及び蛍光検出が行なわれ、その後「巻取ローラに連続的に巻き取」られるように構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成29年6月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年10月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、次の引用文献1に記載された発明及び引用文献3?5に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1: 八木誠人 他、高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出への応用、電気学会論文集A、2000年、Vol.120、No.11、994?999頁
引用文献3:特開2001-305052号公報
引用文献4:特開平4-74525号公報
引用文献5:特開2002-216736号公報

3 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「対象物」について、「連続的」に搬送され、「搬送状態」において表面改質処理及び蛍光検出が行われることの限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-29 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2015-182724(P2015-182724)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
▲高▼見 重雄
発明の名称 測定方法  
代理人 山本 拓也  

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