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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01D 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D |
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管理番号 | 1339124 |
審判番号 | 不服2017-8733 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-14 |
確定日 | 2018-05-01 |
事件の表示 | 特願2013-149987「回転検出装置、モータ制御装置、モータ被駆動装置、回転検出装置の補正方法および補正プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 2日出願公開、特開2015- 21840、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月19日の出願であって、平成28年12月1日付けの最後の拒絶理由通知に対して、平成29年2月3日付けで手続補正がなされたが、平成29年3月7日付けで平成29年2月3日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(謄本送達日平成29年3月14日)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年6月14日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において平成30年2月8日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年3月8日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成30年3月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、11、12は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 モータの回転に伴って回転し、その回転方向に回転検出用パターンを形成する複数のパターン要素部が配置された回転部材と、 前記回転部材とともに前記パターン要素部が回転することに応じて変化する検出信号を出力する信号出力手段と、 前記回転部材における前記パターン要素部の配置誤差による前記回転部材の回転位置と前記検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段と、 前記モータにより駆動される被駆動部材が原点位置に位置することを検出する原点検出手段と、 該原点検出手段により前記被駆動部材が前記原点位置に位置することが検出された原点状態での前記信号出力手段の検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として、前記各補正値を用いた前記補正を行う補正手段と、 前記補正手段による前記補正後の前記検出信号を用いて前記モータの駆動を制御する制御手段とを有することを特徴とするモータ制御装置。」 「【請求項11】 モータの回転に伴って回転し、その回転方向に回転検出用パターンを形成する複数のパターン要素部が配置された回転部材と、前記モータにより駆動される被駆動部材が原点位置に位置することを検出する原点検出手段とを有するモータ制御装置の制御方法であって、 前記原点検出手段により前記被駆動部材が前記原点位置に位置することを検出するステップと、 前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を用いて、前記回転部材とともに前記パターン要素部が回転することにより検出される検出信号の変化と前記回転部材の回転位置との関係の誤差を補正するステップとを有し、 前記補正を、前記被駆動部材が前記原点位置に位置することが検出された原点状態での前記検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として行うことを特徴とするモータ制御装置の制御方法。 【請求項12】 モータの回転に伴って回転し、その回転方向に回転検出用パターンを形成する複数のパターン要素部が配置された回転部材と、前記モータにより駆動される被駆動部材が原点位置に位置することを検出する原点検出手段とを有するモータ制御装置における補正処理を行うコンピュータに、 前記原点検出手段により前記被駆動部材が前記原点位置に位置することを検出するステップと、 前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を用いて、前記回転部材とともに前記パターン要素部が回転することにより検出される検出信号の変化と前記回転部材の回転位置との関係の誤差を補正するステップとを実行させるプログラムであって、 前記コンピュータに、前記補正を、前記被駆動部材が前記原点位置に位置することが検出された原点状態での前記検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として行わせることを特徴とするプログラム。」 本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭61-228309号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 a 「第1図はこの発明の位置検出方法の原理を説明する図であり、第2図はこの発明を適用して主走査位置信号若しくは副走査位置信号を得るようにしたドラム回転形スキャナーを示す斜視図であり、第3図はその要部の構成を模式的に示す斜視図である。」(第3頁左上欄第7-12行) b 「第2図において、回転ドラム(1)は図示しない駆動モータにより回転駆動される。なおここで回転方向を主走査方向とする。記録ヘッド(3)は、駆動モータ(5)により駆動される送りねじによって副走査方向、すなわち回転ドラム(1)の軸に平行な方向に移動する。ドラム周上にエッチング処理によって刻まれた位置検出用外周スケール(2)(以下スケール(2)という)の目盛をピックアップヘッド(6)で検出する。ピックアップヘッド(6)は第3図に示すように、光源(11)からの光を照明用集光レンズ(10)、ハーフ・ミラー(9)、1/4λ板(8)、対物レンズ(7)を介してスケール(2)の目盛上に照射する。スケール(2)の像は、対物レンズ(7)からハーフ・ミラー(9)によって4個の光電素子を配列したラインセンサー(12)に上結像される。」(第3頁右上欄第3-18行) c 「第5図はラインセンサー(12)の各光電素子(A)(B)(C)(D)の光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)を示す。長方形のセンサー上を白黒パターンが移動するので三角波として出力される。」(第3頁左下欄第17-20行) d 「第1図に戻って位置検出用信号を出力させる原理について説明する。第1図はスケール目盛の隣接ピッチ誤差の影響を受けない位置検出用信号を得るために、ラインセンサー(12)からの信号の取り扱いを説明する図である。信号の取り扱いとしては、まずラインセンサー(12)の各光電素子(A)(B)(C)(D)を移動する目盛の像について先行して検出する順に(D)(C)と(B)(A)との2組の素子グループに分けて取り扱う。これら1組センサーの出力をそれぞれ(D0)(C0)、(B0)(A0)としてその演算出力(C0-D0)/(C0+D0)、(A0-B0)/(A0+B0)を取ると、第1図(イ)(ロ)に示すように白黒パターン(2)の矢印方向への移動に対して三角波を描く。」(第3頁右下欄第6-19行) e 「演算出力(A0-B0)/(A0+B0)=0となる時点(第1図(イ)におけるt1の時)をとらえて、(C0-D0)/(C0+D0)の出力値(α)を読み出せば(第1図(ロ)における同時刻t1の時の値)、この値(α)はスケールの隣接ピッチ誤差そのものを示すことになる。 この発明はこの演算出力(A0-B0)/(A0+B0)をトリガとして(C0-D0)/(C0+D0)出力を補正信号として取り扱うことにポイントがある。すなわち第1図において、スケール(2)のn1の部分の重心位置を示すセンサー(A)(B)の演算出力(A0-B0)/(A0+B0)が零になる時刻t1に位置検出信号を出力させるとともに、時刻t1におけるセンサー(C)(D)のスケール(2)のn2の部分の演算出力(C0-D0)/(C0+D0)の値(α)を取り込む。スケール(2)が矢印方向に移動し、時刻t2でセンサー(A)(B)がn2について検出する時の演算出力(A0-B0)/(A0+B0)が(α)となる時に位置検出用信号を出力する。」(第4頁左上欄第20行-右上欄第19行) f 「後続するセンサー組の基準となる演算出力をトリガとして、先行するセンサー組の演算出力を補正信号として取り込み、この補正信号により後続するセンサー組との演算出力の判定処理を行なって、スケール目盛ピッチをセンサーピッチに置き換えて、このピッチごとに位置検出用信号を出力させるので、スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けないことになる。 第6図はこの原理に基づいて構成した回路構成の実施例を示すブロック図である。」(第4頁右下欄第2-12行) 上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。 「駆動モータにより回転駆動され、位置検出用外周スケール(2)がドラム周上にエッチング処理によって刻まれた回転ドラム(1)と、 位置検出用外周スケール(2)の目盛を検出するピックアップヘッド(6)とを有し、 ピックアップヘッド(6)は光源(11)からの光を、スケール(2)の目盛上に照射し、スケール(2)の像は、4個の光電素子を配列したラインセンサー(12)に上結像されるものであり(上記b)、 ラインセンサー(12)の各光電素子(A)(B)(C)(D)は、三角波の光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)を出力し(上記c)、 位置検出用信号を出力させる原理は、 ラインセンサー(12)の各光電素子(A)(B)(C)(D)を移動する目盛の像について先行して検出する順に(D)(C)と(B)(A)との2組の素子グループに分け、これら1組センサーの出力をそれぞれ(D0)(C0)、(B0)(A0)としてその演算出力(C0-D0)/(C0+D0)、(A0-B0)/(A0+B0)を取ると、白黒パターン(2)の矢印方向への移動に対して三角波を描き(上記d)、 演算出力(A0-B0)/(A0+B0)=0となる時点をとらえて、(C0-D0)/(C0+D0)の出力値(α)を読み出せば、この値(α)はスケールの隣接ピッチ誤差そのものを示すことになるので、スケール(2)のn1の部分の重心位置を示すセンサー(A)(B)の演算出力(A0-B0)/(A0+B0)が零になる時刻t1に位置検出信号を出力させるとともに、時刻t1におけるセンサー(C)(D)のスケール(2)のn2の部分の演算出力(C0-D0)/(C0+D0)の値(α)を取り込み、スケール(2)が矢印方向に移動し、時刻t2でセンサー(A)(B)がn2について検出する時の演算出力(A0-B0)/(A0+B0)が(α)となる時に位置検出用信号を出力することで(上記e)、 センサーピッチごとに位置検出用信号を出力させるので、スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けない、 この原理に基づく回路構成を有する(上記f)、 ドラム回転型スキャナー(上記a)。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-112949号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0027】 この例においては、計算ユニット4により、位置信号P1、P2から位置値Pψが決定され、位置値Pψは、回転する格子目盛本体2の、回転軸線に関する誤差のある角度位置を表している。計算ユニット4はメモリ・ユニット5と接続され、メモリ・ユニット5には、それぞれの位置値Pψの偏心誤差に関する補正値Kが記憶されている。上述したように、このような誤差は、格子目盛本体2の実際回転軸線AISTが目標回転軸線ASOLLと一致しなかったときに形成される。計算ユニット4は、メモリ・ユニット5から、決定された各位置値Pψに対する補正値Kを読み出し、該補正値を用いて補正位置値ψkorrigiertを計算する。回転する格子目盛本体2の角度位置に関する補正位置値ψkorrigiertは、次に、図示されていない後段の電子装置例えば駆動制御装置内において処理するために、計算ユニット4から出力される。本発明による位置測定装置を用いた信号処理及び偏心誤差の補正について、以降で詳細に説明する。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平2-195208号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「第1図はこの発明の第1実施例の構成を示すブロック図である。この図において、ロータリーエンコーダ本体1内には、位置検出回路12とデータ変換用メモリ2が設けられている。データ変換用メモリ2はEEPROM(電気的消去可能なPROM)によって構成されており、予め誤差補正用のデータが書き込まれている。」(第4頁右上欄第6-12行) 「次に、第3図はこの発明の第2実施例の構成を示す図であり、この図において、データ変換用メモリ2aは、位置検出回路12から出力される絶対位置データDが入力された場合、それぞれの誤差成分に相当する誤差データDbを出力するようになっている。そして、この誤差データDbが、加算回路6によって絶対位置データDに加算されることにより、誤差補正された絶対位置データDaが出力されるようになっている。」(第4頁左下欄第19行-右下欄第7行) 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開昭63-273010号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「このメモリ(23)は、予め精度の高いレーザ測定装置により測定した基準データがカウント値毎に記憶してある。即ち、磁気スケール(1)の1記録波長200μmを検出して内挿パルス信号により200等分して1μm毎のスケールを想定したときの実際の磁気ヘッド(3),(4)の変位量を、レーザ測定装置により200μmまで記憶させてある。」(第3頁右下欄第5-11行) 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平5-184200号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0035】すなわち当該レンズ装置10の出荷時において、フオーカスレンズ16を一担基準位置bまで移動し、このときのステツピングモータ22における励磁パターン(P1?P8)を基準励磁パターンとしてメモリ33に記憶しておく。」 「【0040】このステツプSP13の処理は、フオトインタラプタ25の出力信号レベルが変化した際のフオーカスレンズ16の位置が正確に基準位置bに有るか否かを判断する処理であり、制御回路30はメモリ33に予め記憶されているステツピングモータ22の基準励磁パターンとこのときのステツピングモータ22の励磁パターンとを比較し、一致していない場合には続くステツプSP14において当該ずれ量を励磁パターン単位(すなわち1ステツプ単位)で補正する。 【0041】例えばメモリ33に記憶されている基準励磁パターンが区間T6の励磁パターンP6であり、実際にフオトインタラプタ25の出力信号SDETに基づいて得られた励磁パターンが区間T8の励磁パターンP8であるとすると、制御回路30は当該2つの励磁パターンの差分として-2ステツプ分だけフオーカスレンズ16の位置を補正する。」 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2010-122301号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0023】 また温度検出回路7は、レンズユニット2近傍の温度を検出し、検出結果をレンズユニット2近傍の温度情報として制御部19に送信する。この温度情報に基づいてフォーカスレンズ群5のピント位置の温度補正制御を行なう。」 7 引用文献7について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開平11-6951号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0033】又、この様な温度変化によるピント位置ズレに対して、温度センサーを設けてこれを補正する考えは古くから公知であるが、温度ピントの発生する量そのものに固体間のバラツキを生じる上、温度センサーの出力ゲインなどのバラツキまで考えると、補正残りが生じる点は否めない。当然スペース上、コスト上も不利となる。更にビデオカメラのCCD結像素子の様に機器内部に熱源があり、電源投入後の時間に共に相当な高温まで温度上昇を示す様な場合、周辺環境温度とも複雑に関係した温度の均一でない分布がレンズ内に生じてしまう為、唯一の温度センサーの配置では十分な補正が不可能なことも考えられる。」 8 引用文献8について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2011-169893号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0063】 また、本実施例において直線型変位検出装置100を参照したが、スライダ109を往復動作させ、各補正マークピッチを複数回計測しそれらの平均をとる手法で速度変動に起因する誤差を軽減することが可能となる。また、複写機やLBPの転写ベルトの周回運動のように、同一位置を繰り返し測定するエンコーダや周回運動する円盤状スケールのロータリエンコーダなど、繰り返し同じマーク110を通過する場合も同一マークピッチの複数の補正値の平均化で誤差を低減できる。さらに、ラインプリンタにみられるように、ヘッドの往復動作で、印刷状態と非印刷状態が2分されている場合に、安定速度で運動する方向で前記の補正データを蓄積し、逐次更新した補正データを適用し位置検出を行うことができる点でも誤差低減効果が期待できる。」 9 引用文献9について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献9(特開2012-18008号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0005】 各駆動モータにはインクリメンタル型のロータリーエンコーダが取り付けられており、各駆動モータのモータ速度は、このロータリーエンコーダからのパルス信号に基づいて検出され、このパルス信号に基づいて制御装置によってフィードバック制御される。 このような三次元測定機では、移動機構の絶対位置ひいては制御対象物の絶対位置を検出するために、インクリメンタル型のリニアエンコーダの原点位置を検出する必要がある。このインクリメンタル型のリニアエンコーダの原点位置は、リミットスイッチの機械的な位置に対する距離から認識されているため、リミットスイッチの機械的な位置を最初に検出することによって検出される。」 10 引用文献10について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献10(特開2004-12239号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0020】 まず、被検物5に対して、検査する方向をx方向として任意に決定し、このx方向と直交する任意の方向をy方向とし、さらに、このx方向とy方向の両方向と直交する方向をz方向とする。」 「【0024】 そして撮像された第1およひ第2の画像12,15中の欠陥の像13,14,16について、被検物5の基準点の像からの変位量(すなわち、各画像中における欠陥のxz座標位置とyz座標位置)を計測する。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「駆動モータにより回転駆動され、位置検出用外周スケール(2)がドラム周上にエッチング処理によって刻まれた回転ドラム(1)」は、本願発明1の「モータの回転に伴って回転し、その回転方向に回転検出用パターンを形成する複数のパターン要素部が配置された回転部材」に相当する。 イ 引用発明の「三角波の光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」は、「回転駆動され」る「回転ドラム(1)」の「スケール(2)の目盛」に応じて変化する信号であるから、 引用発明の「光源(11)からの光を、」「回転駆動され」る「回転ドラム(1)」の「スケール(2)の目盛上に照射し、スケール(2)の像は、4個の光電素子を配列したラインセンサー(12)に上結像されるものであり、ラインセンサー(12)の各光電素子(A)(B)(C)(D)は、三角波の光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)を出力」する「位置検出用外周スケール(2)の目盛を検出するピックアップヘッド(6)」は、本願発明1の「前記回転部材とともに前記パターン要素部が回転することに応じて変化する検出信号を出力する信号出力手段」に相当する。 ウ 引用発明の「光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」から「スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けない」「センサーピッチごとに位置検出用信号を出力させる」「回路構成」と、本願発明1の「該原点検出手段により前記被駆動部材が前記原点位置に位置することが検出された原点状態での前記信号出力手段の検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として、前記各補正値を用いた前記補正を行う補正手段」とは、「補正を行う補正手段」である点で共通する。 エ 引用発明の「回路構成」による「光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」から作成された「スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けない」「センサーピッチごと」の「位置検出用信号」は、本願発明1の「前記補正手段による前記補正後の前記検出信号」に相当する。 そして、引用発明の「回転ドラム(1)」は、「駆動モータにより回転駆動され」ているので、「位置検出用信号」を用いて「駆動モータ」の駆動を制御していることは明らかであるから、 引用発明の「回路構成」による「光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」から作成された「スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けない」「センサーピッチごと」の「位置検出用信号」を用いて「駆動モータ」の駆動を制御していることと、本願発明1の「前記補正手段による前記補正後の前記検出信号を用いて前記モータの駆動を制御する制御手段」とは、「前記補正手段による前記補正後の前記検出信号を用いて前記モータの駆動を制御する」点で共通する。 オ 引用発明の「ドラム回転型スキャナー」も、「駆動モータ」の駆動を制御していることは明らかであるから、引用発明の「ドラム回転型スキャナー」は、本願発明1の「モータ制御装置」に相当するといえる。 すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「モータの回転に伴って回転し、その回転方向に回転検出用パターンを形成する複数のパターン要素部が配置された回転部材と、 前記回転部材とともに前記パターン要素部が回転することに応じて変化する検出信号を出力する信号出力手段と、 補正を行う補正手段と、 前記補正手段による前記補正後の前記検出信号を用いて前記モータの駆動を制御するモータ制御装置。」 (相違点1) 本願発明1は、「前記回転部材における前記パターン要素部の配置誤差による前記回転部材の回転位置と前記検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点2) 本願発明1は、「前記モータにより駆動される被駆動部材が原点位置に位置することを検出する原点検出手段」を有するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点3) 補正を行う補正手段が、本願発明1は、「該原点検出手段により前記被駆動部材が前記原点位置に位置することが検出された原点状態での前記信号出力手段の検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として、前記各補正値を用いた前記補正を行う補正手段」であるのに対して、引用発明は、「光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」から「スケールのピッチ誤差やスケール若しくはセンサーの移動速度のムラ等の影響は一切受けない」「センサーピッチごとに位置検出用信号を出力させる」「回路構成」である点。 (相違点4) 本願発明1が、モータの駆動を制御する「制御手段」を有するのに対して、引用発明は、駆動モータの駆動を制御していることは明らかであるが、「制御手段」を有することは特定されていない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 引用文献2、3に記載されているように、回転部材の回転位置と、検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、複数の補正値を記憶した記憶手段は周知であるが(上記「第3 2」「第3 3」)、 引用発明が行う補正は、「光電出力(A0)(B0)(C0)(D0)」から「センサーピッチごとに位置検出用信号を出力させる」ことであり、具体的には、「時刻t1におけるセンサー(C)(D)のスケール(2)のn2の部分の演算出力(C0-D0)/(C0+D0)の値(α)を取り込み、スケール(2)が矢印方向に移動し、時刻t2でセンサー(A)(B)がn2について検出する時の演算出力(A0-B0)/(A0+B0)が(α)となる時に位置検出用信号を出力する」ことであるから、引用発明に、上記周知の「複数の補正値を記憶した記憶手段」を適用することは、想定できない。 さらに、「パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段」は、引用文献2-10には記載されていない。 したがって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。 よって、本願発明1は、上記相違点2-4について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2-10について 本願発明1を直接又は間接に引用する本願発明2-10は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3 本願発明11について 本願発明11は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の「前記回転部材における前記パターン要素部の配置誤差による前記回転部材の回転位置と前記検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 4 本願発明12について 本願発明12は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の「前記回転部材における前記パターン要素部の配置誤差による前記回転部材の回転位置と前記検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 原査定の拒絶の理由について 1 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1、11、12 ・引用文献等 1-5、9、10 ・請求項 2 ・引用文献等 1-5、9、10 ・請求項 3、4 ・引用文献等 1-7、9、10 ・請求項 5-10 ・引用文献等 1-10 <引用文献等一覧> 1.特開昭61-228309号公報 2.特開2010-112949号公報 3.特開平2-195208号公報 4.特開昭63-273010号公報 5.特開平5-184200号公報 6.特開2010-122301号公報 7.特開平11-6951号公報 8.特開2011-169893号公報 9.特開2012-18008号公報 10.特開2004-12239号公報 2 原査定の拒絶の理由についての判断 平成30年3月8日付け手続補正により補正された請求項1は、「前記回転部材における前記パターン要素部の配置誤差による前記回転部材の回転位置と前記検出信号の変化との関係の誤差の補正を行うための補正情報として、前記パターン要素部ごとに用意された複数の補正値を記憶した記憶手段」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-12は、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第1号について (1)当審では、請求項1-10の「原点状態での前記回転部材の回転位置を基準位置として」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「原点状態での前記信号出力手段の検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (2)当審では、請求項2-10の「前記補正手段は、前記原点状態での前記検出信号を基準信号として記憶し」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「前記記憶手段は、補正情報取得時の原点状態での検出信号を基準信号としてあらかじめ記憶し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (3)当審では、請求項3-10の「前記補正手段は、前記原点状態での温度を基準温度として記憶し」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「前記記憶手段は、補正情報取得時の原点状態での温度を基準温度としてあらかじめ記憶し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (4)当審では、請求項11、12の「原点状態での前記回転部材の回転位置を基準位置として」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「原点状態での前記検出信号に対応する前記回転部材の回転位置を基準位置として」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について (1)当審では、請求項2-10の「前記原点状態での前記検出信号を基準信号として記憶し、前記基準信号と、該基準信号を記憶した後に前記原点状態で得られた前記検出信号との差に基づいて、前記基準位置を補正する」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「補正情報取得時の原点状態での検出信号を基準信号としてあらかじめ記憶し、前記補正手段は、前記基準信号と、前記原点状態で得られた前記検出信号との差に基づいて、前記基準位置を補正する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (2)当審では、請求項3-10の「前記原点状態での温度を基準温度として記憶し、前記基準温度と、該基準温度を記憶した後に前記原点状態で得られた温度との差に基づいて前記基準位置を補正する」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年3月8日付けの補正において、「補正情報取得時の原点状態での温度を基準温度としてあらかじめ記憶し、前記補正手段は、前記基準温度と、前記原点状態で得られた温度との差に基づいて前記基準位置を補正する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-12は、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-04-16 |
出願番号 | 特願2013-149987(P2013-149987) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01D)
P 1 8・ 121- WY (G01D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉田 久 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 ▲うし▼田 真悟 |
発明の名称 | 回転検出装置、モータ制御装置、モータ被駆動装置、回転検出装置の補正方法および補正プログラム |
代理人 | 水本 敦也 |
代理人 | 藤元 亮輔 |
代理人 | 平山 倫也 |