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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03F
管理番号 1339159
異議申立番号 異議2017-700695  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-14 
確定日 2018-02-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6060539号発明「感光性樹脂組成物」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6060539号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6060539号の請求項1-請求項4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6060539号の請求項1-請求項4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願は,特願2012-146485号として平成24年6月29日(先の出願に基づく優先権主張 平成23年7月8日)に出願され,平成28年12月22日に特許権の設定登録がされたものである。
本件特許について平成29年1月18日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成29年7月14日に,特許異議申立人渡邉規雄から特許異議の申立てがされた(異議2017-700695号)。

その後の手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成29年 9月25日付け:取消の理由の通知
平成29年11月24日付け:訂正請求書の提出
(この訂正請求書による訂正の請求を,以下「本件訂正請求」という。)
平成29年11月24日付け:意見書の提出(特許権者)
平成30年 1月 4日付け:意見書の提出(特許異議申立人)
(この意見書を,以下「特許異議申立人意見書」という。)

第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1) 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は,特許第6060539号の特許請求の範囲を本請求書(平成29年11月24日付け訂正請求書)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1-4について訂正することを求める,というものである。

(2) 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正は,下記のとおりである(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。)。



特許請求の範囲の請求項1に「式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して,30?100質量%である感光性樹脂組成物」と記載されているのを,「式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して,50?100質量%である感光性樹脂組成物」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項4も同様に訂正する。)。

2 訂正の適否
(1) 120条の5第4項について
本件訂正請求は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である,〔請求項1-請求項4〕ごとにされたものである。

(2) 訂正について
訂正は,本件特許の願書に添付した明細書の【0092】の記載に基づいて,訂正前の請求項1に係る発明の「式(1)で表される化合物の含有量」を,重合開始剤(C)の総量に対して,「30?100質量%」の範囲から「50?100質量%」の範囲に限定して,訂正後の請求項1に係る発明とする訂正である。また,請求項1の記載の訂正にともない連動して訂正されることになる請求項2-請求項4に係る発明についても,同様である。
したがって,訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3) 小括
以上のとおりであるから,訂正は,特許法120条の5第2項ただし書,同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。また,本件訂正請求は,同法120条の5第4項の規定にも適合する。
よって,結論のとおり訂正することを認める。

第3 当合議体が通知した取消の理由について
1 本件特許発明について
前記「第2」のとおり,本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって,本件特許の請求項1-請求項4に係る発明は,本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1-請求項4に記載された事項により特定されるとおりの,以下のものである(以下「本件特許発明1」-「本件特許発明4」といい,総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含み,
樹脂が,不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と,炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位とを有する重合体であり,
重合開始剤が式(1)で表される化合物を含む重合開始剤であり,
式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して,50?100質量%である感光性樹脂組成物。

[式(1)中,R^(a1)及びR^(a2)は,それぞれ独立に,R^(a11),OR^(a11),COR^(a11),SR^(a11),CONR^(a12)R^(a13)又はCNを表し,
R^(a11),R^(a12)及びR^(a13)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a11),R^(a12)またはR^(a13)で表わされる基の水素原子は,OR^(a21),COR^(a21),SR^(a21),NR^(a22)R^(a23),CONR^(a22)R^(a23),-NR^(a22)-OR^(a23),-N(COR^(a22))-OCOR^(a23),-C(=N-OR^(a21))-R^(a22),-C(=N-OCOR^(a21))-R^(a22),CN,ハロゲン原子,又はCOOR^(a21)で置換されていてもよく,
R^(a21),R^(a22)及びR^(a23)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基の水素原子は,CN,ハロゲン原子,ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよく,
R^(a11),R^(a12),R^(a13),R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキレン部分を有する場合,該アルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(a24)-,-NR^(a24)CO-,-NR^(a24)COO-,-OCONR^(a24)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,
R^(a24)は,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアリールアルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a11),R^(a12),R^(a13),R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は,分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,また,R^(a12)とR^(a13)及びR^(a22)とR^(a23)はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく,
R^(a3)及びR^(a4)は,それぞれ独立に,R^(a11),OR^(a11),SR^(a11),COR^(a11),CONR^(a12)R^(a13),NR^(a12)COR^(a11),OCOR^(a11),COOR^(a11),SCOR^(a11),OCSR^(a11),COSR^(a11),CSOR^(a11),CN又はハロゲン原子を表し,
s及びtは,それぞれ独立に,0?4の整数を表し,
Lは,酸素原子,硫黄原子,セレン原子,CR^(a31)R^(a32),CO,NR^(a33)又はPR^(a34)を表し,
R^(a31),R^(a32),R^(a33)及びR^(a34)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し,
R^(a31),R^(a32),R^(a33)またはR^(a34)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は,分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,R^(a31),R^(a32),R^(a33)及びR^(a34)は,それぞれ独立に,隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく,
R^(a5)は,ヒドロキシ基,カルボキシ基又は式(2)

(式(2)中,L^(1)は,-O-,-S-,-NR^(a22)-,-NR^(a22)CO-,-SO_(2)-,-CS-,-OCO-又は-COO-を表し,
L^(2)は,炭素数1?20のアルキル基からv個の水素原子を除いた基,炭素数6?30のアリール基からv個の水素原子を除いた基,炭素数7?30のアラルキル基からv個の水素原子を除いた基又は炭素数2?20の複素環基からv個の水素原子を除いた基を表し,
L^(2)で表される基がアルキレン部分を有する場合,該アルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(a22)-,-NR^(a22)COO-,-OCONR^(a22)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,該アルキレン部分は分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,
R^(a6)は,OR^(a41),SR^(a41),CONR^(a42)R^(a43),NR^(a42)COR^(a43),OCOR^(a41),COOR^(a41),SCOR^(a41),OCSR^(a41),COSR^(a41),CSOR^(a41),CN又はハロゲン原子を表し,
R^(a41),R^(a42)及びR^(a43)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し,R^(a41),R^(a42)及びR^(a43)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,R^(a42)とR^(a43)は,一緒になって環を形成していてもよく,
vは1?3の整数を表す。)
で表される基を表す。]

【請求項2】
炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位が,式(I)又は式(II)で表される化合物に由来する構造単位である請求項1記載の感光性樹脂組成物。

[式(I)及び式(II)中,R^(a)及びR^(b)は,互いに独立に,水素原子,又は炭素数1?4のアルキル基を表し,該アルキル基に含まれる水素原子は,ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
X^(a)及びX^(b)は,互いに独立に,単結合,-R^(c)-,*-R^(c)-O-,*-R^(c)-S-,*-R^(c)-NH-を表す。
R^(c)は,炭素数1?6のアルカンジイル基を表す。
*は,Oとの結合手を表す。]

【請求項3】
請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物により形成されたパターン。

【請求項4】
請求項3記載のパターンを含む表示装置。」

2 取消の理由の概要
平成29年9月25日付けで特許権者に通知した取消の理由は,概略,訂正前の請求項1-請求項4に係る発明の式(1)で表される化合物の含有量の数値範囲(30?100質量%)のうち,75%未満に関しては,実施例による裏付けがないから,特許権者の釈明を待たなければ,発明が解決しようとする課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内と解することができない,というものである。

3 当合議体の判断
(1) 本件特許の発明の詳細な説明の【0001】-【0007】には,以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示パネル等では,フォトスペーサやオーバーコートを形成するために,感光性樹脂組成物が用いられる。このような感光性樹脂組成物としては,重合開始剤としてN-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミンを含む組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-181087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,従来から提案されている感光性樹脂組成物では,得られるパターンの幅の露光量依存性(露光マージン)は,必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,以下の発明を含む。
[1]樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含み,
樹脂が,不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を有する重合体であり,
重合開始剤が式(1)で表される化合物を含む重合開始剤である感光性樹脂組成物。

…(省略)…
【0006】
[2]樹脂が,さらに,炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位を有する共重合体である[1]記載の感光性樹脂組成物。
[3][1]又は[2]記載の感光性樹脂組成物により形成されるパターン。
[4][3]記載のパターンを含む表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,パターン形成時の露光マージンが広い感光性樹脂組成物を提供することが可能となる。」

(2) したがって,以上の記載から外形的に理解される,本件特許発明の発明が解決しようとする課題は,上記【0004】に記載された,「従来から提案されている感光性樹脂組成物では,得られるパターンの幅の露光量依存性(露光マージン)は,必ずしも十分に満足できない場合があった。」と解されるところである。また,ここでいう「従来から提案されている感光性樹脂組成物」とは,【0002】に記載の「重合開始剤としてN-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミンを含む組成物」と解されるところである。
しかしながら,本件特許発明の構成は,上記【0005】及び【0006】に記載のものとは一致しない。本件特許に関しては,審査官の拒絶の理由(平成28年2月18日付け拒絶理由通知書に理由3として記載された,本件特許発明の式(1)の要件を満たす化合物を含む重合開始剤が記載された刊行物(甲1)を引用発明とする29条2項の拒絶の理由)に対して,樹脂の構造単位及び式(1)で表される化合物の含有量を特定する補正(平成29年6月29日付け手続補正書による補正,以下「本件補正」という。)がされという経緯がある。
そうしてみると,上記【0004】に記載の課題は,本件補正前の請求項1-請求項4に係る発明についての課題と解するのが相当である。また,本件補正の内容についてみると,樹脂の構造単位は,本件補正前の請求項2に記載されていた事項である。したがって,本件補正によって実質的に新たに加えられた構成は,式(1)で表される化合物の含有量と解するのが相当である。

そこで,式(1)で表される化合物の含有量に関して,本件特許の発明の詳細な説明の記載を参酌すると,以下のとおりである。
すなわち,本件特許の発明の詳細な説明の【0144】-【0160】には,実施例1-実施例5,並びに,比較例1及び比較例2が開示されている。
(当合議体注:各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物の組成は,【0151】の表1において,次のとおり示されている。なお,表1でいう「重合開始剤(C)」は,本件特許発明でいう「重合開始剤(C)」ではなく,「従来から提案されている感光性樹脂組成物」に含まれる重合開始剤,すなわち,N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミンのことである。)

(当合議体注:各実施例及び各比較例の露光マージン(露光依存性)は,【0159】の表2において,次のとおり示されている。)

また,【0160】には,次の記載がある。
「【0160】
表2に示すとおり,化合物(1)を含む感光性樹脂組成物は,露光量依存性の値が小さいことから,露光マージンが広いことが確認された。」

これら記載からは,以下の事項が認識できる。
[A] 式(1)で表される化合物を含む感光性樹脂組成物は,従来から提案されている感光性樹脂組成物よりも,広い露光マージンが得られる(実施例1-実施例5及び比較例1)。
[B] 式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して100質量%である場合には,本件特許発明の課題が解決できる(実施例1,実施例2,実施例4及び実施例5)。
[C] 式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して75質量%である場合にも,本件特許発明の課題が解決でき,かつ,100%の場合と同等の露光マージンが得られる(実施例3)。
[D] 式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して0質量%である場合には,本件特許発明の課題が解決できない(比較例1)。
[E] 式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して25質量%である場合には,露光マージンに改善がみられるものの,本件特許の評価基準では「露光マージンが広い」と評価されない(比較例2)。

以上勘案すると,本件特許発明が解決しようとする課題は,上記【0004】に記載された「従来から提案されている感光性樹脂組成物では,得られるパターンの幅の露光量依存性(露光マージン)は,必ずしも十分に満足できない場合があった。」というものに加えて,「本件特許の評価基準において露光マージンが広いと評価されること。」と解するのが相当である。

(3) 本件特許の発明の詳細な説明には,式(1)で表される化合物の含有量が75%未満において,本件特許発明の発明が解決しようとする課題が解決できることを示す具体的な実施例は記載されていない。また,式(1)で表される化合物のうち,本件特許発明の発明が解決しようとする課題が解決できることが確認されている化合物は,【0152】に記載された1種類のみであり,感光性樹脂組成物の種類も限られたものである。
しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明の【0092】には,「化合物(1)の含有量は,重合開始剤(C)の総量に対して,好ましくは30?100質量%,より好ましくは50?100質量%である。化合物(1)の含有量が前記の範囲内にあると,パターン製造時の露光マージンが広い傾向がある。」と記載されている。そして,訂正により,式(1)で表される化合物の含有量の数値範囲は50?100質量%となった。また,式(1)で表される化合物の含有量が大きくなるにつれて,式(1)で表される化合物による効果が徐々に現れることは,技術的にみて明らかであるところ,露光マージンが広いと評価される本件特許の評価基準をどこにおくかは,特許権者の随意である。
そうしてみると,本件特許においては,たとえ実施例の数が必ずしも十分であるとはいえないとしても,本件特許の発明の詳細な説明の記載を技術常識に基づいて理解した当業者ならば,本件特許発明を,発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えないものとして理解することができる。

(4) 以上のとおりであるから,本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載したものである。

(5) 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,特許異議申立人意見書において,概略,実施例からは,式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して25質量%の場合には効果が全く得られておらず,75質量%の場合には露光依存度が低いことが確認されるのみであるから,露光依存度が低下する下限の臨界点は30質量%のときかもしれないし,50質量%のときかもしれないし,70%のときかもしれないと主張する。
しかしながら,式(1)で表される化合物の含有量が大きくなるにつれて,式(1)で表される化合物による効果が徐々に現れることは,技術的にみて明らかである。そして,露光マージンが広いと評価される本件特許の評価基準をどこにおくかは,特許権者の随意である。
したがって,特許異議申立人の主張は採用できない。

(6) 小括
本件特許は,当合議体が通知した取消の理由によっては,もはや特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。

第4 当合議体において採用しなかった取消の理由について
1 特許法29条2項について
(1) 甲1の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1(特開2011-132215号公報)には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物。
【化1】

(式中,R^(1)及びR^(2)は,それぞれ独立に,R^(11),OR^(11),COR^(11),SR^(11),CONR^(12)R^(13)又はCNを表し,
R^(11),R^(12)及びR^(13)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基,炭素原子数7?30のアリールアルキル基又は炭素原子数2?20の複素環基を表し,
R^(11),R^(12)及びR^(13)で表わされる置換基の水素原子は,更にOR^(21),COR^(21),SR^(21),NR^(22)R^(23),CONR^(22)R^(23),-NR^(22)-OR^(23),-NCOR^(22)-OCOR^(23),-C(=N-OR^(21))-R^(22),-C(=N-OCOR^(21))-R^(22),CN,ハロゲン原子,又はCOOR^(21)で置換されていてもよく,
R^(21),R^(22)及びR^(23)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基,炭素原子数7?30のアリールアルキル基又は炭素原子数2?20の複素環基を表し,
R^(21),R^(22)及びR^(23)で表される置換基の水素原子は,更にCN,ハロゲン原子,水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく,
R^(11),R^(12),R^(13),R^(21),R^(22)及びR^(23)で表される置換基のアルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(24)-,-NR^(24)COO-,-OCONR^(24)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,
R^(24)は,水素原子,炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基,炭素原子数7?30のアリールアルキル基又は炭素原子数2?20の複素環基を表し, R^(11),R^(12),R^(13),R^(21),R^(22)及びR^(23)で表される置換基のアルキル部分は,分岐側鎖があってもよく,環状アルキルであってもよく,また,R^(12)とR^(13)及びR^(22)とR^(23)はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく,
R^(3)及びR^(4)は,それぞれ独立に,R^(11),OR^(11),SR^(11),COR^(11),CONR^(12)R^(13),NR^(12)COR^(11),OCOR^(11),COOR^(11),SCOR^(11),OCSR^(11),COSR^(11),CSOR^(11),CN又はハロゲン原子を表し,
a及びbは,それぞれ独立に,0?4の整数を表し,
Xは,酸素原子,硫黄原子,セレン原子,CR^(31)R^(32),CO,NR^(33)又はPR^(34)を表し, R^(31),R^(32),R^(33)及びR^(34)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基又は炭素原子数7?30のアリールアルキル基を表し,
R^(31),R^(32),R^(33)及びR^(34)で表される置換基のアルキル部分は,分岐側鎖があってもよく,環状アルキルであってもよく,R^(31),R^(32),R^(33)及びR^(34)は,それぞれ独立に,隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく,
R^(5)はOH,COOH又は下記一般式(II)で表される基を表す。)
【化2】

(式中,Z^(1)は,結合手であって,-O-,-S-,-NR^(22)-,-NR^(22)CO-,-SO_(2)-,-CS-,-OCO-又は-COO-を表し,
Z^(2)は,結合手であって,1?3のR^(6)で置換された炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基,炭素原子数7?30のアリールアルキル基又は炭素原子数2?20の複素環基を表し,
Z^(2)で表される結合手のアルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(22)-,-NR^(22)COO-,-OCONR^(22)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,Z^(2)で表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく,環状アルキレンであってもよく,
R^(6)は,OR^(41),SR^(41),CONR^(42)R^(43),NR^(42)COR^(43),OCOR^(41),COOR^(41),SCOR^(41),OCSR^(41),COSR^(41),CSOR^(41),CN又はハロゲン原子を表し,
R^(41),R^(42)及びR^(43)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素原子数1?20のアルキル基,炭素原子数6?30のアリール基又は炭素原子数7?30のアリールアルキル基を表し,R^(41),R^(42)及びR^(43)で表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく,環状アルキルであってもよく,R^(42)とR^(43)は,一緒になって環を形成していてもよく,
cは1?3の整数を表す。)
…(省略)…
【請求項7】
請求項1?6の何れか1項に記載のオキシムエステル化合物を含有する光重合開始剤。
【請求項8】
請求項7に記載の光重合開始剤に,エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有させてなる感光性組成物。
…(省略)…
【請求項10】
請求項8に記載の感光性組成物に,エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物を含有させてなるアルカリ現像性感光性樹脂組成物。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,感光性組成物に用いられる光重合開始剤として有用な新規なオキシムエステル化合物,該化合物を含有する光重合開始剤,並びに該光重合開始剤にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有させてなる感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物は,エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり,エネルギー線(光)を照射することによって重合硬化させることができるため,光硬化性インキ,感光性印刷版,各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
上記感光性組成物に用いられる光重合開始剤として,下記特許文献1?11には,オキシムエステル化合物を用いることが提案されている。
しかし,上記特許文献に記載のオキシムエステル化合物のうち,感度が満足できるオキシムエステル化合物は,可視光領域の透過率が低く,カラーフィルタで所望する色が得られないという問題(特に,保護膜のような透明な感光性組成物や,青色の顔料又は色素を用いたカラーフィルタ向けレジストでは380?450nmに吸収を持つ化合物が混在すると明度,色純度が低下する)があり,また,可視光領域の透過率が高いオキシムエステル化合物は,感度が十分満足できるものではないという問題があり,両特性を兼ね備える光重合開始剤が求められていた。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は,満足できる感度を有し,且つ可視光領域の透過率が高い光重合開始剤がこれまでなかったということである。
【0007】
従って,本発明の目的は,安定性に優れ,低昇華性であり,現像性に優れ,可視光領域の透過率が高く,365nm等の近紫外光を効率よく吸収し活性化される高感度の光重合開始剤として有用な新規な化合物及び該化合物を用いた光重合開始剤並びに感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,下記一般式(I)で表される新規なオキシムエステル化合物,及び該化合物を含有する光重合開始剤を提供することにより,上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

…(省略)…
【0010】
また,本発明は,上記光重合開始剤に,エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有させてなる感光性組成物を提供するものである。
また,本発明は,上記感光性組成物に,エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物を含有させてなるアルカリ現像性感光性樹脂組成物を提供するものである。
…(省略)…
【発明の効果】
【0012】
本発明のオキシムエステル化合物は,可視光領域の透過率が高く,低昇華性であり,現像性に優れ,365nm(i線)等の輝線に対して効率よくラジカルを発生させ,感光性組成物に用いられる光重合開始剤として有用なものである。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明のオキシムエステル化合物及び該化合物を含有する光重合開始剤について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0014】
本発明のオキシムエステル化合物は,上記一般式(I)で表わされる新規な化合物である。該オキシムエステル化合物には,オキシムの二重結合による幾何異性体が存在するが,これらを区別するものではない。
…(省略)…
【0031】
従って,上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物の好ましい具体例としては,以下の化合物No.1?No.108が挙げられる。但し,本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
…(省略)…
【0035】
【化8】

…(省略)…
【0049】
以上説明した本発明の新規なオキシムエステル化合物は,光重合開始剤として有用である。
【0050】
本発明の光重合開始剤は,本発明のオキシムエステル化合物を少なくとも一種含有するものであり,特にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の光重合開始剤として有用なものである。また本発明の光重合開始剤中における本発明のオキシムエステル化合物の含有量は,好ましくは30?100質量%,より好ましくは50?100質量%である。
【0051】
本発明の感光性組成物は,必須成分として,本発明の光重合開始剤及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有し,任意成分として,エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物,無機化合物,色材,溶媒等の成分を組み合わせて含有するものである。
【0052】
上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては,特に限定されず,従来,感光性組成物に用いられているものを用いることができるが,例えば,エチレン,プロピレン,ブチレン,イソブチレン,塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニリデン,テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸,α?クロルアクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,シトラコン酸,フマル酸,ハイミック酸,クロトン酸,イソクロトン酸,ビニル酢酸,アリル酢酸,桂皮酸,ソルビン酸,メサコン酸,コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル],フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル],ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート,ジシクロペンタジエン・マレート或いは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル,(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル,(メタ)アクリル酸グリシジル,下記化合物No.A1?No.A4,(メタ)アクリル酸メチル, (メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸-t-ブチル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸n-オクチル,(メタ)アクリル酸イソオクチル,(メタ)アクリル酸イソノニル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸アミノプロピル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル,(メタ)アクリル酸エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸フェノキシエチル,(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル,(メタ)アクリル酸ビニル,(メタ)アクリル酸アリル,(メタ)アクリル酸ベンジル,エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート,トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート,ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛,(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物,イタコン酸無水物,シトラコン酸無水物,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸,5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物,トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物,ドデセニル無水コハク酸,無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド,メチレンビス-(メタ)アクリルアミド,ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド,キシリレンビス(メタ)アクリルアミド,α-クロロアクリルアミド,N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル,α-クロロアクリロニトリル,シアン化ビニリデン,シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン,4-メチルスチレン,4-エチルスチレン,4-メトキシスチレン,4-ヒドロキシスチレン,4-クロロスチレン,ジビニルベンゼン,ビニルトルエン,ビニル安息香酸,ビニルフェノール,ビニルスルホン酸,4-ビニルベンゼンスルホン酸,ビニルベンジルメチルエーテル,ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン,アリルアミン,N-ビニルピロリドン,ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール,クロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル,ビニルエチルエーテル,n-ブチルビニルエーテル,イソブチルビニルエーテル,アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド,N-フェニルマレイミド,N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン,1-メチルインデン等のインデン類;1,3-ブタジエン,イソプレン,クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン,ポリメチル(メタ)アクリレート,ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート,ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド,ビニリデンクロリド,ジビニルスクシナート,ジアリルフタラート,トリアリルホスファート,トリアリルイソシアヌラート,ビニルチオエーテル,ビニルイミダゾール,ビニルオキサゾリン,ビニルカルバゾール,ビニルピロリドン,ビニルピリジン,水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物,水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物が挙げられる。
これらの中でも,両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート,1個のカルボキシ基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート,不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステルに,本発明のオキシムエステル化合物を含有する光重合開始剤は好適である。
これらの重合性化合物は,単独で又は2種以上を混合して使用することができ,また2種以上を混合して使用する場合には,それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
【化24】

【0057】
上記エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物としては,アルカリ水溶液に可溶であれば特に限定されないが,例えば,特開2004-264414号公報に記載の樹脂等が挙げられる。
【0058】
また,上記エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物としては,アクリル酸エステルの共重合体や,フェノール及び/又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂,多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂,エポキシアクリレート樹脂,下記一般式(IV)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ化合物に,不飽和一塩基酸を作用させ,更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂を用いることができる。
これらの中でも,下記一般式(IV)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ化合物に,不飽和一塩基酸を作用させ,更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂が好ましい。
また,上記エチレン性不飽和結合を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物は,不飽和基を0.2?1.0当量含有していることが好ましい。
【0059】
【化25】

(式中,X^(1)は直接結合,メチレン基,炭素原子数1?4のアルキリデン基,炭素原子数3?20の脂環式炭化水素基,O,S,SO_(2),SS,SO,CO,OCO又は下記〔化26〕,〔化27〕若しくは〔化28〕で表される置換基を表し,上記アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよく,R^(51),R^(52),R^(53)及びR^(54)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素原子数1?5のアルキル基,炭素原子数1?8のアルコキシ基,炭素原子数2?5のアルケニル基又はハロゲン原子を表し,上記アルキル基,アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく,mは0?10の整数であり,mが0で無いときに存在する光学異性体は,どの異性体でもよい。)
【0060】
【化26】

(式中,Z^(3)は水素原子,炭素原子数1?10のアルキル基若しくは炭素原子数1?10のアルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基,又は炭素原子数1?10のアルキル基若しくは炭素原子数1?10のアルコキシ基により置換されていてもよい炭素原子数3?10のシクロアルキル基を示し,Y^(1)は炭素原子数1?10のアルキル基,炭素原子数1?10のアルコキシ基,炭素原子数2?10のアルケニル基又はハロゲン原子を示し,上記アルキル基,アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく,dは0?5の整数である。)
【0061】
【化27】

【0062】
【化28】

(式中,Y^(2)及びZ^(4)は,それぞれ独立して,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1?10のアルキル基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6?20のアリール基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6?20のアリールオキシ基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6?20のアリールチオ基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6?20のアリールアルケニル基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7?20のアリールアルキル基,ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2?20の複素環基,又はハロゲン原子を表し,上記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキレン部分は,不飽和結合,-O-又は-S-で中断されていてもよく,Z^(4)は,隣接するZ^(4)同士で環を形成していてもよく,pは0?4の整数を表し,qは0?8の整数を表し,rは0?4の整数を表し,sは0?4の整数を表し,rとsの数の合計は2?4の整数である。)
【0063】
上記エポキシ化合物に作用させる上記不飽和一塩基酸としては,アクリル酸,メタクリル酸,クロトン酸,桂皮酸,ソルビン酸,ヒドロキシエチルメタクリレート・マレート,ヒドロキシエチルアクリレート・マレート,ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート,ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート,ジシクロペンタジエン・マレート等が挙げられる。
【0064】
また,上記不飽和一塩基酸を作用させた後に作用させる上記多塩基酸無水物としては,ビフェニルテトラカルボン酸二無水物,テトラヒドロ無水フタル酸,無水コハク酸,ビフタル酸無水物,無水マレイン酸,トリメリット酸無水物,ピロメリット酸無水物,2,2'-3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物,エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート,グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート,ヘキサヒドロ無水フタル酸,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,ナジック酸無水物,メチルナジック酸無水物,トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物,トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物,ドデセニル無水コハク酸,無水メチルハイミック酸等が挙げられる。
【0065】
上記エポキシ化合物,上記不飽和一塩基酸及び上記多塩基酸無水物の反応モル比は,以下の通りとすることが好ましい。
即ち,上記エポキシ化合物のエポキシ基1個に対し,上記不飽和一塩基酸のカルボキシル基が0.1?1.0個で付加させた構造を有するエポキシ付加物において,該エポキシ付加物の水酸基1個に対し,上記多塩基酸無水物の酸無水物構造が0.1?1.0個となる比率となるようにするのが好ましい。
上記エポキシ化合物,上記不飽和一塩基酸及び上記多塩基酸無水物の反応は,常法に従って行なうことができる。
【0066】
本発明の感光性組成物の実施態様の一つである,本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物は,必須成分として,本発明の光重合開始剤と,エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と,エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物とを含有し,任意成分として,無機化合物,色材,溶媒等の成分を組み合わせて含有するものである。尚,本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物のうち,色材を含有するものを,特に,本発明の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物ともいう。
上記のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と,上記のエチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物とは同一の化合物であってもよく,異なっていても良く,また,単独であっても2種以上を併用してもよい。
…(省略)…
【0100】
本発明の感光性組成物は,液晶表示パネル用のスペーサーを形成する目的及び垂直配向型液晶表示素子用突起を形成する目的で使用することもできる。特に垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを同時に形成するための感光性組成物として有用である。
【0101】
上記の液晶表示パネル用スペーサーは,(1)本発明の感光性組成物の塗膜を基板上に形成する工程,(2)該塗膜に所定のパターン形状を有するマスクを介して放射線を照射する工程,(3)露光後のベーク工程,(4)露光後の該被膜を現像する工程,(5)現像後の該被膜を加熱する工程により好ましく形成される。
…(省略)…
【実施例】
【0108】
以下,実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0109】
〔実施例1〕化合物No.2の製造
【0110】
<ステップ1>アシル化
ジクロロエタン92gと塩化アルミ21.7g(163 mmol)の溶液に,4-(フェニルチオ)安息香酸15g(65mmol)を加え,次いで,6℃以下でプロピオニルクロライド9.0g(97mmol)を滴下した。1時間攪拌後,反応液を氷水に注ぎ,酢酸エチルを加え油水分離し,有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,脱溶媒しアシル体aを18.7g得た。
【0111】
【化35】

【0112】
<ステップ2>オキシム化
上記<ステップ1>で得られたアシル体aの10.0g(35mmol)と濃塩酸3.6g(35mmol)とジメチルホルムアミド30gの溶液に,亜硝酸イソブチル5.4g(52mmol)を加え,室温で3.5時間攪拌した。攪拌後,反応液に,酢酸エチルと水を加え油水分離し,有機層を水で洗浄した。固体の析出した有機層にヘキサンを加え,ろ過した。得られた固体を減圧乾燥し,オキシム体aを8.6g得た。
【0113】
【化36】

【0114】
<ステップ3>オキシムエステル化
上記<ステップ2>で得られたオキシム体aの4.0g(13mmol)と,ピリジン2.1g(27mmol)とジメチルホルムアミド12gの溶液を,-10℃以下の状態にし,無水酢酸1.6g(15mmol)を滴下し,滴下後5℃で2時間攪拌した。攪拌後,反応液に,酢酸エチルと水を加え油水分離し,有機層を水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,脱溶媒し,本発明の化合物No.2を4.5g得た。分析結果を〔表1〕?〔表3〕に示す。
…(省略)…
【0120】
〔実施例6〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
<ステップ1>アルカリ現像性樹脂の製造
反応容器に,ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量231)184g,アクリル酸58g,2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.26g,テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.11g及びプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート23gを仕込み,120℃で16時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し,プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート35g,ビフタル酸無水物59g及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて,120℃で4時間攪拌した。4時間攪拌後,更に,テトラヒドロ無水フタル酸20gを加え,120℃で4時間,100℃で3時間,80℃で4時間,60℃で6時間,40℃で11時間攪拌した後,プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート90gを加えて,目的物のプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート溶液としてアルカリ現像性樹脂No.1を得た(Mw=5000,Mn=2100,酸価(固形分)92.7mgKOH/g)。
<ステップ2>アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の調製
実施例6の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の14.7g,ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM-402;東亜合成(株)製)3.0g,界面活性剤FZ-2122(日本ユニカー(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液1.8g,プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート10.0g,並びにシクロヘキサノン20.2gを混合し,実施例1で得られた化合物No.2の0.3gを添加してよく攪拌し,本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1を得た。
…(省略)…
【0128】
〔実施例9〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
<ステップ1>青色分散液の製造
青色顔料ピグメントブルー15:6の57.6g,分散剤アジスパーPB821(味の素ファインテクノ(株)製)20.0g,分散助剤ソルスパース5000(アビシア(株)製)2.4g,及びプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート320.0gを,500mlポリエチレン製容器に入れ,粒子径0.5mmのジルコニアビーズ350gを使用して,ペイントコンディショナーで10時間振とう後,ジルコニアビーズをろ別して青色分散液を得た。
<ステップ2>着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
上記<ステップ1>で得られた青色分散液の10.63g,実施例6の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の2.98g,ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM-402;東亜合成(株)製)0.31g,ウレタンアクリレートUN3320HS(根上工業(株)製)0.31g,界面活性剤BYK-323(ビックケミー・ジャパン(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液0.30g,プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート4.70g,並びにシクロヘキサノン10.36gを混合し,実施例1で得られた化合物No.2の0.41gを添加して攪拌し,本発明の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1を得た。
…(省略)…
【0134】
<透過性>
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1?No.4の透過性試験を以下のようにして行った。
即ち,ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm,7秒間)し,ホットプレートを用いて,90℃で,90秒間プリベークを行った。光源として高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm^(2)露光し,オーブンを用いて,230℃で,30分間ポストベークを行った。吸光光度計を用いて420nmにおける透過率を測定した。結果を〔表5〕に示す
【0135】
【表5】

【0136】
上記〔表5〕より,本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤として含有する実施例9及び10の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物は,本発明のオキシムエステル化合物とは構造が異なる化合物を光重合開始剤として含有する比較例3及び4の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物に比較して,透過率が高いことが明らかである。
…(省略)…
【0146】
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.7?12のフォトリソグラフィー性の評価を以下のようにして行った。
即ち,ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm,7秒間)し,ホットプレートを用いて,90℃で,90秒間プリベークを行い,光源として高圧水銀ランプを用いてマスクを介して所定量露光した。現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い,スピン現像機で45秒間現像後,よく水洗し,オーブンを用いて,230℃で,30分ポストベークを行いパターンを定着させ,以下の項目について評価した。試験結果を〔表7〕に示す。
<感度>
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の感度を,次の4段階で評価した。
即ち,形成されたパターンの線幅が,マスク開口線幅を超えた時の露光量が50mJ/cm^(2)であった場合をa,100mJ/cm^(2)であった場合をb,150mJ/cm^(2)であった場合をc,150mJ/cm^(2)でもパターンが形成されなかった場合をdとした。
<密着性>
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の密着性を,次の4段階で評価した。
即ち,100mJ/cm^(2)で露光,現像した後に残ったパターンの最も細かいマスク線幅が3μm以下であった場合をA,10μm以下であった場合をB,15μm以下であった場合をC,30μm以上であった場合をDとした。
<残渣>
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の残渣を,次の2段階で評価した。
即ち,現像後,ガラス面に残渣が全く観察されなかった場合を○,一面に残渣が観察された場合を×とした。
【0147】
【表7】

【0148】
上記〔表7〕より,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例7で用いた化合物と比較して,残渣が確認されないため現像性に優れる。また,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例8?10で用いた化合物と比較して,感度・密着性に優れることは明らかである。
【0149】
以上の結果から,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例2,3及び7で用いた化合物と比較して,可視光領域の透過性及び現像性に優れる。
また,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例4及び8で用いた化合物と比較して,可視光領域の透過性,耐熱性,感度及び密着性に優れる。
また,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例5及び9で用いた化合物と比較して,耐熱性,感度及び密着性に優れる。
また,本発明のオキシムエステル化合物は,比較例1,6及び10で用いた化合物と比較して,可視光領域の透過性,耐熱性,感度及び密着性に優れる。
【0150】
よって,本発明のオキシムエステル化合物は,可視光領域の透過性が高く,耐熱性に優れ,フォトリソグラフィー性に優れているため,光重合開始剤として有用なものである。」

(2) 甲1発明
ア 甲1発明A
甲1には,請求項1の記載,請求項7の記載,及び請求項8の記載を引用して記載された請求項10に係る,アルカリ現像性感光性樹脂組成物の発明が記載されている。また,甲1の【0035】には,【請求項1】に係る発明のオキシムエステル化合物の具体例として,化合物No.26のオキシムエステル化合物が開示されている(当合議体注:化合物No.26のオキシムエステル化合物は,本件特許発明1の実施例(【0152】)の化合物(1)である。)。
ここで,甲1の【0050】には,「本発明の光重合開始剤中における本発明のオキシムエステル化合物の含有量は,好ましくは30?100質量%,より好ましくは50?100質量%である。」と記載されている。
そうしてみると,甲1には,次の発明が記載されている(以下「甲1発明A」という。)。
「 下記化合物No.26のオキシムエステル化合物を含有する光重合開始剤に,エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有させ,さらに,エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物を含有させてなり,
光重合開始剤中における下記化合物No.26のオキシムエステル化合物の含有量は50?100質量%である,
アルカリ現像性感光性樹脂組成物。
化合物No.26:



イ 甲1発明B
甲1の【0100】には,甲1発明Aのアルカリ現像性感光性樹脂組成物を,液晶表示パネル用のスペーサーを形成する目的で使用することができることが記載されている。
そうしてみると,甲1には,以下の発明も記載されている(以下「甲1発明B」という。)。
「 甲1発明Aのアルカリ現像性感光性樹脂組成物により形成された,
液晶表示パネル用のスペーサー。」

ウ 甲1発明C
液晶表示パネルが表示装置として組み立てられることは,自明である。
そうしてみると,甲1には,以下の発明も記載されている(以下「甲1発明C」という。)。
「 甲1発明Bの液晶表示パネル用のスペーサーを含む表示装置。」

(3) 対比
本件特許発明1と甲1発明Aを対比すると,以下のとおりとなる。
ア 感光性樹脂組成物
甲1発明Aの「アルカリ現像性感光性樹脂組成物」は,その名のとおり「アルカリ現像性」の「感光性樹脂組成物」であるから,本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に該当する。

イ 樹脂
甲1発明Aの「エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物」は,甲1発明Aの「アルカリ現像性感光性樹脂組成物」において,「アルカリ現像性」の「感光性樹脂」として機能するものである(【0057】の記載からも理解できる事項である。)。
そうしてみると,甲1発明Aの「エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物」は,本件特許発明1の「樹脂」に該当する。

ウ 重合性化合物
甲1発明Aの「エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物」は,その名のとおり「重合性化合物」であるから,本件特許発明1の「重合性化合物」に該当する。

エ 重合開始剤
甲1発明Aの「化合物No.26のオキシムエステル化合物」は,「光重合開始剤」であるから,本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。また,甲1発明Aの「化合物No.26のオキシムエステル化合物」は,本件特許発明1の式(1)において,「L」が「硫黄原子」,「R^(a1)」及び「R^(a2)」が「炭素数1のアルキル基」,s=0,t=0,「R^(a5)」が「式(2)」であり,また,式(2)において,「L^(1)」が「-O-」,「L^(2)」が「炭素数2のアルキル基からv個の水素原子を除いた基」,v=1,「R^(a6)」が「OR^(a41)」,「OR^(a41)」が「水素原子」であるもの,すなわち,本件特許発明1の実施例(【0152】)の化合物(1)である。そして,甲1発明Aにおいて,「光重合開始剤中における下記化合物No.26のオキシムエステル化合物の含有量は50?100質量%である」。
そうしてみると,甲1発明Aの「化合物No.26のオキシムエステル化合物」は,本件特許発明1の「重合開始剤が式(1)で表される化合物を含む重合開始剤であり」という要件を満たすとともに,「式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して,50?100質量%である」という要件も満たす。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1発明Aは,次の構成で一致する。
「 樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含み,
重合開始剤が式(1)で表される化合物を含む重合開始剤であり,
式(1)で表される化合物の含有量が,重合開始剤(C)の総量に対して,50?100質量%である感光性樹脂組成物。

[式(1)中,R^(a1)及びR^(a2)は,それぞれ独立に,R^(a11),OR^(a11),COR^(a11),SR^(a11),CONR^(a12)R^(a13)又はCNを表し,
R^(a11),R^(a12)及びR^(a13)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a11),R^(a12)またはR^(a13)で表わされる基の水素原子は,OR^(a21),COR^(a21),SR^(a21),NR^(a22)R^(a23),CONR^(a22)R^(a23),-NR^(a22)-OR^(a23),-N(COR^(a22))-OCOR^(a23),-C(=N-OR^(a21))-R^(a22),-C(=N-OCOR^(a21))-R^(a22),CN,ハロゲン原子,又はCOOR^(a21)で置換されていてもよく,
R^(a21),R^(a22)及びR^(a23)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基の水素原子は,CN,ハロゲン原子,ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよく,
R^(a11),R^(a12),R^(a13),R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキレン部分を有する場合,該アルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(a24)-,-NR^(a24)CO-,-NR^(a24)COO-,-OCONR^(a24)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,
R^(a24)は,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基,炭素数7?30のアリールアルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し,
R^(a11),R^(a12),R^(a13),R^(a21),R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は,分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,また,R^(a12)とR^(a13)及びR^(a22)とR^(a23)はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく,
R^(a3)及びR^(a4)は,それぞれ独立に,R^(a11),OR^(a11),SR^(a11),COR^(a11),CONR^(a12)R^(a13),NR^(a12)COR^(a11),OCOR^(a11),COOR^(a11),SCOR^(a11),OCSR^(a11),COSR^(a11),CSOR^(a11),CN又はハロゲン原子を表し,
s及びtは,それぞれ独立に,0?4の整数を表し,
Lは,酸素原子,硫黄原子,セレン原子,CR^(a31)R^(a32),CO,NR^(a33)又はPR^(a34)を表し,
R^(a31),R^(a32),R^(a33)及びR^(a34)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し,
R^(a31),R^(a32),R^(a33)またはR^(a34)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は,分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,R^(a31),R^(a32),R^(a33)及びR^(a34)は,それぞれ独立に,隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく,
R^(a5)は,ヒドロキシ基,カルボキシ基又は式(2)

(式(2)中,L^(1)は,-O-,-S-,-NR^(a22)-,-NR^(a22)CO-,-SO_(2)-,-CS-,-OCO-又は-COO-を表し,
L^(2)は,炭素数1?20のアルキル基からv個の水素原子を除いた基,炭素数6?30のアリール基からv個の水素原子を除いた基,炭素数7?30のアラルキル基からv個の水素原子を除いた基又は炭素数2?20の複素環基からv個の水素原子を除いた基を表し,
L^(2)で表される基がアルキレン部分を有する場合,該アルキレン部分は,-O-,-S-,-COO-,-OCO-,-NR^(a22)-,-NR^(a22)COO-,-OCONR^(a22)-,-SCO-,-COS-,-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく,該アルキレン部分は分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,
R^(a6)は,OR^(a41),SR^(a41),CONR^(a42)R^(a43),NR^(a42)COR^(a43),OCOR^(a41),COOR^(a41),SCOR^(a41),OCSR^(a41),COSR^(a41),CSOR^(a41),CN又はハロゲン原子を表し,
R^(a41),R^(a42)及びR^(a43)は,それぞれ独立に,水素原子,炭素数1?20のアルキル基,炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し,R^(a41),R^(a42)及びR^(a43)で表される基がアルキル部分を有する場合,該アルキル部分は分枝鎖状であってもよく,環状であってもよく,R^(a42)とR^(a43)は,一緒になって環を形成していてもよく,
vは1?3の整数を表す。)
で表される基を表す。]」

イ 相違点
本件特許発明1と甲1発明Aは,次の点で相違する。
(相違点)
本件特許発明1の「樹脂」は,「不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と,炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位とを有する重合体」であるのに対して,甲1発明Aの「エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物」は,これが明らかではない点。

(5) 判断
甲1発明Aの「エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物」に関して,甲1の【0057】には,「上記エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物としては,アルカリ水溶液に可溶であれば特に限定されない」と記載されている。このような非限定的な記載からでは,当業者が前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂に到るということはできない。
また,甲1の【0057】には,上記記載に続いて「例えば,特開2004-264414号公報に記載の樹脂等が挙げられる」と記載されている。ここで,上記公報に記載の樹脂とは,「ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなど」(上記公報の【0030】)であるから,やはり,当業者が前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂に到るともいえない。
さらにまた,甲1の【0058】には「アクリル酸エステルの共重合体や,フェノール及び/又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂,多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂,エポキシアクリレート樹脂」と記載され,【0058】-【0065】には「下記一般式(IV)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ化合物に,不飽和一塩基酸を作用させ,更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂」が好ましい樹脂として記載されている。これら記載も,前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂を示唆するものとはいえないから,やはり,当業者が前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂に到るとはいえない。

甲1の【0066】には,「上記のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と,上記のエチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物とは同一の化合物であってもよく」と記載されている。そこで,甲1発明Aの「エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物」に関して甲1の記載を参照すると,【0052】には,「上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては,特に限定されず,従来,感光性組成物に用いられているものを用いることができる」と記載されている。したがって,たとえ上記【0066】の記載に基づいて,「エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物」に関する【0052】の記載を参照した当業者を仮定したとしても,このような非限定的な記載を手がかりとしては,前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂に到るということはできない。
ところで,甲1の【0052】には,上記記載に続いて,約150種類の化合物が列挙されており,この選択肢の中には,一応,「不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種」や「炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体」に該当する化合物が含まれている。そして,【0052】の末尾には,「これらの重合性化合物は,単独で又は2種以上を混合して使用することができ,また2種以上を混合して使用する場合には,それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい」とも記載されている。しかしながら,これら甲1の記載に基づいて前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂に到るとするためには,当業者が,[A]甲1の【0057】-【0065】の記載を参考にすることなく,[B]【0066】の記載を手がかりにして【0052】に列挙された化合物を参照し,[C]かつ,その化合物の2種以上を混合して使用することとし,[D]さらに,【0052】に列挙された化合物の中から「不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種」及び「炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体」に該当する化合物を選択し,[E]これら化合物を予め共重合して共重合体とすることを仮定する必要がある。
このような仮定に仮定を積み重ねた推考が容易であるとはいえない。

また,甲2-甲8には,「エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物」として前記相違点に係る本件特許発明1の樹脂を使用することについて記載されておらず,また,示唆もされていない。
(当合議体注:甲2-甲8は,それぞれ,特開2010-85929号公報,特開2000-81701号公報,特開2004-240241号公報,特開2005-208360号公報,特開2005-227525号公報,特開2010-107755号公報及び特開2010-134444号公報である。)

以上のとおりであるから,本件特許発明1は,甲1-甲8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということはできない。

(6) 本件特許発明2-本件特許発明4について
本件特許発明2の感光性樹脂組成物は,前記相違点に係る本件特許発明1の構成を具備するものである。また,本件特許発明3は,前記相違点1に係る本件特許発明1の構成を具備する感光性樹脂組成物により形成されたパターンの発明であり,本件特許発明4は,本件特許発明3のパターンを含む表示装置の発明である。
そうしてみると,本件特許発明1と同様の理由により,本件特許発明2-本件特許発明4についても,甲1-甲8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということはできない。

(7) 小括
本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということができない。

2 特許法36条4項1号について
特許異議申立人は,本件特許発明の構成要件の全ての成分の組み合わせについて,実施例1-実施例5の組み合わせの場合と同様の効果を奏することが合理的に推認できるような説明を,本件特許の発明の詳細な説明は何ら開示していないから,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないと主張する。
しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明には,全体としてみて,本件特許発明の感光性樹脂組成物(パターン,表示装置)について明確に説明されており,また,本件特許発明の感光性樹脂組成物(パターン,表示装置)を作ることができるように記載されており,そして,本件特許発明の感光性樹脂組成物(パターン,表示装置)を使用できるように記載されている。加えて,本件特許の発明の詳細な説明には,全体としてみて,発明の属する技術分野が記載され,また,発明が解決しようとする課題及びその解決手段が記載されている。
したがって,本件特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。

第5 まとめ
以上のとおりであるから,当合議体が通知した取消の理由,及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、重合性化合物及び重合開始剤を含み、
樹脂が、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と、炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位とを有する重合体であり、
重合開始剤が式(1)で表される化合物を含む重合開始剤であり、
式(1)で表される化合物の含有量が、重合開始剤(C)の総量に対して、50?100質量%である感光性樹脂組成物。

[式(1)中、R^(a1)及びR^(a2)は、それぞれ独立に、R^(a11)、OR^(a11)、COR^(a11)、SR^(a11)、CONR^(a12)R^(a13)又はCNを表し、
R^(a11)、R^(a12)及びR^(a13)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?30のアリール基、炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し、
R^(a11)、R^(a12)またはR^(a13)で表わされる基の水素原子は、OR^(a21)、COR^(a21)、SR^(a21)、NR^(a22)R^(a23)、CONR^(a22)R^(a23)、-NR^(a22)-OR^(a23)、-N(COR^(a22))-OCOR^(a23)、-C(=N-OR^(a21))-R^(a22)、-C(=N-OCOR^(a21))-R^(a22)、CN、ハロゲン原子、又はCOOR^(a21)で置換されていてもよく、
R^(a21)、R^(a22)及びR^(a23)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?30のアリール基、炭素数7?30のアラルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し、
R^(a21)、R^(a22)またはR^(a23)で表される基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよく、
R^(a11)、R^(a12)、R^(a13)、R^(a21)、R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR^(a24)-、-NR^(a24)CO-、-NR^(a24)COO-、-OCONR^(a24)-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく、
R^(a24)は、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?30のアリール基、炭素数7?30のアリールアルキル基又は炭素数2?20の複素環基を表し、
R^(a11)、R^(a12)、R^(a13)、R^(a21)、R^(a22)またはR^(a23)で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、R^(a12)とR^(a13)及びR^(a22)とR^(a23)はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R^(a3)及びR^(a4)は、それぞれ独立に、R^(a11)、OR^(a11)、SR^(a11)、COR^(a11)、CONR^(a12)R^(a13)、NR^(a12)COR^(a11)、OCOR^(a11)、COOR^(a11)、SCOR^(a11)、OCSR^(a11)、COSR^(a11)、CSOR^(a11)、CN又はハロゲン原子を表し、
s及びtは、それぞれ独立に、0?4の整数を表し、
Lは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR^(a31)R^(a32)、CO、NR^(a33)又はPR^(a34)を表し、
R^(a31)、R^(a32)、R^(a33)及びR^(a34)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し、
R^(a31)、R^(a32)、R^(a33)またはR^(a34)で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、R^(a31)、R^(a32)、R^(a33)及びR^(a34)は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく、
R^(a5)は、ヒドロキシ基、カルボキシ基又は式(2)

(式(2)中、L^(1)は、-O-、-S-、-NR^(a22)-、-NR^(a22)CO-、-SO_(2)-、-CS-、-OCO-又は-COO-を表し、
L^(2)は、炭素数1?20のアルキル基からv個の水素原子を除いた基、炭素数6?30のアリール基からv個の水素原子を除いた基、炭素数7?30のアラルキル基からv個の水素原子を除いた基又は炭素数2?20の複素環基からv個の水素原子を除いた基を表し、
L^(2)で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR^(a22)-、-NR^(a22)COO-、-OCONR^(a22)-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1?5回中断されていてもよく、該アルキレン部分は分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、
R^(a6)は、OR^(a41)、SR^(a41)、CONR^(a42)R^(a43)、NR^(a42)COR^(a43)、OCOR^(a41)、COOR^(a41)、SCOR^(a41)、OCSR^(a41)、COSR^(a41)、CSOR^(a41)、CN又はハロゲン原子を表し、
R^(a41)、R^(a42)及びR^(a43)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?30のアリール基又は炭素数7?30のアラルキル基を表し、R^(a41)、R^(a42)及びR^(a43)で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、R^(a42)とR^(a43)は、一緒になって環を形成していてもよく、
vは1?3の整数を表す。)
で表される基を表す。]
【請求項2】
炭素数2?4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体に由来する構造単位が、式(I)又は式(II)で表される化合物に由来する構造単位である請求項1記載の感光性樹脂組成物。

[式(I)及び式(II)中、R^(a)及びR^(b)は、互いに独立に、水素原子、又は炭素数1?4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
X^(a)及びX^(b)は、互いに独立に、単結合、-R^(c)-、*-R^(c)-O-、*-R^(c)-S-、*-R^(c)-NH-を表す。
R^(c)は、炭素数1?6のアルカンジイル基を表す。
*は、Oとの結合手を表す。]
【請求項3】
請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物により形成されたパターン。
【請求項4】
請求項3記載のパターンを含む表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-14 
出願番号 特願2012-146485(P2012-146485)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G03F)
P 1 651・ 537- YAA (G03F)
P 1 651・ 536- YAA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石附 直弥高橋 純平  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
登録日 2016-12-22 
登録番号 特許第6060539号(P6060539)
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 感光性樹脂組成物  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 坂元 徹  
代理人 菅河 忠志  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  
代理人 坂元 徹  
代理人 植木 久彦  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 中山 亨  
代理人 中山 亨  
代理人 植木 久一  
代理人 菅河 忠志  

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