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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1339403 |
審判番号 | 不服2016-17490 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-24 |
確定日 | 2018-04-12 |
事件の表示 | 特願2012-217607「設定器、およびこれを用いた通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 72730〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月28日の出願であって、平成27年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶査定されたところ、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年11月24日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の概要 平成28年11月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年3月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された 「 固有の識別情報を付与された通信端末が互いに通信を行う通信システムに用いられる設定器であって、 複数の通信チャネルを有して前記通信端末と無線通信を行う通信部と、 前記通信部が受信した情報を表示する表示部と、 ユーザによって操作される操作部とを備え、 前記通信部は、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、前記通信端末と無線通信を行い、前記通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する前記識別情報を、複数の前記通信チャネルから少なくとも1つの前記通信チャネルを選択的に用いて受信し、 前記表示部は、前記通信部が受信した前記通信端末の各々の前記識別情報を表示し、 前記通信部は、前記表示部に表示された前記通信端末の各々の前記識別情報のうち、前記操作部の操作によって選択された前記識別情報を付与された前記通信端末との間で無線通信を行う ことを特徴とする設定器。」(以下、「本願発明」という。) を、 「 固有の識別情報を付与された通信端末が互いに通信を行う通信システムに用いられる設定器であって、 複数の通信チャネルを有して前記通信端末と無線通信を行う通信部と、 前記通信部が受信した情報を表示する表示部と、 ユーザによって操作される操作部とを備え、 ユーザによって携行可能に構成されており、 前記通信部は、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、前記通信端末と無線通信を行い、前記通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する前記識別情報を、複数の前記通信チャネルから少なくとも1つの前記通信チャネルを選択的に用いて受信し、 前記表示部は、前記通信部が受信した前記通信端末の各々の前記識別情報を表示し、 前記通信部は、前記表示部に表示された前記通信端末の各々の前記識別情報のうち、前記操作部の操作によって選択された前記識別情報を付与された前記通信端末との間で無線通信を行う ことを特徴とする設定器。」(以下、「本件補正発明」という。当審注:下線部は、補正箇所である。) に変更することを含むものである。 2 補正の適否 請求項1についての上記補正は、本願発明を特定するために必要な事項である「設定器」について、上記1の下線部のとおり限定を付加するものであって、本願発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 上記1の下線部において、「携行」の主体が「ユーザ」であることは明らかであるから、この補正は、同法第17条の2第3項、及び、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1の「本件補正発明」のとおりのものと認める。 (2)引用発明及び周知技術 ア 引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-146887号公報(平成16年5月20日出願公開。以下、「引用文献」という。)には,以下の記載がある。(下線は、強調のために当審が付与した。) (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN、またはその他の微弱電波無線、小電力無線などの無線通信で接続された複数の通信機器の実物や実空間中の位置と、個々の通信システム内でユニークな論理的ノード識別情報(ノード番号やデバイス名など)との対応をつけるための方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、イーサネット(登録商標)など有線LANでは機器固有のMACアドレスやIPアドレスに対応して、装置毎にホスト名と呼ばれる論理的な装置名を付して人が覚えたり入力しやすい識別方法を取ってきた。この場合ホスト名の設定は各装置毎にローカルに行われるか、またはLAN経由のtelnetプロトコルなどで直接IPアドレスを指定して通信し、ホスト名の設定や変更を行っていた。 これに対し従来の無線通信システムの場合では、無線LAN(IEEE802.11)では有線のイーサネット(登録商標)と同様でIPアドレスやホスト名で機器の識別を行う。Bluetoothと呼ばれる無線方式の場合もほぼ同様でイーサネット(登録商標)のMACアドレスに相当する無線機器固有のアドレス(Bluetoothアドレス)で装置を識別し、さらにその固有アドレス毎に機器固有のシンボリックな名前を付けることによって、通信対象の装置を識別できるようになっている(特許文献1参照)。」 (イ)「【0005】 【課題を解決するための手段】 上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。 第1の発明の無線システムは、無線通信で相互にデータを交換する複数の機器と、無線通信で前記機器の設定を行う設定ツールとからなる無線通信システムにおいて、前記機器は、各機器固有アドレスを保持する手段と、無線通信経由で前記機器固有アドレスを通知する固有アドレス通知送信手段と、自機器が指示されていることを検出する手段と、自機器が指示されたことを前記機器固有アドレスと関連させて通知する自機器指示中通知送信手段とを有し、前記設定ツールは、前記各機器から受信した前記固有アドレス通知を元に無線通信システム中の前記機器の一覧を表示する手段と、前記機器から受信した前記自機器指示中通知を元に指示されている前記機器を表示する手段とを備えることを特徴とするものである。 (中略) 【0006】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の第1の実施例を図に基づいて説明する。 図1は本発明の各実施例全般を示すシステム構成図であり、他の実施例の構成要素も含めて記載している。図2は「ノード識別番号、ノード識別名標のを保持する手段」としての設定ツールの内部データ構造例であり、図3は各機器、設定ツール間でやり取りされる(1)「固有アドレス」通知電文、(2)「自機器指示中」通知電文、(3)「位置通知」指令電文のフォーマット例である。 図1の10i(i=0、1、・・・n)は無線システムを構成している無線機器を示す。各無線機器10iは、機器固有アドレス保持手段11i、無線通信手段12i、自機器指示の物理的検出手段13i、ブザーやスピーカーなど音声による位置通知手段14i、LEDやランプなど発光による位置通知手段15iから構成されている。ここで機器固有アドレス保持手段11iとは例えば不揮発性メモリ上のデータなどである。自機器指示検出手段13iとは例えばプッシュスイッチ、トグルスイッチ、圧電センサー、タッチセンサーなどのように設定者が直接該機器に触れて指示するための検出器でもよいが、赤外線リモコンやレーザーポインタなど志向性のあるビームを遠隔から照射して該機器を指示するための検出器であってもよい。 (中略) 【0008】 更に図1では各無線機器に関する設定を行う設定ツール20と、その表示画面のひとつとして「通信機器を一覧する手段」である機器一覧画面21を示す。本機器一覧画面21では表形式の画面例を採っており、表中左端の列から順に「ノード識別番号」であるノードIDの設定・表示欄25、機器固有アドレス表示欄22、「いずれの機器が物理的に指示されているかを表示する手段」である自機器指示中表示欄23、「ノード識別名標」である機器名称の設定・表示欄26、「位置通知指令を無線通信経由で送信する手段」である位置通知指令欄27の構成を示している。この画面表示の元となる設定ツール内部データの構造は図2に示している。」 (ウ)「【0009】 第1の発明であるノード識別情報の設定対象となる無線機器を指定方法について、図1を用い操作手順にしたがって動作説明をする。 各無線機器10i(i=0、1、・・・n)は起動すると一定周期、または設定ツール20からのリクエストに応えて「固有アドレス」通知電文(図3(1))をブロードキャストする。設定ツール20では各機器から送られてくる「固有アドレス」通知電文(図3(1))を受信すると、その送信元アドレスフィールド中の機器固有アドレスを用いて、内部データ(図2)の機器固有アドレスを更新する。すでに登録済みの固有アドレスであればそのまま残し、新規に検出した固有アドレスであればデータを追加する。こうして設定ツール20が検出した全無線機器10iの固有アドレスを含む内部データ(図2)は、設定ツールの機器一覧画面21に反映され、新規に検出された機器の場合、画面上は機器固有アドレス欄22に受信した固有アドレス情報のみが表示されている。」 (エ)「【0013】 更に第3の実施例として、第3の発明である無線機器の現在位置を検出する方法について、同じく図1、図2、図3に基づき説明する。 設定ツール操作者は、現在位置の知りたい無線機器10i(図1ではノードID=1、cpu1の無線機器)があった場合、機器一覧画面21の位置通知欄27の対応する行のラジオボタン表示をマウスポインタでクリックする。設定ツール20では、選択された行(レコード)に対応した内部データ(図2)の行(レコード)の機器固有アドレスデータ、音声パタンデータ、発行パタンデータを読みだし(cpu1の場合、それぞれ34 56 78 9a bc de、サウンドパタン1、発光パタン1)、「位置通知」指令電文(図3(3))の送信先アドレス、データ部音声パタンフィールド、発行パタンフィールドにそれぞれデータをコピーし、この編集データを無線通信で送信する。この「位置通知」指令電文28(図3(3))はその送信先アドレス(3456 78 9a bc de)に従い、図1の無線機器100の無線通信部120にて受信される。無線通信部120では「位置通知」指令電文28(図3(3))の音声パタンフィールドのデータ(本実施例の説明ではサウンドパタン1)に従い音声位置通知手段140への出力を行い、同様に発光パタンフィールドのデータ(本実施例の説明では発光パタン1)に従い発光位置通知手段150への出力を行う。こうして音声位置通知手段140から発せられた音声パタンと発光位置通知手段150から発せられた発光パタンによって、設定操作者は無線機器(本実施例の説明では無線機器100)の現在位置を発見することができる。」 (オ)「【図1】 」 上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 a 上記摘記事項(ア)及び(イ)の段落0005、0006の記載、及び(オ)の「図1」によれば、引用文献には、Bluetooth、無線LAN(IEEE802.11)などの無線通信で接続された機器固有情報を有する複数の無線機器が相互にデータを交換する無線通信システムに用いられる設定ツールが記載されているといえる。 b 上記(イ)の段落0005の記載によれば、設定ツールは、無線機器と無線通信を行うといえ、上記摘記事項(ウ)の記載によれば、無線機器は、一定周期で機器固有アドレスをブロードキャストし、設定ツールは各機器から送られてくる機器固有アドレスを有する電文を受信するものであるから、設定ツールは、各無線機器が一定周期でブロードキャストする機器固有アドレスを受信するといえる。 c 上記摘記事項(イ)の段落0008及び(ウ)の記載によれば、設定ツールの機器一覧画面は、無線機器より受信した機器固有アドレスを表示する。 そして、上記摘記事項(エ)の記載によれば、現在位置を知りたい無線機器があった場合、設定ツール操作者が、機器一覧画面の対応する行をマウスポインタでクリックすると、設定ツールでは、該当する無線機器の機器固有アドレスを読みだし、電文の送信先アドレスにセットをして、編集データを無線通信で送信する。 そうすると、設定ツールは、受信した情報を表示する機器一覧画面と、ユーザによって操作されるマウスとを備え、機器一覧画面は、受信した各無線機器の機器固有アドレスを表示し、機器一覧画面に表示された各無線機器の機器固有アドレスのうち、マウスの操作によって選択された機器固有アドレスを有する無線機器との間で無線通信を行うといえる。 d 上記摘記事項(オ)の「図1」によれば、設定ツールはノートPC上に構成されているといえる。 上記aからdを総合すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「 Bluetooth、無線LAN(IEEE802.11)などの無線通信で接続された機器固有アドレスを有する複数の無線機器が相互にデータを交換する無線通信システムに用いられる設定ツールであって、 前記無線機器と無線通信を行い、 受信した情報を表示する機器一覧画面と、 ユーザによって操作されるマウスとを備え、 ノートPC上に構成されており、 各無線機器が一定周期でブロードキャストする機器固有アドレスを受信し、 前記機器一覧画面は、受信した各無線機器の前記機器固有アドレスを表示し、 前記機器一覧画面に表示された各無線機器の前記機器固有アドレスのうち、前記マウスの操作によって選択された前記機器固有アドレスを有する前記無線機器に無線通信を行う ことを特徴とする設定ツール。」 イ 周知技術 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-144781号公報(平成13年5月25日出願公開。)には,以下の記載がある。(下線は、強調のために当審が付与した。) a 「【0008】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係わる通信システムにおいて用いられる機器の構成を示すブロック図である。本実施形態における通信システムは、単一の主局(マスタ)として機能する機器と、少なくとも一つの従局(スレーブ)として機能する機器とが無線通信を行なうことによって構成される。通信システムは、各機器に搭載される複数の無線通信装置によって無線ネットワークを構成する。図1は主局として機能する機器の構成を示す。 【0009】本実施形態における機器は、図1に示すように、無線通信を行なう無線通信装置19と機器本体部20によって構成されている。無線通信装置19は、各種の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)、通信機器などの機器に搭載されて使用されるもので、例えばBluetooth、HomeRFによる方式を利用した無線通信を行なう。 (中略) 【0012】無線通信装置制御部28は、各部を制御することで前述したデータ送受信を実現するもので、局発見手続き部28a、テーブル部28bが設けられる。局発見手続き部28aは、ブロードキャストメッセージとして局発見メッセージを送信させ、この局発見メッセージを受信した従局からの応答メッセージを受信することにより通信可能な機器を探索するもので、機器本体部20の制御情報設定部20bによって設定された制御情報に応じて、送信アンプ23を制御して送信電力値を変更する、あるいはアンテナ制御部24を制御してアンテナ指向性を変更する機能を有している。制御情報設定部20bによって設定された制御情報をもとにして、発見手続き処理を実行することで、ユーザが所望する機器(従局)を効率的に探索することができる。受信データ処理部27は、機器本体部20の制御情報設定部20bによって設定された制御情報が登録されており、局発見手続き部28aにより参照される。 (中略) 【0014】図2は、アンテナ制御部24及びアンテナ25の詳細な構成を示すブロック図である。アンテナ制御部24は、無線通信装置制御部28の制御によりアンテナの指向性を変更するための機能を持つもので、アダプティブアレイアンテナにより指向性の変更を実現している。アンテナの指向性を変更することにより、局発見メッセージを送信する方向を特定して、局発見メッセージの到達範囲を制限することができる。図2に示す例では、3つのアンテナ素子25a,25b,25cのそれぞれに対応する位相器31a,31b,31cを、無線通信装置制御部28の制御のもとで動作する位相制御部30によってそれぞれ位相をずらすことで放射特性(指向性)を変更する。アンテナ素子25a?25cのそれぞれに対応する位相器31a,31b,31cは、加算器32を介して、送信アンプ23と受信アンプ26に接続される。なお、図2に示す例では、3つのアンテナ素子25a,25b,25cを設けた構成例を示しているが、3つのアンテナ素子に限らず複数のアンテナ素子を有した構成とすれば、アンテナの指向性を作り出すことができる。 (中略)) 【0019】応答メッセージには局の固有IDに関する情報が含まれており、これにより以降の処理において、主局が固有の従局(特定の機器)を指定することが可能になる。全ての局発見手続きが完了した後には、主局は探索範囲内で待ち受けをしている全ての従局の固有ID情報を入手することになる。」 b 「【0023】ここで、ユーザの接続対象としている機器(従局)がユーザ(主局)から比較的近い距離にある場合を考える。例えば、オフィス環境において、机上にあるPCとユーザが机上で使用しているPDA(personal digital assistant)とを無線接続させようとしている場合であって、PCとその他の機器とは当面接続が必要ない場合を想定する。例えば、図6において、PCが主局M、PDAがユーザが接続対象として所望している従局S1とする。そして、主局Mの周辺にある従局S2?S8とは、接続の必要がないものとする。」 c 「図1 」 d 「図2 」 上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、機器(PCなど)に機器(PDAなど)を接続しようとする場合に、ブロードキャストメッセージとして局発見メッセージを送信させ、この局発見メッセージを受信した従局からの応答メッセージを受信することにより通信可能な機器を探索するものにおいて、アンテナの指向性を変更することにより、主局は探索範囲内で待ち受けをしている全ての従局の固有ID情報を入手するので、PCが、機器の情報を入手するために、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、機器と無線通信をするといえる。 (イ)特開2003-218785号公報(平成15年7月31日出願公開。)には図面とともに、次の記載がある。(下線は、強調のために当審が付与した。) a 「【0058】ここで、図4は、プルートゥース機器同士による認証過程を説明するための概念図である。プルートゥース機器であるカメラ付きデジタル携帯電話機70aは、伝送範囲内に存在する相手機器70bに対して、インクワイアリ(inquiry)メッセージをブロードキャストすることにより探し出す。インクワイアリメッセージを受け取った相手機器70bは、インクワイアリレスポンスをカメラ付きデジタル携帯電話機70aに返す。カメラ付きデジタル携帯電話機70aは、インクワイアリレスポンスから相手機器70bのデバイスアドレスを入手する。 (中略) 【0063】そして、相手機器からインクワイアリレスポンスを受信すると、相手機器のリストを表示する(ステップS20)。このリストには、上記インクワイアリ過程において、最初に応答した機器のみが含まれている。ユーザは、上記リストから通信したい相手機器を選択する(ステップS22)。相手機器が選択されると、該相手機器と通信の接続を行なう(ステップS24)。」 b 「【0080】D.第4実施形態 次に、本発明の第4実施形態として、図2に示すブルートゥース通信部105(アンテナを含む)に指向性、無指向性の2つの通信モードを設け、インクワイアリメッセージの発行、インクワイアリレスポンスの受信には指向性モードで動作し、相手機器が決定した時点で、無指向性に切り換えて通信を行なうようにしてもよい。ユーザは、図13(a)に示すように、目視で通信したい相手機器200を確認し、その相手機器200の方向に自分のカメラ付デジタル携帯電話機(アンテナ)70を向けてインクワイアリによる認証を行なう。認証後は、図13(a)に示すように、無指向性に切り換えることで、カメラ付デジタル携帯電話機70の向きや位置を考慮することなく、通信を行なうことができる。 【0081】上述した第4実施形態では、ほぼ同じ距離に複数の相手機器が存在するような状況において、その相手機器の方向に自分のブルートゥース機器(アンテナ)を向けてインクワイアリによる認証を行なうことで、余計な相手機器をリストップすることなく、所望する相手機器を容易に選択することができるようになる。 【0082】なお、上述した第1ないし第4実施形態では、ブルートゥース機器として、カメラ付きデジタル携帯電話機を用いた例についてのみ説明したが、これに限らず、PDAや、パーソナルコンピュータ、オーディオ機器など、各種機器であってもよい。」 c 「図13 」 上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、機器(パーソナルコンピュータ)のアンテナを含むブルートゥース通信部に指向性、無指向性の2つの通信モードを設け、自分の機器(パーソナルコンピュータ)のインクワイアリメッセージの発行と、インクワイアリレスポンスの受信は、指向性モードで動作し、インクワイアリレスポンスから相手機器のデバイスアドレスを入手するので、PCが、機器の情報を入手するために、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、機器と無線通信をするといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より、機器の情報を有する相手機器と無線通信を行い、機器の情報を受信するPCにおける、以下の技術(以下、「周知技術」という。)は、本願の出願日より前に周知であったといえる。 (周知技術) 「 PCが、機器の情報を入手するために、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して機器と無線通信を行う技術。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「複数の無線機器」は、「Bluetooth、無線LAN(IEEE802.11)などの無線通信で接続され」ているところ、「無線機器と無線通信を行」う「設定ツール」も、通信部を備え、無線機器とBluetooth、無線LAN(IEEE802.11)などの無線方式で「無線機器と無線通信を行う」と解するのが自然である。また、Bluetoothもしくは無線LAN(IEEE802.11)の無線方式では、複数の通信チャネルを有することが技術常識である。そして、引用発明の「各無線機器が一定周期でブロードキャストする機器固有アドレス」は、本件補正発明の「通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する」「識別情報」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、複数の通信チャネルから少なくとも1つの通信チャネルを選択的に用いるかどうかは別として、「複数の通信チャネルを有して通信端末と無線通信を行う通信部」を備え、「前記通信部」は「通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する前記識別情報を、通信チャネル用いて受信」する点で共通する。 また、本件補正発明では、「前記通信部」は、「特定の方向に指向性を有するアンテナを介して」、通信端末と無線通信を行う点で、引用発明と相違する。 イ 引用発明の「受信した情報を表示する機器一覧画面」は、本件補正発明の「通信部が受信した情報を表示する表示部」に対応し、引用発明の「機器一覧画面は、受信した各無線機器の前記機器固有アドレスを表示」することは、本件補正発明の「表示部は、前記通信部が受信した前記通信端末の各々の前記識別情報を表示」することに相当する。 ウ 引用発明の「ユーザによって操作されるマウス」は、本件補正発明の「ユーザによって操作される操作部」に相当する。 エ ノートPCが携行可能であることは技術常識であるといえるところ、引用発明の設定ツールは「ノートPC上に構成されて」いるから、本件補正発明と引用発明とは「ユーザによって携行可能に構成されて」いる点で一致する。 オ 上記アからエより、引用発明の「前記機器一覧画面に表示された各無線機器の前記機器固有アドレスのうち、前記マウスの操作によって選択された前記機器固有アドレスを有する前記無線機器との間で無線通信を行う」ことは、本件補正発明の「通信部は、前記表示部に表示された前記通信端末の各々の前記識別情報のうち、前記操作部の操作によって選択された前記識別情報を付与された前記通信端末との間で無線通信を行う」ことに相当する。 そして、引用発明の「Bluetooth、無線LAN(IEEE802.11)などの無線通信で接続された機器固有アドレスを有する無線機器が相互にデータを交換する無線システムに用いられる設定ツール」は、本件補正発明の「固有の識別情報を付与された通信端末が互いに通信を行う通信システムに用いられる設定器」に対応する。 したがって、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「 固有の識別情報を付与された通信端末が互いに通信を行う通信システムに用いられる設定器であって、 複数の通信チャネルを有して前記通信端末と無線通信を行う通信部と、 前記通信部が受信した情報を表示する表示部と、 ユーザによって操作される操作部とを備え、 ユーザによって携行可能に構成されており、 前記通信部は、前記通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する前記識別情報を、前記通信チャネルを用いて受信し、 前記表示部は、前記通信部が受信した前記通信端末の各々の前記識別情報を表示し、 前記通信部は、前記表示部に表示された前記通信端末の各々の前記識別情報のうち、前記操作部の操作によって選択された前記識別情報を付与された前記通信端末との間で無線通信を行う ことを特徴とする設定器。」 (相違点1) 一致点とした「複数の通信チャネルを有して前記通信端末と無線通信を行う通信部」を備え、「前記通信部」が、通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する識別情報を、「前記通信チャネルを用いて受信」する点に関し、本件補正発明では、通信端末の各々が所定の周期毎に無線送信する識別情報を、「複数の前記通信チャネルから少なくとも1つの前記通信チャネルを選択的に用いて」受信するのに対し、引用発明では、複数の通信チャネルから少なくとも1つの通信チャネルを選択的に用いるか明らかでない点。 (相違点2) 「前記通信部」が、本件補正発明では、「特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、」通信端末と無線通信を行うのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 (4)当審の判断 上記相違点1について検討すると、Bluetoothもしくは無線LAN(IEEE802.11)を用いて無線通信をする場合に、複数の通信チャネルから少なくとも1つの通信チャネルを選択的に用いることは常套手段であるから、引用発明におけるBluetoothもしくは無線LAN(IEEE802.11)の複数の通信チャネルを有する通信部において、各無線機器が一定周期でブロードキャストする機器固有アドレスを、Bluetoothもしくは無線LAN(IEEE802.11)の複数の通信チャネルから少なくとも1つの通信チャネルを選択的に用いて受信するように構成することは、当業者であれば適宜なし得ることである。 上記相違点2について検討すると、無線通信を行う際に、使用状況に応じてアンテナの指向性を調整することは当業者が適宜なし得る事項といえ、上記2(2)イ(ウ)より、機器の情報を有する相手機器と無線通信を行い、機器の情報を受信するPCにおいて、機器の情報を入手するために、特定の方向に指向性を有するアンテナを介して機器と無線通信を行うことが、周知技術であることを踏まえると、共通する技術分野に属する、機器の情報を有する無線機器と無線通信を行い機器の情報を受信するノートPC上に構成された設定ツールの発明である引用発明において、「特定の方向に指向性を有するアンテナを介して、」無線機器と無線通信を行うことは当業者が容易に想到し得る事項といえる。 そして、本件補正発明の奏する効果は、技術常識を踏まえれば、引用発明と周知技術から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 小括 以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年11月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年3月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1の「本願発明」のとおりのものである。 2 引用発明及び周知技術 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。 本願の出願日より前に周知であった周知文献の記載事項及び周知技術は、上記第2[理由]2(2)イに記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明の「設定器」から「ユーザによって携行可能に構成されており」という限定を省いたものである。そして、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2で判断したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-09 |
結審通知日 | 2018-02-13 |
審決日 | 2018-02-27 |
出願番号 | 特願2012-217607(P2012-217607) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 東 昌秋 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
松永 稔 海江田 章裕 |
発明の名称 | 設定器、およびこれを用いた通信システム |
代理人 | 坂口 武 |
代理人 | 仲石 晴樹 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 北出 英敏 |