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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1339829 |
審判番号 | 不服2017-7435 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-24 |
確定日 | 2018-05-22 |
事件の表示 | 特願2015-206206「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 35585、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成27年10月20日 (平成27年1月7日に出願された特願2015-1205号(優先権主張平成17年3月18日)の分割出願) 拒絶査定: 平成29年2月28日(送達日:同年3月7日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成29年5月24日 手続補正: 平成29年5月24日 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、また本願請求項10に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2004-246320号公報 2.特開2003-005709号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2004-341144号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成29年5月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記発光素子は、前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとを直列に介して、電源線と電気的に接続され、 前記駆動トランジスタのゲートは、前記第2のスイッチを介して、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、発光期間においてオフ状態であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項2】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとは、前記発光素子と電源線との間に直列に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの間に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との間に電気的に接続され、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との間に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、発光期間においてオフ状態であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項3】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記第1のスイッチは、電源線から前記駆動トランジスタを介して前記発光素子に流れる電流を遮断することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、発光期間においてオフ状態であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項4】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記発光素子は、前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとを直列に介して、電源線と電気的に接続され、 前記駆動トランジスタのゲートは、前記第2のスイッチを介して、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され、 前記第2のスイッチのオンオフを制御する信号は、走査線に入力されるパルス信号であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項5】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとは、前記発光素子と電源線との間に直列に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの間に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との間に電気的に接続され、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との間に電気的に接続され、 前記第2のスイッチのオンオフを制御する信号は、走査線に入力されるパルス信号であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項6】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記第1のスイッチは、電源線から前記駆動トランジスタを介して前記発光素子に流れる電流を遮断することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第2のスイッチのオンオフを制御する信号は、走査線に入力されるパルス信号であり、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置。 【請求項7】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記発光素子は、前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとを直列に介して、電源線と電気的に接続され、 前記駆動トランジスタのゲートは、前記第2のスイッチを介して、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、 前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置(ただし、前記第2のスイッチのオンオフがランプ電圧によって制御される表示装置を除く)。 【請求項8】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとは、前記発光素子と電源線との間に直列に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの間に電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との間に電気的に接続され、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との間に電気的に接続され、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置(ただし、前記第2のスイッチのオンオフがランプ電圧によって制御される表示装置を除く)。 【請求項9】 駆動トランジスタと、第1乃至第4のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記第1のスイッチは、電源線から前記駆動トランジスタを介して前記発光素子に流れる電流を遮断することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記駆動トランジスタのゲートと前記駆動トランジスタのドレインとの導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第3のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第1の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記第4のスイッチは、前記容量素子の第2の端子と第2の配線との導通又は非導通を制御することができる機能を有し、 前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有することを特徴とする表示装置(ただし、前記第2のスイッチのオンオフがランプ電圧によって制御される表示装置を除く)。 【請求項10】 請求項1乃至請求9のいずれか一項において、 前記駆動トランジスタのゲートとして機能する領域を有する導電層は、前記容量素子の第1の端子として機能する領域を有することを特徴とする表示装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。) 「【0001】 本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の如く、複数の画素をマトリクス状に配列して構成される表示パネルを具えた表示装置に関するものである。」 「【0105】 第18実施例 次に述べる第18実施例?第24実施例は、有機EL素子の特性変化に拘わらずデータ電圧に応じた発光量で表示素子を発光させるための構成を有するものである。 【0106】 図36に示す第18実施例においては、各画素(51)に、1フレーム期間の前半に走査電圧SCANを印加すると共に1フレーム期間の後半にハイの選択電圧SELを印加するための第1信号線(61)と、1フレーム期間の前半にデータ電圧DATAを印加すると共に1フレーム期間の後半に第1ランプ電圧RAMP1を印加するための第2信号線(62)と、リセット信号RSTを印加するための第3信号線(63)と、第2ランプ電圧RAMP2を印加するための第4信号線(64)とが配備されている。 【0107】 更に各画素(51)には、有機EL素子(50)と、書込み用トランジスタTR1と、該書込み用トランジスタTR1が導通状態となることによって第2信号線(62)からのデータ電圧DATAが印加されるコンデンサC1と、高電位の電源VDDから有機EL素子(50)に繋がる給電ライン(6)中に介在する第1トランジスタTR31と、コンデンサC1の出力端(B点)と有機EL素子(50)の一端(C点)の間に介在する第2トランジスタTR32と、コンデンサC1の出力端(B点)と低電位の電源VSSの間に介在する第3トランジスタTR34とが配備されている。 【0108】 書込み用トランジスタTR1のゲートには第1信号線(61)が接続され、該書込み用トランジスタTR1のドレインは、コンデンサC1を介して、第1トランジスタTR31のゲートに繋がっている。又、第2トランジスタTR32のゲートには第4信号線(64)が接続され、第3トランジスタTR34のゲートには、第3信号線(63)が接続されている。」 「【0122】 第21実施例 本実施例においては、図42に示す如く、第18実施例に配備されていたリセットのための回路構成が省略されている。有機EL素子(50)はその構造上、容量成分を有しているが、本実施例は、有機EL素子(50)の容量がコンデンサC1の容量よりも十分に大きい場合に有効な実施例である。この場合、図36に示すA点の電位変動に対してC点の電位変動が小さいため、B点の電位の低下量が過大とならず、これによって、B点の電位の低下を抑えるためのリセット動作が不要となるのである。 【0123】 第22実施例 図43に示す画素(51)においては、第21実施例の信号切換え式の第1信号線(61)と第2信号線(62)に替えて、信号個別の信号線を採用したものであって、ランプ電圧RAMPを印加するための専用の信号線(67)と、選択電圧SELを印加するための専用の信号線(66)とが追加されている。 これに伴って、書込み用トランジスタTR1のドレインとランプ電圧専用信号線(67)の間にトランジスタTR39が介在し、該トランジスタTR39のゲートは選択電圧専用信号線(66)に接続されている。 該画素(51)の動作は第21実施例と同じであって、第21実施例と同じ効果が得られる。 【0124】 第23実施例 本実施例においては、図44に示す如く、1フレーム期間の前半にデータ電圧DATAを印加すると共に1フレーム期間の後半に第1ランプ電圧RAMP1を印加するための第1信号線(71)と、1フレーム期間の前半に走査電圧SCANを印加すると共に1フレーム期間の後半に第2ランプ電圧RAMP2を印加するための第2信号線(72)と、ハイの選択信号SELを印加するための第3信号線(73)と、リセット信号RSTを印加するための第4信号線(74)とが配備されている。 【0125】 各画素(51)には、有機EL素子(50)と、第1信号線(71)からのデータ電圧DATAが印加されるコンデンサC1と、電源VDDから有機EL素子(50)に繋がる給電ライン(6)中に介在する第1トランジスタTR31と、コンデンサC1の出力端(B点)と有機EL素子(50)の一端(C点)の間に介在する第2トランジスタTR32と、電源VDDと第1トランジスタTR31の間に介在する第3トランジスタTR35と、電源VDDとB点の間に第4トランジスタTR36とが配備されている。 【0126】 第1トランジスタTR31のゲートにはコンデンサC1を介して第1信号線(71)が接続され、第2トランジスタTR32のゲートには第2信号線(72)が接続され、第3トランジスタTR35のゲートには第3信号線(73)が接続されている。又、第4トランジスタTR36のゲートには第4信号線(74)が接続されている。 【0127】 図45に示す如く、1フレームは、走査期間と発光期間とリセット期間に分割されており、リセット期間においては、先ず第2ランプ電圧RAMP2が立ち下がり、これによって第2トランジスタTR32がオフとなる。その直後にリセット信号RSTがハイとなり、これによって第4トランジスタTR36がオンとなり、B点の電位が電源電圧VDDまで上昇する。又、第1ランプ電圧RAMP1が立ち下がる。 【0128】 次のフレームの走査期間において、走査電圧SCANの印加によって第2トランジスタTR32がオンになると、A点の電位がデータ電圧まで上昇すると共に、B点の電位がC点の電位(有機EL素子の発光開始電圧)まで降下する。 発光期間においては、ハイの選択信号SELによって第3トランジスタTR35がオンとなる。又、第1ランプ電圧RAMP1と第2ランプ電圧RAMP2が上昇を開始する。これによって、A点の電位がデータ電圧から第1ランプ電圧RAMP1に切り替えられて上昇し、これに伴ってB点の電位が上昇することになる。この結果、B点の電位とC点の電位の差が第1トランジスタTR31のスレッショルドレベルVthを上回ると、第1トランジスタTR31がオンとなり、有機EL素子(50)への通電が開始され、有機EL素子(50)が発光し始める。 その後、第2ランプ電圧RAMP2の上昇によって、第2ランプ電圧RAMP2とC点の電位の差が第2トランジスタTR32のスレッショルドレベルVthを上回ると、第2トランジスタTR32がオンとなる。これによって第1トランジスタTR31がオフとなり、有機EL素子(50)への通電が停止されて、有機EL素子(50)の発光が終了する。 【0129】 該画素(51)においても図45に破線で示す如く、第1及び第2トランジスタTR31、TR32の閾値のバラツキに拘わらず、有機EL素子(50)の発光期間はデータ電圧に応じた同じ長さとなる。従って、有機EL素子(50)に対する通電時間はデータ電圧の大きさに比例し、表示むらが生じる虞はない。 又、給電ライン(6)中に第1トランジスタTR31が直列に介在して、有機EL素子(50)に対する通電をオン/オフするので、電源VDDからの電流は給電ライン(6)のみに流れることになり、無駄な電流の発生を回避することが出来る。 更に、有機EL素子(50)の温度変化や経時変化によって有機EL特性がシフトしたとしても、走査後のC点の電位が有機EL素子(50)の通電時間にフィードバックされるので、 発光量が変化することはない。」 引用文献1の図44から、第1トランジスタTR31のゲートは、第4トランジスタTR36を介して、第1トランジスタTR31のドレインと(第3トランジスタTR35を介して)電気的に接続されている、という構成が読み取れる。また、同図44,45から、リセット信号RSTがゲートに供給される第4トランジスタTR36は、発光期間においてオフ状態であることが読み取れる。 さらに、同図43からは、コンデンサC1の第1の端子は、第1トランジスタTR31のゲートと電気的に接続されていること、コンデンサC1の第2の端子は、書込み用トランジスタTR1を介して、DATAラインと電気的に接続されていること、またコンデンサC1の第2の端子は、トランジスタTR39を介して、信号線(67)と電気的に接続されていること、が読み取れる。そうすると上記引用文献1には、第23実施例及び第22実施例として、それぞれ次の発明が記載されていると認められる。 「第1トランジスタTR31と、第3トランジスタTR35と、第4トランジスタTR36と、コンデンサC1と、有機EL素子(50)と、を有し、(【0125】参照。) 第1トランジスタTR31が電源VDDから有機EL素子(50)に繋がる給電ライン(6)中に介在し、第3トランジスタTR35が電源VDDと第1トランジスタTR31の間に介在し、(【0125】参照。) 第1トランジスタTR31のゲートは、第4トランジスタTR36を介して、第1トランジスタTR31のドレインと(第3トランジスタTR35を介して)電気的に接続され、(図44参照。) 第1トランジスタTR31のゲートにはコンデンサC1を介して第1信号線(71)が接続され、(【0126】参照。) 第4トランジスタTR36は、発光期間においてオフ状態である、(図44,45参照。) 表示装置。(【0001】参照。)」(以下、「引用発明1」という。) 「第1トランジスタTR31と、書込み用トランジスタTR1と、トランジスタTR39と、コンデンサC1と、有機EL素子(50)と、を有し、(【0107】、【0123】参照。) 第1トランジスタTR31が電源VDDから有機EL素子(50)に繋がる給電ライン(6)中に介在し、(【0107】参照。) コンデンサC1の第1の端子は、第1トランジスタTR31のゲートと電気的に接続され、(図43参照。) コンデンサC1の第2の端子は、前記書込み用トランジスタTR1を介して、DATAラインと電気的に接続され、(図43参照。) コンデンサC1の第2の端子は、前記トランジスタTR39を介して、ランプ電圧専用信号線(67)と電気的に接続される、(【0123】、図43参照。) 表示装置。(【0001】参照。)」(以下、「引用発明2」という。) 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0026】図7は本実施例の画素 5のレイアウト図である。縦方向に信号線7、nチャネルソース線 24、pチャネルソース線 23が低抵抗Al配線で設けられており、横方向にはゲート線6及びリセット線10がゲート配線で設けられている。信号線7とゲート線6の交点には低温多結晶Si TFTプロセスで作られた入力TFT 1が構成されており、入力TFT 1の他端はそのまま横方向に延在して記憶コンデンサ2の一方の電極を構成している。記憶コンデンサ2の対向電極は、そのままnチャネル低温多結晶Si TFT 32及びpチャネル低温多結晶Si TFT 31のゲート電極になっている。ここで既に述べたように、nチャネル低温多結晶Si TFT 32及びpチャネル低温多結晶Si TFT 31のソースはそれぞれnチャネルソース線 24及びpチャネルソース線 23に接続されており、nチャネル低温多結晶Si TFT 32及びpチャネル低温多結晶Si TFT 31のドレインは共通にOLED素子4に入力している。またこのドレイン端子は同時に、リセット線10でゲートが構成されているリセットTFT 9の一端にも接続されており、リセットTFT 9の他端は前述の記憶コンデンサ2の対向電極に接続されている。なおここでOLED素子4における共通接地端子は、各画素間で共通に接続されかつ接地されているが、図面の簡略化のために図7では省略した。」 3.引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0014】 次に本実施例における画素10のレイアウト構造を説明する。 図5は本実施例の画素10のレイアウト図であり、細い破線はAl配線、太い破線はITO(Indium Tin Oxide)を用いた透明電極を示し、実線は多結晶Si薄膜アイランド又はTFT形成用のゲート配線である。また細線の正方形はAl配線と多結晶Si薄膜アイランド、又はAl配線とゲート配線とのコンタクトホール、太線の正方形はAl配線と透明電極とのコンタクトホールである。 画素10の左右には上下方向に信号線8及び電源線9がAl配線でレイアウトされており、信号線8の一部に重なるようにゲート配線21を設けることにより、信号線8の一部をそのまま記憶容量4に用いている。またゲート配線21の一端は電源線9に接続された多結晶Si薄膜アイランド22に重なることによって、駆動TFT2を形成している。更にゲート配線21とに接続された多結晶Si薄膜アイランド23はゲート配線で設けられたリセットゲート11との交差部でリセットスイッチ6を、同じくゲート配線で設けられたOLEDゲート12との交差部でOLEDスイッチ7を構成しており、OLEDスイッチ7の他端はAl配線と透明電極とのコンタクトホール24を介して透明電極25に接続されている。ここで更に透明電極25上には有機発光層やカソード共通接地等を有する有機EL素子1が設けられているが、これらの構造は一般的なものであるためここではその説明は省略する。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 まず、引用発明1における「第1トランジスタTR31と、第3トランジスタTR35と、第4トランジスタTR36と、コンデンサC1と、有機EL素子(50)」は、それぞれ本願発明1の「駆動トランジスタと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、容量素子と、発光素子」に相当する。 また、引用発明1において「第1トランジスタTR31が電源VDDから有機EL素子(50)に繋がる給電ライン(6)中に介在し、第3トランジスタTR35が電源VDDと第1トランジスタTR31の間に介在」することは、本願発明1において「前記発光素子は、前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとを直列に介して、電源線と電気的に接続され」ることに相当する。 さらに、引用発明1において「第1トランジスタTR31のゲートは、第4トランジスタTR36を介して、第1トランジスタTR31のドレインと(第3トランジスタTR35を介して)電気的に接続され」ていることは、本願発明1において「前記駆動トランジスタのゲートは、前記第2のスイッチを介して、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され」ていることに相当する。 次に、引用発明1において「第1トランジスタTR31のゲートにはコンデンサC1を介して第1信号線(71)が接続され」ていることは、本願発明1において「前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され」ていることに相当する。 また、引用発明1において「第4トランジスタTR36は、発光期間においてオフ状態である」ことは、本願発明1において「前記第2のスイッチは、発光期間においてオフ状態であ」ることに相当する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「駆動トランジスタと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、容量素子と、発光素子と、を有し、 前記発光素子は、前記駆動トランジスタと前記第1のスイッチとを直列に介して、電源線と電気的に接続され、 前記駆動トランジスタのゲートは、前記第2のスイッチを介して、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され、 前記容量素子の第1の端子は、前記駆動トランジスタのゲートと電気的に接続され、 前記第2のスイッチは、発光期間においてオフ状態である、 ことを特徴とする表示装置。」 (相違点) 相違点1:本願発明1においては、「前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチを介さずに、前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続され」ているのに対し、引用発明1においては、第4トランジスタTR36が第3トランジスタTR35を介して、第1トランジスタTR31のドレインと電気的に接続されている点。 相違点2:本願発明1は、「第3のスイッチ」及び「第4のスイッチ」を有しており、「前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され」るのに対し、引用発明1はそのようなスイッチを有さない点。 相違点3:本願発明1においては「前記電源線は、前記第1の配線又は前記第2の配線と交差する領域を有する」のに対し、引用発明1において電源線と他の配線との関係は不明である点。 (2)相違点についての判断 本願発明1の内容に鑑み、上記相違点2について検討する。 上記引用発明2は、「書込み用トランジスタTR1と、トランジスタTR39と」を有しており、また「コンデンサC1の第2の端子は、前記書込み用トランジスタTR1を介して、DATAラインと電気的に接続され」、「コンデンサC1の第2の端子は、前記トランジスタTR39を介して、ランプ電圧専用信号線(67)と電気的に接続される」ものであって、これは上記相違点2に係る本願発明1の構成に相当するものであるといえる。 しかしながら、引用発明1と引用発明2とは異なる実施例に対応するものであって、それぞれの備える各種配線の伝送信号及び接続状態も相違している(例えば、引用発明2の第22実施例において、上記「書込み用トランジスタTR1」と「トランジスタTR39」を制御する信号であるSCAN及びSEL信号は、引用発明1の第23実施例ではそれぞれ「第2トランジスタTR32」と「第3トランジスタTR35」を制御している。)。そのような状況下であえて、引用発明2を構成する回路の一部分のみを取り出し、しかも引用発明1の回路自体を変更することなく、これに付加するといったことは、引用文献1には記載も示唆もされておらず、またそのようなことを行う理由を見いだすこともできない。 また、引用文献2,3においても、上記相違点2に係る本願発明1の構成に相当する事項について記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点1,3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-10について 本願発明2-10も、本願発明1の「前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され」ているという構成と同一の構成、もしくはそれに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 1.理由1(特許法第29条第2項)について 本願発明1-10は「前記容量素子の第2の端子は、前記第3のスイッチを介して、第1の配線と電気的に接続され、前記容量素子の第2の端子は、前記第4のスイッチを介して、第2の配線と電気的に接続され」ているという事項、もしくはそれに対応する事項を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-05-08 |
出願番号 | 特願2015-206206(P2015-206206) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 直明 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 中塚 直樹 |
発明の名称 | 表示装置 |