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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1340108
異議申立番号 異議2017-700262  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-13 
確定日 2018-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5992148号発明「セメント組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5992148号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?2〕について訂正することを認める。 特許第5992148号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5992148号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成23年 6月30日の出願であって、平成28年 8月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1?2に係る特許について、特許異議申立人「天野 景昭」により特許異議の申立てがされ、平成29年 5月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年 7月31日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年 9月 5日付けで意見書が提出され、平成29年11月27日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成30年 2月 2日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成30年 3月 7日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成30年 2月 2日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のア?エのとおりである。(下線部は訂正箇所である。)
なお、本件訂正請求により、平成29年 7月31日付けの訂正の請求は特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

ア.訂正事項1について
特許請求の範囲の請求項1に「平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームと、」とあるのを、「平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームと、」に訂正する。

イ.訂正事項2について
特許請求の範囲の請求項1に「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、8:1?1:1の範囲であり、」とあるのを、「前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、5.8:1?1:1の範囲であり、」に訂正する。

ウ.訂正事項3について
特許請求の範囲の請求項1に「水/結合材比(質量基準)が0.2以下」とあるのを、「水/結合材比(質量基準)が0.09?0.13」に訂正する。

エ.訂正事項4について
特許請求の範囲の請求項2に「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、」とあるのを、「前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1のシリカフュームにおいて、「平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフューム」とあるのを、「平均粒径が0.1μmのシリカフューム」に、「平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフューム」とあるのを、「平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフューム」に、平均粒径の数値範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

そして、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0044】に、小粒径シリカフュームの平均粒径が0.1μmであること、段落【0054】に、大粒径シリカフュームの平均粒径が0.3μmであることが記載されていたから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、合わせて「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ.訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1のシリカフュームにおいて、「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、8:1?1:1の範囲であり、」とあるのを、「前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、5.8:1?1:1の範囲であり、」に、平均粒径及び質量比の数値範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

そして、本件明細書には、段落【0044】に、小粒径シリカフュームの平均粒径が0.1μmであること、段落【0054】に、大粒径シリカフュームの平均粒径が0.3μmであること、段落【0061】の実施例20に、小粒径シリカフュームと大粒径シリカフュームの質量比が5.8:1(17.5/3:1=5.83:1)であることが記載されていたから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1の「水/結合材比(質量基準)が0.2以下」を「水/結合材比(質量基準)が0.09?0.13」に、水/結合材比(質量基準)の数値範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
訂正事項3は、本件明細書の【0031】に記載されていることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ.訂正事項4について
訂正事項4は、請求項2のシリカフュームにおいて「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、」とあるのを、「前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、」に、平均粒径の数値範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

そして、本件明細書の段落【0044】に、小粒径シリカフュームの平均粒径が0.1μmであること、段落【0054】に、大粒径シリカフュームの平均粒径が0.3μmであることが記載されていたから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)一群の請求項について
訂正事項1?3は、訂正前の請求項1を訂正するものであり、訂正前の請求項2は請求項1を直接引用するため、請求項1?2は一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?2〕について請求するものと認められるから、特許法120条の5第4項に適合する。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項および第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?2〕について訂正を認める。


3.本件発明
上記2.のとおり訂正を認めたので、訂正後の請求項1?2に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明2」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所である。)。

【請求項1】
セメントと、骨材と、平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームと、水とを含み、前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、5.8:1?1:1の範囲であり、かつ、水/結合材比(質量基準)が0.09?0.13であるセメント組成物。
【請求項2】
前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、全結合材に対し10質量%?35質量%の範囲である請求項1に記載のセメント組成物。


4.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成29年 5月24日けで当審が通知した取消理由は以下の通りである。

取消理由A:審判請求時の請求項1?2に係る発明が、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許を取り消すべきものである。
取消理由B:審判請求時の請求項1?2に係る発明が、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許を取り消すべきものである。
取消理由C:審判請求時の請求項1に記載の「平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフューム」について、本件明細書には、平均粒径が0.3μmのシリカフュームを用いることしか記載されておらず、審判請求時の請求項1?2に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
取消理由D:審判請求時の請求項1に記載の「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、8:1?1:1の範囲であり」について、「平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフューム」には、「平均粒径0.2μmのシリカフューム」が含まれ、「平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフューム」には、「平均粒径0.21μmのシリカフューム」が含まれるため、平均粒径の差がわずかな場合が含まれており、本願発明の効果が得られるか不明であり、審判請求時の請求項1?2に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
取消理由E:審判請求時の請求項1に記載の「前記平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、前記平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、8:1?1:1の範囲であり」について、本件明細書には、当該質量比が8:1に近い実施例について記載されておらず、審判請求時の請求項1?2に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


(2)取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
平成29年11月27日付けで当審が通知した取消理由は以下の通りである。

取消理由F:平成29年 7月31日付け訂正請求書において訂正された請求項1?2に係る発明が、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その発明に係る特許を取り消すべきものである。
取消理由G:平成29年 7月31日付け訂正請求書において訂正された請求項1の「平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフュームと、平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフューム」について、「平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下のシリカフューム」には、「平均粒径0.2μmのシリカフューム」が含まれ、「平均粒径が0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフューム」には、「平均粒径0.21μmのシリカフューム」が含まれるため、平均粒径の差がわずかな場合が含まれており、本願発明の効果が得られるか不明であり、訂正された請求項1?2に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


(3)証拠
甲第1号証:小出貴夫,長岡誠一,河上浩司,西本好克、種類の異なるシリカ質微粉末を用いた超高強度モルタルの物性、第61回セメント技術大会講演要旨2007、社団法人セメント協会、2007年発行、pp.192-193
甲第2号証:特開2010-149402号公報
甲第3号証:特開2008-143759号公報
(以下、それぞれ「甲1」?「甲3」という。)


(4)刊行物に記載された事項(抜粋)

取消理由通知において引用した甲1?甲2には、以下の事項が記載されている。
(下線は強調のために当審で付加したものである。以下同じ。)

ア.甲1に記載の事項
摘記1-1:「1.まえがき
本研究は、設計基準強度150N/mm^(2)を上回る超高強度コンクリートの開発にあたり、低熱ポルトランドセメント(以下LCと略記)に対して種類の異なるシリカ質微粉末を、置換率を変えて混和した場合の物性検討を目的としたものである。
非晶質SiO_(2)を主成分とし、ポゾラン活性に富んだシリカ質微粉末には、金属シリコンやフェロシリコンの製造時に副生されるシリカフューム(以下SFと略記)の他に電融ジルコニア(ZrO_(2))の製造時に副生されるジルコニア起源シリカ質微粉末(以下ZSFと略記)がある。
ZSFを超高強度コンクリートに混和した場合の物性はSFを混和した場合とかなり異なるため、産地の異なる2種類のSFおよび1種類のZSFを使用して水結合材比(以下W/Bと略記)14.3%の超高強度モルタルで物性を比較検討した。」(第192頁左欄第1行?第192頁左欄第16行)

摘記1-2:「2.実験概要
表1に、使用した3種類のシリカ質微粉末の性状および組成を示す。SFはノルウェー産(SF1)およびエジプト産(SF2)を、ZSFは中国産を使用した。ZSFのSiO_(2)含有量はSFとほぼ同じであるが、一次粒子の平均径はSFの約10倍と大きく、BET比表面積はSF(JIS A6207の品質規定は15m^(2)/g以上)より小さいという特徴を持つ。
表2に、超高強度モルタルの調合を示す。LCはJIS R5210適合品(密度3.24g/cm^(3)、ブレーン値=3400cm^(2)/g、C_(2)S=56%)、練混ぜ水は上水道水を使用、細骨材は吸水率が低く品質の安定している愛知県産の乾燥珪砂(密度2.66g/cm^(3))とし、JASS5の砂の標準粒度に適合するように粒度の異なる3種類を混合した。化学混和剤はポリカルボン酸系の高性能AE減水剤(以下SPと略記)およびポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の消泡剤を使用し、化学混和剤は練混ぜ水の一部と見なした。」(第192頁左欄第17行?第192頁右欄第7行)

摘記1-3:「練上がり後、直ちに温度およびJIS R5201規定のモルタルフローコーンを用いて0打モルタルフローを測定した。圧縮強度用の供試体はφ50mm×100mm円柱供試体とし、試験の材齢は7日、28日、91日(一部3日、56日も測定)で、養生は標準養生とした。また材齢7日のみ70℃促進養生(注水24時間後から型枠のまま70℃温水中で6日間養生)も実施した。」(第192頁右欄第20行?第192頁右欄第26行)

摘記1-4:「3.実験結果
SF1またはSF2を単独で5?20%置換したモルタルの練混ぜ結果を表3に、圧縮強度を図1に示す。SF1は置換率10%(No.2)が最も練混ぜ時間が短く、フローが大きかった。置換率5%(No.1)および20%(No.4)ではSP添加量と練混ぜ時間を増やす必要があり、モルタルの流動性は悪かった。圧縮強度は標準および促進養生いずれも置換率の増大に伴って高くなる傾向にあった。SF2を同じ置換率のSF1と比較すると置換率10%(No.5)で練混ぜ時間、フロー、圧縮強度とも同等であった。一方、置換率20%(No.6)ではSF1(No.4)と異なり短時間で練混ぜ可能であったが、圧縮強度は低かった。
ZSFを単独で10?30%置換したモルタルの練混ぜ結果を表3に、圧縮強度を図2に示す。いずれの置換率でも非常に短時間で材料全体が団粒一体化し、良好な流動性を持つモルタルが得られた。フローは置換率20%(No.9)が最も大きく、追加実施したJ14ロートの流下時間は、置換率30%(No.10)が最も短かった。圧縮強度は促進養生した置換率20%(No.9)が最も高く233N/mm^(2)に達した。標準養生では置換率15%(No.8)の材齢91日が最大(220N/mm^(2))であった。またZSFを混和すると、SFを混和した場合より供試体の脱型時期(モルタルの凝結)が遅れ、置換率の増大に伴って弱材齢の強度も低下傾向にあった。凝結が遅れた原因としては、ZSFの一次粒子径が大きく、pHが低いこと(表1参照)が考えられる。
SF1およびZSFを混合して10?15%置換したモルタルの練混ぜ結果を表3に圧縮強度を図3に示す。SF1およびZSFを混合使用した場合のフロ?や圧縮強度は、それぞれ単独で使用した場合のほぼ中間の値であった。」(第193頁左欄第1行?第193頁右欄第10行)

摘記1-5:「(第192頁表1)



摘記1-6:「(第193頁表3)



摘記1-7:「(第193頁図1)



摘記1-8:「(第193頁図2)



摘記1-9:「(第193頁図3)



イ.甲2に記載の事項
摘記2-1:「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水/結合材比が0.2以下のコンクリート組成物の製造方法であって、コンクリート組成物に含まれるセメントを含む結合材の総量を100質量部としたときに、結合材の50質量部から90質量部と水とを練り混ぜてスラリーを調整する第1の練り混ぜ工程と、該スラリーに対し、結合材の残量を添加して練り混ぜる第2の練り混ぜ工程とを有するコンクリート組成物の製造方法。
【請求項2】
前記コンクリート組成物の水/結合材比が、0.05?0.15である請求項1記載のコンクリート組成物の製造方法。
・・・
【請求項4】
前記第1の練り混ぜ工程に用いられる、結合材が、セメント、シリカフューム、スラグ、石灰石微粉末、フライアッシュから選択される1種以上を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項記載のコンクリート組成物の製造方法。
・・・
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の製造方法により得られたコンクリート組成物を硬化させてなる、圧縮強度が80N/mm^(2)以上であるコンクリート成形体。」

摘記2-2:「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、水/結合材比の低いコンクリート組成物に適用した場合でも、短時間、低エネルギーで、均一なスラリー状のコンクリート組成物を調製することができ、高圧縮強度の成形体を形成しうるコンクリート組成物の製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、前記コンクリート組成物の製造方法により得られる組成物を用いてなる、水/結合材比が低く、高圧縮強度のコンクリート成形体を提供することにある。」

摘記2-3:「【0013】
本発明の製造方法が適用されるコンクリート組成物は、水/結合材比が0.2以下の組成物であって、少なくとも、水、セメント、及び、その他の結合材を含有し、目的に応じて、さらに、細骨材、粗骨材などの骨材、及び、減水剤などを含有する。
水/結合材比は、0.2以下、即ち、水と結合材との総量中における結合材の含有量が83.3質量%以上のもの、であることを要し、好ましくは、0.05?0.15、即ち、水と結合材との総量中における結合材の含有量が87質量%?95質量%、の範囲である。
なお、本発明における結合材は、コンクリートの主成分であるセメント及び一般にセメントと共に用いられるシリカフューム、スラグやフライアッシュなどの微粉末を包含するものである。
・・・
【0015】
セメントと共に用いる他の結合材にも特に制限はなく、調製されるコンクリート組成物の用途に応じて、各種セメント、コンクリート用に用いられる結合材から適宜種類、使用量を選択できる。
本発明に用いうるセメント以外の結合材としては、具体的には、高炉スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末、フライアッシュやシリカフュームなどが好ましく挙げられる。
本発明において「結合材」とは、セメント及び添加材としての他の結合材粉末を包含するものである。」

摘記2-4:「【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:低熱ポルトランドセメント(三菱マテリアル社製)比重3.24
混和材:シリカフューム(エルケム社製)比重2.2
水:水道水
細骨材:大月産安山岩砕砂 比重2.6
粗骨材:大月産安山岩砕石 最大寸法15mm 比重2.6
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)添加量:セメント総量の5質量%
単位水量:126kg/m^(3)、水結合材比が0.11となるコンクリート組成物を調製する。また、粗骨材は、かさ容積が0.5m^(3)/m^(3)となる量で添加する。コンクリートの練り量は80Lとした。」

摘記2-5:「【0040】
〔実施例2〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:シリカフュームセメント(三菱マテリアル社製)比重3.08
水:水道水
細骨材:山梨県大月産 安山岩砕砂 密度2.61 吸水率2.48
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)
単位水量:162kg/m^(3)、水結合材比が0.10となるコンクリート組成物を調製する。
【0041】
上記組成のうち、結合材であるセメントを等量に2分割し、実施例1と同様にして、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程において、それぞれ半量ずつ添加してコンクリート組成物を調整した。
第1の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の混合物を得るのに要した時間を測定したところ、45秒であり、第2の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の組成物を得るように要した時間は75秒であり、均一なコンクリート組成物を得るのに要した時間は、120秒であった。」

摘記2-6:「【0043】
〔比較例2〕
実施例2と同様の使用材料を同量用いて、コンクリート組成物を調整した。調整には、実施例1で用いたのと同様なミキサーを用い、すべての材料をミキサー中に投入して1工程で練り混ぜを行い、比較例2のコンクリート組成物を調整した。
比較例2において、均一なコンクリート組成物を得るのに要した練り混ぜ時間は、150秒であった。
比較例2により得られたコンクリート組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に記載する。」

摘記2-7:「【0044】
〔実施例3〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:シリカフュームセメント(三菱マテリアル社製)比重3.08
水:水道水
細骨材:山梨県大月産 安山岩砕砂 密度2.61 吸水率2.48
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)
単位水量:149kg/m^(3)、水結合材比が0.09となるコンクリート組成物を調製する。
【0045】
上記組成のうち、結合材であるセメントを等量に2分割し、実施例1と同様にして、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程において、それぞれ半量ずつ添加してコンクリート組成物を調整した。
第1の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の混合物を得るのに要した時間を測定したところ、51秒であり、第2の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の組成物を得るように要した時間は84秒であり、均一なコンクリート組成物を得るのに要した時間は、135秒であった。」

摘記2-8:「【0047】
〔比較例3〕
実施例3と同様の使用材料を同量用いて、コンクリート組成物を調整した。調整には、実施例1で用いたのと同様なミキサーを用い、すべての材料をミキサー中に投入して1工程で練り混ぜを行い、比較例3のコンクリート組成物を調整した。
比較例3において、均一なコンクリート組成物を得るのに要した練り混ぜ時間は、180秒であった。
比較例3により得られたコンクリート組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に記載する。」

摘記2-9:「【0048】【表1】




(5)取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について

ア.特許法第29条第2項について(取消理由Fについて)

甲2(摘記2-1?2-5、2-7、2-9)には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「セメントと、骨材と、シリカフュームと、水とを含み、水/結合材比(質量基準)が0.09、0.10又は0.11であるセメント組成物」

ここで、本件発明1と、引用発明2とを対比すると、「セメントと、骨材と、シリカフュームと、水とを含み、水/結合材比(質量基準)が0.09?0.13であるセメント組成物」の点で両者は一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとを用い、平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、5.8:1?1:1の範囲であるのに対し、引用発明2は、平均粒径が不明であるとともに、2種類の平均粒径のシリカフュームを用いることも記載されていない点。

上記相違点1について検討する。

甲2のシリカフュームの平均粒径について検討すると、甲2にはシリカフュームの平均粒径が明記されていないが、従来技術である特開2004-203733号公報(本件明細書【0004】の公報番号は誤記と認められる。)の【0003】、特開2008-195576号公報の【0010】、特開平8-333144号公報の【0006】等には、高強度のモルタル・コンクリートを製造する従来技術について、水結合材比を小さくするとともにシリカフューム混和材を使用することが記載されており、その際に用いられる一般的なシリカフュームの平均粒径は0.1μm程度の微粒子であるから、甲2に記載のシリカフュームはその平均粒径が明記されていないものの、平均粒径が0.1μm程度の微粒子である蓋然性は高く、以下、これを前提にした検討を行うこととする。

また、甲1(摘記1-1?1-9)には、150N/mm^(2)を上回る高強度コンクリートを形成するために、セメントに対して平均粒径の異なる2種類のシリカ微粉末を置換率を変えて混和させることが記載されており、平均粒径0.1μmの金属シリコンやフェロシリコンの製造時に副生されるシリカフューム(以下、SF1という)と、平均粒径1μmのジルコニア起源シリカ質微粉末(以下、ZSFという)を用い、水結合材比を14.3%として形成した高強度モルタルについて、圧縮強度、0打モルタルフロー、脱型可能時間を測定したところ、SF1を単独で用いた試料(No.1?No.4)は圧縮強度が低く、流動性が悪かったことが記載されており、また、ZSFを単独で用いた試料(No.7?No.10)は圧縮強度は高く、流動性も良好であったものの、試料の脱型可能時間(モルタルの凝結)が遅くなったことが記載されている。
そして、甲1には、結合材における置換率が5%又は10%のSF1と、結合材における置換率が5%のZSFとを混合する場合(平均粒径0.1μmのシリカフュームと、平均粒径1μmのシリカフュームとを、質量比1:1又は2:1で混合する場合)、SF1を単独で用いた場合に比べて圧縮強度と流動性が向上するとともに、脱型可能時間がSF1単独の場合と同程度の短い時間で可能であることが記載されている。
しかしながら、甲1には、水結合材比を変更することについて記載も示唆もなく、平均粒径0.1μmのシリカフュームと、平均粒径1μmのシリカフュームとを含むセメント組成物について、水結合材比を0.143から0.09、0.10又は0.11に変更した場合に、どの程度の圧縮強度、流動性となるのか(上昇するのか、下降するのか)が不明であり、予測性もなく、そもそも、水結合材比が0.143である時点で、甲1は本件発明1の範疇を逸脱したものである。

甲1は上記のものであるとした上で、次に、引用発明2に甲1に記載の事項を組み合わせることについて検討する。
甲2の実施例2?3は、同じ組成のセメントを用いても、練り混ぜを第1の練り混ぜ工程及び第2の練り混ぜ工程に分けて行うことで、1回の練り混ぜ工程で行う比較例2?3に比べて、標準水中養生、蒸気養生のいずれにおいても圧縮強度が高くなることを示すもの(摘記2-5?2-9)であり、甲2は同じ組成のセメントであっても練り混ぜ方法を工夫すれば圧縮強度を高めることができるという発明であって、セメント中のシリカフュームの組成を変更することについて記載も示唆もない。

さらに、甲2には、セメント中のシリカフュームの組成を変更することについて記載も示唆もないものの、仮に、引用発明2のシリカフュームとして、甲1に記載の結合材における置換率が5%又は10%のSF1と、結合材における置換率が5%のZSFとを混合したものを水結合材比の0.143を0.09、0.10又は0.11に変更した上で適用したとき、どの程度の圧縮強度、流動性となるのかの予測性もない。

したがって、本件発明1は、甲2及び甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様に、甲2及び甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。
よって、取消理由Fには理由がない。

イ.特許法第36条第6項第1号について(取消理由Gについて)

訂正事項1によって、本件発明1は「平均粒径が0.1μmのシリカフューム」と、「平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフューム」に特定されたため、平均粒径の差が小さいものは含まれないものとなった。
そして、下記摘記A-1に記載されるように、本件発明1は、平均粒径の差のある2種類のシリカフュームを用いることで、ベアリング効果によって流動性が飛躍的に向上し、反応性に優れた小粒径シリカフュームをも含有しているために高強度の硬化体を形成できるものと推定されるものである。
よって、本件発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものといえる。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。
よって、取消理由Gには理由がない。

摘記A-1:「【0010】
また、セメント組成物に係る本発明の作用は明確ではないが、以下のように考えている。
従来、セメントの一部を小粒径シリカフュームに置き換えることで、流動性が改善されることが知られていた。しかしながら、高強度化によりセメント組成物の水結合材比が0.2以下の如く小さくなると液相が極端に減少して、セメント粒子間の距離が狭くなり、且つ、セメント粒子に吸着しない微粒子の2次凝が生じやすくなり、凝集体の発生は却って粘性を高める作用を生じる。本発明においては、シリカフュームとして粒径0.2μmを超え1.0μm以下のシリカフュームとしては比較的粒子径が大きく、2次凝集し難いシリカフュームを併用しているため、セメント粒子間に存在する比較的大きなシリカフューム粒子によるベアリング効果が発現し、流動性が飛躍的に向上するものと考えている。通常、シリカフュームの粒子径が大きくなるに従って反応性も低くなる傾向にあるが、本発明においては、流動性向上効果の高い大粒径シリカフュームに加え、反応性に優れた小粒径シリカフュームを含有させるため、調製するセメントペーストの流動性を維持しつつ、極めて高強度の硬化体を形成しうるものと推定される。」


(6)平成29年 5月24日けで当審が通知した取消理由について

ア.特許法第29条第1項第3号第29条第2項について(取消理由Aについて)

訂正事項3によって、本件発明1の水/結合材比(質量基準)が「0.20以下」から「0.09?0.13」に減縮された。
そして、摘記1-1に記載されているように、甲1には、水/結合材比(質量基準)を14.3%(0.143)にすることしか記載されていないため、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様に甲1に記載された発明ではない。

そして、甲2に水結合材比を0.09、0.10又は0.11にすることが記載されていたとしても、甲1には、水結合材比を変更することについての記載も示唆もなく、仮に、甲2に記載の水結合材比を適用したとしても、どの程度の圧縮強度、流動性となるのかの予測性もないから、本件発明1?2は、甲1及び甲2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。
よって、取消理由Aには理由がない。

イ.特許法第29条第2項について(取消理由Bについて)

上記(5)アで検討したように、本件発明1?2は、甲2及び甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。
よって、取消理由Bには理由がない。

ウ.特許法第36条第6項第1号について(取消理由Cについて)

摘記A-1に記載されているように、粒径0.2μmを超え1.0μm以下の比較的粒子径の大きいシリカフュームは2次凝集し難いシリカフュームであり、比較的粒径の小さいシリカフュームに比較的粒径の大きいシリカフュームを併用することで、セメント粒子間に存在する比較的大きなシリカフューム粒子によるベアリング効果が発現するとともに、反応性に優れた小粒径シリカフュームをも含有しているために高強度の硬化体を形成できるものと推定されるものである。
そして、上記ベアリング効果(結果として2次凝集し難いという効果)は、平均粒子径が「0.3μm」の時にだけ生じるものではなく、比較的粒子径の小さいシリカフュームと比較的粒径の大きいシリカフュームとの間に一定の粒子径の差があれば生じるものといえるから、少なくとも2次凝集がし難く、ベアリング効果が生じる程度の上記差が存在するならば発明の課題を解決できるものとなっていると推定できる。
したがって、本件明細書に「0.3μm」の実施例しかないことをもって、本件発明1で特定されている平均粒径の「0.3μm以上1.0μm以下」において、優れた効果が得られず、サポート要件を満たさないとまではいえない。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。
よって、取消理由Cには理由がない。

エ.特許法第36条第6項第1号について(取消理由Dについて)

上記(5)イで検討したように、訂正事項1によって、本件発明1は「平均粒径が0.1μmのシリカフューム」と、「平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフューム」に特定されたため、平均粒径の差が小さいものは含まれないものとなった。
そして、摘記A-1に記載されるように、上記平均粒径の差のある2種類のシリカフュームを用いることで、ベアリング効果によって流動性が飛躍的に向上し、反応性に優れた小粒径シリカフュームをも含有しているために高強度の硬化体を形成できるものと推定されるものである。
よって、本件発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものといえる。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。
よって、取消理由Dには理由がない。

オ.特許法第36条第6項第1号について(取消理由Eについて)

訂正事項2によって、「前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比」について、「8:1?1:1の範囲」から「5.8:1?1:1の範囲」に減縮された。

そして、本件明細書の段落【0061】の実施例20には、小粒径シリカフュームと大粒径シリカフュームの質量比が5.8:1(17.5/3:1=5.83:1)であることが記載されており、実施例に即した範囲に減縮された。
よって、本件発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものといえる。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。
よって、取消理由Eには理由がない。


(7)特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は、取消理由Fに関し、平成30年 3月 7日付け意見書において、特許権者の平成30年 2月 2日付け意見書の「圧縮強度を向上させる」点に関する効果と、動機付けに関する主張に対する再反論、及び、本件発明1?2が、文言上、甲2の練り混ぜ方法を用いて得られるセメント組成物を包含する旨の主張をしているが、当該主張は、上記5(ア)で示した検討の範疇のものであり、これをもって、同(ア)の判断が変わることにはならない。
そして、特許異議申立書、平成29年 9月5日付け意見書における主張についても同じである。

また、特許異議申立人は、取消理由Cに関し、特許異議申立書及び平成30年 3月 7日付け意見書において、甲3の記載から、平均粒子径1.0μmのジルコニア起源のシリカフュームBと、平均粒子径0.8μmのジルコニア起源のシリカフュームAを用いた場合とで、「J14流下時間」(流動性)、「28日圧縮強度」が大きく異なるため、平均粒径の大きさによって、セメント組成物の流動性や強度などの諸物性が大きく変化すること、及び、本件明細書には、一方のシリカフュームの平均粒径が0.3μmのものを用いた実施例しか記載されていないため、「平均粒径が0.3μm」の場合に効果が得られても、「平均粒径が1.0μm」のシリカフュームの場合に優れた効果が得られない旨を主張している。
しかしながら、甲3は、2種類の平均粒径のシリカフュームを混合したものではなく、1種類の平均粒径のシリカフュームを用いたものであるから、セメント組成物の流動性、圧縮強度に関して、2種類の平均粒径のシリカフュームを混合する場合にどのようになるのかについて考察するものではない。
そして、上記5(ウ)で検討したように、少なくともベアリング効果が生じる程度の平均粒径の差が存在するならば、発明の課題を解決できるものとなっていると推認できるから本件発明1?2がサポート要件に適合しないとまではいえない。


5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、骨材と、平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームと、水とを含み、前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームと、前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームとの含有質量比が、5.8:1?1:1の範囲であり、かつ、水/結合材比(質量基準)が0.09?0.13であるセメント組成物。
【請求項2】
前記平均粒径が0.1μmのシリカフュームの含有量と前記平均粒径が0.3μm以上1.0μm以下のシリカフュームの含有量との総量が、全結合材に対し10質量%?35質量%の範囲である請求項1に記載のセメント組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-30 
出願番号 特願2011-146624(P2011-146624)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C04B)
P 1 651・ 113- YAA (C04B)
P 1 651・ 121- YAA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永田 史泰伊藤 真明  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 後藤 政博
山本 雄一
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5992148号(P5992148)
権利者 株式会社竹中工務店
発明の名称 セメント組成物  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  

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