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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 F16L 審判 全部申し立て 2項進歩性 F16L |
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管理番号 | 1340138 |
異議申立番号 | 異議2017-700147 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-17 |
確定日 | 2018-04-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5969163号発明「ゴムホース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5969163号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3及び4について訂正することを認める。 特許第5969163号の請求項1、2、3及び4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5969163号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成22年8月4日の出願であって、平成28年7月15日に特許権の設定登録がされ、その後、平成29年2月17日に特許異議申立人岩本牧子(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1?4に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、同年5月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月6日に意見書が提出され、同年8月31日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年11月2日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年11月29日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、その指定期間内である同年12月28日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 平成29年11月2日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第5969163号(以下、「本件特許」という。)の願書に添付した特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下(1)?(4)のとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とする」と記載されているのを、「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=4とする」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けた請求項1に記載のゴムホース」と記載されているのを、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであり、かつ、前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けたことを特徴とするゴムホース」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満である請求項1または2に記載のゴムホース」と記載されているのを、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満であることを特徴とするゴムホース」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満である請求項1?3にいずれかに記載のゴムホース」と記載されているのを、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満であることを特徴とするゴムホース」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0028】?【0034】の記載、特に、【0033】の【表1】の「構造」が、実施例3において「1×4」であることを根拠として、訂正前の請求項1の「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とする」と記載されているのを、「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=4とする」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2における請求項1の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるとともに、それをさらに、特許明細書の段落【0015】の記載を根拠として、訂正前の請求項1の「補強層」に関して、その「層数」を限定し、かつ、訂正前の請求項1の「ゴムホース」と記載されているのを、「高圧流体を流通させる高圧ホース」に限定するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3における請求項1の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるとともに、それをさらに、特許明細書の段落【0028】?【0034】の記載、特に、【0033】の【表1】の「撚り倍数P/A」が、実施例2において「26.7」であることを根拠として、訂正前の請求項3の「撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下」と記載されているのを、「撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして」に訂正することで、撚り倍数(P/A)の数値の範囲を限定するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4における請求項1の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるとともに、それをさらに、特許明細書の段落【0028】?【0034】の記載、特に、【0033】の【表1】の「撚りピッチP(mm)」が、実施例2において「16.0」及び実施例1において「20.0」であることを根拠として、訂正前の請求項1を引用する請求項4の「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下」「前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満である」と特定されているのを、すなわち、この特定により実質的に示されているといえる上記撚りピッチP(「上記撚りピッチP=撚り倍数(P/A)×スチールコードの外径A」で求められる。)の数値の範囲が、3(15.0×0.2)?20(20.0×1.0)mmであることを、「撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり」と訂正することで、「撚り倍数(P/A)」に係る上記撚りピッチPについて、数値の範囲を限定するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)一群の請求項について 訂正事項1?4に係る訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は、直接又は間接的に請求項1を引用しているものであって、本件訂正請求は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 小括 したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕についての訂正を認める。 そして、訂正後の請求項2、3及び4に係る訂正(訂正事項2、3及び4)は、いずれも、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものであり、特許権者から、訂正後の請求項2、3及び4について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項1、2、3及び4について、請求項ごとに訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、3及び4に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1、2、3及び4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2、3及び4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であることを特徴とするゴムホース。 【請求項2】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであり、かつ、前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けたことを特徴とするゴムホース。 【請求項3】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満であることを特徴とするゴムホース。 【請求項4】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満であることを特徴とするゴムホース。」 第4 特許異議の申立てについて 1 取消理由の概要 本件発明1?4に係る特許に対して、平成29年8月31日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 [取消理由] 本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は取り消すべきものである。 刊行物1:特開平7-90784号公報 刊行物2:特開平11-141751号公報 上記刊行物1及び刊行物2は、特許異議申立人が特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)である(なお、取消理由に記載した各刊行物は、上記各刊行物の誤記であり、特許権者も認めている。)。 2 当審の判断 上記1で述べた取消理由通知(決定の予告)について、以下、検討する。 2-1 各甲号証に記載された事項ないし発明 (1)甲1について ア 甲1に記載された事項 甲1には、「ゴム物品補強用金属コード及びこれとゴムとの複合物」に関して、表1及び図1?5とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下、同様である。) (1a) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、耐食性、耐疲労性及び耐エッヂセパレーション性に優れたゴム物品補強用の金属コードと、これを補強材としてゴム中に埋設して作られたタイヤ、コンベアベルト、高圧ホース等のゴム複合物に関する。」 (1b) 「【0004】一般によく用いられる前述の1×4または1×5のクローズドコードは、図5に示すような断面形状をしており、コード中央部に空洞が存在する。このために、これらの金属コードをゴム中に埋設すると、コード内部にゴムが浸入せず、ゴムによる被覆がなされない中空スペースが生じる。このような中空スペースを内部にもつ金属コードとゴムの複合体は、水分の浸透で金属コードの腐食や金属コードとゴム間のセパレーション等の品質トラブルを起こすため短寿命となる。 ・・・ 【0006】一方、近年の環境保護の高まりから、自動車の排ガス量を減らすための開発が種々行なわれている。低燃費化は排ガス量の抑制に直結するのでこの面での開発は特に盛んであり、自動車用タイヤにおいても転がり抵抗の低減や重量減の観点から、軽量化の強い要求がある。このため、金属コードの直径を小さくし、さらに被覆ゴムの厚さが薄くて済むようにコードの撚り構成を簡素化する試みがなされている。例えば、特開昭62-117893号や特開昭62-234921号には、図3に示すように2本の金属フィラメント2を撚り合わせただけの非常に簡素な1×2コードが提案されている。このコードは、内部に空洞が存在しないのでフィラメント接触部以外は埋設ゴムで被覆され、耐食性も極めて優れている。また、特開平2-229286号には、2本の金属フィラメントの撚り合わせくせ付けの度合を適正範囲に設定することによって2本の金属フィラメント間に部分的に隙間を設け、これによりゴム被覆率をさらに改善して耐食性を向上させた1×2の改良コードが提案されている。」 (1c) 「【0010】そこで、本発明は、耐食性や軽量化に優れた1×2コードに代表される2乃至3本撚りコードに関し、従来問題となっていたコード端面未接着部に起因するエッヂセパレーションの防止性能及び曲げ疲労や圧縮疲労のような耐疲労性を改良した金属コードと、このコードを補強材料として耐久性を向上させたタイヤ、コンベアベルト、高圧ホース等のゴム複合物を提供しようとするものである。」 (1d) 「【0015】かかる金属コードを、天然ゴム、又は合成ゴムを主体とするゴム中に補強材として埋設して作られるタイヤ、コンベアベルト、高圧ホース等が本発明のゴム複合物であって、この複合物は、同じ2本撚りコードを用いた従来の複合物に比べて耐久性に優れる。」 (1e) 「【0036】以上の試料のほかに、1×3×0.27のクローズコード(比較例1)、並びに図3に示す1×2×0.30のクローズコード(比較例3)も準備した。 【0037】次に、これ等の試料を用いて耐食性の代用特性であるゴム中に埋設したときのゴム被覆率を測定し、また耐疲労性の代用特性としてコードとゴムの複合体についてのコード軸方向圧縮疲労試験を実施した。さらに、耐エッヂセパレーション性の指標としてコード両端切断時にくせ付けフィラメントがコード長手方向外側へ突き出す長さΔlの平均値を測定した。」 (1f) 「【0038】その結果を表1にまとめて示す。 【0039】同表から判るように、実施例1?6は、比較例1、3の従来コードに比べてゴム浸透性が改善され、ゴム被覆率が非常に良く、圧縮疲労試験による耐疲労性及びコード切断時のくせ付けフィラメントの突き出し長さの平均値も比較例1、2又は3、4より優れた結果が得られている。」 (1g) 段落【0040】の【表1】には、「サイズ及び撚り構成(撚りピッチP・撚り方向)」の列において、「比較例1」の行に、「1×3×0.27C・C(12.5S)」と記載され、「比較例3」の行に、「1×2×0.30C・C(14S)」と記載されている。 イ 甲1に記載された発明 (ア) 甲1の各実施例及び各比較例のコードは、「ゴム物品補強用の金属コード」(摘記(1a))であると認められ、摘記(1e)の段落【0037】において、「これ等の試料」は、「各実施例及び各比較例のコード」を意味し、「コードとゴムの複合体」は、「金属コードとゴムの複合体」を意味しているものと認められる。 (イ) 上記(ア)及び摘記(1a)?(1g)から、甲1には、比較例1及び比較例3に関して、それぞれ、次の発明(以下、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明1] 「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体であって、 金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である、 金属コードとゴムの複合体。」 [甲1発明2] 「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体であって、 金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×2×0.30のクローズコードであり、撚りピッチPが14である、 金属コードとゴムの複合体。」 (2)甲2について ア 甲2に記載された事項 甲2には、「高圧ゴムホース」に関して、図1?5とともに、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【請求項1】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、層間ゴム層を挟んで複数層の鋼線スパイラル補強層を介在させた呼び径65mm,使用圧力34.5 MPa用の大口径高圧ゴムホースであって、 前記鋼線スパイラル補強層を6層にすると共に、該補強層の補強材に、引張り強さ260 ±15kgf/mm^(2 ),直径0.8 ±0.05mmのスチール単線を用い、かつ該スチール単線を1層当たり162本±5本の単位で平行に引き揃えてスパイラルに巻回して成る高圧ゴムホース。 【請求項2】 前記各補強層の鋼線編組密度を、90%?99%にした請求項1に記載の高圧ゴムホース。」 (2b) 「【0004】 【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するため、内面ゴム層と外面ゴム層との間に、層間ゴム層を挟んで複数層の鋼線スパイラル補強層を介在させた呼び径65mm,使用圧力34.5 MPa用の大口径高圧ゴムホースであって、前記鋼線スパイラル補強層を6層にすると共に、該補強層の補強材に、引張り強さ260 ±15kgf/mm^(2 ),直径(線径)0.8±0.05mmのスチール単線を用い、かつ該スチール単線を1層当たり162本±5本の単位で平行に引き揃えてスパイラルに巻回して構成したことを要旨とするものである。 【0005】このように、鋼線スパイラル補強層の補強材として、引張り強さ260 ±15kgf/mm^(2 ),直径 (線径)0.8±0.05mmのスチール単線を用い、かつ該スチール単線を1層当たり162本±5本の単位で平行に引き揃えてスパイラルに巻回して6層配置するようにしたので、従来の撚り線から成るスチールコードに比べて使用量が大幅に少なく、軽量化及びコンパクト化することが出来、更に剛性も低減するので、最小曲げ半径を大幅に減少させて取扱性を向上することが出来る。」 2-2 対比・判断 (1)本件発明1について (1-1)本件発明1と甲1発明1との対比・判断 ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 (ア) 甲1発明1の「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した」構造は、補強構造であるといえるから、当該構造と、本件発明1の「スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層」とは、「スチールコードで形成した補強構造」の限りで共通する。 (イ) 上記(ア)を踏まえると、甲1発明1の「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」と、本件発明1の「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」とは、「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」の限りで共通する。 (ウ) コード仕様の表記の技術常識に照らすと、甲1発明1において、「金属コード」が、「サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコード」であることは、「1本の金属コードが、3本の金属フィラメントで構成され、それぞれの金属フィラメントの直径が0.27mmであり、3本の金属フィラメントが隙間の無いように撚られている」構成を意味しているといえる。 (エ) 甲1発明1の「金属コード」は、「クローズコード」であること、及び、甲1発明1の「金属コード」、すなわち、甲1の表1における比較例1について、「螺旋波形状」の仕様を示している列に着目すると、具体的な数値の記載が無いことから、甲1発明1の「金属コード」を「構成」する「金属フィラメント」は癖付けしていない金属フィラメントであることが、明らかである。 (オ) 甲1発明1の「金属フィラメント」は、本件発明1の「コード素線」に相当する。 (カ) 甲1発明1において、「撚りピッチPが12.5」は「撚りピッチPが12.5mm」の構成を意味することが、明らかである。 (キ) また他方で、本件発明1の「N」も、同様にコード仕様の表記の技術常識に照らすと、コード素線の本数を意味していることが、明らかである。 (ク) 上記(ア)?(キ)を踏まえると、甲1発明1の「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」ことと、本件発明1の「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下である」こととは、「補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であ」ることの限りで共通する。 以上から、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点A1> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であるスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(A1)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明1は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明1は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(A1)> 本件発明1は、スチールコードが、1×N構造であり、「N=4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下である」のに対して、甲1発明1は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(A1)について検討する。 (ア) 甲1発明1は「クローズコード」であり、金属フィラメント(コード素線)を撚って形成されるコードの外径がほぼ一定であること(技術常識といえる。)を踏まえると、甲1発明1の「3本の金属フィラメント」(3本のコード素線)の配置は、それらの各金属フィラメントの中心が、ほぼ正三角形の頂点となる配置(以下、「正三角形の態様」という。)となっているといえる。 甲1発明1において、上記の正三角形の態様となる場合は、「金属コード」の外径Aは、金属コードの中心から金属フィラメントの中心までの距離((金属フィラメントの外径/2)/cos30°)に、金属フィラメントの半径(金属フィラメントの外径/2)を加えて、2倍したもの、すなわち、((0.27mm/2)/cos30°+0.27mm/2)×2=0.27mm/0.866+0.27mm=約0.58mmとなり、P/A=12.5mm/0.58mm=約21.6となる。 また、念のため、甲1発明1において、「3本の金属フィラメント」(3本のコード素線)の配置が、一直線上にそれらの各金属フィラメントの中心が位置する態様となる場合についても検討すると、「金属コード」の外径Aは、0.27mm×3=0.81mmとなり、P/A=12.5mm/0.81mm=約15.4となる。 (イ) したがって、甲1発明1のP/Aは、少なくとも約15.4?約21.6の数値範囲が想定され、本件発明1の「(P/A)が15.0以上35.0以下」の数値範囲内のものとなっているといえる。 (ウ) しかしながら、甲1発明1における上記(イ)は、上記(ア)で述べたとおり、3本のコード素線、すなわち、N=3を前提とするものであり、4本のコード素線、すなわち、N=4とすることは、想定していない。 (エ) 甲1及び甲2には、「ホースの軽量化、柔軟化を図りつつ、ホース金具の加締め性能の低下を抑える」(特許明細書の段落【0006】)という本件発明1の課題は、記載も示唆もされていないことから、この課題を解決するために、甲1発明1の構成を変更しようとする動機付けは無いといえる。 (オ) さらに、甲1には、N=4とすると、「コード中央部に空洞が存在する」ことに起因して「金属コードとゴムの複合体は、水分の浸透で金属コードの腐食や金属コードとゴム間のセパレーション等の品質トラブルを起こすため短寿命となる」という問題が発生する旨が記載されており(摘記(1b)段落【0004】)、この問題は、甲1発明1をゴムホースとして構成した場合にも発生するといえる。 このように、甲1発明1において、N=4として構成することには、阻害要因があるといえる。 (カ) したがって、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項から、上記相違点2(A1)に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、その余の相違点1(A1)について検討するまでもなく、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (1-2)本件発明1と甲1発明2との対比・判断 ア 対比 甲1発明2は、コード仕様に係る数値が甲1発明1とは異なっているが、甲1発明2と本件発明1との対比については、上記(1-1)アの本件発明1と甲1発明1との対比と同様のことがいえるから、上記(1-1)アを踏まえると、本件発明1と甲1発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点B1> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であるスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(B1)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明1は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明2は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(B1)> 本件発明1は、スチールコードが、1×N構造であり、「N=4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下である」のに対して、甲1発明2は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×2×0.30のクローズコードであり、撚りピッチPが14である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(B1)について検討する。 (ア) 甲1発明2において、「2本の金属フィラメント」(2本のコード素線)の配置は、それらの各金属フィラメントの中心が、ほぼ一直線上に位置する態様をとるといえるから、「金属コード」の外径Aは、0.30mm×2=0.60mmとなり、P/A=14mm/0.60mm=約23.3と求めることができる。 (イ) しかしながら、甲1発明2に関しても、上記(1-1)イ(ウ)?(カ)で述べたことと同様のことがいえるから、2本のコード素線、すなわち、N=2を前提とする甲1発明2において、4本のコード素線、すなわち、N=4とすることは想定し得るものではなく、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点2(B1)に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、その余の相違点1(B1)について検討するまでもなく、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2について (2-1)本件発明2と甲1発明1との対比・判断 ア 対比 (ア) 甲1発明1の「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した」構造は、補強構造であるといえるから、当該構造と、本件発明2の「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層」であり、「さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にし」た構造とは、「スチールコードで形成した補強構造」の限りで共通する。 (イ) 上記(ア)を踏まえると、甲1発明1の「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」の構成と、本件発明2の「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であり、「さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであ」る構成とは、「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」の構成の限りで共通する。 (ウ) コード仕様に関する本件発明2と甲1発明1との対比については、上記(1)(1-1)ア(ウ)?(キ)で述べたことと同様のことがいえる。 (エ) 上記(ア)?(ウ)を踏まえると、甲1発明1の「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」ことと、本件発明2の「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下である」こととは、「補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とする」ものであることの限りで共通する。 以上から、本件発明2と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点A2> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(A2)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明2は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であり、「さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであ」るのに対して、甲1発明1は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(A2)> 本件発明2は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であ」るのに対して、甲1発明1は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」点。 <相違点3(A2)> 本件発明2は、「前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けた」のに対して、甲1発明1は、そのように特定されていない点。 イ 判断 相違点3(A2)に係る補強層の構造は、相違点1(A2)に係る補強構造と密接に関連するといえるから、事案に鑑み、以下、これら相違点1(A2)及び相違点3(A2)を併せて検討する。 (ア) 本件発明2の課題は、「ホースの軽量化、柔軟化を図りつつ、ホース金具の加締め性能の低下を抑える」(特許明細書の段落【0006】)ことであるところ、この課題を解決するために、本件発明2は、少なくとも、上記相違点1(A2)に係る本件発明2の構成、及び、上記相違点3(A2)に係る本件発明2の構成を備え、上記相違点1(A2)に係る本件発明2の構成によると、「ゴムホース」、しかも、「前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであ」るものを対象としている。 (イ) 甲1発明1は、甲1の実施例に対する比較例であり(上記第4 2 2-1(1)イ(イ))、甲1発明1の「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」は、甲1において、比較例として位置付けられているものである(甲1の段落【0040】の【表4】)。 (ウ) 甲1に記載された各実施例の具体的な用途は、タイヤ、コンベアベルト、高圧ホース等であり(摘記(1a)、(1c)及び(1d))、耐疲労性を改良し耐久性を向上させることを目的としているものであるが(摘記(1c))、甲1には、比較例である甲1発明1を、上記の用途に用いることや、上記の用途における補強構造等の具体的な態様は、記載も示唆もされておらず、さらに、本件発明2の上記課題も、記載も示唆もされていない。 (エ) 甲2には、単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を複数層設けることは示されているが(摘記(2a)及び(2b))、上記相違点1に係る本件発明2の構成(補強層の具体的な態様)は、記載も示唆もされていないし、本件発明2の上記課題も、記載も示唆もされていない。 (オ) したがって、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点1(A2)及び上記相違点3(A2)に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明2は、その余の相違点2(A2)について検討するまでもなく、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-2)本件発明2と甲1発明2との対比・判断 ア 対比 甲1発明2は、コード仕様に係る数値が甲1発明1とは異なっているが、甲1発明2と本件発明2との対比については、上記(2-1)アの本件発明2と甲1発明1との対比と同様のことがいえるから、上記(2-1)アを踏まえると、本件発明2と甲1発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点B2> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(B2)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明2は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であり、「さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであ」るのに対して、甲1発明2は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(B2)> 本件発明2は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であ」るのに対して、甲1発明2は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×2×0.30のクローズコードであり、撚りピッチPが14である」点。 <相違点3(B2)> 本件発明2は、「前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けた」のに対して、甲1発明2は、そのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1(B2)及び相違点3(B2)について、上記(2-1)イと同様のことがいえるから、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点1(B2)及び相違点3(B2)に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明2は、その余の相違点2(B2)について検討するまでもなく、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明3について (3-1)本件発明3と甲1発明1との対比・判断 ア 対比 本件発明3と甲1発明1とを対比すると、上記(1)(1-1)ア(ア)?(キ)で述べたことと同様のことがいえるところ、そのことを踏まえると、甲1発明1の「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」ことと、本件発明3の「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満である」こととは、「補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とする」ものであることの限りで共通する。 以上から、本件発明3と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点A3> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(A3)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明3は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明1は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(A3)> 本件発明3は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満である」のに対して、甲1発明1は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(A3)について検討する。 (ア) 本件発明3の課題は、「ホースの軽量化、柔軟化を図りつつ、ホース金具の加締め性能の低下を抑える」(特許明細書の段落【0006】)ことであり、本件発明3は、この課題を解決するための具体的な構成として、「撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上」という構成、すなわち、撚り倍数の数値範囲を26.7以上35.0以下とする構成を備えるものである。 (イ) 特許明細書の段落【0033】の表1において、従来例の曲げ剛性及び重量を、それぞれ100とした場合、撚り倍数が本件発明3の数値範囲を満たす実施例2(撚り倍数26.7)及び実施例1(撚り倍数33.3)は、それぞれ、曲げ剛性及び重量が、79及び98、70及び74であり、しかも、加締め性能は維持されているから、上記課題を解決できるものである(撚り倍数が本件発明3の数値範囲を満たさない実施例3(撚り倍数23.3)は、重量が100であり、軽量化されていない。)。 (ウ) 甲1及び甲2には、本件発明3の課題は記載も示唆もされていない。また、甲1発明の金属コードとゴムの複合体は、比較例であって単なる試験片である(摘記(1e))。 そうすると、単なる試験片の甲1発明1の金属コードとゴムの複合体をホースに用いた上で、さらに、ホースに関する上記課題を解決しようとして、甲1発明1において想定され得る、撚り倍数(P/A)=約15.4?約21.6(上記(1)(1-1)イ(ア)及び(イ))という数値範囲を変更しようとする動機付けは無いといえるから、甲1発明1において、撚り倍数(P/A)を26.7以上にすることは想定し得るものではない。 (エ) したがって、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点2(A3)に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明3は、その余の相違点1(A3)について検討するまでもなく、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3-2)本件発明3と甲1発明2との対比・判断 ア 対比 甲1発明2は、コード仕様に係る数値が甲1発明1とは異なっているが、甲1発明2と本件発明3との対比については、上記(3-1)アの本件発明3と甲1発明1との対比と同様のことがいえるから、上記(3-1)アを踏まえると、本件発明3と甲1発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点B3> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(B3)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明3は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明2は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(B3)> 本件発明3は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満である」のに対して、甲1発明2は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×2×0.30のクローズコードであり、撚りピッチPが14である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(B3)について検討する。 上記相違点2(B3)に係る撚り倍数(P/A)については、上記(3-1)イで述べたことと同様のことがいえるから、甲1発明2において、撚り倍数(P/A)=約23.3(上記(1)(1-2)イ(ア))という数値を変更しようとする動機付けは無く、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点2(B3)に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明3は、その余の相違点1(B3)について検討するまでもなく、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明4について (4-1)本件発明4と甲1発明1との対比・判断 ア 対比 本件発明4と甲1発明1とを対比すると、上記(1)(1-1)ア(ア)?(キ)で述べたことと同様のことがいえるところ、そのことを踏まえると、甲1発明1の「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」ことと、本件発明4の「前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満である」こととは、「補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とする」ものであることの限りで共通する。 以上から、本件発明4と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点A4> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(A4)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明4は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明1は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(A4)> 本件発明4は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満である」のに対して、甲1発明1は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×3×0.27のクローズコードであり、撚りピッチPが12.5である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(A4)について検討する。 (ア) 特許明細書の段落【0033】の表1において、撚りピッチは、実施例2が、16.0mm、実施例1が20.0mm、実施例3が14.0mmであり、実施例2及び実施例1は、本件発明4の撚りピッチが16.0mm?20.0mmの数値範囲を満たしているが、実施例3は満たしていないところ、本件発明4の課題と本件発明4の撚りピッチの数値範囲ないし実施例との関係は、上記(3)(3-1)イ(ア)及び(イ)で述べたことと同様のことがいえる。 (イ) そうすると、上記(3)(3-1)イ(ウ)及び(エ)で述べたのと同様に、甲1発明1において、撚りピッチP=12.5mm(上記(1)(1-1)イ(ア))という数値を変更しようとする動機付けは無いといえるから、甲1発明1において、撚りピッチPを16.0mm?20.0mmにすることは想定し得るものではなく、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点2(A4)に係る本件発明4の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明4は、その余の相違点1(A4)について検討するまでもなく、甲1発明1並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4-2)本件発明4と甲1発明2との対比・判断 ア 対比 甲1発明2は、コード仕様に係る数値が甲1発明1とは異なっているが、甲1発明2と本件発明4との対比については、上記(4-1)アの本件発明4と甲1発明1との対比と同様のことがいえるから、上記(4-1)アを踏まえると、本件発明4と甲1発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点B4> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体において、前記補強構造を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするスチールコードとゴムの複合体。」 <相違点1(B4)> 「スチールコードで形成した補強構造を備えたスチールコードとゴムの複合体」に関して、本件発明4は、「内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホース」であるのに対して、甲1発明2は、「ゴム物品補強用の金属コードを、ゴム中に埋設した、金属コードとゴムの複合体」である点。 <相違点2(B4)> 本件発明4は、「前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満である」のに対して、甲1発明2は、「金属コードは、サイズ及び撚り構成が1×2×0.30のクローズコードであり、撚りピッチPが14である」点。 イ 判断 以下、事案に鑑み、相違点2(B4)について検討する。 上記相違点2(B4)に係る撚りピッチPについては、上記(4-1)イで述べたことと同様のことがいえるから、甲1発明2において、撚りピッチP=14.0mm(上記(1)(1-2)イ(ア))という数値を変更しようとする動機付けは無く、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、上記相違点2(B4)に係る本件発明4の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明4は、その余の相違点1(B4)について検討するまでもなく、甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、3及び4は、甲1発明1ないし甲1発明2並びに甲1及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明1、2、3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものであるとはいえない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)採用しなかった特許異議申立理由 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかったが、次の理由も、特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)とされている。 [申立理由A] 本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 [申立理由B] 本件特許の請求項2?4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由Aについて 申立理由Aについて、以下、検討する。 上記「2」のとおりであるから、本件発明1、3及び4は、甲1発明1又は甲1発明2であるとはいえず、本件発明1、3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものであるとはいえない。 (3)申立理由Bについて 申立理由Bについて、以下、検討する。 ア 異議申立人は、異議申立書において、本件発明2の「単線コード補強層を設けたこと」、本件発明3の「コード素線の素線径」の数値範囲、及び、本件発明4の「スチールコードの外径」の数値範囲が実施例に記載が無い旨主張する。 イ しかしながら、上記アで主張する、本件発明2、3及び4の構成は、それぞれ、特許明細書の段落【0020】、【0018】及び【0019】に記載されており、それらの作用効果についても、それらの各段落に記載されている。 ウ したがって、本件発明2?4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2、3及び4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であることを特徴とするゴムホース。 【請求項2】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記補強層が前記スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成したものである場合はその層数を4層?6層とし、前記スチールコードを編組して形成したものである場合はその層数を1層?2層にして、前記ゴムホースが高圧流体を流通させる高圧ホースであり、かつ、前記補強層の外周側に単線のスチールコードによって形成した単線コード補強層を設けたことを特徴とするゴムホース。 【請求項3】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記撚り倍数(P/A)を26.7以上にして、かつ、前記癖付けしていないコード素線の素線径が、0.1mm以上0.4mm未満であることを特徴とするゴムホース。 【請求項4】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、スチールコードをスパイラル状に巻付けて形成した補強層、或いは、スチールコードを編組して形成した補強層を備えたゴムホースにおいて、前記補強層を形成するスチールコードが、癖付けしていない複数本のコード素線を撚り合わせた1×N構造であり、N=2?4とするとともに、前記スチールコードの外径Aに対するコード素線の撚りピッチPの比率を示す撚り倍数(P/A)が15.0以上35.0以下であって、さらに、前記ピッチPが16.0mm?20.0mmであり、かつ、前記癖付けしていないコード素線で構成されるスチールコードの外径が、0.2mm以上1.0mm未満であることを特徴とするゴムホース。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-03-19 |
出願番号 | 特願2010-175232(P2010-175232) |
審決分類 |
P
1
651・
112-
YAA
(F16L)
P 1 651・ 121- YAA (F16L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 杉山 豊博 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 出口 昌哉 |
登録日 | 2016-07-15 |
登録番号 | 特許第5969163号(P5969163) |
権利者 | 横浜ゴム株式会社 |
発明の名称 | ゴムホース |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |