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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1340568
審判番号 不服2017-10026  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-06 
確定日 2018-05-17 
事件の表示 特願2013-147020「ドット記録装置、ドット記録方法、及び、そのためのコンピュータープログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月29日出願公開、特開2015- 16671〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月12日の出願であって、平成28年12月14日付けで手続補正書が提出され、平成29年5月12日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年7月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成28年12月14日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。)

「複数のノズルを有する記録ヘッドと、
主走査方向に前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行し、
各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるn種類のスーパーセル領域ごとに前記マルチパス記録を実行し、
前記n種類のスーパーセル領域は、
(i)個々のスーパーセル領域の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し、
(ii)前記n種類のスーパーセル領域の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置され、
(iii)前記n種類のスーパーセル領域のうちの第1のスーパーセル領域と第2のスーパーセル領域とは互いに重なっている、
ドット記録装置。」


第3 引用刊行物
1.刊行物1
原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成21(2009)年2月5日に頒布された刊行物である国際公開第2009/015921号(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、括弧内の訳文は、当審が作成した。また、下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「Field of the Invention
[0001] The present invention is related to the field of ink jet printing methods and ink jet printers.」
(技術分野
[0001]本発明は、インクジェット印刷方法およびインクジェットプリンタの分野に関する。)
(2)「Aims of the Invention
[0007] The present invention aims to provide at least an alternative solution to the problem of ink bleeding and/or banding. It is an aim of the invention to provide a dot matrix printing method and an apparatus implementing said method in which the occurred ink bleeding and/or banding is less visible to the human eye. It is also an aim of the invention to provide a dot matrix printing method and an apparatus implementing said method in which the ink bleeding and/or banding can be controlled.」
(発明の目的
「0007]本発明は、インクブリーディング及び/又はバンディングの問題に対する少なくとも代替の解決策を提供することを目的とする。本発明の目的は、発生したインクブリーディング及び/又はバンディングが人間の眼に見えにくいドットマトリックス印刷方法及び該方法を実施する装置を提供することである。また、本発明の目的は、インクブリーディング及び/又はバンディングを制御することができる前記方法を実施するドットマトリックス印刷方法および装置を提供することである。)
(3)「[0052] Figure 5 illustrates a fifth embodiment of the dot matrix printing method of the invention with a meshed framework according to the third embodiment. The framework 50 is selected, comprising geometrical figures as framework elements 51 in between the meshes 52 and applied to the print data. In a first recording step, the portion of print data falling within the meshed framework 51 is recorded. As figure 5A starts from the top of the image, the framework 50 is cut at the top, and in the first pass "1" only half the height of a pass is recorded in figure 5A. In a following step, shown in figure 5B, during a second pass "2" of the print head, the portion of print data falling within the meshes 52 is recorded. The meshes 52 of pass "2" extend beyond the framework recorded in pass "1". Actually, the meshes 52 may be seen as a framework as well, and the squares 51 as meshes. In the following pass "3", as illustrated by figure 5C, print data relating to the meshes obtained in the previous pass is recorded.
[0053] In the embodiment of figure 5, meshes 52 and framework elements 51 have the same shape and are the complement of each other. They may be considered as tiles, wherein each tile recorded in one pass is tiled with tiles recorded in a subsequent pass. Therefore, both the "1" and "3" tiles and the "2" tiles may be considered as framework elements and the other one of the two as meshes.
[0054] When bidirectional printing is applied to the printing mode of figure 5, tiles recorded in subsequent passes are not printed in the same direction. This may lead to bidirectional banding. Moreover, possible feed errors in the mode of figure 5 will be present throughout the band (at the borders between tiles, or between meshes and framework elements) and may therefore be less visible. In other words, the print out may appear more uniform.…」
([0052]図5は、第3の実施形態によるメッシュフレームを備えた本発明のドットマトリクス印刷方法の第5の実施形態を示す。フレームワーク50は選択され、メッシュ52の間にフレームワーク要素51として幾何学的図形を含み、印刷データに適用される。第1の記録ステップでは、メッシュフレームワーク51内の印刷データの部分が記録される。図5Aが画像の上部から開始すると、フレームワーク50が上部で切断され、第1のパス「1」では、パスの高さの半分だけが図5Aに記録される。図5Bに示す次のステップでは、印刷ヘッドの第2のパス「2」の間に、メッシュ52内に入る印刷データの部分が記録される。パス「2」のメッシュ52は、パス「1」に記録されたフレームワークを越えて延びている。実際には、メッシュ52はフレームワークとしても、正方形51はメッシュとしても見える。次のパス「3」では、図5Cに示すように、前パスで得られたメッシュに関する印刷データが記録される。
[0053]図5の実施形態では、メッシュ52およびフレームワーク要素51は同じ形状を有し、互いに補完関係にある。それらはタイルと見なすことができ、1回のパスで記録された各タイルは、次のパスで記録されたタイルでタイルされる。したがって、「1」および「3」タイルおよび「2」タイルの両方は、フレームワーク要素として考慮され、2つのタイルのうちの他方は、メッシュとして考慮され得る。
[0054]図5の印刷モードに双方向印刷が適用される場合、後続のパスで記録されたタイルは同じ方向に印刷されない。これは、双方向バンディングにつながる可能性がある。さらに、図5のモードにおける可能なフィード誤差は、バンド全体(タイル間の境界、またはメッシュとフレームワーク要素の間の境界)に存在するため、目立たなくなる可能性がある。換言すれば、プリントアウトはより均一に見えるかもしれない。…)
(4)上記(3)及びFIG 5 Aより、第1のパス「1」でフレームワーク要素51としての幾何学的図形が記録されるから、「インクジェットプリンタ」の「印刷ヘッド」は、「複数のノズルを有」し、「主走査方向に前記印刷ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構」、及び「制御部」を備えているといえる。
また、上記(3)及びFIG 5 A乃至Cより、FIG 5 Bにおける第2のパス「2」で記録されるメッシュ52の上半分は、FIG 5 Aで記録されたフレームワーク要素51としての幾何学的図形と同じパスに含まれ、一方、FIG 5 Bにおける第2のパス「2」で記録されるメッシュ52の下半分は、FIG 5 Cで記録される後続のパスに含まれるから、「インクジェットプリンタ」は、「前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構」を備え、「制御部」は、「主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行」し、「各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるフレームワーク要素51、及びメッシュ52ごとに前記マルチパス記録を実行」するといえる。
そして、上記(3)及びFIG 5 A乃至Cより、「フレームワーク要素51」、及び「メッシュ52」は、いずれも、「(i)個々のフレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し」、及び「(ii)前記フレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置され」ることが看取できる。

上記の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のノズルを有する印刷ヘッドと、主走査方向に前記印刷ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構と、前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行し、各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるフレームワーク要素51、及びメッシュ52ごとに前記マルチパス記録を実行し、前記フレームワーク要素51、及びメッシュ52は、(i)個々のフレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し、(ii)前記フレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置される、インクジェットプリンタ。」

2.刊行物2
原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成23年11月17日に頒布された刊行物である特開2011-230295号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一色以上の印刷材を用いてバンド印刷を実行する印刷装置であって、
色毎に複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記バンド印刷時に主走査方向に印刷媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる主走査方向駆動機構と、
副走査方向に前記印刷媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる副走査方向駆動機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、各バンドの一部であるオーバーラップ印刷領域を複数の主走査パスで印刷する部分オーバーラップ印刷を実行し、
前記オーバーラップ印刷領域は、連続する1本の境界線により、前記複数のノズルのうちの上流側ノズルで印刷される第1の領域と、前記複数のノズルのうちの下流側ノズルで印刷される第2の領域と、に分割されており、
前記オーバーラップ印刷領域を前記副走査方向と平行な線で切ったときに、前記境界線は、前記平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線である、印刷装置。

【請求項7】
請求項1から請求項6までのうちのいずれか一項に記載の印刷装置において、さらに、
前記オーバーラップ印刷領域を前記主走査方向と平行な第2の平行線で切ったときに、前記境界線は、前記第2の平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線である、印刷装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷後の状態を見ると、バンドとバンドとが重なって印刷された部分と、バンドが重ならずに印刷された部分とで、色の濃淡が異なるように見える場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決し、バンドとバンドとが重なって印刷された部分と、バンドが重ならずに印刷された部分との間の色の濃淡が目立たないようにすることを目的とする。」
(4)「【0024】
図3は、部分オーバーラップ印刷を示す説明図である。プリンター20は、印刷媒体Pに対し、1パス目に領域P101?P103を印刷する。ここで、領域P101は、上流側ノズル91で印刷される領域であり、領域P102は、中央部ノズル92で印刷される領域であり、領域P103は、下流側ノズル93で印刷される領域である。プリンター20は、1パス目の印刷が終わると、印刷媒体PをLyだけ副走査方向に移動し、2パス目に領域P103?P105を印刷する。2パス目では、領域P103は、上流側ノズル91で印刷される領域であり、領域P104は、中央部ノズル92で印刷される領域であり、領域P105は、下流側ノズル93で印刷される領域である。すなわち、領域P103の一部は、1パス目に下流側ノズル93で印刷され、残りの部分が2パス目に上流側ノズル91で印刷される。一方、領域P102あるいはP104は、中央部ノズル92だけにより印刷される。このように、印刷媒体Pまたは印刷ヘッドを副走査方向に移動して次ぎのパスを印刷するときに、副走査範囲内の一部が重なるように印刷することを「部分オーバーラップ印刷」と呼び、複数のパスで印刷される領域を「オーバーラップ領域」と呼ぶ。また、1回のパスで印刷される領域を「バンド」とも呼ぶ。例えば、領域P103?P105が1つの「バンド」に相当し、領域P103、P105がそれぞれ「オーバーラップ領域」に相当する。同様に、3パス目には、領域P105?P107が印刷され、領域P105がオーバーラップして印刷され、4パス目(図示せず)には、領域P107がオーバーラップして印刷される。上流側ノズル91及び下流側ノズルで印刷される領域は2回のパスで印刷され、中央部ノズル92で印刷される領域は1回だけのパスで印刷される。ただし、印刷媒体P上の最初のパスのときに上流側ノズル91で印刷される領域および最期のパスのときに下流側ノズル93で印刷される領域は、1回だけのパスで印刷される。
【0025】
図4は、図3の一部を拡大して示す説明図である。図4では、領域P103、P105が部分オーバーラップ印刷されている。領域P103は、境界線110により、下流側ノズル93が印刷する第1の部分領域P103aと、上流側ノズル91が印刷する第2の部分領域P103bに分けることが出来る。第1の部分領域P103aと第2の部分領域P103bと、は重なっていない。領域P105についても同様に第1の部分領域P105a、第2の部分領域P105bに分けることができる。
【0026】
図5は、領域P103において、上流側ノズルで印刷される部分と下流側ノズルで印刷される部分を画素配列で示す説明図である。図5(A)は、下流側ノズル93により印刷される領域P103aを示し、図5(B)は、上流側ノズル91により印刷される領域P103bを示している。領域P103は、境界線110を境に、図面上側が下流側ノズル93により印刷される領域P103aとなっており、図面下側が上流側ノズル91により印刷される領域P103bとなっている。」

上記(1)乃至(4)から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「一色以上の印刷材を用いてバンド印刷を実行する印刷装置であって、
色毎に複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記バンド印刷時に主走査方向に印刷媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる主走査方向駆動機構と、
副走査方向に前記印刷媒体と前記印刷ヘッドとを相対的に移動させる副走査方向駆動機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、各バンドの一部であるオーバーラップ印刷領域を複数の主走査パスで印刷する部分オーバーラップ印刷を実行し、
前記オーバーラップ印刷領域は、連続する1本の境界線により、前記複数のノズルのうちの上流側ノズルで印刷される第1の領域と、前記複数のノズルのうちの下流側ノズルで印刷される第2の領域と、に分割されており、
前記オーバーラップ印刷領域を前記副走査方向と平行な線で切ったときに、前記境界線は、前記平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線であり、
さらに、
前記オーバーラップ印刷領域を前記主走査方向と平行な第2の平行線で切ったときに、前記境界線は、前記第2の平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線である、印刷装置。」


第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
1.後者の「フレームワーク要素51」、及び「メッシュ52」は、いずれも、「各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義され」得るものであるから、それぞれ、「スーパーセル領域」といえる。
2.後者の「複数のノズルを有する印刷ヘッド」、「主走査方向に前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構」、「前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構」、「『主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行し、各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるフレームワーク要素51、及びメッシュ52ごとに前記マルチパス記録を実行』する『制御部』」、「(i)個々のフレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し、(ii)前記フレームワーク要素51、及びメッシュ52の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置される」フレームワーク要素51、及びメッシュ52、及び「インクジェットプリンタ」は、それぞれ、前者の「複数のノズルを有する記録ヘッド」、「主走査方向に前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構」、「前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構」、「『主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行し、各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるn種類のスーパーセル領域ごとに前記マルチパス記録を実行』する『制御部』」、「(i)個々のスーパーセル領域の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し、(ii)前記n種類のスーパーセル領域の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置される」n種類のスーパーセル領域、及び「ドット記録装置」に相当する。

したがって、両者は、
「複数のノズルを有する記録ヘッドと、
主走査方向に前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記記録媒体にドットを形成する主走査パスを実行する主走査駆動機構と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に移動させる副走査を実行する副走査駆動機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、主走査線上におけるドットの記録をn回(nは2以上の所定の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を実行し、
各主走査パスでドットの記録が行われる画素位置を包含する領域としてそれぞれ定義されるn種類のスーパーセル領域ごとに前記マルチパス記録を実行し、
前記n種類のスーパーセル領域は、
(i)個々のスーパーセル領域の境界線の少なくとも一部において、前記主走査方向と前記副走査方向とのいずれにも平行でない境界線部分を有し、
(ii)前記n種類のスーパーセル領域の境界線が、前記主走査方向と前記副走査方向の両方に沿って周期的に繰り返し出現するように配置される、
ドット記録装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「(iii)前記n種類のスーパーセル領域のうちの第1のスーパーセル領域と第2のスーパーセル領域とは互いに重なっている」のに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。


第5 判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明2の「各バンドの一部であるオーバーラップ印刷領域」は、複数の主走査パスで印刷するものであるから、本願発明の「スーパーセル領域」に相当し、各主走査パスは、それぞれ「オーバーラップ印刷領域」を有するから、引用発明2は、「n種類のスーパーセル領域」を有するといえる。
引用発明2の「オーバーラップ印刷領域」は、「オーバーラップ印刷領域を前記副走査方向と平行な線で切ったときに、前記境界線は、前記平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線であり、さらに、前記オーバーラップ印刷領域を前記主走査方向と平行な第2の平行線で切ったときに、前記境界線は、前記第2の平行な線が前記境界線を前記第1の領域から前記第2の領域に向かって横切る第1の境界線部分と、前記第2の領域から前記第1の領域に向かって横切る第2の境界線部分と、含む境界線である」から、該「オーバーラップ印刷領域」に、異なる主走査パスで印刷される部分が混在していることは明らかであるから、「n種類のスーパーセル領域のうちの第1のスーパーセル領域と第2のスーパーセル領域とは互いに重なっている」といえる。
そうすると、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明2に示されているといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、インクジェットプリンタ(ドット記録装置)という共通の技術分野に属し、バンディングが人間の眼に見えにくいドットマトリックス印刷装置を提供する、という、共通の課題を有するものである。
そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1の境界線に、引用発明2を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-15 
結審通知日 2018-03-20 
審決日 2018-04-02 
出願番号 特願2013-147020(P2013-147020)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 ドット記録装置、ドット記録方法、及び、そのためのコンピュータープログラム  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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