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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1340585
審判番号 不服2017-12966  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-01 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2013-174416「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月5日出願公開、特開2015-43024、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月26日に特願2013-174416号として出願したものであって,これまでの手続は次のとおりである
平成29年 1月25日 拒絶理由通知
平成29年 4月 3日 意見書・手続補正
平成29年 5月31日 拒絶査定
平成29年 9月 1日 審判請求

第2 現査定の概要
原査定(平成29年5月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1乃至5に係る発明は,以下の引用文献1乃至3及び5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2006-171512号公報
2.特開2005-186550号公報
3.特開2013-88627号公報
5.特開2006-82937号公報

第3 本願発明
本願の請求項1乃至5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」などという。)は,平成29年4月3日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項1乃至5に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。
「【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成部と,
前記画像形成部の用紙搬送方向上流に配置され,前記画像形成部に搬送される用紙の検出対象位置が通過する際に幅方向中央から端部に向けて走査することにより用紙の幅方向の位置を検出する片寄り検出部と,
前記片寄り検出部の検出結果に基づいて,用紙と画像の位置合わせを行う位置合わせ部と,
予め設定された前記検出対象位置に画像が形成されている用紙が用いられる場合に,前記検出対象位置を含む片寄り補正に関する情報を再設定する制御部と,を備え,
前記位置合わせ部は,前記片寄り検出部の用紙搬送方向上流に配置され,前記画像形成部に用紙を搬送するレジストローラーと,前記レジストローラーを用紙幅方向に直線移動させ,用紙の幅方向の位置を基準位置に戻す片寄り補正部と,を有し,
前記制御部は,少なくとも前記用紙が転写部に到達する前に前記レジストローラーの直線移動動作を完了できる検出適合領域内で前記検出対象位置を再設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は,前記検出対象位置の再設定ができない場合に前記位置合わせ部の機能を無効とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像形成に用いられる用紙に予め形成された画像を読み取る画像読取部を備え,
前記制御部は,前記画像読取部によって読み取られた画像に基づいて,前記検出対象位置を含む片寄り補正に関する情報を再設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記片寄り検出部が,前記画像読取部として機能することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出対象位置をユーザーが設定可能な操作部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
平成29年1月25日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成18年6月29日に頒布された特開2006-171512号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。)
ア「【0004】
シート給送装置408が所定の装着位置に押し込まれてプリンタ本体401に装填されると,図示しないセンサが各シート給送装置408の装填を検出し,図示しない昇降テーブル駆動用ギアと係合し,昇降テーブルに積載された用紙の最上面(昇降テーブル上に用紙が存在しない場合は昇降テーブル上面)が,給紙ローラ409に当接するまで昇降テーブルの上昇動作が行われる。403は感光ドラムを示し,図示しないコントローラからの信号に基づいて回転を始める。感光ドラム403が回転を開始すると,図示しないコロナ帯電器によって感光ドラム403表面が均一に帯電される。次に帯電した感光ドラム403に,図示しない上位システムより送信される画像データに基づいたレーザ光が走査光学部402より照射され,画像信号に対応した静電潜像を形成する。静電潜像は図示しない現像装置の位置に到達するとトナーによって現像され,感光ドラム403上にトナー像として可視化される。こうして公知の電子写真プロセスにより形成されたトナー像は転写剥離装置405によりシート供給装置408から送り出されてきた用紙に転写される。用紙上に転写されたトナーは定着装置404により用紙上に定着される。ゲート部材410は用紙の搬送路を切り替え,定着装置404から搬送されてきた用紙をそのまま図3左方向の排出部へ搬送するか,ゲート部材410から下流の方向へ搬送するかを選択的に切り替える。ゲート部材410により図3左方向へ搬送された用紙は図示されない後段の後処理機へ排出される。ゲート部材410から下流の方向へ搬送された用紙は反転ゲート411近傍のローラより一旦下方へ引き込まれ,その後両面搬送路412へと搬送される。」

イ「【0007】
ラインセンサ501を用いた用紙端部位置検出及び印刷開始位置補正について以下に説明する。ラインセンサ501は,図示しない複数のLED,複数の受光素子,及び内部制御回路部から構成されている反射形ラインセンサであり,シート給送装置408から給紙される用紙及び両面搬送路412から搬送される用紙が通過する用紙ガイド507に,用紙の搬送方向と直角に配置される。また,規定された各種サイズの用紙の端面が必ずラインセンサ501の検出面上を通過するような位置に配置される。更にラインセンサ501による検出精度を高めるため,用紙ガイド506と用紙ガイド507は用紙の挙動を規定内に収めるような距離に配置されている。」

ウ「【0010】
ラインセンサ501による用紙端部位置データの取得シーケンスについては以下のとおりである。まず,プリンタ制御部508はLEDを発光させる信号,クロック及びスタート信号をラインセンサ501に送信する。LED発光信号によりラインセンサ501のLEDは点灯し,用紙によって覆われている受光素子部分には用紙に反射したLED光が入る。続いてラインセンサ501の内部制御回路部は,受光素子により光電変換された電圧出力を各受光素子毎に前記クロックと同期して出力する。各受光素子の出力電圧はLED光が入光した部分,即ち用紙のある部分は高い出力電圧となり,反射光の少ない部分,即ち用紙のない部分は低い出力電圧のアナログ電圧信号となる。クロックと同期して出力された本アナログ出力は,プリンタ制御部508とラインセンサ501間に設けた図示しないAD変換回路部で設定されたしきい値により二値化され,用紙のある部分は“H”信号,用紙のない部分は“L”信号としてプリンタ制御部508に送信される。
【0011】
ラインセンサ501と用紙とは前述の位置関係にある為,用紙がラインセンサ501の受光素子面を覆った部分から“H”信号が送信される。プリンタ制御部508ではラインセンサ501から出力された“H”信号の数をカウントし,19発連続して“H”信号をカウントできた部位を用紙端と認識する用紙端認識回路を設けている。これはラインセンサ501からの“H”信号の数を全てカウントする方式の場合,プレプリント用紙の印刷にてプレプリント印刷部をラインセンサ501で検出した時に十分な出力が得られず,前記のしきい値を超えず,“L”信号として出力され,結果的に用紙端部位置を誤認識してしまうことを防止する為である。」

エ「【0015】
印刷する用紙が無地の白色の場合は,用紙検出時のラインセンサ501出力電圧はしきい値を十分超え,正常な検出が行われる。しかし,印刷する用紙がプレプリント紙で,ラインセンサ501で用紙端を認識する部位にこのプレプリント印刷がある場合には,プレプリントの色・濃度によりラインセンサ501の出力電圧が低下する。特に,ラインセンサ501の受光素子の感度波長と合わない色や黒色ではその出力低下が著しく,前記のしきい値を下回り正常な用紙端検出を出来ず,結果として水平方向の印刷開始位置ずれが発生する場合があった。また,用紙先端部分にはプレプリント印刷がなく,用紙後端にプレプリント印刷があるようなデザインの場合には,用紙後端の検出値が用紙先端での検出値と著しく異なり,ラインセンサ501によるスキューチェック時に,規定のスキュー量を超えたと誤認識し,エラーで停止してしまうことがあった。」

オ「【0022】
プレプリント紙に印刷を行う場合のオペレータパネル510の設定メニューについて説明する。オペレータパネル510にて用紙種としてプレプリント用紙を選択した場合,用紙端部位置検出機能の有効・無効設定を選択できるようにしている。ここで無効と設定された場合は,プリンタ制御部508では,用紙端部位置検出を行わず,また水平方向の印刷開始位置補正を実施せずに印刷動作を行う。有効が選択された場合には,用紙端部位置検出位置の補正設定メニューに移行する。用紙端部位置検出補正設定は用紙先端・用紙後端検出用に2種類設定できるようにしている。ここで,図5に示すプレプリント用紙の印刷を行う場合について説明する。図5におけるプレプリント用紙は,用紙先端及び後端の用紙端部位置検出部にプレプリントがある。用紙サイズはA3とする。用紙端検出部から,プレプリントのない部位までの距離は先端側で10mm,後端側で5mmとする。ここに記載している用紙端検出部は初期設定における検出部で,先端側は用紙先端から63mm,後端側は用紙後端から43mmの位置である。前記のとおり,用紙端検出部をプレプリント領域から外す為に,先端側の用紙端部位置検出部を15mm後端側にずらし,後端側の用紙端部位置検出ポイントを10mm先端端側にずらすようにオペレータパネル510から設定する。オペレータパネル510からの検出部設定範囲は,用紙先端側はラインセンサ501による読取タイミングの基準としているタイミングセンサ503への用紙到達後から,画像データの書き出し前までの期間であり,距離に換算すると,用紙先端から53mm?83mmの間である。用紙後端側については,ラインセンサによる読取タイミングの基準としているスキューセンサ到達から用紙後端までの範囲となり,例えばA3サイズの用紙であれば,用紙先端から170mm?420mmの間となる。このようにオペレータパネル510で設定された用紙端部位置検出位置補正データはコントローラからプリンタ制御部へと伝えられる。」

カ「【0023】
印刷が開始されると,図1に示すフローに従って制御を実行する。まずプリンタ制御部508がコントローラ509からの印刷起動コマンドを受信すると,印刷動作を開始する。印刷動作開始時にプリンタ制御部では,印刷開始位置補正機能が有効となっているか,無効となっているかの判定を行う。無効の場合は,印刷開始位置補正及びラインセンサ501によるスキュー検出を行わず印刷動作を実施する。有効と設定されていた場合は,前記のようにオペレータパネル510から設定された用紙先端及び後端の用紙端部位置検出位置補正データを取得し,各々の検出タイミングを演算する。前記のように用紙端位置検出ポイントを設定した場合,時間に換算すると,用紙の搬送速度415mm/sの場合,36msとなる。これはタイミングセンサ503で用紙先端検出後61msである。同様に,用紙後端についても演算が行われ,時間に換算すると24msとなる。これはスキューセンサ504で用紙先端検出後,506ms後である。
【0024】
シート給送装置408より用紙がピックされると,図4に示すタイミングセンサ503に用紙が到達する。プリンタ制御部508では,用紙がタイミングセンサ503に到達後,前記にて演算された検出タイミングの通り,タイミングセンサ503到達後61ms経過したかどうかの判定を行う。61ms経過したら図6のラインセンサ501により用紙端部位置データを取得する。続いて,前記で取得したデータが潜像形成後の用紙端部位置データであるかどうかを判断する。ここで取得した用紙端部位置データは潜像形成後の用紙端部位置データではない為,続いて得られた用紙端部位置データとプリンタ制御部508内のメモリに記録した基準の用紙端部位置データとを比較し,その差分を演算する。更にここで得られた差分に予め初期調整時に得られプリンタ制御部508のメモリ内に記録している印刷開始位置補正値を付加し,幅方向の印刷開始位置補正値を決定する。次にプリンタ制御部508は図示しない印刷開始位置補正回路部に対して印刷開始位置補正データを出力する。印刷開始位置補正回路部では上位システムより送信される画像データに対して,本補正データに基づき印刷開始位置補正を行う。」

引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「感光ドラム403が回転を開始すると,コロナ帯電器によって感光ドラム403表面が均一に帯電され,次に帯電した感光ドラム403に,上位システムより送信される画像データに基づいたレーザ光が走査光学部402より照射され,画像信号に対応した静電潜像を形成し,該静電潜像は現像装置の位置に到達するとトナーによって現像され,感光ドラム403上にトナー像として可視化される公知の電子写真プロセスにより形成されたトナー像は,転写剥離装置405によりシート供給装置408から送り出されてきた用紙に転写され,用紙上に転写されたトナーは定着装置404により用紙上に定着されるプリンタ本体401において,
複数のLED,複数の受光素子,及び内部制御回路部から構成されている反射形ラインセンサであるラインセンサ501は,シート給送装置408から給紙される用紙及び両面搬送路412から搬送される用紙が通過する用紙ガイド507に,用紙の搬送方向と直角に配置され,
プリンタ制御部508はLEDを発光させる信号,クロック及びスタート信号をラインセンサ501に送信し,LED発光信号によりラインセンサ501のLEDは点灯し,用紙によって覆われている受光素子部分には用紙に反射したLED光が入るものであって,
プリンタ制御部508とラインセンサ501間に設けたAD変換回路部で設定されたしきい値により二値化され,用紙のある部分は“H”信号,用紙のない部分は“L”信号としてプリンタ制御部508に送信され,
プリンタ制御部508ではラインセンサ501から出力された“H”信号の数をカウントし,19発連続して“H”信号をカウントできた部位を用紙端と認識する用紙端認識回路を設け,
用紙サイズがA3のプレプリント用紙の場合には,用紙先端及び後端の用紙端部位置検出部にプレプリントがあり,初期設定における用紙端検出部の先端側は用紙先端から63mm,後端側は用紙後端から43mmとなっており,該用紙端検出部から,プレプリントのない部位までの距離は先端側で10mm,後端側で5mmであって,
先端側の用紙端部位置検出部を15mm後端側にずらし,後端側の用紙端部位置検出ポイントを10mm先端端側にずらすようにオペレータパネル510から設定するものであるが,
オペレータパネル510からの検出部設定範囲は,用紙先端側はラインセンサ501による読取タイミングの基準としているタイミングセンサ503への用紙到達後から,画像データの書き出し前までの期間であり,距離に換算すると,用紙先端から53mm?83mmの間であって,
プリンタ制御部508がコントローラ509からの印刷起動コマンドを受信すると,印刷動作を開始し,
オペレータパネル510から設定された用紙先端及び後端の用紙端部位置検出位置補正データを取得し,各々の検出タイミングを演算するが,前記のように用紙端位置検出ポイントを設定した場合,時間に換算すると,用紙の搬送速度415mm/sの場合,用紙先端側で36msとなるもので,
プリンタ制御部508では,用紙がタイミングセンサ503に到達後,前記にて演算された検出タイミングの通り,タイミングセンサ503到達後61ms経過したかどうかの判定を行い,61ms経過したらラインセンサ501により用紙端部位置データを取得し,
取得した用紙端部位置データは潜像形成後の用紙端部位置データではない為,続いて得られた用紙端部位置データとプリンタ制御部508内のメモリに記録した基準の用紙端部位置データとを比較し,その差分を演算し,
該差分に予め初期調整時に得られプリンタ制御部508のメモリ内に記録している印刷開始位置補正値を付加し,幅方向の印刷開始位置補正値を決定し,プリンタ制御部508は印刷開始位置補正回路部に対して印刷開始位置補正データを出力し,印刷開始位置補正回路部では上位システムより送信される画像データに対して,本補正データに基づき印刷開始位置補正を行うプリンタ本体401。」

2 引用文献3について
平成29年1月25日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成25年5月13日に頒布された特開2013-88627号公報(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
キ「【0032】
以下に,本発明の一実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は,本発明の画像形成装置1の機械的構成を示す図であり,以下に説明する。
図1において,10は画像形成部,30は原稿読み取り部である。
原稿読み取り部30では,自動原稿搬送装置(図1では省略)で搬送される原稿,またはプラテン31上に配置された原稿の画像を読み取り,一旦,図示しない画像メモリーなどに記録される。
画像形成部10では,各色(シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックなど)用にそれぞれ用意された感光体11C,11M,11Y,11Kを有し,各感光体11C,11M,11Y,11Kの周線部に帯電器12C,12M,12Y,12K,書き込み部13C,13M,13Y,13K,現像ユニット14C,14M,14Y,14Kが配設されていており,帯電器12C,12M,12Y,12Kによって帯電した感光体11C,11M,11Y,11K表面は,画像メモリーなどに記録された原稿の画像情報に基づいて書き込み部13C,13M,13Y,13Kにより像露光が行われ,感光体11C,11M,11Y,11K表面には潜像が形成される。該潜像は現像ユニット14C,14M,14Y,14Kによって現像がなされてトナー像となる。トナー像は,中間転写ベルト16に転写され,該中間転写ベルト16から二次転写ローラ18によって搬送路22で搬送される用紙に転写される。転写された用紙は定着装置19によって加熱定着されて排紙部に画像形成出力(プリント)がなされる。搬送路22は,本発明の用紙搬送部の一部を構成している。」

ク「【0047】
次に,搬送路22上におけるレジストローラ23近傍の構成を図3に基づいて説明する。
搬送路22には,二次転写ローラ18の搬送方向手前側にレジスト部が設けられており,レジスト部は上下に対となるレジストローラ23で構成されている。レジストローラ23では,搬送路22を搬送される用紙Pの先端を当ててループを形成することで用紙の斜行を修正する。レジストローラ23でのループ作成完了後,中間転写ベルト16上の画像に合わせてレジストローラ23を搬送方向に回転駆動し,用紙Pを二次転写ローラ18側へ搬送する。この際にレジストローラ23のすぐ下流側にあるラインセンサ230で用紙Pの端部位置を読み取る。また,レジストローラ23は,用紙Pを挟んで用紙Pを主走査方向(通紙交差方向)に移動(揺動)させることができる。したがって,レジストローラ23は,本発明の片寄り補正部を構成する。レジストローラ23の揺動は,画像制御CPU113で制御される。ただし,本発明としては片寄り補正部の構成がレジストローラ23に限定されるものではない」

ケ「【0048】
図3(a)では,レジストローラ23は,中心23aが基準位置HPに位置している。
また,レジストローラ23の搬送方向直後には,主走査方向に沿ってCCDセンサなどで構成されるラインセンサ230が配置されている。ラインセンサ230は,用紙Pの通紙交差方向端部位置を読み取り,その結果が画像制御CPU113に送信される。ラインセンサ230は,本発明の用紙位置測定部に相当する。
【0049】
なお,図3の(a)は,レジストローラ23に達した用紙Pに片寄り量xで片寄りが生じている状態を示している。
ラインセンサ230では,上記のように搬送される用紙Pの搬送方向に沿った用紙端が測定され,画像制御CPU113に測定結果が送信される。画像制御CPU113では,給紙の際に所定のサイズの用紙を選択しており,搬送中の用紙のサイズは把握されている。そして,画像制御CPU113は,上記用紙サイズとラインセンサ230による測定結果とから用紙中心P0の位置を判定する。また,画像制御CPU113では,中間転写ベルト16上に作像している画像中心G0を設定しており,この例では,画像中心G0は中間転写ベルト16のセンターラインに一致している。画像制御CPU113では前記用紙中心P0と前記画像中心G0との差分を算出する。この差分が用紙の片寄り量xになっている。
【0050】
図3の(b)は,片寄り量xを補正した状態を示している。
画像形成装置では,画像制御CPU113において,上記片寄り量xに基づいて,用紙中心P0が画像中心G0に揃うようにレジストローラ23の揺動量-xを決定し,その後,決定した揺動量-xだけレジストローラ23を基準位置HPから揺動させて用紙Pを補正量-xだけ移動させる。これにより画像中心G0と用紙中心P0とが合致し,レジストローラ23で送られる用紙が二次転写ローラ18へ送り込まれる。こうすることで,用紙Pの主走査方向の片寄りを補正し,画像位置に合わせることができる。また,上記揺動により,レジストローラ23の中心23aは,基準位置HPから距離-xを隔てて位置している。
なお,上記説明では,画像中心G0が中間転写ベルト16のセンターラインに一致するものとして説明したが,該センターラインと異なる位置に画像中心G0を設定するものであってもよい。」
引用文献3の上記記載事項を含め,引用文献3の全記載を総合すると,引用文献3には以下の事項(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「各感光体の周線部に帯電器,書き込み部,現像ユニットが配設されていており,帯電器によって帯電した感光体表面は,画像メモリーなどに記録された原稿の画像情報に基づいて書き込み部により像露光が行われ,感光体表面には潜像が形成され,該潜像は現像ユニットによって現像がなされてトナー像となり,該トナー像は,中間転写ベルト16に転写され,該中間転写ベルト16から二次転写ローラ18によって搬送路22で搬送される用紙に転写され,転写された用紙は定着装置19によって加熱定着されて排紙部に画像形成出力(プリント)がなされる画像形成装置1であって,
搬送路22には,二次転写ローラ18の搬送方向手前側に上下に対となるレジストローラ23で構成されているレジスト部が設けられており,
画像制御CPU113によって制御されることで揺動する該レジストローラ23は,用紙Pを挟んで用紙Pを主走査方向(通紙交差方向)に移動(揺動)させることで片寄り補正部を構成し,
レジストローラ23の搬送方向直後には,主走査方向に沿ってCCDセンサなどで構成されるラインセンサ230が配置されており,
用紙位置測定部に相当する該ラインセンサ230は,用紙Pの通紙交差方向端部位置を読み取り,その結果を画像制御CPU113に送信するものであって,
画像制御CPU113は,用紙サイズとラインセンサ230による測定結果とから用紙中心P0の位置を判定し,中間転写ベルト16上に作像している画像中心G0を中間転写ベルト16のセンターラインに一致するように設定することで,前記用紙中心P0と前記画像中心G0との差分である用紙の片寄り量xにを算出し,
上記片寄り量xに基づいて,用紙中心P0が画像中心G0に揃うようにレジストローラ23の揺動量-xを決定し,決定した揺動量-xだけレジストローラ23を基準位置HPから揺動させて用紙Pを補正量-xだけ移動させ,
画像中心G0と用紙中心P0とが合致し,レジストローラ23で二次転写ローラ18へ送り込まれる用紙Pの主走査方向の片寄りを補正し,画像位置に合わせることができる画像形成装置。」

3 引用文献2について
平成29年1月25日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成17年7月14日に頒布された特開2005-186550号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
コ「【0028】
図1は,本発明を適用したモノクロレーザビームプリンタの構成を示した図である。」

サ「【0055】
印字を開始すると,エンジン制御部1046は,上述の各機構により給紙を開始し,読み取り部1047により読み取り器2080により得られた情報を元に搬送方向判断部1061よりプレプリント用紙に印刷されている画像の向きを判断し,その結果に応じて画像変換部1062により印字方向にあったビットマップ生成が行えるように画像オブジェクトの内容を変更する。そして,給紙のタイミングにあわせてビットマップ画像展開部1060によりビットマップ画像を展開し,ビットマップ画像展開転送部1038において展開されたビットマップ画像は,印刷装置エンジン部1039に送られ,印字が行われて排紙されることになる。」
引用文献2の上記記載事項を含め,引用文献2の全記載を総合すると,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「印字を開始すると,エンジン制御部1046は,給紙を開始し,読み取り部1047により読み取り器2080により得られた情報を元に搬送方向判断部1061よりプレプリント用紙に印刷されている画像の向きを判断し,その結果に応じて画像変換部1062により印字方向にあったビットマップ生成が行えるように画像オブジェクトの内容を変更し,該給紙のタイミングにあわせてビットマップ画像展開部1060によりビットマップ画像を展開し,ビットマップ画像展開転送部1038において展開されたビットマップ画像は,印刷装置エンジン部1039に送られ,印字が行われて排紙されるモノクロレーザビームプリンタ。」

4 引用文献5について
平成29年5月31日付け拒絶査定において周知技術を示す文献として引用し,本願の出願日前である平成18年3月30日に頒布された特開2006-82937号公報(以下「引用文献5」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
シ「【0014】
ところで,最近ではオン・デマンド・プリンティングへのニーズが高まり,あらゆるタイプのシートに対して良好に,かつ高速に画像を形成することのできる画像形成装置が求められている。ここで,このような従来の画像形成装置において,例えばA4サイズのシート(297mm×210mm)とB4サイズのシート(364mm×257mm)を混載し,これらサイズの異なるシートに対して交互に画像を形成するプリンタジョブが設定されることがある。そして,このようなジョブが設定されたとき,シートサイズごとに突き当て板の位置を変更する,あるいはシフトローラ60のシフト幅を変更することで対処している。
【0015】
ところが,このような場合,突き当て板の位置移動には例えば最大6000msを要し,またシフト幅を変更するにしても,シフトローラ60は,シフトローラ60から画像形成部100(転写部101)までシートが搬送されるまでの間にシートの移動を完了させる必要があるため,シフト幅の変更にも限界がある。」
引用文献5の上記記載事項を含め,引用文献5の全記載を総合すると,引用文献5には以下の事項(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「サイズの異なるシートに対して交互に画像を形成するプリンタジョブが設定されると,シートサイズごとに突き当て板の位置を変更する,あるいはシフトローラ60のシフト幅を変更することで対処する画像形成装置において,突き当て板の位置移動には例えば最大6000msを要し,また,シフトローラ60は,シフトローラ60から画像形成部100(転写部101)までシートが搬送されるまでの間にシートの移動を完了させる必要がある画像形成装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「感光ドラム403が回転を開始すると?プリンタ本体401」は,前者の「画像形成部」又は「画像形成装置」に相当する。
後者の「ラインセンサ501」は,用紙がタイミングセンサ503到達後61ms経過したかどうかの判定を行い,61ms経過したらラインセンサ501により用紙端部位置データを取得しており,これは,画像形成部に搬送される用紙の検出対象位置が通過する際に用紙の幅方向の位置を検出するといえるから,前者の「片寄り検出部」に相当する。
また,後者の「ラインセンサ501」は,シート給送装置408から給紙される用紙及び両面搬送路412から搬送される用紙が通過する「用紙ガイド507」に配置されており,【図3】及び【図4】の記載を踏まえると,「用紙ガイド507」は画像形成部の用紙搬送方向上流にあるから,後者の「ラインセンサ501」も,画像形成部の用紙搬送方向上流にあることになる。
したがって,後者には,前者の「画像形成部の用紙搬送方向上流に配置され,前記画像形成部に搬送される用紙の検出対象位置が通過する際に用紙の幅方向の位置を検出する片寄り検出部」に相当する構成が備わっていることになる。
後者において「用紙端部位置データとプリンタ制御部内のメモリに記録した基準の用紙端部位置データとを比較し,その差分を演算し,該差分に予め初期調整時に得られプリンタ制御部のメモリ内に記録している印刷開始位置補正値を付加し,幅方向の印刷開始位置補正値を決定し,プリンタ制御部は印刷開始位置補正回路部に対して印刷開始位置補正データを出力し,印刷開始位置補正回路部では上位システムより送信される画像データに対して,本補正データに基づき印刷開始位置補正を行」っており,前者と同様に「片寄り検出部の検出結果に基づいて,用紙と画像の位置合わせ」を行っているといえるから,後者において実質的に前者の「位置合わせ部」に相当する構成が備わっていることは自明である。
後者の「プレプリント」,特に用紙端部位置検出部にある「プレプリント」は,前者の予め設定された前記検出対象位置に形成された「画像」に相当する。
後者の「プレプリント用紙」は,前者の「用紙」に相当する。
後者において「用紙先端及び後端の用紙端部位置検出部にプレプリントがあり,初期設定における用紙端検出部の先端側は用紙先端から63mm,後端側は用紙後端から43mmとなっており,該用紙端検出部から,プレプリントのない部位までの距離は先端側で10mm,後端側で5mmであった場合,先端側の用紙端部位置検出部を15mm後端側にずらし,後端側の用紙端部位置検出ポイントを10mm先端端側にずらすようにオペレータパネル510から設定」しているから,前者の「片寄り補正に関する情報を再設定」することに相当する構成を後者が備えていることは自明である。
また,後者の「オペレータパネル510」及び該オペレータパネル510の設定に伴う制御を行う「プリンタ制御部508」は,前者の「制御部」に相当する。
後者のオペレータパネル510からの検出部設定範囲は「用紙先端側はラインセンサによる読取タイミングの基準としているタイミングセンサへの用紙到達後から,画像データの書き出し前までの期間であり,距離に換算すると,用紙先端から53mm?83mmの間」であって,ここでの「画像データの書き出し前」とは「用紙が転写部に到達する前」を意味することは明らかであるから,後者の「用紙先端から53mm?83mmの間」が,前者の「検出適合領域」に相当することとなり,前者の「用紙が転写部に到達する前に検出対象位置を再設定」するに相当する構成を後者が備えていることは自明である。
以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「用紙に画像を形成する画像形成部と,
前記画像形成部の用紙搬送方向上流に配置され,前記画像形成部に搬送される用紙の検出対象位置が通過する際に用紙の幅方向の位置を検出する片寄り検出部と,
前記片寄り検出部の検出結果に基づいて,用紙と画像の位置合わせを行う位置合わせ部と,
予め設定された前記検出対象位置に画像が形成されている用紙が用いられる場合に,前記検出対象位置を含む片寄り補正に関する情報を再設定する制御部と,を備え,
前記制御部は,検出適合領域内で前記検出対象位置を再設定する画像形成装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点1
片寄り検出部に関して,本願発明は「(用紙の)幅方向中央から端部に向けて走査」しているのに対して,引用発明1では,その点については明らかではない点。

相違点2
位置合わせ部に関して,本願発明は「片寄り検出部の用紙搬送方向上流に配置され,前記画像形成部に用紙を搬送するレジストローラーと,前記レジストローラーを用紙幅方向に直線移動させ,用紙の幅方向の位置を基準位置に戻す片寄り補正部と,を有し」ているのに対して,引用発明1では用紙と画像の位置合わせを行っているものの,「印刷開始位置補正データ」を用いて位置合わせを行っている点。

相違点3
検出適合領域内に関して,本願発明は「少なくとも用紙が転写部に到達する前にレジストローラーの直線移動動作を完了でき」るものであるのに対して,引用発明1では,用紙が転写部に到達する前であるものの,「タイミングセンサ503への用紙到達後から,画像データの書き出し前までの期間」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み相違点1について検討する。
引用発明1において,「プリンタ制御部508とラインセンサ501間に設けたAD変換回路部で設定されたしきい値により二値化され,用紙のある部分は“H”信号,用紙のない部分は“L”信号としてプリンタ制御部508に送信され,プリンタ制御部508ではラインセンサ501から出力された“H”信号の数をカウントし,19発連続して“H”信号をカウントできた部位を用紙端と認識する用紙端認識回路」を設けているが,ラインセンサ501の走査方向については,何らの記載も示唆もない。
引用発明3において,ラインセンサ501の走査方向については,何らの記載も示唆もなく,引用発明2及び5にも同様に記載も示唆もない。
そして,本願発明1は,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えることによって,「用紙端部の近傍に紙粉等があることによる誤検出を防止するため,片寄り検出センサー85で用紙中央から端部に向けて走査したときに最初に現れるセンサー出力の変化点の出現位置が,用紙の端部位置として検出される」(段落【0059】)という顕著な効果を奏するものである。
また,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が,本願出願前において周知技術であるともいえないし,当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明1乃至3及び5に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2乃至5について
本願発明2乃至5は,いずれも,本願発明1の発明特定事項を備え,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1乃至3及び5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1乃至5は,当業者が引用発明1乃至3及び5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-22 
出願番号 特願2013-174416(P2013-174416)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
荒井 隆一
発明の名称 画像形成装置  
代理人 木曽 孝  
代理人 鷲田 公一  

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