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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1340642
審判番号 不服2016-11602  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-03 
確定日 2018-05-23 
事件の表示 特願2012-547224「エネルギー効率の高い標識用の光偏向複合フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日国際公開、WO2011/082140、平成25年 5月13日国内公表、特表2013-516648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、2010年12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成25年12月20日:誤訳訂正書
平成25年12月20日:手続補正書
平成26年 8月29日:拒絶理由通知
平成27年 2月27日:意見書
平成27年 2月27日:手続補正書
平成27年 6月24日:拒絶理由通知(最後)
平成27年11月 6日:意見書
平成27年11月 6日:手続補正書
平成28年 3月30日:平成27年11月6日付け手続補正の補正の却下の決定
平成28年 3月30日:拒絶査定
平成28年 8月 3日:審判請求書
平成28年 8月 3日:手続補正書
平成29年 7月20日:拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成29年11月 6日:意見書
平成29年11月 6日:手続補正書(以下「本件補正」という。)

(2)本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。
「照明標識であって、
光反射面及び発光面を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの内部に配置された光源と、
前記発光面の少なくとも一部を形成する光偏向複合フィルムと、
前記光源とは反対側となるように前記光偏向複合フィルムに結合されたグラフィック画像(但し、液晶セルに基づくグラフィック画像を除く。)と、を備え、
前記光偏向複合フィルムは、
平面状の上主面と、
前記上主面とは反対側の平面状の下主面と、
前記上主面と前記下主面との間に配置された複数のレンチキュラーレンズ要素であって、該複数のレンチキュラーレンズ要素から突出する複数の柱状要素を有し、該柱状要素は、平面状の上面を含む、複数のレンチキュラーレンズ要素と、
前記複数のレンチキュラーレンズ要素と前記平面状の下主面との間に配置された、複数の光反射領域及び光透過領域と、
前記柱状要素の前記上面を、隣接する基材の下部に結合する接着層であって、該隣接する基材は、前記上主面と前記下主面との間に配置される、接着層と、を有し、
前記下主面は光拡散層を備える、照明標識。」(以下「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は概ね次のとおりである。
本件出願の平成28年8月3日付けで手続補正がなされた請求項1ないし5に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし4に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1.特開2006-318886号公報
引用例2.国際公開第2004/006216号
引用例3.特開2005-50789号公報
引用例4.国際公開第2008/047855号

照明標識において、標識の基になる情報表示層を何らかの光学層に貼付することは周知技術であり、引用発明において、標識のための情報表示層(グラフィック画像)を光源とは反対側となるように光制御部材4(光偏向複合フィルム)に結合することは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。
レンチキュラーレンズ要素に該要素から突出する柱状要素を設け、該柱状要素が平面状の上面を含み、前記柱状要素の前記上面を隣接する基材の接着層に結合することは周知技術であり、引用発明において、レンチキュラーレンズ要素の上面に、平板状の部材(引用例1(図28,29)に記載の集光部材16や、上記イで検討したような情報表示層(グラフィック画像))が配置される際に、周知技術のようにレンチキュラーレンズ要素に柱状要素を設け、該柱状要素を結合させるための接着層を平板状の部材に設けることは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

3 引用例の記載事項
(1)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、当審拒絶理由で引用例1として引用された特開2006-318886号公報には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、複数の光源と、反射板と、前記反射板からの光の方向を制御して出する光制御部材とからなる照明装置およびこれを用いる表示装置に関するものであり、特に大型で高い輝度と面内の均一性が要求される照明看板装置、液晶ディスプレイ装置に好適に用いられる照明装置および表示装置に関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、大型照明装置や液晶テレビなどのディスプレイ用途に用いることができる光源直下方式の照明装置において、ランプイメージや輝度ムラ、ならびにRGB色LED光源の色ムラを解消し、また、プリズムシートを用いることなく、正面輝度が高く、望ましい輝度角度分布を得ることができ、さらに大型化やランプ配置などの仕様変更に容易に対応可能で、高品位で光利用効率の高い照明装置、およびこれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本課題を解決するための手段として本発明で我々が提供する照明装置は、少なくとも、複数の光源と、反射板と、光制御部材とを、出射側に向かって、反射板、光源、光制御部材の順に配置した光源直下方式の照明装置である。
【0014】
請求項1に記載の照明装置は、X軸と、X軸に垂直なY軸とに平行な辺からなる矩形状の出射面を持ち、反射板と、複数の光源と、板状の光制御部材とを備え、
前記反射板は前記X軸およびY軸に平行なXY平面と平行に配置しており、
前記XY平面に垂直なZ軸の出射側を正面方向としたとき、
前記光源は前記反射板の正面方向側の前記XY平面に平行な1つの仮想平面内に配置しており、
前記光制御部材は前記配列した光源の正面方向側に配置し、
かつ、該光制御部材の主面は光源が配列している前記仮想平面と平行であり、
該光制御部材の主面は、光源に対向し該光源からの光を受光する入射面と前記入射面に受光した光を出射する出射面とからなり、前記入射面に一致するまたは光制御部材内部に該入射面と平行に位置する反射部配置面を備え、
前記出射面は表面に凸部を周期的に複数形成している照明装置であって、
前記反射部配置面が反射部と開口部とからなり、該開口部の面積割合が反射部配置面の20%?80%であり、
該開口部は該凸部と対向しており、
反射部配置面に位置する反射部の全光線反射率が80%以上であることを特徴とする照明装置である。」
ウ 「【発明の効果】
【0048】
本発明では、少なくとも複数の光源と、反射板と、光制御部材とを、出射側に向かって、反射板、光源、光制御部材の順に配置した光源直下方式の照明装置であり、光源より出射した光が光制御部材と光源の後方に配置された反射板との間で反射を繰り返し拡散した光が、光制御部材の反射部配置面に配置された開口部より入射するため、ランプイメージを解消し、さらに、板厚と反射部配置面上の開口部の割合を検討することにより、不要な方向への出光を抑制し、プリズムシートを用いることなく、正面輝度が高く、望ましい輝度角度分布を得ることができる。光源としてRGB色LEDを使用する場合、同様に光制御部材の反射部と後方反射板との間で反射を繰り返すことにより、色ムラを解消することができる。また、光制御部材の出射面に配置した凸部を面内一様にすることにより、ランプ配置などの仕様の変更に伴う設計変更が不要なことから、生産性の点からも有利である。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明で我々が提供する照明装置は、光源1より出射した光が本発明の光制御部材4と光源1の後方に配置された反射板5との間で反射を繰り返し、拡散した光が本光制御部材4の反射部配置面9に配置された開口部8より入射するため、ランプイメージを解消し、さらに該光制御部材4の板厚および反射部配置面9に位置する開口部8の割合および開口部8の存在する位置を好適に選択することで、不要な方向への出光を抑制し、望ましい輝度角度分布を与えることができる。さらに、光制御部材4の出射面側に凸部6を備え、該凸部6の形状と板厚および開口部8の大きさ、位置の関係を好適に選択することで、多くの照明装置として好適な正面方向への出光割合を高め、正面輝度を高めることができる。
【0050】
この構成は、大型照明装置や液晶テレビなどのディスプレイ用途に用いることができる。また少なくとも一つの光源1の観察面側に前記光制御部材4を置き、光源の周囲を反射板5で囲った照明装置に用いることができる。さらに、光源1の両面に前記光制御部材4を配置した両面式の照明装置、照明看板などに使用できる。
【0051】
図1(a)に、本発明の照明装置を用いた光源直下方式の照明装置の、点状光源2を用いた構成を示す。また、図1(b)に、光源が線状光源3である場合の構成を示す。
【0052】
図2に本発明の照明装置の、一実施態様を示す。本発明の照明装置は、X軸と、X軸に垂直なY軸とに平行な辺からなる矩形状の出射面を持ち、反射板5と、複数の光源1と、板状の光制御部材4とを備え、前記反射板5は前記X軸およびY軸に平行なXY平面と平行に配置している。前記XY平面に垂直なZ軸の出射側を正面方向としたとき、前記光源1は前記反射板5の正面方向側の前記XY平面に平行な1つの仮想平面内に配置しており、前記光制御部材4は前記配列した光源1の正面方向側に配置し、かつ、該光制御部材4の主面は光源1が配列している前記仮想平面と平行である。該光制御部材4の主面は、光源1に対向し該光源1からの光を受光する入射面と前記入射面に受光した光を出射する出射面とからなり、前記入射面に一致するまたは光制御部材内部に該入射面と平行に位置する反射部配置面9を備え、前記出射面は表面に凸部6を周期的に複数形成している。前記反射部配置面9が反射部7と開口部8とからなり、該開口部8の面積割合が反射部配置面9の20%?80%であり、該開口部8は該凸部6と対向している。すなわち各凸部6に対して開口部8が設けてられており、該開口部8の正面方向に凸部6の中心付近があることで、照明装置の正面方向への出光が効率よく行われる。任意の凸部6と対向する開口部8は連続していなくてもよく、例えば凸部6に対向する位置に複数設けられていても良い。1つの凸部6に対して1つの開口部8を設けると照明装置の正面方向への出光が効率よく行う上では有利であるが、複数の開口部8を設けると散乱性が高まり、また開口部8と反射部7のコンストラストが発生しにくいため均一性は高まる。反射部配置面9に位置する反射部7の全光線反射率が80%以上であり、エネルギー損失を小さく抑えている。反射部7の全光線反射率は高いほどエネルギー損失が小さくなるため望ましく、したがって90%以上だとより望ましく、95%以上だとさらに望ましい。
【0053】
開口部8の割合が20%より小さいと直接出射する光の割合が減り反射を繰り返す光が増えるため光利用効率が落ちる。逆に開口部8の割合が80%よりも大きいと、直接出射する光の割合が増え、反射部7のみによりランプイメージを解消することが困難になる。開口部8の割合が50%以下である場合に、より優れて輝度ムラを解消することができるため、望ましい。また、エネルギー効率の観点から30%以上であることが望ましい。また、開口部8が凸部6と対向していることで、開口部8より入射した光のうち多くの光は正面方向に向かう。このため、正面輝度を高めることができる。
【0054】
図3(a)は、本発明の光制御部材4に光線が入射したときの光線の挙動を示す図である。ここでは図2の照明装置の光制御部材4をX軸およびZ軸に平行なXZ平面で切ったときの断面を示している。光源1より放射された光のうち、光制御部材4の反射部配置面9の開口部8にあたった光の多くは、入射面で屈折し光制御部材内部に入射し凸部6に向かう。一方、反射部配置面9の反射部7にあたった光の多くは、反射部7で反射し光源側に戻り、反射板5で再び光制御部材4側に反射し再利用される。反射部7と反射板5との間で反射を繰り返すと、光は拡散光となる。
【0055】
図3(b)に反射部配置面9を光制御部材4の内側に設けた場合の本発明の照明装置に光線が入射したときの図を示す。入射面10より入射した光は、屈折し支持板11内部を進み、反射部配置面9の開口部8に到達した光はそのまま進み凸部6に向かうが、反射部7にあたった光は反射部7で反射し、光源側に戻り、同様に再利用される。反射部配置面9を光制御部材4の内側に設けるには作製した図3(a)に示した光制御部材4と同様な構成の光学シートの反射部配置面上に透明材料からなる支持板11を配置する方法が容易である。支持板11は反射部配置面9に接着してもよいし、しなくてもよいが、接着すると照明装置の組み立てが容易になるだけでなく、特にこのような構成では前記光学シートが薄い場合の皺発生が抑制できる。この場合、接着剤は透明性が高いものを用いることが好ましい。3(b)の構成では前記の理由により光学シートを薄くすることができるため、押し出し成形などで光学シートの凸部を形成する場合、賦形が容易なだけでなく、凸部6の集光性と、開口部8の広さを両立することが容易になる。その結果、光利用効率が高く、正面輝度が一層高い光制御部材4を構成することが容易となる。
【0056】
反射部7の材料としては、金属膜、金属粒子あるいは金属参加物粒子などが挙げられる。反射部7における光の吸収は光のロスのつながることから望ましくない。この観点から反射部7の反射率はより高いことが望ましいが、上記反射部材の材料の価格や入手性とのバランスから反射部7の全光線反射率が90%以上であることが望ましい。望ましい材料として、銀、アルミニウム等の各種金属およびその酸化物の蒸着膜、各種樹脂にチタン白、リトポン、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛等の白色顔料を分散させたものなどが上げられるが、これに限定されるものではない。
・・・略・・・
【0137】
また、本発明の光制御部材4に様々な機能を持たせることにより、より輝度ムラがなく、より高輝度な照明装置を提供することができる。付加する機能としては、光線方向変換部や、集光手段16などが挙げられる。まず、光線方向変換部について説明する。線状光源3からの入射光のうち、望ましい割合の光の光線方向を変更することで、輝度の均一性を更に高めることができる。前記光線方向を変換する割合について好適な範囲を見出すとともに、光線方向の変換と輝度ムラ解消の2つの機能を1つの部材で達成するための好適な構成をも見出した。
【0138】
光線方向変換部によって入射面に法線方向から入射した光の80%乃至10%の光の方向を変換することで、好適な割合の光線方向を変化させることができるので、輝度の均一性を更に高めることができる。
【0139】
前記線状光源3から前記開口部8に入射した光の80%以上が前記光線方向変換部を通過して、前記出光制御部に到達することで、光の有効利用率が高く、多くの光の出光を制御できるので、輝度が高く、かつ、好ましい出光制御が可能である。
【0140】
光線方向変換部として少量の光線方向変換材を内部に分散したり、表面に塗布したりすることができる。光線方向変換材の使用によって出射光の拡散性を高め、輝度均一性を高めることができる。光線方向変換材と同じ材料を、出射面側に塗布してもよいが、この場合には別途、出光制御部よりも線状光源側に光線方向変換部を設ける必要がある。光線方向変換材としては従来光拡散板や拡散シートに用いられる無機微粒子や架橋有機微粒子を用いることができる。使用量は従来の一般的な光拡散板に比べてごく少量で同等以上の拡散性が得られるとともに、透過性も非常に高い。また光線方向変換材が分散している場合、本発明では使用量が極めて少量である。」
オ 「【実施例】
【0205】
本発明の実施例の形態を以下に示す。
本実施例の照明装置の構成は図2の略図で示される。
まず、X方向の長さ458mm、Y方向の長さ730mm、X方向とY方向に垂直な厚さ方向の長さ35mmで、出射側にX方向の長さ698mm、Y方向の長さ416mmの矩形の開口部を持つ直方体状の白色のABS樹脂製のハウジングを用意する。
次に前記ハウジングの出射側の開口部に対向する位置にある底部を覆うように、発泡ペット樹脂からなる反射率95%の反射板5を配置する。
【0206】
実施例および比較例では、溝状の平行な凹部を設けた金型を用いて、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体を射出成形して得られる、片面に凸部を有する主面サイズが695mm×412mmで厚さ2mmの樹脂板の凸部の表面に接着剤を薄く塗布し、厚さ0.5mmの発泡ペット樹脂を乗せて、加圧して貼り合わせることで、反射板5とする。凸部の形状は、幅1mm、頂角40度のプリズム状である。該反射板は凸部の長手方向がX軸に平行になるようにハウジングの底部に配置する。これによって該反射板5は集光手段16として機能する。この構成は図35の略図で示される。
【0207】
次に前記反射板5の出射側に2mmの間隔をおいて、該反射板5と平行に線状光源3を配置する。線状光源3としては直径3mm、長さ700mmの複数の冷陰極管16本を22mmずつの間隔をおいてX方向に沿ってY方向に平行に配置する。
次に光制御部材4を前記線状光源3の出射側に14mmの間隔をおいて、該反射板5と主面が平行になるよう配置する。該光制御部材4のサイズはY方向の長さ707mm、X方向の長さ436mmで、X方向とY方向に垂直な厚さ方向の凸部6の高さを含まない厚み、すなわち該光制御部材4の入射面から出射面に形成した凸部6の底部までの厚みTは2mmである。
線状光源3の中心から光制御部材4までのHは15.5mm、隣接する線状光源3の中心同士の距離Dは25.0mmである。
【0208】
光制御部材4は出射面側にストライプ状の凸状曲面からなる凸部6を複数有し、入射面側に前記ストライプ状の凸部6と平行なストライプ状の反射部7を複数有している。該光制御部材4は以下の製法Aまたは製法Bで作成する。
【0209】
<製法A>
厚さuの透明な屈折率1.6のPETフィルム(商品名 0300E(ダイヤホイルヘキスト(株))の片面に屈折率1.55の紫外線硬化樹脂組成物(B-5H(日本化薬製))を塗布し、ピッチaで配列した略楕円弧状の溝が形成してある金型ロールの型面に塗布面を押し付け、その状態でPETフィルム側から紫外線を照射して硬化を行わせ、凸状曲面層をPETフィルムの片側に有する凸状曲面シートを得る。
【0210】
該凸状曲面シートの凸状曲面がない方の面に、光硬化性の粘着材を均一に塗布し、平行光を凸状曲面側よりフィルム面に垂直に照射する。平行光の照射時間を制御することで、開口部8の広さを制御することができる。その後、粘着面に銀箔シートを貼り合わせた後、シートをはがすと、反射部7と開口部8ができる。前記光硬化した部分が開口部8になり、光硬化しなかった部分が反射部7になる。こうして、片面が凸状曲面でもう一方の面にストライプ状の反射部をもつ光制御部材4ができあがる。反射部7の全光線反射率は95%である。なお、この方法はCC’間のみに開口部8が存在する場合に適している。
【0211】
<製法B>
形状の異なる2種類のロール金型を用いて押し出し成形を行い、両面に賦形された板状成形物を成形する。該ロール金型は断面がピッチaの略楕円弧形状配列の溝がロールの長手方向と垂直に複数配列する形状をもつものと、断面が略長方形状の溝が一定間隔でロールの長手方向と垂直に複数配列する形状をもつものであり、それぞれ切削加工により作製する。該板状成形物の材料(基材樹脂)としてはメタアクリル-スチレン共重合体を用いる。押し出し成形に際しては該板状成形物の両表面形状の位置関係を合わせるためロール金型の位置合わせを行い、ロール間隔は所望の板厚uに調整する。該板状成形物の両表面の形状と位置関係は、断面が楕円弧形状の平行な畝が複数配列する凸状曲面配列側と、断面が長方形状の凸部と凹部が平行なストライプ状に複数配列した平坦ストライプ配列側が表裏をなしており、板面を挟んで前記凸状曲面と前記凹部が1対1で対応して板状成形物の厚み方向と平行な位置関係で対向している。
【0212】
さらに、該平坦ストライプ配列側の凸部に酸化チタン系白色顔料(石原産業株式会社製、タイペーク)をスクリーン印刷法で塗布し、乾燥することで、全光線反射率95%のストライプ状の反射部7を形成し、光制御部材4ができ上がる。図43として、製法Bによる実施例および比較例の光制御部材4の形状を示す。
・・・略・・・
【0220】
・・・略・・・
以下に、実施例および比較例の構成と、その評価結果を示す。
【0221】
【表1】 ・・・略・・・
【0222】
表中の評価は次の基準で示している。
・・・略・・・
【0224】
角度ムラについては、観察角度の違いによって生じる輝度変化が正面を中心として漸減するのでなく、図9(b)に示すように中心から離れた角度で高い輝度を示す分布のものは×とし、それ以外を○とする。角度ムラは光の利用効率の観点から○であることが好ましいが、×であってもPCモニターや交通標識などほぼ正面方向からのみ観察する用途には用いることができるが、これらの用途では当然ながら正面輝度が高いことが特に要求される。」
カ 「【図2】

【図3】


キ 上記アないしカからみて、引用例1には、実施例(【0205】ないし【0224】、図2)の照明装置が記載されており、該照明装置は交通標識に利用できるもの(【0224】)であるから、該照明装置を有する交通標識に関し、次の発明が記載されているものと認められる。
「照明装置を有する交通標識であって、
前記照明装置は、
矩形の開口部を持つ直方体状のハウジングと、
前記ハウジングの出射側の開口部に対向する位置にある底部を覆うように配置された反射板5と、
前記反射板5の出射側に、該反射板5と平行に配置された線状光源3と、
前記線状光源3の出射側に間隔をおいて、該反射板5と主面が平行になるよう配置され、出射面側にストライプ状の凸状曲面からなる凸部6を複数有し、入射面側に前記ストライプ状の凸部6と平行なストライプ状の反射部7と開口部8を複数有している光制御部材4と、
を有する、
交通標識。」(以下「引用発明」という。)

(2)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、当審拒絶理由で引用例2として引用された国際公開第2004/006216号には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「技術分野
本発明は新規な構造の、標識前面からの光に対して再帰反射性であり標識内部からの光に対して光透過性の面を有する情報表示部、表示部の背面に配置された照明装置およびこれら情報表示部と照明装置を閉鎖保持する矩体とからなる内部照明式標識に関する。」(1頁4行ないし8行)
イ 「発明を実施するための最良の形態
次に図によって本発明をより詳しく説明する。
図1は、本発明による内部照明標識の実施態様の一例を示す模式図である。標識前面からの光に対して再帰反射性であり標識内部からの光に対して光透過性の面を有する情報表示部は情報表示層(1)、表面保護層(2)、再帰反射層(3)およぴ光散乱層(4)よりなる。情報表示部の背面に設置された照明装置は光源(5)と背面反射層(6) により構成されている。さらに、これら情報表示装置(1?4)と照明装置(5,6)は矩体(7)により閉鎖保持されている。
図1における実施態様においては、情報表示層(1)は独立した層として表面保護層(2)の前面に設置されているが、表面保護層(2)、再帰反射層(3)およぴ光散乱層(4)のいずれの層の前面又は背面などいずれの位置に設置されていてもよい。また、情報表示層(1)は独立した層としてプラスチックや金属板として設置されてもよく、また、印刷層や着色されたプラスチック粘着シート層のように各層(2?4)に貼付されてもよい。
また、図1における実施態様においては、背面反射板は光源の中心位置に焦点を持つ放物線曲線断面を持ち、光源より発せられた光を情報表示部を構成する面の法線に対して0?30度の入射角でプリズム型再帰反射素子の背面から入射することができるように配置されている。」(20頁17行ないし21頁12行)
ウ 「Fig.1



(3)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、当審拒絶理由で引用例3として引用された特開2005-50789号公報には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ、コンピュータ用モニタ、ビデオカメラ、テレビ受信機、カーナビゲーションシステム、広告用看板などに利用される面光源素子およびこれを用いた直視型の表示装置に関する。」
イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に本発明の面光源素子の一例の概略構成図を示す。この面光源素子は、左右の端面1側に光源2が設けられた導光体3と、導光体3から出射された光の出射角度の分布を制御する出射光制御板4からなっている。出射光制御板4は導光体3上に配置され、入射面5に入射した光が出射面(面光源素子の発光面)6から出射される。出射光制御板4の入射面5には、導光体3の出射面からの光を出射光制御板4の出射面6の正面方向に向かわせるために、曲面を有する多数の凸部7が形成されており、この凸部7の頂部が有する平坦面9が導光体3の出射面に密着している。これら両者は、図示していない接着層もしくは粘着層を両面に有するフィルムを介して、または導光体3に接着層もしくは粘着層を設けることによって、または導光体3の表面をエキシマUVランプなどで改質することによって密着させることができる。この例における凸部7は、1次元パターン、具体的には直線状の畝の列をなし、光源2が配置されている側の導光体の端面1すなわち導光体の入射面1と平行になるように各凸部7が配置されている。光源2の周囲には、導光体の入射面1側と反対方向に進む光を反射し、導光体の入射面1側に進行させるリフレクタ8が設けられている。
【0008】
光源2から導光体の入射面1へ入射した光は導光体3内を全反射を繰り返し伝播していく。この伝搬する光が導光体3の出射面と出射光制御板4の凸部7先端の平坦面9との密着部から出射光制御板4に取り込まれる。これにより、導光体3内を伝搬する光は密着部から順次、出射光制御板4に取り出され、取り出された光は出射光制御板4の凸部7内で全反射されて出射面(面光源素子の発光面)6から出射される。
【0009】
本発明者らは各種形状の凸部7を有する出射光制御板4について鋭意検討した結果、各凸部7の導光体側頂部に平坦面9を設け、かつ図2a?図2dに示すように各平坦面9の面積S1を各凸部7の出射面(出射光制御板4の内部にある)の面積S2の1/100以上、1/2以下とすることによって導光体3との密着が容易となり、かつ良好な密着性を有することを見出した。なお、図2a?図2dにおいて、凸部7は紙面垂直方向に延び、その長さだけ、凸部7の平坦面9も凸部7の出射面も紙面垂直方向に延びるから、両者の面積S1,S2は、図示したように、紙面に沿うそれぞれの幅で対比される。本発明における出射光制御板4が有する凸部7の断面形状は、図2a?図2dに示したように種々考えられる。平坦面9は、曲面からなる凸部の先端を平坦になるよう切断して得られる形状であるのが望ましく、平坦面9が出射面6と平行であることがさらに望ましい。また、図2a?図2dのような凸部7の鉛直断面において平坦面9を示す線と曲面を示す線との接続点が変曲点であってもよい。以下に、本発明の実施例と、本発明との比較例とを示す。」
ウ 「【図1】

・・・略・・・【図2c】

【図2d】



(4)本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、当審拒絶理由で引用例4として引用された国際公開第2008/047855号には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、パーソナルコンピュータ、コンピュータ用モニタ、ビデオカメラ、テレビ受信機、カーナビゲーションシステムなどに利用される面光源素子およびその製造方法に関する。 」
イ 「発明が解決しようとする課題
[0005] しかしながら、従来技術に示した密着性向上の技術を用いたとしても、高温高湿となりやすい屋外や車内での厳しい環境下では、出射光制御板、固定層、導光体に寸法変化が起こり、密着が不十分となりやすいため、依然として密着力が不足している。また、固定層を直接導光体に設けようとすると、導光体の出射面のみに配置する必要があり、直接設けるためには固定層が液状である必要があるため位置合わせが難しいのと同時に、厚み、固さを制御することが困難であるため、歩留まりが低下するおそれがある。
[0006] また、例えば接着層または粘着層を用いた密着の場合、接着層または粘着層の厚み、固さに影響して凸部の頂部が埋まり、凸部と導光体との接着幅が変化してしまうことで光学性能が低下する原因となる。
[0007] そこで本発明は、前記の課題に鑑みてなされたもので、生産性の向上とともに、出射光制御板と導光体との密着性、密着力を向上させつつ、光学性能を維持した面光源素子を提供することを目的とする。」
ウ 「課題を解決するための手段
[0008] 上記の課題を解決する本発明は、光源と、前記光源からの光を反射するリフレクタと、前記光源からの光および前記リフレクタで反射した光を受光する少なくとも1つの端面である入射面と該入射面と略垂直を成す主面の一つである出射面とを有する導光体と、前記導光体の出射面からの光を入射面上の凸部で受光して出射面から正面方向へ出射する出射光制御板と、前記導光体の少なくとも一部の出射面と前記出射光制御板の少なくとも一部の入射面を接合する固定層と、を備える面光源素子であって、前記出射光制御板が少なくとも一部の前記凸部の頂部に少なくとも一つ以上の突起状の固定部を有し、前記固定部の少なくとも一部が前記固定層の内部にあることを特徴とする。
[0009] また、本発明は、上記の面光源素子において、前記固定部の頂部が前記導光体の出射面と平行な平坦部を有する出射光制御板であることを特徴としていてもよい。」
エ 「発明を実施するための最良の形態
[0028] 以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は本発明の実施形態に係る面光源素子の一部断面を示す概略断面図を示す。この面光源素子は、左右の端面1側に光源2が設けられた導光体3と、導光体3から出射された光の出射角度の分布を制御する出射光制御板4からなっている。出射光制御板4は導光体3上に配置され、入射面5に入射した光が出射面(面光源素子の発光面)6から出射される。出射光制御板4の入射面5には、導光体3の出射面からの光を出射光制御板4の出射面6の正面方向に向かわせるために、多数の凸部7が形成されており、この凸部7の頂部が有する固定部8が導光体3上に設けられた固定層9に埋まることによって導光体3の出射面に密着している。光源2の周囲には、導光体の入射面1側と反対方向に進む光を反射し、導光体の入射面1側に進行させるリフレクタ10が設けられている。
・・・略・・・
[0037] また、本発明における出射光制御板が備えた凸部は、1次元的配置のレンチキュラーレンズのようなパターンのほかに2次元的配置のレンズアレイタイプでもよい。出射光制御板の光出射面にはマイクロレンズアレイのほかに微細な表面凹凸を直接転写してもよいし、光透過性微粒子を混合させた拡散剤液を塗工することによって拡散層を設けても良い。
[0038] 凸部の頂部に設けられた固定部は少なくとも一つ以上であればよく、また凸部の頂部から導光体の平面に向けて垂直に配置されていれば、形状が円錐、多角錐、多角柱、円柱、円錐台、角錐台など特に制限はないが、頂部が平坦な多角柱、円柱、円錐台、角錐台が好ましく、応力が均一に働く円柱、円錐台が特に好ましく用いられる。また、固定部の位置は頂部のどの位置に設けられてもよいが、出射光制御板と導光体の平面を保つためには頂部の中心に設けることが好ましい。
[0039] 凸部7の頂部において、図3に示すように固定部8の周囲には凹部11が設けられていてもよい。凹部11の容積は、固定部8が固定層9に埋め込まれる容積と略等しいことが好ましい。
[0040] 凸部の頂部に設けられた固定部の高さは、固定部を固定する固定層の厚さに対して50%から100%の範囲であれば好ましく、特に50%以上であれば、従来技術に比べて接着面積が大きくなることによって接着強度を向上させることができる。また、80%以上であれば出射光制御板と導光体を平行にするための圧力調整が容易となり、特に固定部の頂部が平坦であるとき、その効果が大きくなる。また、95%以下であると前固定層への固定部の埋め込みによる固定層の隆起制御が容易となるためより好ましい。」
オ 「[図1]



4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「照明装置を有する交通標識」は、本願発明の「照明標識」に相当する。

(2)引用発明の「ハウジング」は、その出射側の開口部に対向する位置にある底部を覆うように反射板5を配置し、前記反射板5の出射側に、該反射板5と平行に配置された線状光源3と、前記線状光源3の出射側に間隔をおいて、光制御部材4を配置したものである。そうしてみると、引用発明の前記反射面5は「光反射面」といえ、該光制御部材4の出射面は「発光面」といえる。ここで、本願の明細書の【0016】には、「封入構造(エンクロージャ)」と記載されており、本願発明の「エンクロージャ」は封入構造を意味すると解される。そうすると、引用発明の「矩形の開口部を持つ直方体状のハウジング」は、本願発明の「エンクロージャ」に相当する。また、引用発明は、本願発明の「光反射面及び発光面を有するエンクロージャ」と「前記エンクロージャの内部に配置された光源」を備える。

(3)引用発明の「光制御部材4」は、出射面側にストライプ状の凸状曲面からなる凸部6を複数有するものであり、その偏向あるいは導光するという機能からみて、該「凸部6」が本願発明の「レンチキュラーレンズ要素」に相当する。また、引用発明の「光制御部材4」は、「凸部6」(レンチキュラーレンズ要素)により光を偏向あるいは導光しているといえるから、本願発明の「光偏向複合フィルム」と、「光偏向フィルム」である点で共通する。また、引用発明の「光制御部材4」(光偏向フィルム)は、入射面側に前記ストライプ状の「凸部6」(レンチキュラーレンズ要素)と平行なストライプ状の反射部7と開口部8を複数有しており、該「反射部7」及び該「開口部8」が本願発明の「光反射領域」及び「光透過領域」にそれぞれ相当するといえる。また、引用発明の「反射部7」(光反射領域)及び「開口部8」(光透過領域)は、「凸部6」(レンチキュラーレンズ要素)入射面との間に配置されているから、該「入射面」は、本願発明の「下主面」に相当し、前記「入射面」の反対側の「出射面」は、本願発明の「上主面」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「光制御部材4」(光偏向フィルム)と、本願発明の「光偏向複合フィルム」とは、「上主面と、下主面と、複数のレンチキュラーレンズ要素と、前記複数のレンチキュラーレンズ要素と前記下主面との間に配置された、複数の光反射領域及び光透過領域と、を有する」点で一致する。また、引用発明の「光制御部材4」(光偏向フィルム)は、上記(2)で示したように、その出射面が「発光面」といえるから、本願発明の「発光面の少なくとも一部を形成する」との構成を備える。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「照明標識であって、
光反射面及び発光面を有するエンクロージャと、
前記エンクロージャの内部に配置された光源と、
前記発光面の少なくとも一部を形成する光偏向フィルムと、
を備え、
前記光偏向フィルムは、
上主面と、
下主面と、
複数のレンチキュラーレンズ要素と、
前記複数のレンチキュラーレンズ要素と前記下主面との間に配置された、複数の光反射領域及び光透過領域と、
を有する、
照明標識。」の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1
本願発明では、「光源とは反対側となるように光偏向複合フィルムに結合されたグラフィック画像(但し、液晶セルに基づくグラフィック画像を除く。)」を備えているのに対し、
引用発明では、前記グラフィック画像を備えているかどうかが一応明らかでない点。

・相違点2
本願発明では、
前記「光偏向複合フィルム」は、
「平面状の上主面と、前記上主面とは反対側の平面状の下主面と、前記上主面と前記下主面との間に配置された複数のレンチキュラーレンズ要素であって、複数のレンチキュラーレンズ要素から突出する複数の柱状要素を有し、該柱状要素は、平面状の上面を含む、複数のレンチキュラーレンズ要素と、前記複数のレンチキュラーレンズ要素と前記平面状の下主面との間に配置された、複数の光反射領域及び光透過領域と、前記柱状要素の前記上面を、隣接する基材の下部に結合する接着層であって、該隣接する基材は、上主面と下主面との間に配置される、接着層と、を有」するのに対し、
引用発明では、
光制御部材4(光偏向フィルム)は、
複合フィルムといえるかどうかが不明であり、また、上主面及び下主面がそれぞれ平面状であるかどうかが一応不明であり、さらに、前記柱状要素及び前記接着層を有していない点。

・相違点3
本願発明では、「下主面は光拡散層を備える」のに対し、
引用発明では、前記光拡散層を備えるかどうかが明らかでない点。

5 判断
(1)相違点1について検討する。
ア 照明標識において、標識の基になる情報表示層が視認側の最表面となるように他層の前面に貼付されて配置されることは本願の優先日前に周知(以下「周知技術1」という。例.引用例2(上記3(2)イ及びウ参照。))である。
イ 引用発明は、交通標識であるものの、情報表示層を如何に配置するか、その具体的な構成は不明であるが、上記アからみて、引用発明において、標識のための情報表示層(グラフィック画像(但し、液晶セルに基づくグラフィック画像を除く。))を光源とは反対側となるように光制御部材4(光偏向フィルム)に結合すること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。

(2)相違点2について検討する。
ア レンチキュラーレンズ要素に該要素から突出する柱状要素を設け、該柱状要素が平面状の上面を含み、前記柱状要素の前記上面を隣接する基材の接着層に結合することは本願の優先日前に周知(以下「周知技術2」という。例.引用例3(上記3(3)イ及びウ参照。)、引用例4(上記3(4)エ及びオ参照。))である。
イ 引用発明において、レンチキュラーレンズ要素の出射面側に、上記(1)で検討したような情報表示層(グラフィック画像)を配置する際に、レンチキュラーレンズ要素に周知技術2のような柱状要素を設け、該柱状要素を情報表示層に結合させることは当業者にとって格別困難なことではない。そして、他層(隣接する基材)に貼付されている前記情報表示層に、前記柱状要素を結合するに際し、前記他層の情報表示層が貼付されている面とは反対側の下面に接着層を設け、該接着層に前記柱状要素の上面を結合するようになすことは当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得たことである。
ウ 上記イのように、引用発明に情報表示層を配置した際に、その前記他層の最表面は「平面状の上主面」を構成することは明らかである。また、引用発明の光制御部材4(光偏向フィルム)の下側の入射面(下主面)は、ストライプ状の反射部7と開口部8を複数有しているものであり、平面状であるかどうかは特定できないものの、反射部7が銀箔シート(引用例1の【0210】参照。)で形成されているものであれば、該銀箔シートはその厚さがかなり薄く、銀箔シートが存在する反射部7と、銀箔シートが存在しない開口部8との段差が無視できる程度であるといえるから、前記入射面(下主面)は実質的に平面状であり、本願発明の「前記上主面とは反対側の平面状の下主面」を備えることになるといえる。仮に前記入射面(下主面)が実質的に平面状であるといえないとしても、平面状の支持板11(引用例1の【0055】、図3参照。)を光制御部材4(光偏向フィルム)の入射面側に配置する構成であれば、該支持板11が平面状であるから、本願発明の「前記上主面とは反対側の平面状の下主面」を備えることになるといえる。そうすると、引用発明において、光制御部材4(光偏向フィルム)が、上主面及び下主面を平面状とし、該上主面と該下主面との間に、複数の凸部6(レンチキュラーレンズ要素)及び前記他層(隣接する基材)が配置され、該凸部6の柱状要素の前記上面を、隣接する基材の下部に結合する接着層であって、該隣接する基材は、上主面と下主面との間に配置される、接着層を有するようになすことは当業者が適宜なし得たことである。
エ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得たことである。

(3)相違点3について検討する。
ア 引用例1の【0137】ないし【0140】(上記3(1)エ)には、「本発明の光制御部材4に様々な機能を持たせることにより、より輝度ムラがなく、より高輝度な照明装置を提供することができる。付加する機能としては、光線方向変換部や、集光手段16などが挙げられる。・・・光線方向変換部として少量の光線方向変換材を内部に分散したり、表面に塗布したりすることができる。光線方向変換材の使用によって出射光の拡散性を高め、輝度均一性を高めることができる。光線方向変換材と同じ材料を、出射面側に塗布してもよいが、この場合には別途、出光制御部よりも線状光源側に光線方向変換部を設ける必要がある。光線方向変換材としては従来光拡散板や拡散シートに用いられる無機微粒子や架橋有機微粒子を用いることができる。使用量は従来の一般的な光拡散板に比べてごく少量で同等以上の拡散性が得られるとともに、透過性も非常に高い。また光線方向変換材が分散している場合、本発明では使用量が極めて少量である。」と記載されている。
イ 光学層の背面側に照明装置を備えた表示装置において、該光学層の入射面(光源に対向する面)側に光散乱層(光拡散層)を設けることは周知(例.引用例2(上記3(2)イ及びウ参照。))である。
ウ 引用例1における上記アの示唆や上記イで示した周知技術3に基づけば、引用発明において、光制御部材4又は支持板11の入射面側(光源側の面)に光拡散層を備えるようになすこと、すなわち、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者が周知技術3に基づいて適宜なし得たことである。

(4)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1ないし3から当業者が予測することができた程度のことである。

(5)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(6)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、平成29年11月6日提出の意見書において、概略以下のとおり主張している。
「引用文献1は、「液晶テレビ」等の液晶セルに基づくグラフィック画像のための照明装置に係る発明であり(段落0001?0010等)、技術分野が相違することは、当業者であれば十分に理解できるものと考えます。したがって、引用文献1記載の「液晶表示装置」に関する発明において液晶セルに基づくグラフィック画像を排除することは阻害要因があると考えます。また、引用文献1の照明装置の下主面の支持板11(図40等)としては透明性の高い材料を用い、透明性の高い接着剤で反射部配置面9に接着されます(段落0055等)。
したがって、当業者にとって、引用文献1に記載された発明に基づいて、液晶セルに基づくグラフィック画像を除くグラフィック画像を備える照明標識であって、更に下主面に光拡散層を設けることは、必ずしも容易ではないと思料いたします。
これに関し、引用文献2は光拡散層4を記載していますが、引用文献2に記載の発明は内部照明標識に関する発明であって(第1頁、第1?21行等)、液晶表示装置の照明装置にかかる引用文献1の発明とは明らかに技術分野が相違します。平成28年8月3日付提出の審判請求書において主張したとおり、発明の技術分野を、「液晶表示装置」→「表示体」→「物」などと都合よく上位概念化してしまえば、如何なる発明も技術分野は同一となり、組み合わせ容易の論理展開が可能になってしまいます。したがって、引用文献1に記載の発明は「液晶表示装置」に関するものであると考えるのが自然であると思料致します。したがって、引用文献1記載の「液晶表示装置」に関する発明に、引用文献2に記載の「内部照明標識」に関する発明を組み合わせることは、本願発明をあらかじめ見ないでもしない限り、当業者は通常想起しないことであると思料いたします。」
イ 審判請求人の主張について検討する。
引用例1(引用文献1)(上記3(1)参照。)は、その【0001】にも記載されているように、照明装置に関するものであり、その用途は、液晶ディスプレイ装置に限らず、照明看板装置である。また、引用例1の【0224】には、照明装置の用途として、上記照明看板装置に関連する交通標識も挙げられている。
このような引用例1の示唆に基づけば、引用例1は、「液晶テレビ」等の液晶セルに基づくグラフィック画像のための照明装置に限られず、液晶セル以外の手段に基づくグラフィック画像のための照明装置に関する発明を開示しているといえる。
してみると、引用例1と引用例2とは、「照明標識」という同じ技術分野に属するものであり、上記(3)で説示したとおり、引用例1の示唆に基づけば、引用例2等に記載されている周知技術3を引用発明に適用することに阻害要因はなく、本願発明の構成のようになすことは当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。

6 むすび
本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び及び周知技術1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-18 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2012-547224(P2012-547224)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
鉄 豊郎
発明の名称 エネルギー効率の高い標識用の光偏向複合フィルム  
代理人 青木 篤  
代理人 河原 肇  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 胡田 尚則  
代理人 高橋 正俊  
代理人 石田 敬  

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