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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B |
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管理番号 | 1340777 |
審判番号 | 不服2017-14895 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-05 |
確定日 | 2018-06-19 |
事件の表示 | 特願2011-280407「アングルセンサー」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日出願公開、特開2012-132920、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年12月21日(パリ条約に基づく優先権主張2010年12月21日 韓国(KR))の出願であって、平成27年9月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年12月22日付けで手続補正がされ、平成28年5月31日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成28年12月6日付けで手続補正がされ、平成29年5月29日付けで平成28年12月6日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ(送達日:平成29年6月6日)、これに対し、平成29年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1 理由1(明確性)について この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ・請求項1-2 請求項1には「・・・前記回転量の誤差を減らすために第1サブギヤに対する第2サブギヤのギヤ比が1:1であり、・・・」とあるが、どのような場合と比べて「前記回転量の誤差を減らす」ことができるのか、比較の基準が明らかでなく発明の範囲が明確でない。 2 理由2(進歩性)について この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1-2 ・引用文献等1-4 本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 引用文献等一覧 1.特開2004-239670号公報 2.特表2009-505097号公報 3.特開2007-155482号公報 4.特開2003-344009号公報 第3 本願発明 本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年10月5日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び2は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 中央に開口が形成された円盤状のケースと、 車両の操向軸と共に回転しながら前記ケースの前記開口と対応する中孔部位が形成されたリング状のメインギヤと、 前記メインギヤの回転方向の正方向に回転し、一面に第1マグネットが結合される第1サブギヤと、 前記メインギヤに噛み合わせられて前記メインギヤの回転方向の逆方向に回転し、一面に第2マグネットが結合される第2サブギヤと、 前記第1サブギヤの第1マグネットの磁界変化を感知して回転量データを出力する磁気素子とを備え、 前記第1サブギヤ及び前記第2サブギヤは同じギヤ比を有し、 前記メインギヤ及び前記第1サブギヤのギヤ比及び半径比は操向角の測定誤差を最小化するために4:1であり、 前記第1サブギヤは、前記メインギヤと噛み合わせられずに前記第2サブギヤと噛み合わせられ、 前記第1、2サブギヤは前記ケースの一面に回転可能に結合され、 前記ケースの他面にトルクセンサーが備えられ、 アングルセンサーが前記トルクセンサーと一体に形成され、 前記操向軸は前記アングルセンサーと前記トルクセンサーを貫通して配置されたことを特徴とするアングルセンサー。 【請求項2】 前記磁気素子は、ホール素子(Hall IC)であることを特徴とする請求項1に記載のアングルセンサー。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審による。以下同様。) ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、例えば車両においてステアリングホイールの操舵角を検出する回転角度検出装置に関するものである。」 イ 「【0020】 【発明の実施の形態】 (第1実施形態) 以下、本発明の回転角度検出装置を車両におけるステアリングの操舵角を検出する操舵角検出装置として具体化した第1実施形態を図1?図4に基づき詳細に説明する。 【0021】 図1に示すように、回転角度検出装置としての操舵角検出装置1は、図示しない車両のステアリングコラム内に配設され、回転体としてのステアリングシャフトSに装着されている。操舵角検出装置1は、ステアリングシャフトSの周囲の構造体に固定されたハウジング2を備え、このハウジング2には回転板3が回転可能に支持されている。この回転板3はステアリングシャフトSに外嵌した状態で固定され、ステアリングシャフトSと共に回動する。つまり、回転板3は、ステアリングシャフトSが回転されると、同ステアリングシャフトSと等しく回転する。また、回転板3の外周面にはギア部3aが形成されている。そして、回転板3の近辺には、ギア部3aと歯合するギア体4が配設されている。このため、ステアリングシャフトSが回転されると、回転板3の回転に伴ってギア体4も回転されることとなる。なお、ギア体4は、回転板3の1回転当たり、6回転する歯数比で形成されている。 【0022】 図2にも併せ示すように、ギア体4の中心部には、永久磁石5が固定されている。この永久磁石5は、ギア体4において所定の径方向に磁束を発生させるように設けられている。このため、ギア体4が1回転すると、永久磁石5が発生する磁束の方向も360゜回転する。 【0023】 図2に示すように、ハウジング2内において永久磁石5と対向する箇所には、角度検出手段としての磁気抵抗素子11が配設されている。この磁気抵抗素子11は永久磁石5が発生する磁束を検出してギア体4の回転角に応じて連続的に変化する角度検出用のアナログ信号を出力する。詳しくは、回転板3が60゜回転する毎にギア体4が1回転(360゜回転)する。このため、図4に示すように、磁気抵抗素子11は、回転板3が60゜回転する毎に1周期となる正弦波からなる第1アナログ信号An1と、その第1アナログ信号An1に対して1/4周期だけ位相がずれた正弦波からなる第2アナログ信号An2とを出力する。 【0024】 次に、こうした操舵角検出装置1の電気的構成について説明する。 図3に示すように、操舵角検出装置1は、前記磁気抵抗素子11、角度算出手段としてのマイクロコンピュータ(マイコン)12、電源回路13及びインターフェイス部14を備えている。 【0025】 マイコン12は、具体的には図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器等を備えたCPUユニットであり、図2に示すプリント配線板6に配設されている。このマイコン12の第1入力端子IN1及び第2入力端子IN2には、前記磁気抵抗素子11からの第1及び第2アナログ信号An1,An2が入力されるようになっている。詳しくは、図2に示す信号線7を介して、第1入力端子IN1に前記第1アナログ信号An1が入力され、第2入力端子IN2に前記第2アナログ信号An2が入力されるようになっている。」 ウ 「 【0036】 (3)角度検出手段として、一つの磁気抵抗素子11のみを用いればよい。このため、従来の相対角検出式の回転角度検出装置に比べて部品点数を減らすことができ、操舵角検出装置1の構成を単純にすることができる。 (第2実施形態) 次に、本発明を具体化した第2実施形態を図5?図7に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態では第1実施形態と相違する点を主に述べ、共通する点については同一部材番号を付すのみとしてその説明を省略する。 【0037】 図5に示すように、本実施形態の操舵角検出装置1は、前記回転板3のギア部3aに歯合する異常検出用ギア体21を備えている。このため、ステアリングシャフトSが回転されると、回転板3の回転に伴って前記ギア体4及び異常検出用ギア体21も回転されることとなる。なお、異常検出用ギア体21は、回転板3の1回転当たり、6回転する歯数比で形成されている。すなわち、異常検出用ギア体21の歯数は前記ギア体4の歯数比と等しく設定されている。よって、ギア体4が1回転すると、異常検出用ギア体21も1回転する。 【0038】 前記ギア体4と同様に、異常検出用ギア体21の中心部には、永久磁石22が固定されている。この永久磁石22は、異常検出用ギア体21において所定の径方向に磁束を発生させるように設けられている。このため、異常検出用ギア体21が1回転すると、永久磁石22が発生する磁束の方向も360゜回転する。 【0039】 この永久磁石22と対向する箇所(図示略)には、異常検出手段としての異常検出用磁気抵抗素子(異常検出MRE)23(図6参照)が配設されている。この異常検出MRE23は、前記磁気抵抗素子(説明の便宜上、以下「角度検出MRE」という)11と同等の素子によって構成され、永久磁石22が発生する磁束を検出して異常検出用ギア体21の回転角に応じて連続的に変化する異常検出用のアナログ信号を出力する。詳しくは、図7に示すように、異常検出MRE23は、回転板3が60゜回転する毎に1周期となる正弦波からなる第3アナログ信号An3と、その第3アナログ信号An3に対して1/4周期だけ位相がずれた正弦波からなる第4アナログ信号An4とを出力する。なお、図7に示すように、第3アナログ信号An3は前記第1アナログ信号An1と同位相となり、第4アナログ信号An4は前記第2アナログ信号An2と同位相となるように設定されている。すなわち、永久磁石22及び異常検出MRE23は、第1及び第2アナログ信号An1,An2と同位相となるように第3及び第4アナログ信号An3,An4を出力するように配設されている。」 エ 「 【0042】 詳しくは、図7に模式的に示すように、マイコン12は、第1?第4アナログ信号An1?An4が入力されると、前記第1実施形態と同様に第1及び第2アナログ信号An1,An2をディジタル信号に変換するとともに、第3及び第4アナログ信号An3,An4もディジタル信号に変換する。そして、マイコン12は、これらディジタル信号の値(ディジタル信号値)同士の対応関係を比較し、該対応関係が正常であるか否かを判断する。つまり、本実施形態において第1及び第2アナログ信号An1,An2と第3及び第4アナログ信号An3,An4とは同位相・同周期になっているため、マイコン12は、両ディジタル信号値同士が一致しているか否かを判断し、一致していると判断した際に両ディジタル信号値同士の対応関係が正常であると判断する。・・・ 【0043】 一方、両ディジタル信号値同士の対応関係が異常の場合、すなわち両ディジタル信号値同士が一致していない場合、マイコン12は、角度検出MRE11または異常検出MRE23のどちらか一方が故障等の異常を生じていると判断する。・・・」 図1 図2 図5 オ 図1の記載から「ハウジング2」の形状は円盤状であると認められる。 カ 段落【0021】の「操舵角検出装置1は、ステアリングシャフトSの周囲の構造体に固定されたハウジング2を備え、このハウジング2には回転板3が回転可能に支持されている。この回転板3はステアリングシャフトSに外嵌した状態で固定され、ステアリングシャフトSと共に回動する。つまり、回転板3は、ステアリングシャフトSが回転されると、同ステアリングシャフトSと等しく回転する。」の記載、及び図1、図2から、「ハウジング2」の中央には「ステアリングシャフトS」が貫通する開口が形成されており、「回転板3」の中央にも上記開口と同形状の開口が形成されていると認められる。 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「車両のステアリングコラム内に配設され、回転体としてのステアリングシャフトSに装着されている操舵角検出装置1であって(段落【0021】)、 中央に開口が形成された円盤状のハウジング2と(段落【0021】、上記オ、カ)、 ハウジング2に回転可能に支持され、ステアリングシャフトSと共に回動し、上記開口と同形状の開口が形成され、外周面にはギア部3aが形成されている回転板3と(段落【0021】、上記カ)、 回転板3の近辺に配設され、ギア部3aと歯合し、回転板3の1回転当たり6回転する歯数比で形成され、中心部には永久磁石5が固定されているギア体4と(段落【0021】、【0022】)、 ハウジング2内において永久磁石5と対向する箇所に配設されている角度検出手段としての磁気抵抗素子11と(段落【0023】)、 回転板3のギア部3aに歯合し、ギア体4の歯数比と等しく歯数が設定されており、中心部には永久磁石22が固定されている異常検出用ギア体21と(段落【0037】、【0038】)、 この永久磁石22と対向する箇所に配設されている異常検出手段としての異常検出用磁気抵抗素子(異常検出MRE)23と(段落【0039】)、 プリント配線板6に配設されている角度算出手段としてのマイクロコンピュータ(マイコン)12と(段落【0024】、【0025】)、 を備える操舵角検出装置1」 2 引用文献2について 引用文献2には、次の記載がある。 「【0004】 本発明の目的は、シャフトギアに従って回転する複数個のサブギアの軸上に結合されたマグネットの回転角度をディジタル的に処理して絶対操向角を検出できるようにした操向角感知装置及びその感知方法を提供することにある。」 「 【0015】 図1は、操向角感知装置の第1実施形態を示す斜視図である。」 「 【0022】 第1サブギア230及び第2サブギア240は、シャフトギア220に各々歯結合されて、シャフトギア220と共に回転する。このような第1サブギア230及び第2サブギア240のギア比は互いに異なるように形成されるが、第2サブギア240のギア比が第1サブギア230のギア比より大きく形成されることもできる。例えば、シャフトギア220が1回転する際、第1サブギア230は第2サブギア240よりたくさん回転することになる。」 「 【0036】 図2は、第2実施形態に従う操向角感知装置を示す斜視図である。このような第2実施形態は、第1実施形態と同一部分に対しては同一符号を与えて、重複説明は省略する。 【0037】 図2を参照すると、操向角感知装置200は、シャフトギア220に第1サブギア330が歯結合され、第1サブギア330には第2サブギア340が歯結合される。第1サブギア330と第2サブギア340は互いに異なるギア比を有するが、第2サブギア340のギア比が第1サブギア330のギア比より大きく形成される。 【0038】 第1サブギア330の軸上には第1マグネット331が結合され、第2サブギア340の軸上には第2マグネット341が結合される。ここで、第1及び第2マグネット331、341の間の間隔は、第1サブギア330に第2サブギア340が歯結合されるため、相対的に近づくことになる。これによって、第1及び第2マグネット331、341に対向する第1角度感知部251及び第2角度感知部252の間の間隔も減少することになる。したがって、回路基板250のサイズを縮めることができ、操向角感知装置200を小型化することができる。」 図1 図2 よって、引用文献2には、 「シャフトギアに従って回転する2個のサブギアの軸上に結合されたマグネットの回転角度をディジタル的に処理して絶対操向角を検出できるようにした操向角感知装置において(段落【0004】、【0022】、【0037】)、 シャフトギア220に第1サブギア330が歯結合され、第1サブギア330には第2サブギア340が歯結合される構成(段落【0037】、図2)は、第1サブギア230及び第2サブギア240が、シャフトギア220に各々歯結合されて、シャフトギア220と共に回転する構成(段落【0022】、図1)に対し、第1サブギア330の軸上に結合された第1マグネット331と第2サブギア340に結合された第2マグネット341が相対的に近づくことになり、第1及び第2マグネット331、341に対向する第1角度感知部251及び第2角度感知部252の間の間隔も減少することになり、回路基板250のサイズを縮めることができ、操向角感知装置200を小型化することができる(段落【0038】)」という技術事項が記載されている。 3 引用文献3について 引用文献3には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば車両においてステアリングホイールの操舵角を検出する回転角度検出装置に関するものである。」 「 【0042】 ・ 連動回転体5,11のギア部5a,11bは、回転板3の1回転当たり3回転するような歯数比に限らず、例えば回転板3の1回転当たり1回転、2回転、4回転以上するような歯数比に設定されていてもよい。但し、こうしたギア部5a,11bは、回転体の1回転に対して整数倍の比率で前記従動体を回転させるような歯数比に設定されている方が、演算部10の処理上の面からいえば好ましい。」 4 引用文献4について 引用文献4には、次の記載がある。 「 【0002】 【従来の技術】 車両に搭載される舵角センサの従来例として、例えば、ステアリングと同軸的に大径のギヤを設置し、更に、この大径ギヤと噛合する小径のギヤを設置し、この小径ギヤの回転角度を検出する方式を用いたものが知られている。」 「 【0005】 ところが、上述した構成を有する舵角センサにおいては、大径のギヤ102と小径のギヤ103の歯数が例えば、4:1といったように、小径のギヤ102の方が歯数が少なく、且つ、ステアリングシャフト101は、全体の操舵角度が約4回転足らずあるので、小径のギヤ103は全体で約15回転することになる。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。 ア 引用発明の「中央に開口が形成された円盤状のハウジング2」は、本願発明1の「中央に開口が形成された円盤状のケース」に相当する。 イ 引用発明の「車両」の「ステアリングシャフトS」は、本願発明1の「車両の操向軸」に相当する。 ウ 上記アを踏まえると、引用発明の「上記開口と同形状の開口が形成され、外周面にはギア部3aが形成されている回転板3」は、本願発明1の「前記ケースの前記開口と対応する中孔部位が形成されたリング状のメインギヤ」に相当する。 エ 上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「ステアリングシャフトSと共に回動し、上記開口と同形状の開口が形成され、外周面にはギア部3aが形成されている回転板3」は、本願発明1の「車両の操向軸と共に回転しながら前記ケースの前記開口と対応する中孔部位が形成されたリング状のメインギヤ」に相当する。 オ 引用発明が「回転板3」の「ギア部3aと歯合」する「ギア体4」と、「回転板3のギア部3aに歯合」する「異常検出用ギア体21」とを備えることは、本願発明1が「前記メインギヤに噛み合わせられて前記メインギヤの回転方向の逆方向に回転し、一面に第2マグネットが結合される第2サブギヤ」と、「前記メインギヤと噛み合わせられずに前記第2サブギヤと噛み合わせられ」る「前記第1サブギヤ」を備えることと、「2つのサブギヤ」を備える点で共通する。 以下、「2つのサブギヤ」について、引用発明の「ギア体4」と本願発明の「第1サブギヤ」、引用発明の「異常検出用ギア体21」と本願発明の「第2サブギヤ」との対比を検討するが、引用発明の「ギア体4」及び「異常検出用ギア体21」は、いずれも「回転板3のギア部3aに歯合」するギアであり、「歯数比」が「等しく」設定されているものであるから、対比を検討する組み合わせを換えても、対比結果に実質的な差異はない。 (ア) 引用発明の「ギア体4」は、「回転板3」の「ギア部3aと歯合し」ていることから、「回転板3」の回転方向の逆方向に回転すると認められる。 よって、引用発明の「回転板3の近辺に配設され、ギア部3aと歯合し、」「中心部には永久磁石5が固定されているギア体4」は、本願発明1の「前記メインギヤの回転方向の正方向に回転し、一面に第1マグネットが結合される第1サブギヤ」と、「一面に第1マグネットが結合される第1サブギヤ」である点で共通する。 (イ) 引用発明の「異常検出用ギア体21」は、「回転板3のギア部3aに歯合し」ていることから、「回転板3」の回転方向の逆方向に回転すると認められる。 よって、引用発明の「回転板3のギア部3aに歯合し、」「中心部には永久磁石22が固定されている異常検出用ギア体21」は、本願発明1の「前記メインギヤに噛み合わせられて前記メインギヤの回転方向の逆方向に回転し、一面に第2マグネットが結合される第2サブギヤ」に相当する。 カ 上記オ(ア)を踏まえると、引用発明の「ハウジング2内において永久磁石5と対向する箇所に配設されている角度検出手段としての磁気抵抗素子11」は、本願発明1の「前記第1サブギヤの第1マグネットの磁界変化を感知して回転量データを出力する磁気素子」に相当する。 キ 上記オを踏まえると、引用発明の「異常検出用ギア体21」が「ギア体4の歯数比と等しく歯数が設定されて」いることは、本願発明1の「前記第1サブギヤ及び前記第2サブギヤは同じギヤ比を有し」ていることに相当する。 ク 引用発明の「操舵角検出装置1」は、本願発明1の「アングルセンサー」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「中央に開口が形成された円盤状のケースと、 車両の操向軸と共に回転しながら前記ケースの前記開口と対応する中孔部位が形成されたリング状のメインギヤと、 一面に第1マグネットが結合される第1サブギヤと、 前記メインギヤに噛み合わせられて前記メインギヤの回転方向の逆方向に回転し、一面に第2マグネットが結合される第2サブギヤと、 前記第1サブギヤの第1マグネットの磁界変化を感知して回転量データを出力する磁気素子とを備え、 前記第1サブギヤ及び前記第2サブギヤは同じギヤ比を有する、 アングルセンサー。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1の「第1サブギヤ」が、「前記メインギヤと噛み合わせられずに前記第2サブギヤと噛み合わせられ、」「前記メインギヤの回転方向の正方向に回転」するのに対し、引用発明の「ギア体4」(本願発明1の「第1サブギヤ」に対応)が、「外周面にはギア部3aが形成されている回転板3」(本願発明1の「メインギヤ」に対応)と「歯合し」、回転板3の回転方向の逆方向に回転する点。 (相違点2) 本願発明1は「メインギヤ及び前記第1サブギヤのギヤ比及び半径比は操向角の測定誤差を最小化するために4:1であ」るのに対して、引用発明の「外周面にはギア部3aが形成されている回転板3」及び「ギア体4」の歯数比が、「回転板3の1回転当たり」「ギア体4」が「6回転する歯数比」、すなわち6:1である点。 (相違点3) 本願発明1は「アングルセンサーが前記トルクセンサーと一体に形成され、」「前記ケースの一面に」「第1、2サブギヤ」が「結合され」、「前記ケースの他面にトルクセンサーが備えられ」、「前記操向軸は前記アングルセンサーと前記トルクセンサーを貫通して配置され」ているのに対し、引用発明の「操舵角検出装置1」はトルクセンサーと一体に形成されていない点。 (2)相違点についての判断 本願発明1の内容に鑑み、相違点1について検討する。 ア 引用文献1には、段落【0039】に「永久磁石22及び異常検出MRE23は、第1及び第2アナログ信号An1,An2と同位相となるように第3及び第4アナログ信号An3,An4を出力するように配設されている。」、段落【0042】に「本実施形態において第1及び第2アナログ信号An1,An2と第3及び第4アナログ信号An3,An4とは同位相・同周期になっているため、マイコン12は、両ディジタル信号値同士が一致しているか否かを判断し、一致していると判断した際に両ディジタル信号値同士の対応関係が正常であると判断する。」、段落【0043】に「一方、両ディジタル信号値同士の対応関係が異常の場合、すなわち両ディジタル信号値同士が一致していない場合、マイコン12は、角度検出MRE11または異常検出MRE23のどちらか一方が故障等の異常を生じていると判断する。」と記載されている。 ここで、段落【0027】の「磁気抵抗素子11は、回転板3が60゜回転する毎に1周期となる正弦波からなる第1アナログ信号An1と、その第1アナログ信号An1に対して1/4周期だけ位相がずれた正弦波からなる第2アナログ信号An2とを出力する。」の記載から、上記「第1及び第2アナログ信号An1,An2」は「磁気抵抗素子11」の出力である。 すると、引用発明における「異常検出」は、要するに、「異常検出用ギア体21」を、「ギア体4」と同様に「回転板3のギア部3a」に「歯合」させることで、「異常検出用ギア体21」を「ギア体4」のダミーのギア体として機能させ、両者の回転位相や周期を比較して、「磁気抵抗素子11」または「異常検出用磁気抵抗素子(異常検出MRE)23」の「異常」を検出するものであるから、引用発明では「ギア体4」と「異常検出用ギア体21」とが、共に、「回転板3のギア部3a」に「歯合」している点に技術的意義があるものと認められる。 よって、引用発明における「ギア体4」を、「回転板3のギア部3a」ではなく「異常検出用ギア体21」に「歯合」させた場合には、「異常検出用ギア体21」は、もはや、「ギア体4」のダミーのギア体として機能しなくなるから、引用発明における上記技術的意義が阻却されることになる。 イ 引用文献2には、上記第4の2に記載したように、2つのサブギア(第1サブギア及び第2サブギア)を含む操向角感知装置において、「シャフトギア220に第1サブギア330が歯結合され、第1サブギア330には第2サブギア340が歯結合される構成は、第1サブギア230及び第2サブギア240が、シャフトギア220に各々歯結合されて、シャフトギア220と共に回転する構成に対し、第1サブギア330の軸上に結合された第1マグネット331と第2サブギア340に結合された第2マグネット341が相対的に近づくことになり、第1及び第2マグネット331、341に対向する第1角度感知部251及び第2角度感知部252の間の間隔も減少することになり、回路基板250のサイズを縮めることができ、操向角感知装置200を小型化することができる」技術事項が記載されている。 上記「第1角度感知部251及び第2角度感知部252の間の間隔も減少することになり、回路基板250のサイズを縮めることができ」という効果は、引用文献2の図2において示されている、回路基板250が「第1角度感知部251及び第2角度感知部252」を搭載し、第1及び第2マグネット331、341に対向する面と平行に設置される構成において奏されるものと認められる。 これに対し、引用発明の「角度算出手段としてのマイクロコンピュータ(マイコン)12」が「配設されている」「プリント配線板6」は、「磁気抵抗素子11」及び「異常検出用磁気抵抗素子(異常検出MRE)23」を搭載していないだけでなく、さらに、引用文献1の図2において示されているように、「永久磁石5」及び「永久磁石22」に対向する面に垂直に設置されている。 よって、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用し、「第1サブギヤ」を「異常検出用ギア体21」と歯合させ、「永久磁石5」及び「永久磁石22」と対向する「磁気抵抗素子11」及び「異常検出用磁気抵抗素子(異常検出MRE)23」の間の間隔を減少させたとしても、「プリント配線板6」のサイズを縮めるという効果は得られないものと認められる。 したがって、上記ア及びイで述べたとおり、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用して、「ギヤ体4」を「異常検出用ギア体21」と歯合させることは、引用発明の技術的意義を阻却するだけでなく、有益な効果も認められないことから、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用する動機付けを見いだすことはできない。 また、引用文献3及び4には、相違点1に係る構成について、記載も示唆もされていない。 以上により、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献1-4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 1 理由1(明確性)について 審判請求時の補正により、請求項1は「前記第1サブギヤ及び前記第2サブギヤは同じギヤ比を有し、」と補正され、「回転量の誤差を減らすために」の記載が削除されているから、原査定の理由1を維持することはできない。 2 理由2(進歩性)について 審判請求時の補正により、上記相違点1に係る「前記第1サブギヤは、前記メインギヤと噛み合わせられずに前記第2サブギヤと噛み合わせられ」の構成を有するものとなっており、引用発明、引用文献1-4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 よって、原査定の理由2を維持することはできない。 第7 むすび したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-04 |
出願番号 | 特願2011-280407(P2011-280407) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01B)
P 1 8・ 537- WY (G01B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 眞岩 久恵 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 ▲うし▼田 真悟 |
発明の名称 | アングルセンサー |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 河合 章 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 南山 知広 |