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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60B
管理番号 1340938
審判番号 不服2017-337  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-11 
確定日 2018-06-07 
事件の表示 特願2012-282661号「非空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 7日出願公開、特開2014-125079号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月26日に出願されたものであって、平成28年3月24日付けで拒絶理由が通知され、同年5月11日に意見書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定がされ、平成29年1月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において、同年9月25日付けで拒絶理由が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月17日付けで拒絶理由(最後;以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年3月23日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年3月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成30年3月23日付けの手続補正(以下「本件補正1」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前の請求項1と、補正後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、及び該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を連結する連結部材と、
を備え、
前記リング部材及び複数の前記連結部材は、ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており、
前記連結部材は、前記両筒体同士を連結する第1弾性連結板及び第2弾性連結板を備え、
前記第1弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の一方側に位置し、
前記第2弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の他方側に位置し、
前記第1弾性連結板は、一のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるとともに、前記第2弾性連結板は、前記一のタイヤ幅方向位置とは異なる他のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」

(補正後の請求項1)
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、及び該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を連結する連結部材と、
を備え、
前記リング部材及び複数の前記連結部材は、
ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが350%以上の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が750MPa以上1100MPa未満で、かつ前記破断ひずみが220%以上の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが110%の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが60%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1800MPa以上で、かつ前記破断ひずみが16%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が3200MPa以上で、かつ前記破断ひずみが10%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が3500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料、から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており、
前記連結部材は、前記両筒体同士を連結する第1弾性連結板及び第2弾性連結板を備え、
前記第1弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の一方側に位置し、
前記第2弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の他方側に位置し、
前記第1弾性連結板は、一のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるとともに、前記第2弾性連結板は、前記一のタイヤ幅方向位置とは異なる他のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」

2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正1は、「リング部材」及び「複数の連結部材」が、補正前の
「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成」るという事項を
「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが350%以上の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が750MPa以上1100MPa未満で、かつ前記破断ひずみが220%以上の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが110%の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが60%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が1800MPa以上で、かつ前記破断ひずみが16%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が3200MPa以上で、かつ前記破断ひずみが10%以上110%以下の合成樹脂材料、または、
前記曲げ弾性率が3500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料、から成」るという事項にするものであって、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の属する産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲を減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加の有無について
補正後の請求項1における「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが350%以上の合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が750MPa以上1100MPa未満で、かつ前記破断ひずみが220%以上の合成樹脂材料」(以下「事項A」という。)及び「前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが110%の合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが60%以上110%以下の合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1800MPa以上で、かつ前記破断ひずみが16%以上110%以下の合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が3200MPa以上で、かつ前記破断ひずみが10%以上110%以下の合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が3500MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料」(以下「事項B」という。)という補正事項について検討する。

請求人は、本件補正1と同日付けの意見書において、【参考図1】を示しており、補正後の請求項1に係る発明は、当該図に示されるG21領域、G22領域、G11領域、G12領域、G13領域、G14領域、G15領域全てを含むことになる。(なお、図面上は破断ひずみの最大が500%、曲げ弾性率の最大が5000MPaとなっているが、それぞれG21領域、G22領域に対応する事項Aでは、破断ひずみの上限値の特定がなく、G11領域、G12領域、G13領域、G14領域、G15領域に対応する事項Bでは、曲げ弾性率の上限値の特定がないことから、図面上便宜的に破断ひずみの最大が500%、曲げ弾性率の最大が5000MPaまで記載しただけであることは明らかである。後述する【当審参考図A】でも便宜上線で囲って表記するが、それぞれの上限を特定することを意味するものではない。)
しかしながら、事項A及び事項Bに対応する明示的な記載は、少なくとも願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)にはなく、具体的に記載されているのは、【表1】に示される実施例1?12のみである。
そうすると、G11領域、G12領域、G13領域、G14領域、G15領域、G21領域、G22領域、のそれぞれの上限、下限の境界値が示されているとはいえず、また、G11領域、G12領域、G13領域、G14領域、G15領域で曲げ弾性率の上限が特定されていないことや、G21領域、G22領域で破断ひずみの上限が特定されていないことが示されているとはいえず、それら各領域の全範囲を含む本件補正1は、当初明細書等に記載した事項の範囲との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

補足すれば、請求人が提出した【参考図1】をみると、実施例1?12のプロット位置から、破断ひずみと曲げ弾性率との間に何らかの略反比例様の関係があり、全体的には、多少の幅はあっても概ね曲げ弾性率が小さくなるほど破断ひずみは大きくなり、曲げ弾性率が大きくなるほど破断ひずみは小さくなる傾向にあることが看取できる。
そして、事項Aによれば、上記【参考図1】に当審が線を加筆した【当審参考図A】の少なくとも太線に囲まれる領域を含むことになるが、上述したように、曲げ弾性率が小さくなるほど破断ひずみは大きくなる傾向があることに照らせば、実施例1?3、9、10の曲げ弾性率や破断ひずみの値からみて、例えば、曲げ弾性率が1099MPaかつ破断ひずみが500%(破断ひずみの上限の特定がないことからそれ以上の場合もとり得る。)のようなものまで当初明細書等に開示されているに等しいものとまではいえず、新たな技術的事項を導入するものといえる。
また、事項Bによれば、【当審参考図A】の少なくとも太破線に囲まれる領域を含むことになるが、上述したように、曲げ弾性率が大きくなるほど破断ひずみは小さくなる傾向があることに照らせば、実施例2、4?8、11、12の曲げ弾性率や破断ひずみの値からみて、例えば、破断ひずみが110%で曲げ弾性率が5000MPa(曲げ弾性率の上限の特定がないことからそれ以上の場合もとり得る。)のようなものまで当初明細書等に開示されているに等しいものとまではいえず、新たな技術的事項を導入するものといえる。
この点について、当審拒絶理由では、「新たな技術的事項を導入するものでないというのであれば、実験結果等を示して説明するか、あるいは、その合理的な理由を説明されたい」と指摘しているが、上記意見書においては、単に「構成要件(A)は、実施例10(曲げ弾性率300MPa、破断ひずみ350%)でタイヤ評価が○になっているので、曲げ弾性率300MPa以上1100MPa未満、かつ破断ひずみ350%以上のG21領域で、タイヤ評価が○になるのは明らかであり、新たな技術的事項を導入するものではなく・・・」と主張するだけで、実験結果の提示も、技術的な裏付けとなる説明も示されていない。

【当審参考図A】


3 むすび
以上のとおり、本件補正1は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
平成30年3月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成29年11月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由] 1(補正前の請求項1)」に記載されたとおりのものである。

第4 当審拒絶理由の概要
[理由1] 平成29年11月1日に提出された手続補正書でした補正は、下記の点で当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
[理由2] この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由1]について
上記手続補正書により、補正前の請求項1の「前記リング部材のうちの少なくとも一部及び複数の前記連結部材は、ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが3%以上の合成樹脂材料から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており」という事項を、「前記リング部材及び複数の前記連結部材は、ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており」という事項にする補正をしているが、当初明細書等に記載した事項の範囲との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

[理由2]について
上記「[理由1]について」で述べたのと同様に、発明の詳細な説明に具体的に記載されているのは、【表1】に示される実施例1?12のみであるところ、補正後の請求項1に係る発明の全範囲において、発明の詳細な説明に記載される作用効果を奏し、タイヤ評価が○といえるものであるのか明らかでなく、当該発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
請求項1を引用する請求項2?4についても同様である。

第5 当審の判断
1 [理由1]について
(1)補正の内容
平成29年11月1日付けの手続補正(以下「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前の請求項1と、補正後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、及び該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を連結する連結部材と、
を備え、
前記リング部材のうちの少なくとも一部及び複数の前記連結部材は、ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが3%以上の合成樹脂材料から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており、
前記連結部材は、前記両筒体同士を連結する第1弾性連結板及び第2弾性連結板を備え、
前記第1弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の一方側に位置し、
前記第2弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の他方側に位置し、
前記第1弾性連結板は、一のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるとともに、前記第2弾性連結板は、前記一のタイヤ幅方向位置とは異なる他のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」

(補正後の請求項1)
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、及び該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を連結する連結部材と、
を備え、
前記リング部材及び複数の前記連結部材は、ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成り、前記合成樹脂材料で一体に形成されており、
前記連結部材は、前記両筒体同士を連結する第1弾性連結板及び第2弾性連結板を備え、
前記第1弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の一方側に位置し、
前記第2弾性連結板のうち、前記外筒体に連結された一端部は、前記内筒体に連結された他端部よりもタイヤ周方向の他方側に位置し、
前記第1弾性連結板は、一のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるとともに、前記第2弾性連結板は、前記一のタイヤ幅方向位置とは異なる他のタイヤ幅方向位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」

(2)新規事項の追加の有無について
本件補正2は、補正前の「前記リング部材のうちの少なくとも一部及び複数の前記連結部材」を「前記リング部材及び複数の前記連結部材」とし、
「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが3%以上の合成樹脂材料から成」るという事項を、
「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成」るという事項にするものである。

そこで、補正後の請求項1における「ISO 178に準拠した3点曲げ試験で得られる曲げ弾性率が300MPa以上1100MPa未満で、かつASTM D638に準拠した引張試験で得られる破断ひずみが110%より大きい合成樹脂材料、または、前記曲げ弾性率が1100MPa以上で、かつ前記破断ひずみが3%以上110%以下の合成樹脂材料から成」るという補正事項について検討する。

請求人は、本件補正2と同日付けの意見書において、【参考図1】(本件補正2に対応するものとは異なる。なお、図面上は破断ひずみの最大が500%、曲げ弾性率の最大が5000MPaとなっているが、上記「第2 2(2)」のとおりであり、後述する【当審参考図1】についても上記「第2 2(2)」と同様に、便宜上線で囲って表記するが、それぞれの上限を特定することを意味するものではない。)を示しており、補正後の請求項1に係る発明は、当該図に示されるG1領域、G2領域全てを含むことになる。
しかしながら、補正事項に対応する明示的な記載は、少なくとも当初明細書等にはなく、具体的に記載されているのは、【表1】に示される実施例1?12のみである。
そうすると、G1領域、G2領域のそれぞれの上限、下限の境界値が示されているとはいえず、また、G1領域で曲げ弾性率の上限が特定されていないことや、G2領域で破断ひずみの上限が特定されていないことが示されているとはいえず、それら各領域の全範囲を含む本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

補足すれば、当審拒絶理由で示した【当審参考図1】(上記【参考図1】に当審が線を加筆した。)における少なくともG1領域及びG2領域で太線で四角に囲った領域については、上記「第2 2(2)」で指摘したとおりであって、当初明細書等に開示されているに等しいものとまではいえず、新たな技術的事項を導入するものといえる。
また、少なくともG1領域及びG2領域で太線で三角に囲った領域についても、上記「第2 2(2)」で指摘したように、曲げ弾性率が小さくなるほど破断ひずみは大きくなり、曲げ弾性率が大きくなるほど破断ひずみは小さくなる傾向にあることに照らせば、当初明細書等に開示されているに等しいものとまではいえず、新たな技術的事項を導入するものといえる。

【当審参考図1】



2 [理由2]について
上記「1 [理由1]について」で述べたのと同様に、発明の詳細な説明に具体的に記載されているのは、【表1】に示される実施例1?12のみであるところ、本件補正2により補正された請求項1に係る発明は、上記G1の領域及びG2の領域の全範囲を含むものであり、その全範囲において、発明の詳細な説明に記載される作用効果を奏し、タイヤ評価が○といえるものであるのか明らかでなく、当該発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
請求項1を引用する請求項2?4についても同様である。

第6 むすび
以上のとおり、本件補正2は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないし、また、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-04 
結審通知日 2018-04-10 
審決日 2018-04-24 
出願番号 特願2012-282661(P2012-282661)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (B60B)
P 1 8・ 537- WZ (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳元 八大倉田 和博  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
発明の名称 非空気入りタイヤ  
代理人 高橋 詔男  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 志賀 正武  
代理人 仁内 宏紀  

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