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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1340945
審判番号 不服2017-4789  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-05 
確定日 2018-06-07 
事件の表示 特願2015-245735「移動体通信システム、移動端末および基地局」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日出願公開、特開2016- 59075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)6月15日(優先権主張 平成21年6月19日、平成22年4月2日)を国際出願日とする出願である特願2011-519555号の一部を、平成24年12月26日に新たな特許出願とした特願2012-282830号の一部を、平成26年8月4日に新たな特許出願とした特願2014-158588号の一部を、平成27年12月17日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 7月28日付け 拒絶理由通知書
平成28年10月 6日 意見書、手続補正書の提出
平成28年12月28日付け 拒絶査定
平成29年 4月 5日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年10月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 キャリアアグリゲーションによって複数の部分キャリアを集めた集合キャリアを使用して、移動端末と基地局との間で無線通信を行う移動体通信システムであって、
キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値を、移動端末の能力情報として、移動端末から基地局に通知することを特徴とする移動体通信システム。」

第3 拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1.この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(当審注:本願発明は、上記「この出願の請求項1?3に係る発明」のうちの請求項1に係る発明に対応する。)

1.Panasonic,Discussion on when UE starts aggregating carriers,R1-090261,3GPP,2009.01.08掲載日

第4 引用例の記載及び引用発明
1.引用例
原査定の拒絶の理由で引用されたPanasonic,Discussion on when UE starts aggregating carriers,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #55bis R1-090261,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_55b/Docs/R1-090261.zip>,2009年1月8日掲載(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「1 Introduction
Carrier aggregation has been discussed to allow supporting transmission bandwidths larger than 20MHz in LTE-Advanced. In [1] the relation between RRC states and wider bandwidth has been discussed. This document discusses when a UE should start the actual aggregation of the component carriers. We expect further discussion to take place within RAN2. 」(1ページ)
(当審訳:
1はじめに
キャリアアグリゲーションは、LTE-Advancedで20MHzを超える送信帯域幅をサポートできるように議論されている。[1]において、RRC状態とより広い帯域幅との間の関係が議論されている。この文書は、UEがコンポーネントキャリアの実際のアグリゲーションをいつ開始すべきかを議論する。今後、RAN2内で議論が行われることを期待する。)

(2)「2 Discussion
We expect whether a UE is a LTE or a LTE-A terminal is known by the network by RRC UE capability signalling. Before the UE capability exchange, eUTRAN does not know how many component carriers are supported by an UE. Therefore, in order to utilize bandwidth extension by carrier aggregation, we identify the following two approaches.

Option 1: Carrier aggregation can be utilized by eUTRAN before knowing the UE capability

Option 2: Carrier aggregation can be utilized by eUTRAN after eUTRAN knowing the UE capability 」(1ページ)
(当審訳:
2討論
我々が期待することは、RRC UE能力シグナリングによってUEがLTE端末かLTE-A端末かをネットワークが知ることである。UE能力の交換前に、eUTRANはUEによって、いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知らない。それ故、キャリアアグリゲーションによる帯域拡張を利用するためには、我々は次の二つのアプローチを確認する。
オプション1:eUTRANがUE能力を知る前、eUTRANによってキャリアアグリゲーションが利用できる。
オプション2:eUTRANがUE能力を知った後、eUTRANによってキャリアアグリゲーションが利用できる。)

(3)「Option 2 has the demerit that carrier aggregation can only be utilized after eUTRAN knows the UE capability. On the other hand, the number of component carriers utilized for data transmission/reception on PDSCH and PUSCH by the UE can vary depending on the UE capability. Since with option 2 a larger variation of high and low end UEs with respect to carrier aggregation is possible, from a data transmission viewpoint the system can benefit more from option 2.

We propose that carrier aggregation can be utilized by eUTRAN only after eUTRAN knows the UE capability (option 2). 」(1ページ)
(当審訳:
オプション2は、キャリアアグリゲーションは、eUTRANがUE能力を知った後にのみ利用可能であるというデメリットを有する。一方、UEによってPDSCH及びPUSCHでデータの送受信に利用されるコンポーネントキャリアの数は、UE能力によって異ならせることができる。オプション2では、キャリアアグリゲーションに関してハイエンド及びローエンドUEのより大きな変動が可能であるので、データ伝送の観点から、システムはオプション2からより多くの利益を得ることができる。
eUTRANがUE能力(オプション2)を知った後にのみ、キャリアアグリゲーションをeUTRANが利用できることを提案する。)

上記各記載及び技術常識からみて、

a (1)の記載によれば、引用例には、「キャリアアグリゲーションによってコンポーネントキャリアをアグリゲート」することが記載されており、(1)及び(3)の記載によれば引用例の「システム」は「LTE-Advancedのシステム」といえる。したがって、引用例のシステムは「キャリアアグリゲーションによってコンポーネントキャリアをアグリゲートするLTE-Advancedのシステム」といえる。

b (2)及び(3)の記載によれば、オプション2では、UE能力の交換前に、eUTRANはUEによって、いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知らないから、UE能力の交換によりいくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知ることができるといえる。そして、UE能力の交換後にキャリアアグリゲーションをeUTRANが利用できるのであるから、引用例のシステムでは「UE能力の交換前に、eUTRANはUEによって、いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知らず、UE能力の交換により、eUTRANがUEによっていくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかを知ることができた後、キャリアアグリゲーションをeUTRANが利用できる」ことが記載されている。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 キャリアアグリゲーションによってコンポーネントキャリアをアグリゲートするLTE-Advancedのシステムであって、
UE能力の交換前に、eUTRANはUEによって、いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知らず、UE能力の交換により、eUTRANがUEによっていくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかを知った後、キャリアアグリゲーションをeUTRANが利用できるシステム。」

第5 対比
本願発明と引用発明を比較する。

1.本願発明の「部分キャリア」は本願明細書段落28において「現在の3GPPでは周波数帯域(キャリア)をコンポーネントキャリア(部分キャリア)と呼ばれる単位に分けることが考えられている。」と記載されていることから、引用発明の「コンポーネントキャリア」は本願発明の「部分キャリア」に相当する。また、本願発明の「集合キャリア」は本願明細書段落28において「また、LTE-Aシステムとしての通信速度向上は、コンポーネントキャリアをアグリゲーションして(集めて)作成した集合キャリアを使用することにより実現しようと考えられている。」と記載されていることから、引用発明の「キャリアアグリゲーションによってコンポーネントキャリアをアグリゲートする」においてもアグリゲートした集合キャリアを使用することは明らかであるから、本願発明の「キャリアアグリゲーションによって複数の部分キャリアを集めた集合キャリアを使用」することに相当する。

2.引用発明の「UE」が本願発明の「移動端末」に相当し、引用発明の「LTE-Advancedのシステム」がUEと基地局との間で無線通信を行う移動体通信システムであることは技術常識であるから、引用発明の「LTE-Advancedのシステム」は本願発明の「移動端末と基地局との間で無線通信を行う移動体通信システム」に相当する。

3.引用発明では「UE能力の交換前に、eUTRANはUEによって、いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかについて知らず、UE能力の交換により、eUTRANがUEによっていくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのかを知」ることができることから、UE能力の交換により、eUTRANが「サポートできるコンポーネントキャリアがいくつか」を知ろうとしている。この「サポートできるコンポーネントキャリアがいくつか」とは「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」といえる。そして、引用発明では「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」を知るための情報を、「移動端末の能力情報として、移動端末から基地局に通知」しているといえる。したがって、引用発明と本願発明では、「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値を知るための情報を、移動端末の能力情報として、移動端末から基地局に通知」する点で共通している。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 キャリアアグリゲーションによって複数の部分キャリアを集めた集合キャリアを使用して、移動端末と基地局との間で無線通信を行う移動体通信システムであって、
キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値を知るための情報を、移動端末の能力情報として、移動端末から基地局に通知する移動体通信システム。」

(相違点)
一致点である「移動端末の能力情報として、移動端末から基地局に通知する」情報である「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値を知るための情報」に関し、本願発明では「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」であるのに対し、引用発明ではどのような情報か具体的に特定されていない点。

第6 判断
相違点について検討する。
引用発明は、「UE能力の交換」により「いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのか」を知るものであるから、UE能力として、サポートされるコンポーネントキャリアの数の最大値(請求項1にいう「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」)を交換していると解するのが相当であり、上記相違点は実質的なものではない。また、仮にそうとまではいえないとしても、「いくつのコンポーネントキャリアがサポートされるのか」を知ることができるUE能力として、「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」そのものを交換することは、当業者が容易に想到し得る(本願明細書の段落26に「先行技術文献」として記載されている「非特許文献10 3GPP R2-093104」(特に、「The capability of the UE (e.g. maximum number of RFs, supportable bandwidth of RF, supportable number」(2ページ)参照)にも記載されているように、「キャリアアグリゲーションが可能な部分キャリアの数の最大値」がUE能力の一つの指標であることは、当業者に自明である。)。

したがって、本願発明と引用発明とは同一であり、また本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

また仮にそうでなかったとしても、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2015-245735(P2015-245735)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 吉宏  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 中木 努
川口 貴裕
発明の名称 移動体通信システム、移動端末および基地局  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

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