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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02K
審判 全部申し立て 特174条1項  H02K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H02K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02K
管理番号 1341110
異議申立番号 異議2017-701245  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-27 
確定日 2018-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6153898号発明「モータ支持構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6153898号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6153898号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年7月25日に特許出願され、平成29年6月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年12月27日に特許異議申立人松井茂により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6153898号の請求項1?10の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。(以下、本件請求項1?10に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明10」という。)(「A:」?「V:」の文字は、本件特許発明を分説した構成要件として当審で付与。)

「【請求項1】
A:モータ構成部品を有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバーに収容すると共に、前記モータ構成部品を構成する出力軸を前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部に軸支させたモータ本体と、
B:該モータ本体を収容するモータ収容部と、を備え、
C:前記モータ収容部が、
前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、
D:前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられると共に、
E:前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とで、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着し、
F:前記ヨーク部収容部の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持すると共に、
G:前記エンドカバー部収容部の底側に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持したモータ支持構造において、
H:外部の部材に取付けるための取付フランジを、前記ヨーク部収容部に対して一体に設けると共に、前記取付フランジが、前記モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部と、該拡径面部の周縁部から前記エンドカバー側へ屈曲する屈曲面部とを有し、
I:該屈曲面部は、前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とが嵌合する嵌合部を外周側から周方向に包囲することを特徴とするモータ支持構造。
【請求項2】
A:モータ構成部品を有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバーに収容すると共に、前記モータ構成部品を構成する出力軸を前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部に軸支させたモータ本体と、
B:該モータ本体を収容するモータ収容部と、を備え、
C:前記モータ収容部が、
前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、
D:前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられると共に、
E:前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とで、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着し、
F:前記ヨーク部収容部の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持すると共に、
G:前記エンドカバー部収容部の底側に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持したモータ支持構造において、
J:前記ヨーク部収容部と、前記エンドカバー部収容部とが、前記モータ本体の外周部に、前記間隙部を有して前記ヨーク部を周方向に覆う嵌合部を有し、
K:該嵌合部が、前記ヨーク部収容部から分岐形成されて、前記ヨーク部収容部および前記エンドカバー部収容部に対して更に嵌合する円筒部を有することで三層構造の遮音壁を構成していることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項3】
L:請求項2に記載のモータ支持構造であって、
前記嵌合部は、全周に亘ってシール可能に結合されることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項4】
A:モータ構成部品を有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバーに収容すると共に、前記モータ構成部品を構成する出力軸を前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部に軸支させたモータ本体と、
B:該モータ本体を収容するモータ収容部と、を備え、
C:前記モータ収容部が、
前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、
D:前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられると共に、
E:前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とで、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着し、
F:前記ヨーク部収容部の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持すると共に、
G:前記エンドカバー部収容部の底側に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持したモータ支持構造において、
M:前記ヨーク部の一端側周辺と底側とに、ヨーク部の内部へ冷却風を通すための冷却風取入部および冷却風取出部がそれぞれ設けられ、
N:前記エンドカバー部収容部の側面の前記冷却風取入部の近傍に冷却風取込口を設けると共に、
O:前記ヨーク部収容部の前記冷却風取出部の近傍に冷却風排出口を設けることで、前記モータ収容部が、前記冷却風取込口から前記冷却風排出口へ冷却風を通過可能な密閉性を有するようにし、
P:更に、前記エンドカバー部収容部の前記冷却風取込口よりも前記エンドカバーに設けられた前記軸穴部側の部分に軸穴部からの冷却風の出入りを防止可能なシール部を設けたことを特徴とするモータ支持構造。
【請求項5】
Q:請求項4に記載のモータ支持構造であって、
前記ヨーク部収容部の前記冷却風排出口よりも前記エンドカバー部収容部側の部分にシール部を設けたことを特徴とするモータ支持構造。
【請求項6】
R:請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のモータ支持構造であって、
前記ヨーク部収容部の底側に設けられた前記モータ保持部は、前記ヨーク部における前記軸穴部の周辺に設けられた軸受設置用小径部に嵌合する小径部保持部であることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項7】
S:請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のモータ支持構造であって、
前記ヨーク部収容部の底側に設けられた前記モータ保持部は、前記ヨーク部の底側の外周部周辺に設けられたマグネット位置規定用段差部に嵌合する段差部保持部であることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項8】
T:請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のモータ支持構造であって、
前記エンドカバー部収容部の底側に設けられた前記別のモータ保持部は、前記エンドカバーにおける前記軸穴部から外方へ向けて突出形成された軸出し用の短筒状突起部に嵌合する突起部保持部であることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項9】
U:請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のモータ支持構造であって、
前記モータ保持部の少なくとも1つとモータ本体との間に弾性部材が介在されたことを特徴とするモータ支持構造。
【請求項10】
V:請求項1に記載のモータ支持構造であって、
前記取付フランジが、前記拡径面部の前記エンドカバー側に、前記嵌合部と前記屈曲面部との間に位置して周方向に延びるリブを有することを特徴とするモータ支持構造。」

3.申立理由の概要
(1)特許異議申立人松井茂は、主たる証拠として証拠として米国特許出願公開第2003/0080635号明細書(以下「甲第1号証」という。)及び従たる証拠として特開平8-296592号公報(以下「甲第2号証」という。)、特開平11-252852号公報(以下「甲第3号証」という。)を提出し、

理由1:特許法第29条第2項について(同法第113条第1項第2号)
本件特許発明1?3は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

理由2:特許法第29条第2項について(同法第113条第1項第2号)
本件特許発明4?6、8?10は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

理由3:特許法第29条第2項について(同法第113条第1項第2号)
本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
旨主張している。

(2)また、
理由4:特許法第17条の2第3項について(同法第113条第1項第1号)
請求項2に「三層構造の遮音壁」とあるが、本件特許の出願当初明細書には、「遮音壁」なる言葉はなく、図2、3に三層構造は記載されているものの、遮音壁として機能させることについては、何ら記載されていない。

理由5:特許法第36条第4項第1号について(同法第113条第1項第4号)
請求項2に記載された「三層構造の遮音壁」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明中には、遮音壁として機能させるための具体的な構造について何も説明がなされておらず、単に三層構造であるということだけでは、遮音壁としての機能が発揮されるとは言えない。したがって、当業者は、「遮音壁」という機能を有する壁を具体的にどのように実現するのかを理解することができない。

理由6:特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第1項第4号)
請求項2に記載された「遮音壁」という言葉について、単に三層構造であるということだけでは、遮音壁としての機能が発揮されるとは言えず、遮音壁として機能させるためには何等かの付加的な条件が必要とされると考えられ、その条件について何も説明されていないので、請求項2に記載された「三層構造の遮音壁」の範囲が不明確である。
旨主張している。

4.甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、「ISOLATION SYSTEM FOR A MOTOR」に関して、次の事項が記載されている。(なお、甲第1号証は英文であるため、特許異議申立人が提出した翻訳文を仮訳として用いる。ただし、端部キャップ78はエンドキャップ78に、前方アイソレータ部材82と前側アイソレータ部材82とはフロントアイソレータ部材82に、後方アイソレータ部材86と後部アイソレータ部材86と背面アイソレータ部材86とはリアアイソレータ部材86に、絶縁部材はアイソレータ部材に、前端98はフロントエンド98に記載を統一した。下線は、当審で付与。)
(ア)「[0007]FIG. 1 is an exploded perspective view of a motor and a motor housing assembly embodying the invention.」
([0007]図1は、本発明を具体化したモータ及びモータハウジング組立体の分解斜視図である。)
(イ)「[0013]FIGS. 1 - 3 illustrate a motor housing assembly 10 embodying the invention.・(略)・
[0014] The illustrated electric motor 14 includes a substantially tubular casing 18 that contains the stator 19, the rotor 20, and the other components (not shown) of the motor 14. The casing 18 includes a front end 22 and a rear end 26. ・(略)・In the illustrated embodiment, the casing 18 includes a circumferential groove 30 between the front and rear ends 22 and 26. Apertures 34 are formed in the casing 18 between the groove 30 and the rear end 26, and provide a communication pathway for ambient air to enter the casing 18 and cool the motor 14. The casing 18 also includes a transition or nose portion 38 adjacent the front end 22. The nose portion 38 also includes a plurality of cooling apertures 42.」
([0013]また、図1?3は、本発明を具体化するモータハウジング組立体10を示す。・(略)・
[0014]図示された電気モータ14は、ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素(図示せず)を収容する実質的に管状のケーシング18を含む。ケーシング18は、前端部22および後端部26を含む。・(略)・図示した実施形態では、ケーシング18は、前端部22と後端部26との間に周方向溝30を含む。開口34は、溝30と後端26との間のケーシング18に形成され、周囲空気がケーシング18に入り、モータ14を冷却するための連通路を提供する。ケーシング18はまた、前端部22に隣接する移行部分またはノーズ部分38を含む。ノーズ部分38はまた、複数の冷却開口42を含む。)
(ウ)「[0015] A drive shaft or output shaft 46 is rotatably supported in spaced-apart bearings (not shown) housed within the casing 18 at the front and rear ends 22 and 26.」
([0015]駆動シャフトまたは出力シャフト46は、ケーシング18内に収容された離間したベアリング(図示せず)内で、前端22および後端26において回転可能に支持されている。)
(エ)「[0017]The motor housing assembly 10 includes a housing 74, an end cap 78, a front isolator member 82, and a rear isolator member 86. The housing 74 includes a central portion 90 defining a substantially tubular cavity 94 for receiving the motor 14. The central portion 90 has a longitudinal axis 96 and includes a front end 98 for receiving the front end 22 of the motor, a rear end 102 for receiving the rear end 26 of the motor 14, and a body portion 106 extending between the front and rear ends 98 and 102.」
([0017]モータハウジングアセンブリ10は、ハウジング74と、エンドキャップ78と、フロントアイソレータ部材82と、リアアイソレータ部材86とを含む。ハウジング74は、モータ14を受け入れるための実質的に管状のキャビティ94を画定する中央部分90を含む。中央部分90は長手方向軸線96を有し、モータの前端部22を受け入れるフロントエンド98と、モータ14の後端部26を受け入れる後端部102と、フロントエンド98と後端部102との間に延びる本体部分106を含む。)
(オ)「[0018]In the illustrated embodiment, the nose portion 114 is defined by a plurality of spaced-apart ribs 118 that extend between the body portion 106 and the front end 98. The nose portion 114 is substantially open to ambient airflow between the ribs 118, and as seen in FIG. 2, the motor 14 is positioned in the central portion 90 such that the cooling apertures 42 are located adjacent the open areas between the ribs 118. The configuration of the nose portion 114 facilitates cooling of the motor 14 without sacrificing the structural stability of the housing 74.」
([0018]図示の実施形態では、ノーズ部分114は、本体部分106とフロントエンド98との間に延びる複数の離間したリブ118によって画定される。ノーズ部分114は、リブ118間の周囲空気流に対して実質的に開いており、図2に示すように、モータ14は、冷却開口42がリブ118の間の開口領域に隣接して配置されるように、中央部分90内に配置される。ノーズ部分114の構成は、ハウジング74の構造的安定性を犠牲にすることなく、モータ14の冷却を容易にする。)
(カ)「[0020]Still referring to FIG. 1, the central portion 90 further includes a cooling duct 126 extending from the rear end 102 and into the body portion 106. The cooling duct 126 includes an inlet aperture 130 that provides for airflow into the cavity 94. As illustrated by the arrows in FIG. 3, air entering the cavity 94 via the inlet aperture 130 circulates through and around the casing 18 to cool the motor 14. The circulation of cooling airflow is facilitated by the circumferential groove 30 and the cooling apertures 34 in the casing 18. A baffle 134 extends radially from the central portion 90 adjacent the inlet aperture 130 and directs airflow into the inlet aperture 130, as illustrated by the arrows in FIGS. 2 and 3.」
([0020]さらに図3を参照する。図1に示すように、中央部分90は、後端102から本体部分106内に延びる冷却ダクト126をさらに含む。冷却ダクト126は、空洞94への空気流を提供する入口開口130を含む。別ウインドウ(タブ)の大きな表示で見る図3に示すように、入口開口部130を介してキャビティ94に入る空気は、ケーシング18を通って循環し、モータ14を冷却する。冷却空気流の循環は、ケーシング18内の周方向溝30および冷却開口34によって促進される。バッフル134は、入口開口部130に隣接する中央部分90から半径方向に延び、図2および図3の矢印によって示されるように、空気流を入口開口部130に導く。」
(キ)「[0021]The housing 74 is mounted to an automobile air case 138 (shown in phantom in FIG. 2) via a mounting flange 142. In the illustrated embodiment, the mounting flange 142 includes a plurality of mounting holes 146 for receiving fasteners 150 that secure the housing 74 to the air case 138. The mounting flange 142 also includes a sealing portion 154 configured to fit into and substantially seal an opening defined by the air case 138, thereby substantially preventing air leakage through the air case 138. In the illustrated embodiment, the mounting flange 142 is supported by a plurality of ribs 158 that extend radially from the central portion 90 of the housing 74.」
([0021]ハウジング74は、取付フランジ142を介して自動車の空気ケース138(図2の破線で示す)に取り付けられている。図示した実施形態では、取付フランジ142は、ハウジング74を空気ケース138に固定する留め具150を受け入れるための複数の取り付け穴146を含む。取付フランジ142はまた、空気ケース138によって画定された開口部に嵌合して実質的にシールするように構成されたシール部分154を含み、それによって空気ケース138を通る空気漏れを実質的に防止する。図示した実施形態では、取付フランジ142は、ハウジング74の中央部分90から半径方向に延びる複数のリブ158によって支持されている。)
(ク)「[0024]The motor 14 is retained in the housing 74 by the end cap 78. In the illustrated embodiment, the end cap 78 is inserted into the rear end 102 of the central portion 90 and is retained therein by a plurality resilient locking tabs 162 spaced around the interior wall of the central portion 90, as will be described below. Of course, other suitable fastening techniques can also be employed to secure the end cap 78 to the housing 74.」
([0024]モータ14は、エンドキャップ78によってハウジング74に保持されている。図示された実施形態では、エンドキャップ78は、中央部分90の後端部102に挿入され、後述するように、中央部分90の内壁の周りに間隔を置かれた複数の弾性係止タブ162によって保持される。もちろん、エンドキャップ78をハウジング74に固定するために、他の適切な固定技術を使用することもできる。)
(ケ)「[0025] The end cap 78 is preferably plastic and includes (see FIG. 1) a substantially circular large-diameter portion 166, a substantially circular intermediate-diameter portion 170 offset axially from the large-diameter portion 166, and a substantially circular small-diameter portion 174 offset axially from the intermediate-diameter portion 170.」
([0025]エンドキャップ78は、好ましくはプラスチックであり、実質的に円形の大径部166と、大径部166から軸方向にずれた略円形の中径部170と、略円形の小径部166とを含む(図1参照)」(なお、「略円形の小径部166とを含む」は「中径部170から軸方向にずれた略円形の小径部174とを含む」の誤訳と認める。)
(コ)「[0026] The intermediate-diameter portion 170 accommodates a first raised portion 194 on the rear end 26 of the motor 14 and includes a plurality of aligning apertures 198, the purpose of which will be described in detail below. The small-diameter portion 174 accommodates a second raised portion 202 on the rear end 26 of the motor as well as the end of the drive shaft 46 projecting therefrom.」
([0026]中間径部分170は、モータ14の後端部26に第1隆起部194を収容し、複数の整列開口部198を含み、その目的は以下で詳細に説明する。小径部174は、モータの後端部26上の第2の隆起部分202と、そこから突出する駆動軸46の端部とを収容する。)(なお、「モータ14の後端部26に第1隆起部194を収容し」は、第1隆起部194が図1に記載されているように、モータ14の一部であるので、「モータ14の後端部26の第1隆起部194を収容し」の誤訳と認める。)
(サ)「[0027] The motor 14 is isolated from the housing 74 and the end cap 78 by the front isolator member 82, the rear isolator member 86, and the piece of sealing and isolating material 124. As best seen in FIGS. 1 and 3, the front isolator member 82 is substantially ring-shaped and includes a nose-portion 210 having an inner diameter sized to slideably receive the front end 22 of the motor 14 and an outer diameter sized to be received in the axial aperture 110 of the housing 74, thereby positioning the motor 14 radially within the housing 74 and isolating the motor 14 from the housing 74.」
([0027]モータ14は、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86、及びシーリング及び分離材料片124によってハウジング74及びエンドキャップ78から隔離されている。図1および図3に最も良く示されるように、フロントアイソレータ部材82は、実質的にリング状であり、モータ14の前端部22を摺動可能に受け入れる大きさの内径を有するノーズ部210と、軸方向開口部110に受け入れられるサイズの外径を有し、それによってモータ14をハウジング74内に半径方向に位置決めし、モータ14をハウジング74から隔離する。)
(シ)「[0029] The rear isolator member 86 is also substantially ring-shaped and includes a base 222 that engages the rear end 26 of the motor 14 on one side and engages the end cap 78 on the other side to position the motor 14 both axially and radially within the housing 74 and to isolate the motor 14 from the end cap 78 and the housing 74. The base 222 has an inner diameter sized to slideably receive the second raised portion 202 on the rear end 26 of the motor 14, thereby positioning the rear isolator member 86 radially with respect to the motor 14.」
([0029]リアアイソレータ部材86はまた、実質的にリング状であり、モータ14の後端部26に一方の側で係合し、他方のエンドキャップ78と係合するベース222を含み、モータ14を軸方向および半径方向の両方にエンドキャップ78およびハウジング74からモータ14を隔離するように構成されている。ベース222は、モータ14の後端部26に第2の隆起部202を摺動可能に受け入れるように寸法決めされた内径を有し、それによってリアアイソレータ部材86をモータ14に対して半径方向に位置決めする。)
(ス)「[0031] The front and rear isolator members 82 and 86 are preferably made from a resilient material, such as a thermoplastic elastomer or another suitable material.」
([0031]フロントおよびリアアイソレータ部材82および86は、好ましくは、熱可塑性エラストマーまたは他の適切な材料などの弾性材料で作られる。)
(セ)「[0036]Once the end cap 78 is locked into place (see FIG. 3), the motor 14 is isolated from both the housing 74 and the end cap 78 by the isolator members 82 and 86 and by the piece of sealing and isolating material 124. In other words, no portion of the motor 14 is in direct contact with the housing 74 or the end cap 78.」
([0036]エンドキャップ78が適所に係止されると(図3参照)、モーター14は、アイソレータ部材82および86ならびにシールおよび隔離材料片124によって、ハウジング74およびエンドキャップ78の両方から隔離される。言い換えれば、モータ14のどの部分も、ハウジング74またはエンドキャップ78と直接接触していない。)

(ソ)図1?4には、モータ14と、該モータ14を収容するモータハウジングアセンブリ10と、を備えた、モータ支持構造が記載されている。
(タ)図3には、有底円筒状のハウジング74、及び、モータ14を間隙を介して囲っているハウジング74の中央部分90が記載されている。(なお、図3に符号74は記載されていないが、ハウジングは図1のハウジング74と同じものと認められる。)
また、図3には、ハウジング74と、ハウジング74のフロントエンド98に設けられ、図の右側の面でモータ14の前側の面に当接し、左側の面でハウジング74に当接するフロントアイソレータ部材82と、図の左側の面でモータ14の後端部26の第1隆起部194の右側の面に当接し、図の右側の面でエンドキャップ78に当接するリアアイソレータ部材86と、ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78(記載事項(ク))が記載され、又、
フロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟む構成が記載されている。
また、図3には、ステータ19がケーシング18の内側に空間を有した形態で記載されている。
(チ)図2?3には、シール部分154を有する取付フランジ142が、ハウジング74と一体形成されており、モータ14の収容部の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部を有した構成が記載されている。

(ツ)記載事項(イ)に「図示された電気モータ14は、ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素(図示せず)を収容する実質的に管状のケーシング18を含む。ケーシング18は、前端部22および後端部26を含む。」と記載され、記載事項(ウ)には、「駆動シャフトまたは出力シャフト46は、ケーシング18内に収容された離間したベアリング(図示せず)内で、前端22および後端26において回転可能に支持されている。」と記載されているので、図1?4のモータ14は、ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素を収容する実質的に管状のケーシング18を含むと共に、出力シャフト46をケーシング18の前端部22および後端部26に回転可能に支持させたモータ14といえる。
(テ)図3に、記載事項(エ)で「ハウジング74は、モータ14を受け入れるための実質的に管状のキャビティ94を画定する中央部分90を含む」とされたハウジング74が、記載事項(タ)の有底円筒状で、モータ14を間隙を介して囲った形状で記載されているので、ハウジング74は、モータ14を間隙を介して囲っている有底円筒状のハウジング74といえる。
(ト)エンドキャップ78は、記載事項(ク)の「エンドキャップ78は、中央部分90の後端部102に挿入され・・保持される。」ものであって、中央部分90は、記載事項(エ)の「ハウジング74は、モータ14を受け入れるための実質的に管状のキャビティ94を画定する中央部分90を含む」とされたものであるので、エンドキャップ78は、ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78といえる。
(ナ)フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86、ハウジング74、及び、エンドキャップ78は、記載事項(ク)の「モータ14は、エンドキャップ78によってハウジング74に保持されている。」、記載事項(サ)の「[0027]モータ14は、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86、及びシーリング及び分離材料片124によってハウジング74及びエンドキャップ78から隔離されている。」、記載事項(セ)の「エンドキャップ78が適所に係止されると(図3参照)、モーター14は、アイソレータ部材82および86ならびにシールおよび隔離材料片124によって、ハウジング74およびエンドキャップ78の両方から隔離される。」ものであり、図3のフロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟む構成のものであるので、ハウジング74とエンドキャップ78とフロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟着しているものといえる。
(ニ)図3には、記載事項(タ)のハウジング74のフロントエンド98に設けられ、図の右側の面でモータ14の前側の面に当接し、左側の面でハウジング74に当接するフロントアイソレータ部材82が記載されており、記載事項(サ)の「モータ14は、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86、及びシーリング及び分離材料片124によってハウジング74及びエンドキャップ78から隔離されている。図1および図3に最も良く示されるように、フロントアイソレータ部材82は、実質的にリング状であり、モータ14の前端部22を摺動可能に受け入れる大きさの内径を有するノーズ部210と、軸方向開口部110に受け入れられるサイズの外径を有し、それによってモータ14をハウジング74内に半径方向に位置決めし、モータ14をハウジング74から隔離する。」ので、フロントアイソレータ部材82で、モータ本体を周方向に保持するといえ、ハウジング74は、ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82で、モータ14を周方向に保持するといえる。
(ヌ)記載事項(シ)に「リアアイソレータ部材86はまた、実質的にリング状であり、モータ14の後端部26に一方の側で係合し、他方のエンドキャップ78と係合するベース222を含み、モータ14を軸方向および半径方向の両方にエンドキャップ78およびハウジング74からモータ14を隔離するように構成されている。ベース222は、モータ14の後端部26に第2の隆起部202を摺動可能に受け入れるように寸法決めされた内径を有し、それによってリアアイソレータ部材86をモータ14に対して半径方向に位置決めする。」と記載されており、エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86で、モータ14の後端部26を半径方向に保持しているので、エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86で、モータ14を周方向に保持したモータ支持構造といえる。
(ネ)記載事項(キ)に「ハウジング74は、取付フランジ142を介して自動車の空気ケース138(図2の破線で示す)に取り付けられている。図示した実施形態では、取付フランジ142は、ハウジング74を空気ケース138に固定する留め具150を受け入れるための複数の取り付け穴146を含む。取付フランジ142はまた、空気ケース138によって画定された開口部に嵌合して実質的にシールするように構成されたシール部分154を含み、それによって空気ケース138を通る空気漏れを実質的に防止する。」と記載されており、図2?3には、記載事項(チ)のシール部分154を有する取付フランジ142が、ハウジング74と一体形成されており、モータ14の収容部の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部を有した構成が記載されているので、モータハウジングアセンブリ10は、自動車の空気ケース138に取付けるための取付フランジ142を、ハウジング74に対して一体に設けると共に、前記取付フランジ142が、モータハウジングアセンブリ10の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有したものといえる。
(ノ)記載事項(イ)に「図示した実施形態では、ケーシング18は、前端部22と後端部26との間に周方向溝30を含む。開口34は、溝30と後端26との間のケーシング18に形成され、周囲空気がケーシング18に入り、モータ14を冷却するための連通路を提供する。ケーシング18はまた、前端部22に隣接する移行部分またはノーズ部分38を含む。ノーズ部分38はまた、複数の冷却開口42を含む。」と記載され、図3には、ケーシング18の後端部26側と前端部22側とに、開口34および冷却開口42がそれぞれ設けられた構成が記載されているので、ケーシング18は、ケーシング18の後端部26側と前端部22側とに、モータ14を冷却するための周囲空気が入る開口34および冷却開口42がそれぞれ設けられているといえる。
(ハ)記載事項(カ)に「別ウインドウ(タブ)の大きな表示で見る図3に示すように、入口開口部130を介してキャビティ94に入る空気は、ケーシング18を通って循環し、モータ14を冷却する。冷却空気流の循環は、ケーシング18内の周方向溝30および冷却開口34によって促進される。バッフル134は、入口開口部130に隣接する中央部分90から半径方向に延び、図2および図3の矢印によって示されるように、空気流を入口開口部130に導く。」と記載され、図1?3には、ケーシング18の側面の開口34の近傍に、ハウジング74の側面の入口開口部130が記載されているので、ハウジング74は、ハウジング74の側面の開口34の近傍に入口開口部130を設けたものといえる。
(ヒ)記載事項(オ)に「図示の実施形態では、ノーズ部分114は、本体部分106とフロントエンド98との間に延びる複数の離間したリブ118によって画定される。ノーズ部分114は、リブ118間の周囲空気流に対して実質的に開いており、図2に示すように、モータ14は、冷却開口42がリブ118の間の開口領域に隣接して配置されるように、中央部分90内に配置される。ノーズ部分114の構成は、ハウジング74の構造的安定性を犠牲にすることなく、モータ14の冷却を容易にする。」と記載され、図2?3には、ハウジング74の冷却開口42の近傍にリブ118間の開いた部分を設けた構成が記載されているので、ハウジング74は、ハウジング74の冷却開口42の近傍にリブ118間の開いた部分を設けることで、モータ14の冷却を容易にするようにしたものといえる。
(フ)記載事項(シ)に「リアアイソレータ部材86はまた、実質的にリング状であり、モータ14の後端部26に一方の側で係合し、他方のエンドキャップ78と係合するベース222を含み、モータ14を軸方向および半径方向の両方にエンドキャップ78およびハウジング74からモータ14を隔離するように構成されている。ベース222は、モータ14の後端部26に第2の隆起部202を摺動可能に受け入れるように寸法決めされた内径を有し、それによってリアアイソレータ部材86をモータ14に対して半径方向に位置決めする。」と記載され、図1において第2の隆起部202の中央部には出力シャフト46の貫通部が記載されているので、図3には、エンドキャップ78の入口開口部130よりも、ケーシング18の後端部26の出力シャフト46貫通部側の部分にリアアイソレータ部材86を設けた構成が記載されている。
(ヘ)記載事項(サ)に、「モータ14は、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86、及びシーリング及び分離材料片124によってハウジング74及びエンドキャップ78から隔離されている。図1および図3に最も良く示されるように、フロントアイソレータ部材82は、実質的にリング状であり、モータ14の前端部22を摺動可能に受け入れる大きさの内径を有するノーズ部210と、軸方向開口部110に受け入れられるサイズの外径を有し、それによってモータ14をハウジング74内に半径方向に位置決めし、モータ14をハウジング74から隔離する。」と記載され、図3には、モータ14の前端部22が小径部として記載され、フロントアイソレータ部材82は、ケーシング18の前端部22の出力シャフト46貫通部の周辺に設けられたモータ14の小径部に嵌合する部分として記載されているので、ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82は、ケーシング18の前端部22の出力シャフト46貫通部の周辺に設けられたモータ14の小径部に嵌合する部分であるものといえる。
(ホ)記載事項(コ)に「中間径部分170は、モータ14の後端部26の第1隆起部194を収容し、複数の整列開口部198を含み、その目的は以下で詳細に説明する。小径部174は、モータの後端部26上の第2の隆起部分202と、そこから突出する駆動軸46の端部とを収容する。」と記載され、図1?3に第2の隆起部分202が、ケーシング18の後端部26の出力シャフト46貫通部近傍に突出形成されたものとして記載され、リアアイソレータ部材86が、第2の隆起部分202に嵌合する部分として記載されているので、エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86は、ケーシング18の後端部26の出力シャフト46貫通部近傍に突出形成された第2の隆起部分202に嵌合する部分であるといえる。
(マ)記載事項(ス)に「フロントおよびリアアイソレータ部材82および86は、好ましくは、熱可塑性エラストマーまたは他の適切な材料などの弾性材料で作られる。」と記載されているので、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86は弾性材料で作られたものといえる。
(ミ)記載事項(キ)に「図示した実施形態では、取付フランジ142は、ハウジング74の中央部分90から半径方向に延びる複数のリブ158によって支持されている。」と記載されているので、取付フランジ142が、ハウジング74の中央部分90から半径方向に延びる複数のリブ158によって支持されているといえる。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「a:ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素を収容する実質的に管状のケーシング18を含むと共に、出力シャフト46をケーシング18の前端部22および後端部26に回転可能に支持させたモータ14と、
b:該モータ14を収容するモータハウジングアセンブリ10と、を備え、
c:モータハウジングアセンブリ10が、
モータ14を間隙を介して囲っている有底円筒状のハウジング74と、
d:ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78と、
フロントアイソレータ部材82と、
リアアイソレータ部材86と、
とを含むと共に、
e:ハウジング74とエンドキャップ78とフロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟着し、
f:ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82で、モータ14を周方向に保持すると共に、
g:エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86で、モータ14を周方向に保持したモータ支持構造において、
h:自動車の空気ケース138に取付けるための取付フランジ142を、ハウジング74に対して一体に設けると共に、前記取付フランジ142が、モータハウジングアセンブリ10の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有し、
m:ケーシング18の後端部26側と前端部22側とに、モータ14を冷却するための周囲空気が入る開口34および冷却開口42がそれぞれ設けられ、
n:ハウジング74の側面の開口34の近傍に入口開口部130を設けると共に、
o:ハウジング74の冷却開口42の近傍にリブ118間の開いた部分を設けることで、モータ14の冷却を容易にするようにし、
p:更に、
エンドキャップ78の入口開口部130よりも、ケーシング18の後端部26の出力シャフト46貫通部側の部分にリアアイソレータ部材86を設けたものであり、
r:ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82は、ケーシング18の前端部22の出力シャフト46貫通部の周辺に設けられたモータ14の小径部に嵌合する部分であり、
t:エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86は、ケーシング18の後端部26の出力シャフト46貫通部近傍に突出形成された第2の隆起部分202に嵌合する部分であり、
u:フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86は弾性材料で作られ、
v:取付フランジ142が、ハウジング74の中央部分90から半径方向に延びる複数のリブ158によって支持されている
モータ支持構造。」

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「ブロワ装置」に関して、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。)
(ア)「【請求項1】ファンを内装するブロワケーシングと、
前記ブロワケーシング内に配置され、モータフランジを有するモータと、
前記ブロワケーシングと前記モータとの間に配置され、フランジ部と一方端開口部を有する円筒形状のハウジング部とを有するモータケースとを備え、
前記モータフランジは、前記ファンの外径寸法より小さい径方向寸法からなりモータ径方向と同一方向にモータ外周部から延設され、
前記フランジ部は、前記ファンの外径寸法より大きい径方向寸法からなる外側取付部および前記ファンの外径寸法より小さい径方向寸法からなる内側支持部を有し、該外側取付部は前記ブロワケーシングに取り付けられ、該内側支持部は前記モータフランジを支持し、
前記ハウジング部は、前記モータフランジの部位を除いて前記ハウジング部の内周部と前記モータ外周部との間を非接触状態とする空隙を確保しつつ、前記モータを包封することを特徴とするブロワ装置。」
(イ)「【0022】図4は、本発明による他の実施例のモータ部を示す縦断面図である。モータ2の内部構造は、次の通りである。内側に固定子9が配設されているヨーク8の一方端は開口し、該開口部にエンドブラケット11が取り付けられる。ヨーク8及びエンドブラケット11には、含油すべり軸受12が互いに同芯的に組み込まれ、この含油すべり軸受12により回転子軸13が支持される。」
(ウ)「【0036】さらに本発明によれば、モータケース5のハウジング部5bは、一方端開口部を有する底付きの筒形状を呈し、モータ2の反ファン取付側を空間を持って包封するような、即ち、エンドブラケット11を覆うような形状となる。また分割フランジ部としてのフランジ部5aと、分割ハウジング部としてのハウジング部5bとの嵌合部に、インロー部5d,5fを設けフランジ部5a及びハウジング部5bがモータ外周部を非接触状態でもって覆うようにするためにインロー嵌合される。即ち、インロー部5d,5fを設けることにより、モータ2とモータケース5の間を非接触状態とする空隙が確実に得られ、騒音低減に結び付けられる。同時に、モータハウジング外周部とハウジング部内周部との間に、後述するような吸音材の配設を可能とする空隙が確保される。」
(エ)図3には、有底円筒状のヨーク8及び該ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11で構成されたモータハウジングが記載されている。
また、図3には、記載事項(イ)の図4と同様の構成であるヨーク8及びエンドブラケット11には、軸受が組み込まれ、軸受により回転子軸が支持される構成が記載されている。
(オ)図3において、モータケース5が、フランジ部5aと、ハウジング部5bとから構成され、フランジ部5aは、遮音兼防水壁5c、インロー部5d、位置決め突起5e、ブロワケーシング4に取り付けられる外側取付部5m、モータ2のモータフランジ6を支持する内側支持部5nなどを有し、ヨーク8の中間部を筒状に覆っている。
ハウジング部5bは、一方端開口部を有する円筒形状となっていて、インロー部5dと嵌合するインロー部5fを有している。
フランジ部5aは、その外周側の縁でハウジング部5b側へ屈曲して、その先に外側取付部5mが形成されている。
フランジ部5aのインロー部5dと、ハウジング部5bのインロー部5fとは、フランジ部5aのインロー部5dが2つに分れ、その間にハウジング部5bのインロー部5fが入り込んでいる。
フランジ部5aのインロー部5dの間にハウジング部5bのインロー部5fが入り込んでいる部分は、モータ2の軸方向中間部であって、フランジ部5aの外周縁でハウジング部5b側へ屈曲した部分及び外側取付部5mの内側に配置されている。

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、「駆動ユニット」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 駆動ユニットであって、モータ(10)と、該モータ(10)を収容するケーシング(11)とを備えており、前記モータ(10)が被駆動シャフト(12)とモータケーシング(22)とを有しており、該モータケーシング(22)が、モータケーシング(22)の端面において同軸的に突出する、前記被駆動シャフト(12)のためのそれぞれ1つの軸受(27,28)を取り囲む支承管片(25,26)を備えており、前記ケーシング(11)が、支承管片(25,26)に被さる2つの保持部(33,34)を有しており、さらに前記駆動ユニットが、支承管片(25)と保持部(33)との間に封入された、弾性材料から成る少なくとも1つの緩衝エレメント(36)を備えており、該緩衝エレメント(36)が前記モータ(10)を半径方向および軸方向に支持している形式のものにおいて、
緩衝エレメント(36)が、半径方向に整列された円筒体軸線を有する複数の円筒体(37)を有しており、これらの円筒体(37)が、等しい円周角で互いにずらして配置されていて、かつ、ほぼ一定の間隔を保って互いに結合されていることを特徴とする、駆動ユニット。
【請求項2】円筒体(37)が環状円板(38)を介して結合され、該環状円板(38)に円筒体(37)が対称的かつ一体構造的に一体成形されている、請求項1記載の駆動ユニット。」
(イ)「【0012】 駆動ユニットを組み立てるために、モータ10がケーシングポット31内に装着され、この場合、支承管片25は、底部凹部35内に封入されている緩衝エレメント36内へ侵入し、かつ、支承U字形材23は支持ショルダ231で以て円筒体37に軸方向に接触する。この時点で、ケーシングキャップ32が被駆動シャフト12の自由端部の方からケーシングポット31に被せ嵌められ、この場合、カラー39は支承管片26に被さって係合し、キャップ底部321は支承U字形材24の支持ショルダ241に接触支持される。軸方向の圧力によりケーシングキャップ32は、係止突起29が係止穴30内に係止するまで、ケーシングポット30に被せ嵌められる。これにより、モータ10が軸方向で遊びなしにケーシング11内に保持されていて、かつ、円筒体37によって、規定の範囲内で接線方向に揺動するので、モータの振動およびノイズは、著しく減じられてケーシング11を介して伝達されるに過ぎない。」


5.判断
5-1.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲1発明との対比
(a)甲1発明の「ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素」は、本件特許発明1の「モータ構成部品」に相当し、以下同様に、
「出力シャフト46」は「モータ構成部品を構成する出力軸」に、
「回転可能に支持させた」ことは「軸支させた」ことに、
「モータ14」は「モータ本体」に、
に相当する。
そして、
甲1発明の「ステータ19、ロータ20、およびモータ14の他の構成要素を収容する実質的に管状のケーシング18」の構成と、本件特許発明1の「モータ構成部品を有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバーに収容する」構成とは、「モータ構成部品を円筒状のモーターのケーシングに収容する」構成の点で共通する。
甲1発明の「出力シャフト46をケーシング18の前端部22および後端部26に回転可能に支持させた」ことと、本件特許発明1の「前記モータ構成部品を構成する出力軸を前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部に軸支させた」こととは、「前記モータ構成部品を構成する出力軸をモーターのケーシングに軸支させた」点で共通する。
なお、特許異議申立人は「ケーシング18のステータ19及びロータ20を覆う部分はヨーク部に該当し、後端部26を含む部分はエンドカバーに該当」する旨主張しているが、甲第1号証には、ケーシング18がどの様な部分に分割成型されているか、ヨーク(継鉄)がどの様に配置されているか等の具体的構成を説明する記載は存在しないので、ヨーク(継鉄)部に相当する部分の認定、「ヨーク部を塞ぐ」と特定されたエンドカバーに相当する部分の認定はできない。

(b)甲1発明の「該モータ14を収容するモータハウジングアセンブリ10」は、本件特許発明1の「該モータ本体を収容するモータ収容部」に相当する。

(c)甲1発明の「モータ14を間隙を介して囲っている有底円筒状のハウジング74」及び「フロントアイソレータ部材82」と、本件特許発明1の「前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部」とは、モータ収容部の一の構成部材である点で共通する。
甲1発明の「ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78」及び「リアアイソレータ部材86」と、本件特許発明1の「前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部」とは、モータ収容部の他の構成部材である点で共通する。
甲1発明の「モータハウジングアセンブリ10が、モータ14を間隙を介して囲っている有底円筒状のハウジング74と、ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78と、フロントアイソレータ部材82と、リアアイソレータ部材86と、とを含む」構成と、本件特許発明1の「前記モータ収容部が、前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられる」構成とは、モータ収容部が、一の構成部材と、他の構成部材とに分けられる点で共通する。

(d)甲1発明の「ハウジング74とエンドキャップ78とフロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟着」することと、本件特許発明1の「前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とで、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着」することとは、前記一の構成部材と前記他の構成部材で、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着する点で共通する。

(e)甲1発明の「フロントアイソレータ部材82」は、本件特許発明1の「モータ保持部」に相当する。
甲1発明の「ハウジング74のフロントエンド98」と、本件特許発明1の「前記ヨーク部収容部の底側」とは、前記一の構成部材の底側である点で共通する。
そうすると、甲1発明の「ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82で、モータ14を周方向に保持する」ことと、本件特許発明1の「前記ヨーク部収容部の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持する」こととは、前記一の構成部材の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持する点で共通する。

(f)甲1発明の「リアアイソレータ部材86」は、本件特許発明1の「別のモータ保持部」に相当する。
そして、甲1発明の「エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86で、モータ14を周方向に保持した」ことと、本件特許発明1の「前記エンドカバー部収容部の底側に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持した」こととは、他の構成部材に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持した点で共通する。

(g)甲1発明の「自動車の空気ケース138」は、本件特許発明1の「外部の部材」に相当し、以下同様に、
「取付フランジ142」は「取付フランジ」に、
「モータハウジングアセンブリ10の外方へ拡がるシール部分154」は「モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部」に相当し、
甲1発明の「後端部側」と、本件特許発明1の「エンドカバー側」とは、「後端部側」である点で共通する。
そして、甲1発明の「自動車の空気ケース138に取付けるための取付フランジ142を、ハウジング74に対して一体に設けると共に、前記取付フランジ142が、モータハウジングアセンブリ10の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有し」た構成と、本件特許発明1の「外部の部材に取付けるための取付フランジを、前記ヨーク部収容部に対して一体に設けると共に、前記取付フランジが、前記モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部と、該拡径面部の周縁部から前記エンドカバー側へ屈曲する屈曲面部とを有し」た構成とは、外部の部材に取付けるための取付フランジを、前記一の構成部材に対して一体に設けると共に、前記取付フランジが、前記モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部と、該拡径面部の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有した構成で共通する。

一致点:
そうすると、両者は、
「a:モータ構成部品を円筒状のモーターのケーシングに収容すると共に、前記モータ構成部品を構成する出力軸をモーターのケーシングに軸支させたモータ本体と、
b:該モータ本体を収容するモータ収容部と、を備え、
c:前記モータ収容部が、一の構成部材と、
d:他の構成部材と、に分けられると共に、
e:前記一の構成部材と前記他の構成部材で、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着し、
f:前記一の構成部材の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持すると共に、
g:他の構成部材に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持したモータ支持構造において、
h:外部の部材に取付けるための取付フランジを、前記一の構成部材に対して一体に設けると共に、前記取付フランジが、前記モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部と、該拡径面部の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有するモータ支持構造。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:モーターのケーシングが、本件特許発明1は、有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバーであるのに対し、甲1発明は実質的に管状のケーシング18であって、上記(a)に記載したように、「有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバー」といえるものではなく、出力軸を、本件特許発明1は、「前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部」に軸支するのに対し、甲1発明は「ケーシング18の前端部22および後端部26」に軸支する点。

相違点2:本件特許発明1は、
「前記モータ収容部が、
前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、
前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられると共に、
前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とで、前記モータ本体を前記出力軸と平行な方向に挟着し、
前記ヨーク部収容部の底側に設けたモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持すると共に、
前記エンドカバー部収容部の底側に設けた別のモータ保持部で、前記モータ本体を周方向に保持した」モータ支持構造であるのに対して、甲1発明は、
「モータハウジングアセンブリ10が、
モータ14を間隙を介して囲っている有底円筒状のハウジング74と、
ハウジング74の中央部分90の後端部102に挿入され保持されるエンドキャップ78と、
フロントアイソレータ部材82と、
リアアイソレータ部材86と、
とを含むと共に、
ハウジング74とエンドキャップ78とフロントアイソレータ部材82とリアアイソレータ部材86とで、モータ14を出力シャフト46と平行な方向に挟着し、
ハウジング74のフロントエンド98に設けたフロントアイソレータ部材82で、モータ14を周方向に保持すると共に、
エンドキャップ78に設けたリアアイソレータ部材86で、モータ14を周方向に保持した」モータ支持構造である点。

相違点3:本件特許発明1は、
「H:外部の部材に取付けるための取付フランジを、前記ヨーク部収容部に対して一体に設けると共に、前記取付フランジが、前記モータ収容部の外方へ拡がる拡径面部と、該拡径面部の周縁部から前記エンドカバー側へ屈曲する屈曲面部とを有し、
I:該屈曲面部は、前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とが嵌合する嵌合部を外周側から周方向に包囲する」モータ支持構造であるのに対して、甲1発明は、
「h:自動車の空気ケース138に取付けるための取付フランジ142を、ハウジング74に対して一体に設けると共に、前記取付フランジ142が、モータハウジングアセンブリ10の外方へ拡がるシール部分154と、該シール部分154の周縁部から後端部側へ屈曲する屈曲面部とを有し」たモータ支持構造である点。

イ.相違点についての判断
(ア)相違点1について
本件特許発明1の「有底円筒状のヨーク部」は、ヨーク(継鉄)であることが前提となるが、甲第1号証には、ヨーク(継鉄)についての記載は存在せず、ヨークとはモータにおいて磁石間の磁気的接続を行うものであって、一般的には磁束の漏れを防ぐために磁石に直接取り付けられるものであるが、図3のステータ19がケーシング18の内側に空間を有した形態で記載されていることから、甲1発明のケーシング自体は、ヨークといえるものではない。
甲第2号証図3には、有底円筒状のヨーク8及び該ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11で構成されたモータハウジングが記載されており、その「有底円筒状のヨーク8」は、本件特許発明1の「有底円筒状のヨーク部」に相当し、以下同様に、「ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11」は「該ヨーク部を塞ぐエンドカバー」に、「ヨーク8及びエンドブラケット11には、軸受が組み込まれ、軸受により回転子軸が支持される」構成は「前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部に軸支する」構成に相当するものである。
しかし、甲1発明のケーシング18を、甲第2号証記載の「有底円筒状のヨーク8及び該ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11」とすることの動機付けは、甲第1、2号証の何処にも記載されておらず、しかも、上記したように甲1発明のケーシング18は、ヨークといえるものではないので、甲1発明のケーシング18を、甲第2号証記載の「有底円筒状のヨーク8及び該ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11で構成された」ものとして、本件特許発明1の相違点1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
また、甲1発明のケーシング18を、「有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバー」とすることが容易に想到し得ることでない以上、出力軸を「前記ヨーク部および前記エンドカバーに設けた軸穴部」に軸支するものとすることも当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(イ)相違点2について
上記「ア.」の相違点1に記載したように、甲1発明のケーシング18は、「有底円筒状のヨーク部および該ヨーク部を塞ぐエンドカバー」ではないので、甲1発明のハウジング74、エンドキャップ78、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86(全体で本件特許発明1の「モータ収納部」に相当するもの)のそれぞれは、「ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部」、「エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部」といえるものではない。
また、甲第2号証図3記載の「ハウジング部5b」は、甲第2号証記載事項(ウ)の「一方端開口部を有する底付きの筒形状を呈し、・・エンドブラケット11を覆うような形状」のものであるので、本件特許発明1の「エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部」に相当するものの、甲第2号証図3記載の「フランジ部5a」は、「ヨーク8の中間部を筒状に覆っている」ものであって、「ヨーク部を収容」するものでなく、「有底円筒状」でもないので、本件特許発明1の「ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部」に相当するものでない。
甲1発明のケーシング18を、甲第2号証記載の「有底円筒状のヨーク8及び該ヨーク部を塞ぐエンドブラケット11で構成された」ものとしても、甲1発明のエンドキャップ78は、図1?4の略円板状のものであって、甲第2号証記載の長さのあるエンドブラケット11を収容出来るような形状のものでないので、それが、エンドブラケット(本件特許発明1の「エンドカバー」に相当するもの)を収容する有底円筒状の収容部となるとは言い難い。
また、甲1発明のハウジング74、エンドキャップ78、フロントアイソレータ部材82、リアアイソレータ部材86(全体で本件特許発明1の「モータ収納部」に相当するもの)を、甲第2号証図3記載のフランジ部5a、ハウジング部5bとしても、「フランジ部5a」は、上記(イ2)の「ヨーク部を収容」するものでなく、「有底円筒状」でもないので、「ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、・・エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と」にはならない。
そうすると、本件特許発明1の相違点2の「前記モータ収容部が、
前記ヨーク部との間に間隙部を有して前記ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と、
前記エンドカバーとの間に間隙部を有して前記エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と、に分けられる」構成は、甲第1、2号証のいずれにも記載されておらず、例え甲1発明のケーシング18を、甲第2号証記載のものにしたとしても導き出されるものでないので、甲第1、2号証の記載に基づいて、本件特許発明1の相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(ウ)相違点3について
上記(イ)に記載したように、甲1発明の「ヨーク部を収容する有底円筒状のヨーク部収容部と・・エンドカバーを収容する有底円筒状のエンドカバー部収容部と」は、甲第1、2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものでないので、相違点3の「前記ヨーク部収容部に対して一体に設ける」取付フランジ、「前記エンドカバー側」へ屈曲する屈曲面部、「『前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部』とが嵌合する嵌合部を外周側から周方向に包囲する」屈曲面部も、甲第1、2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るものでない。

ウ.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、構成要件Iに関して、「甲第1号証におけるハウジング74とエンドキャップ78との嵌合構造として、甲第2号証に記載されたフランジ部5aの外周縁でハウジング部5b側へ屈曲した部分の内側に嵌合部を配置した構造を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。」(特許異議申立書(4-3))旨主張するが、上記イ.(ウ)に記載したように、甲1発明には「前記ヨーク部収容部と前記エンドカバー部収容部とが嵌合する嵌合部」自体が存在せず、甲第1、2号証の記載に基づいて、本件特許発明1の相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえないから、請求人の主張は理由がない。

エ.小括
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(2)本件特許発明2、3について
ア.本件特許発明2、3と甲1発明との対比
本件特許発明2、3は、いずれも構成要件A?Gを備えたものであるので、本件特許発明2、3のいずれと甲1発明とを対比しても、両者は少なくとも上記「(1)ア.」の相違点1?2で相違する。

イ.相違点についての判断
相違点1?2についての判断は、上記「(1)イ.」の(ア)、(イ)と同様であって、甲第1、2号証の記載に基づいて、本件特許発明2、3の相違点1?2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ.小括
そうすると、本件特許発明2、3は、本件特許発明2、3の構成要件A?G以外の構成について検討するまでもなく、甲1発明、及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。


5-2.理由2(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明4?6、8?10について
ア.本件特許発明4?6、8?10と甲1発明との対比
本件特許発明4?6、8?10は、いずれも構成要件A?Gを備えたものであるので、本件特許発明4?6、8?10のいずれと甲1発明とを対比しても、両者は少なくとも上記「5-1.(1)ア.」の相違点1?2で相違する。

イ.相違点についての判断
相違点1?2についての判断は、上記「5-1.(1)イ.」の(ア)、(イ)と同様であって、甲第1、2号証の記載に基づいて、本件特許発明4?6、8?10の相違点1?2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえないものであって、甲第1号証の記載のみに基づいても同様に、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ.小括
そうすると、本件特許発明4?6、8?10は、本件特許発明4?6、8?10の構成要件A?G以外の構成について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。


5-3.理由3(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明7について
ア.本件特許発明7と甲1発明との対比
本件特許発明7は、構成要件A?Gを備えたものであるので、本件特許発明7と甲1発明とを対比しても、両者は少なくとも上記「5-1.(1)ア.」の相違点1?2で相違する。

イ.相違点についての判断
相違点1?2についての判断は、上記「5-1.(1)イ.」の(ア)、(イ)と同様であって、甲第1、2号証の記載に基づいて、本件特許発明7の相違点1?2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえないものであって、甲第1号証の記載のみに基づいても同様に、当業者が容易に想到し得ることとはいえないものである。
さらに、相違点1?2の構成は、甲第3号証にも記載されていないので、甲第1、3号証の記載に基づいて、本件特許発明7の相違点1?2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ.小括
そうすると、本件特許発明7は、本件特許発明7の構成要件A?G以外の構成について検討するまでもなく、甲1発明、及び甲第3号証の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。


5-4.理由4(特許法第17条の2第3項)について
(1)当初明細書等の記載事項
本件特許に係る出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】
一端側に開口部を有する有底円筒状のヨーク部、および、該ヨーク部の開口部を塞ぐエンドカバーを有して、内部にモータ構成部品を収容可能なモータ本体と、
該モータ本体を収容可能なモータ収容部、および、該モータ収容部に収容されたモータ本体を外部の部材に取付けるための外部取付部を有するモータホルダと、を備え、
前記モータ本体が、両端面に、前記モータ構成部品としての出力軸を設置する軸穴部を備えたモータ支持構造において、
前記モータホルダが、
前記モータ本体の前記ヨーク部側の部分を側面に間隙部を有して収容可能な有底円筒状のヨーク部収容部、および、前記外部取付部を有するヨーク側ホルダ部材と、
前記エンドカバー側の部分を側面に間隙部を有して収容可能なエンドカバー部収容部を有する有底円筒状のエンドカバー側ホルダ部材と、に分けて設けられると共に、
前記ヨーク側ホルダ部材とエンドカバー側ホルダ部材とが、互いに嵌合可能な嵌合部を有し、
更に、前記ヨーク側ホルダ部材の底部に、前記モータ本体の端面を周方向に保持可能なモータ保持部を設けると共に、
前記エンドカバー側ホルダ部材の底部に、前記モータ本体の反対側の端面を周方向に保持可能な別のモータ保持部を設けて、
両モータ保持部によって、前記モータ本体の両端面を出力軸と平行な方向に挟着保持したことを特徴とするモータ支持構造。」
(b)「【0028】
(1)上記モータホルダ23が、
上記モータ本体5の上記ヨーク部3側の部分を側面に間隙部S1を有して収容可能な有底円筒状のヨーク部収容部31、および、上記外部取付部22を有するヨーク側ホルダ部材32と、
上記モータ本体5の上記エンドカバー4側の部分を側面に間隙部S2を有して収容可能なエンドカバー部収容部33を有する有底円筒状のエンドカバー側ホルダ部材34と、に分けて設けられる。
そして、上記ヨーク側ホルダ部材32とエンドカバー側ホルダ部材34とが、互いに嵌合可能な嵌合部35を有するものとされる。」
(c)「【0030】
嵌合部35は、嵌合によってヨーク部収容部31とエンドカバー部収容部33とを一体的に結合し合体させるものである。嵌合部35は、互いに向かい合わせに配置された、ヨーク部収容部31の開口部と、エンドカバー部収容部33の開口部との間に形成される。この場合、ヨーク部収容部31の外径とエンドカバー部収容部33の内径とがほぼ同じとされることで、両者が嵌合によって結合、合体されることになる。この際、上記嵌合部35は、摺接嵌合するものとされることによってシール機能をも有するものとされる。なお、ヨーク部収容部31とエンドカバー部収容部33との嵌め合い関係は逆であっても良い。」
(d)「【0060】
図2は、この実施の形態の実施例2を示すものである。上記実施例1と同様の部分については、同じ符号を付すことによって説明を省略する。但し、説明を省略した部分の構成、作用、効果については、上記実施例1の記載を以ってこの実施例2の記載とする。」
(e)「【0066】
図3は、この実施例の変形例を示すものである。」
(f)図2の参照符号35が付された箇所には、
ヨーク部収容部31と、エンドカバー部収容部33とが、モータ本体5の外周部に、間隙部S1を有してヨーク部3を図2断面外側から覆う嵌合部35が記載されている。
該嵌合部35は、内側からヨーク部収容部31、エンドカバー部収容部33、ヨーク部収容部31の中間部分から分岐形成された外部取付部22から下方に伸びる部分からなり、三層構造の壁を構成している。
また、図3にも同様の構成が記載されている。

(2)当審の判断
当初明細書等の【0028】に「上記ヨーク側ホルダ部材32とエンドカバー側ホルダ部材34とが、互いに嵌合可能な嵌合部35を有する」と、【0030】に「嵌合部35は、嵌合によってヨーク部収容部31とエンドカバー部収容部33とを一体的に結合し合体させるものである。」と記載され、図2に、嵌合部35が、三層構造の壁を構成しているものが記載されている。
一般に「遮音」とは、例えば、特開2007-203924号公報【0052】に「作動音の車両外(エンジンルーム外)への漏出(音漏れ)が大幅に低減されるように遮音(静音)設計された車両」と、特開2007-64540号公報【0006】に「熱交換器が遮音壁となって第2の音源である圧縮機(2)の運転音を遮音して運転時の騒音を低減することができる」と、大車林[株式会社三栄書房2004年8月20日第3刷542頁]の遮音の欄に「隔壁によって空気伝搬音をさえぎることで音を遮音壁と呼ばれる隔壁で受け、隔壁の反対側への音の放射を弱めることである。」とある様に、音の漏出を低減させることを意味する用語であり、音が伝わる空間に配置された壁が遮音機能を備えることは技術常識(更に必要があれば、特開2005-14811号公報【0004】「内外気切換用ドア6が車室内への遮音壁として機能し」、実願昭61-143283号(実開昭63-47967号)のマイクロフィルム明細書2頁第4?9行「カウルパネルは上述のようにエンジンルームと車室とを仕切る隔壁として重要な作用を果たす部分であり・・騒音が車室内に伝達されるのを遮断するための遮音壁としても重要な意味をもっている。」参照。)である。
そうすると、本件特許明細書に記載された「三層構造の遮音壁」は、当初明細書等の【0030】の「嵌合によってヨーク部収容部31とエンドカバー部収容部33とを一体的に結合し合体させるものである」嵌合部35について、図2記載の実施例2の三層構造の壁に特定し、壁自体が備えている周知の機能を記載しただけのものであって、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められる。

(3)特許異議申立人の主張に対する検討
特許異議申立人は、特許異議申立書(4-3)において、「本件特許の出願当初明細書には、「遮音壁」なる言葉はなく、図2,3に三層構造は記載されているものの、遮音壁として機能させることについては、何ら記載されていない。
また、遮音壁として機能させるためには、嵌合部を三層構造にするだけでなく、遮音効果をもたらすための更なる構成が必要とされると思料される。出願当初明細書には、そのような構成について何も記載されていないので、遮音壁という構成要件が、当初明細書に記載されていたとは言えない。」旨主張するが、本件特許明細書の「三層構造の遮音壁」は、当初明細書等の【0030】の「嵌合によってヨーク部収容部31とエンドカバー部収容部33とを一体的に結合し合体させるものである」嵌合部35について、図2記載の実施例2の三層構造の壁に特定し、壁自体が備えている周知の機能を記載しただけのもので、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)小括
そうすると、本件特許の請求項2に「三層構造の遮音壁」との文言を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載されていない事項の追加であるとはいえない。

5-5.理由5(特許法第36条第4項第1号)について
(1)特許明細書の発明の詳細な説明の記載事項
特許明細書の発明の詳細な説明には、上記「5-4.(1)」の(b)?(e)と同様の記載があり、図2、3には、上記「5-4.(1)」の(f)と同様の構成が図示されている。

(2)当審の判断
特許明細書の発明の詳細な説明には、嵌合部35が三層構造の壁を構成している図2、3を引用した実施例2、及び、実施例の変形例が記載されており、上記「5-4.(2)」に記載したように、「遮音」とは音の漏出を低減させることを意味する用語であり、音が伝わる空間に配置された壁が遮音機能を備えることは技術常識であって、「三層構造の遮音壁」は、単に三層構造の壁自体が備えている周知の機能をいうだけのものであるので、「三層構造の遮音壁」は、図2、3を引用した実施例2、及び、実施例の変形例が記載されているので実施可能である。

(3)特許異議申立人の主張に対する検討
特許異議申立人は、特許異議申立書(4-4)において、「請求項2に記載された「三層構造の遮音壁」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明中には、遮音壁として機能させるための具体的な構造について何も説明がなされておらず、単に三層構造であるということだけでは、遮音壁としての機能が発揮されるとは言えない。したがって、当業者は、「遮音壁」という機能を有する壁を具体的にどのように実現するのかを理解することができない。」旨主張しているが、発明の詳細な説明には、嵌合部35が三層構造の壁を構成している図2、3を引用した実施例2、及び、実施例の変形例が記載されて、図示のとおりの構成で実施可能であるので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)小括
そうすると、特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明2について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。

5-6.理由6(特許法第36条第6項第2号)について
(1)当審の判断
「遮音壁」は、遮音機能を備える壁を意味し、上記「5-4.(2)」に記載したように、「遮音」とは音の漏出を低減させることを意味し、音が伝わる空間に配置された壁が遮音機能を備えることは技術常識であるので、請求項2記載の「遮音壁」は、音の漏出を低減させる機能を備える壁として理解されるものである。

(2)特許異議申立人の主張に対する検討
特許異議申立人は、特許異議申立書(4-5)において、「請求項2に記載された「遮音壁」という言葉について、単に三層構造であるということだけでは、遮音壁としての機能が発揮されるとは言えず、遮音壁として機能させるためには何等かの付加的な条件が必要とされると考えられ、その条件について何も説明されていないので、請求項2に記載された「三層構造の遮音壁」の範囲が不明確である。」旨主張しているが、壁が遮音機能を備えることは技術常識であって、「三層構造の遮音壁」は、単に三層構造の壁自体が備えている周知の機能をいうだけのものであり、三層構造の壁の構造は明確であるので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(3)小括
そうすると、本件特許発明2は明確ではないとはいえない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-31 
出願番号 特願2014-152226(P2014-152226)
審決分類 P 1 651・ 55- Y (H02K)
P 1 651・ 121- Y (H02K)
P 1 651・ 537- Y (H02K)
P 1 651・ 536- Y (H02K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 津久井 道夫  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 永田 和彦
中川 真一
登録日 2017-06-09 
登録番号 特許第6153898号(P6153898)
権利者 カルソニックカンセイ株式会社
発明の名称 モータ支持構造  
代理人 西脇 怜史  
代理人 西脇 民雄  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  

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