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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1341363 |
審判番号 | 不服2017-6829 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-11 |
確定日 | 2018-07-09 |
事件の表示 | 特願2016- 67703「音声翻訳装置、音声翻訳方法、及び音声翻訳プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-182395、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年3月30日の出願であって、平成28年9月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年12月2日に手続補正がなされたが、平成29年2月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成30年3月8日付けで拒絶理由通知がなされ、平成30年5月8日に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1、2、6、7に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献5に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願請求項3-5に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2013/077110号 2.特開2002-73514号公報 3.特開平6-119372号公報 4.特開2012-123441号公報 5.特開平7-44564号公報 第3 本願発明 本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成30年5月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ユーザ及び対話者の音声を入力するための入力部と、 前記ユーザによる1つの入力音声に対して複数の異なる言語による対訳を取得する翻訳部と、 前記複数の異なる言語による対訳を、テキスト、又は、テキスト及び音声で出力する出力部と、 前記複数の異なる言語による対訳のテキストが出力された後に、前記対話者の使用言語を選定する言語選定部と、 を備え、 前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する、 音声翻訳装置。」 なお、本願発明2-7の概要は以下のとおりである。 本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明7は、コンピュータを、本願発明1の各部として機能させるプログラムの発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2013/077110号)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「[0012]・・・(中略)・・・ 図1は、本発明の一実施形態における翻訳装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、翻訳装置100は、入出力部110aおよび110bと、コミュニケーション種別特定部120と、コミュニケーション種別検出部130と、翻訳部140とを具備する。」 イ.『[0013] 入出力部110aと110bとは、それぞれ、翻訳装置100を用いてメッセージのやり取りを行う者(以下では、「ユーザ」と称する)からのメッセージの入力を受け付け、また、ユーザに対してメッセージを出力する。・・・(中略)・・・ なお、以下では、入出力部110aと110bとを総称して「入出力部110」と表記する。』 ウ.「[0026] ・・・(中略)・・・同図に示すように、翻訳装置100は、折り畳み可能に結合された2つの筐体を有しており、」 エ.「[0028]・・・(中略)・・・翻訳装置100は、2つの筐体を180度よりもさらに開いた状態で外側に位置する2つの面(すなわち、2つの筐体を閉じた状態(図3(A)の状態)で互いに対向する2つの面)の一方に入出力部110aの各部を有し、他方に入出力部110bの各部を有する。 具体的には、翻訳装置100は、上記の面の一方に、画像表示部114aの表示画面および操作入力部111aのタッチセンサとで構成されるタッチパネルと、撮像部112aのカメラレンズと、音声入力部113aのマイクと、音声出力部115aのスピーカとを具備し、他方に、画像表示部114bの表示画面および操作入力部111bのタッチセンサとで構成されるタッチパネルと、撮像部112bのカメラレンズと、音声入力部113bのマイクと、音声出力部115bのスピーカとを具備する。」 オ.「[0045]・・・(中略)・・・ 翻訳装置100の起動が完了すると、コミュニケーション種別特定部120が、画像表示部114a、114bのそれぞれに、コミュニケーション種別の候補を表示させる旨の指示を出力し、画像表示部114aと114bとは、それぞれ、コミュニケーション種別の候補を表示する(ステップS112)。」 カ.「[0048] 例えば、コミュニケーション種別特定部120は、画像表示部114aが言語選択画面を表示している状態で、操作入力部111aからタッチ位置を示す情報を取得すると、当該タッチ位置を示す情報に基づいて、言語選択画面に表示された吹き出しのうちいずれがタッチされたかを判定し、タッチされたと判定した吹き出しに示される言語を、入出力部110aのコミュニケーション種別として特定する。 同様に、コミュニケーション種別特定部120は、画像表示部114bが言語選択画面を表示している状態で、操作入力部111bからタッチ位置を示す情報を取得すると、当該タッチ位置を示す情報に基づいて、言語選択画面に表示された吹き出しのうちいずれがタッチされたかを判定し、タッチされたと判定した吹き出しに示される言語を、入出力部110bのコミュニケーション種別として特定する。」 キ.「[0049] ・・・(中略)・・・すなわち、コミュニケーション種別検出部130は、音声入力部113aと113bとのいずれがメッセージを取得したかを検出する。 [0050] そして、コミュニケーション種別検出部130は、メッセージを取得した入出力部110のコミュニケーション種別を検出して、翻訳元のコミュニケーション種別として、メッセージを取得した入出力部110のコミュニケーション種別と当該入出力部110の識別情報とを対応付けて翻訳部140に出力し、また、翻訳先のコミュニケーション種別として、他の入出力部110のコミュニケーション種別と当該入出力部110の識別情報とをコミュニケーション種別記憶部190から読み出して翻訳部140に出力する(ステップS122)。」 ク.「[0052] 次に、翻訳部140は、翻訳元のコミュニケーション種別から翻訳先へのコミュニケーション種別へのメッセージの翻訳を行い、翻訳されたメッセージを、翻訳先の入出力部110に出力する(ステップS123)。」 ケ.「[0053] 次に、翻訳先の入出力部110(画像表示部114)は、翻訳されたメッセージを、翻訳元の入出力部110(撮像部112)から出力された撮像画像に合成する(ステップS124)。 例えば、翻訳元の入出力部が入出力部110aであり、翻訳先の入出力部が入出力部110bである場合、入出力部110b(画像表示部114b)は、入出力部110a(撮像部112a)から出力された発話者の撮像画像に、翻訳されたメッセージ(翻訳された発話)をテキストにて合成する。 そして、翻訳先の入出力部110は、合成した画像を表示する(ステップS125)。」 コ.「[0062] なお、画像表示部114が、翻訳されたメッセージをテキストにて表示するのに加えて、あるいは代えて、音声出力部115が、翻訳されたメッセージを音声にて出力するようにしてもよい。」 したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「折り畳み可能に結合された2つの筐体を有し([0026])、 2つの筐体を180度よりもさらに開いた状態で外側に位置する2つの面の一方に、画像表示部114aの表示画面および操作入力部111aのタッチセンサとで構成されるタッチパネルと、音声入力部113aのマイクと、音声出力部115aのスピーカとを含んだ入出力部110aを有し、2つの面の他方に、画像表示部114bの表示画面および操作入力部111bのタッチセンサとで構成されるタッチパネルと、音声入力部113bのマイクと、音声出力部115bのスピーカとを含んだ入出力部110bを有し([0028])、 入出力部110aと110bとは、それぞれ、翻訳装置100を用いてメッセージのやり取りを行うユーザからのメッセージの入力を受け付け、また、ユーザに対してメッセージを出力し([0013])、 コミュニケーション種別特定部120は、翻訳装置の起動が完了すると、言語選択画面を画像表示部114aと114bとに出力し、画像表示部114aが言語選択画面を表示している状態で操作入力部111aからタッチ位置を示す情報を取得すると、タッチされた言語を入出力部110aのコミュニケーション種別として特定し、また、画像表示部114bが言語選択画面を表示している状態で操作入力部111bからタッチ位置を示す情報を取得すると、タッチされた言語を入出力部110bのコミュニケーション種別として特定し([0045]-[0048])、 コミュニケーション種別検出部130は、音声入力部113aと113bとのいずれがメッセージを取得したかを検出し、メッセージを取得した入出力部110のコミュニケーション種別を翻訳元のコミュニケーション種別として翻訳部140に出力し、また、他の入出力部110のコミュニケーション種別を翻訳先のコミュニケーション種別として翻訳部140に出力し([0049]-[0050])、 翻訳部140は、翻訳元のコミュニケーション種別から翻訳先へのコミュニケーション種別へのメッセージの翻訳を行い、翻訳されたメッセージを、翻訳先の入出力部110に出力し([0052])、 翻訳先の入出力部110は、画像表示部114に翻訳されたメッセージをテキストにて表示し([0053])、 当該テキストの表示に加えて、音声出力部115が、翻訳されたメッセージを音声にて出力するようにしてもよい([0062])、 翻訳装置100([0012])。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-73514号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、複数の利用者が、各々の所有する通信端末器を用いて、インターネットなどの通信ネットワークを介して、仲介管理者が運用する仲介サーバにアクセスし、その仲介サーバの提供する情報交換画面上でチャットをすることによって、情報交換をする方法に関する。」 イ.「【0018】このような情報交換画面は、図2に示すような構成をしており、通信端末器2に予め記憶させた専用のソフト(通信ネットワークNを介して仲介サーバ1からダウンロードできるようにしてもよい。)の機能によって、その表示画面20に表示されており、それぞれの通信端末器2(#1?#4)で、それぞれの対応する言語、例えば、日本側の通信端末器2(#1)ならば、日本語表示画面20Aで文章データを入力する。すると、入力した文章データが番号が付記されて表示され、その文章データを翻訳ソフト10によって自動翻訳したものが、日本語の文章に対応して、それぞれ英語、中国語、韓国語として、英語表示画面20B、中国語表示画面20C、韓国語表示画面20Dに番号が付記されて表示される。なお、通信端末器(#2?#4)において、それぞれの画面20B?20Dで文章データを入力したときにも、その文章データは入力した画面20B?20Dに表示され、翻訳ソフト10によって自動翻訳したものが、他の画面20A?20Dに番号が付記されて表示される。」 ウ.「【0020】表示画面20には、このような情報交換画面とともに、図3に示すような主言語切換ボタン22を表示してもよい。この主言語切換ボタン22を操作して、利用者の主言語を切換することができ、例えば、利用者Aが日本語を選択すれば、日本語表示画面20Aの「A」に対応する文章データが、例えば赤色に変化する。このとき、他の文章データの色は変化しない。」 エ.「【0029】請求項3に記載の通信ネットワークを利用した商取引方法では、利用者が、情報交換画面上で文章データを記入する毎に、主言語切換ボタンの操作によって選択された主言語の内容が、他の言語の内容と区別されて表示されるので、利用者は、自分が入力した文章データの内容を、母国語で容易に確認することができる。」 したがって、上記引用文献2には次の事項が記載されている。 <引用文献2の記載事項> 「複数の利用者が、各々の所有する通信端末器を用いて、通信ネットワークを介して仲介サーバにアクセスし、その仲介サーバの提供する情報交換画面上でチャットをすることによって、情報交換をする方法であって(【0001】)、 情報交換画面は、通信端末器2に予め記憶させた専用のソフトの機能によって、その表示画面20に表示され(【0018】)、 それぞれの通信端末器2(#1?#4)で、それぞれの対応する言語、例えば、日本側の通信端末器2(#1)ならば、日本語表示画面20Aで文章データを入力し、入力した文章データは番号が付記されて表示され、その文章データを翻訳ソフト10によって自動翻訳したものが、日本語の文章に対応して、それぞれ英語、中国語、韓国語として、英語表示画面20B、中国語表示画面20C、韓国語表示画面20Dに番号が付記されて表示され(【0018】)、 表示画面20に、情報交換画面とともに、主言語切換ボタン22を表示し、この主言語切換ボタン22を操作して利用者の主言語を切り換え、例えば、利用者Aが日本語を選択すれば、日本語表示画面20Aの利用者Aに対応する文章データが赤色に変化し(【0020】)、これにより、利用者は、自分が入力した文章データの内容を、母国語で容易に確認することができる(【0029】)、方法。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平6-119372号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、サービス機関の窓口のように、相互に言語を異にする不特定多数の当事者間の意志疎通を、相互に得意とする言語を用いて、簡単な操作により行える電子翻訳機を提供することを目的としている。」 イ.「【0007】 【実施例】図1は、本発明の電子翻訳機の第1実施例を示すブロック図である。図1において、1は第1装置、2は第2装置のブロックを示す。第1装置と第2装置は、近接して設置してもよいし、相互に離れた場所に設置することも可能で、接続ケーブル18及び19により接続する。」 ウ.「【0008】・・・(中略)・・・第1装置1は、サービス機関等において、係員が顧客に対してサービスを提供するための電子翻訳機本体として使用する。」 エ.「【0009】第2装置2のブロックにおいて、16は第2表示装置、17は第2入力装置である。第2表示装置及び第2入力装置は、顧客が使用するための装置であり、」 オ.「【0021】[初期画面と言語の選択]実施例の初期画面の例としては、図2に示すように、顧客が常用する言語の選択を促す文章を複数の言語21により表示する。その下側には選択可能な複数の言語を表形式22で表示する。上述したように、各言語は、枠で囲み、指でタッチして選択する際の便宜を図っている。この画面を見て顧客が操作を理解し、特定の言語、例えば英語23の部分をタッチすると、上記の動作に従って、以後の会話文章を第1の言語、例えば日本語に対して、第2の言語を英語と決定し、複数の対話文章の中から日英の文章を選択して表示するように制御する。」 カ.「【0024】[用件の選択機能]顧客が使用する言語を選択すると、次の段階として、対話の目的である用件を選択するため、会話文記憶部132から、用件を特定するための質問文と複数の用件名を読み出して、図3に例示するように、上方に質問文31、その下方に複数の用件名32をマトリックス状に、すなわち表の形式で表示する。図3は第2言語(この例では英語)で表示されており、顧客は、その中から適切な用件名を選択してタッチする。」 キ.「【0026】選択した用件名の部分をタッチパネル上でタッチすると、そのアドレスは中央処理装置に信号として送信され、中央処理装置はそのアドレスを受けて対応する用件名を認識する。また、選択した用件名は、第1表示装置に表示される。図4は、図3に対応する第1言語(この例では日本語)による同一内容の文及び語の表示である。この第1表示装置において、顧客が選択した用件名に対応する部分が、ブリンク、反転表示、網掛け等の識別手段により表示され、係員が顧客の用件を認識することができる。」 ク.「【0046】711のブロックでは、前述の図2について説明したように、使用言語の選択画面を第2表示装置に表示するとともに、第2装置を示し、721のブロックにおいて患者側に理解できる言語の選択を促す。」 したがって、上記引用文献3には次の事項が記載されている。 <引用文献3の記載事項> 「第1表示装置14と第1入力装置15と会話文記憶部132とを有し、サービス機関において係員が顧客に対してサービスを提供するための電子翻訳機本体として使用する第1装置1と(【0008】、図1)、 第1装置に接続され(【0007】)、第2表示装置16と第2入力装置17とを有し、顧客が使用するための第2装置2と(【0009】)、 を備え、 第2装置2の初期画面に、顧客が常用する言語の選択を促す文章を複数の言語21により表示し、その下側に選択可能な複数の言語を表示し(【0021】【0046】)、この画面を見て顧客が、特定の言語、例えば英語23の部分をタッチすると、以後の会話文章を第1の言語、例えば日本語に対して、第2の言語を英語と決定し(【0021】)、 顧客が使用する言語を選択すると、会話文記憶部132から、用件を特定するための質問文と複数の用件名を読み出し、第2言語で第2装置2に表示し、顧客は、その中から適切な用件名を選択してタッチし(【0024】)、 第1装置の第1表示装置は、第2装置の表示に対応する第1言語による同一内容の文及び語を表示し、顧客が選択した用件名に対応する部分を、ブリンク、反転表示、網掛け等の識別手段により表示し、係員が顧客の用件を認識することができる(【0026】)、 電子翻訳機(【0003】)。」 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2012-123441号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「【0012】 以下、本発明の多言語選択装置を適用した一実施形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態のナビゲーション装置の構成を示す図である。このナビゲーション装置は、例えば車両に搭載されており、車両の移動に伴って自車位置周辺の地図を表示したり、車両の進行方向や自車位置周辺の交差点等に関する案内音声の出力を行う。 【0013】 図1に示すように、本実施形態のナビゲーション装置は、ナビゲーションコントローラ1、地図DB(データベース)2、GPS受信機3、自律航法センサ4、操作部5、オーディオ処理部6、スピーカ7、表示処理部8、表示装置9を含んで構成されている。」 イ.「【0015】 地図DB2は、道路形状の特定や経路探索、経路誘導、交差点案内等に必要な地図データ200を格納する。・・・(中略)・・・ 【0016】 この地図データ200には、複数の言語のそれぞれに対応した地名、道路名、施設名等の表示に必要な表示データである言語毎表示データ202と、複数の言語のそれぞれに対応した地名、道路名、施設名等を含む音声案内に必要な音声データである言語毎音声データ204とが含まれている。なお、これらの言語毎表示データ202と言語毎音声データ204は、地図データ200とは別に格納したり、地図DB2以外の記憶装置に格納するようにしてもよい。また、地図DB2には、選択可能な使用言語を示す使用言語データ206が格納されている。」 ウ.「【0035】 図2に示すように、使用言語データ206には、選択可能な複数の言語01?32(ヨーロッパの場合を考えると、英語、フランス語、イタリア語等がこれらの各言語に対応する)を示す名称あるいは各言語を特定するために用いられる識別番号が所定の順番で格納されている。また、この使用言語データ206には、選択頻度集計部38によって集計され、保持されている各言語の選択頻度(選択回数)が対応づけられている。」 エ.「【0036】 図3および図4は、図2に示す初期状態Aに対応して作成される言語選択画面の具体例を示す図である。図2に示す例では、最上位に位置する言語01から最下位に位置する言語32までが4つの言語毎に分けられて8ページの言語選択画面が作成される。 【0037】 例えば、車両が走行中に国境を越えた場合に使用言語をそれまで使用していた母国語から他の言語に切り替える場合を考える。この場合には、利用者は操作部5を操作して、言語選択画面の表示を指示する。例えば、画面内に言語切替を指示するためのアイコン等が表示されており、利用者はこのアイコンを指等で指し示すことにより、選択画面作成部30による言語選択画面の作成や選択画面切替部32による言語選択画面の切替動作が開始される。」 オ.「【0038】 ・・・(中略)・・・使用したい言語が含まれる言語選択画面が表示された状態でこの使用したい言語が表示された領域を利用者の指等で指し示すと、言語選択部36は、この指し示された言語をこれ以後の使用言語として設定する。このようにして使用言語が切り替えられると、その旨の通知が地図描画部12および音声データ作成部40に送られ、地図描画データおよび音声データの作成に用いる言語が切り替えられる。また、使用言語を切り替える毎に、選択頻度集計部38は、その言語の選択頻度(選択回数)の値を1増加させる。」 カ.「【0039】 このようにして何度か使用言語が変更された結果、図2のBで示された頻度となる。 ・・・(中略)・・・ 【0040】 図5および図6は、図2に示す更新後の状態Bに対応して作成される言語選択画面の具体例を示す図である。まず1ページ目の言語選択画面(1/8)(図5(A)が表示される。この1ページ目の言語選択画面(1/8)には、その時点で選択頻度が最も高い第二言語としての「言語25」が最上位に配置され、それ以外は初期状態Aの場合と同様に所定の順番で3つの言語(言語01から言語03まで)が含まれる。すなわち、最も選択頻度が高い言語のみが先頭ページの最上位に位置が変更され、それ以外の言語については1つずつ表示位置が繰り下がった(各ページにおいて最下位に配置された言語は、次ページの最上位に位置が変更される)8ページ分の言語選択画面が作成される。切替アイコン50、51によって言語選択画面の切り替えを行う点については、図3および図4に示した表示例と同様である。」 したがって、上記引用文献4には次の事項が記載されている。 <引用文献4の記載事項> 「車両に搭載され、自車位置周辺の地図を表示したり、案内音声の出力を行うナビゲーション装置であって(【0012】)、 地図DB2は地図データ200を格納し(【0015】)、この地図データ200には、複数の言語のそれぞれに対応した言語毎表示データ202と、複数の言語のそれぞれに対応した言語毎音声データ204とが含まれ(【0016】)、 また、地図DB2には、選択可能な使用言語を示す使用言語データ206が格納され(【0016】)、この使用言語データ206には、選択可能な複数の言語01?32を示す名称あるいは各言語を特定するために用いられる識別番号が所定の順番で格納され、各言語の選択頻度(選択回数)が対応づけられ(【0035】)、 利用者が操作部5を操作して言語選択画面の表示を指示すると、言語選択画面の作成が開始され(【0037】)、初期状態Aに対応して、最上位に位置する言語01から最下位に位置する言語32までが4つの言語毎に分けられて8ページの言語選択画面が作成され(【0036】)、 言語選択画面において、使用したい言語が表示された領域を利用者の指等で指し示すと、当該言語をこれ以後の使用言語として設定し、地図描画データおよび音声データの作成に用いる言語を当該言語に切り替え、その言語の選択頻度(選択回数)の値を1増加させ(【0038】)、 選択頻度の更新後の状態Bに対応して、最も選択頻度が高い言語のみが先頭ページの最上位に位置が変更され、それ以外の言語については1つずつ表示位置が繰り下がった8ページ分の言語選択画面が作成される(「【0039】【0040】)、 ナビゲーション装置。」 5.引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平7-44564号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0004】 【課題を解決するための手段】簡単に述べると、現に好ましいとする本発明の一実施例によれば、複数の原始言語から選択した1言語による文書についてユーザ指定の目標言語による可視的な翻訳が得られる統合文書翻訳機には、前記原始言語及び前記目標言語を選択するユーザ活性化可能な制御手段と、文書を走査し、前記原始言語による可視情報を、その可視情報を表わす電気信号に変換するスキャナ手段と、前記スキャナ手段に接続され、前記電気信号を前記原始言語による言語信号に変換する認識手段と、前記認識手段に接続され、前記原始言語による言語シンボルを前記目標言語による言語シンボルに変換する翻訳手段と、前記翻訳手段に接続され、前記目標言語による前記文書の可視的表現を表示するディスプレイ手段とが含まれる。」 イ.「【0005】 ・・・(中略)・・・ユーザはディスプレイのスクリーン上に現われる情報によりその者の母国語、又はその原本を翻訳したい他の言語を入力するように督促される。好ましくは、プロンプトそれ自体は、統合文書翻訳機が翻訳可能な一組の目標言語を表わす複数の言語により表わされている。特に、プロンプトの形式は、“Do you speak English ?" (英語が話せますか)及び他の目標言語による等価なすステートメント、例えば“Sprechen Sie Deutsch ?" (ドイツ語が話せますか)(図4を参照)である。ユーザは所望する目標言語によるフレーズに単にタッチするだけであり、統合文書翻訳機が提供する以下の情報は、ユーザが選択した言語により提供される。」 ウ.「【0010】・・・(中略)・・・ユーザには、図4に示すように、一連のメニューが提示される。それぞれの場合において、メニュー項目に隣接したスクリーンにタッチすることにより、ユーザが所望のメニュー項目を選択する。第1のスクリーン90は、ユーザに目標言語、即ち文書の翻訳先の言語を確認するために質問をする。このメニュー上の項目はそれぞれ“Do you speaklanguage ?" (あなたは言語を話しますか?)の形式であり、ここでは各質問が適当な目標言語により提示される。ユーザは、所望の目標言語をプロンプト又は関連するグラフ項目にタッチすることにより入力し、第2のメニュー及び更に先の全てのメニューをその言語により提示する。」 したがって、上記引用文献5には次の事項が記載されている。 <引用文献5の記載事項> 「複数の原始言語から選択した1言語による文書についてユーザ指定の目標言語による可視的な翻訳が得られる統合文書翻訳機であって(【0004】)、 前記原始言語及び前記目標言語を選択するユーザ活性化可能な制御手段と(【0004】)、 文書を走査し、前記原始言語による可視情報を、その可視情報を表わす電気信号に変換するスキャナ手段と(【0004】)、 前記スキャナ手段に接続され、前記電気信号を前記原始言語による言語信号に変換する認識手段と(【0004】)、 前記認識手段に接続され、前記原始言語による言語シンボルを前記目標言語による言語シンボルに変換する翻訳手段と(【0004】)、 前記翻訳手段に接続され、前記目標言語による前記文書の可視的表現を表示するディスプレイ手段とを含み(【0004】)、 ディスプレイ手段には、目標言語すなわち文書の翻訳先の言語を確認するための質問が表示され(【0010】)、当該質問の形式は、“Do you speak English ?” “Sprechen Sie Deutsch ?" のような、目標言語による等価なステートメントであり(【0005】)、統合文書翻訳機が翻訳可能な一組の目標言語で表わされ(【0005】)、ユーザは所望の目標言語を、質問にタッチすることにより入力する(【0010】)、 統合文書翻訳機。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ・引用発明の音声入力部113a、113bは、「メッセージのやり取りを行うユーザからのメッセージの入力を受け付け」るものであり、本願発明1の「ユーザ及び対話者の音声を入力するための入力部」に相当する。 ・引用発明の翻訳部は、音声入力部113a、113bから取得したメッセージについて「翻訳元のコミュニケーション種別から翻訳先へのコミュニケーション種別へのメッセージの翻訳」を行うものである。 したがって、引用発明の当該翻訳部と、本願発明1の「前記ユーザによる1つの入力音声に対して複数の異なる言語による対訳を取得する翻訳部」は、「前記ユーザによる入力音声に対して対訳を取得する翻訳部」の点で共通する。 ・引用発明の画像表示部114は、翻訳されたメッセージをテキストにて表示する。また、引用発明は、当該テキストの表示に加えて、音声出力部115が、翻訳されたメッセージを音声にて出力してもよい。 したがって、引用発明の画像表示部及び音声出力部と、本願発明1の「前記複数の異なる言語による対訳を、テキスト、又は、テキスト及び音声で出力する出力部」は、「前記対訳を、テキスト、又は、テキスト及び音声で出力する出力部」の点で共通する。 ・引用発明のコミュニケーション種別特定部は、言語選択画面を画像表示部114aと114bとに出力し、画像表示部114aが言語選択画面を表示している状態で操作入力部111aからタッチ位置を示す情報を取得すると、タッチされた言語を入出力部110aのコミュニケーション種別として特定し、また、画像表示部114bが言語選択画面を表示している状態で操作入力部111bからタッチ位置を示す情報を取得すると、タッチされた言語を入出力部110bのコミュニケーション種別として特定する。これは、ユーザとその対話者の使用言語を選択することにほかならない。 したがって、引用発明のコミュニケーション種別特定部と、本願発明1の「前記複数の異なる言語による対訳のテキストが出力された後に、前記対話者の使用言語を選定する言語選定部」は、「前記対話者の使用言語を選定する言語選定部」の点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「ユーザ及び対話者の音声を入力するための入力部と、 前記ユーザによる入力音声に対して対訳を取得する翻訳部と、 前記対訳を、テキスト、又は、テキスト及び音声で出力する出力部と、 前記対話者の使用言語を選定する言語選定部と、 を備えた、音声翻訳装置。」 <相違点1> 翻訳部が、本願発明1では「1つの入力音声に対して複数の異なる言語による対訳を取得する」ものであるのに対し、引用発明では、1つの入力音声に対して、言語選択画面において選択された翻訳先の言語による対訳を取得するのみで、「複数の異なる言語による対訳」を取得するものではない点。 <相違点2> 言語選定部による選定のタイミングが、本願発明1では「前記複数の異なる言語による対訳のテキストが出力された後」であるのに対し、引用発明では、翻訳装置の起動が完了したときである点。 <相違点3> 出力部が、本願発明1では「前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示」するものであるのに対し、引用発明では、言語選択画面を表示するものの、この画面は上記「前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキスト」を表示するものでも、上記「該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタン」を表示するものでもない点。 <相違点4> 言語選定部が、本願発明1では「前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」ものであるの対し、引用発明では、対話者側の言語選択画面において、タッチされた言語を対話者の使用言語として選択する点。 (2) 相違点についての判断 上記相違点3、4について検討すると、相違点3、4に係る本願発明1の「前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」という構成は、上記引用文献1-5には記載されておらず周知技術であるともいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-5について 本願発明2-5も、本願発明1の「前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6について 本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明7について 本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 平成28年12月2日の手続補正により補正された請求項1-7は、それぞれ「前記出力部は、前記入力音声が質問事項であるときに、前記複数の異なる言語による該質問事項の対訳のテキストを画面に一時に表示し、かつ、該それぞれの対訳のテキストについて、該それぞれの対訳の言語による該質問事項への回答を示すボタンを表示し、 前記言語選定部は、前記ボタンの何れかがタップされた場合に、該タップされたボタンの回答に対応する言語を、前記対話者の使用言語として選定する」という事項、当該事項に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-7は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項4記載の「前記表示部は、前記所定数の言語による対訳を前記選定回数又は前記選定頻度の順に出力する」において、「表示部」の前に「前記」が記載されているものの、「表示部」は前記されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年5月8日の手続補正において、「前記表示部」が「前記出力部」に補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-7は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-27 |
出願番号 | 特願2016-67703(P2016-67703) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長 由紀子 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
石川 正二 金子 幸一 |
発明の名称 | 音声翻訳装置、音声翻訳方法、及び音声翻訳プログラム |
代理人 | 伊藤 健太郎 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |