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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341553
審判番号 不服2017-14919  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-05 
確定日 2018-07-17 
事件の表示 特願2016-248032「電子機器、制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018- 18488、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月27日に出願した特願2016-147891号の一部を平成28年12月21日に新たな特許出願としたものであって、 同日付けで手続補正がされ、平成29年2月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月12日に意見書が提出されたが、同年7月6日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年10月5日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に手続補正されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(平成29年7月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.池田彩子、LeapMotionを用いた料理レシピ提示支援システムの開発と評価、第78回(平成28年)全国大会講演論文集(4)インタフェース コンピュータと人間社会、日本、一般社団法人 情報処理学会、2016年3月10日、pp.4-251--4-252
2.株式会社リブロワークス、iPadアプリ事典300、日本、株式会社インプレスジャパン、2012年5月1日、第1版、pp.236-239
3.増田由紀、やさしく学べるWindows8.1 スクール標準教科書、日本、日経BP社、2013年11月25日、第1版、pp.88-90
4.米国特許出願公開第2010/0294938号明細書

第3 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年10月5日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
近接センサと、
料理のレシピが表示されているときに、前記近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じるコントローラと、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記ジェスチャは、左右へのジェスチャである
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
近接センサと、コントローラとを備える電子機器において、
料理のレシピが表示されているときに、前記近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる
制御方法。
【請求項4】
近接センサと、コントローラとを備える電子機器において、
料理のレシピが表示されているときに、前記近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる
プログラム。」

第4 引用文献・引用発明等
(1)原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審により付与した。以下、同様)

ア)「2.関連研究
レシピサイトには、クックパッド、シェフごはん、オレンジページnetなどがある。ほとんどのサイトは文章と画像だけから成るが、クックパッドは動画による説明もある。これらを利用すれば、スマートフォンで参照しながら料理が可能である。しかし、料理中には手が汚れることが多く、スマートフォンの操作がしにくいという問題がある。また、動画であっても、全工程になかったり、短く編集されていたり、逆に全工程が一つにまとめられている場合がある。工程に動画がないと、その工程が分かりづらかったり、まとめられている場合には、一時停止、巻き戻し、早送りなどの操作が増えるという問題がある。

3.料理レシピ提示支援システム Cooking
本研究ではこれらの問題に対して、画面や本体に触れることなく操作でき、レシピのほぼ全工程に近い動画をもつ料理レシピ提示支援システムCookingを開発した。
Cookingは、ジェスチャでレシピの参照操作を可能にするインタラクション処理部とレシピ動画を管理するコンテンツからなる。ジェスチャ認識はLeap Motionによる。
システムを起動すると、スタート画面(図3.1)が表示され、料理の名前や材料、完成写真、左下に操作ガイドが表示される。スタート画面で上にスワイプすると次の工程1に遷移し、下にスワイプすると、スタート画面へ戻る(図3.2)。工程1で左にスワイプすると工程1の動画に移動し、動画が視聴でき、右にスワイプすると工程1に戻る。」

イ)図1.1
図1.1からは、 Cooking使用時の様子として、スマートフォン等のタブレット型機器を用いていることを読み取ることができる。


上記記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「画面や本体に触れることなく操作でき、レシピのほぼ全工程に近い動画をもつ料理レシピ提示支援システムCookingであって、
システムを起動すると、スタート画面が表示され、料理の名前や材料、完成写真、左下に操作ガイドが表示され、
スタート画面で上にスワイプすると次の工程1に遷移し、下にスワイプすると、スタート画面へ戻り、
工程1で左にスワイプすると工程1の動画に移動し、動画が視聴でき、右にスワイプすると工程1に戻る、
スマートホン等のタブレット型機器を用いている、
料理レシピ提示支援システムCooking。」

(2)原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「また、キッチンタイマー機能も備えており、レシピを見ながら時間を計ることができます。タイマーの動作中はおなじみのメロディーが再生され、料理の気分が盛り上がること間違いありません。
「声」操作できるレシピ集
手が水や油でぬれてしまうことを気にしていたら、料理はできません。しかし、水や油が付いた手でiPadの画面を操作するのには抵抗がある人も多いはず。食品会社のネスレが提供する「ネスレレシピ for iPad」は、そんな悩みを画期的な方法で解決したレシピ集です。
その秘密は「声」。音声認識機能を備えており、「上」「下」「右」「左」と声をかけるだけで画面がスクロールするので、ぬれた手でiPadを触らずにレシピが見られます。」

上記記載によれば、引用文献2には、「音声認識機能により画面をスクロールでき、タイマー機能を備えることで、レシピを見ながら時間を計ることができる」という技術的事項が記載されているといえる。

(3)原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「このレッスンではタイマーとレシピのアプリを2つ開き、タイマーを画面の左半分に、レシピを画面の右半分に並べてみましょう。
1(当審にて丸付き1は1と表記する。以下同様)スタート画面左下の↓をクリックします。[タッチ操作の場合]画面全体を上にドラッグします。
2[アラーム]をクリック/タップします。
3[タイマー]をクリック/タップします。
4画面の上端にマウスポインターを合わせ、手の形になったらまず画面の下にドラッグし、次に左にドラッグします
[タッチ操作の場合]画面上端から下にドラッグし、次に左にドラッグします。
5画面の左側にタイマーの画面が表示されます。
6画面の右側でクリック/タップします。
7スタート画面に戻ります。スタート画面の[フード&レシピ]をクリック/タップします。
8タイマーと[フード&レシピ]の画面が並んで表示されます。
9タイマーの●をドラッグすると時間が決められます。
10→をクリック/タップすると時間が計れます。」

上記記載によれば、引用文献3には、「画面の操作により、タイマーとレシピのアプリを2つ開き、タイマーを画面の左半分に、レシピを画面の右半分に並べて表示する」という技術的事項が記載されているといえる。

(4)原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0066] Embodiments of the present invention allow for a mobile device, with an appropriate sensing assembly, to achieve beneficial manners of operation based upon the information obtained regarding the presence and location of external object(s). For example, in some mobile devices such as cellular telephones, the presence and location of a human user's phone is of interest and can be used to govern or influence one or more operations of the telephones. To begin, the use of a sensing assembly such as those described above can allow a mobile device such as a cellular telephone to detect whether a human user's hand or ear are proximate a right side of a phone or a left side of a phone, and thereby allow for according adjustments to phone operation. Further for example, the volume of a phone speaker can be automatically adjusted based upon the sensed position of a human user's head. Sensing assemblies such as those described above also can enable tracking without blockage by placing/tracking a hand above the phone offset to the left or right side of the phone using the same sensing assembly.
[0067] Also for example, through the use of a sensing assembly such as one or more of those discussed above, it is possible to enable a mobile device to sense and recognize hand gestures that signify user selections or commands. Further for example in this regard, sensed movement of a finger of a human user above the front surface of a mobile device can signify a command by the human user that an image or content displayed on the mobile device be frozen (e.g., to facilitate sending or sharing of the image/content), changed, free/selected (e.g., that a page of information be turned so that a different page of information is displayed), shared, etc., or that a cursor displayed on a screen be moved (e.g., a command such as that often provided by a "mouse"), or that a zoom level or pan setting regarding an image (e.g., a map) be modified. In this manner, such infrared gesturing can serve as a substitute for a touchscreen, where a user need not actually touch the surface of the mobile device to execute a command (albeit the system can still be implemented in a manner that also allows for commands to be recognized when touching does occur). By eliminating the need to touch a screen, disadvantages potentially associated with touching (e.g., fingerprints and other smudging of a video display screen or germ transmission) can be reduced.」
(当審訳)
([0066]本発明の実施形態は、モバイルデバイスを可能にするために、適切な感知アセンブリを備えた、外部物体(複数可)の存在および位置に関して得られた情報に基づいて操作の有益な方法を実現する。例えば、セルラー電話のようないくつかのモバイルデバイスでは、ユーザの電話の存在及び位置は、重要であり、電話の1つまたは複数の動作を制御又は影響を与えるために使用することができる。まず、上述したような検出アセンブリを使用することにより、携帯電話などのモバイル機器は、ユーザの手又は耳が電話または電話の左側の右端に近接しているか検出することを可能にし、それによって、電話機操作に応じて調整可能にすることができる。例えば、電話のスピーカのボリュームは、ユーザの頭の検出された位置に基づいて自動的に調整することができる。上述したようなセンサ組立体は、感知アセンブリを使用して電話の左側または右側にオフセット上に手を置く追跡することによって阻止されることなく追跡を可能にすることができる。
[0067]また、例えば、上述したもののような、1つ以上の感知アセンブリを使用して、モバイルデバイスは、ユーザセレクションまたはコマンドを表わすことを手のジェスチャーを感知して認識できるようにすることが可能である。例えば、この点に関して、移動デバイスの前面上にユーザの指の感知された移動は移動装置に表示される画像、またはコンテンツが凍結されて(例えば、画像/コンテンツの送付や共有を容易にするために)、変更、自由/選択された(例えば、ページの情報は、情報の異なるページが表示されているようにすることで)、共有すること等が、画面上に表示されるカーソルを移動させること(例えば、”mouse”によって提供されることが多いことなどのコマンド)、または画像(例えば、マップ)について、ズームレベル、パン設定を変更すると、ユーザによって命令を出すことができる。このように、赤外線によるジェスチャは、タッチスクリーンの代替物として機能することができ、ユーザは、実際に移動装置の表面に触れて指令(にもかかわらず、システムは、タッチが発生した場合には、認識すべきコマンドを可能にするように実施することができる)を実行する必要がない。画面に触れる必要性を排除することにより、タッチしている(例えば、ビデオ表示スクリーンまたは生殖の指紋及び他の汚れ)に関連した潜在的問題を低減することができる。)。)

上記記載によれば、引用文献4には、「赤外線を利用してジェスチャを検出できる感知アセンブリを備えたセルラー電話」という技術的事項が記載されているといえる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明は、「画面や本体に触れることなく操作でき」「スタート画面で上にスワイプすると次の工程1に遷移し、下にスワイプすると、スタート画面へ戻り、工程1で左にスワイプすると工程1の動画に移動し、動画が視聴でき、右にスワイプすると工程1に戻る、スマートホン等のタブレット型機器を用いている」「料理レシピ提示支援システム」であるので、何らかの「近接センサ」により画面や本体に触れることなく操作できる機能を実現していることは明らかである。そのため、引用発明と本願発明1は「近接センサ」を備えている点で共通する。

(イ)引用発明の「スタート画面が表示され、料理の名前や材料、完成写真、左下に操作ガイドが表示され」ている状態は、本願発明1の「料理のレシピが表示されているとき」に相当する。

(ウ)引用発明の「上にスワイプ」「下にスワイプ」「右にスワイプ」「左にスワイプ」することは、本願発明1の「ジェスチャ」に相当する。
そして、引用発明は「スタート画面で上にスワイプすると次の工程1に遷移し、下にスワイプすると、スタート画面へ戻り、工程1で左にスワイプすると工程1の動画に移動し、動画が視聴でき、右にスワイプすると工程1に戻る」ので、この動作はジェスチャが検出されると画面を表示しているといえるので、引用発明の「スタート画面で上にスワイプすると次の工程1に遷移し、下にスワイプすると、スタート画面へ戻り、工程1で左にスワイプすると工程1の動画に移動し、動画が視聴でき、右にスワイプすると工程1に戻る」点は、本願発明1と「近接センサによってジェスチャが検出されると」「画面を表示」する点で共通する。

(エ)引用発明は「スマートホン等のタブレット型機器」から成っているので、画面を表示するためのコントローラを有していることは明らかである。
そのため、引用発明の「スマートホン等のタブレット型機器を用いている、料理レシピ提示支援システムCooking」と本願発明1の「電子機器」は、共に「電子機器」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「近接センサと、
料理のレシピが表示されているときに、前記近接センサによってジェスチャが検出されると画面を表示するコントローラと、を備える電子機器。」

(相違点)
コントローラが、本願発明1では、「料理のレシピが表示されているときに、近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる」ものであるのに対し、引用発明では、「近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる」とは特定されていない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記の引用文献2には、「「音声認識機能により画面をスクロールでき、タイマー機能を備えることで、レシピを見ながら時間を計ることができる」という技術的事項が記載されているものの、上記相違点に係る本願発明1の構成であ「近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる」ことは記載されておらず、示唆されてもいない。また、上記の引用文献3には、「画面の操作により、タイマーとレシピのアプリを2つ開き、タイマーを画面の左半分に、レシピを画面の右半分に並べて表示する」という技術的事項が、上記の引用文献4には、「赤外線を利用してジェスチャを検出できる感知アセンブリを備えたセルラー電話」という技術的事項が記載されているものの、上記相違点に係る本願発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。
そして、上記相違点に係る本願発明1の構成が、本願出願日前に周知技術であったともいえないので、当業者といえども引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項から、上記相違点に係る本願発明1の「近接センサによってジェスチャが検出されるとタイマーの設定画面を表示し、前記タイマーの設定画面が表示されている状態で前記近接センサによってジェスチャが検出されると前記タイマーの設定画面を閉じる」という構成を容易に想到することはできない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、上記相違点に係る本願発明1の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3,4について
本願発明3は、本願発明1を方法の発明として特定したものであり、本願発明4は、本願発明1をプログラムの発明として特定したものであり、また、上記相違点に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2016-248032(P2016-248032)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
安久 司郎
発明の名称 電子機器、制御方法及びプログラム  
代理人 杉村 憲司  
代理人 鈴木 俊樹  
代理人 太田 昌宏  

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