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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341670
審判番号 不服2017-12108  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-14 
確定日 2018-07-10 
事件の表示 特願2016- 23020「役割を用いた画像へのアクセスの管理」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-149129、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年2月9日(パリ条約による優先権主張2015年2月11日,米国)の出願であって,平成28年11月30日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年1月16日に手続補正がなされ,同年7月5日付けで拒絶査定(謄本送達日同年7月11日)がなされ,これに対して同年8月14日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年9月7日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,平成30年3月22日付けで当審により拒絶の理由が通知され,同年5月21日に手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年7月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について
・請求項 1-20
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.特開2002-140685号公報
2.特開2006-149659号公報
3.米国特許出願公開第2007/0118525号明細書(周知技術を示す文献)
4.特開2010-074290号公報(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2013/123086号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 本願発明

本願請求項1乃至20に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明20」という。)は,平成30年5月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至20に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
ネットワーク装置であって、
1又は複数のプロセッサと、
1又は複数のメモリと、
画像管理アプリケーションと、
を有し、前記画像管理アプリケーションは、
1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを格納するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップに応答して、
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有するか否かに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有することに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されると決定することに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを前記第2のクライアント装置へ送信させるステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップと、
を実行するよう構成される、ネットワーク装置。
【請求項2】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、前記ユーザに割り当てられた複数の役割を決定するステップと、前記複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられた前記複数の役割に割り当てられていることを決定するステップと、を有する、請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記ユーザに割り当てられた前記複数の役割のうちの少なくとも1つの役割は、1又は複数の他のユーザに割り当てられる、請求項2に記載のネットワーク装置。
【請求項4】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、
前記ネットワーク装置の外部にあるサービスに、前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティについての要求を送信するステップと、
前記ネットワーク装置の外部にある前記サービスから、前記複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられることを指定する応答を受信するステップと、
を有する請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項5】
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティは、ビジネス組織の1又は複数の部門である、請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項6】
前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティは、前記第1のクライアント装置の構成、前記第1のクライアント装置のユーザ、又はエンコードされたデータをスキャニングすることにより指定される、請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項7】
前記画像管理アプリケーションは、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する要求を受信するステップと、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する前記要求に応答して、前記要求の中で指定された変更を表すために、前記1又は複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられることを指定するデータを更新するステップと、
を更に実行するよう構成される、請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項8】
プログラムであって、1又は複数のプロセッサにより処理されると、画像管理アプリケーションに、
1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行するネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを格納するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップに応答して、
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有するか否かに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有することに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されると決定することに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを前記第2のクライアント装置へ送信させるステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、前記ユーザに割り当てられた複数の役割を決定するステップと、前記複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられた前記複数の役割に割り当てられていることを決定するステップと、を有する、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記ユーザに割り当てられた前記複数の役割のうち少なくとも1つの役割は、1又は複数の他のユーザに割り当てられる、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、
前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあるサービスへ、前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティについての要求を送信するステップと、
前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にある前記サービスから、前記1又は複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられていることを指定する応答を受信するステップと、
を有する、請求項8に記載のプログラム。
【請求項12】
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティは、ビジネス組織の1又は複数の部門である、請求項8に記載のプログラム。
【請求項13】
前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティは、前記第1のクライアント装置の構成、前記第1のクライアント装置のユーザ、又はエンコードされたデータをスキャニングすること、のうちの1又は複数により指定される、請求項8に記載のプログラム。
【請求項14】
前記プログラムは、前記画像管理アプリケーションに、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する要求を受信するステップと、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する前記要求に応答して、前記要求の中で指定された変更を表すために、前記1又は複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられることを指定するデータを更新するステップと、
を更に実行させる請求項8に記載のプログラム。
【請求項15】
画像管理アプリケーションが、
1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行するネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ及びメタデータを受信するステップであって、前記画像の前記メタデータは、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する、ステップに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを格納するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップと、
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップに応答して、
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有するか否かに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有することに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されると決定することに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを前記第2のクライアント装置へ送信させるステップと、
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップと、
を有するコンピュータにより実施される方法。
【請求項16】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、前記ユーザに割り当てられた複数の役割を決定するステップと、前記複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられた前記複数の役割に割り当てられていることを決定するステップと、を有する、請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項17】
前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップは、
前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にあるサービスへ、前記ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティについての要求を送信するステップと、
前記画像管理アプリケーションが実行する前記ネットワーク装置の外部にある前記サービスから、前記複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられていることを指定する応答を受信するステップと、
を有する、請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項18】
前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティは、ビジネス組織の1又は複数の部門である、請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項19】
前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する前記複数の論理エンティティは、前記第1のクライアント装置の構成、前記第1のクライアント装置のユーザ、又はエンコードされたデータをスキャニングすることにより指定される、請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項20】
前記画像管理アプリケーションが、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する要求を受信するステップと、
前記ユーザに割り当てられた1又は複数の論理エンティティを変更する前記要求に応答して、前記要求の中で指定された変更を表すために、前記1又は複数の論理エンティティが前記ユーザに割り当てられることを指定するデータを更新するステップと、
を更に有する請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項
原審における平成28年11月30日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2002-140685号公報(平成14年5月17日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で説明のために付加。以下同様。)

A 「【0036】図1には、医用・診断画像ファイルを複数の端末間で共有するネットワーク・システムの構成例を模式的に示している。同ネットワーク・システム上では、複数のモダリティ装置50A,50B…において撮像された医用・診断画像を、複数のワークステーション10A,10B…によって取り扱うことができる。各モダリティ装置や、診断画像を電子的に取り扱うワークステーションの各々は、通常、ネットワーク・インターフェース・カード(NIC:図示しない)によってネットワークに接続される。」

B 「【0058】モダリティ装置を扱う技師は、放射線源から照射される放射線を利用して患者の患部又は全身を撮像し、その撮影画像を読取装置によって読み取り、デジタル形式の「生成済み診断画像」を得る。」

C 「【0067】医師は、例えば診断画像ビューワ10Aとして稼働するワークステーション上で、所定の患者の診断画像を取り込み、これを高解像度ディスプレイ上で画面表示して、読影すなわち診断を行う。読影の際、診断画像の画像処理パラメータの変更(例えば濃淡調整など)を行うこともある。医師による読影を経た診断画像のことを、「読影済み診断画像」とも呼ぶ。医師による診断内容や診断画像に対して施した画像処理パラメータは、重要なメディカル・レコードであり、読影済み診断画像とともに画像ファイル・サーバ10Cに保管される。」

D 「【0083】要するに、画像ファイル・サーバ10Cは、ユーザのアクセス権限と画像の属性に基づいて、セキュリティ維持とプライバシ保護を確保した診断画像ファイルの管理を実現することができる訳である。以下、画像ファイル・サーバ10Cによる診断画像ファイルの管理機能について説明する。
【0084】図4には、画像ファイル・サーバ10Cのハードウェア構成を模式的に示している。画像ファイル・サーバ10Cは、実際には、ワークステーション(WS)やパーソナル・コンピュータ(PC)と呼ばれる一般的な計算機システム上で所定のサーバ用アプリケーションを起動することによって実現される。計算機システムの一例は、米IBM社のPC/AT(Personal Computer/Advanced Technology)互換機又はその後継機である。以下、サーバ・システム10Cの各部について説明する。
【0085】システム10Cのメイン・コントローラであるCPU(Central Processing Unit)11は、オペレーティング・システム(OS)の制御下で、各種のアプリケーションを実行するようになっている。
【0086】図示の通り、CPU11は、バス17によって他の機器類(後述)と相互接続されている。バス17上の各機器にはそれぞれ固有のメモリ・アドレス又はI/Oアドレスが付与されており、CPU11はアドレス指定することによってバス接続された各機器へのアクセスが可能となっている。バス17は、アドレス・バス、データ・バス、コントロール・バスを含む共通信号伝送路であるが、その一例はPCI(Peripheral Component Interconnect)バスである。
【0087】RAM12は、CPU11において実行されるプログラム・コードを格納したり、実行中の作業データを一時保管するために使用される揮発性記憶装置である。また、ROM13は、プログラム・コードやデータを恒久的に格納するための不揮発性記憶装置であり、例えばBIOS(Basic Input/Output System:基本入出力システム)やPOST(Power On Self Test Program:自己診断プログラム)などが格納されている。」

E 「【0097】診断画像ファイルの格納先すなわち画像保存装置としての画像ファイル・サーバ10Cは、画像生成装置としての各モダリティ装置50…や、画像転送装置としての画像ビューワー10Aなどの外部装置とは、ネットワーク経由で相互接続されている。」

F 「【0112】画像ファイル・サーバ10Cは、各々の診断画像ファイルを、その画像属性とともに管理している。ここで言う画像属性とは、「生成済み」、「確認済み」、「読影済み」など、診断画像の状況を意味する。
【0113】また、画像ファイル・サーバ10Cは、診断画像ファイルへのアクセスを要求する各ユーザの種別すなわち職権レベルを取得して、そのアクセス権限に応じて要求された診断画像ファイルへのアクセス制御を行うようになっている。」

G 「【0118】画像ファイル・サーバ10Cは、診断画像ファイルに対するアクセス要求を受信すると(ステップS11)、アクセス要求された診断画像ファイルの画像属性を検査するとともに(ステップS12)、要求元のユーザの種別すなわち職権レベルを検査する(ステップS13)。
【0119】そして、要求元ユーザの職権レベルに対して与えられたアクセス権限が、要求する診断画像ファイルへのアクセスに適合するか否かを判断する(ステップS14)。
【0120】要求元ユーザが持つアクセス権限が、要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容する場合には、画像ファイル・サーバ10Cは、アクセス結果すなわち診断画像ファイルを要求元に返す(ステップS15)。この結果、要求元ユーザの端末画面上では、診断画像を表示することができる。
【0121】他方、要求元ユーザが持つアクセス権限が、要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容しない場合には、画像ファイル・サーバ10Cは、画像にアクセスできない旨を要求元に通知する(ステップS16)。この結果、要求元ユーザの端末画面上では、診断画像を表示することができない。」

2 引用発明

上記記載事項A乃至Gから,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「医用・診断画像ファイルを複数の端末間で共有するネットワーク・システムにおいて,複数のモダリティ装置,及び複数のワークステーションはネットワーク・インターフェース・カードによってネットワークに接続され,
前記モダリティ装置を扱う技師は,撮影画像を読取装置によって読み取り,デジタル形式の「生成済み診断画像」を得,
医師は,診断画像ビューワ10Aとして稼働するワークステーション上で,所定の患者の診断画像を取り込み,これを高解像度ディスプレイ上で画面表示して,読影すなわち診断を行って,読影を経た診断画像である「読影済み診断画像」を得,
画像ファイル・サーバ10Cは,ユーザのアクセス権限と画像の属性に基づいて,セキュリティ維持とプライバシ保護を確保した診断画像ファイルの管理を実現するものであり,
前記画像ファイル・サーバ10Cは,ワークステーション上で所定のサーバ用アプリケーションを起動することによって実現され,
前記画像ファイル・サーバ10Cを構成するワークステーションは,メイン・コントローラであるCPU11と,前記CPU11において実行されるプログラム・コードを格納したり,実行中の作業データを一時保管するRAM12とを有し,
診断画像ファイルの格納先すなわち画像保存装置としての前記画像ファイル・サーバ10Cは,画像生成装置としての各モダリティ装置や,画像転送装置としての画像ビューワー10Aなどの外部装置と,ネットワーク経由で相互接続されると共に,各々の診断画像ファイルを,その画像属性とともに管理しており,ここで言う画像属性とは,「生成済み」,「確認済み」,「読影済み」など,診断画像の状況を意味し,前記診断画像ファイルへのアクセスを要求する各ユーザの種別すなわち職権レベルを取得して,そのアクセス権限に応じて要求された診断画像ファイルへのアクセス制御を行い,
前記画像ファイル・サーバ10Cは,診断画像ファイルに対するアクセス要求を受信すると,アクセス要求された診断画像ファイルの画像属性を検査するとともに,要求元のユーザの種別すなわち職権レベルを検査し,要求元ユーザの職権レベルに対して与えられたアクセス権限が,要求する診断画像ファイルへのアクセスに適合するか否かを判断し,
要求元ユーザが持つアクセス権限が,要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容する場合には,画像ファイル・サーバ10Cは,アクセス結果すなわち診断画像ファイルを要求元に返し,この結果,要求元ユーザの端末画面上では,診断画像を表示することができ,
要求元ユーザが持つアクセス権限が,要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容しない場合には,前記画像ファイル・サーバ10Cは,画像にアクセスできない旨を要求元に通知し,この結果,要求元ユーザの端末画面上では,診断画像を表示することができない
ネットワーク・システム。」

3 引用例2に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2006-149659号公報(平成18年6月15日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H 「【0013】
医用画像診断装置1には、入力装置2および表示装置3が備えられ、医用データアクセス制御システム4が搭載される。医用画像診断装置1は、MRI(Magnetic resonance imaging)装置、X線CT(Conputed tomography)装置、超音波診断装置、PET(Positron emission conputed tomography)装置、X線診断装置を始めとする任意の装置とすることが可能である。さらに、これら医用画像診断装置1の他、HIS等の病院情報システム等の任意の医用システムから構成される医用機器に医用データアクセス制御システム4を搭載することもできる。また、医用データアクセス制御システム4は、このような任意の医用機器に搭載可能であるが明確に他のシステムと分離している必要はなく、逆に医用機器に搭載させずに独立したシステムとしてもよい。」

I 「【0024】
図3に示すように、操作者属性情報は、例えば、操作者が所属している診療科(内科、外科、小児科、眼科など)を示す所属情報、ある患者の治療に当たっている医療チーム(スタッフA、スタッフB、スタッフCなど)に操作者が所属していることを示す医療チーム情報、オーナーレベル(一般ユーザ、上級ユーザ、アドミニストレータ、救急オペレータ、サービスマンなど)を示すカテゴリ情報等の操作者の役割情報(ROLE/GROUP)が操作者の識別情報(ユーザA、ユーザBなど)と関連付けて構成される。ただし、これらの一部の情報を省略したり、他の任意の情報を付加して操作者属性情報を構成してもよい。
【0025】
また、データ属性情報記憶部13には、医用データ記憶部12に保存された各医用データの属性情報がデータ属性情報として保存されている。
【0026】
図4は、図1に示す医用画像診断装置1のデータ属性情報記憶部13に保存されるデータ属性情報の一例を示す図である。
【0027】
図4に示すように、データ属性情報は、例えば、医用データ記憶部12に保存された医用データの一例である医用画像データに対応する患者(患者A、患者B、患者Cなど)を示す患者情報、医用画像データに対応する検査(検査A、検査B、検査C、検査D、検査Eなど)を示す検査情報、これら検査を依頼した診療科(内科、外科、小児科など)を示す検査依頼科情報、これら検査を依頼した担当医(ユーザL、ユーザMなど)を示す担当医情報、医用画像データを撮影した撮影者(ユーザA、ユーザBなど)を示す撮影者情報、該当患者の治療に当たっている医療チーム(スタッフA、スタッフB、スタッフCなど)を示す医療チーム情報等の情報に、必要に応じて検査を実施した日付情報等の情報が付加された後、医用画像データの識別情報(画像A、画像Bなど)と関連付けて構成される。ただし、これらの一部の情報を省略したり、他の任意の情報を付加してデータ属性情報を構成してもよい。」

J 「【0032】
図5に示すように、アクセス制御情報は、例えば5つの情報の組合せで記述することができる。すなわち、アクセス制御情報は、アクセス制御を定義するルールの識別情報、情報ソースおよび情報項目名で構成される第1の属性情報、情報ソースおよび情報項目名で構成される第2の属性情報、判定条件(関係)、ルールに適用されるアクション(ACCEPT,REJECT、DENYなど)の5つの情報で記述することができる。このとき、アクセス制御情報は、例えば実行可能なスクリプト言語で記述することができる。
【0033】
そして、アクセス制御情報によって、第1の属性情報および第2の属性情報の一方あるいは双方が一定の判定条件を満たすか否かに応じて所望のアクションが実行されるように単一あるいは複数のルールによってアクセス制御方法が定義される。」

K 「【0035】
また、アクションとしては、“ACCEPT”、“REJECT”、“DENY”等のように命令文として定義することができる。例えば、操作者が医用画像データにアクセスしようとする場合に、医用画像データのリストを表示することが可能であるが、“ACCEPT”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させて選択可能にするというアクション、“REJECT”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させるが選択できないようにアクセス制限するというアクション、“DENY”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させないというアクセス制限を行うアクションとして定義することができる。」

上記記載事項H乃至Kから,引用例2には次の技術的事項が記載されているといえる。

「医用画像診断装置1には、医用データアクセス制御システム4が搭載され,MRI(Magnetic resonance imaging)装置、X線CT(Conputed tomography)装置、超音波診断装置、PET(Positron emission conputed tomography)装置、X線診断装置を始めとする任意の装置とすることが可能であり,
操作者属性情報は、例えば、操作者が所属している診療科(内科、外科、小児科、眼科など)を示す所属情報、ある患者の治療に当たっている医療チーム(スタッフA、スタッフB、スタッフCなど)に操作者が所属していることを示す医療チーム情報、オーナーレベル(一般ユーザ、上級ユーザ、アドミニストレータ、救急オペレータ、サービスマンなど)を示すカテゴリ情報等の操作者の役割情報(ROLE/GROUP)が操作者の識別情報(ユーザA、ユーザBなど)と関連付けて構成され,
データ属性情報記憶部13には、医用データ記憶部12に保存された各医用データの属性情報がデータ属性情報として保存され,
データ属性情報は、医用画像データの識別情報(画像A、画像Bなど)と関連付けて構成され,
アクセス制御情報は、5つの情報の組合せで記述することができ,アクセス制御情報によって、第1の属性情報および第2の属性情報の一方あるいは双方が一定の判定条件を満たすか否かに応じて所望のアクションが実行され,
“ACCEPT”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させて選択可能にするというアクション、“REJECT”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させるが選択できないようにアクセス制限するというアクション、“DENY”は判定条件を満たす場合に医用画像データをリストに表示させないというアクセス制限を行うアクションとして定義されること。」

4 引用例3に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,米国特許出願公開第2007/0118525号明細書(2007年5月24日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

L 「A system and method for controlling access to digital assets in an online media sharing system based on keywords are provided. In general, each digital asset is tagged with a number of keywords. The owner of the digital assets defines a guest list including a number of guests. For each guest, the owner defines permissions controlling the guest's access to the digital assets based on keywords. Thereafter, when a request to view the digital assets is received from a guest node associated with one of the guests, the digital assets that the guest is permitted to view are identified based on the permissions assigned to the guest and provided to the guest at the guest node. 」(要約)
(当審仮訳:
キーワードに基づいてオンラインメディア共有システムでデジタル資産へのアクセスを制御するためのシステムおよび方法が提供される。一般的に,各デジタル資産は,多数のキーワードがタグ付けされている。デジタル資産の所有者は,多数のゲストを含むゲストのリストを定義する。各ゲストごとに,所有者は,キーワードに基づいてデジタル資産へのゲストのアクセスを制御する許可を規定する。その後,ゲストの1つに関連付けられたゲスト・ノードから受信されたデジタル資産を見るための要求である場合には,ゲストが表示することを許可されたデジタル資産は,そのゲストに割り当てられたゲストのゲストに与えられた許可に基づいて識別される。)

M 「The keywords may be static keywords or dynamic keywords. Both static and dynamic keywords are keywords that are stored in association with a photo album or a digital image. For example, if the digital images are stored in a format such as the Joint Photographic Experts Group (JPEG) format, the static and dynamic keywords may be stored as metadata within the digital image file. As another example, the static and dynamic keywords for a photo album or digital image may be stored in an application file storing keywords for a number of photo albums or digital images. Static keywords are keywords that do not change. For example, static keywords may be “Work,”“Family,”“Vacation,” and “Friends.”」(31段落)
(当審仮訳:
キーワードは,静的キーワードまたは動的キーワードであってもよい。静的と動的の両方のキーワードは,写真アルバム,またはディジタル画像に関連付けて記憶されているキーワードである。例えば,デジタル画像はJPEG(Joint Photographic Experts Group)形式などの形式で保存された場合,静的及び動的キーワードは,デジタル画像ファイル内にメタデータとして格納されてもよい。別の例として,フォトアルバムやデジタル画像に対する静的および動的キーワードは,写真アルバム,またはディジタル画像の数のキーワードを記憶するアプリケーション・ファイルに格納することができる。静的キーワードは例えば,“Work”,“Family”,“Vacation”,“Friends”などである。)

5 引用例4に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2010-074290号公報(平成22年4月2日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

N 「【0020】
次いで、画像処理装置100は、設定情報を参照して、ステップS3で抽出した文字列に対応した処理を行う(ステップS4)。具体的には、画像処理装置100は、ステップS1で取得した画像データに対して、オペレーションパネル80を介して入力されたユーザ名が「理光花子」である場合に閲覧権限を付与し、ユーザ名が「理工太郎」の場合にフルアクセス権限を付与する処理を行う。例えば、画像処理装置100は、アクセス権限の情報をヘッダやメタデータなどにより画像データに対して付加する。尚、ステップS3で対象キーに対応して抽出した文字列に対して、設定情報において処理内容情報が対応付けられていない場合には、画像処理装置100は、当該画像データに対して処理を行わない。次いで、画像処理装置100は、画像データを予め定められた配信先又はオペレーションパネル80を介して指定された配信先に画像データを配信する(ステップS5)。予め定められた配信先とは、例えば、画像処理装置100のHDD68内のWindows(登録商標)フォルダである。」

6 引用例5に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,国際公開第2013/123086号(2013年8月22日公開。以下,これを「引用例5」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

O 「[0053] Referring back to Figure 2, according to one embodiment, server 109 further includes access control system 210 to control access of resources (e.g., image processing tools) and/or medical data stored in medical data store 206 from clients 202-203. Clients 202-203 may or may not access certain portions of resources and/or medicate data stored in medical data store 206 dependent upon their respective access privileges. The access privileges may be determined or configured based on a set of role -based rules or policies, as shown in Figures 3A-3D. For example, some users with certain roles can only access some of the tools provided by the system as shown in Figure 3A. Examples of some of the tools available are listed at the end of this document, and include vessel centerline extraction, calcium scoring and others. Some users with certain roles are limited to some patient information as shown in Figure 3B. Some users with certain roles can only perform certain steps or stages of the medical image processes as shown in Figure 3C. Steps or stages are incorporated into the tools (listed at the end of this document) and might include identifying and/or measuring instructions, validation of previously performed steps or stages and others. Some users with certain roles are limited to certain types of processes as shown in Figure 3D. 」
(ファミリー文献である,特表2015-515041号公報による訳:
図2に戻ると、1つの実施形態により、サーバー109は、更に、クライアント202-203からの医療データストア206に記憶されたリソース(例えば、画像処理ツール)及び/又は医療データのアクセスをコントロールするためにアクセスコントロールシステム210を備えている。クライアント202-203は、それらの各アクセス特権に基づいて、医療データストア206に記憶されたリソース及び/又は医療データのある部分をアクセスしてもしなくてもよい。アクセス特権は、図3A-3Dに示すように、1組の役割ベースのルール又はポリシーに基づいて決定又は構成される。例えば、ある役割をもつあるユーザは、図3Aに示されたように、システムにより提供されるツールの幾つかにしかアクセスできない。利用できるツールの幾つかは、例えば、本書の終わりにリストされ、そして血管中心線抽出、カルシウムスコア、等を含む。ある役割をもつあるユーザは、図3Bに示すように、ある患者情報に制限される。ある役割をもつあるユーザは、図3Cに示すように、医療画像プロセスのあるステップ又はステージしか遂行できない。ステップ又はステージは、ツールに合体され(本書の終わりにリストされ)、識別及び/又は測定インストラクション、以前に遂行されたステップ又はステージの確認、等を含む。ある役割をもつあるユーザは、図3Dに示すように、あるタイプのプロセスに制限される。(同公報の40段落))


第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「画像ファイル・サーバ10Cを構成するワークステーション」は,「メイン・コントローラであるCPU11と,前記CPU11において実行されるプログラム・コードを格納したり,実行中の作業データを一時保管するRAM12とを有」するものであり,本願発明1の「ネットワーク装置」と,“1又は複数のプロセッサと、1又は複数のメモリと”を有する点で一致する。
また,引用発明の「画像ファイル・サーバ10C」は,「ワークステーション上で所定のサーバ用アプリケーションを起動することによって実現され」るものであり,また,「ユーザのアクセス権限と画像の属性に基づいて,セキュリティ維持とプライバシ保護を確保した診断画像ファイルの管理を実現するもの」でもあることから,当該「所定のサーバ用アプリケーション」は,“画像管理アプリケーション”といい得るものであることから,引用発明と本願発明1とは,“ネットワーク装置であって、1又は複数のプロセッサと、1又は複数のメモリと、画像管理アプリケーションと、を有”する点で一致する。

(イ)引用発明の「モダリティ装置」は,当該「モダリティ装置を扱う技師」によって,「撮影画像を読取装置によって読み取り,デジタル形式の「生成済み診断画像」を得」られるものであり,また,「画像ファイル・サーバ10Cは,画像生成装置としての各モダリティ装置や,画像転送装置としての画像ビューワー10Aなどの外部装置と,ネットワーク経由で相互接続され」ていることから,「画像ファイル・サーバ10C」の「外部に」あることは明らかであり,本願発明1の「第1のクライアント装置」といい得るものである。そして,引用発明では,「医師は,診断画像ビューワ10Aとして稼働するワークステーション上で,所定の患者の診断画像を取り込」んでいることから,当該「診断画像」をネットワーク,すなわち「通信リンク」を介して受信していることは明らかである。してみると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データを受信するステップ”を有する点で一致する。

(ウ)引用発明の「画像ファイル・サーバ10C」は,「診断画像ファイルの格納先すなわち画像保存装置」であることから,当該診断画像ファイルを格納するステップを有することは明らかであることから,上記(イ)で検討した事項を踏まえ,引用発明と本願発明1とは,“前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データを受信するステップに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データを格納するステップ”を有する点で一致する。

(エ)引用発明において,「医師は,診断画像ビューワ10Aとして稼働するワークステーション上で,所定の患者の診断画像を取り込み,これを高解像度ディスプレイ上で画面表示して,読影すなわち診断を行」うものであるから,当該「医師」,すなわち「ユーザ」が「所定の患者の診断画像」を「取り込」むために,「診断画像ビューワ10A」からの所定の要求を「画像ファイル・サーバ10C」が受信することは明らかである。そして,引用発明の当該「診断画像ビューワ10Aとして稼働するワークステーション」は,本願発明1の「第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置」に相当するといえ,引用発明と本願発明1とは,“前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップ”を有する点で一致する。

(オ)引用発明は,「各々の診断画像ファイルを,その画像属性とともに管理しており,ここで言う画像属性とは,「生成済み」,「確認済み」,「読影済み」など,診断画像の状況を意味し,前記診断画像ファイルへのアクセスを要求する各ユーザの種別すなわち職権レベルを取得して,そのアクセス権限に応じて要求された診断画像ファイルへのアクセス制御を行」うものである。そして,具体的には,「画像ファイル・サーバ10C」により,「診断画像ファイルに対するアクセス要求を受信すると,アクセス要求された診断画像ファイルの画像属性を検査するとともに、要求元のユーザの種別すなわち職権レベルを検査し,要求元ユーザの職権レベルに対して与えられたアクセス権限が、要求する診断画像ファイルへのアクセスに適合するか否かを判断し」,「要求元ユーザが持つアクセス権限が、要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容する場合には、画像ファイル・サーバ10Cは、アクセス結果すなわち診断画像ファイルを要求元に返し,この結果、要求元ユーザの端末画面上では、診断画像を表示することができ」るものである。このうち,「要求元のユーザ」に与えられる「職権レベル」は,本願発明1の「ユーザに割り当てられた」「論理エンティティ」といい得るものであり,「診断画像ファイルの画像属性」に与えられた,「生成済み」,「確認済み」,「読影済み」といった情報は,本願発明の「画像」の「論理エンティティ」といい得るものである。
そして,「アクセス要求された診断画像ファイルの画像属性を検査するとともに,要求元のユーザの種別すなわち職権レベルを検査し,要求元ユーザの職権レベルに対して与えられたアクセス権限が,要求する診断画像ファイルへのアクセスに適合するか否かを判断」することはすなわち,「画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定する」ことといえるから,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“前記ユーザに割り当てられた論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の論理エンティティとに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップ”を有する点で一致する。
そして,上記一致点である「…前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップ」は,「要求元ユーザ」からの「診断画像ファイルに対するアクセス要求」に応じたものであることから,引用発明と本願発明1とは,“前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップに応答して”なされる点でも一致する。

(カ)引用発明において,「診断画像に基づく読影を行う医師が確認済み診断画像を要求した場合には,その職権レベルはアクセス要求に適合するので,前記画像ファイル・サーバ10Cは,要求された診断画像ファイルに関する情報を返し,この結果,要求元である医師が扱う端末(例えば画像ビューワ10A)のディスプレイ画面上では,要求した診断画像を表示することができ」ることはすなわち,当該「要求元である医師が扱う端末(例えば画像ビューワ10A)のディスプレイ画面上」に,「要求した診断画像」が「表示」されるためには,当該診断画像の画像データが送信されていることを意味するから,上記(オ)での検討を踏まえ,引用発明と本願発明1とは,“前記ユーザに割り当てられた論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する論理エンティティとに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されると決定することに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データを前記第2のクライアント装置へ送信させるステップ”を有する点で一致する。

(キ)以上,(ア)乃至(カ)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
ネットワーク装置であって、
1又は複数のプロセッサと、
1又は複数のメモリと、
画像管理アプリケーションと、
を有し,
前記画像管理アプリケーションは,
1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データを受信するステップと,
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データを受信するステップに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データを格納するステップと,
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップと,
前記1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にあり前記第1のクライアント装置と異なる第2のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データにアクセスするためのユーザの要求を受信するステップに応答して,
前記ユーザに割り当てられた論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の論理エンティティとに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定するステップと,
前記ユーザに割り当てられた論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する論理エンティティとに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されると決定することに応答して、前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記画像データを前記第2のクライアント装置へ送信させるステップと,
を実行するよう構成される,ネットワーク装置。

〈相違点1〉
本願発明1の「画像管理アプリケーション」が,「1又は複数の通信リンクを介して、前記ネットワーク装置の外部にある第1のクライアント装置から、前記第1のクライアント装置により取得された画像の画像データ」に加え,当該画像の「メタデータ」を受信及び格納し,当該画像の「メタデータ」が,「前記第1のクライアント装置により取得された前記画像が属する複数の論理エンティティを指定する」ものであるのに対し,引用発明は,そのようなデータを受信及び格納するものではない点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「ユーザに割り当てられた複数の論理エンティティを決定するステップ」を有するのに対し,引用発明は,そのようなステップを有しない点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されるか否かを決定する」にあたり,「ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有するか否かに基づき」決定されるのに対し,引用発明は,ユーザの「職権レベル」と,画像の,「生成済み」,「確認済み」,「読影済み」などといった画像属性とに基づいてアクセスが許可されるか否かが決定される点。

〈相違点4〉
本願発明1が,「前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップ」を有するのに対し,引用発明は,「要求元ユーザが持つアクセス権限が,要求する診断画像ファイルへのアクセスを許容しない場合」に,「画像ファイル・サーバ10C」が「画像にアクセスできない旨を要求元に通知し,この結果,要求元ユーザの端末画面上では,診断画像を表示することができない」ものである点。

(2) 相違点に関する判断
事案に鑑み,先に相違点4について検討する。
第1クライアントにより取得された画像に対するアクセスが許可されない場合に,当該画像データ及び当該画像データのメタデータが,更なる評価及び/又は補正のために提供される,「例外キュー」に相当する構成を引用発明及び引用例2に記載された技術的事項,さらに引用例3乃至5の上記L乃至Oの中にも見いだすことはできず,また当該「例外キュー」が,本願の第一国出願前に周知であったとはいえない。してみれば,引用発明において,当該「例外キュー」を設ける動機付けは存在せず,さらに当該「例外キュー」を通じて,一旦,「画像にアクセスすることを許可されないと決定」された画像を「他のユーザ」によって「前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定」することまでは,当業者といえども容易であったということはできない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項並びに引用例3乃至5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2乃至7について
本願発明2乃至7は,請求項1を直接若しくは間接的に引用するものであって,本願発明1の「前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップ」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項並びに引用例3乃至5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明8及び15について
本願発明8及び15は,本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項並びに引用例3乃至5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明9乃至14及び16乃至20について
本願発明9乃至14及び16乃至20は,それぞれ本願発明8及び本願発明15を直接若しくは間接的に引用するものであって,本願発明8及び15と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項並びに引用例3乃至5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 当審拒絶理由の概要

<特許法第36条第6項第2号について>
当審では,請求項1の「前記画像データにアクセスするための他のユーザの要求を受信することに応答して前記他のユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するために、前記画像データ及び前記メタデータは例外キューに提供される」とされる点につき構成が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月21日付けの手続補正において,上記,「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。


第7 原査定についての判断

平成30年5月21日付けの手続補正により,補正後の請求項1は,「前記ユーザに割り当てられた前記複数の論理エンティティと前記第1のクライアント装置により取得された前記画像の前記複数の論理エンティティとが、少なくとも1つの共通の論理エンティティを有しないことに基づき、前記ユーザが前記第1のクライアント装置により取得された前記画像にアクセスすることを許可されないと決定することに応答して、アクセスすることを許可されないと決定された前記画像の前記画像データ及び前記メタデータは、更なる評価及び/又は補正のために例外キューに提供され、他のユーザが前記画像の前記画像データ及び前記メタデータを評価及び/又は補正することに応答して前記ユーザに対し前記画像データへのアクセスを許可するか否かを決定するステップ」という技術的事項を有し,また,請求項8及び15についても同様な技術的事項を有するものとなった。当該ステップは,原査定における引用例1乃至5には記載されておらず,本願の第一国出願日前における周知技術でもないので,本願発明1乃至20は,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項並びに引用例3乃至5に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-27 
出願番号 特願2016-23020(P2016-23020)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 役割を用いた画像へのアクセスの管理  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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