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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341882
審判番号 不服2017-15851  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2018-07-24 
事件の表示 特願2015-514604「ディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日国際公開、WO2013/179096、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521328、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月31日を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月8日付けで手続補正がされ、平成29年1月24日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年3月14日付けで手続補正がされ、同年7月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-14
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特表2011-501298号公報

第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成29年10月26日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
プロセッサが、ディスプレイのための触覚プロファイル・マップを決定するステップと、
前記プロセッサが、前記触覚プロファイル・マップによって規定される領域の中での前記ディスプレイの上のタッチ・イベントを決定するステップと、
前記プロセッサが、触覚効果が、シミュレーションされた表面の経験を提供するように、前記タッチ・イベントに基づいて、前記ディスプレイにおける触覚効果を生成するステップと、
を含む方法であって、
前記触覚プロファイル・マップは、
少なくとも1つの変位信号修正ファクタと、
少なくとも1つの方向信号修正ファクタと、
速さ信号修正ファクタと、
タッチ期間修正ファクタと、
フォース信号修正ファクタと、
のうちのすくなくとも1つを備えるように生成され、
前記触覚プロファイル・マップに依存して、前記ディスプレイを備える触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネントにより、少なくとも1つの電気信号が生成され、
前記ディスプレイの上の前記シミュレーションされた表面の経験は、局所的に、前記触覚プロファイル・マップによって規定される前記領域内における触覚効果および音響効果を含み、該触覚効果および該音響効果は、触覚信号とオーディオ信号とを備える前記電気信号により生成される、
方法であり、
該方法は、
前記プロセッサが、前記ディスプレイの上で前記触覚効果を生成するステップは、
前記ディスプレイの下に、接触して位置する少なくとも2つの圧電アクチュエータによりディスプレイを動かすステップ、
を更に含む、
方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記ディスプレイのための前記触覚プロファイル・マップを生成するステップと、
前記プロセッサが、前記ディスプレイのための前記触覚プロファイル・マップをロードするステップと
のうちの少なくとも1つをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タッチ・イベントを決定するステップは、
前記プロセッサが、少なくとも1つのタッチ位置を決定するステップ、
前記プロセッサが、少なくとも1つのタッチ方向を決定するステップ、
前記プロセッサが、少なくとも1つのタッチ速さを決定するステップ、
前記プロセッサが、少なくとも1つのタッチ期間を決定するステップ、および、
前記プロセッサが、少なくとも1つのタッチ・フォースを決定するステップ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記触覚プロファイル・マップを決定するステップは、以前のタッチ・イベントに依存して、前記プロセッサが、前記触覚プロファイル・マップを決定するステップを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記タッチ・イベントを決定するステップは、
ディスプレイの上のホバー・タッチ、および、
物理的にディスプレイと接触するコンタクト・タッチ
のうちの少なくとも1つを、前記プロセッサが決定するステップを含み、
ここで、前記ホバー・タッチは、物理的にディスプレイと接触せず、触覚効果を生成しない、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記プロセッサが、前記ディスプレイの上に画像を表示するステップを更に含み、
前記プロセッサが、前記ディスプレイのための前記触覚プロファイル・マップを決定するステップは、前記プロセッサが、前記画像と結びついている前記触覚プロファイル・マップを決定するステップを含む、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記ディスプレイの上の前記タッチ・イベントに依存して、前記ディスプレイの上で前記画像を修正するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記触覚効果を生成するステップは、前記プロセッサが、センサからタッチ入力を受信するステップをさらに含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネントは、少なくとも前記ディスプレイと、前記ディスプレイに結合し、信号が受信されるときに、力を生成するように構成される少なくとも1つのアクチュエータとを備え、
該少なくとも1つのアクチュエータは、圧電アクチュエータまたは振動アクチュエータである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、タッチ位置が前記領域の中であるかどうか決定するステップと、
前記プロセッサが、前記タッチ位置に依存して、前記触覚効果を生成するステップと、を更に含む請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセッサが、
タッチ入力数、
タッチ入力位置、
タッチ入力のサイズ、
タッチ入力の形状、および、
他のタッチ入力と相対する位置、
のうちの少なくとも1つに依存して、少なくとも1つのタッチ・パラメータを決定するために、タッチ入力を処理するステップを更に含む請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、
触覚効果が生成されることになっているかどうか、
どの触覚効果が生成されることになっているか、および、
どこで触覚効果が生成されることになっているか、
のうちの少なくとも1つを決定するための前記少なくとも1つのタッチ・パラメータを処理するステップを更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法の動作を実行するように構成される装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「【0001】
本発明は、複数の知覚体験をデバイスのユーザに与える方法、および、知覚フィードバック体験を与えることによって、タッチ画面上に表示されたオブジェクトとの3D相互作用をシミュレートするデバイスに関する。」(下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「【0022】
図6に、デバイスのタッチ画面110を使用して、仮想キーボード206のキートップがアクチュエートしたとき、ユーザ102に本物の3-Dキーと相互作用する錯覚与えるために、触覚、音声および視覚のフィードバックの組み合わせをユーザに与えるように構成された、具体的な携帯コンピュータデバイス105を示す。本3-Dオブジェクトシミュレーションの一部のアプリケーションにおいて、3つのフィードバック構造(触覚、音声および視覚)のすべての組み合わせを利用することよって、デバイス上でのブラインド入力および/またはタッチタイピングを十分可能にしながら、大いに満足できるユーザ体験を与えることが予想される。しかしながら、他のシナリオにおいて、フィードバックを単一または2つのさまざまな組み合わせにおいて使用することによっても、特定のアプリケーションの要求に応じた、満足できる結果を与えることができる。図6に、仮想キーボードの具体的な例を示すが、本明細書に説明するフィードバック技術の使用を、制御またはナビゲーションに使用されるアイコンと、デバイス105に格納または利用できるコンテンツを表すことができるアイコンとに適用できることも強調しておく。
【0023】
この例における視覚フィードバックは、図4A、4B,5Aおよび5Bに示した視覚効果のアプリケーションを含み、特定のキートップが押されたときに、ユーザに視覚的に示す仮想キーボード206のキートップに関して、文に伴って説明される。図のように、仮想キーボード206のキーは、それらをタッチ画面110の表面から離れている様に見せることができる影付けを用いて設定される。キートップに触ったときに、この影付け効果を除く(または減少させることができる)。図のようなこの例において、ユーザは、キートップ「G」を押下している。
【0024】
音声フィードバックは、主として、デバイス105に接続できるスピーカ606または外付けのヘッドセット(図示せず)を通じて、「クリック」(図6の参照数字602で示した)などのサンプル音声を再生することを備える。サンプル音声は、物理的に具体化されたキーボードでアクチュエートされる本物のキーの音をシミュレートするように設定される。代替的な設定において、利用されるサンプル音声は、特定の物理的動きをシミュレートしない、一部の任意の音(ビー、チリンチリン、音色、音符など)として構成されてもよいし、またはそのようなさまざまな音の中からユーザが選択してもよい。すべての例において、キートップがアクチュエートしたとき、サンプル音声の利用により、聴覚フィードバックをユーザに与える。
【0025】
触覚フィードバックを設定して、デバイス105に対する動きのアプリケーションを通じて本物のキートップとの相互作用をシミュレートする。タッチ画面110が本質的に硬質であるため、タッチ画面110に接触した時点でデバイス105の動きをユーザに伝える。この例において、その動きは、波線617を使用して図6に示した振動を生じる。
【0026】
振動装置712に備わっている、具体的な振動モータ704の正面図および具体的な偏心荷重710を回転させる直交図を、それぞれ図7Aと7Bに示す。この具体的な例において、振動装置712を使用して、上記に説明された触覚フィードバックを実装するために使用される振動の動きを与える。代替的な実施形態において、圧電振動子または電動リニアアクチュエータまたは回転型電動アクチュエータなどの他の種類のモーションアクチュエータが使用されてもよい。
【0027】
この例における振動モータ704は、荷重710が固定して取り付けられているシャフト717を回転させるように設定された、ほぼ円筒形状のDCモータである。振動モータ704は、荷重710を順方向と逆方向の両方に回転させて動作するようにさらに構成される。一部のアプリケーションにおいて、振動モータ704は、可変速度で動作するように設定されてもよい。振動モータ704の動作は、主として、以下の図10に伴う文で説明されたモーションコントローラ、アプリケーション、および知覚フィードバック論理コンポーネントによって制御される。
【0028】
偏心荷重710をシャフト717に対して非対称の形状にして、重心(図7Aの「G」として指定される)をシャフトと相殺できるようにする。従って、荷重が回転するときに方向を変えて、シャフトの角速度が増加するときに大きさを増加させるシャフト717に遠心力が伝わる。さらに、モーメントは、荷重710の回転方向と逆になる振動モータ704に適用される。
【0029】
携帯デバイスの実装において、振動装置712は、主として、図7Cの上部切り取り図に示すデバイス105などのデバイスの内部に固定して取り付けられる。この取り付けにより、振動装置712の動作による力(すなわち、遠心力およびモーメント)をデバイス105に容易に結合させて、デバイスが、振動装置712に駆動信号を送るアプリケーションに応答して振動できるようにする。
【0030】
適切な駆動信号のアプリケーションを通じて、例えば、回転方向、負荷サイクルおよび回転速度を含む振動装置712の動作の変化を実装することができる。異なる動作モードは、結合された振動の方向、持続時間および大きさを含むデバイス105の動きに影響を与えることが予想される。さらに、単一の振動装置を図7Cに示すが、3-Dオブジェクトシミュレーションの本設定の一部のアプリケーションにおいて、複数の振動装置を、デバイス105内の異なる位置および方向に固定して取り付けてもよい。この例において、デバイス105に伝えられる動きの方向および大きさに対する指の制御は、主として、実装されてもよい。強さのレベルを変える動きの多自由度は、従って、振動モータを単一および異なる駆動信号を用いた組み合わせにおいて動作させることによって実現できることを認識されたい。従って、さまざまな触覚効果を実装して、異なる錯覚が実現できるようにする。特に、聴覚フィードバックと視覚フィードバックを適切に組み合わせたとき、粗さ、滑らかさ、粘着性などを含む異なる3-Dジオメトリまたはテクスチャを効果的にシミュレートすることができる。
【0031】
デバイス105により支援されるさまざまな機能を実装するのに使用されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するのに主に利用される、プロセッサ719およびメモリ721を、図7Cの幻影図に示す。単一のプロセッサ719を図7Cに示すが、一部の実装において複数のプロセッサを利用してもよい。メモリ721は、揮発性メモリ、不揮発性メモリまたはその2つの組み合わせを備えてもよい。」

c)「【0033】
具体的な仮想キートップ808の上面図を図8Aに、側面図を図8Bに示す。キートップが奥行き面を有するという知覚をユーザに伝えるために、触覚フィードバックは、タッチに応答して1または複数の振動装置(例えば、図7の振動装置712)を動作することによって作り出す。図8Aおよび8Bに示す具体的な例において、振動を実装して、主として、複数の振動装置を使用することによって、大きさ、持続時間および方向を変える触覚フィードバック使用した触力覚フィードバックの輪郭を提供できるようにする。しかしながら、代替的な実施形態において、デバイス105のパーツ点数および煩雑さを減らすおよび/またはコストを下げるために、単一の振動装置が利用されてもよい。この代替的な例において、動きの自由度を利用できることが少なくなるが、3-Dのかなりの知覚は、主として、特定のアプリケーションに対して満足できるレベルまでなお実現可能である。
【0034】
図8Bの点線の輪郭で示したように、キートップ808に奥行きの触覚イリュージョンを提供して、それをユーザが触ったときに、それがタッチ画面110の表面から離れている様に感じることができるようにする。ユーザは、指またはスタイラスでキートップ808の横を、(図8Aの線812で示したように)例えば、左から右にスライドまたはドラッグすることができる。白矢印815で示したように、ユーザのタッチがキートップ808の端部に到達したとき、黒矢印818で示したように、タッチ画面110の平面に対してほぼ左方向の水平に触力覚フィードバックを適用する。(説明820に示すように、白矢印は、指またはスタイラスによるタッチの方向を示し、黒矢印は、触力覚フィードバックが生じた方向を示す)。
【0035】
矢印825で示したように、ユーザがキートップ808の仮想上部の端部からスライドしたとき、矢印830で示したように、触力覚フィードバックの方向は、ほぼ左側上方になり、キートップ808の端部の感じをユーザに伝える。キートップ808の端部を触ったときに触覚フィードバックを与えることによって、本物の、物理的に具体化されたキーボードと同じように単純に触ることによって、仮想キーボードのキートップをユーザが見つけるのを有利に支援することができる。
【0036】
矢印836で示したように、ユーザがキートップをアクチュエートするつもりでキートップ808の中央部(すなわち、非端部)を触ったとき、矢印842で示したように、触力覚フィードバックは、ほぼ上方に向く。この例において、触覚フィードバックをキートップアクチュエーションに与えるのに使用される力の大きさは、キートップの端部をユーザに示すのに使用される力よりも大きくなってよい。つまり、例えば、キートップを見つける際にユーザに与えられたフィードバック力を少なくしながら、デバイス105からの振動力を強くして、キートップがアクチュエートされたことを示すことができる。さらに、またはあるいは、キートップアクチュエーションのフィードバックの持続時間を変えてもよい。従って、フィードバックを明示的にすることが可能になり、ユーザに対する触覚的合図によって、ユーザが機能を区別することができるようにする。ユーザがキートップを押下してそれをアクチュエートしたとき、主として、異なる感覚を体験しながら、ユーザが自分の指をキートップ上で滑らせたとき、その端部が明示的なフィードバックに影響を与えて、ユーザが触ることによってキートップを見つけることができるようにする。
【0037】
従って、ユーザは、主として、タッチ画面110の表面を指またはスタイラスで、リフトせずに横に滑らせて触ることによって、オブジェクト(例えば、ボタン、アイコン、キートップなど)を見つけるであろう。同じ滑らせるまたは「ホバリング」動作が、ユーザがデバイス上の物理的に具体化されたボタンおよびオブジェクトを見つけようとするときに使用されるので、これらの動作を直感的に予想することができる。明示的な触覚的合図を与えて、タッチ画面110上のオブジェクトの位置をユーザに示す。ユーザは、次に、例えば、ホバリングからクリッキングに切り替えることによってボタンをクリックして、オブジェクトをアクチュエートできる。これを、いくつかの代替的な方法の中の1つにおいて実現できる。感圧性のタッチ画面が使用される実装において、ユーザは、主として、圧力をさらに適用してボタンクリックを実装するであろう。あるいは、ユーザは、タッチ画面110の表面から自分の指またはスタイラスを、主として、一時的にリフトしてよく、次に、ボタンをタップしてタッチ画面をクリックする(明示的な触覚的合図を与えて、ボタンクリックをユーザに確認させることができる)。リフティング動作によって、デバイス105が、ホバリングとクリッキングとを区別することができるので、ユーザのタップをボタンクリックとして解釈する。感圧性のタッチ画面を使用しない実装において、リフト・タップの方法論は、主として、触ることによってオブジェクトを見つけることと、オブジェクトの作動とを区別するために利用されるであろう。
【0038】
代替的な設定において、アイコンまたはボタンの「状態」に応じて、ユーザに与えられたフォースフィードバックを変えることができる。ここで、特定のユーザ体験またはユーザインタフェースを支援するためには、アイコンまたはボタンを有効化してよく、それによってユーザがアクチュエートまたは「クリック」することができる。他の例において、しかしながら、アイコンまたはボタンが使用不能になる場合もあるので、ユーザがアクチュエートすることができない。使用不能の状態において、例えば、特定のボタンまたはアイコンに対して、ユーザが「クリッカブル(clickable)」でないことを示すために、フィードバックの大きさをさらに小さく(またはフィードバックを無くす)利用することが望ましい場合もある。
【0039】
矢印845で示したように、ユーザがさらに自分の指をキートップ808の右側にスライドさせたとき、右側上方にある触力覚フィードバックを用いて、右端部の位置をユーザに示す。これを、矢印851で示す。矢印856で示したように、ユーザのタッチがキートップ808の遠端に到達したとき、矢印860で示したように、次に、タッチ画面110の平面に対してほぼ右方向の水平に触力覚フィードバックを適用する。ほとんどの例において、同じ触力覚フィードバックの輪郭を、ユーザがキートップ808上で指またはスタイラスを右から左に、および上から下に、下から上におよび他の方向からスライドさせる状況において適用できることに留意されたい。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、複数の知覚体験をデバイスのユーザに与える方法として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「デバイスのタッチ画面110を使用して、仮想キーボード206のキートップがアクチュエートしたとき、ユーザ102に本物の3-Dキーと相互作用する錯覚与えるために、触覚、音声および視覚のフィードバックの組み合わせをユーザに与えるように構成された、携帯コンピュータデバイス105において、
3-Dオブジェクトシミュレーションの一部のアプリケーションにおいて、3つのフィードバック構造(触覚、音声および視覚)のすべての組み合わせを利用することよって、デバイス上でのブラインド入力および/またはタッチタイピングを十分可能にするものであり、
視覚フィードバックは、特定のキートップが押されたときに、ユーザに視覚的に示す仮想キーボード206のキートップに関して、仮想キーボード206のキーは、それらをタッチ画面110の表面から離れている様に見せることができる影付けを用いて設定され、キートップに触ったときに、この影付け効果を除く、または減少させることができ、
音声フィードバックは、デバイス105に接続できるスピーカ606または外付けのヘッドセットを通じて、「クリック」などのサンプル音声を再生することを備え、サンプル音声は、物理的に具体化されたキーボードでアクチュエートされる本物のキーの音をシミュレートするように設定され、
触覚フィードバックを設定して、デバイス105に対する動きのアプリケーションを通じて本物のキートップとの相互作用をシミュレートし、
携帯デバイスの実装において、振動装置712は、デバイスの内部に固定して取り付けられ、この取り付けにより、振動装置712の動作による力をデバイス105に容易に結合させて、デバイスが、振動装置712に駆動信号を送るアプリケーションに応答して振動できるようにし、
3-Dオブジェクトシミュレーションの本設定の一部のアプリケーションにおいて、複数の振動装置を、デバイス105内の異なる位置および方向に固定して取り付け、さまざまな触覚効果を実装して、異なる錯覚が実現できるように、特に、聴覚フィードバックと視覚フィードバックを適切に組み合わせたとき、粗さ、滑らかさ、粘着性などを含む異なる3-Dジオメトリまたはテクスチャを効果的にシミュレートすることができ、
デバイス105により支援されるさまざまな機能を実装するのに使用されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するのに、プロセッサ719が主に利用されるものであり、
仮想キートップ808では、キートップが奥行き面を有するという知覚をユーザに伝えるために、触覚フィードバックは、タッチに応答して1または複数の振動装置を動作することによって作り出し、
キートップ808に奥行きの触覚イリュージョンを提供して、それをユーザが触ったときに、それがタッチ画面110の表面から離れている様に感じることができるようにし、
指またはスタイラスでキートップ808の横を、例えば、左から右にスライドまたはドラッグすることができ、
ユーザのタッチがキートップ808の端部に到達したとき、タッチ画面110の平面に対してほぼ左方向の水平に触力覚フィードバックを適用し、
ユーザがキートップ808の仮想上部の端部からスライドしたとき、触力覚フィードバックの方向は、ほぼ左側上方になり、キートップ808の端部の感じをユーザに伝え、
キートップ808の端部を触ったときに触覚フィードバックを与えることによって、本物の、物理的に具体化されたキーボードと同じように単純に触ることによって、仮想キーボードのキートップをユーザが見つけるのを有利に支援することができ、
ユーザがキートップをアクチュエートするつもりでキートップ808の中央部(すなわち、非端部)を触ったとき、触力覚フィードバックは、ほぼ上方に向き、
ユーザが自分の指をキートップ上で滑らせたとき、その端部が明示的なフィードバックに影響を与えて、ユーザが触ることによってキートップを見つけることができ、
感圧性のタッチ画面が使用される実装において、ユーザは、主として、圧力をさらに適用してボタンクリックを実装し、
ユーザがさらに自分の指をキートップ808の右側にスライドさせたとき、右側上方にある触力覚フィードバックを用いて、右端部の位置をユーザに示し、
ユーザのタッチがキートップ808の遠端に到達したとき、タッチ画面110の平面に対してほぼ右方向の水平に触力覚フィードバックを適用する
複数の知覚体験をデバイスのユーザに与える方法。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明は、「デバイス105により支援されるさまざまな機能を実装するのに使用されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するのに、プロセッサ719が主に利用され」、「指またはスタイラスでキートップ808の横を、例えば、左から右にスライドまたはドラッグすることができ、ユーザのタッチがキートップ808の端部に到達したとき、タッチ画面110の平面に対してほぼ左方向の水平に触力覚フィードバックを適用し、ユーザがキートップ808の仮想上部の端部からスライドしたとき、触力覚フィードバックの方向は、ほぼ左側上方になり、」「キートップ808の中央部(すなわち、非端部)を触ったとき、触力覚フィードバックは、ほぼ上方に向き」、「ユーザがさらに自分の指をキートップ808の右側にスライドさせたとき、右側上方にある触力覚フィードバックを用いて、右端部の位置をユーザに示し、ユーザのタッチがキートップ808の遠端に到達したとき、タッチ画面110の平面に対してほぼ右方向の水平に触力覚フィードバックを適用する」るものであるから、引用発明は、プロセッサ719がタッチ画面110に対するユーザのタッチの位置を検出し、ユーザのタッチがキートップ808の左端部より左側、若しくは、右端部より右側では触力覚フィードバックを発生させず、ユーザのタッチがキートップ808上の場合に触力覚フィードバックを発生させていることは明らかであり、引用発明は、本願発明1の「前記プロセッサが、前記触覚プロファイル・マップによって規定される領域の中での前記ディスプレイの上のタッチ・イベントを決定するステップ」と「プロセッサが、規定される領域の中での前記ディスプレイの上のタッチ・イベントを決定するステップ」である点で共通する構成を有するといえる。

イ.引用発明は、「デバイス105により支援されるさまざまな機能を実装するのに使用されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するのに、プロセッサ719が主に利用され」、「さまざまな触覚効果を実装して、異なる錯覚が実現できるように、特に、聴覚フィードバックと視覚フィードバックを適切に組み合わせたとき、粗さ、滑らかさ、粘着性などを含む異なる3-Dジオメトリまたはテクスチャを効果的にシミュレートする」るものであり、また、例えば、「ユーザのタッチがキートップ808の端部に到達したとき、タッチ画面110の平面に対してほぼ左方向の水平に触力覚フィードバックを適用」するものであるから、引用発明は、本願発明1の「前記プロセッサが、触覚効果が、シミュレーションされた表面の経験を提供するように、前記タッチ・イベントに基づいて、前記ディスプレイにおける触覚効果を生成するステップ」に相当する構成を有するといえる。

ウ.引用発明の「携帯コンピュータデバイス105」は「デバイスのタッチ画面110を使用して、仮想キーボード206のキートップがアクチュエートしたとき、ユーザ102に本物の3-Dキーと相互作用する錯覚与えるために、触覚、音声および視覚のフィードバックの組み合わせをユーザに与えるように構成された」ものであるから、引用発明の「携帯コンピュータデバイス105」は、本願発明1の「ディスプレイを備える触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネント」に相当する。
そして、引用発明は「携帯デバイスの実装において、振動装置712は、デバイスの内部に固定して取り付けられ」、「デバイスが、振動装置712に駆動信号を送るアプリケーションに応答して振動できるように」したものであり、振動装置712に送られる駆動信号が電気信号であることは明らかであるから、引用発明は、本願発明1の「前記触覚プロファイル・マップに依存して、前記ディスプレイを備える触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネントにより、少なくとも1つの電気信号が生成され」ることと、「前記ディスプレイを備える触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネントにより、少なくとも1つの電気信号が生成され」る点で共通する構成を有するといえる。

エ.上記ア.で述べたように、引用発明は、プロセッサ719がタッチ画面110に対するユーザのタッチの位置を検出し、ユーザのタッチがキートップ808の左端部より左側、若しくは、右端部より右側では触力覚フィードバックを発生させず、ユーザのタッチがキートップ808上の場合に触力覚フィードバックを発生させていることは明らかであるから、引用発明は、タッチ画面110のキートップ808上という、局所的な、一定の領域内にユーザのタッチの位置がある場合のみ、触力覚フィードバックを発生させるものである。
また、引用発明は、「さまざまな触覚効果を実装して、異なる錯覚が実現できるように、特に、聴覚フィードバックと視覚フィードバックを適切に組み合わせたとき、粗さ、滑らかさ、粘着性などを含む異なる3-Dジオメトリまたはテクスチャを効果的にシミュレートすることができ」るものであり、「音声フィードバックは、デバイス105に接続できるスピーカ606または外付けのヘッドセットを通じて、「クリック」などのサンプル音声を再生することを備え」るものであること、「携帯デバイスの実装において、振動装置712は、デバイスの内部に固定して取り付けられ」、「デバイスが、振動装置712に駆動信号を送るアプリケーションに応答して振動できるように」したものであることを考慮すれば、引用発明の触力覚フィードバックには、触覚効果および音響効果を含んだものがあり、これらの効果は、触覚信号とオーディオ信号とを備える電気信号により生成されるものであることは、明らかである。
したがって、引用発明は、本願発明1の「前記ディスプレイの上の前記シミュレーションされた表面の経験は、局所的に、前記触覚プロファイル・マップによって規定される前記領域内における触覚効果および音響効果を含み、該触覚効果および該音響効果は、触覚信号とオーディオ信号とを備える前記電気信号により生成される」ことと、「前記ディスプレイの上の前記シミュレーションされた表面の経験は、局所的に、前記領域内における触覚効果および音響効果を含み、該触覚効果および該音響効果は、触覚信号とオーディオ信号とを備える前記電気信号により生成される」点で共通する構成を有するといえる。

オ.引用発明は、「デバイス105により支援されるさまざまな機能を実装するのに使用されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するのに、プロセッサ719が主に利用され」、「携帯デバイスの実装において、振動装置712は、デバイスの内部に固定して取り付けられ、この取り付けにより、振動装置712の動作による力をデバイス105に容易に結合させて、デバイスが、振動装置712に駆動信号を送るアプリケーションに応答して振動できるようにし」、「仮想キートップ808では、キートップが奥行き面を有するという知覚をユーザに伝えるために、触覚フィードバックは、タッチに応答して1または複数の振動装置を動作することによって作り出」すものであるから、引用発明は、プロセッサ719が、仮想キートップ808にユーザがタッチした場合に、デバイスの内部に固定して取り付けられた複数の振動装置を作動することにより、ユーザに知覚を伝えるものを含むものであり、このことは、本願発明の「前記プロセッサが、前記ディスプレイの上で前記触覚効果を生成するステップは、前記ディスプレイの下に、接触して位置する少なくとも2つの圧電アクチュエータによりディスプレイを動かすステップ、を更に含む」ことに相当する。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「プロセッサが、規定される領域の中での前記ディスプレイの上のタッチ・イベントを決定するステップと、
前記プロセッサが、触覚効果が、シミュレーションされた表面の経験を提供するように、前記タッチ・イベントに基づいて、前記ディスプレイにおける触覚効果を生成するステップと、
を含む方法であって、
前記ディスプレイを備える触覚型オーディオ・ディスプレイ・コンポーネントにより、少なくとも1つの電気信号が生成され、
前記ディスプレイの上の前記シミュレーションされた表面の経験は、局所的に、前記領域内における触覚効果および音響効果を含み、該触覚効果および該音響効果は、触覚信号とオーディオ信号とを備える前記電気信号により生成される、
方法であり、
該方法は、
前記プロセッサが、前記ディスプレイの上で前記触覚効果を生成するステップは、
前記ディスプレイの下に、接触して位置する少なくとも2つの圧電アクチュエータによりディスプレイを動かすステップ、
を更に含む、
方法。」

〈相違点〉
本願発明1は、「触覚プロファイル・マップ」が「少なくとも1つの変位信号修正ファクタと、少なくとも1つの方向信号修正ファクタと、速さ信号修正ファクタと、タッチ期間修正ファクタと、フォース信号修正ファクタと、のうちのすくなくとも1つを備えるように生成され」、「プロセッサが、ディスプレイのための触覚プロファイル・マップを決定するステップ」を有し、「タッチ・イベント」を決定し「触覚効果および音響効果」が生成される「規定される領域」は「前記触覚プロファイル・マップによって規定される」ものであり、「電気信号」は「前記触覚プロファイル・マップに依存して」生成されるものであるのに対し、引用発明は、そのような「触覚プロファイル・マップ」を備えるものではない点。

(2)相違点についての判断
上記「(1)対比」で検討したように、引用発明は「少なくとも1つの変位信号修正ファクタと、少なくとも1つの方向信号修正ファクタと、速さ信号修正ファクタと、タッチ期間修正ファクタと、フォース信号修正ファクタと、のうちのすくなくとも1つを備えるように生成され」た「触覚プロファイル・マップ」を備えたものではなく、引用文献1のその他の記載にも、当該「触覚プロファイル・マップ」は、記載若しくは示唆されていない。
また、「少なくとも1つの変位信号修正ファクタと、少なくとも1つの方向信号修正ファクタと、速さ信号修正ファクタと、タッチ期間修正ファクタと、フォース信号修正ファクタと、のうちのすくなくとも1つを備えるように生成され」た「触覚プロファイル・マップ」は、本願出願日前周知技術であったものとも認められない。
したがって本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.請求項2-13について
本願発明2-13は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-13は「少なくとも1つの変位信号修正ファクタと、少なくとも1つの方向信号修正ファクタと、速さ信号修正ファクタと、タッチ期間修正ファクタと、フォース信号修正ファクタと、のうちのすくなくとも1つを備えるように生成され」た「触覚プロファイル・マップ」という事項を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-09 
出願番号 特願2015-514604(P2015-514604)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
山田 正文
発明の名称 ディスプレイ装置  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 森 啓  
代理人 中澤 言一  

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