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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1342371 |
審判番号 | 不服2017-5673 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-20 |
確定日 | 2018-07-12 |
事件の表示 | 特願2012-277708「車両用非接触充電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 3日出願公開、特開2014-124003〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月20日の出願であって、その手続きの経緯は、以下のとおりである。 平成28年 7月28日付け:拒絶理由の通知 平成28年 9月21日 :意見書の提出 平成29年 1月30日付け:拒絶査定 平成29年 4月20日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 車両から充電用電力を供給された充電用コイルから発生する磁束によって、充電対象機器に設けられる受電側コイルに電圧が誘起され、前記充電対象機器に設けられた蓄電部に前記受電側コイルから電力が供給されることで、充電対象機器が充電される車両用非接触充電装置であって、 前記車両の乗員の操作によって前記充電用電力の周波数を変更可能とする充電周波数変更部を備えたことを特徴とする車両用非接触充電装置。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 1.特開2011-147271号公報 2.特開2007-104868号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献 1.引用文献1 原査定で引用された特開2011-147271号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「給電装置、受電装置、およびワイヤレス給電システム」に関して、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 本発明は、非接触(ワイヤレス)で電力の供給、受信を行う非接触給電方式の給電装置、受電装置、およびワイヤレス給電システムに関するものである。」 (2)「【0018】 本ワイヤレス給電システム10は、給電装置20および受電装置30を有する。 【0019】 給電装置20は、送電コイル部21、および送電器22を含んで構成されている。」 (3)「【0020】 送電コイル部21は、給電素子としての給電コイル211、および共鳴素子としての複数n(図2の例ではn=2)の共鳴コイル212-1,212-2を有する。共鳴コイルは共振コイルとも呼ぶが、本実施形態においては共鳴コイルと呼ぶこととする。 【0021】 給電コイル211は、送電器22により交流電流が給電される空心コイルにより形成される。 給電コイル211は、たとえば送電器22に含まれる整合回路により給電点におけるインピーダンス整合が行われる。 【0022】 共鳴コイル212-1,212-2は、給電コイル211と電磁誘導により結合する空心コイルにより形成され、受電装置30の共鳴コイル312と自己共振(共鳴)周波数が一致したときに磁界共鳴関係となり電力を効率良く伝送する。 共鳴コイル212-1,212-2は、給電コイル211との電磁誘導により結合可能な範囲に配置される。 ただし、共鳴コイル212-1,212-2は、給電コイル211と直交しないように配置される。 図2の例では、異なる共鳴(共振)周波数f1,f2を有する共鳴(共振)コイル212-1,212-2が、一つの給電コイル211を挟んでその両側に配置されている。給電コイル211は一つで共有できる。 なお、本実施形態において、共鳴周波数f1とf2は、f1<f2の関係をもって設定されるものとする。」 (4)「【0023】 送電器22は、複数の周波数f1,f2の送信すべき2つの正弦波、あるいは正弦波と高周波変調信号を生成し、生成した周波数f1,f2の送信信号を給電コイル211に給電する。 送電器22は、たとえば第1の周波数f1の電力伝送用正弦波を生成する機能と、第2の周波数f2の高周波変調信号を生成する機能と、を含み、2つの周波数を使って電力および信号を送信するように構成可能である。 あるいは、送電器22は、たとえば第1の周波数f1の電力伝送用正弦波を生成する機能と、第2の周波数f2の電力伝送用正弦波を生成する機能と、を含み、2つの周波数を時間的に切り替えて電力を送信するように構成可能である。」 (5)「【0052】 図15の例では、給電装置20Bと受電装置30Bが図7に示すように共鳴コイルを2つずつ有している場合である。 給電装置20Aの送電器22Bは、周波数f1,f2の電力伝送用正弦波を生成する周波数可変型正弦波発生回路221Bを有する。 受電装置30Bの受信器32Bは、整流回路322B、電圧安定化回路323を有する。 【0053】 図15の例では、送電器22B内部には周波数可変型正弦波発生回路221Bが配置されており、2つの周波数f1,f2を切り替えて正弦波を生成できる。 送受の共鳴コイルはこれら2つの周波数f1,f2で良好な送受が行われる。 受電側の整流回路322Bはこれら2つの周波数帯で使用可能であり、ひとつの回路でよい。電圧安定化回路323で電圧安定化を施し、後段のブロックへ電力を供給する。 この例の場合、他機への妨害を避けるために、2つの周波数を時間的に切り替えて使う用途に適用できる。」 ア.上記(1)及び(2)によれば、給電装置20は非接触で電力の供給を行うものであり、送電コイル部21及び送電器22を含むものである。 イ.上記(4)によれば、送電器22は、第1の周波数f1の電力伝送用正弦波を生成する機能と、第2の周波数f2の電力伝送用正弦波を生成する機能と、を含み、2つの周波数を時間的に切り替えて電力を供給している。また、上記(5)によれば、送電器22の一例である送電器22B内部には周波数可変型正弦波発生回路221Bが配置されており、2つの周波数f1,f2を切り替えて正弦波を生成できる。 ウ.上記(3)によれば、送電コイル部21は、給電コイル211と共鳴コイル212-1,212-2を有し、給電コイル211には、送電器22により、交流電流(上記「イ」の第1の周波数f1の電力伝送用正弦波、第2の周波数f2の電力伝送用正弦波)が給電され、共鳴コイル212-1、212-2は、受電装置30の共鳴コイル312と自己共振(共鳴)周波数が一致したときに磁界共鳴関係となり電力を効率良く伝送するものである。 エ.上記(5)によれば、受電側において、共鳴コイル312で受けた電力を、整流回路322B、電圧安定化回路323を介して、後段のブロックに供給する。 したがって、上記(1)ないし(5)の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「送電器22及び送電コイル部21を含み、 送電器22は、第1の周波数f1の電力伝送用正弦波、第2の周波数f2の電力伝送用正弦波を送電コイル部21に供給し、また、電力伝送用正弦波の周波数f1、f2を切り替えて生成する周波数可変型正弦波発生回路を備えており、 送電コイル部21は、受電装置30の共鳴コイル312と磁界共鳴関係となり、受電装置30の共鳴コイル312に電力を供給し、共鳴コイル312は後段のブロックに電力を供給する非接触で電力の供給を行う給電装置。」 第5 対比・判断 1.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「送電コイル部21」は、送電器22から、第1の周波数f1の電力伝送用正弦波と、第2の周波数f2の電力伝送用正弦波に係る電力が供給されるものであって、非接触で電力の供給を行う給電装置に係るコイルであるので、本願発明の「充電用コイル」と引用発明の「送電コイル部21」は、「電力を供給されたコイル」である点で共通している。 ただし、本願発明においては、「充電用コイル」に「充電用電力」が供給されるのに対し、引用発明においては、「充電用」であることは特定されていない。また、本願発明においては、「車両から」電力が供給されているが、引用発明においては、その点も特定されていない。 (2)引用発明は、送電コイル部21が受電装置30の共鳴コイル312と磁界共鳴関係となり、受電装置30の共鳴コイル312に電力を供給するものである。ここで、磁界共鳴関係による、非接触で電力の供給とは、一般的に、磁界共鳴方式と呼ばれるものであって、送電コイル部21に電力伝送用の正弦波が供給されると、その周波数の磁界の変化が送電コイル部21に発生し、受電装置30の共鳴コイル312には、その周波数の磁界の変化によって、電圧が誘起され、電流が流れることは技術常識である。 してみれば、引用発明は、コイル(送電コイル部21)から発生する磁束によって、受電側のコイル(受電装置30の共鳴コイル312)に電圧が誘起される点で本願発明と共通する。 ただし、上記(1)で説示したとおり、引用発明においては、「充電用」であることは特定されておらず、受電装置30の共鳴コイル312が電力を供給する「後段ブロック」が、「充電対象機器に設けられた蓄電部」であることも特定されていない。したがって、引用発明の受電装置30の「共鳴コイル312」は「受電側コイル」ということはできるものの、「充電対象機器に設けられている」点や、「充電対象機器に設けられた蓄電部」に電力を供給する点までは特定されていない。 (3)引用発明の「周波数可変型正弦波発生回路」は、送電器22から供給する電力伝送用正弦波の周波数を切り替えることが可能であるので、本願発明の「充電周波数変更部」と同様に、「電力の周波数を変更可能とする」ものであるということができる。 したがって、本願発明の「充電用周波数変更部」と引用発明の「周波数可変型正弦波発生回路」は、「周波数変更部」である点で共通するが、上記(1)で説示したのと同様に、引用発明においては、「充電用電力」の「充電周波数」であることは特定されていない。 また、本願発明は、「車両の乗員」の操作によって周波数を変更するのに対し、引用発明は、何によって周波数を変更するのかが特定されていない。 (4)引用発明の「非接触で電力の供給を行う給電装置」は、非接触で電力の供給を行う点で本願発明と一致するものの、上記(1)ないし(3)で説示したように、車両用・充電用であるという用途は特定されていない点で相違する。 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「電力を供給されたコイルから発生する磁束によって、受電側コイルに電圧が誘起され、前記受電側コイルから給電対象に電力が供給される装置であって、 前記電力の周波数を変更可能とする周波数変更部を備えた非接触で電力の供給を行う装置。」 [相違点1] 非接触で電力の供給を行う装置が、本願発明においては「車両用」であるのに対し、引用発明においては、具体的な用途は特定されていない点。 そのため、本願発明は、「車両から」電力をコイルに供給し、また、「車両の乗員」の操作によって、電力の周波数を変更するのに対し、引用発明は、それらの事項が特定されていない点。 [相違点2] 非接触で電力の供給を行う装置が、本願発明においては、「受電側コイル」と「蓄電部」が設けられる「充電対象機器」を「充電」するもの、すなわち、「充電用」であるのに対し、引用発明においては、具体的な用途は特定されていない点。 そのため、本願発明は、「充電用コイル」に「充電用電力」が供給され、受電側コイルが「充電対象機器に設けられて」おり、「充電対象機器に設けられた蓄電部」に電力を供給しており、さらに、「充電用電力」の「充電周波数」であるのに対し、引用発明は、それらの事項が特定されていない点。 2.判断 (1)相違点1について 原査定で引用された引用文献2(段落【0016】-【0020】)に記載があるように、非接触で電力の供給を行う装置に「車両から」電力を供給することや、当該装置を車両内で用いることは周知である。 してみれば、引用発明における非接触で電力の供給を行う装置を、上記周知技術のように車両用として用いることは、当業者が適宜なし得たことである。また、車両内の機器の操作を、車両の乗員が行うことはごく普通のことであるから、車両内で用いる際に、電力の周波数の変更の操作を、車両の乗員が行えるようにする程度のことは、当業者にとって格別の困難性を伴うことではない。 (2)相違点2について 原査定で引用された引用文献2(段落【0016】-【0020】)に記載があるように、非接触で電力の供給を行う装置において、「充電用コイル」に「充電用電力」を供給すること、受電側のコイルを「充電対象機器に設け」ること、「充電対象機器に設けられた蓄電部」に電力を供給すること、及び「充電用電力」の「充電周波数」にすることは周知である。 してみれば、非接触で電力の供給を行う装置を、上記周知技術のように充電用として用いることは、当業者が適宜なし得たことである。 (3)本願発明の効果 本願発明の効果は、「ラジオノイズの発生を抑制してラジオ放送が聞きづらくなることを防止できる」(段落【0007】)ことである。 ここで、非接触で電力の供給を行う装置を車両内で使用すると、電力伝送の周波数における交流電力の一部又はその高調波周波数成分が、ラジオノイズとして現れることは、特開2012-178964号公報の段落【0004】、【0005】にも記載されるように本願出願前に当業者に知られていた課題である。 してみれば、引用発明が「他機への妨害を避ける」(段落【0053】)ことができるという効果を奏するものであること、及び、上記当業者に知られていた課題を勘案すると、本願発明の上記効果については、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。 (4)審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、 「本願の図4に記載したように非接触充電を行う際には充電周波数以外にも多くの高調波が発生しているので、これらすべての高調波によるラジオノイズを回避するためには、予め設定された複数の周波数f1、f2を切り替えただけでは、十分ではありません。 したがって、多くの高調波によるラジオノイズをすべて回避するためには、本願発明のように車両の乗員の操作によって充電用電力の周波数を変更可能にする必要があり、このようにしなければ多くの高調波によるラジオノイズをすべて回避することはできません。 従いまして、引用文献1に記載された発明のように、予め設定された複数の周波数f1、f2を切り替えただけでは、本願発明と同様にラジオノイズを回避することはできません。」と主張している。 しかしながら、本願発明の「車両の乗員の操作によって充電用電力の周波数を変更可能とする充電周波数変更部」には、車両の乗員の操作によって「予め設定された複数の周波数f1、f2を切り替える」ものも含まれる。したがって、本願発明の「車両の乗員の操作によって充電用電力の周波数を変更可能とする充電周波数変更部」は、「多くの高調波によるラジオノイズをすべて回避するため」のものに限定されるわけではない。 よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-05-09 |
結審通知日 | 2018-05-15 |
審決日 | 2018-05-30 |
出願番号 | 特願2012-277708(P2012-277708) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂本 聡生 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
森川 幸俊 鈴木 圭一郎 |
発明の名称 | 車両用非接触充電装置 |
代理人 | 三好 秀和 |