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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1342865
審判番号 不服2017-13705  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-14 
確定日 2018-08-10 
事件の表示 特願2013-106039号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 8日出願公開、特開2014-226197号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月20日の出願であって、平成28年4月15日付けで拒絶理由が通知され、同年6月27日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月21日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成29年3月1日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年7月6日付けで、同年3月1日付けの手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正に対しての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、平成30年2月13日付けで請求人から上申書が提出された。

第2 平成29年9月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年9月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲は、平成28年6月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲記載の、

「【請求項1】
以下の構成を備えていることを特徴とする遊技機。
(1)他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段とを備えることにより、遊技機間で遊技情報のやり取りを行い得る構成を備えていること。
(2)他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段を備えていること。
(3)前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき、前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段を備えていること。
(21)前記遊技情報送信手段による送信動作を行うか否かの設定を切り換える送信許否設定手段と、該送信拒否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(22)前記遊技情報受信手段の受信動作を行うか否かの設定を切り換える受信許否設定手段と、該受信拒否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(23)前記起因演出実行可能化手段による前記他の遊技機の遊技情報に起因した演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える起因演出許否設定手段を備えていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成を備えていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
(4)前記遊技情報送信手段を、特定の条件が成立したことを契機に、前記遊技情報の送信を実行する手段として構成すること。
(5)前記遊技情報送信手段を介して他の遊技機に対する遊技情報送信要求を送信する送信要求手段を備えていること。
(6)前記起因演出実行可能化手段は、前記他の遊技機から受信した遊技情報を反映して演出の内容に変化を与える演出内容変化手段として構成されていること。
(7)前記他の遊技機から送信された遊技情報を受信した場合に、当該受信した遊技情報を、前記遊技情報送信手段を用いてさらに他の遊技機へと送信する遊技情報伝令手段を備えていること。
(8)前記遊技情報の送受信は無線手段により行われること。
【請求項3】
前記送信許否設定手段、受信許否設定手段、及び他台起因演出許否設定手段は、遊技者による拒否設定が可能な構成とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。」が

「【請求項1】
以下の構成を備えていることを特徴とする遊技機。
(1A)他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段と、を備えることにより、遊技機間で、大当たり回数又は獲得出玉情報を含む遊技情報のやり取りを行い得る構成を備えていること。
(1B)他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段を備え、該起因演出実行データ記憶手段には、前記起因演出実行データとして、前記大当たり回数又は獲得出玉情報を用いた比較又は対戦型の起因演出を実行するための比較・対戦型起因演出実行データを記憶させてあること。
(1C)前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき、前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段を備えていること。
(1D)前記遊技情報送信手段による送信動作を行うか否かの設定を切り換える送信許否設定手段と、該送信許否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(1E)前記遊技情報受信手段の受信動作を行うか否かの設定を切り換える受信許否設定手段と、該受信許否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(1F)前記起因演出実行可能化手段により開始可能とされた起因演出実行データに基づいた演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える起因演出許否設定手段を備えていること。
(1G)前記送信許否設定手段、受信許否設定手段、及び起因演出許否設定手段は、前記送信動作、前記受信動作、及び前記起因演出実行データを用いた演出の実行について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定が可能な構成とされていること。
(2A)前記遊技情報送信手段を、特定の条件が成立したことを契機に、前記遊技情報の送信を実行する手段として構成し、前記比較・対戦型起因演出実行データに基づく起因演出の実行が設定されているときは、前記遊技情報として大当たり回数又は出玉獲得情報を送信する手段として構成すること。
(2B)前記遊技情報送信手段を介して他の遊技機に対する遊技情報送信要求を送信する送信要求手段を備えていること。
(2C)前記起因演出実行可能化手段は、前記他の遊技機から受信した遊技情報を反映して演出の内容に変化を与える演出内容変化手段として構成され、前記比較・対戦型起因演出実行データに基づいて起因演出を実行する場合は、前記他台遊技情報記憶領域に蓄積した他の遊技機の大当たり回数又は獲得出玉情報、及び前記自台遊技情報記憶領域に蓄積した自台の大当たり回数又は獲得出玉情報の両方を用いて演出の内容に変化を与える手段として構成されていること。
(2D)前記他の遊技機から送信された遊技情報を受信した場合に、当該受信した遊技情報を、前記遊技情報送信手段を用いてさらに他の遊技機へと送信する遊技情報伝令手段を備えていること。
(2E)前記遊技情報の送受信は光信号及び音信号の両方を送受信し得る無線手段により行われること。」と補正された。
(下線は補正箇所を示す。また、各分説の冒頭の記号は請求人(出願人)が、それぞれの手続補正において付したものである。)

そして、この補正は、補正前の、請求項1又は2を引用する請求項3について、請求項2のみを引用する請求項3に限定した上で、補正前の請求項1,2については削除して補正前の請求項3を補正後の請求項1とし、さらに、次の補正をすることを含むものであるといえる。
a 「遊技機間でやりとりをする遊技情報」を「大当たり回数又は獲得出玉情報を含む遊技情報」と特定して限定する補正。
b 「起因演出実行データ記憶手段」について「該起因演出実行データ記憶手段には、前記起因演出実行データとして、前記大当たり回数又は獲得出玉情報を用いた比較又は対戦型の起因演出を実行するための比較・対戦型起因演出実行データを記憶させてあること。」と特定して限定する補正。
c 「起因演出実行可能化手段による演出」について「開始可能とされた起因演出実行データに基づいた演出」と特定して限定する補正。
d 「遊技者による許否設定」について「前記送信動作、前記受信動作、及び前記起因演出実行データを用いた演出の実行について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定」とする限定をする補正。
e 「遊技情報送信手段を、特定の条件が成立したことを契機に、前記遊技情報の送信を実行する」ことについて、「前記比較・対戦型起因演出実行データに基づく起因演出の実行が設定されているときは、前記遊技情報として大当たり回数又は出玉獲得情報を送信する」とする限定をする補正。
f 「起因演出実行可能化手段は、前記他の遊技機から受信した遊技情報を反映して演出の内容に変化を与える」ことについて「比較・対戦型起因演出実行データに基づいて起因演出を実行する場合は、前記他台遊技情報記憶領域に蓄積した他の遊技機の大当たり回数又は獲得出玉情報、及び前記自台遊技情報記憶領域に蓄積した自台の大当たり回数又は獲得出玉情報の両方を用いて演出の内容に変化を与える」とする限定をする補正。
g 「無線手段」について「光信号及び音信号の両方を送受信し得る無線手段」と特定して限定する補正。
h 「送信拒否設定手段」及び「受信拒否設定手段」について、「送信許否設定手段」及び「受信許否設定手段」に、誤記を訂正する補正。

すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とする補正、同項第2号に掲げる請求項のいわゆる限定的減縮を目的とする補正、及び、同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とする補正を含むものである。

そして、本件補正は、【0023】、【0025】、【0106】?【0116】【0156】及び【0157】等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-187784号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付したものである。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御可能となる遊技機であって、
当該遊技機における遊技に関連する遊技情報を記憶する遊技情報記憶手段と、前記遊技情報記憶手段に記憶されている前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう通信手段と、
表示状態が変化する表示手段と、
前記表示手段の表示状態を制御する表示制御手段とを備えており、
前記表示制御手段は、
当該遊技機の遊技情報記憶手段に記憶されている遊技情報と、
前記通信手段により受信した他の遊技機から送信される遊技情報とを前記表示手段に表示する制御を行なうことを特徴とする、遊技機。
【請求項2】
前記通信手段が遊技情報の送受信を相互に行なう遊技機の台数を設定する通信台数設定手段をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記遊技情報の取得を行なう旨の取得指令信号を外部より受信する取得指令信号受信手段と、
前記取得指令信号受信手段により前記取得指令信号が受信されたときに、前記通信手段により遊技情報の送受信を行なう他の遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段とをさらに備え、
前記通信手段は、前記送信要求信号を受信した他の遊技機より当該他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行ない、
前記遊技情報記憶手段は、前記通信手段により受信された前記遊技情報を前記他の遊技機毎に対応させて記憶し、
前記遊技情報記憶手段により前記他の遊技機すべての遊技情報を記憶したときに、当該遊技機に隣接する遊技機へ、少なくとも前記取得指令信号を前記通信手-段によって送信される当該遊技機にかかる遊技情報とともに送信する取得指令信号送信手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
所定の遊技情報取得条件が成立したときに、前記通信手段により遊技情報の送受信を行なう他の遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記送信要求信号を受信した他の遊技機より当該他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行ない、
前記遊技情報記憶手段は、前記通信手段により受信された前記遊技情報を前記他の遊技機毎に対応させて記憶し、
前記通信手段は、前記遊技情報記憶手段により前記他の遊技機すべての遊技情報を記憶したときに、該記憶されたすべての遊技情報を前記他の遊技機へ送信することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項5】
遊技機を他の遊技機と識別するための識別データを入力する識別データ入力手段と、
前記識別データ入力手段により入力された識別データを記憶する識別データ記憶手段とを備え、
前記通信手段は、前記他の遊技機より少なくとも前記識別データ記憶手段に記憶された識別データを示す識別データ特定情報とともに遊技情報を受信し、
前記表示制御手段は、前記通信手段により受信された前記識別データ特定情報と遊技情報とにもとづいて、前記識別データ特定情報から特定される識別データにより識別される遊技機にかかる遊技情報を前記表示手段に表示することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の遊技機。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記他の遊技機すべてにかかる遊技情報を前記表示手段へ一覧表示を行なう一覧表示制御手段を備えたことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の遊技機。
【請求項7】
前記表示制御手段は、
前記受信した遊技情報にもとづき、他の遊技機のそれぞれにおける順位を算出する順位算出手段と、
前記順位算出手段により算出された前記他の遊技機のそれぞれの順位を表示する順位表示手段とを含むことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の遊技機。
【請求項8】
前記遊技情報記憶手段は、
当該遊技情報記憶手段を備えた遊技機にかかる遊技情報を記憶する自機遊技情報記憶領域と、
前記通信手段により受信された前記他の遊技機にかかる遊技情報を記憶する他機遊技情報記憶領域とを含むことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の遊技機。
【請求項9】
前記他の遊技機のうち遊技者の所望する遊技機を遊技者からの指示にもとづいて選択する遊技機選択手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記遊技機選択手段によって選択された遊技機にかかる遊技情報を前記表示手段へ個別に表示することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の遊技機。
【請求項10】
前記表示制御手段は、当該遊技機にかかる遊技情報と、前記他の遊技機のうち前記遊技機選択手段によって選択された遊技機にかかる遊技情報とを遊技者に対比可能に表示することを特徴とする、請求項9に記載の遊技機。
【請求項11】
前記通信手段は、所定条件が成立したときに、前記他の遊技機のうち前記遊技機選択手段によって選択された遊技機と所定の対戦遊技を実行する対戦遊技実行手段を備え、
前記対戦遊技実行手段は、当該遊技機の遊技情報記憶手段に記憶された遊技情報と前記遊技機選択手段によって選択された遊技機から受信した遊技情報とにもとづいて、前記所定の対戦遊技の対戦結果を判定する対戦結果判定手段を備え、
前記表示制御手段は、前記対戦結果判定手段による判定にもとづいて前記所定の対戦遊技の対戦結果を前記表示手段に表示することを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の遊技機。」

「【0046】
図3は、遊技制御基板29における回路構成の一例を示すブロック図である。図3には、制御基板として、遊技制御基板(主基板ともいう)29、払出制御基板37、ランプ制御基板30、音声制御基板70、表示制御基板80および通信制御基板79が示されている。
・・・省略・・・
【0051】
遊技制御基板29には、遊技制御プログラムにしたがってパチンコ遊技機1を制御する基本回路(遊技制御用マイクロコンピュータ)53と、スイッチ回路58と、ソレノイド回路59と、情報出力回路64と、アドレスデコード回路67とが設けられている。
【0052】
基本回路53は、遊技制御用のマイクロコンピュータであり、遊技制御用のプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)54、ワークメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)55、制御用のプログラムにしたがって制御動作を行なうCPU56、I/Oポート57を含む。基本回路53は、定期的(たとえば2msec毎)にROM54に記憶されている遊技制御プログラムを先頭から繰返し実行する。
・・・省略・・・
【0061】
さらに、遊技制御基板29から通信制御基板79に伝送されるコマンドは、遊技情報表示装置86にパチンコ遊技機1の遊技情報を表示するときに用いる通信制御コマンドが送信される。具体的には、大当り発生コマンド,確変中コマンド,始動入賞検出コマンド,および,賞球数コマンドが通信制御基板79に伝送される。なお、大当り発生コマンドとは大当り遊技状態が発生したことを特定可能な信号をいい、確変中コマンドとは確率変動状態中であることを特定可能な信号をいい、始動入賞検出コマンドとは可変表示装置8の特別図柄表示部9の特別図柄の可変表示結果が導出されたことを特定可能な信号をいい、これらをまとめて通信制御コマンドという。これら送信されてきた通信制御コマンドは自遊技情報格納RAM41に格納され、通信制御基板79に搭載された通信制御用CPU40により、大当り発生コマンドにもとづき大当り回数が、確変中コマンドにもとづき確変回数が、始動入賞検出コマンドにもとづき総スタート回数が、大当り回数と総スタート回数にもとづき大当り後スタート回数と大当り確率が、賞球数コマンドにもとづき出玉数がそれぞれ特定される。
・・・省略・・・
【0065】
図4は、遊技情報表示装置86の表示状態を制御するための通信制御基板79内の回路構成を、画像表示を実現するLCDから構成された情報表示部87と遊技者からの選択・指示を受け付けるためのコントローラー88とともに示すブロック図である。
【0066】
通信制御基板79には、RAM101aが内蔵された通信制御用CPU40と、かかる通信制御用CPU40を動作させるプログラムが格納された制御データROM43とにより、遊技制御基板29からI/Oポート105を介して受信された通信制御コマンドを取込み、取込んだ通信制御コマンド毎にパチンコ遊技機1用の自遊技情報格納RAM41に一旦格納される。格納された通信制御コマンドにもとづいて、情報表示部87にパチンコ遊技機1にかかる遊技情報を表示する表示制御が行なわれる。なお、制御データROM43には、情報表示部87に表示するときの表示パターンに関するデータ等が複数種類記憶されている。
【0067】
また、通信制御基板79には、通信制御用CPU40により、他のパチンコ遊技機から送信されてきた通信制御コマンドをI/Oポート106を介して取込み、取込んだ通信制御コマンドを一旦格納するための他遊技情報格納RAM42を搭載している。格納された通信制御コマンドにもとづいて、情報表示部87に他のパチンコ遊技機にかかる遊技情報を表示する表示制御が行なわれる。なお、他遊技情報格納RAM42には、格納されている通信制御コマンドが他のいずれのパチンコ遊技機の遊技情報であるかを特定できるように格納されており、遊技者からコントローラー88を介し選択・指示されたパチンコ遊技機の遊技情報を特定し、表示できるように構成されている。
【0068】
さらに、通信制御基板79には、遊技情報を送受信できるパチンコ遊技機の台数を表示する7セグの表示装置84と、遊技場側の作業により送受信できるパチンコ遊技機の中からひとつのパチンコ遊技機を識別可能にする台番号を入力するための入力装置89とを搭載している。かかる入力装置89により入力された台番号は、遊技情報と関連させて自遊技情報格納RAM41に格納され、遊技情報と関連させて送信され、受信したパチンコ遊技機における他遊技情報格納RAM42においても遊技情報と関連付けて記憶される。これにより、遊技者からコントローラー88を介し選択・指示されたパチンコ遊技機の遊技情報を特定できる。なお、本実施形態においては、仮に入力装置89による台番号の入力がなされなかったときにおいても、パチンコ遊技機の電源を投入したときに自動的に通信可能台数が登録されるプログラムが組み込まれており、登録された台数から台番号を割り出しデフォルト値として自動的に台番号を設定することができる。たとえば、通信可能台数の中で最初に通信台数が登録された台番号を「1」とし、2番目に通信台数が登録された台番号を「2」とし、以降3番目は「3」、4番目は「4」…となるように台番号を設定することができる。
【0069】
前述した自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42に記憶されている遊技情報を情報表示部87に表示する制御について説明する。まず、通信制御用CPU40は、コントローラー88により選択・指示されたパチンコ遊技機の自遊技情報格納RAM41または他遊技情報格納RAM42に記憶されている通信制御コマンドデータを用いて遊技情報を特定し、特定した遊技情報に応じた指令をVDP103に与える。VDP103は、キャラクタROM86から必要なデータを読出す。そして、VDP103は、入力されたデータに従って情報表示部87に表示するための画像データを生成し、その画像データをVRAM86aに格納する。そして、VRAM86a内の画像データは、R(赤),G(緑),B(青)信号(RGB信号)に変換され、D/A変換回路104でアナログ信号に変換されて情報表示部87に出力される。」

「【0083】
図8は、メインメニュー画面において指定台情報選択ボタン31が選択決定されたときの指定台情報の表示画面を示す図である。なお、指定台情報とは、パチンコ遊技機1の遊技情報と遊技者が選択決定したパチンコ遊技機の遊技情報を大当り回数,大当り後スタート回数,総スタート回数,確変回数,および大当り確率等の各項目毎に対比した対比情報をいう。かかる対比は、通信制御用CPU40により自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42に格納された遊技情報にもとづき行なわれている。」

「【0099】
図12は、メインメニュー画面および各情報表示画面において戻る選択ボタン35が選択決定されたときの演出画面または対戦モード画面を示す図である。ここで、図12(b)の演出画面とは、パチンコ遊技機の遊技情報を表示する画面とは異なり、前述した可変表示装置8の特別図柄表示部9において導出表示される特別図柄の表示結果に関連した演出が行なわれる画面であって、可変表示中にリーチが発生することや表示結果が同一種類の図柄のゾロ目となり大当りとなること等を事前に報知する予告演出や、可変表示中または大当り遊技中の特別図柄表示部9の表示状態と関連させてキャラクタを出現させるキャラクタ演出等が行なわれる表示がなされる。一方、図12(c)の対戦モード画面とは、パチンコ遊技機1の遊技情報と、遊技者が対戦を希望する他のパチンコ遊技機の遊技情報を用いて、遊技情報から特定できる一項目、すなわち大当り回数,大当り後スタート回数,総スタート回数,確変回数,および大当り確率のいずれかにおいてどちらがより早く回数を重ねることができるか、または、どちらがより高確率に大当りを発生させているか等について競い合うような演出が行なわれる表示がなされる。」

「【0100】
なお、本実施形態における対戦モード画面においては、パチンコ遊技機1と遊技者が対戦を希望する他のパチンコ遊技機とでどちらの方が早く大当りを発生させることができるかについて競い合う対戦演出が行なわれる例について説明する。また、演出画面と対戦モード画面とは、メインメニュー画面および各情報表示画面のときに戻る選択ボタンを選択決定したときに、対戦フラグがオン状態であるか否かにより異なり、対戦フラグがオフ状態であるときには演出画面に、対戦フラグがオン状態であるときには対戦モード画面に切換えられる。さらに、対戦モード画面による対戦が終了し対戦フラグがオフ状態になったときに演出画面に切換えられ、所定時間が経過したときに対戦条件が成立し対戦フラグがオン状態となり対戦モード画面に切換えられる。
・・・省略・・・
【0105】
図13(g)は、51番台のパチンコ遊技機1が先に勝利条件を満たしたときの表示画面を示す図である。表示画面においては、上方から大当りが発生したことを報知する「大当り」の表示と、先に大当りを引き勝利したことを報知する「あなたの勝ち」といった表示がなされ、さらに下方において、ボクシング対戦演出により対戦していた51番台側のキャラクタが58番台側のキャラクタを倒すキャラクタ演出が行なわれている。図13(h)は、対戦バトルが終了し演出画面に切換えられたときの表示画面を示す図である。すなわち、対戦フラグがオフ状態になったときの表示画面である。
【0106】
図13(i)は、58番台のパチンコ遊技機が、51番台のパチンコ遊技機1より先に勝利条件を満たしたときの表示画面を示す図である。表示画面においては、上方から対戦相手のパチンコ遊技機が大当りとなったことを報知する「大当り」の表示と、先に大当りを引かれ惨敗したことを報知する「残念・・・」といった表示がなされ、さらに下方において、ボクシング対戦演出により対戦していた58番台側のキャラクタが51番台側のキャラクタを倒すキャラクタ演出が行なわれている。図13(j)は、対戦バトルが終了し演出画面に切換えられたときの表示画面を示す図である。すなわち、対戦フラグがオフ状態になったときの表示画面である。」

「【0121】
図16は、図14を用いて前述した通信制御メイン処理のS06で行なわれる遊技情報収集処理のサブルーチンプログラムを説明するためのフローチャートである。ここでは、パチンコ遊技機1と通信可能なパチンコ遊技機の遊技情報を自動収集する処理が行なわれる。
・・・省略・・・
【0127】
以上のように、本実施形態においては、通信可能なパチンコ遊技機のうち、1号機から情報要求信号が他のパチンコ遊技機に送信され、情報要求信号を受信した他のパチンコ遊技機は自台の遊技情報を1号機へ送信し、すべてのパチンコ遊技機にかかる遊技情報を受信したときに通信可能なすべてのパチンコ遊技機にかかる遊技情報をすべてのパチンコ遊技機に送信するようにして、遊技情報を収集している。」

「【0152】
パチンコ遊技機1と通信可能なパチンコ遊技機は、隣接するパチンコ遊技機と通信線90により通信できるように接続されており、台番号と関連して送信される遊技情報をすべてのパチンコ遊技機と送受信可能となるように構成されている。具体的には、パチンコ遊技機1が、台番号と関連してパチンコ遊技機2にかかる遊技情報を受信し、パチンコ遊技機2を介してパチンコ遊技機3にかかる遊技情報を受信し、パチンコ遊技機2,3・・を介してパチンコ遊技機(n-1)にかかる遊技情報を受信し、パチンコ遊技機2,3・・を介してパチンコ遊技機nにかかる遊技情報を受信し、パチンコ遊技機2,3,・・・(n-1),nにかかるすべての遊技情報を受信したときに、パチンコ遊技機2に対しパチンコ遊技機1にかかる遊技情報と遊技情報取得信号とを送信する。かかる処理をパチンコ遊技機2,3,・・・(n-1),nの順に繰返し、それぞれのパチンコ遊技機において他のパチンコ遊技機にかかる遊技情報を取得することができる。なお、両端に配置されたパチンコ遊技機には終端抵抗91が設けられており、通信線90を通じてかかる終端抵抗91に信号を送信したときにはかかる信号を送信したパチンコ遊技機に再送信されるため、かかるパチンコ遊技機が末端であることを自動的に認識させるように構成されている。」

イ 引用文献1に記載された発明の認定
(ア)引用文献1に記載された発明を認定するにあたり、本願補正発明の各分説の特定事項毎に、引用文献1に記載の対応する事項を検討する
a 本願補正発明(1A)対応部分について
【0099】の「対戦モード画面とは、パチンコ遊技機1の遊技情報と、遊技者が対戦を希望する他のパチンコ遊技機の遊技情報を用いて、遊技情報から特定できる一項目、すなわち大当り回数,大当り後スタート回数,総スタート回数,確変回数,および大当り確率のいずれかにおいてどちらがより早く回数を重ねることができるか、または、どちらがより高確率に大当りを発生させているか等について競い合うような演出」の記載では、対戦モード画面で競い合う項目として「大当り回数,大当り後スタート回数,総スタート回数,確変回数,および大当り確率のいずれかにおいてどちらがより早く回数を重ねることができるか、または、どちらがより高確率に大当りを発生させているか等」と例示されており、大当たり回数を競い合うものも記載されているといえる。
よって、【請求項1】の「遊技機における遊技に関連する遊技情報を記憶する遊技情報記憶手段と、前記遊技情報記憶手段に記憶されている前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう通信手段」の記載を参酌すれば、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「遊技機における遊技に関連する遊技情報を記憶する遊技情報記憶手段と、前記遊技情報記憶手段に記憶されている前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう通信手段と、を備えていることにより、遊技機と他の遊技機の間(以下、「遊技機間」という。)で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれること。」

b 本願補正発明(1B)対応部分について
【0066】には「通信制御用CPU40を動作させるプログラムが格納された制御データROM43とにより、遊技制御基板29からI/Oポート105を介して受信された通信制御コマンドを取込み、取込んだ通信制御コマンド毎にパチンコ遊技機1用の自遊技情報格納RAM41に一旦格納される。格納された通信制御コマンドにもとづいて、情報表示部87にパチンコ遊技機1にかかる遊技情報を表示する表示制御が行なわれる。なお、制御データROM43には、情報表示部87に表示するときの表示パターンに関するデータ等が複数種類記憶されている。」と記載されており、
(a)通信制御用CPU40を動作させるプログラムが制御データROM43に格納されること、
(b)遊技制御基板29から受信された通信制御コマンドを、一旦、自遊技情報格納RAM41に格納し、格納された通信制御コマンドに基づいて情報表示部87に自遊技機に係る遊技情報を表示する表示制御がおこなわれること、及び、
(c)情報表示部87に表示するときの表示パターンに関するデータが制御データROM43に記憶されていることが記載されている。
【0067】には、他のパチンコ遊技機から送信されてきた通信制御コマンドを、一旦、他遊技情報格納RAM42に格納し、格納された通信制御コマンドに基づいて情報表示部87に他のパチンコ遊技機に係る遊技情報を表示する表示制御がおこなわれることが記載されている。
【0083】には、大当り回数等にかかる対比は、通信制御用CPU40により自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42に格納された遊技情報にもとづき行なわれていることが記載されている。
したがって、遊技情報の記憶手段には、自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42(【0083】)とが含まれ、その他の記憶手段として、通信制御用CPU40を動作させるプログラムが制御データROM43(【0066】)が備えられることが記載されている。
また、上記aで述べたように【0099】には、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれる表示がなされることが記載されており、これらを総合して、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「遊技情報の記憶手段には、自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42とが含まれ、その他の記憶手段として、通信制御用CPU40を動作させるプログラムが制御データROM43が備えられ、
自遊技機の遊技情報及び他遊技機の遊技情報にもとづいて大当り回数等について競い合うような演出が行なわれる表示がなされるための、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータが制御データROM43に記憶されていること。」

c 本願補正発明(1C)対応部分について
上記bで述べたように【0066】には、通信制御用CPU40を動作させるプログラム表示パターンに関するデータが制御データROM43に記憶されていることが記載されており、また、【0067】には、他のパチンコ遊技機から送信されてきた通信制御コマンドを、一旦、他遊技情報格納RAM42に格納し、格納された通信制御コマンドに基づいて情報表示部87に他のパチンコ遊技機に係る遊技情報を表示する表示制御がおこなわれることが記載されている。また、【0083】には、大当り回数等にかかる対比は、通信制御用CPU40により自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42に格納された遊技情報にもとづき行なわれていることが記載されている。
また、上記aで述べたように【0099】には、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれることが記載されており、これらを総合して、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「他の遊技機から送信されてきた通信制御コマンドを、一旦、他遊技情報格納RAM42に格納したときに、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なうことを可能とする、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータを記憶する制御データROM43を備えていること。」

d 本願補正発明(2A)及び(2B)対応部分について
【請求項4】には、「所定の遊技情報取得条件が成立したときに、前記通信手段により遊技情報の送受信を行なう他の遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段をさらに備え、」と記載され、【0127】には、情報要求信号を受信したパチンコ遊技機は自台の遊技情報を他の遊技機へ送信することが記載されている。
また、上記aで述べたように【0099】には、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれることが記載されており、その場合の送信する遊技情報には、当然に大当り回数等についての遊技情報も含まれるから、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「他遊技機から情報要求信号を受信したときに、遊技機は自遊技機の遊技情報を他の遊技機へ送信すること、また、遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるときには、当該送信する遊技情報には、大当り回数等についての遊技情報も含まれること。」
また、上記【請求項4】の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「通信手段により遊技情報の送受信を行なう他の遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段をさらに備えること。」

e 本願補正発明(2C)対応部分について
【0105】の「先に大当りを引き勝利したことを報知する「あなたの勝ち」といった表示がなされ、さらに下方において、ボクシング対戦演出により対戦していた51番台側のキャラクタが58番台側のキャラクタを倒すキャラクタ演出が行なわれている」の記載、及び【0106】の「先に大当りを引かれ惨敗したことを報知する「残念・・・」といった表示がなされ、さらに下方において、ボクシング対戦演出により対戦していた58番台側のキャラクタが51番台側のキャラクタを倒すキャラクタ演出が行なわれている。」の記載から、対戦演出において、対戦結果(先に大当りを引き勝利したこと、又は、先に大当りを引かれ惨敗したこと)に基づいて、勝者側(51番台側)の表示画面に「あなたの勝ち」といった表示がなされたり、他側(58番台側)のキャラクタを倒すキャラクタ演出がされる一方で、敗者側(51番台側)の表示画面に「残念」といった表示がなされたり、自側(51番台側)のキャラクタが倒されるキャラクタ演出がされることが記載されている。
また、上記aで述べたように【0099】には、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれることが記載されており、さらに、上記bで述べたように、【0066】【0067】から、自遊技情報は自遊技情報格納RAM41に一旦格納され、他遊技情報は他遊技情報格納RAM42に一旦格納される。また、上記bで述べたように、【0083】には、大当り回数等にかかる対比は、通信制御用CPU40により行なわれていることが記載されている。
これらを総合すると、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「通信制御用CPU40により、遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるときには、大当り回数等についての自遊技情報格納RAM41に格納された自遊技情報と他遊技情報格納RAM42に格納された他遊技情報とを用いた「あなたの勝ち」といった表示「残念・・・」といった表示(以下「競い合いの結果が反映される表示」という。)がなされること。」

f 本願補正発明(2D)対応部分について
【0152】には、「パチンコ遊技機1が、台番号と関連してパチンコ遊技機2にかかる遊技情報を受信し、パチンコ遊技機2を介してパチンコ遊技機3にかかる遊技情報を受信し、」と記載されていることから、引用文献1には次の事項が記載されている。
「パチンコ遊技機1は、パチンコ遊技機2を介して、パチンコ遊技機3の遊技情報を受信する手段を有していること。」

(イ)引用文献1に記載された発明のまとめ
上記(ア)のa?fから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、本願補正発明の(1A)?(2D)の分説に対応して、(1a)?(2d)の符号を付した。また、各分説間で統一されていない用語の関係を明確にするため、一部は用語を統一し、一部は関係を明確にする文章を挿入して修文した。

「以下の構成を備えている遊技機。
(1a)遊技機における遊技に関連する遊技情報を記憶する遊技情報記憶手段と、前記遊技情報記憶手段に記憶されている前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう通信手段と、を備えていることにより、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なわれること。
(1b)遊技情報の記憶手段には、自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42とが含まれ、その他の記憶手段として、通信制御用CPU40を動作させるプログラムを格納する制御データROM43が備えられ、
自遊技機の遊技情報及び他遊技機の遊技情報にもとづいて大当り回数等について競い合うような演出が行われる表示がなされるための、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータが制御データROM43に記憶されていること。
(1c)他の遊技機から送信されてきた通信制御コマンド(遊技情報)を、一旦、他遊技情報格納RAM42に格納したときに、遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なうことを可能とする、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータを記憶する制御データROM43を備えていること。
(2b)通信手段により遊技情報の送受信を行なう他遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段をさらに備えること。
(2a)他遊技機から情報要求信号を受信したときに、遊技機は自遊技機の遊技情報を他の遊技機へ送信すること、また、遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるときには、当該送信する遊技情報には、大当り回数等についての遊技情報も含まれること。
(2c)通信制御用CPU40により、遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるときには、大当り回数等についての自遊技情報格納RAM41に格納された自遊技情報と他遊技情報格納RAM42に格納された他遊技情報とを用いた競い合いの結果が反映される表示がなされること。
(2d)パチンコ遊技機1は、パチンコ遊技機2を介して、パチンコ遊技機3の遊技情報を受信する手段を有していること。」

ウ 引用文献2の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-178870号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊技に必要な図柄を可変表示することで遊技者が遊技を行うスロットマシン、パチンコ機その他の遊技機に関する。更に、このような遊技機と各種情報を管理する情報管理装置との間で通信する遊技機通信システムに関する。」

「【0008】本発明の目的は、遊技に関する情報、情報の要求、メッセージその他の情報のやり取りを行うことができる遊技機を提供することである。もう一つの目的は、遊技者が任意に情報等のやり取りに制限を設けることができる遊技機を提供することである。本発明の別の目的は、上記のような遊技機と遊技に関する情報等を管理する情報管理装置を含む遊技機通信システムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様は、複数の図柄を可変表示し、その可変表示が停止した時の停止態様により遊技者に利益をもたらす遊技状態に移行するか否かの決定に基づいて遊技を進行させる遊技機において、他の遊技機又は各種情報を管理する情報管理装置との間で遊技者のための情報を送受信する送受信部を備えたことを特徴とする。」

「【0105】「着信拒否」とは、他の遊技機が送信した「遊技情報」、「ヘルプ要求」及び「ボーナス入賞報知」を内容とする情報の着信を拒否することをいう。「着信拒否」の選択により、遊技者は、特定の遊技機により送信された情報のみをタッチパネル6に表示することができる。また、他人又は特定人から一切干渉されないので、遊技者は集中して遊技を行うことができる。
【0106】「読み取り拒否」とは、他の遊技機による遊技情報の読み取りを拒否することをいう。各遊技機毎にこの「読み取り拒否」の設定を行えば、特定人、例えば友人のみが遊技情報の読み取りをすることができる。」

エ 引用文献2に記載されている技術事項
上記「ウ」から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているといえる。
「他の遊技機との間で遊技者のための情報を送受信する送受信部を備えた遊技機において、遊技者が、他の遊技機が送信した情報の着信を拒否する「着信拒否」を設定する手段、及び、他の遊技機による遊技情報の読み取りを拒否する「読み取り拒否」を設定する手段を備えること。」

オ 引用文献3の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-283470号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0020】
本実施形態のパチンコ遊技機1には、パチンコ遊技の総括的な制御を行うメイン制御装置20と、メイン制御装置20から送信された情報(コマンド)に基いて、ランプ(装飾ランプ、装飾LED、表示ランプ、表示LED等)30の点灯、点滅等の表示制御及びスピーカ31から音を出す音声制御を実行するランプ・音声制御装置21と、メイン制御装置20からランプ・音声制御装置21を経由して送信されたコマンドを受けて液晶表示装置16に特別図柄、普通図柄及び各種の遊技情報の表示や大当り遊技中の演出表示を行う表示制御装置22と、メイン制御装置20から送信された情報(払出数コマンド)に基いて払出モータ26を駆動することで賞球の払出制御を行う賞球制御装置23と、タッチセンサ32の検出信号を条件として、図示しない遊技盤面に向けて遊技球を発射する打球発射装置(図示せず)の発射モータ27の動作制御を行う発射制御装置24とが配備される。」

「【0029】
次に、各遊技台の表示制御装置22のCPU(以下、表示CPUという)が行う対戦遊技に関する処理について説明する。図4乃至図7は、表示CPUが実行する対戦遊技処理のサブルーチンを示すフローチャートである。なお、対戦遊技処理は、図示しない通常遊技に関する表示制御処理と共に表示CPUにより所定の周期で実行される。対戦遊技処理を開始すると、表示CPUは、まず、対戦モードフラグが初期値「0」であるか否かを判別する(ステップS01)。なお、対戦モードフラグは、当該遊技機が対戦遊技を行う設定となっているか否かを識別するためのフラグである。対戦モードフラグの値は、「1」で対戦遊技を行う対戦モードを規定し、「2」で対戦遊技を行なわない通常モード(非対戦モード)を規定し、電源投入時の初期化処理(図示せず)により初期値「0(未設定)」とされる。
【0030】
電源投入時の初期化処理を行った直後の対戦遊技処理にあっては、対戦モードフラグの値が「0」とされている結果、表示CPUは、ステップS01を真と判別してステップS02に進む。ステップS02に進むと、表示CPUは、図8(a)に示すような対戦モード設定画面を表示する(ステップS02)。対戦モード設定画面には、例えば、「対戦モードをONにしますか?」のように、対戦遊技を行うか否かの旨と、選択入力項目として「YES」と「NO」が表示されている。表示CPUは、対戦モード設定画面において「YES」又は「NO」の設定入力を受け付ける(ステップS03)。なお、表示CPUは、対戦モード設定画面において「YES」又は「NO」の設定入力があるまで、ステップS03を繰り返して待機状態となる。遊技者は、十字キー38を用いて(右操作又は左操作)選択入力項目を選択し、入力スイッチ39を押し操作することで、「YES」又は「NO」の入力を行う。
【0031】
ステップS03において選択入力項目が入力されると、表示CPUは、入力項目が「YES」であるか否かを判別する(ステップS04)。ステップS03において入力項目として「NO」が入力された場合、表示CPUは、ステップS04を偽と判別し、対戦モードフラグに「2(通常モード)」をセットし(ステップS05)、対戦遊技処理を抜けて図示しないメインルーチンに戻り、通常遊技に関する表示制御処理に移行する。この場合には、対戦遊技処理は行われない。
【0032】
一方、ステップS03において入力項目として「YES」が入力された場合、表示CPUは、ステップS04を真と判別し、対戦モードフラグに「1(対戦モード)」をセットし(ステップS06)、ステップS07に進む。この場合、対戦モードフラグに「1(対戦モード)」がセットされている結果、実質的な対戦遊技処理が行われることになる。」

カ 引用文献3に記載の技術事項
上記「オ」から、引用文献3には次の技術事項が記載されているといえる。
「パチンコ遊技機の遊技中の演出表示を行う表示制御装置22において、入力スイッチ39を押し操作することで、対戦遊技処理は行われない選択をする手段を備えること。」

キ 引用文献4の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-168730号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの遊技情報に基いて遊技の演出内容を制御することが可能な遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記遊技機には、遊技機からパチンコホールのホストコンピュータに遊技情報を送信し、ホストコンピュータから複数の遊技機に共通の遊技情報を配信する構成のものがある。この構成の場合、複数の遊技機間で同一の遊技情報を共有し、同一の遊技情報に基いて同一内容の演出を発生させている。
【特許文献1】特開2003-126524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成の場合、遊技機間の双方向通信がホストコンピュータを介して有線で行われる。このため、ホストコンピュータに入力線および出力線の双方を配線する手間を要するので、パチンコホールに対する設置作業が面倒になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1?6に係る各発明は遊技機の設置作業性の低下を招くことなく外部からの遊技情報に基いて遊技の演出内容を制御することを共通の課題とするものであり、共通の課題解決手段は請求項1および請求項2に記載した通りである。以下、請求項1?6に係る各発明を請求項に記載された用語の意義と共に説明する。
<請求項1に係る発明の説明>
請求項1に係る発明は遊技機間で遊技情報を無線通信するものであり、無線通信媒体として光を用いたものである。
1)送信器:遊技情報を外部の受信器に光で送信するものである。この光とは電磁波であり、可視光・可視光外の紫外線・赤外線を総称する用語である。遊技情報とは現在進行中の遊技に関する情報および過去の遊技に関する情報を総称するものであり、当落の判定結果および識別図柄の態様は遊技情報の一例である。
2)受信器:外部の送信器から光で送信される遊技情報を受信し、遊技情報の受信結果に応じた電気信号を出力するものである。
3)演出制御手段:遊技の演出内容を制御するものである。この遊技の演出内容とは遊技を組成する組成要素の駆動内容を称するものであり、例えば表示器の表示内容・鳴動器の鳴動内容・電飾器の電飾内容・機械的な可動物の動作内容が遊技の演出内容に相当する。この遊技は図柄遊技であることが好ましい。この図柄遊技とはパチンコ球が始動口に入賞したことを条件に識別図柄を可変状態および可変停止状態で順に表示し、識別図柄の可変停止状態での態様によって遊技者に当落の判定結果を報知する内容の遊技であり、識別図柄が大当りの態様で可変停止したときには可変入賞口を遊技者に有利な状態にする大当り遊技を図柄遊技に続けて行うことが好ましい。
<請求項2に係る発明の説明>
請求項2に係る発明は遊技機間で遊技情報を無線通信するものであり、無線通信媒体として磁気を用いる点で請求項1に係る発明と相違する。
<請求項3に係る発明の説明>
請求項3に係る発明は両隣を含む3台の遊技機間で遊技情報を無線通信可能としたものである。具体的には遊技情報を専用の送信器から左隣の遊技機および右隣の遊技機に光または磁気で送信し、左隣の遊技機から光または磁気で送信される遊技情報および右隣の遊技機から光または磁気で送信される遊技情報を専用の受信器で受信するものである。
・・・以下、省略・・・」

ク 引用文献5の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-168731号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0001】
本発明は、外部からの遊技情報に基いて遊技の演出内容を制御することが可能な遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記遊技機には、遊技機からパチンコホールのホストコンピュータに遊技情報を送信し、ホストコンピュータから複数の遊技機に共通の遊技情報を配信する構成のものがある。この構成の場合、複数の遊技機間で同一の遊技情報を共有し、同一の遊技情報に基いて同一内容の演出を発生させている。
【特許文献1】特開2003-126524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成の場合、遊技機間の双方向通信がホストコンピュータを介して有線で行われる。このため、ホストコンピュータに入力線および出力線の双方を配線する手間を要するので、パチンコホールに対する設置作業が面倒になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1?5に係る各発明は遊技機の設置作業性の低下を招くことなく外部からの遊技情報に基いて遊技の演出内容を制御することを共通の課題とするものであり、共通の課題解決手段は請求項1および請求項2に記載した通りである。以下、請求項1?5に係る各発明を請求項に記載された用語の意義と共に説明する。
<請求項1に係る発明の説明>
請求項1に係る発明は遊技機間で遊技情報を無線通信するものであり、特には無線通信媒体として音波を用いたものである。
1)送信器:遊技情報を外部の受信器に音波で送信するものである。この音波とは空気中を伝わる波であり、可聴周波数の可聴波・可聴周波数以上の超音波・可聴周波数以下の低周波を総称する用語である。遊技情報とは現在進行中の遊技に関する情報および過去の遊技に関する情報を総称するものであり、当落の判定結果および識別図柄の態様は遊技情報の一例である。
2)受信器:外部の送信器から音波で送信される遊技情報を受信し、遊技情報の受信結果に応じた電気信号を出力するものである。
3)演出制御手段:遊技の演出内容を制御するものである。この遊技の演出内容とは遊技を組成する組成要素の駆動内容を称するものであり、例えば表示器の表示内容・鳴動器の鳴動内容・電飾器の電飾内容・機械的な可動物の動作内容が遊技の演出内容に相当する。この遊技は図柄遊技であることが好ましい。この図柄遊技とはパチンコ球が始動口に入賞したことを条件に識別図柄を可変状態および可変停止状態で順に表示し、識別図柄の可変停止状態での態様によって遊技者に当落の判定結果を報知する内容の遊技であり、識別図柄が大当りの態様で可変停止したときには可変入賞口を遊技者に有利な状態にする大当り遊技を図柄遊技に続けて行うことが好ましい。
<請求項2に係る発明の説明>
請求項2に係る発明は遊技情報を音波で送受信するものであり、特には両隣を含む3台の遊技機間で遊技情報を送受信可能としたものである。具体的には遊技情報を専用の送信器から左隣の遊技機および右隣の遊技機に音波で送信し、左隣の遊技機から音波で送信される遊技情報および右隣の遊技機から音波で送信される遊技情報を専用の受信器で受信するものである。
・・・以下、省略・・・」

ケ 引用文献4,5に記載された周知技術
引用文献4,5から、
「遊技機間で遊技情報を無線通信するものにおいて、無線通信媒体として光を用いることも、音波を用いることも周知の技術である。」
といえる。

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)(1A)と(1a)に関して、
引用発明の「前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう通信手段」が、本願補正発明の「他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段」に相当し、引用発明の「前記遊技情報を他の遊技機に送信するとともに、他の遊技機から送信される他の遊技機にかかる遊技情報の受信を行なう」ことが、本願補正発明の「遊技機間で、大当たり回数又は獲得出玉情報を含む遊技情報のやり取りを行」うことに相当するから、引用発明の(1a)の構成が、本願補正発明の(1A)の構成に相当する。

(イ)(1B)と(1b)に関して、
引用発明の「自遊技機の遊技情報及び他遊技機の遊技情報にもとづいて大当り回数等について競い合うような演出が行われる表示がなされるための、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータ」が,本願補正発明の「他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データ」に相当し、引用発明の「自遊技機の遊技情報及び他遊技機の遊技情報にもとづいて大当り回数等について競い合うような演出が行われる表示がなされるための、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータ」を「記憶」する「制御データROM43」が、本願補正発明の「他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段」に相当する。
また、引用発明の「自遊技機の遊技情報及び他遊技機の遊技情報にもとづいて大当り回数等について競い合うような演出が行われる表示がなされるための、通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータ」が「制御データROM43」に「記憶されていること」が、本願補正発明の「該起因演出実行データ記憶手段には、前記起因演出実行データとして、前記大当たり回数又は獲得出玉情報を用いた比較又は対戦型の起因演出を実行するための比較・対戦型起因演出実行データを記憶させてあること」に相当する。
よって、引用発明の(1b)の構成が、本願補正発明の(1B)の構成に相当する。

(ウ)(1C)と(1c)に関して、
引用発明の「他の遊技機から送信されてきた遊技情報を、一旦、他遊技情報格納RAM42に格納したとき」が、本願補正発明の「前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき」に相当し、引用発明の「制御データROM43」に「記憶」された「通信制御用CPU40を動作させるプログラムや表示パターンに関するデータ」によって「遊技機間で、大当り回数等について競い合うような演出が行なうことを可能とする」「通信制御用CPU40」が、本願補正発明の「前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段」に相当するから、引用発明の(1c)の構成が、本願補正発明の(1C)の構成に相当する。

(エ)(2A)と(2a)に関して
引用発明の「他遊技機から情報要求信号を受信したとき」が、本願補正発明の「特定の条件が成立したことを契機に」することに相当するから、引用発明の「他遊技機から情報要求信号を受信したときに、遊技機は自遊技機の遊技情報を他の遊技機へ送信すること」が、本願補正発明の「前記遊技情報送信手段を、特定の条件が成立したことを契機に、前記遊技情報の送信を実行する手段として構成」することに相当する。
また、引用発明の「遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるときには、当該送信する遊技情報には、大当り回数等についての遊技情報も含まれること」が、本願補正発明の「前記比較・対戦型起因演出実行データに基づく起因演出の実行が設定されているときは、前記遊技情報として大当たり回数又は出玉獲得情報を送信する手段として構成する」ことに相当する。
よって、引用発明の(2a)の構成が、本願補正発明の(2A)の構成に相当する。

(オ)(2B)と(2b)に関して
引用発明の「他遊技機に、遊技情報の送信を要求する旨の送信要求信号を送信する送信要求信号送信手段」が、本願補正発明の「他の遊技機に対する遊技情報送信要求を送信する送信要求手段」に相当するから、引用発明の(2b)の構成が、本願補正発明の(2B)の構成に相当する。

(カ)(2C)と(2c)に関して
引用発明の「競い合いの結果が反映される表示がなされること」が、本願補正発明の「演出の内容に変化を与える」ことに相当するといえるから、引用発明の「大当り回数等についての自遊技情報格納RAM41に格納された自遊技情報と他遊技情報格納RAM42の格納された他遊技情報とを用いた競い合いの結果が反映される表示がなされる」ことが、本願補正発明の「前記起因演出実行可能化手段は、前記他の遊技機から受信した遊技情報を反映して演出の内容に変化を与える」ことであり、また、「前記他台遊技情報記憶領域に蓄積した他の遊技機の大当たり回数又は獲得出玉情報、及び前記自台遊技情報記憶領域に蓄積した自台の大当たり回数又は獲得出玉情報の両方を用いて演出の内容に変化を与える」ことに相当する。
また、引用発明の「遊技機間で大当り回数等について競い合うような対戦型の演出が行なわれるとき」が、本願補正発明の「前記比較・対戦型起因演出実行データに基づいて起因演出を実行する場合」に相当する。
よって、引用発明の(2c)の構成が、本願補正発明の(2C)の構成に相当する。

(キ)(2D)と(2d)に関して
引用発明の「パチンコ遊技機1は、パチンコ遊技機2を介して、パチンコ遊技機3の遊技情報を受信する手段を有している」ことは、本願補正発明の「他の遊技機から送信された遊技情報を受信した場合に、当該受信した遊技情報を、前記遊技情報送信手段を用いてさらに他の遊技機へと送信する」ことと同じことであり、両者は相当関係にある。
よって、引用発明の(2d)の構成が、本願補正発明の(2D)の構成に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「(1A)他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段と、を備えることにより、遊技機間で、大当たり回数又は獲得出玉情報を含む遊技情報のやり取りを行い得る構成を備えていること。
(1B)他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段を備え、該起因演出実行データ記憶手段には、前記起因演出実行データとして、前記大当たり回数又は獲得出玉情報を用いた比較又は対戦型の起因演出を実行するための比較・対戦型起因演出実行データを記憶させてあること。
(1C)前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき、前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段を備えていること。
(2A)前記遊技情報送信手段を、特定の条件が成立したことを契機に、前記遊技情報の送信を実行する手段として構成し、前記比較・対戦型起因演出実行データに基づく起因演出の実行が設定されているときは、前記遊技情報として大当たり回数又は出玉獲得情報を送信する手段として構成すること。
(2B)前記遊技情報送信手段を介して他の遊技機に対する遊技情報送信要求を送信する送信要求手段を備えていること。
(2C)前記起因演出実行可能化手段は、前記他の遊技機から受信した遊技情報を反映して演出の内容に変化を与える演出内容変化手段として構成され、前記比較・対戦型起因演出実行データに基づいて起因演出を実行する場合は、前記他台遊技情報記憶領域に蓄積した他の遊技機の大当たり回数又は獲得出玉情報、及び前記自台遊技情報記憶領域に蓄積した自台の大当たり回数又は獲得出玉情報の両方を用いて演出の内容に変化を与える手段として構成されていること。
(2D)前記他の遊技機から送信された遊技情報を受信した場合に、当該受信した遊技情報を、前記遊技情報送信手段を用いてさらに他の遊技機へと送信する遊技情報伝令手段を備えていること。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明は、
(1D)前記遊技情報送信手段による送信動作を行うか否かの設定を切り換える送信許否設定手段と、該送信許否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(1E)前記遊技情報受信手段の受信動作を行うか否かの設定を切り換える受信許否設定手段と、該受信許否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(1G’)前記送信許否設定手段、受信許否設定手段は、前記送信動作、前記受信動作、について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定が可能な構成とされていること。
の特定を有するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(イ)相違点2
本願補正発明は、
(1F)前記起因演出実行可能化手段により開始可能とされた起因演出実行データに基づいた演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える起因演出許否設定手段を備えていること。
(1G’’)前記起因演出許否設定手段は、前記起因演出実行データを用いた演出の実行について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定が可能な構成とされていること。
の特定を有するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(ウ)相違点3
遊技情報の送受信が、本願補正発明では
(2E)光信号及び音信号の両方を送受信し得る無線手段により行われる
のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(3)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
上記「第2」「[理由]2」「(1)」「エ」に述べたように、引用文献2には、
「他の遊技機との間で遊技者のための情報を送受信する送受信部を備えた遊技機において、遊技者が、他の遊技機が送信した着信を拒否する「着信拒否」を設定する手段、及び、他の遊技機による遊技情報の読み取りを拒否する「読み取り拒否」を設定する手段を備えること。」(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)
が記載されている。
引用文献2記載の技術事項の「他の遊技機が送信した着信を拒否する「着信拒否」を設定する」か否かが、上記相違点1における「(1E’)遊技情報受信手段による受信動作を行うか否かの設定を切り換える」ことに相当し、また、引用文献2記載の技術事項の「他の遊技機による遊技情報の読み取りを拒否する「読み取り拒否」を設定する」か否かが、上記相違点1の「(1D’)遊技情報送信手段の送信動作を行うか否かの設定を切り換える」ことに相当する。
そして、引用発明は、パチンコ機の発明であることから、本来、1人で楽しむものであって、いつでも誰とでも通信したいという要求があるものではないことは自明であるから、他の遊技機との通信の可否を切り換えたいという要求があるということは、自明の課題であるといえる。
よって、上記自明の課題を解決するために、引用発明に、上記の引用文献2記載の技術事項を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明は「遊技情報記憶手段には、自遊技情報格納RAM41と他遊技情報格納RAM42とが含まれ」る構成を備え、自遊技情報と他遊技情報を別場所に区別して記憶するものであるから、引用発明への引用文献2記載の技術事項の採用により、当然に上記相違点1に係る「(1D’’)送信許否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域」及び「(1E’’)受信許否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域」に相当する構成を備えることになる。
さらに、引用文献2記載の技術事項は、「遊技者」がそれぞれを設定するものであることから、引用発明への引用文献2記載の技術事項の採用により、上記相違点1の「(1G’)前記送信許否設定手段、受信許否設定手段は、前記送信動作、前記受信動作、について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定が可能な構成とされていること」に相当する構成を得ることになる。
以上のとおりであるから、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは当業者が容易になし得た事項である。

(イ)相違点2について
上記「第2」「[理由]2」「(1)」「カ」に述べたように、引用文献3には、
「パチンコ遊技機の遊技中の演出表示を行う表示制御装置22において、入力スイッチ39を押し操作することで、対戦遊技処理は行われない選択をする手段を備えること。」(以下「引用文献3記載の技術事項」という。)
が記載されている。
引用文献3記載の技術事項の「遊技中の演出表示を行う表示制御装置22において」、「対戦遊技処理は行われない選択をする」ことは、上記相違点2の「(1F)起因演出実行可能化手段により開始可能とされた起因演出実行データに基づいた演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える」ことに相当することである。
そして、引用発明は、パチンコ機の発明であることから、本来、1人で楽しむものであって、いつでも誰かと対戦したいという要求があるものではないことは自明であるから、他の遊技機との対戦処理の可否を切り換えたいという要求があるということは、自明の課題であるといえる。
よって、上記自明の課題を解決するために、引用発明に、上記の引用文献3記載の技術事項を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用文献3記載の技術事項は、遊技者が「入力スイッチ39を押し操作することで」設定するものであることから、引用発明への引用文献3記載の技術事項の採用により、上記相違点2の「(1G’’)前記起因演出許否設定手段は、前記起因演出実行データを用いた演出の実行について、遊技者による許可の設定及び拒否の設定が可能な構成とされていること」に相当する構成を得ることになる。
以上のとおりであるから、引用発明に引用文献3記載の技術事項を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成を得ることは当業者が容易になし得た事項である。

(ウ)相違点3について
上記「第2」「[理由]2」「(1)」「ケ」に述べたように、引用文献4,5から、
「遊技機間で遊技情報を無線通信するものにおいて、無線通信媒体として光を用いることも、音波を用いることも周知の技術である。」といえる。
引用発明の送受信の手段に上記の周知技術を適用し、「光信号及び音信号の両方を送受信し得る無線手段により行われる」とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。
なお、「光信号及び音信号の両方」を用いたことに格別の効果も技術的意味も有さないものと認める。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用文献2記載の技術事項、引用文献3記載の技術事項、及び、周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。


ウ 請求人の主張について
請求人は,平成30年2月13日付けで提出した上申書において、
a 前置報告において提示された引用文献1,3-5は、これまで審査手続において示されることのなかった文献であるから、出願人(請求人)に反論の機会を与えるべき旨を主張する。
しかしながら、特許法第159条第2項において読み替えて準用する同法第50条には、「拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。」とする規定については、「第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。」と規定されており、補正の却下の決定においては、出願人(請求人)に反論の機会を与える必要のないことを規定しているのだから、請求人の上記aの主張は採用する必要がない。

b また、前置報告において提示された引用文献1?5には、「大当たり回数又は出玉獲得情報の比較結果を利用した新たな対戦ゲーム」については示唆されていない旨の主張する。
しかしながら、上記「(1)」「ア」に記載されているように、引用文献1には【0099】において、
「パチンコ遊技機1の遊技情報と、遊技者が対戦を希望する他のパチンコ遊技機の遊技情報を用いて、遊技情報から特定できる一項目、すなわち大当り回数,大当り後スタート回数,総スタート回数,確変回数,および大当り確率のいずれかにおいてどちらがより早く回数を重ねることができるか、または、どちらがより高確率に大当りを発生させているか等について競い合うような演出が行なわれる表示がなされる。」(下線は当審において付したものである。)と記載されており、引用文献1には、「大当たり回数又は出玉獲得情報の比較結果を利用した新たな対戦ゲーム」について記載されているといえるから、請求人の上記bの主張は採用することができない。

エ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術事項、引用文献3記載の技術事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年9月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年6月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成29年9月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-3に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明及び引用例2,3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1:特開2012-249829号公報
引用例2:特開2007-244644号公報
引用例3:特開2007-54498号公報

3 引用例
(1)引用例1
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-249829号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付したものである。)

「【0001】
本発明は、始動条件の成立に基づき表示装置で複数の識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを実行し、当該変動表示ゲームが特別結果となったことに基づき遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技状態を発生可能な遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遊技機では、他の遊技機との間で通信可能に構成され、互いに通信可能な遊技機のうち何れかの遊技機で大当りや特定リーチなどが発生すると、その大当りなどが発生した遊技機において特定の制御情報を他の遊技機に送信し、特定の制御情報を受信すると、その特定の制御情報を受信した遊技機において何れかの遊技機で大当りなどが発生した旨をキャラクタやメッセージなどにより表示するように構成されたものがある。これにより、大当りなどが発生していない遊技機においても、大当りなどへの期待感が持てるようになる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-81266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような遊技機は、何れかの遊技機で大当りなどの特別な遊技イベントが発生したことを、単にそれ以外の遊技機で報知するものである。したがって、大当りなどが発生していない遊技機の結果には何ら影響を及ぼさない。また、他人の遊技機での大当り発生が報知されても、自身の遊技機で大当りが発生しなければ遊技者にとって何の意味も持たない。さらに、長い期間に亘って大当りが発生していない遊技機で遊技を行っている遊技者にとっては、他人の遊技機での大当り発生の報知は遊技中の気分を害するものとなることが大いに考えられ、遊技の興趣を減衰させることとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、遊技イベント発生の有無にかかわらず、遊技者に期待感を持たせることが可能な遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
始動条件の成立に基づき表示装置で複数の識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを実行し、当該変動表示ゲームが特別結果となったことに基づき遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、所定の乱数を抽出し前記変動表示ゲームの実行権利となる始動記憶として所定数を上限に記憶する始動入賞記憶手段と、
前記始動入賞記憶手段に始動記憶として記憶される前記乱数を、当該始動記憶に基づく変動表示ゲームが開始されるよりも前に判定する事前判定手段と、
他の遊技機との間で情報通信を可能とする情報通信手段と、
前記事前判定手段の判定結果が所定の判定結果となる場合に、当該判定結果に関する演出情報を前記情報通信手段を介して他の遊技機に送信可能な演出情報送信手段と、
他の遊技機の前記演出情報送信手段によって送信された演出情報を前記情報通信手段を介して受信可能な演出情報受信手段と、
前記演出情報受信手段が演出情報を受信した場合に、互いに通信可能な遊技機間において行う当該演出情報に基づく特定演出を実行可能な特定演出実行手段と、を備えたことを特徴とする。」

「【0084】
次に、図4を用いて、演出制御装置300の構成について説明する。
演出制御装置300は、遊技用マイコン111と同様にアミューズメントチップ(IC)からなる主制御用マイコン(1stCPU)311と、該1stCPU311の制御下でもっぱら映像制御を行う映像制御用マイコン(2ndCPU)312と、該2ndCPU312からのコマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP(Video Display Processor)313と、各種のメロディや効果音などをスピーカ19a,19bから再生させるため音の出力を制御する音源LSI314を備えている。
【0085】
上記主制御用マイコン(1stCPU)311と映像制御用マイコン(2ndCPU)312には、各CPUが実行するプログラムを格納したPROM(プログラマブルリードオンリメモリ)からなるプログラムROM321、322がそれぞれ接続され、VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、音源LSI314には音声データが記憶された音声ROM324が接続されている。主制御用マイコン(1stCPU)311は、遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示したり、音源LSI314への再生音の指示、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する。主制御用マイコン(1stCPU)311と映像制御用マイコン(2ndCPU)312の作業領域を提供するRAMは、それぞれのチップ内部に設けられている。なお、作業領域を提供するRAMはチップの外部に設けるようにしてもよい。」

「【0103】
次に、本実施形態の遊技機10が特徴とする演出制御装置300間通信(サブ間通信)と、他の遊技機10で発生したイベントの報知を行う特定報知演出とについて説明する。
【0104】
本実施形態において、演出制御装置300は、無線通信回路350を備えており、他の遊技機10の演出制御装置300との間で、無線通信を行うことが可能となるように構成されている。
また、演出制御装置300は、自遊技機(便宜上「遊技機X」と称する。)で所定のイベント(例えば、大当りなど)が発生した場合に、他の遊技機10(便宜上「遊技機Y」と称する。)の演出制御装置300との間で通信を行って、所定のイベントが発生した旨を通知するように構成されている。また、当該通知を受けた遊技機Yの演出制御装置300は、当該通知に応じて、表示装置41での表示などによって遊技機Xで発生したイベントの報知を行う特定報知演出を実行するように構成されている。
これにより、遊技機Yの遊技者は、自遊技機(遊技機Y)が備える表示装置41の表示画面を見ることによって、他の遊技機10(遊技機X)でイベントが発生したことを認識することができる。また、遊技機Xの遊技者は、他の遊技機(遊技機Y)が備える表示装置41の表示画面を見ることによって、自遊技機(遊技機X)で発生したイベントに関する特定報知演出を確認することができる。
【0105】
なお、演出制御装置300間通信の通信方式は、無線通信方式に限ることはなく、有線通信方式であってもよい。この場合、例えば図5(A)、(B)に示すように、演出制御装置300は、無線通信回路350に替えて、有線通信用の入力ポート360aと出力ポート360bとを備えている。ここで、図5(A)は、単方向通信を行う場合の一例を示し、図5(B)は、双方向通信を行う場合の一例を示す。
また、他の遊技機10の演出制御装置300との間で有線通信を行う場合、図5(A)や図5(B)に示すように、所定の範囲内に設置されている各遊技機10をリング状に接続して、隣接する遊技機10の演出制御装置300との間で通信を行うように構成したが、これに限定されるものではない。例えば図48に示すように、所定の範囲内に設置されている各遊技機10を中継器(図示省略)などを介してスター状(スポーク状)に接続して、当該所定の範囲内に設置されている各遊技機10の演出制御装置300との間で通信を行うことができるように構成することも可能である。」

「【0166】
一方、ステップS104で、報知条件が成立していると判定した場合(ステップS104;Y)、すなわち受信した外部通信情報が報知対象として設定されている遊技機10からの大当り系のイベント発生に関する外部通信情報である場合には、受信した大当り系のイベント発生に関する外部通信情報に含まれる演出情報や表示態様情報などを、自遊技機の他遊技機情報記憶領域に記憶する(ステップS105)。
すなわち、演出制御装置300は、他の遊技機10の演出情報送信手段(演出制御装置300)によって送信されたイベント発生遊技機の演出情報(外部報知情報)を、情報通信手段(無線通信回路350或いは入力ポート360a)を介して受信可能な演出情報受信手段として機能する。」

「【0170】
すなわち、演出制御装置300は、他の遊技機10(他のイベント発生遊技機)の演出情報(外部報知情報)を受信した場合に、演出装置(表示装置41、スピーカ19a,19b、盤装飾装置42、枠装飾装置18、盤演出装置44、枠演出装置45)において当該演出情報(外部報知情報)に基づく特定演出(特定報知演出)を実行可能な特定演出実行手段として機能する。
具体的には、特定演出実行手段として機能する演出制御装置300は、演出実行手段(演出制御装置300)によって演出(この場合、大当り中演出)が実行されている期間に、他の遊技機10(他のイベント発生遊技機)の演出情報(外部報知情報)を受信した場合に、特定演出(特定報知演出)として、当該他のイベント発生遊技機で発生した遊技イベントに関する演出を自遊技機において実行可能となるように構成されている。特にこの場合、特定演出実行手段として機能する演出制御装置300は、演出実行手段(演出制御装置300)によって自遊技機で発生した特別遊技状態(大当り状態)に関する演出(大当り中演出)が実行されている期間に、他の遊技機10(他のイベント発生遊技機)の演出情報(外部報知情報)として当該他のイベント発生遊技機で発生した特別遊技状態(大当り状態)に関する演出情報(外部報知情報)を受信した場合に、特定演出(特定報知演出)として、演出実行手段(演出制御装置300)によって実行されている自遊技機で発生した特別遊技状態(大当り状態)に関する演出(大当り中演出)と関連させて、当該他のイベント発生遊技機で発生した特別遊技状態(大当り状態)に関する演出を実行可能となるように構成されている。
【0171】
また、演出制御装置300は、所定条件(本実施形態の場合、連続大当り回数)に基づいて、他の遊技機10(他のイベント発生遊技機)に設定されている演出用キャラクタの表示態様として、複数種類の表示態様のうちから何れかの表示態様を選択する表示態様選択手段として機能する。
そして、特定演出実行手段として機能する演出制御装置300は、他の遊技機10(他のイベント発生遊技機)に設定されている演出用キャラクタを、表示態様選択手段(演出制御装置300)によって選択された表示態様で表示するように構成されている。」

イ 引用発明1
上記「ア」から、引用例1には、
「始動条件の成立に基づき表示装置で複数の識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを実行し、当該変動表示ゲームが特別結果となったことに基づき遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
他の遊技機との間で情報通信を可能とする情報通信手段と、
事前判定手段の判定結果が所定の判定結果となる場合に、当該判定結果に関する演出情報を前記情報通信手段を介して他の遊技機に送信可能な演出情報送信手段と、
他の遊技機の前記演出情報送信手段によって送信された演出情報を前記情報通信手段を介して受信可能な演出情報受信手段と、
前記演出情報受信手段が演出情報を受信した場合に、互いに通信可能な遊技機間において行う当該演出情報に基づく特定演出を実行可能な特定演出実行手段と、を備え、(【0006】)
特定演出実行手段として機能する演出制御装置300は、他の遊技機10の演出情報を受信した場合に、特定演出として、当該他のイベント発生遊技機で発生した遊技イベントに関する演出を自遊技機において実行可能となるように構成され、(【0170】)
また、上記演出制御装置300は、主制御用マイコン311と、映像制御用マイコン312と、VDP313と、音源LSI314を備え、(【0084】)
上記主制御用マイコン311と映像制御用マイコン312には、各CPUが実行するプログラムを格納したPROMからなるプログラムROM321、322がそれぞれ接続され、(【0085】)
また、他の遊技機10から受信した演出情報や表示態様情報などを、自遊技機の他遊技機情報記憶領域に記憶する遊技機(【0166】【0170】)。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)引用例2
ア 引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-244644号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付したものである。)
「【0001】
本発明は、スロットマシンやパチンコなどに代表される遊技台および遊技システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンやパチンコなどに代表される従来の遊技台は、自身の記憶手段に記憶されている演出情報を読み出し、この演出情報のみに基づいて遊技の演出を実行するのが一般的であり、遊技の演出のバリエーションに乏しいといった問題があった。
【0003】
このような従来の問題を解決する一手段として、例えば特許文献1には、ネットワーク環境を利用して各遊技台に演出データを配信する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002-325948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スロットマシンやパチンコなどの遊技台は、演出等の表現を含めて所定の法規則を満たした場合にのみ遊技店への設置が許されているといった実情がある。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の遊技台のように、遊技台以外の場所からのデータ配信を許した場合、遊技店に設置された(許認可を受けた)遊技台において法規則を満たさない演出表現が可能になってしまう上に、場合によっては、ネットワークを介して不正行為が行われるおそれもある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、従来の遊技台のように自身に記憶された情報のみに基づいて遊技の制御を行うことに加え、各遊技台が有している情報を他の遊技台との間で相互に利用することで、法規制を満たしつつ遊技のバリエーションを増やし、遊技を盛り上げる制御を行って遊技者の興趣を高めることができる遊技台および遊技システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1台の他の遊技機との間で情報の送受信が可能であって、自身に記憶された情報のみに基づいて遊技の制御を行うか、前記自身に記憶された情報および前記他の遊技台から受信した情報に基づいて遊技の制御を行うかの選択が可能であることを特徴とする、遊技台である。
【0008】
本発明に係る遊技台によれば、従来の遊技台のように自身に記憶された情報のみに基づいて遊技の制御を行うことに加え、各遊技台が有している情報を他の遊技台との間で相互に利用することで、法規制を満たしつつ遊技のバリエーションを増やし、遊技を盛り上げる制御を行って遊技者の興趣を高めることができる。
【0009】
なお、前記自身に記憶された情報の使用を前記他の遊技台に対して許可するか否かの設定が可能であれば、遊技者や遊技店の店員などの好みや要望に応じて、遊技台に記憶された情報の使用を許可または禁止することができる。
【0010】
また、前記自身に記憶された情報の使用を前記他の遊技台の中の特定の遊技台に対してのみ許可する設定が可能であれば、遊技者や遊技店の店員などの好みや要望に応じて、遊技台に記憶された情報の使用の許可/禁止についてさらに細かい設定を行うことができる。」

「【0049】
通信制御部490は、同図(b)に拡大して示されるようなトランシーバ492を介し通信線494に接続されている。通信線494には、図5(a)に示されるように、遊技システムPSを構成する複数(本実施例1では5台)のスロットマシン100が接続されており、遊技システムPSの各スロットマシン100は、各々の通信制御部490を介して相互に通信可能とされている。なお、本発明に係る「遊技台」はスロットマシンに限定されるものでなく、例えばパチンコであってもよい、従って、例えば、図5(b)に示されるように、複数のパチンコで遊技システムPSを構成し、各パチンコを相互に通信可能としてもよく、また、スロットマシンとパチンコを混在させて遊技システムを構成してもよい。
【0050】
また、通信制御部490の基板上には、図6に示されるように、管理者設定スイッチ496および台番号設定スイッチ498が配設されている。管理者設定スイッチ496は、スロットマシンやパチンコの相互通信を許可するか否かの設定を行うためのスイッチであり、ONに設定することで遊技台間の通信が可能な設定となる。また、台番号設定スイッチ498は、各遊技台に予め与えられた番号(台番号)を設定するためのスイッチであり、この例では、台番号として「2」が設定されている。なお、管理者設定スイッチ496および台番号設定スイッチ498の配設場所は通信制御部490の基板上に限定されるものではなく、例えば、第1副制御部400の基板の任意の位置に配設することもできる。」

「【0140】
次に、図15?図17を用いて、上記第1副制御部メイン処理における演出処理(ステップS105)について説明する。なお、同図は演出処理の流れを示すフローチャートである。
【0141】
この実施例1に係る演出処理は、遊技者が(後述する)連動演出を行うか否かの選択を可能とするための処理である。
【0142】
例えば、図19(a)に示される5台のスロットマシンでは、台番号3と4のスロットマシンのみが連動演出に設定されている。
【0143】
以下、この演出処理の流れを具体的に説明する。
・・・省略・・・
【0180】
ステップS530では、「個別連動拒否」の設定を行う。この「個別連動拒否」が設定されると、他のスロットマシン100から連動演出の要求がなされた場合であっても、その要求を拒否することが可能となる。例えば、図20(a)に示される第3操作画面では、台番号5のスロットマシンに個別連動拒否の設定がなされており、他のスロットマシンは台番号5のスロットマシンを選択することができない状態となっている。本実施例では、連動演出の設定をする者が他のスロットマシンと勝手に連動演出の設定をしてしまうような事態が発生し得るが、知らない者と好んで連動演出を行うようなことは考え難いため、このような事態を避けるために「個別の設定をしない」を選択するとよい。また、第3操作画面によれば、台番号3および4のスロットマシンは連動演出の設定がなされており、台番号1のスロットマシンは連動演出の設定がなされていないことが把握できる。なお、台番号2のスロットマシンは、演出の設定を行っているスロットマシンである。」

イ 引用例2記載の技術事項について
(ア)引用例2記載の技術事項1
上記「ア」の【0007】【0009】及び【0050】から、引用例2には、
「少なくとも1台の他の遊技機との間で情報の送受信が可能であって、自身に記憶された情報のみに基づいて遊技の制御を行うか、前記自身に記憶された情報および前記他の遊技台から受信した情報に基づいて遊技の制御を行うかの選択が可能である」
こと、さらに
「自身に記憶された情報の使用を前記他の遊技台に対して許可するか否かの設定が可能であれば、遊技者や遊技店の店員などの好みや要望に応じて、遊技台に記憶された情報の使用を許可または禁止することができる」
ことが記載されている。また、
「管理者設定スイッチ496は、スロットマシンやパチンコの相互通信を許可するか否かの設定を行うためのスイッチであり、ONに設定することで遊技台間の通信が可能な設定となる。」
ことが記載されているから、引用例2には、
「遊技機との間で情報の送受信が可能な遊技機において、送信動作を行うか否かを切り換える手段と、受信動作を行うか否かを切り換える手段を備えること」(以下、「引用例2記載の技術事項1」という)が記載されているといえる。

(イ)引用例2記載の技術事項2
上記「ア」の【0007】及び【0180】から、引用例2には、
「少なくとも1台の他の遊技機との間で情報の送受信が可能である」こと、並びに、
「「個別連動拒否」が設定されると、他のスロットマシン100から連動演出の要求がなされた場合であっても、その要求を拒否することが可能となる」こと、及び「知らない者と好んで連動演出を行うようなことは考え難いため、このような事態を避けるために「個別の設定をしない」を選択する」ことができることことが記載されているから、引用例2には、
「遊技機との間で情報の送受信が可能な遊技機において、他の遊技機との連動をして他の遊技機の情報を用いた連動演出をするか否かを切り換える手段を備えること」(以下、「引用例2記載の技術事項2」という)が記載されているといえる。

4 本願発明と引用発明1との対比
(1)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
ア 引用発明1の「他の遊技機との間で情報通信を可能とする情報通信手段と、事前判定手段の判定結果が所定の判定結果となる場合に、当該判定結果に関する演出情報を前記情報通信手段を介して他の遊技機に送信可能な演出情報送信手段と、他の遊技機の前記演出情報送信手段によって送信された演出情報を前記情報通信手段を介して受信可能な演出情報受信手段と」を備えることが、本願発明の「(1)他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段とを備えることにより、遊技機間で遊技情報のやり取りを行い得る構成を備えていること。」に相当する。

イ 引用発明1の「他の遊技機10の演出情報を受信した場合に、特定演出として、当該他のイベント発生遊技機で発生した遊技イベントに関する演出を自遊技機において実行可能となるように構成され」た「演出制御装置300」における「CPUが実行するプログラムを格納したPROM(プログラマブルリードオンリメモリ)からなるプログラムROM321、322」が、本願発明の「(2)他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段」に相当する。

ウ 引用発明1の「他の遊技機10の演出情報を受信した場合に」、「PROMからなるプログラムROM321、322」に「格納」された「各CPUが実行するプログラム」によって「特定演出として、当該他のイベント発生遊技機で発生した遊技イベントに関する演出を自遊技機において実行可能となるように構成され」た「特定演出実行手段として機能する演出制御装置300」が、本願発明の「(3)前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき、前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段」に相当する。

(2)一致点
したがって、本願発明と引用発明1は、
「以下の構成を備えていることを特徴とする遊技機。
(1)他の遊技機に対して遊技情報を送信する遊技情報送信手段と、他の遊技機が送信した遊技情報を受信する遊技情報受信手段とを備えることにより、遊技機間で遊技情報のやり取りを行い得る構成を備えていること。
(2)他の遊技機の遊技情報に起因した起因演出を実行するための起因演出実行データを予め記憶した起因演出実行データ記憶手段を備えていること。
(3)前記遊技情報受信手段が他の遊技機からの遊技情報を受信したとき、前記起因演出実行データ記憶手段に記憶している起因演出実行データに基づいた演出を実行可能とする起因演出実行可能化手段を備えていること。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
ア 相違点1’
本願発明が、
「(21)前記遊技情報送信手段による送信動作を行うか否かの設定を切り換える送信許否設定手段と、該送信拒否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域と、を備えていること。
(22)前記遊技情報受信手段の受信動作を行うか否かの設定を切り換える受信許否設定手段と、該受信拒否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域と、を備えていること。」
と特定されているのに対して、引用発明1においては、そのような特定はなされていない点。

イ 相違点2’
本願発明が、
「(23)前記起因演出実行可能化手段による前記他の遊技機の遊技情報に起因した演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える起因演出許否設定手段を備えていること。」
と特定されているのに対して、引用発明1においては、そのような特定はなされていない点。

5 当審の判断
(1)相違点についての検討
ア 相違点1’について
上記「3」「(2)」「イ」「(ア)」の引用例2記載の技術事項1の「遊技機との間で情報の送受信が可能な遊技機において、送信動作を行うか否かを切り換える手段と、受信動作を行うか否かを切り換える手段を備えること」は、上記相違点1’の「(21)前記遊技情報送信手段による送信動作を行うか否かの設定を切り換える送信許否設定手段」と「(22)前記遊技情報受信手段の受信動作を行うか否かの設定を切り換える受信許否設定手段」を備えていることに相当する。
そして、引用発明は、パチンコ機又はパチスロ機の発明であることから、本来、1人で楽しむものであって、いつでも誰とでも通信したいという要求があるものではないことは自明であるから、他の遊技機との通信の可否を切り換えたいという要求があるということは、自明の課題であるといえる。
よって、上記自明の課題を解決するために、引用発明に、上記の引用例2記載の技術事項1を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明は「他の遊技機10から受信した演出情報や表示態様情報などを、自遊技機の他遊技機情報記憶領域に記憶する」ものであって、自遊技情報と他遊技情報を別場所に区別して記憶するものであるから、引用発明への引用例2記載の技術事項1の採用により、当然に上記相違点1’に係る「(21)送信許否設定手段により送信動作を許可する設定がなされている場合に送信し得る遊技情報を蓄積しておく自台遊技情報記憶領域」及び「(22)受信許否設定手段により受信動作を許可する設定がなされている場合に前記遊技情報受信手段を介して受信した他の遊技機の遊技情報を蓄積する他台遊技情報記憶領域」に相当する構成を備えることになる。
以上のとおりであるから、引用発明に引用例2記載の技術事項1を適用し、上記相違点1’に係る本願発明の構成を得ることは当業者が容易になし得た事項である。

イ 相違点2’について
上記「3」「(2)」「イ」「(イ)」の引用例2記載の技術事項2の「他の遊技機との連動をして他の遊技機の情報を用いた連動演出をするか否かを切り換える手段を備えること」は、上記相違点2’の「前記起因演出実行可能化手段による前記他の遊技機の遊技情報に起因した演出を実行可能にするか否かの設定を切り換える起因演出許否設定手段を備えていること」に相当することである。
そして、引用発明は、パチンコ機又はパチスロ機の発明であることから、本来、1人で楽しむものであって、いつでも誰かと連動した演出をしたいという要求があるものではないことは自明であるから、他の遊技機との連動演出の可否を切り換えたいという要求があるということは、自明の課題であるといえる。
よって、上記自明の課題を解決するために、引用発明に、上記の引用文献2記載の技術事項2を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
以上のとおりであるから、引用発明に引用文献2記載の技術事項2を適用し、上記相違点2’に係る本願発明の構成を得ることは当業者が容易になし得た事項である。

(2)本願発明によってもたらされる作用効果
また、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、並びに、引用例2の記載事項1及び引用例2の記載事項2から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用発明、並びに、引用例2の記載事項1及び引用例2の記載事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおりであり、本願発明は、引用発明、並びに、引用例2の記載事項1及び引用例2の記載事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-28 
結審通知日 2018-06-05 
審決日 2018-06-19 
出願番号 特願2013-106039(P2013-106039)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一藤澤 和浩  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 森林 克郎
櫻井 茂樹
発明の名称 遊技機  
代理人 森 泰比古  

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