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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03C 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C03C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C03C 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 C03C |
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管理番号 | 1342964 |
異議申立番号 | 異議2017-700728 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-07-24 |
確定日 | 2018-06-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6065301号発明「改良された化学的および機械的耐久性を有するガラス組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6065301号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6,8,10?12〕,〔7,9〕,〔13?15〕について訂正することを認める。 特許第6065301号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6065301号は、平成24年10月25日(優先権主張 2011年10月25日 米国)を国際出願日とする特願2014-538997号の一部を、平成28年 6月23日に新たな出願とした特願2016-124365号について、平成29年 1月 6日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1?15に係る特許に対し、平成29年 7月24日付けで特許異議申立人 籾井 孝文により特許異議の申立てがされ、平成29年11月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年 2月19日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年 3月28日付けで特許異議申立人より意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成30年 2月19日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1?6よりなる。 (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは4?8モル%である」と記載されているのを、「Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である」に訂正する。 (イ)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「ガラス組成を有する、医薬品パッケージ用ガラス」と記載されているのを、「ガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス」に訂正する。 (ウ)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に、「該ガラスは、イオン交換により強化されたものであり、10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。」と記載されているのを、独立形式に改め、「医薬品パッケージ用ガラスであって、 70モル%?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化されたものであり、10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有し、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。」に訂正する。 (エ)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項13に、「Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは4?8モル%である」と記載されているのを、「Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である」に訂正する。 (オ)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項13に、「Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9?14モル%超である」と記載されているのを、「Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9?14モル%であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%以上であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%?2モル%である」に訂正する。 (カ)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項13に、「ガラス組成を有する、医薬品パッケージ用ガラス」と記載されているのを、「ガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス」に訂正する。 2.訂正の適否 (ア)訂正事項1,4 訂正前の請求項1,13に係る発明では、「Al_(2)O_(3)」の濃度(X)について、「Xは4?8モル%である」ことを特定しているのに対し、訂正後の請求項1,13に係る発明では、「Xは5?8モル%である」と記載して、「Al_(2)O_(3)」の濃度を更に限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1,4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項1,4は、本件特許明細書の段落【0033】の「一部の実施形態において、ガラス組成物中のAl_(2)O_(3)の量は、約4モル%以上かつ約8モル%以下である。他の一部の実施形態において、ガラス組成物中のAl_(2)O_(3)の量は、約5モル%以上?約7モル%以下である。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項2,6 訂正前の請求項1,13に係る発明では、「ガラス組成を有する、医薬品パッケージ用ガラス」であることを特定しているのに対し、訂正後の請求項1,13に係る発明では、「ガラス組成を有し、該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、およびISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、」との記載により、医薬品パッケージ用ガラスの特性を具体的に特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項2,6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項2,6は、本件特許明細書の段落【0049】の「一部の実施形態において、ガラス組成物は、10μm以上の層深さを有する圧縮応力層を形成するためのイオン交換能を有する。」、「付随する表面圧縮応力は、ガラス組成物が100%溶融KNO_(3)の塩浴中で350℃?500℃の温度で約30時間未満さらには約20時間未満の時限の間処理した後、約250MPa以上、300MPa以上、さらには約350MPa以上であってよい。」との記載及び段落【0059】の「本明細書中に記載のガラス組成物は同様に、イオン交換による強化の前後両方において、ISO720タイプHGA2の耐加水分解性も有しており」との記載等に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項7の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正前の請求項7に係る発明では、「該ガラスは、イオン交換により強化されたものであり、10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有する」として、ガラスの特性について表面圧縮層のみ特定していたのに対し、訂正後の請求項7に係る発明では、「ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する」ことを記載して、医薬品パッケージ用ガラスの特性をさらに特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるとともに、(ア)?(イ)で記載した請求項1における上記の訂正事項1から2の訂正を含むから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項3は、上記(ア)?(イ)で記載したとおり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (エ)訂正事項5 訂正前の請求項13に係る発明では、「アルカリ酸化物」に関して、9?14モル%のアルカリ酸化物を含むことのみを特定し、その材料については特定されていないのに対し、訂正後の請求項13に係る発明では、「Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%以上であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%?2モル%である」と記載して、「アルカリ酸化物」の材料をより具体的に特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0035】の「ガラス組成物は、ガラス組成物の分子量に基づいて約2モル%?約15モル%の量でNa_(2)Oを含む。」との記載及び【0036】の「ガラス組成物がK_(2)Oを含む実施形態において、K_(2)Oは・・・約0.01モル%以上かつ約2.0モル%以下の濃度で存在し得る。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 3.一群の請求項について 訂正前の請求項1?12について、請求項2?12はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1?2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?12に対応する訂正後の請求項1?12は、一群の請求項である。 ただし、訂正後の請求項7,9は一群の他の請求項とは別途訂正するものである。 また、訂正前の請求項13?15について、請求項14、15はそれぞれ請求項13を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項4?6によって訂正される請求項13に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項13?15に対応する訂正後の請求項13?15は、一群の請求項である。 したがって、訂正事項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定するこれら一群の請求項ごとに請求するものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項及び第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6,8,10?12〕,〔7,9〕,〔13?15〕について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件発明 上記「第2.」のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?15に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明15」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 70モル%?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%以上かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項2】 SiO_(2)は74モル%?78モル%の量で存在する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項3】 (CaO(モル%)/(CaO(モル%)+MgO(モル%)))比が0.5以下である、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項4】 Y:Xの比が2以下である、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項5】 前記アルカリ酸化物が、8モル%超の量でNa_(2)Oを含む、請求項4記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項6】 前記ガラス組成が、ホウ素およびホウ素化合物を含まない、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項7】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 70モル%超?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%以上かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化されたものであり、10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有し、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項8】 ISO719に準じたタイプHGB1の耐加水分解性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項9】 ISO720に準じたタイプHGA1の耐加水分解性を有する、請求項7記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項10】 DIN12116に準じた少なくともクラスS3の耐酸性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項11】 ISO695に準じた少なくともクラスA2の耐塩基性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項12】 70×10^(-7)K^(-1)未満の熱膨張係数を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項13】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 74モル%?78モル%のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%であり、(CaO(モル%)/(CaO(モル%)+MgO(モル%)))比が0.5以下である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9?14モル%であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%以上であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%?2モル%である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であり、ホウ素およびホウ素化合物を含まない、ガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項14】 Y:Xの比が2以下である、請求項13記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項15】 前記アルカリ酸化物が、8モル%超の量でNa_(2)Oを含む、請求項14記載の医薬品パッケージ用ガラス。」 2.取消理由について (1)取消理由の要旨 訂正前の請求項1?15に係る特許に対して、平成29年11月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア)本件発明は、本件明細書の段落【0007】に記載されているように、化学的耐久性を有し、かつイオン交換による化学的強化に対する感受性を有するガラス製医薬品パッケージに使用するためのガラスを得ることを課題とするものである。 イ)これに対し、訂正前の請求項1?15に係る発明は、1)K_(2)Oの濃度がNa_(2)Oの濃度よりも大きい場合、2)Na_(2)Oの濃度がK_(2)Oの濃度よりもわずかしか大きくない場合、3)Na_(2)Oの濃度が2モル%程度まで小さく、他のアルカリ酸化物を多量に含む場合を含むものである。 ウ)しかしながら、1)または2)の場合や、3)において他のアルカリ酸化物として、Rb_(2)OやCs_(2)O等のカリウムイオンよりもイオン半径の大きいアルカリイオンを含んだ場合には、イオン交換による化学的強化の際に、イオン半径の小さいナトリウムイオンに対するイオン半径の大きいカリウムイオン等の相対量が大きくなり、イオン交換があまり行われなくなることから、本件発明の化学的強化に対する感受性を有しないものと認められる。 エ)また、他のアルカリ酸化物として、Li_(2)O、Rb_(2)OまたはCs_(2)Oを含む場合においても、これらの成分を含まない場合と同様に化学的耐久性を有するものとは認められない。 オ)よって、本件請求項1?15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、本件発明の課題を解決できないものを含むものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 (2)当審の判断 ア)Na_(2)O濃度とK_(2)Oの濃度の大小関係について 訂正によって、本件発明13?15は、Na_(2)Oの濃度よりもK_(2)Oの濃度が高いものを含まないものになったことから、取消理由の1)の場合を含まず、化学的強化に対する感受性を有するものと認められる。 また、特許権者が、平成30年 2月19日付けの意見書と共に提出した乙第1号証:特開2008-1590号公報、乙第2号証:特開2008-115072号公報及び乙第3号証:米国特許出願公開第2007/60465号明細書(以下、それぞれ、「乙1」?「乙3」という。)の記載をみれば、Na_(2)Oの濃度がK_(2)Oの濃度よりもわずかに多い場合であっても、十分にイオン交換による化学的強化ができ、250MPa以上の表面圧縮応力が得られるものと認められる。 イ)Na_(2)Oの濃度が2モル%程度まで小さく、他のアルカリ酸化物を含む場合について 特許権者が、平成30年 2月19日付けの意見書と共に提出した乙第6号証:国際公開2011-19010号(以下、「乙6」という。)にも記載されているように、他のアルカリ酸化物として、CsO_(2)及びRb_(2)Oを含んでいる場合でも、Na_(2)Oの濃度を調整することで、十分にイオン交換による化学強化ができ、250MPa以上の表面圧縮応力が得られるものと認められる。 また、Na_(2)Oの濃度が2モル%まで少ない場合であっても、乙1?3にも記載されているように、他のアルカリ酸化物として、Li_(2)Oの濃度を大きくすることで、十分にイオン交換による化学強化ができ、250MPa以上の表面圧縮応力が得られるものと認められる。 ウ)化学的耐久性について 本件明細書の記載によれば、本件発明は、アルカリ酸化物の濃度(または種類)ではなく、主に、ガラス中のSiO_(2)、Al_(2)O_(3)、およびアルカリ土類酸化物の濃度を制御することにより、化学的耐久性を付与するものと認められ、また、乙6には、アルカリ酸化物として、Na_(2)OおよびK_(2)Oに加えて他のアルカリ酸化物を含んでいたとしても、十分に化学的耐久性を得られることが記載されていることから、Na_(2)Oの濃度を2モル%まで少なくした場合であっても、他のアルカリ酸化物の量を調整すれば、耐加水分解性等の化学的耐久性を有するものと認められる。 (3)申立人の主張について ア)申立人の主張の要旨 これらの点について、申立人は、化学的強化に対する感受性について、本件発明は、本件明細書の段落【0035】に記載されているように、「ガラス組成物のイオン交換能は、主として、イオン交換に先立ってガラス組成物中に当初から存在するアルカリ酸化物Na_(2)Oの量よりガラス組成物に対し付与される」ものであり、Li_(2)OをNa_(2)Oの含有量以上に含むガラス組成物は本件特許の開示の範囲外であるから、Na_(2)Oの含有量が2モル%程度まで小さい場合において、課題を解決することができない旨主張し、化学的耐久性について、乙6に記載された耐酸性の評価は、本件発明とは異なる指標であるから、乙6の実施例において、Cs_(2)O及びLi_(2)Oが添加された場合にエッチングレートが変化しなかったことをもって、本件発明において、Cs_(2)O及びLi_(2)Oが添加された場合においても、化学的耐久性が変化しなかったとはいえない旨主張している。 イ)当審の判断 i)強度について 申立人の指摘する上記本件明細書の記載は、イオン交換能を主だって付与する成分がNa_(2)Oであることを示しているだけであって、Li_(2)OとNa_(2)Oの含有量の大小を特定するものではないから、Li_(2)OをNa_(2)Oの含有量以上に含むガラス組成物が本件特許の開示の範囲外とはいえない。 また、イオン交換により、ガラスの表面に表面圧縮応力を付与して強化するためには、ガラス表面に存在するイオン半径の小さいイオンを、イオン半径の大きいイオンに置換することは技術常識であるから、本件発明において、Na_(2)Oの含有量が小さい場合において、イオン交換能を付与する他のアルカリ酸化物として、Li_(2)Oを選択することは、当業者にとって自明といえる。 ii)化学的耐久性について 乙6の記載は、少なくとも珪酸塩ガラスにおいて、Cs_(2)O及びLi_(2)Oが添加された場合においても、化学的耐久性に大きな影響を与えるものではないことを裏付けるものといえる。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでない。 3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 3-1特許法第29条第2項について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1,3?12に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、および周知技術(甲第3号証?甲第5号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消すべきものであること、及び、訂正前の請求項2,13?15に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、および周知技術(甲第3号証?甲第7号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消すべきものであることを主張している。 甲第1号証:国際公開2011/22639号(パテントファミリー:特表2013-502370号公報) 甲第2号証:特開2011-93792号公報 甲第3号証:米国特許出願公開第2007/60465号明細書 甲第4号証:特表2005-510307号公報 甲第5号証:特表2010-503504号公報 甲第6号証:特開2005-320234号公報 甲第7号証:特表2003-525830号公報 (以下、それぞれ「甲1」?「甲7」という。) 3-2甲号証に記載の事項 (1)甲1に記載の事項 甲1には、以下の事項が記載されている(抄訳は当審で付加したものである。以下、同じ。)。 摘記1-1:「1. A glass comprising SiO_(2) and Na_(2)O, wherein the glass has a temperature T^(35kp) at which the glass has a viscosity of 35 kpoise, wherein the temperature T^(breakdown) at which zircon breaks down to form ZrO_(2) and SiO_(2) is greater than T^(35kp). 2. The glass of Claim 1, wherein SiO_(2) + B_(2)O_(3) ≧ 66 mol% and Na_(2)O ≧ 9 mol%. ・・・ 7. The glass of any of the preceding claims, wherein the glass comprises: 61 mol % ≦ SiO_(2) ≦ 75 mol%; 7 mol % ≦ Al_(2)O_(3) ≦ 15 mol%; 0 mol% ≦ B_(2)O_(3) ≦ 12 mol%; 9 mol % ≦ Na_(2)O ≦ 21 mol%; 0 mol % ≦ K_(2)O ≦ 4 mol%; 0 mol% ≦ MgO ≦ 7 mol%; and 0 mol% ≦ CaO ≦ 3 mol%.」 (抄訳:請求項1:SiO_(2)およびNa_(2)Oを含むガラスであって、前記ガラスが35キロポアズの粘度を有する温度T^(35kp)を有し、ジルコンが崩壊してZrO_(2)およびSiO_(2)を形成する温度T^(breakdown)がT^(35kp)より高いガラス。 請求項2:前記ガラスがSiO_(2)+B_(2)O_(3)≧66モル%およびNa_(2)O≧9モル%である請求項1に記載のガラス 請求項7:前記ガラスが、61モル%≦SiO_(2)≦75モル%;7モル%≦Al_(2)O_(3)≦15モル%;0モル%≦B_(2)O_(3)≦12モル%;9モル%≦Na_(2)O≦21モル%;0モル%≦K_(2)O≦4モル%;0モル%≦MgO≦7モル%;および0モル%≦CaO≦3モル%を含むことを特徴とする先行する請求項に記載のガラス。) 摘記1-2:「5. The glass of Claim 4, wherein the ion exchanged glass has a compressive stress of at least 350 MPa and a compressive depth of layer of at least 20 microns.」 (請求項5:前記ガラスがイオン交換されて、ガラスの少なくとも1つの表面に圧縮層を形成し、 前記圧縮層が、少なくとも350MPaの圧縮応力および少なくとも20μmの圧縮層の深さを有することを特徴とする請求項4記載のガラス。) 摘記1-3:「17. The glass of any of the preceding claims, wherein the glass is formed into one of a cover plate, a window, a casing, a display screen, and a touch panel of an electronic device.」 (抄訳:請求項17:前記ガラスが、電子機器のカバープレート、ウィンドウ、ケーシング、表示画面、およびタッチパネルに成形されることを特徴とする先行する請求項に記載のガラス) 摘記1-4:「[0041] In one embodiment, the glasses listed in Table 3 are ion exchanged by exposure to molten KNO_(3) at a temperature of 410℃ for 8 hours to produce a compressive stress layer having a depth (also referred to as a "depth of layer") of at least 20 μm on the surface of the glass and a maximum compressive stress of at least 350 MPa. In another embodiment the glasses listed in Table 3 are ion exchanged to achieve a central tension of at least 10 MPa.」 (抄訳:[0041]1つの実施の形態では、表3に記載のガラスは、410℃の温度で8時間の溶融KNO_(3)への曝露によってイオン交換されて、ガラス表面における少なくとも20μmの深さ(「層の深さ」とも称される)、および少なくとも350MPaの最大圧縮応力を有する圧縮応力層を生じる。別の実施の形態では、表3に記載のガラスはイオン交換されて、少なくとも10MPaの中心張力を達成する。) 摘記1-5:「 」 (2)甲2に記載の事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 摘記2-1:「【請求項1】 少なくとも以下の構成成分を酸化物基準の重量%で含有するガラスであって、 SiO_(2) 65?72 Al_(2)O_(3) 11?17 Na_(2)O 0.1?8 MgO 3?8 CaO 4?12 ZnO 0?10 CaO/MgOの重量比が1.4ないし1.8であり、 不可避の不純物を別にして、B_(2)O_(3)、SrO、BaOおよびPbOが存在せず、 DIN ISO 719による加水分解クラス1の耐加水分解性が得られ、 DIN 12116による少なくとも酸クラス2の耐酸性が得られ、 DIN ISO 695による少なくともアルカリクラス2の耐アルカリ性が得られることを特徴とするガラス。 ・・・ 【請求項15】 製薬向け一次包装材料、特に瓶、シリンジ、もしくはアンプル、 ・・・ 基板、スーパーストレートもしくはカバー、特に電気工学アプリケーション用、TFT、PDPもしくはOLEDスクリーン用、もしくは太陽光発電用のもの、 ・・・としての請求項1ないし14のいずれか1項に記載のガラスの使用。」 摘記2-2:「【技術分野】 【0001】 本発明は、ホウ素含有原料を添加せずに溶融できるホウ素フリーガラス、好ましくは中性(ニュートラル)ガラスに関する。 【背景技術】 【0002】 「中性ガラス」という用語は非常に優れた耐加水分解性および非常に優れた耐酸性を備えるガラスを意味すると解釈される。このようにこれらのガラスは「中性」作用を有し、溶液にガラスの構成成分をほとんど溶出させることがないため、とりわけ製薬業界において、特に注射液用の一次包装材料として使用できる。 表1は、さまざまな規格にしたがい、水、酸、およびアルカリに対する化学的耐久性に関してガラスの分類をまとめている。 【0003】 」 4.特許法第29条第2項について (1)本件発明1 4.特許法第29条第2項について (1)本件発明1 摘記1-1及び1-5から、甲1には以下の組成のNo.57のガラスが記載されている(特許異議申立書第12頁の表)。 また、摘記1-2及び1-4から、表3に記載されたNo.57のガラスは、410℃の温度で8時間の溶融KNO_(3)への曝露によってイオン交換されて、ガラス表面における少なくとも20μmの深さ、および少なくとも350MPaの最大圧縮応力を有する圧縮応力層を生じるガラスと認められる。 さらに、摘記1-3から、甲1のガラスは、電子機器のカバープレート、ウィンドウ、ケーシング、表示画面、およびタッチパネルに用いられるものと認められる。 よって、甲1には以下の発明(「引用発明」という)が記載されていると認められる。 「73.5モル%のSiO_(2)と、7.6モル%のAl_(2)O_(3)と、12.75モル%のNa_(2)Oと、1.15モル%のK_(2)Oと、4.2モル%のMgOと、0.6モル%のCaOと、0.2モル%のSnO_(2)とを有し、410℃の温度で8時間の溶融KNO_(3)への曝露によってイオン交換されて、ガラス表面における少なくとも20μmの層の深さおよび少なくとも350MPaの最大圧縮応力を有する圧縮応力層が形成される電子機器のカバープレート、ウィンドウ、ケーシング、表示画面、およびタッチパネルに用いられるガラス」 ここで、引用発明は、SiO_(2)とAl_(2)O_(3)とを含むことから、アルミノケイ酸塩ガラスといえる。 よって、本件発明1と引用発明とを対比すると、 「70モル%?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%以上かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものである、アルミノケイ酸塩ガラス」の点で両者は一致し、以下の2点で相違する。 相違点1:本件発明1は、医療用パッケージガラスであるのに対し、引用発明は、電子機器のカバープレート、ウィンドウ、ケーシング、表示画面、およびタッチパネルに用いられるガラスである点。 相違点2:本件発明1は、ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有するのに対し、引用発明は耐加水分解性を有するか不明である点。 上記相違点について検討する。 まず、相違点1について検討するに、摘記2-1及び2-2から、甲第2号証には、耐加水分解性および耐酸性を備える中性ガラスであるホウ素フリーのアルカリアルミノケイ酸ガラスの用途として、製薬向け一次包装材料、特に瓶、シリンジ、もしくはアンプルの用途と、TFT、PDPもしくはOLEDスクリーン用の基板や電気工学アプリケーション用のカバーへの用途が選択的に併記されていると認められる。 ここで、引用発明はモル%で記載されており、甲2は重量%で記載されているため、引用発明について、モル%を重量%に変換してみると、以下のようになる。 すると、引用発明は、甲2に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの範囲外の組成となっているため、引用発明が甲2に記載のガラスと同程度の耐加水分解性や耐酸性を有するものであるとはいえない。 してみれば、甲2の記載は、引用発明のガラスを製薬向け一次包装材料等の医薬品パッケージに用いることを示唆するものとはいえない。 そして、他の甲号証を参酌しても、引用発明のガラスを医療用パッケージに適用することについて記載も示唆も認められない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1?甲7の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲1に記載の他の組成(例えば、No.63)を引用発明とした場合についても同様である。 (2)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、「TFT、PDPもしくはOLEDスクリーン等の電子機器の表示装置用の基板ガラスには、フォトエッチング工程等の製造プロセスで使用される薬品等に対する高い化学的耐久性や機械的耐久性が要求されることは、特に証拠を示すまでもなく、本件特許の優先日前に当業者に周知の事項である。これらの事項から、電子機器のカバープレートや表示画面に用いられる甲1発明のアルカリアルミノケイ酸ガラスを、製薬向け一次包装材料(医薬品パッケージ)に用いることを試みる動機付けが与えられる。」とも主張している。 しかしながら、引用発明は、カバーガラスやタッチパネル等の電子機器の表面に形成するガラスに用いられるものであって、フォトエッチング工程が行われるガラス基板とは異なり、フォトエッチング工程に耐え得る程度の化学的耐久性が求められたものとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (3)まとめ 本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1?甲7の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、相違点1に係る発明特定事項を有する本件発明7,13、本件発明1,7又は13を引用する本件発明2?6,8?12,14,15についても同様である。 第6.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 70モル%?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%以上かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項2】 SiO_(2)は74モル%?78モル%の量で存在する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項3】 (CaO(モル%)/(CaO(モル%)+MgO(モル%)))比が0.5以下である、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項4】 Y:Xの比が2以下である、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項5】 前記アルカリ酸化物が、8モル%超の量でNa_(2)Oを含む、請求項4記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項6】 前記ガラス組成が、ホウ素およびホウ素化合物を含まない、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項7】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 70モル%?80モル%の濃度のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9モル%超であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%?15モル%であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%以上かつ2モル%以下である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であるガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化されたものであり、10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有し、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項8】 ISO719に準じたタイプHGB1の耐加水分解性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項9】 ISO720に準じたタイプHGA1の耐加水分解性を有する、請求項7記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項10】 DIN12116に準じた少なくともクラスS3の耐酸性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項11】 ISO695に準じた少なくともクラスA2の耐塩基性を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項12】 70×10^(-7)K^(-1)未満の熱膨張係数を有する、請求項1記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項13】 医薬品パッケージ用ガラスであって、 74モル%?78モル%のSiO_(2)と、 4モル%?8モル%の、MgO、CaO、SrOおよびBaOよりなる群から選択されるアルカリ土類酸化物であって、MgOおよびCaOを含有し、CaOの濃度は0.1モル%?1.0モル%であり、(CaO(モル%)/(CaO(モル%)+MgO(モル%)))比が0.5以下である、アルカリ土類酸化物と、 Xモル%のAl_(2)O_(3)であって、Xは5?8モル%である、Al_(2)O_(3)と、 Yモル%のアルカリ酸化物であって、Yは9?14モル%であり、Na_(2)OおよびK_(2)Oを含有し、Na_(2)Oの濃度は2モル%以上であり、K_(2)Oの濃度は0.01モル%?2モル%である、アルカリ酸化物と、 を含み、 Y:Xの比が1超であり、ホウ素およびホウ素化合物を含まない、ガラス組成を有し、 該ガラスは、イオン交換により強化可能であり、350℃?500℃の温度で30時間未満の時間の100%KNO_(3)の溶融塩浴中でのイオン交換により強化されたときに10μm以上の層深さおよび250MPa以上の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を有するものであり、および ISO720に準じた少なくともHGA2の耐加水分解性を有する、医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項14】 Y:Xの比が2以下である、請求項13記載の医薬品パッケージ用ガラス。 【請求項15】 前記アルカリ酸化物が、8モル%超の量でNa_(2)Oを含む、請求項14記載の医薬品パッケージ用ガラス。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-06-08 |
出願番号 | 特願2016-124365(P2016-124365) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(C03C)
P 1 651・ 857- YAA (C03C) P 1 651・ 121- YAA (C03C) P 1 651・ 537- YAA (C03C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 立木 林 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
山崎 直也 中澤 登 |
登録日 | 2017-01-06 |
登録番号 | 特許第6065301号(P6065301) |
権利者 | コーニング インコーポレイテッド |
発明の名称 | 改良された化学的および機械的耐久性を有するガラス組成物 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |