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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41C
管理番号 1343617
審判番号 不服2016-17665  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-28 
確定日 2018-08-30 
事件の表示 特願2011-232132「ブラジャー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 87404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年10月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 7月14日付け 拒絶理由通知書
同年 9月 3日 意見書、手続補正書の提出
平成28年 2月23日付け 拒絶理由通知書
同年 4月11日 意見書、手続補正書の提出
同年 8月23日付け 拒絶査定
同年11月28日 審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出
平成29年 2月27日 上申書の提出
同年11月22日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成30年 1月26日 意見書、手続補正書の提出

第2.本願発明について
1.請求項1の記載
平成30年1月26日提出の手続補正書により補正された請求項1には、次のように記載されている。

「複数枚のウレタンフォームが積層された状態でモールド成形されたパッドを備えたカップであって、
樹脂硬化を伴わずに湾曲変形可能な変形性を有する布製、編製、又は伸長性あるいは伸縮性のある不織布からなる扁平な繊維製の紐状テープが積層面であってカップの下方周縁部に沿って配置されていることを特徴とするカップ付き衣料。」

2.上記請求項1に記載された発明の認定
(1)「布」とは、文言を通常どおりに解釈すれば、糸を材料として二次元に形成された材料を示す用語であって、その中には、織物、編物、組物及び不織布を全て含むものであると解される。布製をそのように解釈(以下「解釈A」という。)した場合の請求項1に係る発明を本願発明Aという。

(2)一方、上記請求項1の記載に「布製、編製、又は・・・不織布からなる」と、「布製」か「編製」か「不織布」と列挙されているのだから、「布」は、編物、及び不織布を除いた布であるとも解される。このように解釈(以下「解釈B」という。)した場合の請求項1に係る発明を本願発明Bという。

第3.拒絶理由通知の概要
平成29年11月28日付け拒絶理由通知は、平成30年1月26日付け手続補正書により補正される前の本願の請求項1?9に係る発明は、引用文献1?6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1.実用新案登録第3126567号公報
引用文献2.特開平11-140709号公報
引用文献3.特開2011-157669号公報
引用文献4.特開2006-124893号公報
引用文献5.特開2000-96311号公報
引用文献6.特開2006-28648号公報

第4.引用文献の記載
1.引用文献1の記載事項、及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 「【請求項1】
2つの胸カップと、該2つの胸カップ間のブリッジと、前記2つの胸カップの各々について、前記胸カップの下部周辺縁部の少なくとも一部から延伸しているフランジと、を形成するブラジャーカップ組立体であって、
該ブラジャーカップ組立体が、
(a)互いに積層され、前記2つの胸カップの形状を形成するように成形された少なくとも2つのプライ材と、
(b)前記2つの胸カップのうち一または双方の前記胸カップの前記下部周辺縁部で、又は前記下部周辺縁部に隣接して、前記少なくとも2つのプライ材のうちの2つのプライ材と積層され、且つ、該2つのプライ材の間に挿入されて、弾性的に屈曲可能とされている非金属の下胸サポートストリップと、
を備えているブラジャーカップ組立体。」

イ 「【請求項14】
少なくとも前記胸カップに、少なくとも2つの積層された発泡プライ材からなるコア組立体が設けられ、前記下胸サポートストリップが、前記2つの積層された発泡プライ材に積層され、且つ、前記発泡プライ材間にあることを特徴とする請求項1に記載のブラジャーカップ組立体。」

ウ 「【請求項18】
前記下胸サポートストリップが、実質的に非伸縮性の材料を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のブラジャーカップ組立体。」

エ 「【0001】
本考案は、下胸サポートを組み込んでいるブラジャーに関する。詳しくは、従来のスチール製アンダーワイヤサポートの代替として下胸サポートを組み込んでいるブラジャーに関する。しかし、これに限定される訳ではない。」

オ 「【0004】
従って、第1の態様においては、本考案は、2つの胸カップと、該2つの胸カップ間のブリッジと、前記2つの胸カップの各々について、前記胸カップの下部周辺縁部の少なくとも一部から延伸しているフランジと、を形成するブラジャーカップ組立体であって、(a)互いに積層され、前記2つの胸カップの形状を形成するように成形された少なくとも2つのプライ材と、(b)前記2つの胸カップのうち一または双方の前記胸カップの前記下部周辺縁部で、又は前記下部周辺縁部に隣接して、前記少なくとも2つのプライ材のうちの2つのプライ材と積層され、該2つのプライ材の間に挿入されて、弾性的に屈曲可能とされている非金属の下胸サポートストリップと、を備えているブラジャーカップ組立体を含む。」

カ 「【0019】
好ましくは、下胸サポートストリップは、不織材料を含んでいる。
【0020】
好ましくは、下胸サポートストリップは、不織布を含んでいる。
【0021】
好ましくは、下胸サポートストリップは、実質的に非伸縮性の材料を含んでいる。
【0022】
好ましくは、下胸サポートストリップは、発泡材を含んでいる。」

キ 「【0035】
好ましくは、少なくとも2つの積層された発泡プライ材からなるコア組立体が設けられて、下胸サポートストリップが2つの積層された発泡プライ材に積層され、2つの積層された発泡プライ材間にある。」

ク 「【0042】
好ましくは、ブラジャーカップが熱成形プロセスによって作られて、該プロセスの際に、下胸サポートストリップがブラジャーカップに組み込まれる。」

ケ 「【0063】
少なくとも1つの下胸サポートストリップ4が、胸カップ組立体1の構成要素と協働している。下胸サポートストリップ4が、一カ所以上の所望の位置で胸カップ組立体の2プライ間に取り込まれているか、又は挿入されている。所望の位置は、2つの好ましい位置のうち少なくとも1つの位置を含んでいる。第1の好ましい位置は、胸カップ側面上の内方で、且つ、各胸カップ8,9の下部周辺縁部16の実質的な一部に沿った位置にある。例えば、このことは、下胸サポートストリップ4が周辺縁部16に隣接して位置決めされている図2に示されている。各胸カップの下部周辺縁部は、胸カップ9と周辺フランジ2との境界とされる。」

コ 「【0067】
図6では、図3bに示す変形が示されている。下胸サポートストリップ4が、前記組立体のプライのうち少なくとも2つ(好ましくはすべて)の積層ステップ及び/又は成形ステップの際に熱接着によってプライ間に取り込まれている。下胸サポートストリップ4の主面(major surface)がプライ材と平行とされている。積層を容易に実施するために、接着材が、積層ステップの前に下胸サポートストリップ4に塗布される。
【0068】
図8に示す実施例に関する下胸サポートストリップ4は、弾性的に屈曲可能だが実質的に非伸縮性とされる不織布とすることができる。前記下胸サポートストリップは、1つ以上の被覆プライ材からなり得るストリップのような平面部材又は薄肉部材とされることが望ましい。前記下胸サポートストリップは、被覆プライ材の主面で、又は被覆プライ材の縁部の一部又はすべてで接合され得る幾つかの被覆プライ材から構成される。平らな不織布のソックス状の物(sock)又はチャネル状の物(channel)が、下胸サポートストリップ4として用いられる。下胸サポートストリップ4は、代替的に発泡材とすることができる。下胸サポートストリップ4が発泡材とされる場合には、胸カップ組立体1のうち任意の又はすべての構成要素を形成するために、構成要素として用いられるどの発泡プライよりも非弾性的とされることが望ましい。下胸カップサポートストリップ4のために用いられる材料は、胸カップ組立体1に前記材料を組み込む熱成形プロセスの影響を受けやすいので、前記材料は熱成形プロセスの際の温度に耐えることができなければならない。例えば、前記材料は溶けても、非伸縮特性を失ってもならない。熱成形プロセスは、例えば約170?190℃の温度及び約120秒の停止時間(dwell time)を必要とすることが望ましい。下胸カップストリップ4は、2つの主面を有する平坦且つ平面的な構成からなり、幅Wよりも実質的に薄い一定厚さTとされることが望ましい。このことは、前記主面の平面に平行な方向の曲げ強さが、前記主面に垂直な方向の曲げ強さよりも非常に大きいことが望ましい。下胸カップサポートストリップ4は、金属材料から構成されないことが望ましい。下胸カップサポートストリップ4は、実質的に非伸縮性を有するが、前記主面と垂直な方向に弾性的に屈曲可能とされていることが望ましい。」

(2)引用発明
上記(1)ア?コの摘記を、本願発明に照らして整理すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「2つの積層された発泡プライ材が熱成形された胸カップ組立体であって、
主面と垂直な方向に弾性的に屈曲可能である、非金属の実質的に非伸縮性の材料からなる、平面部材又は薄肉部材からなる下胸サポートストリップ4が2つの発泡プライ材間であって、胸カップの下部周辺縁部に隣接して配置されたブラジャー。」

2.引用文献3の記載事項
(1)「【0014】
カップ12は、左右のバストを包み込むものであり、ウレタンフォームやポリエチレンフォームなどの樹脂発泡材料からなり、乳房の形に添うように略椀状に成形された基材20(図2に示す例の場合には、表裏方向に5枚の基材20a?20fが積層して形成されている)を有する。この基材20の表裏両面には、ポリエステル繊維やポリアミド(ナイロン)繊維などの熱可塑性繊維を緯編したメリヤス生地等からなる布帛22が取着されると共に、これらの端縁部が熱融着により一体化されている。このように樹脂発泡材料からなる基材20の表裏両面を布帛22で被覆することによって、カップ12の表面強度や保形性の向上が図られている。」

(2)「【0022】
以上のように構成されたブラジャー10を製造する際には、まず始めに、表裏方向にて積層する複数の基材20a,20b…、布帛22及びフィルム24を各々所定の大きさ及び形状に裁断し、これらを(外表面となる)布帛22、外表面(表面)側の基材20f?20b、フィルム24、内表面(裏面)側の基材20a及び(内表面となる)布帛22の順に積層すると共に、表面側に積層された基材20bと基材20cとの間であって、カップ12が形成された際にその下側湾曲縁12bに沿う位置にワイヤー18を配設した後、図示しない金型にセットして熱圧する。するとカップ12の外表面になる布帛22と内表面になる布帛22とが出会う個所、すなわちカップ12の周縁にて両者が熱溶融することによって基材20及びフィルム24の周縁共々熱圧にて一体化され、所定形状のカップ12が形成される。」

第5.本願発明Bと引用発明との対比、判断
1.本願発明Bと引用発明との対比
(1)引用発明の「2つの発泡プライ材間」、「胸カップの下部周辺縁部」、「隣接して」、「ブラジャー」は、それぞれ本願発明の「積層面」、「カップの下方周縁部」、「沿って」、「カップ付き衣料」に相当する。

(2)引用発明の「下胸サポートストリップ4」は、「平面部材又は薄肉部材」からなるものであり、その機能を参酌してみれば、本願発明の「扁平な紐状テープ」と、その素材、及びその素材に基づく特性といった点以外において一致する。

(3)また、引用発明の「パッドを備えたカップ」と本願発明の「胸カップ組立体」とは、その素材、及び成形方法といった点以外において一致する。

(4)そうしてみると、本願発明Bと引用発明との一致点、及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「パッドを備えたカップであって、
扁平な紐状テープが積層面であってカップの下方周縁部に沿って配置されているカップ付き衣料。」

<相違点1>
本願発明Bが、上記第2.2.(2)の解釈Bによる「樹脂硬化を伴わずに湾曲変形可能な変形性を有する布製からなる扁平な繊維製の紐状テープ」を有するものであるのに対し、引用発明は、「非金属の実質的に非伸縮性の材料」からなる「平面部材又は薄肉部材」で構成された「下胸サポートストリップ4」を有するものの、「非金属の実質的に非伸縮性の材料」がどのようなものか、及び「非金属の実質的に非伸縮性の材料」からなる「下胸サポートストリップ4」の変形性、伸長性及び伸縮性がどのようなものであるのか、が具体的に特定されていない点。

<相違点2>
本願発明Bが、「複数枚のウレタンフォームが積層された状態でモールド成形されたパッドを備えたカップ」を有するものであるのに対し、引用発明は、「2つの積層された発泡プライ材が熱成形された胸カップ組立体」を有するものの、「発泡プライ材」の材質、及び「熱成形」が、どのような成形方法であるのか、が具体的に特定されていない点。

2.本願発明Bと引用発明との上記相違点1及び2についての判断
(1)そこで、上記相違点1について検討する。
ア 上記第4.1.(1)カの摘記の「【0019】好ましくは、下胸サポートストリップは、不織材料を含んでいる。【0020】好ましくは、下胸サポートストリップは、不織布を含んでいる。【0021】好ましくは、下胸サポートストリップは、実質的に非伸縮性の材料を含んでいる。【0022】好ましくは、下胸サポートストリップは、発泡材を含んでいる。」との記載から、引用発明の「下胸サポートスリップ4」の「非金属の実質的に非伸縮性の材料」には、不織布以外の「非金属の実質的に非伸縮性の材料」を含み得るものであることが当業者に理解でき、一方、不織布以外の非金属の「平面部材又は薄肉部材」としては、通常、織布が想起され、かつ、織布は通常はそれ自身弾性を有しない経糸と緯糸が織られて構成されるから、実質的に非伸縮性を示すものであることは明らかである。よって、引用発明の「非金属の実質的に非伸縮性の材料」として織布を用いることは、引用文献1の記載から当業者が容易に想到し得たことである。

イ 請求人は、平成30年1月26日の意見書の5.(c)(ア)において、「引用刊行物1では、「不織布は弾性的に屈曲可能だが実質的に非伸縮性とされる」と記載されるように、実質的に面方向には弾性屈曲できるが厚み方向となるカップ下縁に沿って伸びることとなる湾曲ができない素材」、「引用例1に記載された、下胸サポートストリップは、本発明のように曲げて接着剤などで仮固定して使用できるような性状ではなく」と主張するが、上記第4.1(1)コに摘記したように、引用発明の「下胸サポートストリップ4」も、カップの形状に沿わせられるものであって、接着剤を用いてカップに接着されるものであるから、請求人の主張は、引用文献1の記載に基づくものではなく、採用し得ない。

ウ また、第4.1.(1)コの摘記からすれば、「非金属の実質的に非伸縮性の材料」は、「平面部材又は薄肉部材」であって、「主面と垂直な方向に弾性的に屈曲可能」である。そして、上記のとおり、「非金属の実質的に非伸縮性の材料」として織布を選択した場合、引用発明の「下胸カップストリップ4」は、本願発明Bと同様に、樹脂硬化を伴わず、湾曲変形可能な変形性を有する布製からなる扁平な繊維製のものとなることは明らかであり、新たな効果を奏するものとは言えない。

(2)次に、上記相違点2について検討する。
例えば、第4.2.(1)、(2)に摘記されているように、引用文献3には、ブラジャーのパッドを備えたカップを形成するにあたり、複数枚のウレタンフォームを積層し、熱成形として金型成形、すなわち、モールド成形することが記載されている。
してみれば、引用発明において、「発泡プライ材」として「ウレタンフォーム」を採用するとともに、熱成形として「モールド成形」を採用することは、上記引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たことである。

(3)したがって、本願発明Bは、引用発明及び引用文献3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6.本願発明Aと引用発明との対比・判断
1.本願発明Aと引用発明との対比
本願発明Aと引用発明との対比すると、第5.1.(4)と同様の一致点、相違点を有する。

2.本願発明Aと引用発明との上記相違点1及び2についての判断
(1)そこで、上記相違点1について検討する。
本願発明Aの「布」に関する上記第2.2.(1)の解釈Aを参酌してみれば、「布」は、織物、編物、組物及び不織布を全て含むものである。そのうち、「布」が織物(織布)である場合は、第5.2.(1)に記載したように当業者が容易に想到し得たことである。また、「布」が不織布である場合は、第4.1.(1)カに摘記したように、引用文献1に示唆されている。よって、上記相違点1は、引用発明及び引用文献1に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)次に、上記相違点2について検討する。
上記第5.2.(2)に示されているとおり、上記相違点2は、上記引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たことである。

(3)したがって、本願発明Aは、引用発明並びに引用文献1及び3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明はいずれの解釈によっても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-26 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2011-232132(P2011-232132)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 武井 健浩
久保 克彦
発明の名称 ブラジャー  
代理人 山田 泰之  
代理人 長谷部 善太郎  

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