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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1344473
審判番号 不服2017-5579  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-19 
確定日 2018-09-19 
事件の表示 特願2014-175734「パッケージ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月12日出願公開、特開2016- 4992〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年8月29日(パリ条約に基づく優先権主張 平成26年6月16日 台湾(TW))の出願であって、平成27年11月13日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成28年2月5日付けで手続補正がなされ、同年7月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月11日付けで手続補正がなされたが、同年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年4月19日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

第2 平成29年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年4月19日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正の目的について
平成29年4月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、
「【請求項1】
パッケージ方法において、
パッケージ方法であって、複数の基板構造を同時にパッケージするのに用い、
第1表面と該第1表面に背向する第2表面を具えた金属キャリアを提供するステップ、
第1導線層を該金属キャリアの該第2表面上に形成するステップ、
第1導電柱層を該第1導線層の上に形成するステップ、
真空圧着工程を応用して誘電材料層を該金属キャリアの該第2表面に圧着することにより、該誘電材料層に該金属キャリアの該第2表面を完全に被覆させるステップ、
しかも、各基板構造の間に該誘電材料層を充填して空隙がなく、
該第1導電柱層の一端を露出させるステップ、
第2導線層を露出した該第1導電柱層の一端上に形成するステップ、
ソルダーレジスト層を該誘電材料層と該第2導線層の上に形成するステップ、
該金属キャリアを除去するステップ、
以上のステップを包含することを特徴とする、パッケージ方法。」

とあったものが、

「【請求項1】
パッケージ方法において、
パッケージ方法であって、複数の基板構造を同時にパッケージするのに用い、
上表面を具えた金属キャリアを提供するステップ、
第1導線層を該金属キャリアの該上表面上に形成するステップ、
第1導電柱層を該第1導線層の上に形成するステップ、
真空圧着工程を応用して誘電材料層を該金属キャリアの該上表面に圧着することにより、該誘電材料層に該金属キャリアの該上表面の全部の表面を完全に被覆させるステップ、
しかも、各基板構造の間に該誘電材料層を充填して空隙がなく、
該誘電材料層の一部分を除去して凹形溝を形成し、該凹形溝は該誘電材料層の上表面から下に向って凹み、並びに該第1導電柱層の一端を露出させるステップ、
第2導線層を露出した該第1導電柱層の一端上に形成するステップ、
ソルダーレジスト層を該誘電材料層と該第2導線層の上に形成するステップ、
該金属キャリアを除去するステップ、
第1外接素子を、該第1導線層の下表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ、
外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該第1導線層の該下表面の全部の表面を被覆するように該第1導線層の該下表面上に形成するステップ、
以上のステップを包含することを特徴とする、パッケージ方法。」
と補正された。

上記補正は実質的に、
ア.請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属キャリアを提供するステップ」について、金属キャリアが「第1表面と該第1表面に背向する第2表面」を具えたとあったのを、単に「上表面」を具えたと補正し、
イ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「誘電材料層に金属キャリアの第2表面を完全に被覆させるステップ」について、誘電材料層が金属キャリアの上表面(補正前の第2表面)の「全部の表面」を完全に被覆するものである旨の限定を付加し、
ウ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1導電柱層の一端を露出させるステップ」について、一端を露出させるために「該誘電材料層の一部分を除去して凹形溝を形成」し、「該凹形溝は該誘電材料層の上表面から下に向って凹」んだものである旨の限定を付加し、
エ.さらに請求項1において、「第1外接素子を、該第1導線層の下表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ」、及び「外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該第1導線層の該下表面の全部の表面を被覆するように該第1導線層の該下表面上に形成するステップ」を付加するものである。

そして、上記「イ.」及び上記「ウ.」については、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記「ア.」についても、補正後にあっては金属キャリアが「上表面」を具えることが記載されているのみであるが、当該「上表面」に背向する下表面を有することは自明といえることを踏まえると、補正前の「第2表面」が「上」表面であるとの限定を付加するものであるとみることができ(直接記載はされていないが、補正前の「第1表面」は「下」表面であると解される)、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、上記「エ.」については、本件補正前の請求項1に記載された発明のいずれの発明特定事項を概念的に下位にするものではなく、「第1外接素子を、該第1導線層の下表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ」、及び「外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該第1導線層の該下表面の全部の表面を被覆するように該第1導線層の該下表面上に形成するステップ」という2つの新たな発明特定事項を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するとはいえない。また、第1号に掲げる請求項の削除、第3号に掲げる誤記の訂正、第4号に掲げる拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことも明らかである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

2.独立特許要件について
仮に、上記「エ.」の補正が、「パッケージ方法」について限定したものであり、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められるとして、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)及び当該請求項1に従属する請求項2ないし9に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについても以下に検討する。

2-1.特許法第29条第2項(進歩性)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-363169号公報(以下、「引用例」という。)には、「半導体装置実装用テープ基板の製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
(1)少なくとも片面に金属層を有するテープ状キャリアの片面にパターン化した配線層を形成する工程、(2)この配線層の所定の箇所にビア用のポストを形成する工程、(3)当該配線層の上に、上記ビア用ポストの上面を露出するように絶縁層を形成する工程、(4)この絶縁層の上に、絶縁層の下に位置する上記配線層にビアを通して電気的に接続する別の配線層を形成する工程、(5)工程(2)?(4)を繰り返すことにより所定の数の配線層を形成する工程、(6)その後、最初に工程(1)で形成した配線層の下にあるキャリアの材料を除去する工程、を含むことを特徴とする半導体装置実装用テープ基板の製造方法。」

イ.「【0013】
・・・・・(略)・・・・・図1(f)に示したように、キャリアの金属フィルム(銅フィルム)10をエッチングにより除去する。それにより、キャリア10の銅フィルムと配線層形成用の銅フィルム12との間のチタン中間層(図示せず)が露出され、このチタン中間層をエッチングにより除去する。チタンを溶解するエッチング液と、銅を溶解するエッチング液は異なるため、チタン中間層をエッチングにより除去する際に、銅からなる配線層14は溶解しない。有機樹脂中間層の場合は、溶解もしくは剥離により容易に除去することができる。キャリアのテープが金属材料と樹脂材料のフィルムの積層テープの場合も、樹脂材料のフィルムを剥離などにより簡単に除去することができる。キャリアの金属フィルムと中間層の除去は、キャリアが連続テープの状態であるときに行ってもよく、あるいは個々の基板単位にテープを切断後に行ってもよい。」

ウ.「【0018】
単一材料の金属テープをキャリアとして使用するテープ基板の製造を、図3を参照して説明する。図3(a)に示したように、アルミニウム製の金属テープ40を用意する。アルミニウムテープ40上に、配線層となる部分が開口するよう、めっきレジストパターンを形成し、次いでアルミニウムテープを給電層として電解銅めっきを施し、最後にめっきレジストパターンを除去して、図3(b)に示したように配線層42を形成する。次に、形成した配線層42の所定の箇所を露出する開口を備えたレジストパターン(図示せず)をマスクとする電解銅めっきにより、図3(c)に示したビア用のポスト44を形成し、その後レジスタパターンを除去する。続いて、図3(d)に示したように、配線層42を覆いそしてポスト44の頭部を露出するように、絶縁層46を形成する。絶縁層46の形成は、エポキシやポリイミド等の樹脂を塗布するか、これら樹脂のフィルムを積層して行うことができる。
【0019】
次に、絶縁層46の上に無電解銅めっきと電解銅めっきにより銅層を形成し、これをパターニングして、図3(e)に示す上層配線層48を形成する。続いて、図3(f)に示したように上層配線層48の上に保護膜50を形成する。保護膜50は、ソルダレジストであり、感光性樹脂を塗布したり、感光性樹脂フィルムを積層したりした後、露光・現像し、上側配線層48の半導体チップとの接続部が露出した、所要のパターンに形成する。次に、配線層形成側の全面をレジスト膜(図示せず)で覆ってから、図3(f)に示したように、キャリアのアルミニウムテープ40をエッチングにより除去する。アルミニウムを溶解するエッチング液と、銅を溶解するエッチング液は異なるため、アルミニウムテープ40をエッチングにより除去する際に、銅からなる配線層42は溶解しない。露出された下層配線層42の上に、図3(g)に示したように保護膜52を形成して、半導体装置実装用テープ基板が得られる。保護膜52は、ソルダレジストであり、感光性樹脂を塗布したり、感光性樹脂フィルムを積層したりした後、露光・現像し、配線層42の外部接続端子接合部が露出した、所要のパターンに形成する。」

エ.「【0022】
図4に、本発明により製造したテープ基板に半導体チップを搭載して得られる半導体パッケージを示す。この図の半導体パッケージにおいては、テープ基板60の上に半導体チップ62が搭載され、テープ基板60の配線層61とワイヤ64を用いたワイヤボンディングにより電気的に接続され、封止樹脂66により封止されている。テープ基板の外部接続端子接合部には、外部接続端子としてのはんだボール68が接合されている。」

・上記引用例に記載の「半導体装置実装用テープ基板の製造方法」は、上記「ア.」、「ウ.」の記載事項、及び図3によれば、少なくとも片面に金属層を有するテープ状キャリアの片面にパターン化した配線層(下層配線層)42を形成する工程、この配線層42の所定の箇所にビア用のポスト44を形成する工程、配線層42の上に、ビア用ポスト44の上面を露出するように絶縁層46を形成する工程、絶縁層46の上に、絶縁層46の下に位置する配線層42にビアを通して電気的に接続する別の配線層(上側配線層)48を形成する工程、その後、最初に形成した配線層42の下にあるキャリアの材料を除去する工程、を含む半導体装置実装用テープ基板の製造方法である。
・上記「ウ.」の段落【0018】の記載事項、及び図3によれば、少なくとも片面に金属層を有するテープ状キャリアとしては、単一材料の金属テープ、具体的にはアルミニウムテープ40を用意し、これをキャリアとして使用するものである。
・上記「ウ.」の段落【0018】の記載事項によれば、絶縁層46の形成は、エポキシ等の樹脂のフィルムを積層して行うことができる。
・上記「ウ.」の段落【0019】の記載事項、及び図3によれば、上側配線層48を形成する工程の後に、別の配線層(上層配線層)48の上にソルダレジストからなる保護膜50を所定のパターンに形成する工程を含み、さらに、テープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、配線層(下層配線層)42の上にソルダレジストからなる保護膜52を所定のパターンに形成する工程を含む。
・上記「エ.」の記載事項、及び図4によれば、さらに、製造されたテープ基板60の上に半導体チップ62を搭載し、テープ基板60の配線層(上層配線層)61と電気的に接続するとともに、これら半導体チップ62や配線層(上層配線層)61の露出部分をすべて封止樹脂66により封止する工程と、テープ基板60の外部接続端子接合部(下層配線層が露出する部分)にはんだボール68を接合する工程と、を有している。
・上記「イ.」の記載事項によれば、テープ状キャリアの材料の除去は、キャリアが連続テープの状態であるときに行ってもよいものであり、少なくともテープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有するものである。

したがって、特に図3に示されるテープ基板の製造方法に着目するとともに、当該テープ基板に半導体チップを搭載することにより得られる「半導体パッケージ」の製造方法の発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「アルミニウムテープからなるテープ状キャリアを用意する工程と、
前記テープ状キャリアの片面にパターン化した下層配線層を形成する工程と、
前記下層配線層の所定の箇所にビア用のポストを形成する工程と、
前記下層配線層の上に、エポキシ等の樹脂のフィルムを積層することにより、前記ビア用ポストの上面を露出するように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記下層配線層にビアを通して電気的に接続する上層配線層を形成する工程と、
前記上層配線層の上にソルダレジストからなる保護膜を所定のパターンに形成する工程と、
最初に形成した前記下層配線層の下にある前記テープ状キャリアの材料を除去する工程と、
前記下層配線層の上にソルダレジストからなる保護膜を所定のパターンに形成する工程と、
以上の工程により製造されたテープ基板の上に半導体チップを搭載し、当該テープ基板の前記上層配線層と電気的に接続するとともに、これら半導体チップや上層配線層の露出部分をすべて封止樹脂により封止する工程と、
前記テープ基板の外部接続端子接合部(前記下層配線層が露出する部分)にはんだボールを接合する工程と、を含み、
少なくとも前記テープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有する、半導体パッケージの製造方法。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「アルミニウムテープからなるテープ状キャリアを用意する工程と」によれば、
引用発明における、アルミニウムテープからなる「テープ状キャリア」は、本願補正発明でいう「金属キャリア」に相当し、引用発明における「テープ状キャリア」にあっても、上表面を備えることは自明なことである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「上表面を具えた金属キャリアを提供するステップ」を包含するものである点で一致する。

イ.引用発明における「前記テープ状キャリアの片面にパターン化した下層配線層を形成する工程と」によれば、
引用発明における「下層配線層」は、本願補正発明でいう「第1導線層」に相当し、引用発明における「下層配線層」が形成される、テープ状キャリアの「片面」は、本願補正発明でいう「上表面」に相当する(引用例の図3(b)も参照)ものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「第1導線層を該金属キャリアの該上表面上に形成するステップ」を包含するものである点で一致する。

ウ.引用発明における「前記下層配線層の所定の箇所にビア用のポストを形成する工程と」によれば、
引用発明における「ビア用のポスト」は、本願補正発明でいう「第1導電柱層」に相当し、
本願補正発明と引用発明とは、「第1導電柱層を該第1導線層の上に形成するステップ」を包含するものである点で一致する。

エ.引用発明における「前記下層配線層の上に、エポキシ等の樹脂のフィルムを積層することにより、前記ビア用ポストの上面を露出するように絶縁層を形成する工程と・・・・少なくとも前記テープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有する」によれば、
(a)引用発明における、エポキシ等の「樹脂のフィルム」及び当該樹脂のフィルムから形成される「絶縁層」は、本願補正発明でいう「誘電材料層」に相当し、
(b)引用発明においても、少なくとも前記テープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有することから、「樹脂のフィルム」及び当該樹脂のフィルムから形成される「絶縁層」は、複数の基板単位、すなわち本願補正発明でいう、複数の「基板構造」に跨がって形成され、各基板単位の間にも樹脂のフィルムから形成される「絶縁層」が空隙なく充填されてなるものであるといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「誘電材料層を該金属キャリアの該上表面に積層することにより、該誘電材料層に該金属キャリアの該上表面の全部の表面を完全に被覆させるステップ」を包含し、「しかも、各基板構造の間に該誘電材料層を充填して空隙がな」い点、及び「該第1導電柱層の一端を露出させるステップ」を包含するものである点で共通するといえる。
ただし、誘電材料層を金属キャリアに積層して当該金属キャリアの上表面を被覆させる具体的方法として、本願補正発明では、「真空圧着工程を応用して」誘電材料層を金属キャリアの上表面に「圧着」する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点で相違しているとともに、
第1導電柱層の一端を露出させる具体的方法として、本願補正発明では、「該誘電材料層の一部分を除去して凹形溝を形成し、該凹形溝は該誘電材料層の上表面から下に向って凹」ませる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。

オ.引用発明における「前記絶縁層の上に、前記下層配線層にビアを通して電気的に接続する上層配線層を形成する工程と」によれば、
引用発明における「上層配線層」は、本願補正発明でいう「第2導線層」に相当し、引用発明における「上層配線層」にあっても、絶縁層から露出したビア用のポストの上面(一端)に電気的に接続するように形成されてなるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「第2導線層を露出した該第1導電柱層の一端上に形成するステップ」を包含するものである点で一致する。

カ.引用発明における「前記上層配線層の上にソルダレジストからなる保護膜を所定のパターンに形成する工程と」によれば、
引用発明における、ソルダレジストからなる「保護層」は、本願補正発明でいう「ソルダーレジスト層」に相当し、引用発明における「保護層」にあっても、上層配線層上のみでなく、絶縁層上にも形成されてなる(引用例の図3(f)を参照)ものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「ソルダーレジスト層を該誘電材料層と該第2導線層の上に形成するステップ」を包含するものである点で一致する。

キ.引用発明における「最初に形成した前記下層配線層の下にある前記テープ状キャリアの材料を除去する工程と」によれば、
本願補正発明と引用発明とは、「該金属キャリアを除去するステップ」を包含するものである点で一致する。

ク.引用発明における「以上の工程により製造されたテープ基板の上に半導体チップを搭載し、当該テープ基板の前記上層配線層と電気的に接続するとともに、これら半導体チップや上層配線層の露出部分をすべて封止樹脂により封止する工程と」によれば、
引用発明における「半導体チップ」、「封止樹脂」は、それぞれ本願補正発明でいう「第1外接素子」、「外部モールディング化合物層」に相当し、
本願補正発明と引用発明とは、「第1外接素子を、導線層の表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ」、及び「外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該導線層の該表面の全部の表面を被覆するように該導線層の該表面上に形成するステップ」を包含するものである点で共通するといえる。
ただし、第1外接素子及び外部モールディング化合物層が、本願補正発明では、「第1」導線層の「下」表面上に設けられる、すなわち、金属キャリアを除去した側に設けられる旨特定するのに対し、引用発明では、金属キャリアを除去した側とは反対側の上層配線層上に設けられるものである点で相違している。

ケ.そして、引用発明における「半導体パッケージの製造方法」は、本願補正発明でいう「パッケージ方法」に相当するものである。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「パッケージ方法において、
上表面を具えた金属キャリアを提供するステップ、
第1導線層を該金属キャリアの該上表面上に形成するステップ、
第1導電柱層を該第1導線層の上に形成するステップ、
誘電材料層を該金属キャリアの該上表面に積層することにより、該誘電材料層に該金属キャリアの該上表面の全部の表面を完全に被覆させるステップ、
しかも、各基板構造の間に該誘電材料層を充填して空隙がなく、
該第1導電柱層の一端を露出させるステップ、
第2導線層を露出した該第1導電柱層の一端上に形成するステップ、
ソルダーレジスト層を該誘電材料層と該第2導線層の上に形成するステップ、
該金属キャリアを除去するステップ、
第1外接素子を、導線層の表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ、
外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該導線層の該表面の全部の表面を被覆するように該導線層の該表面上に形成するステップ、
以上のステップを包含することを特徴とする、パッケージ方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
当該パッケージ方法が、本願補正発明では、「複数の基板構造を同時にパッケージするのに用い」られる旨特定するのに対し、引用発明では、少なくともテープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有するものの、複数の基板構造を「同時にパッケージする」ことの明確な特定がない点。

[相違点2]
誘電材料層を金属キャリアに積層して当該金属キャリアの上表面を被覆させる具体的方法として、本願補正発明では、「真空圧着工程を応用して」誘電材料層を金属キャリアの上表面に「圧着」するものである旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

[相違点3]
第1導電柱層の一端を露出させる具体的方法として、本願補正発明では、「該誘電材料層の一部分を除去して凹形溝を形成し、該凹形溝は該誘電材料層の上表面から下に向って凹」ませる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点4]
第1外接素子及び外部モールディング化合物層が、本願補正発明では、「第1」導線層の「下」表面上に設けられる、すなわち、金属キャリアを除去した側に設けられる旨特定するのに対し、引用発明では、金属キャリアを除去した側とは反対側の上層配線層側に設けられるものである点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
本願補正発明でいう、複数の基板構造を「同時にパッケージする」ことが、当該パッケージ方法におけるどのステップまでのことを意味するのか必ずしも明確でないが、少なくとも誘電材料層に金属キャリアの第2表面を完全に被覆させるステップを含むこと、あるいは金属キャリアを除去するステップまでのことを意味するというのであれば、引用発明にあっても、少なくともテープ状キャリアの材料を除去する工程の後に、個々の基板単位にテープを切断する工程を有するのであるから、引用発明も本願補正発明と同様、複数の基板構造を「同時にパッケージする」ものであるといえ(上記「(2)エ.(b)」も参照)、実質的な相違点とはならない。
また、外部モールディング化合物層を形成するステップまでのことを意味するものとしても、複数の基板単位に対して、チップ等の封止樹脂による封止工程を含めたパッケージングを同時に(一括して)行い、パッケージ後に個々の基板単位に切断することもごく一般的に行われていることであり、引用発明においても、個々の基板単位にテープを切断する工程を、半導体チップや上層配線層の露出部分をすべて封止樹脂により封止する工程の後に行うようにし、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。

[相違点2]について
所定の表面上に形成された配線パターン等を埋め込むように当該表面上に絶縁層(誘電材料層)を積層して被覆する方法として、樹脂フィルムなどの誘電材料層を「圧着」により行うことは、例えば特開2003-133477号公報(特に段落【0107】、図12(A)を参照)、特開2004-71656号公報(特に段落【0028】、【0051】、図1(e)を参照)、特開2006-135277号公報(特に段落【0039】、図1(J)を参照)に記載され、中でも「真空」圧着を行うことも上記特開2003-133477号公報及び上記特開2004-71656号公報に記載のように周知の技術事項であり、引用発明においても、下層配線層の上にエポキシ等の樹脂のフィルムを積層することによって絶縁層を形成する際に、かかる周知の技術事項を採用し、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点3]について
引用例には、ビア用のポストの頭部を絶縁層から露出させる具体的方法についての明記はないものの、図3(d)からみて絶縁層の表面全体とビア用のポストの頭部が面一であることから例えば研磨法によるものと解されるが、例えば米国特許第6261941号明細書(特に、第5欄20?29行、Fig.6Aを参照)に記載のように、感光性樹脂法やプラズマエッチング法などを用い、絶縁層の一部を除去して表面から下に向って凹む凹形溝(ホール57,59)を形成するようにすることも周知といえる技術手段であり、引用発明においても、例えば研磨法を用いることに代えてかかる周知の技術手段を採用し、相違点3に係る構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

[相違点4]について
引用発明においては、半導体チップ及び当該半導体チップ等を封止する封止樹脂はテープ状キャリアを除いた側とは反対側のテープ基板の上面、すなわち上層配線層側に設けられ、はんだボールがテープ状キャリアを除いた側であるテープ基板の下面、すなわち下層配線層側に設けられてなるものであるが、これらを互いに逆側に設けることも当業者にとって設計的事項にすぎず(例えば国際公開第2008/001915号(特に段落[0085]?[0090]、[0326]?[0329]、[0348]?[0350]、図4、図29、図32を参照)や特開2006-19433号公報(段落【0060】?【0061】、【0078】、図4、図6を参照)には、キャリア(支持基板)を除いた側に半導体素子及び当該半導体素子等を封止する封止樹脂を設けるようにしたものが記載されている)、引用発明において、半導体チップ及び当該半導体チップ等を封止する封止樹脂をテープ状キャリアを除いた側であるテープ基板の下面、すなわち下層配線層側に設けるようにし、相違点4に係る構成とすることも当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-2.特許法第36条第6項第1号・第2号(明確性・サポート要件)
請求項3において、「第1ホトレジスト層を該金属キャリアの該上表面上に形成し、第2ホトレジスト層を該金属キャリアの該上表面に形成するステップ」とあるが、
かかる記載によれば、第1ホトレジスト層と第2ホトレジスト層の双方が金属キャリアの同じ「上表面」に形成されることとなり、技術的にみて意味不明であり、請求項3に係る発明は明確なものでない。
また、発明の詳細な説明における「第1ホトレジスト層310を金属キャリア200の第2表面204上に形成し、第2ホトレジスト層320を金属キャリア200の第1表面202上に形成する。」なる記載(段落【0013】)とも対応しておらず、請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとも認められない。

よって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしていないから、本願請求項3に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、また、仮に同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当すると認められるとしても同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成29年4月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「請求項1】
パッケージ方法において、
パッケージ方法であって、複数の基板構造を同時にパッケージするのに用い、
第1表面と該第1表面に背向する第2表面を具えた金属キャリアを提供するステップ、
第1導線層を該金属キャリアの該第2表面上に形成するステップ、
第1導電柱層を該第1導線層の上に形成するステップ、
真空圧着工程を応用して誘電材料層を該金属キャリアの該第2表面に圧着することにより、該誘電材料層に該金属キャリアの該第2表面を完全に被覆させるステップ、
しかも、各基板構造の間に該誘電材料層を充填して空隙がなく、
該第1導電柱層の一端を露出させるステップ、
第2導線層を露出した該第1導電柱層の一端上に形成するステップ、
ソルダーレジスト層を該誘電材料層と該第2導線層の上に形成するステップ、
該金属キャリアを除去するステップ、
以上のステップを包含することを特徴とする、パッケージ方法。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2-1.(1)」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2 2-1.」で検討した本願補正発明から少なくとも、
本願補正発明の発明特定事項である「金属キャリアを提供するステップ」について、金属キャリアにおける補正前の「第2表面」が「上」表面であるとする限定を省き、
同じく発明特定事項である「誘電材料層に金属キャリアの第2表面を完全に被覆させるステップ」について、誘電材料層が金属キャリアの上表面(補正前の第2表面)の「全部の表面」を完全に被覆するものである旨の限定を省き、
同じく発明特定事項である「第1導電柱層の一端を露出させるステップ」について、一端を露出させるために「該誘電材料層の一部分を除去して凹形溝を形成」し、「該凹形溝は該誘電材料層の上表面から下に向って凹」んだものである旨の限定を省き、
そして、「第1外接素子を、該第1導線層の下表面上に設置し並びに電気的に接続するステップ」、及び「外部モールディング化合物層を、該第1外接素子と該第1導線層の該下表面の全部の表面を被覆するように該第1導線層の該下表面上に形成するステップ」を有することの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項(上記「第2 2-1.(2)」で認定した相違点3に係る構成や相違点4に係る構成など)を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2-1.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明から上記他の限定事項(相違点3に係る構成や相違点4に係る構成など)を省いた本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-20 
結審通知日 2018-04-24 
審決日 2018-05-08 
出願番号 特願2014-175734(P2014-175734)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻川 倫広多賀 和宏  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 井上 信一
酒井 朋広
発明の名称 パッケージ方法  
代理人 あいわ特許業務法人  

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