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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1344517
審判番号 不服2017-11890  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2018-09-20 
事件の表示 特願2017- 231「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日出願公開、特開2018-109871〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成29年1月4日の出願であって、平成29年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成30年3月28日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年5月30日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年5月30日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明、及び、請求項2に係る発明(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
通知バーを含む画面を表示するディスプレイと、
近接センサと、
自機器に接触して操作する第1のモードと自機器を触らずに操作する第2モードとのうち前記第2モードのときに、前記通知バーにピクトを表示すると共に、前記近接センサによってジェスチャの検出を検知すると、前記ジェスチャの感度に応じて前記画面の表示態様を変化させるコントローラと、を備える電子機器。
【請求項2】
前記ジェスチャの感度は、前記近接センサから取得した検出値の出力状態である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。」

3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由である、平成30年3月28日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。
本願の請求項1-7に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2015-515065号公報
引用文献2:国際公開第2016/098519号
引用文献3:特開2014-85954号公報
引用文献4:特開2010-170166号公報
引用文献5:国際公開第2013/105443号

4 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

ア 段落【0003】
「【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)などのコンピューティングデバイス、および他のデバイスは、これらのデバイスが動作および/または他の感知された状態をユーザ入力の形態で取得することを可能にし得るタッチスクリーン、加速度計、カメラ、近接センサ、マイクロフォン、および/または他のセンサをますます含むようになっている。いくつかのデバイスでは、たとえば、特定の動作および/または出来事が、たとえば様々な状況で特定のコマンドに対応するジェスチャとして認識され得る。たとえば、デバイスは、ブラウザアプリケーションが表示されている間は「前のページ」コマンドに対応し、メディアプレーヤアプリケーションが表示されている間は「前のトラック」コマンドに対応する左スワイプ(たとえば、ユーザがその手をデバイスの前で左に振る)などのジェスチャを認識することができる。この例では、ユーザは、これらの状況の各々において、対応するジェスチャを実行することによって、デバイスにこれらのコマンドを実行させることができる。改善されたジェスチャ認識は、多くの環境において有益であり得る。」

イ 段落【0026】-【0027】
「【0026】
本発明の実施形態を使用すると、コンピュータシステムは、たとえば、ユーザに既知のポーズを実行させることによって、タッチされることなくロック解除され得る。たとえば、カメラは、コンピュータシステムに関連する可能性があり、ユーザは、コンピュータシステムに関連するカメラの視点でポーズを実行することができる。いくつかの実施形態では、他の検出可能デバイスは、限定はしないが、超音波センサ、電磁放射センサ、微小電気機械システム(MEMS)ベースのデバイス、および慣性センサを含むコントローラデバイスを含む、コンピュータシステムに関連している可能性がある。ユーザは、これらの他の検出可能デバイスが検出することができる形でポーズを実行することができる。コンピュータシステムは、ポーズがコンピュータシステムをロック解除するための所定のジェスチャに対応する場合、および/または所定の検出状態を達成した場合、ロック解除され得る。いくつかの実施形態では、ユーザは、デバイスによって指示されるとき、任意のポーズを実行することができ、デバイスは、所定の検出状態が達成されると、そのポーズに確認応答するか、または応答することができる。ポーズは、手のポーズまたはジェスチャである可能性があり、カーソルが、ユーザの手の位置を反映するコンピュータシステム上に表示され得る。いくつかの実施形態では、ジェスチャは、所定の経路に沿って空中で1つまたは複数の手を動かすユーザによって、または上記の方法の任意の組合せによって実行され得る。いくつかの実施形態では、ポーズは、たとえばコンピューティングシステムが適切に構成されるとき、および/またはさらなる動作がそのポーズに続くときの決まりのジェスチャを含むことができる。さらに、ポーズは、手、腕、脚、顔の特徴などによって、または、個人が携行している、もしくは行使している可能性がある他の物体によっても実行され、それらを含むことができる。コンピュータシステムは、ユーザにジェスチャを連想させるために、そのスクリーン上に、所定のジェスチャの視覚的合図を表示することもできる。加えて、カメラを有するコンピュータシステムは、ユーザが、同様の機構を介してコンピュータシステムにタッチすることなく任意のプロンプトに確認応答することを可能にすることができる。加えて、応答/無視またはOK/CANCELなどの、2つの考えられる応答を有するプロンプトでは、2つの所定のジェスチャ、すなわち考えられる各応答に対する1つのジェスチャを使用することができる。詳細には、視覚的合図がディスプレイの一方の側に1つの応答オプションを示し、ディスプレイの他方の側に他方の応答オプションを示す場合、所望の応答を選択するために、同じ手のポーズを使用することができるが、ユーザは、右側のオプションを選択するために、そのポーズにその右手を使用することができ、左側のオプションを選択するために、そのポーズにその左手を使用することができる。加えて、各オプションに関する特定の手のポーズまたはジェスチャの適切なビジュアルプロンプトは、前述のように、ユーザに対する合図として表示され得る。
【0027】
次に、いくつかの例示的な実施形態について、本明細書の一部を形成する添付の図面に関連して説明する。本開示の1つまたは複数の態様が実装され得る特定の実施形態について上記で説明したが、本開示の範囲、または添付の特許請求の範囲の趣旨を逸脱することなく、他の実施形態を使用することができ、様々な変更を行うことができる。上記で説明した実施形態のすべては、コンピュータシステムなどの、そのようなシステムにおいて実施され得る。以下の実施形態は、ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力のカメラによる検出について言及することができる。しかしながら、上記で説明したように、使用され得る他の検出可能デバイスは、限定はしないが、超音波センサ、電磁放射センサ、微小電気機械システム(MEMS)ベースのデバイス、およびコントローラデバイスを含む。したがって、カメラについて説明する以下の例の各々において、カメラは、上記で説明したセンサのうちのいずれかに置き換えられ、またはそれらに加えて使用することができるか、あるいは、ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力を検出するように構成された別のセンサを使用することができる。」


ウ 段落【0030】
「【0030】
いくつかの実施形態では、十分な時間は、正しく検出されるジェスチャまたはポーズの特定の信頼レベルに相関する可能性がある。たとえば、ディスプレイ110は、特定の信頼レベルに達する方への進行をユーザに指示する進行度インジケータを提示することができる。いくつかの実施形態では、十分な時間は、ユーザが通常ポーズを保持することができない時間量、したがって、ユーザが、たとえば別の理由でいじり回すか、または動くのではなく、意図的な入力を確実に提供するために使用され得る時間量を含む。図2に示す方式は、確認応答を必要とするが、図7に示すような2つのオプション間の判定を必要としない可能性がある情報メッセージであるプロンプト220に適している可能性がある。たとえば、モバイルデバイス200は、そのバッテリーがそのバッテリーの5%しか残っていないことを告知することができる。いくつかの実施形態では、デバイス200は、左手ユーザポーズ226が検出されるか、または右手ユーザポーズ228が検出されるかのいずれかのとき、ユーザが確認応答を提供したと判定することができる。したがって、要求224が表示されるとき、デバイスは、どちらの手が使用されたのかにかかわらず、掌を開き指を開いたポーズの手を検出することができる。他の実施形態では、デバイス200は、特定の手、たとえば要求224によって表示されたポーズを模倣する手が検出されるとき、ユーザが確認応答を提供したと判定することができる。」

エ 段落【0036】-【0038】
「【0036】
図4A?図4Fは、いくつかの実施形態による、ポーズを検出し、進行フィードバック画像330を使用するように構成される別の例示的なコンピューティングシステムを示す。上記のように、コンピュータシステムは、場合によっては、システムとの決まりとして確認されるのに十分な時間の間、ユーザポーズが保持されるまで、進行フィードバック画像330を表示するか、または知覚フィードバック用のいくつかの他の進行手段を使用することができる。一実施形態では、十分な時間は、特定の信頼レベルに相関する可能性がある。一実施形態では、進行フィードバック画像330は、ユーザポーズの検出、たとえばユーザポーズがしきい値時間量の間、十分に維持されたことの検出までのパーセンテージを表示することができる。進行フィードバック画像330は、特定の信頼レベルに達するまでの進行度を指示することができる。図4Aでは、プロンプト220が、モバイルデバイス200(図2)と対話し続けるべきかどうかについてのメッセージおよび確認応答を伴って表示される。さらに、ポーズ要求224は、システムがポーズを受容し、どのポーズが期待されるかを指示する右のユーザの手の画像として表示される。図4Aは、時刻t<0におけるモバイルデバイス200(図2)のディスプレイ110を示す。時刻tは、任意の時間単位、たとえば、秒、ミリ秒などである可能性がある。一実施形態では、時刻t<0において、進行フィードバック画像330は、ディスプレイ110上に表示されない。
【0037】
いくつかの実施形態では、ポーズ要求224は、ディスプレイ110上に最初に示されない可能性がある。いくつかの場合には、ユーザは、(たとえば、システムとの対話を開始するために、特定の決まりのジェスチャが使用されるとき)システムと対話するための特定のポーズが存在し得ることに関する知識をすでに有する可能性がある。ある機能を開始するか、または制御するかのいずれかに関連する複数の可能性のあるポーズが存在する可能性もある。そのような実施形態では、デバイス200(図2)は、手のポーズが最初に検出されたとき、またはその後、対応する手のポーズの画像だけを示し、それによって、検出されている特定の手のポーズまたは手のポーズが正しく検出されていることをユーザに通知することができる。いくつかの実施形態では、次いで、システムに入るか、または何らかの種類の入力もしくはコマンドを提供するのに十分な時間の間、手のポーズを確実に保持するために、ディスプレイ110上に進行フィードバック330が表示され得る。
【0038】
一実施形態では、カメラ120(図1)がユーザポーズの存在を検出すると、時刻t=0において、進行フィードバック画像330が、ディスプレイ110上に表示され得る。たとえば、この特定の実施形態では、進行フィードバック画像330は、円形指示バーである。円形指示バーは、システムとの決まりとして確認されるのに十分な時間の間、ユーザポーズを実行するときのユーザの進行度を指示することができる。一実施形態では、十分な時間は、特定の信頼レベルに相関する可能性がある。進行フィードバック画像330は、特定の信頼レベルに達するまでの進行度を指示することができる。一実施形態では、円形指示バーは、ユーザがユーザポーズを実行している間に経過した時間量に対応する円形指示バーの部分を暗色化し、影を付け、着色し、挟み、消去するなどすることによって、この進行度を指示することができる。」

オ 段落【0093】
「【0093】
図1は、本発明の実施形態の実行に使用されるデバイスの一部分を組み込む例示的なコンピュータシステムを示す。図1に示すコンピュータシステムは、上述のコンピュータ化デバイスの一部分として組み込まれ得る。たとえば、コンピュータシステム100は、テレビ、モバイルデバイス、サーバ、デスクトップ、ワークステーション、自動車の制御システムまたは対話システム、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ネットブック、または任意の他の適切なコンピューティングシステムの構成要素のうちのいくつかを表示することができる。いくつかの実施形態では、システム100は、ヘルスケアデバイスに含まれ、ヘルスケアデバイスに触ることなく、いくつかのメッセージまたはステータスを受容するか、またはそれらに確認応答する手段をヘルスケアの専門家に提供することができる。モバイルデバイスは、画像キャプチャデバイスまたは入力感知ユニットおよびユーザ出力デバイスを有する任意のコンピューティングデバイスである可能性がある。画像キャプチャデバイスまたは入力感知ユニットは、カメラデバイスである可能性がある。ユーザ出力デバイスは、ディスプレイユニットである可能性がある。モバイルデバイスの例には、限定はしないが、ビデオゲーム機、タブレット、スマートフォン、および任意の他のハンドヘルドデバイスがある。図1は、本明細書で説明したように、様々な他の実施形態によって提供される方法を実行することができる、および/またはホストコンピュータシステム、リモートキオスク/端末、販売時点情報管理デバイス、自動車の電話インターフェースもしくはナビゲーションインターフェースもしくはマルチメディアインターフェース、モバイルデバイス、セットトップボックス、テーブルコンピュータ、および/またはコンピュータシステムとして機能を果たすことができる、コンピュータシステム100の一実施形態の概略図を提供する。図1は、単に、様々な構成要素の一般化された図を提供することを意図されており、様々な構成要素の一部または全部は、適宜利用され得る。したがって、図1は、個別のシステム要素が、比較的分離方式でまたは比較的より一体方式で、どのように実装され得るかを広範囲に示している。」

カ 引用発明
上記イ-オの各記載事項及び関連図面からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「ポーズは、手のポーズまたはジェスチャであり、
以下では、ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力のカメラによる検出について、カメラは、ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力を検出するように構成された別のセンサを使用することができ、
モバイルデバイスは、そのバッテリーがそのバッテリーの5%しか残っていないことを告知することができ、
カメラ120がユーザポーズの存在を検出すると、進行フィードバック画像330が、ディスプレイ110上に表示され、進行フィードバック画像330は、円形指示バーであり、円形指示バーは、ユーザがユーザポーズを実行している間に経過した時間量に対応する円形指示バーの部分を暗色化し、影を付け、着色し、挟み、消去するなどすることによって、特定の信頼レベルに達するまでの進行度を指示することができ、
モバイルデバイスの例には、ビデオゲーム機、タブレット、スマートフォン、および任意の他のハンドヘルドデバイスがある、モバイルデバイス。」

(2) 引用文献2の記載
引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。

ア 段落【0003】
「特許文献1には、赤外線LEDと赤外線近接センサとを備えた移動コンピューティングデバイスが開示されている。特許文献1の技術によれば、赤外線LEDから出射された赤外光が、移動コンピューティングデバイスに近づけた手によって反射されて、その反射光を赤外線近接センサが検出することで手の動きを検出でき、その手の動き(ジェスチャー)により非接触でスワイプ等のユーザーの望む入力操作を行うことができる。従って、例えユーザーの手が汚れていても、移動コンピューティングデバイスを汚染する恐れがない。」

イ 段落【0046】-【0049】
「HMD100の消費電力をさらに低減したい場合や、ジェスチャー操作以外のユーザーインタフェースによる操作を優先したい場合は、プロセッサ121によるジェスチャーの検出処理の実行や近接センサへの通電を停止して、ジェスチャー操作の検出を一時的に中断してもよい。
本実施形態において、プロセッサ121は、近接センサ105に対する相対的な、物体の第1の動き(つまり、近接センサ105の前のユーザーの手の動き)に対応する近接センサ105の出力に応じて、少なくとも一つの機能デバイス又はプロセッサ121自身についての第1の制御を実行する第1モードを実行可能である。また、プロセッサ121は、上記第1の動きに対応する近接センサ105の出力に対して、上記第1の制御をスキップする第2モードを実行可能である。プロセッサ121が第1のモードを設定している場合、HMD100を装着したユーザーが、顔前で手を移動させて予め定めた第1の動きを行うと、近接センサ105がその手の動きに対応する出力を生成し、プロセッサ121がその出力に応じて、少なくとも一つの機能ユニットやプロセッサ121自身について第1の制御を実行する。本実施形態では、物体の第1の動きは、例えば、手によるスワイプ動作である。但し、後述する第2の動きとは異なる動きである。
本実施形態において、第1の制御とは、例えば、上記スワイプ動作等のユーザーの手による第1の動きに応じたページ送りなどの画面表示制御である。スワイプ動作に合わせて前後のページ画像がスライドするようにアニメーション表示すれば、ユーザーにとっては、ディスプレイユニット104の表示画面を見ながらその前方で手HDを動かすことで、画面表示と操作が連動するように視認することができる。よって、使い勝手のよいユーザーインタフェースを提供できる。また、プロセッサ121は、上記第1の動きとは異なる、近接センサ105に対する相対的な物体の第2の動きに対応する近接センサ105の出力に基づいて、第2モードから第1モードへ切り替える。ここで、上記第2の動きは、物体が第1の時間近接センサ105の検出領域に留まった後、そこから第2の時間以内に検出領域から離脱する動作である。具体的には、ユーザーが一定時間手をHMDの前にかざした後、そこから手を離脱させる動きである。この動作は、ユーザーやHMDとは別の物体が検出領域SAに入ってきた場合や、画面操作を行うためのジェスチャー操作と区別するために、検出領域を通過したり遠くから検出領域に向かって近づいてきたりするような動きよりも複雑な動きとしている。
プロセッサ121が第2のモードを設定している場合、上記第1の動きに対応して近接センサ105が出力を生成しても、プロセッサ121は上記第1の制御をスキップする。ユーザーが第2の動きを覚えておくことで、非接触で第2モードから第1モードに切り替えることができる。これにより、ジェスチャー入力による制御の必要な時に、近接センサ105による入力を行い、第1の動きに応じて機能デバイスやプロセッサ121自身の制御を行わせたりすることができる。」

ウ 段落【0087】
「又、本実施の形態においては、近接センサとしてパッシブ型センサの一種である焦電センサを用いたが、これに代えて、赤外光等の不可視光を照射する発光部と、発光部から照射され、物体によって反射された不可視光を検出する受光部とを有するアクティブ型のセンサを用いてもよい。アクティブ型のセンサを用いれば、ユーザーが赤外線などの検出光を透過しない手袋をしているような場合でも、ジェスチャー操作の検出を行えるというメリットがある。更に、本発明は、HMDに限らず,スマートフォンなどの携帯端末にも応用可能である。」

(3) 引用文献3の記載
引用文献3には、図面とともに以下の記載がある。

ア 段落【0080】
「【0080】
図10(a)は、音声入力モードにおいて表示面3に表示される選択ウィンドウ110を示す図である。選択ウィンドウ110は、入力操作方式の切り替えを促すメッセージ111を含む。さらに、選択ウィンドウ110は、「視線入力」、「ジェスチャー入力」、または「キャンセル」の何れかの項目を選択するための3つの選択用オブジェクト112を含む。なお、表示面3に表示されている画面のピクト領域には、現在の入力操作方式が音声入力であることをユーザに通知するためのアイコン113が表示される。」

イ 段落【0082】
「【0082】
切替制御部35は、「視線入力」の項目が選択されたと判定すると(S109:視線入力)、マイクロフォン4の動作を停止させ(S110)、入力モードを、音声入力モードから視線入力モードへ切り替える(S111)。一方、切替制御部35は、「ジェスチャー入力」の項目が選択されたと判定すると(S109:ジェスチャー入力)、マイクロフォン4の動作を停止させ(S112)、入力モードを、音声入力モードからジェスチャー入力モードへ切り替える(S113)。」

ウ 段落【0090】
「【0090】
図10(b)は、視線入力モードにおいて表示面3に表示される選択ウィンドウ114を示す図である。選択ウィンドウ114は、入力操作方式の切り替えを促すメッセージ115と、「音声入力」、「ジェスチャー入力」、または「キャンセル」の何れかの項目を選択するための3つの選択用オブジェクト116を含む。なお、表示面3に表示されている画面のピクト領域には、現在の入力操作方式が視線入力であることをユーザに通知するためのアイコン117が表示される。」

エ 段落【0092】-【0098】
「【0092】
次に、図9を参照して、ジェスチャー入力モードの処理について説明する。ジェスチャー入力モードの処理が開始された場合、制御部11は、カメラ8を作動させる(S301)。ユーザが表示面3の前方で手によるジェスチャーを行うと、手の画像が含まれる撮影画像が制御部11に入力される。
【0093】
判定部34は、周囲の明るさが所定の明るさ以下であるか否か、および、誤入力操作の回数が所定回数を超えたか否かを判定する(S302、S303)。
【0094】
周囲の明るさが所定の明るさよりも明るく(S302:NO)、且つ、誤入力操作の回数が所定回数を超えていない場合(S303:NO)、ジェスチャー検出部32は、ユーザにより行われたジェスチャーを検出し(S304)、検出結果、即ち、検出されたジェスチャー対応する情報を出力する(S305)。

・・・(中略)・・・

【0098】
図10(c)は、ジェスチャー入力モードにおいて表示面3に表示される選択ウィンドウ118を示す図である。選択ウィンドウ118は、入力操作方式の切り替えを促すメッセージ119と、「音声入力」、「視線入力」、または「キャンセル」の何れかの項目を選択するための3つの選択用オブジェクト120を含む。なお、表示面3に表示されている画面のピクト領域には、現在の入力操作方式がジェスチャー入力であることをユーザに通知するためのアイコン121が表示される。」

オ 段落【0100】
「【0100】
なお、図6のフローチャートでは省略されているが、タッチ入力に対応するアプリケーションが起動された場合には、タッチ入力モードが実行され、タッチ検出部14および制御部11により、タッチ入力操作が受け付けられる。」

カ 図10(a)-(c)について
図10(a)-(c)を参照すると、画面の最上部のピクト領域に、バッテリー残量、電波強度のピクト表示とともに、「音声入力モード」の「マイクのアイコン113」(図10(a))、「視線入力モード」の「目のアイコン117」(図10(b))、「ジェスチャー入力モード」の「手のアイコン121」(図10(c))を表示することが記載されていると認定できる。

5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると以下のことがいえる。

(1) 引用発明の「進行フィードバック画像330」等を表示する「ディスプレイ110」は、本願発明における「通知バーを含む画面を表示するディスプレイ」と、「画面を表示するディスプレイ」である点で共通するといえる。

(2) 引用発明の「ユーザポーズの存在を検出する」「カメラ」は、本願発明の「近接センサ」と「センサ」である点で共通するといえる。

(3) 引用発明の「ユーザポーズ」は、「ポーズは、手のポーズまたはジェスチャであ」るから、本願発明の「ジェスチャ」に相当する。
引用発明の「モバイルデバイス」が、データの入出力や、情報処理を行うための手段を備えることは明らかであって、このような手段は、本願発明の「コントローラ」に相当する。
よって、引用発明の「モバイルデバイス」が、「カメラ120がユーザポーズの存在を検出すると、進行フィードバック画像330が、ディスプレイ110上に表示され、進行フィードバック画像330は、円形指示バーであり、円形指示バーは、ユーザがユーザポーズを実行している間に経過した時間量に対応する円形指示バーの部分を暗色化し、影を付け、着色し、挟み、消去するなどすることによって、特定の信頼レベルに達するまでの進行度を指示することができ」ることは、本願発明の「自機器に接触して操作する第1のモードと自機器を触らずに操作する第2モードとのうち前記第2モードのときに、前記通知バーにピクトを表示すると共に、前記近接センサによってジェスチャの検出を検知すると、前記近接センサから取得した検出値の出力状態に応じて前記画面の表示態様を変化させるコントローラ」と、「前記センサによってジェスチャの検出を検知すると、前記センサから取得した検出値の出力状態に応じて前記画面の表示態様を変化させるコントローラ」である点で共通するといえる。

(4) 引用発明の「モバイルデバイス」は、本願発明の「電子機器」に相当する。

(5) したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「画面を表示するディスプレイと、
センサと、
前記センサによってジェスチャの検出を検知すると、前記センサから取得した検出値の出力状態に応じて前記画面の表示態様を変化させるコントローラと、を備える電子機器。」
である点。

[相違点1]
センサとして、本願発明では、「近接センサ」を備え、「前記近接センサ」によってジェスチャの検出を検知すると、「前記近接センサ」から取得した検出値の出力状態に応じて前記画面の表示態様を変化させるのに対して、引用発明は、「カメラ」を備える点。

[相違点2]
本願発明では、「自機器に接触して操作する第1のモードと自機器を触らずに操作する第2モードとのうち前記第2モードのときに、前記通知バーにピクトを表示すると共に」、ジェスチャ検出に応じて画面の表示態様を変化させるのに対して、引用発明では、接触操作と非接触操作に対応した2つのモードが特定されておらず、また、モードに対応した通知バーのピクト表示が特定されていない点。

6 判断
(1) [相違点1]について
引用文献1の段落【0003】には(上記4(1)アを参照。)、「背景技術」として、「スマートフォン、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)などのコンピューティングデバイス、および他のデバイスは、……近接センサ……をますます含むようになっている」ことの記載がある。
引用発明は、「ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力のカメラによる検出について、カメラは、ポーズもしくはジェスチャ、またはユーザによって提供される他の入力を検出するように構成された別のセンサを使用することができ」るものである。
一般に、ジェスチャ等を検出するためのセンサとして、「近接センサ」を用いることは、周知技術である(引用文献2の段落【0003】(上記4(2)アの記載を参照。)。
よって、引用発明において、「カメラ」に替えて「別のセンサ」として、周知の「近接センサ」を採用することによって、上記相違点1に係る構成とすることは、容易に推考し得ることである。

(2) [相違点2]について
一般に、ユーザの使い勝手等を考慮して、機器の入力モードを複数設けて、相互に切り替え可能に構成することは、周知技術である(引用文献2(上記4(2)イ、ウの下線部)、引用文献3(上記4(3)ア-オの下線部)を参照。)。

引用発明の「モバイルデバイスは、そのバッテリーがそのバッテリーの5%しか残っていないことを告知することができ」るから、バッテリー残量を通知する何らかの手段を備えることは明らかであるといえる。
一般に、携帯電話やスマートフォンなどの「モバイルデバイス」において、ユーザの使い勝手等を考慮して、バッテリー残量や、機器の入力モード等など各種の動作状態情報を、通知バー上で、絵文字(ピクトグラム、略称ピクト)表示することは、周知技術である(引用文献3の段落【0098】(上記4(3)エ)、図10(a)-(c)(上記4(3)カ)を参照。)。

よって、引用発明において、機器の入力モードを複数設けて、相互に切り替え可能に構成する周知技術を付加すると共に、この際、各種の動作状態情報を、通知バー上で、絵文字表示する周知技術を採用することによって、上記相違点2に係る構成とすることは、容易に推考し得ることである。

さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。

7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-18 
結審通知日 2018-07-24 
審決日 2018-08-08 
出願番号 特願2017-231(P2017-231)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐伯 憲太郎池田 聡史  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
松田 岳士
発明の名称 電子機器  
代理人 太田 昌宏  
代理人 鈴木 俊樹  
代理人 杉村 憲司  

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