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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16B |
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管理番号 | 1344580 |
審判番号 | 不服2017-8414 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-09 |
確定日 | 2018-09-28 |
事件の表示 | 特願2016-515974号「2つの部分を持つ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/193118、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530456号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、2015年(平成27年)6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年6月17日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日に意見書が提出されたが、平成29年2月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の請求項1?7に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 〔本願発明〕 「【請求項1】 第1の部分と第2の部分とを有する装置であって、 第1の締結具と、 第1の受容部と、 前記第1の締結具と係合するための第2の受容部と、 前記第1の受容部と係合するための可動ラッチと、 を有し、前記第1の部分と前記第2の部分とは、前記第1の締結具を前記第2の受容部に係合させて、前記第1の部分と前記第2の部分との間の第1の接続部を確立し、前記可動ラッチを前記第1の受容部に係合させて、前記第1の部分と前記第2の部分との間の第2の接続部を確立する、単一の動作によって、互いと接続されるよう構成され、前記第2の接続部は、前記第1の接続部とは離隔されており、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は共に、前記第1の締結具のみを操作することによって得られる、装置。」 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、要旨次のとおりである。 (1)理由1 この出願の請求項1、2及び請求項1または2を引用する4?7に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)理由2 この出願の請求項1?7に係る発明は、優先日前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.実願昭55-75615号(実開昭57-994号)のマイクロフィルム 引用文献2.特開平5-248421号公報 引用文献3.特開昭52-61323号公報 3.引用文献1 (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付したものである。 ア 「以下、本考案を図面に示す一実施例を参照して説明する。第3図(a),(b)は同実施例における着脱機構を示す断面図で、図(a)は結合途中の状態、図(b)は結合完了後の状態をそれぞれ示している。 同図において、第1の機器11および第2の機器12の結合面周縁部には、結合位置を規定するためのフランジ13,14がそれぞれ突設してあり、これらの各フランジ13,14の上辺および下辺にはそれぞれ透孔13a,14aおよび13b,14bが穿設されている。これらの各透孔13a,14aおよび13b,14bは、それぞれ上記各機器11,12の結合時に相互に対向するように位置決めされ、上辺の各透孔13a,14aにより第1の係止孔15が構成されている。なお、上記各透孔13a,?,14bのうち第1の機器11のフランジ下辺に設けられた透孔13bだけは、切欠によりフランジ端面に開口したU字形状に構成される。 ところで、第1の機器11の結合面には、支持部材17により上下方向に移動可能に支持されて係止棒18が設置してある。この係止棒18は、その先端部18aを中間部18bよりも小径に形成しており、これにより先端部18aを前記第1の係止孔15に対して挿脱可能にしている。また係止棒18の基端部には頭部18cが設けてあり、この頭部18cは後述するフランジ19に当接されるようになっている。この結果係止棒18は、下方向の位置規制がなされて、前記第1の機器11のフランジ13aおよび支持部材17からの脱落が防止される。また、係止棒18の先端部18aおよび中間部18bの境界部と第1の機器11のフランジ13aとの間にはスプリング20が介在され、これにより係止棒18は下方向に付勢力を付与されている。 一方、第2の機器12のフランジ下辺に設けられた透孔14bには、クランプねじ21が挿入されている。このクランプねじ21は、その先端部近傍のみにねじ部21aを形成したもので、このねじ部21aを前記支持部材17よりも若干下方に設置されたフランジ19のねじ孔19aに螺合することにより前記係止棒18を上方に押し上げるとともに、第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行なっている。このとき、上記フランジ19に穿設されたねじ孔19aは、前記フランジ14の透孔14bとともに第2の係止孔16を構成している。また、クランプねじ21のねじ首部21bにはリング22が取着されており、これによりクランプねじ21は透孔14bから脱落しないようになっている。 このような構成において、第1および第2の機器11,12を結合する場合には、先ず第1の機器11と第2の機器12とを、各結合面を常に平行させた状態で相対的に近づけ、そして各フランジ13,14を嵌合する。したがって、このとき例えばコネクタ(図示せず)を接続しようとすれば、コネクタは無理な力を受けることなく円滑に接続される。そして、この状態でクランプねじ21をフランジ19にねじ込み、これにより係止棒18を上方に押し上げてその先端部18aを第1の係止孔15に挿入し、同時にフランジ19とフランジ14の下辺部とを締め付けて固定する。この結果、第1の機器11と第2の機器12とは、その上辺を係止棒18の挿入により固定され、また下辺部を上記したようにクランプねじ21の締め付けにより固定されて機械的に一体化される。」(明細書4頁7行?7頁15行) イ 「このように、本実施例によれば、ねじの使用本数を低減でき、各機器11,12の着脱をクランプねじ21唯1本の操作により行えるので、ねじの締め忘れ等のミスを軽減することができ、しかも作業を簡単かつ迅速にできる。」(明細書8頁9?13行) ウ 第3図(a)、(b)から、フランジ19は第1の機器11の結合面に設けられていることを看取できる。 (2)引用発明 引用文献1には、上記「(1)ア?ウ」及び第3図(a)、(b)の記載からみて、本願発明に倣って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 「第1の機器11および第2の機器12をねじの着脱により結合および分離する電子機器において、 第2の機器12の結合面周縁部に突設されたフランジ14の下辺に設けられた透孔14bに挿入され、先端部近傍のみにねじ部21aを形成したクランプねじ21と、 第2の機器12の結合面周縁部に突設されフランジ14の上辺に設けられた透孔14aと、 第1の機器11の結合面に設けられ、クランプねじ21のねじ部21aが螺合するねじ孔19aを有するフランジ19と、 第1の機器11の結合面に上下方向に移動可能に支持され、第1の機器11の結合面周縁部に突設されフランジ13の上辺に設けられた透孔13aと第2の機器12の結合面周縁部に突設されフランジ14の上辺に設けられた透孔14aとからなる第1の係止孔15に先端部18aを挿脱可能にした係止棒18と、 を有し、 第1の機器11と第2の機器12とは、 クランプねじ21のねじ部21aをフランジ19のねじ孔19aに螺合することにより係止棒18を上方に押し上げるとともに、第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行い、 上方に押し上げられた係止棒18の先端部18aを第1の係止孔15に挿入することにより、第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行い、 第1の機器11と第2の機器12の着脱をクランプねじ21唯1本の操作により行える、電子機器。」 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 後者の「第2の機器12」、「第1の機器11」は、本願発明の「第1の部分」、「第2の部分」にそれぞれ相当し、後者の「第1の機器11および第2の機器12をねじの着脱により結合および分離する電子機器」は、前者の「第1の部分と第2の部分とを有する装置」に相当する。 イ 後者の「第2の機器12の結合面周縁部に突設されたフランジ14の下辺に設けられた透孔14bに挿入され、先端部近傍のみにねじ部21aを形成したクランプねじ21」は、前者の「第1の締結具」に相当する。 ウ 後者の「第2の機器12の結合面周縁部に突設されフランジ14の上辺に設けられた透孔14a」は、前者の「第1の受容部」に相当する。 エ 後者の「第1の機器11の結合面に設けられ、クランプねじ21のねじ部21aが螺合するねじ孔19aを有するフランジ19」は、前者の「第1の締結具と係合するための第2の受容部」に相当する。 オ 後者の「第1の機器11の結合面に上下方向に移動可能に支持され、第1の機器11の結合面周縁部に突設されフランジ13の上辺に設けられた透孔13aと第2の機器12の結合面周縁部に突設されフランジ14の上辺に設けられた透孔14aとからなる第1の係止孔15に先端部18aを挿脱可能にした係止棒18」は、「先端部18aを第1の係止孔15に挿入することにより、第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行」うものであるので、係止棒18は第2の機器12の透孔14aに係止しているといえる。 そうすると、後者の前記「係止棒18」は、前者の「第1の受容部と係合するための可動ラッチ」に相当する。 カ 後者の「クランプねじ21のねじ部21aをフランジ19のねじ孔19aに螺合すること」は、前者の「第1の締結具を第2の受容部に係合させ」ることに相当する。 後者の「第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行」うことは、接続部を形成することにほかならないので、前者の「第1の部分と第2の部分との間の第1の接続部を確立」することに相当する。 以上を踏まえると、後者の「クランプねじ21のねじ部21aをフランジ19のねじ孔19aに螺合することにより」「第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行」うことは、前者の「第1の締結具を第2の受容部に係合させて、第1の部分と第2の部分との間の第1の接続部を確立」することに相当する。 キ 後者の「上方に押し上げられた係止棒18の先端部18aを第1の係止孔15に挿入すること」は、第1の係止孔15が第1の機器11の透孔13aと第2の機器12の透孔14aとからなるので、前者の「可動ラッチを第1の受容部に係合させ」ることに相当する。 後者の「第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行」うことは、前者の「第1の部分と第2の部分との間の第2の接続部を確立する」ことに相当する。 以上を踏まえると、後者の「上方に押し上げられた係止棒18の先端部18aを第1の係止孔15に挿入することにより、第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行」うことは、前者の「可動ラッチを第1の受容部に係合させて、第1の部分と第2の部分との間の第2の接続部を確立する」ことに相当する。 ク 後者の「クランプねじ21のねじ部21aをフランジ19のねじ孔19aに螺合することにより係止棒18を上方に押し上げるとともに、第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行い、上方に押し上げられた係止棒18の先端部18aを第1の係止孔15に挿入することにより、第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行い、第1の機器11と第2の機器12の着脱をクランプねじ21唯1本の操作により行える」ことは、前者の「第1の部分と第2の部分とは、」「単一の動作によって、互いと接続されるよう構成され、」「第1の接続部及び第2の接続部は共に、第1の締結具のみを操作することによって得られる」ことに相当する。 ケ 後者の「クランプねじ21のねじ部21aをフランジ19のねじ孔19aに螺合することにより」「第1の機器11のフランジ19と第2の機器12のフランジ下辺との固定を行」うことと、「上方に押し上げられた係止棒18の先端部18aを第1の係止孔15に挿入することにより、第1の機器11および第2の機器12の上辺の固定を行」うこととは、第1の機器11と第2の機器12の下辺と上辺とにそれぞれ接続部を形成することにほかならず、両接続部は離隔しているといえるので、前者の「第2の接続部は、第1の接続部とは離隔されており」との構成を備えているといえる。 そうすると、引用発明は本願発明の発明特定事項をすべて有しており、相違点はないといえる。 したがって、本願発明は、引用発明と同一の発明であり、引用文献1に記載された発明である。 また、本願発明と引用発明との間で、「係合」、「係止」などの態様に差異があるとしても、設計上の微差に過ぎず、当業者が容易になし得ることといえる。 したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 あるいは、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明(引用文献1に記載された発明)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-05-07 |
結審通知日 | 2018-05-08 |
審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2016-515974(P2016-515974) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(F16B)
P 1 8・ 121- Z (F16B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 内田 博之 |
発明の名称 | 2つの部分を持つ装置 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |
代理人 | 矢ヶ部 喜行 |