• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1344600
審判番号 不服2017-12175  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-16 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2016- 22302「タッチパネル及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月28日出願公開、特開2016-136397、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年3月26日に出願された特願2013-64381号の一部を平成28年2月9日に新たな出願としたものであって、同年11月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年5月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年5月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2011-74308号公報
2.特開2013-54618号公報
3.特開2009-146678号公報

第3 本願発明

本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年2月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
絶縁層を介して対向する第1電極層と第2電極層を有するタッチパネルにおいて、
前記第1電極層では、第1の方向に沿って延在する第1電極が、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に沿って複数個並列され、
前記第2電極層では、前記第2の方向に沿って延在する第2電極が、前記第1の方向に沿って複数個並列され、
前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方は、幅方向寸法が4μm以下である銀細線から形成されたメッシュパターンを有し、
前記メッシュパターンは、前記銀細線同士が交差することで形成されるとともに、平面視で、形状が互いに異なるセルを複数個含むランダムパターンであり、
前記メッシュパターンからなる前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方及び前記絶縁層に、140℃、1Hzでの損失係数tanδが0.13以上であり、且つ25℃、1Hzでの貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下である粘着剤が配置されていることを特徴とするタッチパネル。」

なお、本願発明2-6の概要は、以下のとおりである。
本願発明2-5は本願発明1を減縮したタッチパネルに係る発明である。
本願発明6は本願発明1-5のいずれかのタッチパネルを含む表示装置に係る発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a.段落0018の記載
「【0018】
本発明の一態様として提供される透明粘着シートは、画像表示装置における表面保護層又はタッチパネルと画像表示ユニットの表示面とを貼付する、又は表面保護層とタッチパネルとを貼付するために使用される。ここで、透明粘着シートは、・・・〈中略)・・・を含有するモノマー成分の共重合体を含み、共重合体は、更に、・・・(中略)・・・を含んでいる。」

b.段落0042の記載
「【0042】
上記したモノマー成分から得られる共重合体は、140℃、1.0Hzにおけるtanδが0.13以上であり、且つ25℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下であることが好ましい。このような動的粘弾性特性は、透明粘着シートにおける表示ムラ(液晶ムラ)や凹凸形状面への追随性(段差埋め性)の観点から重要である。具体的には、透明粘着シートにおける表示ムラの発現は、共重合体の応力緩和性及び初期残留応力の両方に関係している。」

c.段落0067?0068の記載
「【0067】
図2は、上記透明粘着シートを含む画像表示装置における別の態様の断面図である。図2において、画像表示装置20は、画像表示ユニット1の表示面上に存在するタッチパネル7の上に、透明粘着シート3及び表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。透明粘着シート3及び表面保護層4がこの順序で積層された積層体2の構造は、図1に記載されているものと同様である。タッチパネル7は、画像表示ユニット1の表示面上に配置され、そのタッチパネルを通して画像表示装置20における画像表示を見ることができる。タッチパネル7は透明であり、例えば、ガラス製、またはポリエチレンテレフタレート(PET)製の2枚の透明板の裏面にそれぞれ透明導電層を配置し、それら透明板の透明導電層どうしを、微小間隔をおいて非接触状態で対面配置した構成を有する。一方の透明板表面の該当位置をタッチパネル操作者が、指やペンで押圧すると、一方の透明板裏面の透明導電層が、他方の透明板の透明導電層に接触し、上記該当位置においてのみ導通可能状態になる。この導通可能状態になった位置を電気的にセンサが感知することにより、操作者が押圧したタッチパネル上の位置を特定することができる。・・・上述の通り、本発明の透明粘着シート3を使用することで、タッチパネル7表面に配置された透明導電層上に保護層を設けることなく、透明導電層と透明粘着シートとを直接貼り合わせることが可能となる(以下の図3及び図4の態様においても同様)。
【0068】
図3は、上記透明粘着シートを含む画像表示装置のさらに別の態様の断面図である。図3において、画像表示装置30は、画像表示ユニット1の表示面上に、透明粘着シート3、タッチパネル7、透明粘着シート3’、表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。・・・透明粘着シート3と透明粘着シート3’とは、同一の共重合体を含んでいても、異なる共重合体を含んでいてもよい。・・・ここで、画像表示装置30は、例えば、上記表面保護層4、透明粘着シート3’、タッチパネル7、及び透明粘着シート3からなる積層体2を、画像表示ユニット1の表示面面上に貼り合せることで得られる。」

これらの記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「ガラス製、またはポリエチレンテレフタレート(PET)製の2枚の透明板の裏面にそれぞれ透明導電層を配置し、それら透明板の透明導電層どうしを、微小間隔をおいて非接触状態で対面配置した構成を有するタッチパネル7において、
一方の透明板表面の該当位置をタッチパネル操作者が、指やペンで押圧すると、一方の透明板裏面の透明導電層が、他方の透明板の透明導電層に接触し、上記該当位置においてのみ導通可能状態になり、この導通可能状態になった位置を電気的にセンサが感知することにより、操作者が押圧したタッチパネル上の位置を特定することができ、
画像表示装置30は、画像表示ユニット1の表示面上に、透明粘着シート3、タッチパネル7、透明粘着シート3’、表面保護層4がこの順序で積層された構造を有し、
透明粘着シート3、3’は、画像表示装置30における表面保護層4又はタッチパネル7と画像表示ユニット1の表示面とを貼付する、又は表面保護層4とタッチパネル7とを貼付するために使用され、タッチパネル7表面に配置された透明導電層上に保護層を設けることなく、透明導電層と透明粘着シートとを直接貼り合わせることが可能となり、
透明粘着シート3、3’は、モノマー成分の共重合体を含み、上記したモノマー成分から得られる共重合体は、140℃、1.0Hzにおけるtanδが0.13以上であり、且つ25℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下である、
タッチパネル7。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

d.段落0040?0085の記載
「【0040】
[本実施の形態]
本実施の形態に係る導電シート10は、図1及び図2に示すように、透明基体12(基体)を有する。絶縁性を有し、且つ、透光性が高い透明基体12は、樹脂、ガラス、シリコン等の材料からなる。樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)等が挙げられる。
【0041】
透明基体12の一方の主面(図2の矢印s1方向側)には、第1導電部14aと、第1ダミー電極部15aとが形成されている。第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aは、金属製の細線{以下、金属細線16と記す。また、金属細線16p、16q、16r、16s)と記す場合がある。}と開口部18によるメッシュパターン20とを有する。金属細線16は、例えば、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)の線材からなる。
【0042】
金属細線16の線幅は、30μm以下から選択可能である。導電シート10をタッチパネルに適用する場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
【0043】
第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aは、詳細には、異なるメッシュ形状22を隙間なく配列したメッシュパターン20を有する。換言すれば、メッシュパターン20は、各メッシュ形状22に規則性(統一性)がないランダムなパターンである。例えば、メッシュパターン20のうち、ハッチングを付したメッシュ形状22は四角形状であり、頂点C1及び頂点C2を直線で結ぶ金属細線16pと、頂点C2及び頂点C3を直線で結ぶ金属細線16qと、頂点C3及び頂点C4を直線で結ぶ金属細線16rと、頂点C4及び頂点C1を直線で結ぶ金属細線16sとで形成されている。本図から諒解されるように、メッシュ形状22はいずれも、少なくとも3辺を有する多角形状である。
・・・(中略)・・・
【0046】
第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aを介して第1保護層26aが接着されている。第1接着層24aの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0050】
ところで、透明基体12の他方の主面(図2の矢印s2方向側)には、第2導電部14bが形成されている。第2導電部14bは、第1導電部14aと同様に、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有する。透明基体12は絶縁性材料からなり、第2導電部14bは、第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aと電気的に絶縁された状態下にある。
【0051】
第2導電部14bの略全面には、金属細線16を被覆するように、第2接着層24bを介して第2保護層26bが接着されている。第2接着層24bの材質は、第1接着層24aと同一であってもよいし異なってもよい。第2保護層26bの材質は、第1保護層26aと同一であってもよいし異なってもよい。
・・・(中略)・・・
【0054】
この導電シート10は、例えば、表示ユニット30(表示部)のタッチパネルに適用される。この表示ユニット30は、液晶パネル、プラズマパネル、有機EL(Electro-Luminescence)パネル、無機ELパネル等で構成されてもよい。
・・・(中略)・・・
【0056】
次に、本実施の形態に係る導電シート10を組み込んだ表示装置40について、図4?図8を参照しながら説明する。ここでは、投影型静電容量方式のタッチパネルを例に挙げて説明する。
・・・(中略)・・・
【0065】
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第1導電パターン70a(メッシュパターン)を有する。第1導電パターン70aは、矢印X方向(第1方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向(第2方向)に配列されている。また、各第1導電パターン70aは、2以上の第1感知部72aが矢印X方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第1感知部72aは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第1感知部72a間には、これら第1感知部72aを電気的に接続する第1接続部74aが形成されている。より詳細には、一の第1感知部72aの頂角部は、第1接続部74aを介して、前記一の第1感知部72aの矢印X方向に隣接する他の第1感知部72aの頂角部に連結されている。
・・・(中略)・・・
【0079】
第2センサ部60bに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第2導電パターン70b(メッシュパターン)を有する。第2導電パターン70bは、矢印Y方向(第2方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向(第1方向)に配列されている。また、各第2導電パターン70bは、2以上の第2感知部72bが矢印Y方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第2感知部72bは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第2感知部72b間には、これら第2感知部72bを電気的に接続する第2接続部74bが形成されている。より詳細には、一の第2感知部72bの頂角部は、第2接続部74bを介して、前記一の第2感知部72bの矢印Y方向に隣接する他の第2感知部72bの頂角部に連結されている。
・・・(中略)・・・
【0085】
図8に示すように、導電シート10の平面視において、一面(矢印Z2方向側)に形成された第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aの隙間(第1隙間部75aの一部)を埋めるように、他面(矢印Z2方向側)に形成された第2導電パターン70bが配列された形態となる。また、第1導電パターン70aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭が重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。さらに、第1ダミーパターン76aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭とが重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。その結果、導電シート10の平面視において、多数のポリゴン82(メッシュ形状)が敷き詰められた形態となる。」

e.段落0331?0337の記載
「【実施例】
【0331】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0332】
この実施例では、実施例1?7、並びに参考例1、2に係る導電シート10について、これらを組み込んだ表示装置40での、視認性(ノイズ粒状感)及び輝度変化率をそれぞれ評価した。
【0333】
<実施例1?7、参考例1、2>
・・・(中略)・・・
【0336】
(露光パターンの作成)
本実施の形態で説明したSA法(図16等参照)を用いて、多角形状のメッシュ形状22を敷き詰めたメッシュパターン20(図1参照)を表す出力用画像データImgOutを作成した。
【0337】
メッシュパターン20の設定条件は、全体透過率93%、透明基体12の厚さを20μm、金属細線16の幅を20μm、金属細線16の厚さを10μmとした。平面領域100のサイズを縦横とも5mm、画像解像度を3500dpi(dot per inch)とした。シード点SDの初期位置は、メルセンヌ・ツイスタを用いてランダムに決定するとともに、多角形状の各メッシュ形状22は、ボロノイ図に従って決定した。評価値EVPは、画像データImgの色値L*、色値a*、色値b*に基づいて算出した。そして、図22の場合と同様に、出力画像データImgOutを規則的に配置することで、繰り返し形状を有する露光パターンを形成した。
・・・(以下、略)」

上記記載からみて、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。

〈引用文献2に記載された技術的事項〉
「絶縁性材料からなる透明基体12の一方の主面に形成された第1導電部14aと、他方の主面に形成された第2導電部14bを有するタッチパネルにおいて、
前記第1導電部14aの第1導電パターン70aは、矢印X方向(第1方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向(第2方向)に配列され、
前記第2導電部14bの第2導電パターン70bは、矢印Y方向(第2方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向(第1方向)に配列され、
前記第1導電部14aおよび前記第2導電部14bは、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有し、
前記金属細線16は、銀(Ag)の線材からなり、導電シート10をタッチパネルに適用する場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましいことが示唆されているものの、実施例としては、金属細線16の幅を20μmとした場合が示されているに留まり、
前記メッシュパターン20は、各メッシュ形状22に規則性(統一性)がないランダムなパターンであり、メッシュパターン20のうち、ハッチングを付したメッシュ形状22は四角形状であり、頂点C1及び頂点C2を直線で結ぶ金属細線16pと、頂点C2及び頂点C3を直線で結ぶ金属細線16qと、頂点C3及び頂点C4を直線で結ぶ金属細線16rと、頂点C4及び頂点C1を直線で結ぶ金属細線16sとで形成されており、メッシュ形状22はいずれも、少なくとも3辺を有する多角形状であり、
前記第1導電部14aまたは第2導電部14bの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aまたは第2接着層24bを介して第1保護層26aまたは第2保護層26bが接着されており、
第1接着層24aまたは第2接着層24bの材質は、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等である
タッチパネル。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

f.特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
透明支持体上に少なくとも一種の金属により形成されたメッシュ状の導電層を有する透明導電膜であって、該導電層の上にマイグレーション防止剤を含有する透明導電層が設置されていることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記少なくとも一種の金属が銀であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の透明導電膜が液相成膜法で製造されることを特徴とする透明導電膜の製造方法。」

このことから、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているといえる。

〈引用文献3に記載された技術的事項〉
「透明支持体上に少なくとも一種の金属により形成されたメッシュ状の導電層を有する透明導電膜であって、該導電層の上にマイグレーション防止剤を含有する透明導電層が設置されており、
前記少なくとも一種の金属が銀であり、
前記透明導電膜が液相成膜法で製造される透明導電膜及び透明導電膜の製造方法。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「透明粘着シート3、3’」は、「モノマー成分の共重合体を含み、上記したモノマー成分から得られる共重合体は、140℃、1.0Hzにおけるtanδが0.13以上であり、且つ25℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下である」ことから、本願発明1の「140℃、1Hzでの損失係数tanδが0.13以上であり、且つ25℃、1Hzでの貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下である粘着剤」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
「タッチパネルにおいて、
140℃、1Hzでの損失係数tanδが0.13以上であり、且つ25℃、1Hzでの貯蔵弾性率が8.9×10^(4)Pa以下である粘着剤が配置されているタッチパネル。」

〈相違点〉
(相違点1)
本願発明1の「タッチパネル」は、「絶縁層を介して対向する第1電極層と第2電極層を有する」のに対して、引用発明の「タッチパネル」は、「ガラス製、またはポリエチレンテレフタレート(PET)製の2枚の透明板の裏面にそれぞれ透明導電層を配置し、それら透明板の透明導電層どうしを、微小間隔をおいて非接触状態で対面配置した構成を有する」点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記第1電極層では、第1の方向に沿って延在する第1電極が、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に沿って複数個並列され」、「前記第2電極層では、前記第2の方向に沿って延在する第2電極が、前記第1の方向に沿って複数個並列され」ているのに対し、引用発明では、当該構成について特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方は、幅方向寸法が4μm以下である銀細線から形成されたメッシュパターンを有し、前記メッシュパターンは、前記銀細線同士が交差することで形成されるとともに、平面視で、形状が互いに異なるセルを複数個含むランダムパターンであり、前記メッシュパターンからなる前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方及び前記絶縁層に、上記「粘着剤」が配置されている」のに対し、引用発明では、「メッシュパターン」に関する上記構成について特定されておらず、そのため、「前記メッシュパターンからなる前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方及び前記絶縁層に」、「透明粘着シート」が配置されていることも特定されていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
「第4 引用文献、引用発明等」の「2.引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、「絶縁性材料からなる透明基体12の一方の主面に形成された第1導電部14aと、他方の主面に形成された第2導電部14bを有するタッチパネルにおいて、前記第1導電部14aおよび前記第2導電部14bは、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有し、前記第1導電部14aまたは第2導電部14bの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aまたは第2接着層24bを介して第1保護層26aまたは第2保護層26bが、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等で接着されているタッチパネル。」という技術的事項が記載されており、「前記金属細線16は、銀(Ag)の線材からなり、導電シート10をタッチパネルに適用する場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましいこと」が記載され、「前記第1導電部14aおよび前記第2導電部14b」が有する「メッシュパターン」として、「幅方向寸法が4μm以下である銀細線から形成されたメッシュパターン」が示唆されている。

しかしながら、本願発明1は、「電極をなす銀細線を4μm以下とした場合に特に顕著となるストレスマイグレーションをはじめとするマイグレーションが生じることを回避する」との技術的課題を解決することを目的としているところ、いずれの引用文献にも、このような技術的課題について記載も示唆もされていない。また、引用発明と引用文献2に記載された技術的手段が、共にオプトエレクトロニクスの技術分野に属し、タッチパネルを備えた表示装置を形成するという課題が共通することを考慮したとしても、引用発明の「透明粘着シート3、3’」を、引用文献2の「金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20」を有する「前記第1導電部14aまたは第2導電部14b」と「第1保護層26aまたは第2保護層26b」を接着するための「第1接着層24aまたは第2接着層24b」として、「ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等」に代えて採用する動機を見いだすことはできない。
そして、本願発明1は、相違点3係る構成を採用することにより、「銀細線の幅方向寸法を4μm以下とした場合においても、残留応力の局所性が解消されてストレスマイグレーションが有効に抑制される」との作用効果を奏するものである。

したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。

また、引用文献3に記載された技術的事項を併せて検討しても、相違点3に係る本願発明1の構成を、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方は、幅方向寸法が4μm以下である銀細線から形成されたメッシュパターンを有し、前記メッシュパターンは、前記銀細線同士が交差することで形成されるとともに、平面視で、形状が互いに異なるセルを複数個含むランダムパターンであり、前記メッシュパターンからなる前記第1電極又は前記第2電極の少なくともいずれか一方及び前記絶縁層に、粘着剤が配置されている」という同一の構成を備えるタッチパネルであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は本願発明1-5のいずれかのタッチパネルを含む表示装置に係る発明であるから、本願発明1-5と同じ理由により、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-01 
出願番号 特願2016-22302(P2016-22302)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塩屋 雅弘  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
▲吉▼田 耕一
発明の名称 タッチパネル及び表示装置  
代理人 大内 秀治  
代理人 仲宗根 康晴  
代理人 千馬 隆之  
代理人 坂井 志郎  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 山野 明  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 関口 亨祐  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ