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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C12Q
管理番号 1344873
異議申立番号 異議2018-700624  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-27 
確定日 2018-10-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6272283号発明「血液試料中の物質の測定法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6272283号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6272283号の請求項1ないし7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年4月1日(優先権主張 平成24年3月30日)を出願日とする特願2014-508261の一部を平成27年9月16日に新たな特許出願(特願2015-182505)としたものであって、平成30年1月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し同年7月27日に特許異議申立人折原政人により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】 ウリカーゼ、パーオキシダーゼ及び被酸化性呈色試薬を用いた酵素法による血漿、血清及び尿より選ばれる試料中の尿酸の測定法であり、(1)前記試料に非イオン性界面活性剤を接触させて静置又はインキュベーションし、次いで(2)前記試料と非イオン性界面活性剤の混合物にベタイン型両性界面活性剤を接触させ、ベタイン型両性界面活性剤との接触と同時又は接触後にウリカーゼ及びパーオキシダーゼとの反応及び被酸化性呈色試薬による呈色反応を行うことを特徴とする前記血漿、血清又は尿より選ばれる試料中の尿酸の測定法であって、
前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上であり、前記非イオン性界面活性剤の使用量が、血漿、血清及び尿より選ばれる試料と接触させた後の濃度が0.5?10w/v%となる量であり、前記ベタイン型両性界面活性剤の使用量が、ベタイン型両性界面活性剤を含む試薬中の濃度が0.5?10w/v%となる量である測定法。
【請求項2】 前記血漿、血清及び尿より選ばれる試料が、血漿又は血清である請求項1記載の測定法。
【請求項3】 ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルベタイン、アミドアルキルベタイン、スルホベタイン、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の測定法。
【請求項4】 被酸化性呈色試薬が、過酸化水素と反応して呈色する1種又は2種以上の成分である請求項1?3のいずれか1項記載の測定法。
【請求項5】 前記血漿、血清及び尿より選ばれる試料中の尿酸の測定値に対するヘモグロビン及びビリルビンの影響を回避するための測定法である請求項1?4のいずれか1項に記載の測定法。
【請求項6】 (A)試料と接触させた後の濃度が0.5?10w/v%となる量のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の非イオン性界面活性剤を含有する第1試薬と、(B)ベタイン型両性界面活性剤を含む試薬中の濃度が0.5?10w/v%となる量のベタイン型両性界面活性剤と、(C)ウリカーゼ及びパーオキシダーゼと、(D)被酸化性呈色試薬を含有する第2試薬とを含み、請求項1?5のいずれか1項に記載される、血漿、血清及び尿より選ばれる試料中の尿酸の測定法に使用する酵素法測定試薬。
【請求項7】 下記(A)を含有する第1試薬と下記(B)、(C)及び(D)を含有する第2試薬とを含むことを特徴とし、血漿、血清及び尿より選ばれる試料に第1試薬を反応させ、次いで第2試薬を反応させて当該試料中の尿酸の測定に使用する酵素法測定試薬。
(A)ヘモグロビンの影響を回避するための有効成分としてのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の非イオン性界面活性剤の試料と接触させた後の濃度が0.5?10w/v%となる量
(B)ビリルビンの影響を回避するための有効成分としてのベタイン型両性界面活性剤のベタイン型両性界面活性剤を含む試薬中の濃度が0.5?10w/v%となる量
(C)ウリカーゼ又はパーオキシダーゼ
(D)被酸化性呈色試薬
(以下、これらの請求項に係る各発明をそれぞれの請求項の番号に対応させて「本件発明1」、「本件発明2」、・・・「本件発明7」といい、また、これらの発明をまとめて「本件発明」という場合がある。)

第3 申立理由の概要
特許異議申立人折原政人は、以下の証拠を提出し、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証;特開2013-51907号公報
甲第2号証;特開平7-39394号公報
甲第3号証;「PRODUCT INFORMATION ベタイン型両性界面活性剤 アンヒトール 20BS」、花王株式会社ケミカル事業ユニット、2010/10
甲第4号証;「アンヒトール 24B 安全データシート」、花王株式会社、改訂日2017年10月26日
(以下、これらの証拠を順に「引用例1」、・・・「引用例4」という。)

第4 引用例
1 引用例1は平成25年3月21日に公開されたものであり、また、引用例4は2017年(平成29年)10月26日に改訂され、その日以降に公開されたものであるところ、これらの証拠の公知日は本件特許の優先権主張日(平成24年3月30日)以降であることから、これらの証拠を本件特許を取り消す証拠として使用することはできない。
2 引用例2には尿酸の測定方法についての発明が記載されており、引用例3には、アンヒトール 20BSがラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及び水から成るものであることが記載されている。

第5 判断
1 本件発明1について
引用例2には、「(1)前記試料(血漿、血清及び尿より選ばれる試料)に非イオン性界面活性剤を接触させて・・・、次いで(2)前記試料と非イオン性界面活性剤の混合物にベタイン型両性界面活性剤を接触させ、ベタイン型両性界面活性剤との接触と同時又は接触後にウリカーゼ及びパーオキシダーゼとの反応及び被酸化性呈色試薬による呈色反応を行う」ことは記載されていない。そして、本件特許の明細書には、【発明が解決しようとする課題】の項に、「本発明の課題は、簡便な操作により、ビリルビン及びヘモグロビンの両者の影響を同時に回避した、血液試料中の物質の測定法を提供することにある。」(段落【0008】)と、【課題を解決するための手段】の項に、「上記知見についてさらに検討したところ、先ず血液試料に非イオン性界面活性剤を接触させ、次いで酵素反応時にベタイン型両性界面活性剤を接触させたときにビリルビンとヘモグロビンの両者の影響が同時に回避できることを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0009】)と記載されており、また、【実施例2】において、「第1試薬にアンヒトール24Bを処方した比較例2及び比較例4の場合、第2試薬の界面活性剤の種類によらずビリルビンの影響を受けないものの、ヘモグロビンの影響を強く受けた。この場合の相対値は、第1試薬及び第2試薬に界面活性剤を含有しない比較例1の相対値よりも低くかった。第1試薬及び第2試薬にプルロニックTR-704を処方した比較例3の場合、ヘモグロビンの影響は受けないもののビリルビンの影響を強くうけていた。これら比較例1?4に対し、第1試薬にプルロニックTR-704、第2試薬にアンヒトール24Bを処方した実施例2の場合、ビリルビン及びヘモグロビンの影響を受けておらず、ビリルビン及びヘモグロビンの両者の影響を同時に回避できることが確認された。」(段落【0063】)ことが示されているように、「(1)前記試料(血漿、血清及び尿より選ばれる試料)に非イオン性界面活性剤を接触させて・・・、次いで(2)前記試料と非イオン性界面活性剤の混合物にベタイン型両性界面活性剤を接触させ、ベタイン型両性界面活性剤との接触と同時又は接触後にウリカーゼ及びパーオキシダーゼとの反応及び被酸化性呈色試薬による呈色反応を行う」ことにより、当業者が予測することができない顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、引用例2に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。
また、アンヒトール 20BSの性質等を開示するに過ぎない引用例3を考慮しても同様である。

2 本件発明2ないし7について
本件発明2ないし5は本件発明1を更に減縮したものであるから、前記1で述べた理由により、引用例2及び3に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。また、本件発明6は本件発明1ないし5のいずれかの尿酸の測定法に使用する酵素法測定試薬についての発明なので、前記1で述べた理由により、引用例2及び3に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。さらに、本件発明7は、本件発明1と同様、血漿、血清及び尿より選ばれる試料に非イオン性界面活性剤を含有する第1試薬を反応させ、次いでベタイン型両性界面活性剤を含有する第2試薬を反応させて当該試料中の尿酸の測定に使用する酵素法測定試薬であることから、前記1で述べた理由により、引用例2及び3に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

3 まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし7は、引用例2及び3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-10-04 
出願番号 特願2015-182505(P2015-182505)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C12Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北村 悠美子福間 信子  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 大宅 郁治
小暮 道明
登録日 2018-01-12 
登録番号 特許第6272283号(P6272283)
権利者 積水メディカル株式会社
発明の名称 血液試料中の物質の測定法  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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