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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1345400
審判番号 不服2017-8359  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-08 
確定日 2018-10-23 
事件の表示 特願2012-166369「電気モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 21916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年7月9日(パリ条約に基づく優先権主張、2011年7月8日:中国)を出願日とする出願であって、平成28年4月27日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年5月9日)、これに対し、平成28年9月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年2月6日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成29年2月8日)、これに対し、平成29年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年9月16日付の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された(なお、本願請求項9に係る発明を、以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
ブラシモータのための回転子であって、
複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子と、
前記整流子の前記セグメントに電気的に接続された巻き線と、
ユニットの各々が少なくとも3つの等電位セグメントを互いに電気的に接続する複数の等化ユニットと、
を含み、
前記等化ユニットの各々は、前記少なくとも3つの等電位セグメントの任意の2つのセグメントの間に複数の並列電気回路を形成する、
ことを特徴とする回転子。
【請求項2】
各等化ユニットは、複数の等化ワイヤを含み、その全ては、同じセグメントから始まり、同じ中間セグメントに接続され、かつ同じセグメントで終端することを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
各等化ユニットは、2つの等化ワイヤから構成されることを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
各等化ユニットの前記等化ワイヤは、一緒により線にされることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の回転子。
【請求項5】
複数の極を形成する固定子と、
複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子、該整流子の該セグメントに電気的に接続された巻き線、及びユニットの各々が少なくとも3つの等電位セグメントを互いに電気的に接続する複数の等化ユニットを含む回転子と、
前記整流子の前記セグメントに摺動可能に接触するように配置され、ブラシの数が固定子極の数よりも少ない複数のブラシと、
を含み、
前記等化ユニットの各々は、前記少なくとも3つの等電位セグメントの任意の2つのセグメントの間に複数の並列電気回路を形成する、
ことを特徴とする電気モータ。
【請求項6】
各等化ユニットは、複数の等化ワイヤを含み、その全ては、同じセグメントから始まり、同じ中間セグメントに接続され、かつ同じセグメントで終端することを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
各等化ユニットは、2つの等化ワイヤから構成されることを特徴とする請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
各等化ユニットの前記等化ワイヤは、一緒により線にされることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
ブラシモータのための回転子であって、
複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子と、
前記整流子の前記セグメントに電気的に接続された巻き線と、
複数の等化ワイヤと、
を含み、
前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する閉ループを形成する、
ことを特徴とする回転子。
【請求項10】
複数の極を形成する固定子と、
複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子、前記整流子の前記セグメントに電気的に接続された巻き線、及び、複数の等化ワイヤを含む回転子と、
整流子のセグメントに摺動可能に接触するように配置され、ブラシの数が固定子極の数よりも少ない複数のブラシと、
を含み、
前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する閉ループを形成する、
ことを特徴とする電気モータ。
【請求項11】
前記固定子極の数は6であり、前記ブラシの数は2又は4であることを特徴とする請求項10に記載の電気モータ。」


3.拒絶の理由
平成28年4月27日付の新規性に関する拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の請求項1-2、6-7、11に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された特開2008-278689号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
なお、平成28年9月16日付の手続補正による補正後の請求項9は、記載内容から判断して当該補正前の請求項2に対応し、図5、6に示される第2の実施形態に対応する。


4.引用例
引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
a「一般に、自動車等の車両に搭載される直流モータとしては、ブラシ付きのモータが多く使用されている。」(【0002】)

b「直流モータ2は、有底円筒形状のヨーク本体5Aを有するヨークハウジング5内にアーマチュア6を回転自在に配置した構成となっている。ヨーク本体5Aの内周面には周方向に分割された瓦状の永久磁石7が6個等間隔に固定されている。つまり、直流モータ2は磁極が6極に設定されている。」(【0019】)

c「コンミテータ10は回転軸3の一端側に外嵌固定されている。コンミテータ10の外周面には、導電材で形成されたセグメント15が15個取り付けられている。
セグメント15は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。各セグメント15のアーマチュアコア8側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ16が一体形成されている。ライザ16には、アーマチュアコイル9の巻き始め端部と巻き終わり端部となる巻線14が掛け回わされ、巻線14はヒュージングによりライザ16に固定されている。これにより、セグメント15とこれに対応するアーマチュアコイル9とが電気的に接続される。
また、図2に示すように、同電位となるセグメント15(本実施形態では4つ置きのセグメント15)に対応するライザ16には、それぞれ接続線17が掛け回され、この接続線17はヒュージングによりライザ16に固定されている。接続線17は、同電位となるセグメント15同士を短絡するためのものであって、コンミテータ10とアーマチュアコア8との間に配線されている。」(【0021】-【0022】)

d「次に、図4、図5に基づいて、6極10スロット15セグメントに構成された直流モータ2のアーマチュアコイル9の巻装方法について説明する。
図4は、アーマチュア6の展開図であり、隣接するティース12間の空隙がスロット13に相当している。図5は、図4の結線図である。なお、以下の図面においては、各セグメント15、各ティース12および巻装された巻線14にそれぞれ符号を附して説明する。」(【0028】)

e「図4に示すように、同電位となるセグメント15同士は、接続線17によって短絡されている。つまり、4つ置きのセグメント15同士(例えば、1番セグメント15a、6番セグメント15d、および11番セグメント15h)が接続線17によってそれぞれ短絡されている。」(【0029】)

上記記載及び図面を参照すると、4つ置きのセグメントで同電位となる3個のセグメントを含むコンミテータが示されている。
上記記載及び図面を参照すると、複数の接続線が示されている。
上記記載及び図面を参照すると、接続線の各々は同電位となる3個のセグメントを互いに電気的に接続している。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「ブラシ付きのモータのアーマチュアであって、
4つ置きのセグメントで同電位となる3個のセグメントを含むコンミテータと、
前記セグメントと電気的に接続されるアーマチュアコイルと、
複数の接続線と、
を含み、
前記接続線の各々は、同電位となる3個のセグメントを互いに電気的に接続する、
アーマチュア。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ブラシ付きのモータ」、「アーマチュア」、「コンミテータ」、「アーマチュアコイル」、「接続線」は、それぞれ本願発明の「ブラシモータ」、「回転子」、「整流子」、「巻き線」、「等化ワイヤ」に相当する。
引用発明の「4つ置きのセグメントで同電位となる3個のセグメントを含むコンミテータ」は、本願発明の「複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子」に相当する。
引用発明の「前記セグメントと電気的に接続されるアーマチュアコイル」は、本願発明の「前記整流子の前記セグメントに電気的に接続された巻き線」に相当する。
引用発明の「前記接続線の各々は、同電位となる3個のセグメントを互いに電気的に接続する」と、本願発明の「前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する閉ループを形成する」は、「前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する」点で一致する。

したがって、両者は、
「ブラシモータのための回転子であって、
複数の均等に離間した等電位セグメントを形成する複数のセグメントを含む整流子と、
前記整流子の前記セグメントに電気的に接続された巻き線と、
複数の等化ワイヤと、
を含み、
前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する、
回転子。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。

〔相違点〕
等化ワイヤの各々に関し、本願発明は、閉ループを形成しているのに対し、引用発明は、この様な特定がされていない点。


6.判断
引用例1の図4は、アーマチュア6の展開図(d参照)であり、展開図とは「展開により切り広げられた図」のことである。例えば、10番ティース12は図4の左右両側に記載されているが、図4の展開をやめて円形に戻せば、左右の10番ティース12は同じ位置で1つのティースになる。同様に、例えば、接続線17のうち、図4の一番下、即ちセグメント15から最も遠い接続線17は、図4の左右両側で15番セグメントに接続されているが、図4の展開をやめて円形に戻せば、左右のセグメント15番15は同じ位置で1つのセグメントになる。その際、セグメント15から最も遠い接続線17は、図4の展開をやめて円形に戻せば、15番セグメントに接続され、5番セグメントに接続され、10番セグメントに接続された後、15番セグメントに接続されるから、接続線17は一周して閉ループを形成していることとなる。他の接続線17についても同様である。
そうすると、引用発明において、同電位となる3個のセグメントを互いに電気的に接続する接続線の各々は、閉ループを形成していることとなり、本願発明と引用発明に差異は認められない。

なお、請求人は、審判請求書において、「引用文献1には、本願の独立請求項9及び請求項10における「前記等化ワイヤの各々は、複数の等電位セグメントのそれぞれのセグメントを互いに電気的に接続する閉ループを形成する」という技術的特徴は、全く開示されていません。」、「しかしながら、本願独立請求項9及び10の閉ループは、電流を分流し、それによって等化ワイヤに流れる最大電流を削減するために特別に使用されるものであります。」と主張するが、等電位のセグメントを電気的に接続する接続線を示す図4は、展開図であるから、上述のように、接続線の各々は閉ループを形成しており、又、特許法第29条第1項第3号に該当するか否かの判断は、発明の作用効果まで考慮する必要はないから、請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一と認められ、特許法第29条第1項第3号に該当する。


7.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-18 
結審通知日 2018-05-21 
審決日 2018-06-12 
出願番号 特願2012-166369(P2012-166369)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 マキロイ 寛済  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 堀川 一郎
久保 竜一
発明の名称 電気モータ  
代理人 近藤 直樹  
代理人 須田 洋之  
代理人 弟子丸 健  
代理人 上杉 浩  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  

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