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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G07G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G07G
管理番号 1345660
審判番号 不服2017-17263  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-21 
確定日 2018-11-20 
事件の表示 特願2014-561671号「ショッピングカートの中の商品スキャン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月3日国際公開、WO2014/002509、平成27年8月27日国内公表、特表2015-524947号、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年6月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年6月29日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月27日付けで手続補正書が提出され、平成29年5月1日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

この出願については、平成29年5月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものです。

理由1 この出願の請求項1?8、13?18に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2 この出願の請求項1?18に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-34789号公報
2.特開2003-256520号公報

第3 審判請求時の補正について

1 補正の内容

平成29年11月21日付けの手続補正による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書の補正であって、補正後の記載を示すと以下のとおりである(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)(当審で、半角英数字を全角英数字に統一した。以下同様。)。

「【請求項1】
ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出するステップと、
前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替えるステップ、および前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするステップと、
前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替えるステップと、
スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定するステップと、
前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信するステップと、
前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンするステップと、を備え、
前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記RFIDリーダと通信している、前記ショッピングカートに配置されたストレージデバイスに、前記商品目録を格納するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ショッピングカート内に存在しない別個のコンピューティングデバイスに前記商品目録を伝達するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記別個のコンピューティングデバイスは、前記商品目録に基づき精算処理を実施するチェックアウトステーションを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記別個のコンピューティングデバイスは中央サーバを含み、前記中央サーバは前記商品目録を維持し、精算処理の間、前記商品目録に基づき精算処理を実施するチェックアウトステーションに前記商品目録を伝達することを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記商品目録は、前記RFIDリーダと通信している無線LAN(Wireless Local Area Network:WLAN)送信機を使用して伝達されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記RFIDリーダと通信しているディスプレイに前記商品目録を電子的に表示するステップをさらに備え、
前記商品目録を電子的に表示するステップは、前記商品の数量、前記商品の識別情報、商品の価格、商品の宣伝情報、および合計価格のうち1つ以上を表示するステップを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の商品の重量と予測される重量の合計との差を検出するステップをさらに備え、前記予測される重量の合計は、前記商品の識別情報、前記商品の数量、および前記1つ以上の商品の各々についての予測される重量に基づくことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の商品の重量と前記予測される重量の合計との差の検出に応じて警告を発するステップをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の商品の重量と前記予測される重量の合計との差の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて、前記1つ以上の商品の前記RFIDタグを再度スキャンするステップをさらに備えることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の商品の重量と前記予測される重量の合計との差を検出するステップは、前記商品の前記重量の変化を検出するステップと精算処理の開始の検出のうち一方に応じて引き起こされることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出する検出モジュールと、
前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替え、前記検出モジュールが前記重量の変化を検出するのに応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするスキャンモジュールと、
前記スキャンモジュールが前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替える非アクティブ状態モジュールと、
スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定する商品目録確定モジュールと、
前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信する受信モジュールと、
前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンする精算前スキャンモジュールと、を備え、
前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記ショッピングカート内に存在しない別個のコンピューティングデバイスに前記商品目録を伝達する伝達モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記商品目録を受信し、前記商品目録に基づき精算処理を実施する精算モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項12または13のいずれか一に記載の装置。
【請求項15】
前記ショッピングカートから前記商品目録を受信し、中央サーバに前記商品目録を格納するリモート格納モジュール、
をさらに備えることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一に記載の装置。
【請求項16】
コンピュータ可読プログラムコードが組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品において、前記コンピュータ可読プログラムコードは、
ショッピングカート内の1つ以上の商品の重量の変化を検出する処理と、ここで、前記重量は前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知され、前記1つ以上の商品の各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備え、
前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替える処理、および前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンする処理と、
前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替える処理と、
スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定する処理と、
前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信する処理と、
前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンする処理と、を実施し、
前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成されることを特徴とするコンピュータプログラム製品。」

「【0005】
実施形態の方法は、ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出するステップと、前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替えるステップ、および前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするステップと、前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替えるステップと、スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定するステップと、前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信するステップと、前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンするステップと、を備え、前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される。

「【0010】
実施形態の装置は、ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出する検出モジュールと、前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替え、前記検出モジュールが前記重量の変化を検出するのに応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするスキャンモジュールと、前記スキャンモジュールが前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替える非アクティブ状態モジュールと、スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定する商品目録確定モジュールと、前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信する受信モジュールと、前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンする精算前スキャンモジュールと、を備え、前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される。」

「【0012】
実施形態のプログラム製品は、コンピュータ可読プログラムコードが組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読プログラムコードは、ショッピングカート内の1つ以上の商品の重量の変化を検出する処理と、ここで、前記重量は前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知され、前記1つ以上の商品の各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備え、前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替える処理、および前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンする処理と、前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替える処理と、スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定する処理と、前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信する処理と、前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンする処理と、を実施し、前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される。」

2 補正の適否

本件補正は、以下の事項について補正をしたものである。

ア 補正前の請求項1、13及び18に記載した発明を特定するために必要な事項である「スキャントリガ」が、「ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」ものであるとし、補正後の請求項1、12及び16とした。

イ 補正前の請求項3、4、15及び17に記載した発明を特定するために必要な事項である「カート」を、「ショッピングカート」であるとし、補正後の請求項2、3、13及び15とした。

ウ 補正前の請求項2及び14を削除した。

エ 補正前の明細書の段落【0005】、【0010】及び【0012】について、補正後の請求項1、12及び16に整合させるため、「スキャントリガ」が、「ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」ものであるとした。

(1)アについて

「スキャントリガ」が、「ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」ものであるとする補正は、補正前の請求項2等の記載に基づいて、補正前の請求項1、13及び18に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の請求項1、13及び18に記載された発明とその補正後の請求項1、12及び16に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、新規事項を追加するものではない。
また、アの補正は、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、特許法第37条の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにされたものであることも明らかである。
したがって、アの補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであり、また、補正前の請求項1、13及び18に記載された発明と、補正後の請求項1、12及び16に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、後記「第4 本願発明」及び「第5 当審の判断」に示すように、補正後の請求項1、12及び16に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
また、これら検討した事項は、補正後の請求項1または12を直接的又は間接的に引用する請求項2?11及び13?15についても同様である。

(2)イについて

「カート」を、「ショッピングカート」であるとする補正は、補正前の請求項3、4、15及び17の記載を補正前の請求項1及び13の記載と整合させるためのものであり、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであるとともに、特許法第17条の2第5項第3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(3)ウについて

補正前の請求項2及び14を削除するものであり、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであるとともに、特許法第17条の2第5項第1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものに該当する。

(4)エについて

上記「(1)ア」で検討したとおり、「スキャントリガ」が、「ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」ものであるとする補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

第4 本願発明

本願の請求項1?16に係る発明(以下「本願発明1?16」という。)は、平成29年11月21日付けの手続補正により補正された、上記「第3 1」において摘示した特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるものである。

第5 当審の判断

1 引用文献の記載事項

(1) 引用文献1の記載事項

引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)
「【請求項1】
店舗において販売前の商品を収容部に収容しつつ運搬するためのショッピングカートであって、
前記収容部内を読み取り対象とし、前記商品に付された電磁的な記録素子から、当該商品の重量を含む商品データを非接触にて読み取る読取手段と、
前記収容部に収容された前記商品を計量して、前記商品の実総重量を取得
する計量手段と、
前記読取手段により取得された前記商品データに基づいて導出される前記商品の演算総重量と、前記実総重量とが一致するか否かを照合する照合手段と、
を備えることを特徴とするショッピングカート。」

(1b)
「【0045】
<5.ショッピングカートの基本動作>
以下、このような重量の照合を含むショッピングカート1の動作について説明する。図6は、ショッピングカート1の一の顧客8に係る動作の基本的な流れを示す図である。ショッピングカート1は、顧客8による開始ボタン112の押下に応答して、図6に示す動作を行うことになる。
【0046】
開始ボタン112が押下されると、まず、初期化処理がなされる。この初期化処理では、ICタグリーダ12の読み取りにより収容カゴ21内に商品が存在していないことが確認され、また、計量部13によるゼロ調整がなされる(その時点の重量が風袋とされる)(ステップS11)。
【0047】
そして、以降、計量部13による計量値が変化するか否か、すなわち、実総重量が変化するか否かが、CPU101により監視される(ステップS12)。ただし、ショッピングカート1が移動している場合は、振動が発生するために、計量部13において正確な計量を行うことはできない。このため、計量部13の計量に際しては、回転検出器14によってショッピングカート1の移動が検出され、ショッピングカート1の停止(4つのキャスター22の全てが回転していないこと)が確認されると、これに応答して計量部13による計量が行われることになる。このような実総重量の監視は、精算処理の開始を指示する精算信号を受信するまで繰り返される(ステップS16にてNoの間)。
【0048】
実総重量は収容カゴ21に実際の存在している全商品の総重量であるため、収容カゴ21に商品を入れた場合は実総重量は必ず増加し、他方で、収容カゴ21から商品を出した場合は実総重量は必ず減少する。このため、実総重量の変化を監視することは、収容カゴ21に係る商品の出し入れを監視することに実質的に相当する。
【0049】
また、商品の出し入れが発生した場合は、商品テーブルTの内容を更新する必要がある。このため、もし実総重量が増加した場合は(ステップS12にてYes,ステップS13にてYes)、それに合わせて商品テーブルTに商品データを追加する増加処理がなされ(ステップS14)、他方、実総重量が減少した場合は(ステップS12にてYes,ステップS13にてNo)、それに合わせて商品テーブルTから商品データを削除する減少処理がなされることになる(ステップS15)。
【0050】

これにより、顧客8の収容カゴ21に係る商品の出し入れに合わせて、増加処理(ステップS14)や減少処理(ステップS15)が繰り返されることになる。そして、ショッピングカート1が精算スペース93の精算用通路96まで運ばれると、無線通信部114が隣接する決済装置3から精算信号を受信する。ショッピングカート1は、この精算信号の受信に応答して(ステップS16にてNo)、決済装置3と協働して精算処理(ステップS17)を行うことになる。精算処理が完了すると、ショッピングカート1の一の顧客に係る動作は終了することになる。」

(1c)
「【0077】
<8.精算処理>
次に、精算処理(図6:ステップS17)について説明する。図11は、精算処理の流れを示す図である。前述のように、精算処理はショッピングカート1と決済装置3とが協働して行う処理であり、図11において左側の処理の流れはショッピングカート1の処理を示し、右側の処理の流れは決済装置3の処理を示している。
【0078】
まず、上述した増加処理や減少処理により導出された合計売価が、ショッピングカート1の無線通信部114から、電波を利用した無線通信により決済装置3に送信される(ステップS41)。この合計売価は決済装置3の無線通信部33に受信され(ステップS51)、表示パネル32に表示される(ステップS52)。
【0079】
顧客8は、このような表示パネル32における合計売価の表示を参照し、決済装置3を利用して売買取引の決済を行う。この際、顧客8は、現金を用いた現金決済の他、クレジットカードを用いたカード決済や、電子マネー機能を有するICカードを利用した電子決済を行うことも可能である。現金決済では現金出納部35、カード決済ではクレジットカードリーダ36、電子決済ではICカードリーダがそれぞれ利用される。
【0080】
決済が正常に完了すると(ステップS53にてYes)、その旨を示す決済完了信号が決済装置3の無線通信部33から、電波を利用した無線通信によりショッピングカート1に送信される(ステップS54)。これとともに、通路バー31が動作して、顧客8が通過可能に精算用通路96が開放される(ステップS55)。
【0081】
また、決済完了信号は、ショッピングカート1の無線通信部114に受信される(ステップS42)。ショッピングカート1のCPU101はこれに応答して、RAM103に記憶された商品テーブルTなどのデータを消去する(ステップS43)。これにより、当該顧客8に係る個人情報の漏洩が防止されることになる。」

(2) 引用文献2の記載事項

引用文献2には、以下の記載がある。

(2a)
「【請求項1】予め商品情報が記憶された電子タグを用いた商品の販売を管理する販売管理システムにおいて、
前記商品の販売情報を管理するためのサーバと、
前記電子タグが付された購入対象商品が投入され購入対象商品を運搬する買い物カートと、
前記買い物カートに備えられ、前記電子タグと前記サーバとの間で商品情報の送受信を非接触で行なうクライアントと、
前記買い物カートに備えられ、前記受信された前記商品情報を表示する表示装置と、
購入対象商品を前記買い物カートから出し入れした情報と対象商品の個別情報を記憶する記憶装置を具備することを特徴とする販売管理システム。
【請求項2】前記クライアントは、前記電子タグに記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器と、前記送受信器によって受信した商品情報を基に買い物カート内の全商品の売価を集計する集計手段と、前記集計手段によって集計した合計売価を前記買い物カートに設けた表示装置に表示させる表示出力手段と、買い物カート内の全商品の一覧を表示する前記表示出力手段と、前記受信した商品情報と前記合計売価とを非接触でサーバに送信する送受信器とから成ることを特徴とする請求項1記載の販売管理システム。
【請求項3】前記クライアントの集計手段は、対象商品の売価情報を一括して、または商品の売場単位または売場グループ単位で前記サーバから受信し、買い物カート内に投入された商品の売価を集計することを特徴とする請求項2に記載の販売管理システム。
【請求項4】前記電子タグには商品毎に異なる商品識別用のIDを含むタグ情報を記録したことを特徴とする請求項1?3記載のいずれかの販売管理システム。
【請求項5】前記電子タグに記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器が受信する動作を行う契機は、前記買い物カートの買い物籠が載せられ接触する部分に加重センサが配設され、前記加重センサが購入対象商品を買い物籠に投入或いは取り出された際の加重の変化を検知した時を契機とすることを特徴とした請求項1?3記載のいずれかの送受信機を具備するクライアントを特徴とする販売管理システム。」

(2b)
「【0034】この実施形態の販売管理システムは、サーバ1とクライアント2がアンテナ4を介してデータの送受信を行うように構成されている。更に、クライアント2は商品に付けられた電子タグ5からデータを受信するように構成されている。
・・・
【0043】次に図1に戻り、クライアント2について説明する。クライアント2は売上計算プログラム241などを実行するための処理装置21、処理装置21は、プログラムを実行して、データの処理・装置全体を制御する処理部のCPU22、図8に示す制御フローに対応したプログラム、各種プログラムや後述する買い物カート番号などを記憶しておくためのROM23、顧客が購入した商品の売上の計算などを行なうための売上計算プログラム241、売価テーブル242及び売上集計テーブル243を記憶するメモリRAM(当審注:「RAM24」の誤記と認められる。),入力データ、売上計算プログラム241などの処理結果を表示するための表示装置25、売上計算プログラム241などの処理結果等を初期化するためのリセットスイッチ26、データ及びコマンドを入力する入力装置27を備えている。」

(2c)
「【0046】次に、図4及び図1によりカート6について説明する。図4(a)は買い物カートの斜視図で、(b)は買い物カートを上から見た図でカート内面を表したものである。図4から分かるように買い物カート本体(買い物籠)6の内面には送受信器B31のアンテナ311nと送受信器A33のアンテナ331nとが交互に複数配設されており、これらのアンテナは制御装置32を介して処理装置21に接続されている。また、アンテナ311n,331nはクライアント2に接続されている。買い物用カゴ6は、キャスター8a?8d、入力装置10と表示装置11を備えた制御装置12、加重センサ13a?13b、制御装置12に配線された発電機とバッテリ9a?9b及びハンドル7がついている。なお制御装置12はクライアント2に対応する。入力装置10はクライアントの入力装置27に対応する。表示装置11はクライアントの表示装置25に対応する。」

(2d)
「【0048】以上のように構成された販売管理システムを用いて、スーパーマーケット等で顧客が買い物をする場合の一連の手順について簡単に説明する。
【0049】まず、顧客は図4に示す任意の買い物カートを選択する。買い物カートを選択したら、リセットスイッチ26を押す。CPU22は、リセットスイッチ26が押されると、リセットスイッチの操作を検知して、次にクライアント2の売上計算プログラム241が起動し、サーバ1から売価ファイル142を入手してRAM24に売価テーブル242として格納し、売上集計テーブル243をクリア(初期化)する。なお本説明ではリセットスイッチが付いている構成だが、精算終了後にサーバがクライアント内のデータをクリア(初期化)することにより、リセットスイッチとそれを押下する手間を省く構成が考えられる。なお、図面上は買い物カートの電源のスイッチ等の説明は省略する。
【0050】次に、顧客が商品を選択して買い物カート6に入れると、ステップS803で図4(b)の13a?13bの加重センサが商品をカートに商品を投入したことを検知し、ステップS804でCPU22が加重されたか、減重されたかを加重センサの出力から判断して、加重された場合、ステップS805で電子タグの商品コードを元にRAM24の売価テーブルから売価を調べてRAM24の売上集計テーブルに再登録する。商品に付されている電子タグ5の情報を送受信器A33を介して入手して売上集計テーブル243に登録する。
【0051】図6はある商品4個を買い物カート6に入れた状態の売上集計テーブル243の一例を示したものである。このように売上集計テーブル243には、商品の内訳との売上計算プログラム241によって計算された合計金額と買い物カートに投入した時間とが登録される。また、この時に商品情報が登録されたことを顧客に伝えるべく図1の音源34から音を発する。
【0052】この合計金額と買い物カート内の商品一覧と各商品の金額は表示装置25に表示されるため顧客は自分の買い物カートに入っている商品の合計金額や商品一覧と各々の価格を容易に知ることができる。また、売上集計テーブル243の内容は、制御装置32、送受信器B31を経由してアンテナ311からアンテナ4へ非接触で転送されサーバ1の販売管理ファイル143に登録される。 図7はカート番号C001とC005から転送されて来た売上集計テーブル243の例を示したものである。
【0053】次にスーパーマーケット等で顧客が買い物をする場合の一連の手順について図8を参照して説明する。
【0054】ステップ801からステップ810は、リセットスイッチ26が押された後の売上計算プログラム241の処理概要を表したものである。
【0055】即ち、リセットスイッチ26が押されたか否かをステップS801でCPU22で判定し、リセットスイッチ26が押されていればステップS802に進み、CPU22はサーバ1から売価ファイル142を入手すると共に売上集計テーブル243をクリアする。次にステップS803に進み、商品を投入、或いは取り出されることにより図4(b)に表示の加重センサ13a?13bが重量の変化をCPU22は検知する。これを契機にステップS804ではこの変化が増加によるものか減少によるものかをCPU22で判断し、増加(加重)ならばステップS805へ、減少(減重)ならばステップS806へ進む。ステップS805,S807共にCPU22は電子タグ5の商品コードを基に売価テーブル242から売価を調べて売上集計テーブル243に登録する。次にそれぞれはS805、S807へ進み、CPU22は売り上げ集計テーブルを再登録した際に、商品の品数が増加しているかを判断する。増加していれば、ステップS809へ進み、していなければ、読み込みミスの可能性があるので、再度電子タグ5から情報を受信する。
【0056】一方、同様に減重の方もステップS808へ進み商品の品数が減少しているかをCPU22は判断し、減少していればステップs809へ進む。していなければ、読み込みミスの可能性があるので、再度CPU22は電子タグから情報を受信する。
【0057】しかしながら、フローチャートに記載はないが、ステップs805?s806、或いはs807?s808のループで複数回読み込んでいるが、何らかの振動や衝撃で誤作動することが考えられる。よって、数回繰り返し、結果に変化がなければそのまま処理を続行する方法が現実的である。
【0058】次にステップ809に進み、CPU22は電子タグから情報を取得したことを示すべく、CPU22の制御により音源34から音を出力する。この際の音は商品を取り出した場合と投入した場合とで、その違いが区別されるような異なる音を出力する。次にステップs810に進み、CPU22は合計金額を求め売上集計テーブル243の合計欄にセットした後、ステップs811でCPU22は合計金額を表示装置25に表示する。更に、ステップs812でCPU22は売上集計テーブル243の内容をサーバ1に転送する。転送した売上集計テーブル243の内容は、サーバ1の販売管理ファイル143に格納される。
【0059】顧客は、表示装置25に表示された合計金額(代金)を予め準備してレジに行き、買い物カート6に入った商品を買い物カート6ごと店員に渡すと共に代金を支払う。ここで、店員は買い物カート番号をキャシュレジスタ20のキーボード203などから入力すると、販売管理プログラム131がサーバ1の販売管理ファイル143から該当する買い物カートのデータを読み出して表示装置16に表示する。そこで表示内容と代金を確認する。
【0060】なお、店員は顧客から受け取った代金と商品の合計金額の確認をするための別の方法として、再度商品が入っている買い物カートのリセットスイッチ26を押して、商品の合計金額を再計算させ、顧客から受け取った代金と合計金額が同じであることを確認するようにしてもよい。」

2 引用文献2に記載された発明

引用文献2に記載された「販売管理システム」(摘示(2a)【請求項1】?【請求項5】)は、「販売管理方法」を実施する「販売管理システム」であるといえ、「販売管理システムを用いた販売管理方法」の発明として特定することができる。
そうすると、上記「1(2)」において摘示した引用文献2の各記載によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「予め商品情報が記憶された電子タグ5を用いた商品の販売を管理する販売管理システムを用いた販売管理方法であって、
前記販売管理システムは、
前記商品の販売情報を管理するためのサーバ1と、
前記電子タグ5が付された購入対象商品が投入され購入対象商品を運搬する買い物カート6と、
前記買い物カート6に備えられ、前記電子タグ5と前記サーバ1との間で商品情報の送受信を非接触で行なうクライアント2と、
前記買い物カート6に備えられ、前記受信された前記商品情報を表示する表示装置25と、
購入対象商品を前記買い物カート6から出し入れした情報と対象商品の個別情報を記憶するRAM24を具備し、
前記クライアント2は、前記電子タグ5に記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器A33と、前記送受信器A33によって受信した商品情報を基に買い物カート6内の全商品の売価を集計する売上計算プログラム241と、前記売上計算プログラム241によって集計した合計売価を前記買い物カート6に設けた表示装置25に表示させる表示出力手段と、買い物カート6内の全商品の一覧を表示する前記表示出力手段と、前記受信した商品情報と前記合計売価とを非接触でサーバ1に送信する送受信器B31とから成り、
前記クライアント2の前記売上計算プログラム241は、対象商品の売価情報を一括して、または商品の売場単位または売場グループ単位で前記サーバ1から受信し、買い物カート6内に投入された商品の売価を集計するものであり、
前記電子タグ5には商品毎に異なる商品識別用のIDを含むタグ情報を記録し、
前記電子タグ5に記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器A33が受信する動作を行う契機は、前記買い物カート6の買い物籠が載せられ接触する部分に加重センサ13a、13bが配設され、前記加重センサ13a、13bが購入対象商品を買い物籠に投入或いは取り出された際の加重の変化を検知した時を契機とする販売管理システムを用いた販売管理方法」

3 対比・判断

3-1 本願発明1について

(1) 対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「買い物カート6」及び「商品」が、本願発明1の「ショッピングカート」及び「一つ以上の商品」に相当する。

イ 引用発明の「電子タグ5」は、「商品毎に異なる商品識別用のIDを含むタグ情報を記録し」たものであり、「電子タグ5に記録されている商品情報」は、「非接触で」「送受信器A33」が受信することから、本願発明1の「無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグ」に相当する。

ウ 引用発明の「『買い物カート6の買い物籠が載せられ接触する部分に』『配設され』た『加重センサ13a、13b』」が、本願発明1の「前記ショッピングカートに配置された重量センサ」に相当する。

エ 上記ア?ウの相当関係を踏まえると、引用発明の「前記加重センサ13a、13bが購入対象商品を買い物籠に投入或いは取り出された際の加重の変化を検知する」ことが、本願発明1の「ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出するステップ」に相当する。

オ 引用発明の「送受信器A33」が、本願発明1の「RFIDリーダ」に相当する。

カ 本願発明1の「アクティブ状態」とは、「RFIDリーダ106がRFIDタグの検索とスキャンのうち少なくとも一方を実施可能な状態」(本願明細書の翻訳文段落【0055】)であると認められる。
そして、引用発明の「送受信器A33」は、「前記電子タグ5に記録されている商品情報を非接触で受信」していることから、受信する前の段階で「電子タグ5」の検索とスキャンのうち少なくとも一方を実施可能な状態にされているといえ、引用発明の「販売管理システムで行う販売管理方法」は、本願発明1の「前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替えるステップ」を有しているといえる。

キ 上記ア?ウ及びオの相当関係を踏まえると、引用発明の「『前記買い物カート6の買い物籠が載せられ接触する部分に加重センサ13a、13bが配設され、前記加重センサ13a、13bが購入対象商品を買い物籠に投入或いは取り出された際の加重の変化を検知した時を契機と』して『前記電子タグ5に記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器A33が受信する』」ことが、本願発明1の「前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするステップ」に相当する。

ク 引用発明の「クライアント2」が有している「表示出力手段」は、「前記売上計算プログラム241によって集計した合計売価を前記買い物カート6に設けた表示装置25に表示させ」、「買い物カート6内の全商品の一覧を表示する」ものであり、表示するために「買い物カート6内の全商品の一覧」を確定していることが必要であることは技術常識であるから、引用発明の「前記電子タグ5に記録されている商品情報を非接触で受信する送受信器A33」「によって受信した商品情報を基に買い物カート6内の全商品の売価を集計」し、「前記売上計算プログラム241によって集計した合計売価を前記買い物カート6に設けた表示装置25に表示させ」、「買い物カート6内の全商品の一覧を表示する」ことは、本願発明1の「スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定するステップ」に相当するといえる。

ケ 上記エ、カ?クの相当関係を踏まえれば、引用発明の「販売管理システムを用いた販売管理方法」が、本願発明1の「方法」に相当する。

上記ア?ケを総合すると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ショッピングカート内の1つ以上の商品であって各々は無線自動識別(Radio-Frequency Identification:RFID)タグを備える前記1つ以上の商品の重量の変化を前記ショッピングカートに配置された重量センサにより感知して検出するステップと、
前記ショッピングカートに配置されたRFIDリーダをアクティブ状態に切り替えるステップ、および前記重量の変化の検出に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品のRFIDタグをスキャンするステップと、
スキャンされた前記RFIDタグからの情報に基づき、商品の数量および商品の識別情報を含む、前記1つ以上の商品の商品目録を確定するステップと、を備えた方法」

<相違点1>
本願発明1は、「前記RFIDリーダを用いて前記RFIDタグをスキャンした後で、前記RFIDリーダを非アクティブ状態に切り替えるステップ」を備えているのに対し、引用発明には、そのようなステップが特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記商品目録について精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前にスキャントリガを受信するステップと、前記スキャントリガの受信に応じて、前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンするステップと、を備え、前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」のに対し、引用発明には、そのようなステップが特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用文献2には、「店員は顧客から受け取った代金と商品の合計金額の確認をするための別の方法として、再度商品が入っている買い物カートのリセットスイッチ26を押して、商品の合計金額を再計算させ、顧客から受け取った代金と合計金額が同じであることを確認するようにしてもよい。」(摘示(2d)段落【0060】)と記載されている。
ここで、「リセットスイッチ26」は、本願発明1の「精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前」の「スキャントリガ」に相当するといえ、上記記載の「商品の合計金額を再計算」することは、本願発明1の「前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンするステップ」に相当するといえる。
しかし、「リセットスイッチ26」は本願発明1の「前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように」するものではなく、引用文献1のその他の記載にも、「前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように」する構成は記載も示唆もされていない。
また、引用文献1には、「店舗において販売前の商品を収容部に収容しつつ運搬するためのショッピングカートであって、前記収容部内を読み取り対象とし、前記商品に付された電磁的な記録素子から、当該商品の重量を含む商品データを非接触にて読み取る読取手段と、前記収容部に収容された前記商品を計量して、前記商品の実総重量を取得する計量手段と、前記読取手段により取得された前記商品データに基づいて導出される前記商品の演算総重量と、前記実総重量とが一致するか否かを照合する照合手段と、を備えるショッピングカート」(摘示(1a))に係る技術的事項であって、「ショッピングカート1が精算スペース93の精算用通路96まで運ばれると、無線通信部114が隣接する決済装置3から精算信号を受信する。ショッピングカート1は、この精算信号の受信に応答して(ステップS16にてNo)、決済装置3と協働して精算処理(ステップS17)を行う」(摘示(1b)段落【0050】)ものが記載されている。
ここで、引用文献1に係る発明の「決済装置3」が、本願発明1の「チェックアウトステーション」に相当するといえ、引用文献1に係る発明の「精算信号を受信する」事項は、本願発明1の「精算処理を行うチェックアウトステーションによる精算処理の前に受信する」事項に相当する。
しかし、引用文献1に係る発明の「精算処理」(摘示(1c))において、本願発明1の「前記RFIDリーダを用いて前記1つ以上の商品の前記RFIDタグをスキャンするステップ」に相当する事項は記載も示唆もされておらず、「前記スキャントリガは、前記ショッピングカートの真下の床の物理的特徴を含み、前記物理的特徴は、前記ショッピングカートを揺らし、前記重量センサに前記重量の変化を検出させるように構成される」点も同様に記載も示唆もされていない。

してみれば、当業者といえども、引用発明及び引用文献1及び2に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の事項を容易に想到することはできないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2 本願発明2?11について
本願発明2?11は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3-3 本願発明12について
本願発明12は、本願発明1の方法を装置として特定した発明であり、上記相違点1及び2に対応する事項を備えているものである。
したがって、上記「3-1」と同様の理由から、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3-4 本願発明13?15
本願発明13?15は、本願発明12の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明12と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3-3 本願発明16について
本願発明12は、本願発明1の方法をコンピュータプログラム製品として特定した発明であり、上記相違点1及び2に対応する事項を備えているものである。
したがって、上記「3-1」と同様の理由から、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-07 
出願番号 特願2014-561671(P2014-561671)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G07G)
P 1 8・ 113- WY (G07G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森林 宏和  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 仁木 学
氏原 康宏
発明の名称 ショッピングカートの中の商品スキャン  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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