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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A24F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A24F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A24F
審判 全部申し立て 特29条の2  A24F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A24F
管理番号 1345831
異議申立番号 異議2017-700089  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-02 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5960358号発明「電子蒸気供給装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5960358号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-27〕について訂正することを認める。 特許第5960358号の請求項1,2,6?17,22,25?27に係る特許を取り消す。 特許第5960358号の請求項18?21,23,24に係る特許を維持する。 特許第5960358号の請求項3?5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許第5960358号の請求項1?27に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は,2013年7月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2012年7月16日,英国)を国際出願日とする出願であって,平成28年7月1日に特許権の設定登録がなされ,平成28年8月2日に特許掲載公報が発行されたところ,平成29年2月2日に特許異議申立人飯田進により特許異議の申立てがなされた。
2 平成29年4月13日付けで取消理由を通知したところ,特許権者から平成29年7月18日付けで意見書及び訂正請求書が提出され,特許異議申立人から平成29年8月25日付けで意見書が提出された。
3 平成29年10月5日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ,特許権者から平成30年1月9日付けで意見書及び訂正請求書が提出され,特許異議申立人から平成30年2月16日付けで意見書が提出された。
4 以下,平成30年1月9日付け訂正請求書を「本件訂正請求書」といい,これに係る訂正を「本件訂正」という。なお,平成29年7月18日付け訂正請求書は,取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は,特許第5960358号の明細書及び特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?27について訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 請求項1について(訂正事項1?5)
本件訂正前の請求項1の,「この気化器は・・・加熱エレメント支持体とを含み,」の後に「加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,」を加え(訂正事項1),「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられており,」を「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,」に訂正し(訂正事項2),「前記加熱エレメントは前記加熱エレメント支持体の支持外方面に位置し,」を削除し(訂正事項3),「前記1つ以上の隙間が加熱エレメントと支持外方面との間に設けられている」を削除し(訂正事項4),「電子蒸気供給装置。」の前に「前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である」を加える(訂正事項5)。
(2) 請求項3について(訂正事項6)
請求項3を削除する。
(3) 請求項4について(訂正事項7)
請求項4を削除する。
(4) 請求項5について(訂正事項8)
請求項5を削除する。
(5) 請求項6について(訂正事項9)
本件訂正前の請求項6の「請求項1乃至5いずれか」を,「請求項1又は2に」に訂正する。
(6) 請求項9について(訂正事項10)
本件訂正前の請求項9の「請求項1乃至8」を,「請求項1,2,6乃至8」に訂正する。
(7) 請求項11について(訂正事項11)
本件訂正前の請求項11の「請求項1乃至10」を,「請求項1,2,6乃至10」に訂正する。
(8) 請求項12について(訂正事項12)
本件訂正前の請求項12の「請求項1乃至11」を,「請求項1,2,6乃至11」に訂正する。
(9) 請求項18について(訂正事項13?15)
本件訂正前の請求項18の,「前記加熱エレメント支持体の断面形状は楕円形である」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,」を加え(訂正事項13,14),「特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項15)。
(10) 請求項19について(訂正事項16?18)
本件訂正前の請求項19の,「前記加熱エレメント支持体の断面形状は3つの円が重なって一緒になったものと等しい」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,」を加え(訂正事項16,17),「特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項18)。
(11) 請求項20について(訂正事項19?21)
本件訂正前の請求項20の,「前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状である」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,」を加え(訂正事項19,20),「特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項21)。
(12) 請求項21について(訂正事項22?25)
本件訂正前の請求項21の,「前記十字形状は4本の腕部または8本の腕部を有する」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であり,」を加え(訂正事項22?24),「特徴とする請求項20記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項25)。
(13) 請求項22について(訂正事項26)
本件訂正前の請求項22の「請求項1乃至11」を,「請求項1,2,6乃至11」に訂正する。
(14) 請求項23について(訂正事項27?29)
本件訂正前の請求項23の,「前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体を通り抜けている」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり,」を加え(訂正事項27,28),「特徴とする請求項22記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項29)。
(15) 請求項24について(訂正事項30?32)
本件訂正前の請求項24の,「前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体に包まれている」の前に,「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり,」を加え(訂正事項30,31),「特徴とする請求項22記載の電子蒸気供給装置。」を「特徴とする電子蒸気供給装置。」に訂正する(訂正事項32)。
(16) 請求項26について(訂正事項33)
本件訂正前の請求項26の「請求項1乃至25」を,「請求項1,2,6乃至25」に訂正する。
(17) 請求項27について(訂正事項34?39)
本件訂正前の請求項27の,「加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み,」の後に「加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,」を加え(訂正事項34),「1つ以上の隙間が加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体との間に設けられており,」を「1つ以上の隙間が加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,」に訂正し(訂正事項35),「前記加熱エレメントは前記加熱エレメント支持体の支持外方面に位置し,」を削除し(訂正事項36),「前記1つ以上の隙間が加熱エレメントと支持外方面との間に設けられている,」を削除し(訂正事項37),「請求項1・・・記載の電子蒸気供給装置に使用される気化器。」の前に,「前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である,」を加え(訂正事項38),「請求項1乃至26」を「請求項1,2,6乃至26」に訂正する(訂正事項39)。
(18) 本件特許明細書について(訂正事項40及び41)
本件特許明細書【0003】の「ある実施態様では動力電池と気化器とを含む電子蒸気供給装置が提供され,この気化器は加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み,隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持外方面を有してもよく,隙間を加熱エレメントと支持外方面との間に設けてもよい。さらに加熱エレメントと加熱エレメント支持体は,加熱ロッドを形成してもよい。」を,「ある実施態様では動力電池と気化器とを含む電子蒸気供給装置が提供され,この気化器は加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み,隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持体外面を有してもよく,隙間を加熱エレメントと支持体外面との間に設けてもよい。さらに加熱エレメントと加熱エレメント支持体は,加熱ロッドを形成してもよい。」に訂正し(訂正事項40),特許明細書【0011】の「加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持外方面を含んでもよく,隙間を加熱エレメントと支持外方面との間に設けてもよい。」を,「加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持体外面を含んでもよく,隙間を加熱エレメントと支持体外面との間に設けてもよい。」に訂正する(訂正事項41)。

2 本件訂正の適否について
(1) 請求項1について
ア 訂正事項1及び3について
訂正事項1及び3は,本件訂正前の請求項1の「前記加熱エレメントは前記加熱エレメント支持体の支持外方面に位置し,」との記載が明瞭でなかったところ(後記第4・5),より明瞭にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,本件特許明細書には,「支持体20は加熱エレメントコイル23の螺旋内に同軸に配置され,・・・。円筒状支持体20の直径は螺旋の内径とほぼ同じである。その結果,コイル23のワイヤーは支持体20と実質的に接触し,これにより支持され,・・・。加熱エレメントコイル23は,加熱エレメント支持体20の周りにコイル状に巻かれる,・・・。」(【0041】),「1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。」(【0077】)と記載され,図6,8,10等において,支持体20の外面に加熱エレメントコイル23がコイル状に巻かれた構造が記載されている。
そうすると,訂正事項1及び3に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
イ 訂正事項2及び4について
訂正事項2及び4は,請求項1における「1つ以上の隙間」が設けられる部位に関し,本件訂正前の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられており,」,「前記1つ以上の隙間が加熱エレメントと支持外方面との間に設けられている」との記載が明瞭でなかったところ(後記第4・5),より明瞭にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,本件特許明細書には「1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。」(【0077】)と記載されているから,訂正事項2及び4に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
ウ 訂正事項5について
訂正事項5は,請求項1における「加熱エレメント支持体」の材質について,「前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である」と特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件訂正前の請求項3?5に,それぞれ,「前記加熱エレメント支持体は,硬質の支持体であることを特徴とする請求項1または2記載の電子蒸気供給装置。」,「前記加熱エレメント支持体は多孔性であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。」,「前記加熱エレメント支持体は多孔性セラミック材を含むことを特徴とする請求項4記載の電子蒸気供給装置。」と記載されているから,訂正事項5に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(2) 請求項3?5について
訂正事項6?8は,請求項3?5を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(3) 請求項6,9,11,12,22及び26について
訂正事項9?12,26及び33は,訂正事項6?8により請求項3?5を削除することに伴い,請求項6,9,11,12,22及び26において引用する請求項を減ずるものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(4) 請求項18?21について
ア 本件訂正前の請求項18?20は,本件訂正前の請求項1?11を引用する請求項12について引用するものであるが,訂正事項13?21は,これを本件訂正前の請求項1を引用する請求項12について引用するものに限定し,さらに本件訂正前の請求項1に係る事項について訂正事項1?4に係る訂正と同様の訂正をした上で,請求項12を引用しないものとするものであるから,特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 本件訂正前の請求項21は,本件訂正前の請求項20を引用するものであるが,訂正事項22?25は,これを本件訂正前の請求項1を引用する請求項12を引用する請求項20について引用するものに限定し,さらに本件訂正前の請求項1に係る事項について訂正事項1?4に係る訂正と同様の訂正をした上で,請求項20を引用しないものとするものであるから,特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
ウ そして,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(5) 請求項23,24について
本件訂正前の請求項23,24は,本件訂正前の請求項1?11を引用する請求項22について引用するものであるが,訂正事項27?32は,これを本件訂正前の請求項1を引用する請求項22について引用するものに限定し,さらに本件訂正前の請求項1に係る事項について訂正事項1?4に係る訂正と同様の訂正をした上で,請求項22を引用しないものとするものであるから,特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(6) 請求項27について
ア 訂正事項34及び36について
訂正事項34及び36は,本件訂正前の請求項27の「前記加熱エレメントは前記加熱エレメント支持体の支持外方面に位置し,」との記載が明瞭でなかったところ(後記第4・5),より明瞭にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,本件特許明細書には,「支持体20は加熱エレメントコイル23の螺旋内に同軸に配置され,・・・。円筒状支持体20の直径は螺旋の内径とほぼ同じである。その結果,コイル23のワイヤーは支持体20と実質的に接触し,これにより支持され,・・・。加熱エレメントコイル23は,加熱エレメント支持体20の周りにコイル状に巻かれる,・・・。」(【0041】),「1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。」(【0077】)と記載され,図6,8,10等において,支持体20の外面に加熱エレメントコイル23がコイル状に巻かれた構造が記載されている。
そうすると,訂正事項34及び36に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
イ 訂正事項35及び37について
訂正事項35及び37は,請求項27における「1つ以上の隙間」が設けられる部位に関し,本件訂正前の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられており,」,「前記1つ以上の隙間が加熱エレメントと支持外方面との間に設けられている」との記載が明瞭でなかったところ(後記第4・5),より明瞭にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,本件特許明細書には「1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。」(【0077】)と記載されているから,訂正事項35及び37に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
ウ 訂正事項38について
訂正事項38は,請求項27における「加熱エレメント支持体」の材質について,「前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である」と特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件訂正前の請求項3?5に,それぞれ,「前記加熱エレメント支持体は,硬質の支持体であることを特徴とする請求項1または2記載の電子蒸気供給装置。」,「前記加熱エレメント支持体は多孔性であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。」,「前記加熱エレメント支持体は多孔性セラミック材を含むことを特徴とする請求項4記載の電子蒸気供給装置。」と記載されているから,訂正事項38に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
エ 訂正事項39について
訂正事項39は,訂正事項6?8により請求項3?5を削除することに伴い,引用する請求項を減ずるものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(7) 本件特許明細書について
訂正事項40及び41は,特許明細書の【0003】,【0011】の記載において,「支持外方面」との記載に関し明瞭でなかったところ(後記第4・4),より明瞭にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,本件特許明細書には,「1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。」(【0077】)と記載され,図6,8,10等において,支持体20の外面に加熱エレメントコイル23がコイル状に巻かれた構造が記載されている。
そうすると,訂正事項40及び41に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものではない。
(8) さらに,本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
(9) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号,3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであって,同条4項,並びに同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-27〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1?27に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定される次のとおりである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って,「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である電子蒸気供給装置。
【請求項2】
前記加熱エレメントと加熱エレメント支持体は,加熱ロッドを形成することを特徴とする請求項1記載の電子蒸気供給装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記加熱エレメントは加熱コイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項7】
前記加熱コイルは加熱エレメント支持体の周りに螺旋状に巻かれていることを特徴とする請求項6記載の電子蒸気供給装置。
【請求項8】
コイルターンと加熱エレメント支持体との間に前記1つ以上の隙間があることを特徴とする請求項6または7記載の電子蒸気供給装置。
【請求項9】
前記気化器は,使用の際,負圧領域になるように構成されている気化キャビティーをさらに含むことを特徴とする請求項1,2,6乃至8いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項10】
前記加熱エレメントの少なくとも一部は,気化キャビティーの内側にあることを特徴とする請求項9記載の電子蒸気供給装置。
【請求項11】
マウスピースセクションを含み,前記気化器はマウスピースセクションの一部であることを特徴とする請求項1,2,6乃至10いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項12】
前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであることを特徴とする請求項1,2,6乃至11いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項13】
前記加熱エレメント支持体はこれに沿って長手方向に延びた1つ以上の側部流路を有することを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項14】
前記加熱エレメント支持体は,これに沿って長手方向に延びた側部流路を2つ以上含み,これら側部流路は,加熱エレメント支持体の周りに実質的に均一に配分されていることを特徴とする請求項13記載の電子蒸気供給装置。
【請求項15】
前記加熱エレメント支持体は窪んだ表面を有することを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項16】
前記加熱エレメント支持体の断面形状は多角形であることを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項17】
前記多角形は幅の狭い矩形であることを特徴とする請求項16記載の電子蒸気供給装置。
【請求項18】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,前記加熱エレメント支持体の断面形状は楕円形であることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項19】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,前記加熱エレメント支持体の断面形状は3つの円が重なって一緒になったものと等しいことを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項20】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項21】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり,前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であり,前記十字形状は4本の腕部または8本の腕部を有することを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項22】
前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であることを特徴とする請求項1,2,6乃至11いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項23】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり,前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体を通り抜けていることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項24】
動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み,加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり,前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体に包まれていることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項25】
前記加熱エレメント支持体は穴を有する基板であることを特徴とする請求項22,23または24記載の電子蒸気供給装置。
【請求項26】
さらに液体貯蔵部と,
液体を液体貯蔵部から液体を気化させるための加熱エレメントに吸い上げるように構成された吸い上げエレメントと,
加熱エレメントから気化された液体が通過する空気出口とを含み,
前記動力電池が前記加熱エレメントに動力を与えるためのものであることを特徴とする請求項1,2,6乃至25いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項27】
加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み,
加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,
1つ以上の隙間が加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており,
前記加熱エレメント支持体は,多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である,請求項1,2,6乃至26いずれか1項記載の電子蒸気供給装置に使用される気化器。

第4 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。
1 本件発明は,本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲3,9号証に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件発明は,本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲1,3,9号証に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 本件発明1?17,19?22,24,26,27は,その優先日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲14号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4 本件特許は,発明の詳細な説明の記載が「支持外方面」に関する点で不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
5 本件特許は,特許請求の範囲の記載が「支持外方面」に関する点で不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(甲号証)
甲1号証:国際公開第2012/085207号
甲2号証:特表2014-501107号公報
甲3号証:特表2009-537119号公報
甲4号証:特開2012-29633号公報
甲5号証:特表2008-544834号公報
甲6号証:特開2012-13247号公報
甲7号証:実願平3-113756号(実開平5-48944号)のCD-ROM
甲8号証:特開2012-57859号公報
甲9号証:特表2012-506263号公報
甲10号証:登録実用新案第3003543号公報
甲11号証:特開2010-80261号公報
甲12号証:米国特許出願公開第2011/0278189号明細書
甲13号証:米国仮出願第61/593004号明細書
甲14号証:特表2015-505476号公報(特願2014-555725号)
(以下,証拠番号に従って「甲1」などという。)

第5 取消理由1(29条1項3号)及び取消理由2(29条2項)について
1 甲1に記載された事項及び発明
(1) 甲1に記載された事項(なお,訳は,甲2(対応する日本語特許公報)による。)
・「Preferably, the capillary wick is arranged to be in contact with liquid in the liquid storage portion. Preferably, the capillary wick extends into the liquid storage portion. In that case, in use, liquid is transferred from the liquid storage portion to the electric heater by capillary action in the capillary wick. In one embodiment, the capillary wick has a first end and a second end, the first end extending into the liquid storage portion for contact with liquid therein and the electric heater being arranged to heat liquid in the second end. When the heater is activated, the liquid at the second end of the capillary wick is vaporized by the at least one heating element of the heater to form the supersaturated vapour. The supersaturated vapour is mixed with and carried in the air flow. During the flow, the vapour condenses to form the aerosol and the aerosol is carried towards the mouth of a user. The liquid aerosol-forming substrate has physical properties, including viscosity and surface tension, which allow the liquid to be transported through the capillary wick by capillary action.
The capillary wick may have a fibrous or spongy structure. The capillary wick preferably comprises a bundle of capillaries. For example, the capillary wick may comprise a plurality of fibres or threads or other fine bore tubes. The fibres or threads may be generally aligned in the longitudinal direction of the aerosol generating system. Alternatively, the capillary wick may comprise sponge-like or foam-like material formed into a rod shape. The rod shape may extend along the longitudinal direction of the aerosol generating system. The structure of the wick forms a plurality of small bores or tubes, through which the liquid can be transported by capillary action. The capillary wick may comprise any suitable material or combination of materials. Examples of suitable materials are capillary materials, for example a sponge or foam material, ceramic- or graphite-based materials in the form of fibres or sintered powders, foamed metal or plastics material, a fibrous material, for example made of spinned or extruded fibres, such as cellulose acetate, polyester, or bonded polyolefin, polyethylene, terylene or polypropylene fibres, nylon fibres or ceramic. The capillary wick may have any suitable capillarity and porosity so as to be used with different liquid physical properties. The liquid has physical properties, including but not limited to viscosity, surface tension, density, thermal conductivity, boiling point and vapour pressure, which allow the liquid to be transported through the capillary device by capillary action.
Preferably, the at least one heating element is in the form of a heating wire or filament encircling, and optionally supporting, the capillary wick. The capillary properties of the wick, combined with the properties of the liquid, ensure that, during normal use, the wick is always wet in the heating area. If the wick is dry, there may be overheating. Providing a capillary wick may therefore be advantageous as it will allow a measure of this overheating, which in turn can allow a determination of when the amount of liquid aerosol-forming substrate in the liquid storage portion has decreased to a predetermined threshold 」(明細書6頁7行?7頁15行)
(【0026】 毛細管芯は,液体貯蔵部内の液体と接触するように配置されることが好ましい。毛細管芯は,液体貯蔵部内に延びることが好ましい。この場合,使用時には,毛細管芯内の毛細管作用により,液体が液体貯蔵部から電気ヒータに移動する。1つの実施形態では,毛細管芯が第1の端部及び第2の端部を有し,第1の端部が液体貯蔵部内に延びて内部の液体に接触し,電気ヒータが,第2の端部内の液体を加熱するように配置される。ヒータが作動すると,ヒータの少なくとも1つの加熱要素により,毛細管芯の第2の端部の液体が気化して過飽和蒸気を形成する。この過飽和蒸気が空気流と混ざり,この空気流に含まれて運ばれる。流れている間に蒸気が凝縮してエアロゾルを形成し,このエアロゾルがユーザの口の方に運ばれる。液体エアロゾル形成基質は,液体が毛細管作用により毛細管芯を通じて運ばれるようにする物理特性(粘度及び表面張力を含む)を有する。
【0027】 毛細管芯は,繊維状又は海綿状の構造を有することができる。毛細管芯は,毛細管の束を含むことが好ましい。例えば,毛細管芯は,複数の繊維又は糸,或いはその他の微細チューブを含むことができる。これらの繊維又は糸を,エアロゾル生成システムの長手方向に大まかに整列させることができる。或いは,毛細管芯は,ロッド形状に形成された海綿様又は泡状材料を含むこともできる。このロッド形状は,エアロゾル生成システムの長手方向に沿って延びることができる。芯の構造は,複数の小さなボア又はチューブを形成し,これを通じて毛細管作用により液体を運ぶことができる。毛細管芯は,あらゆる好適な材料又は材料の組み合わせを含むことができる。好適な材料の例としては,例えば,海綿又は発泡材料,繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料,発泡金属又は発泡プラスチック材料,例えば,酢酸セルロース,ポリエステル,又は結合ポリオレフィン,ポリエチレン,テリレン又はポリプロピレン繊維,ナイロン繊維又はセラミックなどの,紡績又は押し出し繊維で作られた繊維性材料などの毛細管材料が挙げられる。この毛細管芯は,異なる液体物理特性で使用されるように,あらゆる好適な毛細管現象及び多孔率を有することができる。液体は,以下に限定されるわけではないが,毛細管作用により毛細管装置を通じて運ばれるような粘度,表面張力,濃度,熱伝導率,沸点及び蒸気圧を含む物理特性を有する。
【0028】 少なくとも1つの加熱要素は,毛細管芯を取り巻いて任意にこれを支持する加熱ワイヤ又はフィラメントの形であることが好ましい。芯の毛細管特性を液体の特性と組み合わせることで,通常の使用時には,加熱領域において常に芯が湿っていることが確実になる。芯が乾燥した場合,過熱が生じる恐れがある。従って,毛細管芯を設けると,この過熱を測定することができ,これにより液体貯蔵部内の液体エアロゾル形成気質の量がいつ所定の閾値に減少したかをさらに判定できるので有利である。)
・「Figure 1 shows one example of an electrically operated aerosol generating system having a liquid storage portion. In Figure 1 , the system is a smoking system. The smoking system 100 of Figure 1 comprises a housing 101 having a mouthpiece end 103 and a body end 105. In the body end, there is provided an electric power supply in the form of battery 107 and electric circuitry 109. A puff detection system 111 is also provided in cooperation with the electric circuitry 109. In the mouthpiece end, there is provided a liquid storage portion in the form of cartridge 113 containing liquid 115, a capillary wick 117 and a heater 119. Note that the heater is only shown schematically in Figure 1. In the exemplary embodiment shown in Figure 1 , one end of capillary wick 117 extends into cartridge 113 and the other end of capillary wick 117 is surrounded by the heater 119. The heater is connected to the electric circuitry via connections 121 , which may pass along the outside of cartridge 113 (not shown in Figure 1 ). The housing 101 also includes an air inlet 123, an air outlet 125 at the mouthpiece end, and an aerosol-forming chamber 127.
In use, operation is as follows. Liquid 115 is conveyed by capillary action from the cartridge 1 13 from the end of the wick 117 which extends into the cartridge to the other end of the wick which is surrounded by heater 119. When a user draws on the aerosol generating system at the air outlet 125, ambient air is drawn through air inlet 123. In the arrangement shown in Figure 1 , the puff detection system 111 senses the puff and activates the heater 119. The battery 107 supplies electrical energy to the heater 119 to heat the end of the wick 117 surrounded by the heater. The liquid in that end of the wick 117 is vaporized by the heater 119 to create a supersaturated vapour. At the same time, the liquid being vaporized is replaced by further liquid moving along the wick 117 by capillary action. (This is sometimes referred to as "pumping action".) The supersaturated vapour created is mixed with and carried in the air flow from the air inlet 123. In the aerosol-forming chamber 127, the vapour condenses to form an inhalable aerosol, which is carried towards the outlet 125 and into the mouth of the user. 」(明細書12頁6行?35行)
(【0055】 図1に,液体貯蔵部を有する電気作動式エアロゾル生成システムの一例を示す。図1では,このシステムが喫煙システムである。図1の喫煙システム100は,マウスピース側端部103と本体側端部105とを有するハウジング101を含む。本体側端部には,バッテリ107の形の電力供給装置及び電気回路109が備わる。電気回路109と協働する吸煙検出システム111も備わる。マウスピース側端部には,液体115を収容するカートリッジ113の形の液体貯蔵部,毛細管芯117及びヒータ119が備わる。なお,図1では,ヒータを概略的にしか示していない。図1に示す例示的な実施形態では,毛細管芯117の一端がカートリッジ113内に延び,毛細管芯117の他端がヒータ119に取り巻かれる。ヒータは,カートリッジ113の外側に沿って通過できる(図1には図示せず)接続部121を介して電気回路に接続される。ハウジング101は,空気入口123,マウスピース側端部の空気出口125,及びエアロゾル形成チャンバ127も含む。
【0056】 使用時の動作は以下の通りである。液体115が,カートリッジ113からの毛細管作用により,カートリッジ内に延びる芯117の一端からヒータ119に取り巻かれた芯の他端に運ばれる。ユーザが,エアロゾル生成システムの空気出口125を吸引すると,空気入口123を通じて外気が吸い込まれる。図1に示す構成では,吸煙検出システム111が吸煙を感知してヒータ119を作動させる。バッテリ107がヒータ119に電気エネルギーを供給してヒータに取り巻かれた芯117の端部を加熱する。ヒータ119により,この芯117の端部内の液体が気化して過飽和蒸気が発生する。同時に,気化した液体が,毛細管作用により芯117に沿って移動してきた別の液体に置き換わる。(この作用は「ポンプ作用」と呼ばれることもある。)発生した過飽和蒸気が空気入口123からの空気流と混ざり,この空気流に含まれて運ばれる。エアロゾル形成チャンバ127内では,蒸気が凝縮して吸入可能なエアロゾルを形成し,これが出口125の方に運ばれてユーザの口に入る。)
・「However, in a preferred embodiment, the system does include a capillary wick for conveying the liquid from the liquid storage portion to the at least one heating element. The capillary wick can be made from a variety of porous or capillary materials and preferably has a known, pre-defined capillarity. Examples include ceramic- or graphite-based materials in the form of fibres or sintered powders. Wicks of different porosities can be used to accommodate different liquid physical properties such as density, viscosity, surface tension and vapour pressure. The wick must be suitable so that the required amount of liquid can be delivered to the heater. Preferably, the heater comprises at least one heating wire or filament extending around the capillary wick. 」(明細書13頁23?33行)
(【0059】 しかしながら,好ましい実施形態では,システムが,液体貯蔵部から少なくとも1つの加熱要素に液体を運ぶための毛細管芯を含む。毛細管芯は,様々な多孔質材料又は毛管材料から作製することができ,既知の所定の毛細管現象を有することが好ましい。いくつかの例として,繊維又は焼結粉体の形のセラミック又は黒鉛系材料が挙げられる。多孔率の異なる芯を使用して,濃度,粘度,表面張力及び蒸気圧などの様々な液体物理特性に対応することができる。芯は,必要量の液体をヒータに送達できるように適していなければならない。ヒータは,毛細管芯の周りに延びる少なくとも1つの加熱ワイヤ又はフィラメントを含むことが好ましい。)
(2) 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項及び図面の記載からすると,甲1には以下の発明が記載されているといえる(以下「甲1発明」という。)。
(甲1発明)
「バッテリ107と,マウスピース側端部103とを含み,マウスピース側端部103はヒータ119と毛細管芯117とを含み,ヒータ119は毛細管芯117を取り巻いており,毛細管芯117は,多孔質材料から作製することができ,いくつかの例として,焼結粉体の形のセラミックを含むエアロゾル生成システムであって,
ヒータ119は加熱ワイヤ又はフィラメントを含み,
ヒータ119は毛細管芯117の周りに螺旋状に巻かれており,
マウスピース側端部103は,使用の際,負圧領域になるように構成されているエアロゾル形成チャンバ127をさらに含み,
ヒータ119は,エアロゾル形成チャンバ127の内側にあり,
毛細管芯117は長手方向に細長いものであり,
さらに,カートリッジ113と,
ヒータ119から気化された液体が通過する空気出口125とを含み,
毛細管芯117の一端がカートリッジ113内に延び,液体115がカートリッジ113からの毛細管作用により,毛細管芯117の一端からヒータ119に取り巻かれた他端に運ばれるように構成されており,
バッテリ107がヒータ119に電力を供給するためのものであるエアロゾル生成システム。」

2 甲3に記載された事項及び発明
(1) 甲3に記載された事項
・「【0039】
図1?10に示されるように,本発明は,エアロゾル電子たばこを提供するもので,エアロゾル電子たばこは,電池アセンブリ,アトマイザアセンブリ,及びたばこボトルアセンブリを含み,さらに中空で一体的に形成されるシェルaを有する。電池アセンブリはアトマイザアセンブリに接続され共にシェル内に位置する。たばこボトルアセンブリはシェルの一方の端部に取り外し可能に設けられている。たばこボトルアセンブリは,アトマイザアセンブリに接合し,シェルには空気流入口a1が設けられている。
【0040】
この特定の実施形態において,電池アセンブリは電池を含み,且つ,前記電池に接続される,作動インジケータ1,電子回路基板4,及び気流センサ5を有し,さらに,逆止弁7を有する。気流センサ5の信号出力部は,前記電子回路基板4に接続される。電池は充電式電池3であり,充電式電池3は充電可能なリチウムイオンポリマー電池,又は充電可能なリチウムイオン電池のいずれかとすることもできる。他の形態において,前記気流センサ5を,半導体感圧チップキャパシタンスセンサ,又はインダクタンスセンサとしてもよい。充電式電池3は,弾性的に接続された充電プラグ2を有する。充電プラグ2のブレード部21は,シェルaの他方の端部から突出している。」
・「【0042】
図5?8に示されるように,前記アトマイザアセンブリはアトマイザ8であり,アトマイザ8は多孔質部材81及び電熱棒82を有する。多孔質部材81の本体は,流通式アトマイジングチャンバー811を備える。電熱棒82の直径は,アトマイジングチャンバー811の直径より小さい。電熱棒82は,アトマイジングチャンバー811内に位置し,電熱棒82とアトマイジングチャンバー811の内壁の間には,負圧キャビティ83を形成する空間がある。前記多孔質部材81の一方の端部は,前記たばこボトルアセンブリに接合し,図5,7及び8に示されるように,多孔質部材81の他方の端部は,たばこボトルアセンブリに接合する突出部812を有する。突出部812は突出半球状であり,その側面にはアトマイジングチャンバー811に接続する流通孔813を有する。また,突出部812は,テーパー,長方形,又は他の形状をとることも可能である。多孔質部材81は,発泡ニッケル,ステンレス製繊維フェルト,高分子ポリマー発泡体,又は発泡セラミックスから成り,液体吸収及び拡散,たばこボトルアセンブリに格納される液体の吸収能力に大変富んでいる。
【0043】
図6に示されるように,電熱棒82は,円筒821を有する。電熱線822は,円筒821の円筒壁に巻き付けられており,円筒821の両端壁には,多孔質部材81のアトマイジングチャンバー811の内壁に接するようにマンドリル823が各々設けられている。電熱棒とアトマイジングチャンバー811の内壁との間には負圧キャビティ83が位置する。」
・「【0046】
図3及び4に示されるように,たばこボトルアセンブリは中空のたばこホルダーシェルbと,シェルb内に液体収容有孔部材9を有する。液体収容有孔部材9は,PLA繊維,テリレーン繊維,またはナイロン繊維といった液体格納に適した材料から成る。他の形態では,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレン,及びポリカーボネートを用いたプラスティック射出により製造されたプラスティック発泡成型か多層膜厚板コラムとしてもよい。たばこホルダーシェルbの一方の端部はシェルaに差し込まれ,前記たばこホルダーシェルbの外周面には内部通気溝b2が設けられている。たばこホルダーシェルbの他方の端部の表面には,内側に延びる空気路b1があり,空気路b1はシェルbの一方の端部の表面の中央に位置する。
【0047】
図1?9に示されるように,多孔質部材81の一方の端部は,前記液体収容有孔部材9の一端面に対して設けられ,液体収容有孔部材9と接触している。多孔質部材81は,液体収容有孔部材9からたばこ液を吸収する。喫煙者がたばこを吸う際,たばこホルダーシェルbのキャビティは負圧状態にあり,シェルb内で気流センサ5の一方の端部が標準圧キャビティを形成し,その一方で,他方の端部が負圧キャビティを形成する。標準圧キャビティと負圧キャビティ又は高速気流との気圧差により,気流センサ5の磁性鋼54がリレー電極51と接触するようリードリレー52を駆動することが可能となる。・・・たばこボトルアセンブリの液体収容有孔部材9及びアトマイザ8の多孔質部材81は,互いに接続されて液体供給用の毛細含浸が生じる。」
・「【0054】
本出願の第5の好適実施形態においては,図17及び18に示されるように,アトマイザアセンブリは,外枠82を有するアトマイザ8であり,多孔質部材81は外枠82上に設置され,この多孔質部材81には電熱線83が巻き付けられている。流通孔821が,外枠82に設けられ,多孔質部材81には,流通孔821の軸方向側に電熱線83が巻き付けられている。多孔質部材81の一端は,たばこボトルアセンブリに接合している。多孔質部材81は,発泡ニッケル,ステンレス製繊維フェルト,高分子ポリマー発泡体,又は,発泡セラミックスから成る。」
(2) 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項及び図面の記載からすると,甲3には以下の発明が記載されているといえる(以下「甲3発明」という。)。
(甲3発明)
「充電式電池3とアトマイザ8とを含み,アトマイザ8は電熱線83と外枠82と多孔質部材81とを含み,電熱線83は多孔質部材81に巻き付けられており,多孔質部材81は発泡セラミックスからなるエアロゾル電子たばこであって,
電熱線83は多孔質部材81の周りに螺旋状に巻かれており,
アトマイザ8は,使用の際,負圧領域となるように構成されているキャビティをさらに含み,
電熱線83は当該キャビティの内側にあり,
多孔質部材81のうち電熱線83が巻き付けられている部分は,長手方向に細長いものであり,
たばこボトルアセンブリを含み,
さらに,液体収容有孔部材9と,
電熱線83から気化された液体が通過する空気路b1とを含み,
多孔質部材81はたばこボトルアセンブリ内の液体収容有孔部材9から液体を気化させるための電熱線83に吸い上げるようにたばこボトルアセンブリに接合しており,
充電式電池3が電熱線83に通電を行うためのものであるエアロゾル電子たばこ。」

3 甲9に記載された事項及び発明
(1) 甲9に記載された事項
・「【0003】
この特許出願明細書において,「吸入器」という概念は,医療用の吸入器にも,医療用ではない吸入器にも関連するものである。この概念は更に,医薬品及び医薬品としては指定されないような物質を投与するための吸入器にも関連している。それ以外にもこの概念は,例えば欧州特許分類A24F47/00Bに包摂されるような喫煙具及びタバコ代用品にも,それらが蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを利用者に投与するためのものであると指定されている限りは関連することになる。」
・「【0040】
(概念の解説)
「面状複合体」とは,発熱体及び芯が,同一面又は/及び相互に平行な面に配置され,且つ相互に接合されていることを意味するものである。面状複合体の内部における液状材料の毛管輸送は,主として面に沿った向きに行われる。」
・「【0045】
この面状複合体には,本発明に従って,クロス,開放孔を有する繊維構造,開放孔を有する焼結構造,開放孔を有するフォーム,開放孔を有する析出構造のいずれか一つの構造が含まれている。これらの構造は,特に空隙率が高い芯体を具現するためにも適したものである。高い空隙率により,発熱体が発生する熱の大半が細孔内にある液状材料の気化に利用されて,高い気化器効率を達成可能であることが保証される。これらの構造により,具体的には50%を上回る空隙率を実現することができる。開放孔を有する繊維構造は例えばフリースから成るとよいが,このフリースは任意に圧密化され,更にそれに追加して抱合性を改善するために焼結されるようにするとよい。開放孔を有する焼結構造は,例えばテープキャスト法により製造される,粒状,繊維状,又はフレーク状の焼結複合体から成るとよい。開放孔を有する析出構造は,例えばCVD法,PVD法,又は火炎溶射により作製されるとよい。開放孔を有するフォームについては,基本的に商業的に入手可能であり,微孔質仕様の薄手のものについても入手することができる。
【0046】
本発明の変形構成形態の一例において,面状複合体は少なくとも二つの層を有しているが,これらの層には,シート,フォイル,紙,クロス,開放孔を有する繊維構造,開放孔を有する焼結構造,開放孔を有するフォーム,開放孔を有する析出構造の少なくとも一つの構造が含まれている。又その際には,特定の層を発熱体に対して割り当てて,その他の層を芯に対して割り当てるようにするとよい。例えば発熱体は,金属フォイルから成る一つの電気抵抗式発熱体により形成されるとよい。しかし,一つの層に,発熱体の機能も,又芯の機能も受け持たせることも可能であり,例えばそのような層は一方では電気抵抗により加熱に寄与し,他方では液状材料に毛管作用を及ぼすようになっている一つのメタルワイヤクロスから成るとよい。個々の層は,焼結又は溶接等の熱処理により相互に接合されると有利であるが,必ずしもそうする必要はない。例えば複合体は,一つの特殊鋼フォイルと,一つ又は複数の特殊鋼製ワイヤクロス(例えばAISI 304又はAISI 316等の鋼材)の層とから成る焼結複合体として構成されたものであるとよい。・・・
【0047】
本発明の別の類似構成形態においては,複合体を線状に構成し,複合体の少なくとも一つの加熱される部分をチャンバの内部に無接触方式で配置して,この加熱される部分に位置する芯の毛管構造を実質的に露出させることが提案される。芯の毛管構造がこの加熱される部分においては露出することによって,生成される蒸気は妨げられずに芯から流れ出ることができるが,それにより気化容量を増大することができる,若しくは芯内部の限界熱流束を回避することができる。線状複合体の内部における液状材料の毛管輸送は,主として線状複合体の長手方向に行われる。「無接触方式」及び「チャンバ」という概念については,上記で既に説明した。」
・「【0051】
面状又は線状複合体の好ましい構成形態においては,発熱体が少なくとも部分的に芯の内部に組み込まれている。この配置方式には,芯体の内部で熱が直接発生され放出されて,そこで直接,気化対象である液状材料に伝達されるという有利な効果がある。例えば発熱体は,白金,ニッケル,モリブデン,タングステン,タンタル製の導電性薄膜から成るとよいが,この薄膜はPVD法又はCVD法により芯表面に施されるようになっている。芯は,この場合には非導電性材料から?例えば石英ガラスから?成っている。」
・「【0056】
変形構成形態の一例において,芯には,厚さ方向に穴開き加工が施されている。この穴開き加工は,例えばレーザを利用して行われるとよいが,これには次の効果がある。即ち一方では,空隙率が更に増大されることになる。他方では,厚さ方向への流れ抵抗が低下されることになる。特にアルテリアルウィックを使用した場合は,芯内部の液状材料の圧力が気化の間に上昇するが,この穿孔部が圧力を逃がす手段として作用することによって後者の効果が現れる。それにより,芯内部に生成された蒸気によって,液状材料がアルテリアを通って再び液状材料源に押し戻されることで,液状材料の供給が微妙に阻害される怖れを回避している。」
・「【0065】
吸入器コンポーネントは,上記で説明した液体容器の代わりに,開放孔を有する弾性材料から成る,液状材料を浸み込ませた一つの液体リザーバを内蔵してもよいが,その場合は本発明に従って,複合体が,?上記で既に説明したように?両方の板状接点の内の一方と,液体リザーバとの間にサンドイッチ状に挟持されることにより,芯が液体リザーバの内部の液状材料と毛管連結されるようにしている。この開放孔を有する弾性材料は,例えば繊維材料製又は発泡材料製であるとよい。液状材料は,液体リザーバから芯内部に自動的に吸い出されて芯に浸透する。その前提条件として,芯の毛管作用若しくは毛管引力(毛管上昇の高さ)が,液体リザーバの毛管作用を上回ることが必要である。サンドイッチ状に挟み付けることにより,構造上シンプルな,低コストで製造される配列が具現される。」
・「【0071】
本発明の更にもう一つの実施形態によると,吸入器コンポーネントは,一つのマウスピースにより形成された一つのマウスピース開口部を有しており,このマウスピース開口部はチャンバと連通しており,利用者は,このマウスピース開口部を通り投与される蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを受け取るようになっているが,その際には吸入の過程で吸気口とこのマウスピース開口部との間に,マウスピース開口部に向かう流れが構成されて,この流れが少なくとも所々複合体を通過するようになっている。」
・「【0078】
・・・具体例として示されるこの吸入器は,基本的には二つの部品から,詳細には一つの吸入器部品1と,一つの吸入器コンポーネント2とから成っている。吸入器コンポーネント2は,一つのケース3から成り,何よりも特に一つの液体容器4と,煙草のパイプのような一つのマウスピース5を有している。液体容器4には液状材料が収められ,これが吸入器コンポーネント2の内部で気化されて,吸入可能な蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルに変換されるようになっている。生成された蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルは,マウスピース5を介して利用者に投与される。」
・「【0082】
・・・キャリヤケース10は,電気回路11及びエネルギ貯蔵器12を収容する他,回路11とエネルギ貯蔵器12を相互に切り離す一つの隔壁13を有している。電気回路11は,この実施例においては一体型の実装済み回路基板として構成されて,隔壁13の表面に例えば接着により取り付けられている。エネルギ貯蔵器12は,好適にはフラットタイプの一つの充電式バッテリから,例えばリチウムイオン蓄電池又はリチウムポリマ蓄電池から成ると好適である。」
・「【0086】
・・・これらの図に示されるように,交換式吸入器コンポーネント2のケース3の内部には,一つのチャンバ21が形成されている。図11に最も良く示されるように,このチャンバ21を貫いて,本発明に従った一つの面状複合体22が,架橋するように,それに伴い無接触方式で延びている。この面状複合体22は,フォイル状又はストリップ状の平坦な形状を有しており,一つの発熱体と一つの芯とから成っている。芯の毛管構造は,液状材料16の吸上げに適したものとなっている。発熱体及び芯は実に様々な態様で構成されて,相互に接合されたものであるとよい。実施形態の具体例については,後で更に詳細に説明する。面状複合体22は,二つの末端部分のところで二つの導電性の板状接点23の上に支承されると同時に,他にもそれらの表面に電気接触されている。」
・「【0092】
・・・図14aに示される実施形態においては,面状複合体22が四つの層,具体的には一つの金属フォイル31と,その上に焼結により融着された三つのメタルワイヤクロス32とから成っている。」
・「【0096】
付言するが,金属フォイル31も,又このフォイルの上に焼結により融着されたメタルワイヤクロス32も,電気抵抗による発熱に一定の寄与を成すようになっている。この意味で,電気抵抗式発熱体とは,これらの個別抵抗を並列接続したものであると解釈することができる。同様に芯の毛管作用についても,それが生じる理由はワイヤクロス32と金属フォイル31との協働関係により説明されるが,金属フォイル31にワイヤクロス層が一つだけ組み合わされるだけで既に一定の毛管効果を生じることができる。当然ながら本発明は,上述の諸元に限定されない。メタルワイヤクロス32の代わりに,それ以外の開放孔を有する金属製の構造物を金属フォイル31上に配置することも可能だろうし,他にも,例えば石英ガラス等の非導電性材料から成るクロス,又はそれ以外の開放孔を有する構造物を,金属フォイル31上に配置する,若しくはその表面にフリッティングすることも可能だろう。」
・「【0104】
面状複合体22の上述の実施形態は皆,言わせてもらうならば,あくまでも実施例に過ぎないものである。本発明は断じて,これらの実施例に限定されない。例えば面状発泡材料は,金属フォイルの上に焼結により融着させてもよいかもしれない。他にも,?例えばドイツ特許第1,950,439号(ペーター・バツィース(Peter Batzies)他)に準拠して,開放孔を有する一つの多孔質析出層が,一つの金属フォイルの上に施されてもよいかもしれない。最後に面状複合体については,当然ながら,カーボンファイバやグラファイトファイバ等の非金属材料から,例えばクロス及びフリースの形態で,又は,石英ガラスから,例えば粒状又は繊維状の焼結複合体の形態で,これを形成できるかもしれないが,後者の場合は,ガラス表面に施される導電性の薄膜により電気抵抗加熱がもたらされるようにするとよいだろう。石英ガラスは,耐薬品性及び耐熱衝撃性に優れることを特色とする。」
・「【0105】
図16及び図16aには線状複合体39の実施形態の具体例が示されるが,この具体的な実施例においては,相互に平行に配置される三つの線状複合体39a,39b,39c(符号39cは不図示)が備えられている。・・・
【0106】
夫々の線状複合体は,この具体例においては,開放孔を有する焼結構造34を持つワイヤ状の焼結複合体として構成されている。」
・「【0113】
・・・充填材料61は,マウスピース側を第2のワイヤクロス65により限定されるが,このワイヤクロス65は,充填材料が,マウスピース通路66内,ましてや利用者の口腔内に入り込んでしまうのを阻止するようになっている。マウスピースの,この第2のワイヤクロス65とマウスピース通路66との間には,充填材料61を通る流れが,その末端部分においても一様となるようにするための,一つの前室67が形成されている。」
・「【0124】
・・・この圧力センサ99は,中でも特に,プレナムチャンバ27の上流側に一つの流れ絞り部28が配置される限り,吸込み式吸入器における使用に適したものとなっている。そこでは吸込みの過程で,プレナムチャンバ27の内部に,周辺に対して類型的には0?50mbarの範囲内の負圧が生じるようになっている。この時の圧力特性は,ベル形に近似した曲線となる。・・・
・・・
【0126】
・・・集積回路104は,吸入器の全電気信号の大半の演算処理を行って,吸入器の動作にとり重要な,様々な制御機能を実行する。以下ではこれらの制御機能について,詳しく解説することにする。複合体22,39の発熱体への電気エネルギの供給は,中心的な制御機能の一つである。電気エネルギはエネルギ貯蔵器12から送られる。エネルギ貯蔵器12としては,今日の技術水準に基づくと,リチウムポリマ電池及びリチウムイオン電池が,その高いエネルギ密度及び出力密度のために,特に推奨される。発熱体が金属性のものである場合は,開路電圧又は定格電圧が3.7Vであるリチウムポリマ電池又はリチウムイオン電池を一つ使用するだけで間に合うことになる。複合体22,39の発熱体へのエネルギ供給及び電力供給の制御は,バッテリ電圧を,エネルギ供給が継続される時間にわたり,可変通電率でチョッピングして,その結果得られる有効電圧を発熱体に印加することにより,簡単に行うことができる。」
(2) 甲9に記載された発明
甲9に記載された事項及び図面の記載からすると,甲9には以下の発明が記載されているといえる(以下「甲9発明」という。)。
(甲9発明)
「エネルギ貯蔵器12と吸入器コンポーネント2とを含み,吸入器コンポーネント2は発熱体の層と芯の層とからなる面状複合体22を含み,芯は毛管構造を有し,石英ガラスから,例えば粒状又は繊維状の焼結複合体の形態で形成することができる吸入器であって,
吸入器コンポーネント2は,使用の際,負圧領域になるように構成されているチャンバ21をさらに含み,
面状複合体22は,チャンバ21を貫いて延びており,
吸入器コンポーネント2はマウスピース5を有しており,
面状複合体22は長手方向に細長いものであり,
面状複合体22は平坦であり,
さらに,液体容器4と,
マウスピース通路66とを含み,
芯は液体を液体容器4から液体を気化させるための発熱体に吸い上げるように構成されており,
エネルギ貯蔵器12が発熱体にエネルギを供給するためのものである吸入器。」

4 甲1に関し
(1) 本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを,その有する機能に照らして対比すると,甲1発明の「バッテリ107」,「ヒータ119」,「エアロゾル生成システム」は,それぞれ,本件発明1の「動力電池」,「加熱エレメント」,「電子蒸気供給装置」に相当する。
また,甲1発明の「マウスピース側端部103」は,その内部の「ヒータ119」及び「毛細管芯117」により液体を気化させるものであるから,本件発明1の「気化器」に相当する。
そして,甲1発明の「毛細管芯117」は,その機能に照らすと,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に対応する部材であり,両者は,加熱エレメント(ヒータ119)に隣接して位置する部材といえる。
さらに,甲1発明の「毛細管芯117」は,「多孔質材料から作製することができ,いくつかの例として,焼結粉体の形のセラミックを含む」ものであって,硬質であるといえるから(平成29年8月25日付け特許異議申立人意見書添付参考資料1?3参照),本件発明1の「加熱エレメント支持体」と同様に,「多孔性セラミック材を含む硬質」の部材である。
(参考資料1:Wikipedia「セラミックス」のウェブページの印字物,<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9,参考資料2:「岩波 理化学辞典」,4版5刷,株式会社岩波書店,1991年1月10日,p.697,参考資料3:社団法人日本セラミックス協会,「これだけは知っておきたいセラミックスのすべて」,初版1刷,1996年4月26日,p.32-34)
そうすると,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「動力電池と気化器とを含み,この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントに隣接して位置する部材とを含み,前記加熱エレメントに隣接して位置する部材は,多孔性セラミック材を含む硬質の部材である電子蒸気供給装置。」
(相違点)
加熱エレメントに隣接して位置する部材に関し,本件発明1は,「加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体」を有し,「加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し,1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており」,この「加熱エレメント支持体」が,「多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である」のに対し,甲1発明は,「毛細管芯117」を有し,「ヒータ119」は「毛細管芯117」を取り巻いており,「毛細管芯117」は多孔質セラミック材を含む硬質の部材であるものの,「毛細管芯117」がヒータ119を支持するように構成されているか明らかでなく,「ヒータ119」は「毛細管芯117」の外面の上に位置するのか,1つ以上の隙間が「ヒータ119」と「毛細管芯117」の外面との間に設けられているのか明らかでない点。
イ 判断
甲3には,エアロゾル電子たばこにおいて,アトマイザ8の外枠82に配置された多孔質部材81に,電熱線83を巻き付ける点が記載されており(前記2(【0054】,図17,18)),この構造により,電熱線83が多孔質部材81により支持されていることは明らかである。
他方,甲1には,加熱要素が,毛細管芯を取り巻いて支持する点が記載され(前記1(7頁7?8行(甲2【0028】))),毛細管芯117とヒータ119とを接触して配置しうることが開示されている上,毛細管芯117は,その一端がカートリッジ113に延びており(前記1(12頁15?17行(甲2【0055】),図1),多孔質性のセラミックから作製され硬質であるから,ヒータ119の支持を担うことは,技術的に十分可能である。
そして,甲1発明において,ヒータ119を毛細管芯117の周りにどのように配置するかは,構造や材質を考慮して,当業者が適宜に決定することができるから,甲1発明において,ヒータ119を毛細管芯117に巻き付けるように配置し,ヒータ119を毛細管芯117により支持するように構成することは,当業者が容易に想到できる事項である。
その場合,毛細管芯117の外面に開口した多数の孔が,ヒータ119と毛細管芯117との間に存するといえ,ヒータ119とこの「多数の孔」との間は,本件発明1の「隙間」に相当する。すなわち,甲1発明は,本件発明1の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられ(た)」構造と同じ構造を有することとなる。
この点に関し,特許権者は,本件発明1の「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される微視的な隙間とは異なる,と主張している(平成29年7月18日付け意見書13?17頁)。
しかし,本件発明1において,「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される隙間とは異なると規定されているとは認められない。かえって,本件特許明細書には,隙間の大きさが10?500ミクロメートルである旨記載され(【0075】,【0089】),通常の多孔性セラミックの細孔の大きさに照らすと(平成29年8月25日付け特許異議申立人意見書添付参考資料4には50?200ミクロメートルである旨(【0019】),参考資料5には25?150ミクロメートルである旨([00174])記載されている。),「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される隙間とが,物の構造として区別されているものとは認められない。
(参考資料4:特開平11-185937号公報,参考資料5:国際公開第2011/146375号)
また,特許権者は,この点に関し,
・多孔質体が内部に備えるネットワーク構造の細孔は,多孔質体の外面に開口するが,内部において他の細孔につながっているので,外面を構成するものではないから,細孔によって外面に形成される開口を,加熱エレメントと支持体外面との間に隙間を設けるものとみなすことはできない,
・細孔は,細孔形成壁を有するが,細孔形成壁は加熱エレメント支持体の内部に存在し,他の細孔形成壁と連続的に相互接続されるものであって,このような細孔形成壁を支持体外面とみなすことはできず,細孔の内側部分が支持体外面を構成することはできないから,細孔は,支持体外面を有することはない,
とも主張している(平成30年1月9日付け意見書8?11頁)。
しかし,多孔質体の細孔によって外面に形成される開口は,内部においてその他の細孔と連結しているとしても,外面近傍の形状や構造に照らせば(甲9図15a,15c,同意見書[説明図1](10頁)),外面を構成すると十分にいえるものである。
さらに,本件特許明細書には,図23,24に係る加熱エレメント支持体20に関し,加熱エレメント支持体20が基板開口部83を有し,隙間80が,基板開口部83が位置する部位で加熱エレメント17と基板の間に設けられる旨記載されている(【0101】?【0103】)。この基板開口部83は内部に連続する孔であるから,本件発明1は,内部に連続するような孔と加熱エレメントとの間も当該「隙間」として想定しているといえる。このことからすると,細孔によって外面に形成される開口を,その形状・構造に鑑み,加熱エレメントと支持体外面との間に隙間を設けるものとみなすことができるもので,通常の多孔性セラミックの細孔の大きさに照らしても,甲1発明のヒータ119と毛細管芯117の外面に開口した多数の孔との間が,本件発明1の「隙間」に相当することは明らかである。
そうすると,甲1発明に甲3に記載された事項を適用し,上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものと認められる。
本件発明1の奏する効果をみても,甲1発明,甲3に記載された事項から当業者が予測しうる範囲内のものであって,格別ではない。
ウ 以上のとおり,本件発明1は,甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2
甲1発明の「毛細管芯117」は長手方向に細長いものであり,その周りを「ヒータ119」が取り巻いているから,「ヒータ119」及び「毛細管芯117」は,「加熱ロッド」を形成しているといえる。
よって,本件発明2は,甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明6?8
甲1発明の「ヒータ119」は,「加熱ワイヤ又はフィラメント」を含むものであるから,「加熱コイル」であるといえ,「毛細管芯117」の周りに螺旋状に巻かれているものである。
また,「ヒータ119」を「毛細管芯117」に巻き付けるように配置する場合,「ヒータ119」のコイルターンと「毛細管芯117」との間に,「多数の孔」が存在するから,すなわち「隙間」が存在することとなる。
よって,本件発明6?8は,甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明9,10
甲1発明の「エアロゾル形成チャンバ127」は,本件発明9,10の「気化キャビティー」に相当し,その内部に「ヒータ119」を有するものである。
よって,本件発明9,10は,甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明11
甲1発明の「マウスピース側端部103」は,本件発明11の「マウスピースセクション」にも相当する。
よって,本件発明11は,甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明12?15
甲1発明の「毛細管芯117」は長手方向に細長いものである。
甲6には,蒸発面の面積を増やし,蒸発量を増やすために,側面を波形状にする点が記載されており(【0039】,図4),甲1発明において限られた大きさの範囲内で所定の蒸発量を得るといった課題は当然に内在するから,甲1発明においてこのような手法を採用し,「毛細管芯117」の側面に側部流路を設けることは,当業者が適宜なしうるものである。なお,甲6に係る技術は,多孔質材料を利用した蒸発に係る技術である点で,甲1発明と共通しており,加熱手段の有無は適用を阻害するほどの事情とは認められない。
また,「毛細管芯117」は多孔質材料製であるから,外面に形成される開口の形状・構造に照らし,「窪んだ表面」を有するといえる。
よって,本件発明12?15は,甲1発明及び甲3,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7) 本件発明16?21
甲6に記載された「高分子多孔質加湿フィルタ30」を参酌しても,甲1発明において,「毛細管芯117」の断面形状を多角形,幅の狭い矩形とすること,4本又は8本の腕部を有するものも含め,十字形状とすることの動機付けは認められない。
甲7に記載された事項(透湿部材4が円板形である点(図1,2)),甲8に記載された事項(加湿フィルターが円柱形である点(図1,5)),参考資料6(特表2010-504075号公報(平成30年2月16日付け特許異議申立人意見書添付))に記載された事項(毛細管が楕円形断面を有してもよい点(【0032】))を参酌しても,甲1発明において,「毛細管芯117」の断面形状を楕円形とすることは,単なる設計変更とは認められない。
甲5に記載された事項(ウィックは,ねじられたナイロンのより糸を含む点(【0026】))を参酌しても,甲1発明において,「毛細管芯117」の断面形状を3つの円が重なって一緒になったものと等しいものとすることの動機付けは認められない。
よって,本件発明16?21は,甲1発明及び甲3,5?8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(8) 本件発明22?25
甲9発明の「面状複合体22」は長手方向に細長く,平坦な形状を有しており,「平坦な基板」であるといえるが(後記6(7)),この点を,甲1発明の「毛細管芯117」に適用することの動機付けは認められない。
甲10に記載された事項(発熱線材2が基板1を通り抜けている点(【0007】)),甲11に記載された事項(発熱抵抗体2がセラミック体1に包まれている点(【0018】,【0019】,図1,2))を参酌しても,甲1発明において,本件発明23?25のように構成することが,当業者にとって容易であるとは認められない。
よって,本件発明22?25は,甲1発明及び甲3,9?11に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(9) 本件発明26
甲1発明の「カートリッジ113」,「空気出口125」は,それぞれ,本件発明26の「液体貯蔵部」,「空気出口」に相当し,甲1発明の「毛細管芯117」は,本件発明26の「吸い上げエレメント」と同じ機能を発揮している。
よって,本件発明26は,甲1発明及び甲3,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10) 本件発明27
甲1発明の「マウスピース側端部103」は,本件発明27の「気化器」に相当する。
よって,本件発明27は,甲1発明及び甲3,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 甲3に関し
(1) 本件発明1
本件発明1と甲3発明とを,その有する機能に照らして対比すると,甲3発明の「充電式電池3」,「アトマイザ8」,「電熱線83」,「エアロゾル電子たばこ」は,それぞれ,本件発明1の「動力電池」,「気化器」,「加熱エレメント」,「電子蒸気供給装置」に相当する。
また,甲3発明の「多孔質部材81」は,その機能に照らすと,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に対応する部材であり,「アトマイザ8」の「外枠82」に配置され,「電熱線83」が巻き付けられているところ(前記2(【0054】,図17,18)),「電熱線83」は「多孔質部材81」の外面の上に位置しているといえる。
そして,甲3発明の「多孔質部材81」は「発泡性セラミックス」からなり,その材質に照らし硬質であるから(前記参考資料1?3参照),この構造により,「電熱線83」が「多孔質部材81」により支持されていることは明らかである。
よって,甲3発明の「多孔質部材81」は,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に相当し,本件発明1の「加熱エレメント支持体」と同様に,「多孔性セラミック材を含む硬質の支持体」である。
その場合,多孔質部材81の外面に開口した多数の孔が,「電熱線83」と「多孔質部材81」との間に存するといえ,「電熱線83」とこの「多数の孔」との間は,本件発明1の「隙間」に相当する。すなわち,甲3発明は,本件発明1の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられ(た)」構造と同じ構造を有することとなる。なお,本件発明1において,「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される隙間とが,物の構造として区別されているものとは認められない(前記4(1))。
そうすると,本件発明1と甲3発明との間に格別相違するところはないから,本件発明1は甲3発明である,又は甲3発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2
甲3発明の「多孔質部材81」のうち長手方向に細長い部分に「電熱線83」が巻き付けられているから,「電熱線83」及び「多孔質部材81」は,「加熱ロッド」を形成しているといえる。
よって,本件発明2は甲3発明である,又は甲3発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明6?8
甲3発明の「電熱線83」はその形状に照らし,「加熱コイル」であるといえ,「多孔質部材81」の周りに螺旋状に巻かれているものである。
また,「電熱線83」のコイルターンと「多孔質部材81」との間に,「多数の孔」が存在するから,すなわち「隙間」が存在する。
よって,本件発明6?8は甲3発明である,又は甲3発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明9,10
甲3発明の「キャビティ」は,本件発明9,10の「気化キャビティー」に相当し,その内部に「電熱線83」を有するものである。
よって,本件発明9,10は甲3発明である,又は甲3発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明11
本件発明11と甲3発明とは,本件発明11が「マウスピースセクションを含み,前記気化器はマウスピースセクションの一部である」のに対し,甲3発明は,「たばこボトルアセンブリ」を含むものの,「アトマイザ8」は「たばこボトルアセンブリ」の一部ではない点で相違する。
しかし,甲3発明のアトマイザ8の配置位置は当業者が適宜決定しうるものであるから,甲3発明において,「アトマイザ8」を「たばこボトルアセンブリ」の一部とすることは,当業者にとって格別困難なことではない。
よって,本件発明11は,甲3発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明12?15
甲3発明の「多孔質部材81」のうち「電熱線83」が巻き付けられている部分は,長手方向に細長いものである。
甲6には,蒸発面の面積を増やし,蒸発量を増やすために,側面を波形状にする点が記載されており(【0039】,図4),甲3発明において限られた大きさの範囲内で所定の蒸発量を得るといった課題は当然に内在するから,甲3発明においてこのような手法を採用し,「多孔質部材81」の側面に側部流路を設けることは,当業者が適宜なしうるものである。なお,甲6に係る技術は,多孔質材料を利用した蒸発に係る技術である点で,甲3発明と共通しており,加熱手段の有無は適用を阻害するほどの事情とは認められない。
また,「多孔質部材81」は,外面に形成される開口の形状・構造に照らし,「窪んだ表面」を有するといえる。
よって,本件発明12?15は甲3発明である,又は甲3発明及び甲6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7) 本件発明16?21
甲6に記載された「高分子多孔質加湿フィルタ30」を参酌しても,甲3発明において,「多孔質部材81」の断面形状を多角形,幅の狭い矩形とすること,4本又は8本の腕部を有するものも含め,十字形状とすることの動機付けは認められない。
甲7,8,参考資料6に記載された事項(前記4(7))を参酌しても,甲3発明において,「多孔質部材81」の断面形状を楕円形とすることは,単なる設計変更とは認められない。
甲5に記載された事項(前記4(7))を参酌しても,甲3発明において,「多孔質部材81」の断面形状を3つの円が重なって一緒になったものと等しいものとすることの動機付けは認められない。
よって,本件発明16?21は,甲3発明及び甲5?8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(8) 本件発明22?25
甲9発明の「面状複合体22」は長手方向に細長く,平坦な形状を有しており,「平坦な基板」であるといえるが(後記6(7)),この点を,甲3発明の「多孔質部材81」に適用することの動機付けは認められない。
甲10,11に記載された事項(前記4(8))を参酌しても,甲3発明において,本件発明23?25のように構成することが,当業者にとって容易であるとは認められない。
よって,本件発明22?25は,甲3発明及び甲9?11に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(9) 本件発明26
甲3発明の「液体収容有孔部材9」,「空気路b1」は,それぞれ,本件発明26の「液体貯蔵部」,「空気出口」に相当し,甲3発明の「多孔質部材81」は,本件発明26の「吸い上げエレメント」と同じ機能を発揮している。
よって,本件発明26は甲3発明である,又は甲3発明及び甲6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10) 本件発明27
甲3発明の「アトマイザ8」は,本件発明27の「気化器」に相当する。
よって,本件発明27は甲3発明である,又は甲3発明及び甲6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 甲9に関し
(1) 本件発明1
本件発明1と甲9発明とを,その有する機能に照らして対比すると,甲9発明の「エネルギ貯蔵器12」,「吸入器コンポーネント2」,「吸入器」は,それぞれ,本件発明1の「動力電池」,「気化器」,「電子蒸気供給装置」に相当し,甲9発明の「面状複合体22」は「発熱体」の層と「芯」の層とからなるところ,「発熱体」は,本件発明1の「加熱エレメント」と同じ機能を発揮している。
また,甲9発明の「芯」は,その上に「発熱体」が積層されているものであって,この構造により「発熱体」は「芯」により支持されていることは明らかであるから,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に相当する。
そして,甲9発明の「芯」は,「毛管構造を有し,石英ガラスから,例えば粒状又は繊維状の焼結複合体の形態で形成することができる」ものであるから,多孔性のセラミック材と認められる。
その場合,芯の多数の孔が「発熱体」と「芯」の外面との間に存するといえ,「発熱体」とこの「多数の孔」との間は,本件発明1の「隙間」に相当する。すなわち,甲9発明は,本件発明1の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられ(た)」構造と同じ構造を有することとなる。なお,本件発明1において,「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される隙間とが,物の構造として区別されているものとは認められない(前記4(1))。
さらに,甲9発明の「芯」はその材質に照らし硬質といえるから(前記参考資料1?3),本件発明1の「加熱エレメント支持体」と同様に,「多孔性セラミック材を含む硬質の支持体」である。
そうすると,本件発明1と甲9発明との間に格別相違するところはないから,本件発明1は甲9発明である,又は甲9発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2,6?8
甲9発明の「面状複合体22」を「加熱ロッド」とすることの動機付けは認められない。
甲9発明の「発熱体」を「加熱コイル」とすることの動機付けは認められない。
よって,本件発明2,6?8は,甲9発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(3) 本件発明9,10
甲9発明の「チャンバ21」は,本件発明9,10の「気化キャビティー」に相当し,その内部に「面状複合体22」を有するものである。
よって,本件発明9,10は甲9発明である,又は甲9発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明11
甲9発明の「吸入器コンポーネント2」は「マウスピース5」を有しているから,本件発明11の「マウスピースセクション」にも相当する。
よって,本件発明11は甲9発明である,又は甲9発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明12?17
甲9発明の「面状複合体22」は,「チャンバ21を貫いて延びて」いるものであるから,「芯」は長手方向に長いものである。
甲6には,蒸発面の面積を増やし,蒸発量を増やすために,側面を波形状にする点が記載されており(【0039】,図4),甲9発明において限られた大きさの範囲内で所定の蒸発量を得るといった課題は当然に内在するから,甲9発明においてこのような手法を採用し,「芯」の側面に側部流路を設けることは,当業者が適宜なしうるものである。なお,甲6に係る技術は,多孔質材料を利用した蒸発に係る技術である点で,甲9発明と共通しており,加熱手段の有無は適用を阻害するほどの事情とは認められない。
また,「芯」は,多孔質のセラミック材であるから,外面に形成される開口の形状・構造に照らし,「窪んだ表面」を有するといえる。
そして,「面状複合体22」の形状からして,「芯」は断面が幅の狭い矩形であるといえる(甲9図12,13)。
よって,本件発明12?17は甲9発明である,又は甲9発明及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明18?21
甲9に記載された「線状複合体39」(前記3(1)(【0105】,【0106】,図16,16a))を参酌しても,甲9発明において,「芯」の断面形状を楕円形とすることは,単なる設計変更とは認められない。
甲5に記載された事項(前記4(7))を参酌しても,甲9発明において,「芯」の断面形状を3つの円が重なって一緒になったものと等しいものとすることの動機付けは認められない。
甲6に記載された「高分子多孔質加湿フィルタ30」を参酌しても,甲9発明において,「芯」の断面形状を4本又は8本の腕部を有するものも含め,十字形状とすることの動機付けは認められない。
よって,本件発明18?21は,甲9発明及び甲5,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(7) 本件発明22,25
甲9発明の「面状複合体22」は長手方向に細長く,平坦な形状を有しており,「芯」が多孔質のセラミック材であるから,「穴を有する」,「平坦な基板」であるといえる。
よって,本件発明22,25は甲9発明である,又は甲9発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8) 本件発明23,24
甲10,11に記載された事項(前記4(8))を参酌しても,甲3発明において,本件発明23,24のように構成することが,当業者にとって容易であるとは認められない。
(9) 本件発明26
甲9発明の「エネルギ貯蔵器12」,「マウスピース通路66」は,それぞれ,本件発明26の「液体貯蔵部」,「空気出口」に相当し,甲9発明の「芯」は,本件発明26の「吸い上げエレメント」と同じ機能を発揮している。
よって,本件発明26は甲9発明である,又は甲9発明及び甲6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10) 本件発明27
甲9発明の「吸入器コンポーネント2」は,本件発明27の「気化器」に相当する。
よって,本件発明27は甲9発明である,又は甲9発明及び甲6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 まとめ
以上のとおり,本件発明1,2,6?17,22,25?27は,甲3発明,甲9発明である,又は甲1発明,甲3発明,甲9発明及び甲3,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,本件発明18?21,23,24は,甲3発明,甲9発明である,又は甲1発明,甲3発明,甲9発明及び甲5?11に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第6 取消理由3(29条の2)について
1 甲13に記載された事項(訳は,特許異議申立書113?117頁に記載のものによる。)
・「[0001] An electronic cigarette 100 is described in WO 2011/124033 and shown in Figure 1. The electronic cigarette 100 uses a liquid from a liquid supply 112 to form an aerosol. As shown, a wick 106 is in communication with the liquid in the liquid supply 112 and with a heater 104 that is powered by a power supply 114. The heater 104 is operable to heat the liquid to a temperature sufficient to vaporize the liquid material. In use, the heater 104 is activated by a puff sensor when a consumer draws on the mouthpiece 102. The puff sensor electrically connects the heater 104 to the power supply 114. As the smoker takes a puff, air is drawn in through at least one air inlet. The air travels to a central air passage 108 which directs air to the heater 104 as air passes through the central passage 108 from the air inlet. The heater 104 heats the liquid material to a temperature sufficient to vaporize the material and form an aerosol. The aerosol is drawn into the mouthpiece 102.」
(電子シガレット100は,WO2011/124033及び図1に示されている。電子シガレット100は,液体供給源112からの液体をエアロゾル形成に用いる。図示されているように,ウィック106は,液体供給源112内にある液と,電源114によって電力が供給されるヒータ104と,に接続される。ヒータ104は,液体材料を気化させるのに十分な温度に液体を加熱できる。使用時において,消費者がマウスピース102を吸引したときに,パフセンサによってヒータ104が活性化される。喫煙者がパフを行うと,少なくとも1つの空気吸入口を介して空気が吸引される。空気が空気吸入口から中央通路108を通過するときに,空気は,空気を加熱器104に導く中央空気通路108に移動する。ヒータ104は,液体材料を気化させるのに十分な温度に材料を加熱しエアロゾルを形成する。エアロゾルは,マウスピース102内に吸引される。」
・「 [0021] As shown in Figures 2, 5, 7,9, 10 and 14, a novel electronic cigarette60 comprises a replaceable cartridge (or first section) 70 and a reusable fixture (or second section) 72, which are coupled together at a threaded joint 205 or by other convenience such as a snug-fit, detent, clamp and/or clasp. The cartridge 201 includes an outer tube 6 (or casing) extending in a longitudinal direction and an inner tube 62 coaxially positioned within the outer tube 6. 」
(図2,5,7,9,10及び14に示すように,新規な電子シガレット60は,交換可能なカートリッジ(又は第1の部分)70と,再使用可能な固定具(又は第2の部分)72とを有し,それらは,ねじ継ぎ手205の位置で,又は他のぴったりフィット,回り止め,クランプ及び/又は留め具などの便利なものによって,互いに連結される。カートリッジ201は,長手方向に延びる外側チューブ6(又はケーシング)と,外側チューブ6内に同軸に配置される内側チューブ62と,を有する。)
・「[0022] ・・・The wick 28 is preferably a fibrous and/or porous material which is capable of drawing liquid via capillary action. A power supply 1 in the fixture 203 is operable to apply voltage across the heater 14.」
(ウィック28は,毛管作用によって液体を引き出すことができ,好ましくは繊維状及び/又は多孔質材料である。固定具203の電源1は,ヒータ14に電圧を印加するように動作可能である。)
・「[0023] The electronic cigarette 60 further includes a mouthpiece 8 having at least two off-axis, preferably diverging outlets 24.」
(電子シガレット60はさらに,マウスピース8を含み,マウスピース8は,少なくとも2つの軸外の,好ましくは発散出口24を有する。)
・「[0029] In one embodiment, the heater 14 comprises a wire coil which at least partially surrounds the wick 28. In that embodiment, preferably the wire is a metal wire and/or the heater coil may extend fully or partially along the length of the wick 28. The heater coil may extend fully or partially around the circumference of the wick 28. In another embodiment, the heater coil is not in contact with the wick 28.」
(一実施形態では,ヒータ14は,ウィック28を少なくとも部分的に取り囲む。その実施形態では,ワイヤは,金属ワイヤ及び/又はヒータコイルであり,ウィック28の周囲に完全に又は部分的に延びてもよい。別の実施形態では,ヒータコイルは,ウィック28と接触していない。)
・「[0031] In the preferred embodiment, the wick comprises a porous ceramic wick or ceramic fibers. As noted above, the wick 28 is at least partially surrounded by the heater 14. Moreover, in the preferred embodiment, the wick 28 extends through opposed openings in the inner tube such that each end of the wick 28 is in contact with the liquid supply reservoir 22.」
(好ましい実施形態では,ウィックは,多孔質セラミックウィック又はセラミック繊維である。上述したように,ウィック28は,少なくとも部分的にヒータ14に囲まれている。さらに,好ましい実施形態では,ウィック28は,内側チューブ内の対向する開口部を通り,ウィック28の各端部が液体供給リザーバ22と接触する。)
・「[0032] In the preferred embodiment, the wick 28 is fibrous. For example,the wick 28 may include a plurality of fibers or threads. The fibers or threads may be generally aligned in a direction perpendicular to the longitudinal direction of the electronic cigarette. In the preferred embodiment, the structure of the wick 28 is formed of a porous ceramic material through which the liquid can be transported to the heater 14 by capillary action. The wick 28 can include fibers having a crosssection which is generally cross-shaped, clover-shaped, Y-shaped or in any other suitable shape.」
(好ましい実施形態では,ウィック28は繊維状である。例えば,ウィック28は,複数の繊維又は糸を含むことができる。繊維又は糸は,一般的には,電子タバコの長手方向に垂直な方向に整列しうる。好ましい実施形態では,ウィック28の構造は,多孔性セラミック材料から形成され,これを通って液体が毛細管現象によりヒータ14に輸送されうる。ウィック28は,一般に十字形,クローバー形,Y形又は他の任意の適切な形,の断面を有する繊維を含みうる。)
・「[0034] Instead of using a wick, the heater can be a porous material which incorporates a resistance heater formed of a material having a high electrical resistance capable of generating heat quickly.」
(ウィックを使用する代わりに,ヒータは,熱を急速に発生できる高抵抗性を有する材料で形成した抵抗ヒータを組み込む多孔質材料とすることができる。)
・「[0038] The battery can be a Lithium-ion battery or one of its variants, for example a Lithium-ion polymer battery.」
(電池は,リチウムイオン電池又はその変形例のうちの1つ,例えば,リチウムイオン高分子電池,であってもよい。)
・「[0053] Preferably, the mouthpiece 8 is integrally affixed within the tube 6 of the cartridge 70.」
(マウスピース8は,好ましくは,カートリッジ70のチューブ6内に一体的に固定されている。)
・「[0054] In a preferred embodiment, the electronic cigarette 60 also includes various embodiments of air flow diverter means which are shown in Figures 5, 7 and 9. The air flow diverter means is operable to manage air flow at or about around the heater so as to abate a tendency of drawn air to cool the heater which could otherwise lead to diminished aerosol output.」
(好ましい実施形態では,電子シガレット60はまた,図5,7及び9に示される空気流そらし手段の様々な実施形態を含む。空気そらし手段は,吸入空気がヒータを冷却する傾向(そうでなければこれがエアロゾル出力を低下させる)を緩和するように,ヒータ又はヒータ周りの空気流を管理するように動作可能である。)

2 甲14に記載された事項及び発明
(1) 甲14に記載された事項
・「【0012】
(シガレット構造)
次に図1,2及び3につき説明すると,第1セクション70は,長手方向に延在する外側チューブ(ケーシング)6と,外側チューブ6内に同軸状に位置決めした内側チューブ(チムニー)62とを有する。好適には,上流側のガスケット(又はシール)15のノーズ部分61(図3A参照)を内側チューブ62の上流端部部分65に嵌合するとともに,同時にガスケット15の外径部67は,外側ケーシング6の内面に液密シールを生ずる。」
・「【0037】
(吸口端部インサート)
図2,3a,4,5,6,7及び17につき説明すると,第1セクション70には,少なくとも2個の発散出口通路24(例えば,3,4,5個又はそれ以上,好適には,2?10個の出口又はそれ以上,より好適には6?8個の出口,より好適には2?6個の出口通路24,又は4個の出口通路24)を有する吸口端部インサート8を設ける。」
・「【0045】
上述したように,吸口端部インサート8は,エアロゾルが電子シガレットから吸込まれるときエアロゾルの方向が分散及び変化して口内に充満する感覚を生ずるようにする。エアロゾルが形成されるとき,エアロゾルは内側チューブ62の中心チャネル21を通過し,また下流側ガスケット10の中心チャネル84を通過する。初期プロトタイプのパネル検査において,幾人かのパネリストが,複数個の発散出口通路24及び約1.3mm直径の中心チャネル84を有する吸口端部インサートを有するよう構成した電子シガレットを喫煙するとき唇における「熱い」という感覚を報告した。しかし,その代わりに中心チャネル84の内径が約2.6mmであった電子シガレットでは,「熱い」感覚の報告はほぼなかった。」
・「【0051】
(回路並びにヒータ一定性能,ホットスポット及びカルボニル軽減を改善する合金)
好適な実施形態において,電源1は,電子シガレット60に配置したバッテリを有し,アノード47aをカソード49aの下流に配置する。第2セクション72のバッテリアノードポスト47bは,好適には,バッテリアノード47aに接触するようにする。」
・「【0057】
好適には,少なくとも1個の空気流入口45(図1参照)をパフセンサ16に隣接配置し,パフセンサ16が喫煙者のパフを示す空気流を感知し,電源1及びヒータ作動ライト48を作動させ,ヒータ14が動作していることを示す。」
・「【0073】
一実施形態において,ヒータ14は,ウィック28を少なくとも部分的に包囲するワイヤコイルを有する。装置の実施形態において,好適には,ワイヤは金属ワイヤとする,及び/又はヒータコイルはウィック28の長さの全体又は部分に沿って延在させることができる。ヒータコイル14はウィック28の周囲の全体又は部分に沿って延在させることができる。他の実施形態において,ヒータコイルはウィック28に接触させない。
【0074】
好適には,ヒータ14はウィック28内の液体に熱伝導によって加熱する。代案として,ヒータ14からの熱を液体に熱伝導素子によって伝達するか,又はヒータ14が熱を電子シガレット60に吸込まれて入来する外気に伝達し,この外気が対流によって液体を加熱する。
【0075】
一実施形態において,ウィック28は,液体を吸込む能力を有するセラミックフィラメントによるセラミックウィックを有する。上述したように,ウィック28はヒータ14により少なくとも部分的に包囲される。さらに,好適な実施形態において,ウィック28は内側チューブ62における互いに対向する溝孔63に貫通させて,ウィック28の各端部が液体供給源領域22(図2参照)に接触するようにする。
【0076】
好適な実施形態において,ウィック28は,フィラメントを有し,またガラスフィラメントの束を有する。例えば,ウィック28は複数のフィラメントを含むものとする。フィラメント又はスレッドは概して電子シガレットの長手方向に直交する(横)方向に整列させる。好適には,ウィック28は,1?8本のフィラメント,より好適には,2?6本のフィラメントを有する。好適な実施形態において,ウィック28は3本のストランド(撚線)を有し,各ストランドは,互いに撚り合わせた複数のガラスフィラメントを有する。
【0077】
好適な実施形態において,ウィック28の構成は,液体をヒータ14に毛細管作用により輸送するフィラメントで形成する。ウィック28は,ほぼ十字状,クローバー形状,Y字形状,又は任意な他の適当な形状の断面を有するフィラメントを有するものとすることができる。
【0078】
好適には,ウィック28は任意の適当な材料又は材料の組合せを有する。適当な材料の例としては,ガラス,セラミックベース又はグラファイトベースの材料とする。さらに,ウィック28は,エアロゾルを発生する液体であって,例えば,濃度,粘度,表面張力及び蒸気圧力のような異なる物理的特性を有する液体を受容する任意の適当な毛細管吸込み作用を有することができる。ウィック28の毛細管特性は,液体の特性との兼ね合いにより,ウィック28はヒータ14の領域で常に湿潤し,ヒータ14の過加熱を確実に回避する。
【0079】
ウィック28を使用する代わりに,ヒータ14は,熱を急速に発生できる高抵抗性を有する材料で形成した抵抗ヒータを組込む多孔質材料とすることができる。」
(2) 甲14に記載された発明
甲13及び甲14に記載された事項及び図面の記載からすると(甲14に係る出願は,甲13に係る出願に基づいて優先権を主張するものである。),甲14に係る出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面には以下の発明が記載されているといえる(以下「甲14発明」という。)。
「電源1と第1セクション70とを含み,第1セクション70はヒータコイル14とウィック28とを含み,ヒータコイル14はウィック28を包囲し,ウィック28は,多孔性セラミック材を含み,十字状形,クローバー形状,Y字形状又は任意な他の適当な形状の断面を有するフィラメントを有するものとすることができる電子シガレットであって,
ヒータコイル14はワイヤコイルであり,
ヒータコイル14はウィック28の周りを螺旋状に包囲しており,
第1セクション70の内側チューブ62は,使用時に消費者に吸引されて負圧領域になるように構成されている気化キャビティーをさらに含み,
ヒータコイル14は,内側チューブ62の内側にあり,
第1セクション70は吸口端部インサート8を有し,
ウィック28は長手方向に細長いものであり,
さらに液体供給リザーバ22と,
ヒータコイル14から気化された液体が通過する発散出口24とを含み,
ウィック28は,液体を液体供給リザーバ22から液体を気化させるためのヒータコイル14に吸い上げるように構成されており,
電源1がヒータコイル14に電力を供給するためのものである電子シガレット。」

3 対比及び判断
(1) 本件発明1
ア 本件発明1と甲14発明とを,その有する機能に照らして対比すると,甲14発明の「電源1」,「第1セクション70」,「ヒータコイル14」,「電子シガレット」は,それぞれ,本件発明1の「動力電池」,「気化器」,「加熱エレメント」,「電子蒸気供給装置」に相当する。
また,甲14発明の「ウィック28」は,その機能に照らすと,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に対応する部材である。
ところで,「ウィック28」は内側チューブ内の対向する孔を貫通し,各端部が液体供給「リザーバ22」と接触するように配置され(前記2(【0075】)),「ヒータコイル14」が「ウィック28」を包囲するものであるところ,「他の実施形態において,ヒータコイルはウィック28に接触させない。」(甲14【0074】)と記載されていることからすると,甲14発明はヒータコイル14をウィック28に接触させる,すなわち,「ヒータコイル14」が「ウィック28」の外面の上に位置している形態も想定していることがわかる(この点は,甲1,3,9に記載されているように,加熱手段と芯とを接触して配置することが従前より広く知られていることからも,窺い知ることができる。)。
そして,「ウィック28」は「多孔性セラミック材」からなり,その材質に照らし硬質であるから(前記参考資料1?3参照),「ヒータコイル14」が「ウィック28」の外面の上に位置している構造により,「ヒータコイル14」が「ウィック28」により支持されていることは明らかである。
よって,甲14発明の「ウィック28」は,本件発明1の「加熱エレメント支持体」に相当し,同様に,「多孔性セラミック材を含む硬質の支持体」である。
イ その場合,ウィック28の外面に開口した多数の孔が,「ヒータコイル14」と「ウィック28」の外面との間に存するといえ,「ヒータコイル14」とこの「多数の孔」との間は,本件発明1の「隙間」に相当する。すなわち,甲14発明は,本件発明1の「1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられ(た)」構造と同じ構造を有することとなる。なお,本件発明1において,「1つ以上の隙間」と「多孔性セラミック」の細孔によって形成される隙間とが,物の構造として区別されているものとは認められない(前記第5・4(1))。
ウ また,甲14発明の「ウィック28」は,「十字状形,クローバー形状,Y字形状又は任意な他の適当な形状の断面を有するフィラメントを有する」から,その場合,「ヒータコイル14」と「ウィック28」との間には,必然的に隙間が形成されることとなる。なお,本件発明1において,「1つ以上の隙間」とこのような隙間とが,物の構造として区別されているものとは認められない。
エ そうすると,本件発明1と甲14発明との間に格別相違するところはないから,本件発明1は甲14発明と同一である。
(2) 本件発明2
甲14発明の「ウィック28」は長手方向に細長いものであり,「ヒータコイル14」が包囲しているものであるから,「ヒータコイル14」及び「ウィック28」は,「加熱ロッド」を形成しているといえる。
よって,本件発明2は,甲14発明と同一である。
(3) 本件発明6?8
甲14発明の「ヒータコイル14」は「ワイヤコイル」であるから,「加熱コイル」であり,「ウィック28」の周りに螺旋状に包囲しているものである。
また,「ヒータコイル14」のコイルターンと「ウィック28」との間に,多孔性セラミック材に係る「多数の孔」が存在するから,すなわち「隙間」が存在し,「ウィック28」が「十字状形,・・・の断面を有するフィラメントを有する」から,「隙間」が存在する。
よって,本件発明6?8は甲14発明と同一である。
(4) 本件発明9,10
甲14発明の「気化キャビティー」は,本件発明9,10の「気化キャビティー」に相当し,その内部に「ヒータコイル14」を有するものである。
よって,本件発明9,10は甲14発明と同一である。
(5) 本件発明11
甲14発明の「第1セクション70」は「吸口端部インサート8」を有しているから,本件発明11の「マウスピースセクション」にも相当する。
よって,本件発明11は甲14発明と同一である。
(6) 本件発明12?15
甲14発明の「ウィック28」は,長手方向に細長いものである。
甲14発明の「ウィック28」は,「十字状形,クローバー形状,Y字形状又は任意な他の適当な形状の断面を有するフィラメントを有する」から,その場合,「ヒータコイル14」と「ウィック28」との間には,必然的に長手方向に延びた隙間が形成されることとなり,流路となりうるものである。
また,「ウィック28」は,外面に形成される開口の形状・構造や「十字状形,・・・の断面を有するフィラメントを有する」ことに照らし,「窪んだ表面」を有するといえる。
よって,本件発明12?15は甲14発明と同一である。
(7) 本件発明16,17,19?21
甲14発明の「ウィック28」が,「十字状形,クローバー形状,Y字形状又は任意な他の適当な形状の断面を有するフィラメントを有する」ことを考慮しても,「ウィック28」の断面は,多角形,3つの円が重なって一緒になったものと等しい,十字形状であるとは認められない。
よって,本件発明16,17,19?21は甲14発明と同一であるとは認められない。
(8) 本件発明22,24
甲14発明の「ウィック28」は,平坦な基板であるとは認められないから,本件発明22,24は甲14発明と同一であるとは認められない。
(9) 本件発明26
甲14発明の「液体供給リザーバ22」,「発散出口24」は,それぞれ,本件発明26の「液体貯蔵部」,「空気出口」に相当し,甲14発明の「ウィック28」は,本件発明26の「吸い上げエレメント」と同じ機能を発揮している。
よって,本件発明26は甲14発明と同一である。
(10) 本件発明27
甲14発明の「第1セクション70」は,本件発明27の「気化器」に相当する。
よって,本件発明27は甲14発明と同一である。

4 まとめ
以上のとおり,本件発明1,2,6?15,26,27は,甲14発明と同一である。
また,本件発明16,17,19?22,24は,甲14発明と同一であるとは認められない。
なお,本件発明18,23,25は,取消理由3(異議申立ての理由【4】)の対象とされていない。

第7 取消理由4(36条4項1号)及び取消理由5(36条6項2号)について
本件訂正により,訂正前の「支持外方面」なる記載に関する点の不備は解消された。
他に,発明の詳細な説明,特許請求の範囲の記載に不備は認められない。

第8 本件特許の請求項3?5についての特許異議の申立てについて
前記第2のとおり,本件訂正が認められるので,本件特許の請求項3?5についての特許異議の申立ては,その対象が存在しないものとなった。
よって,本件特許の請求項3?5についての特許異議の申立ては,不適法であって,その補正をすることができないものであることから,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により,却下すべきものである。

第9 むすび
以上のとおり,本件特許明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
本件発明1,2,6?17,22,25?27は,甲3発明,甲9発明である,甲1発明,甲3発明,甲9発明及び甲3,6に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである,又は甲14発明と同一であるから,本件発明1,2,6?17,22,25?27に係る特許は特許法29条又は29条の2の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
本件発明18?21,23,24に係る特許は,特許法29条又は29条の2の規定に違反してされたものとは認められず,同法36条4項1号又は6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは認められないから,取消理由1?5により,取り消すことはできない。他に本件発明18?21,23,24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項3?5についての特許異議の申立ては,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子蒸気供給装置
【技術分野】
【0001】
本明細書は電子蒸気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子紙巻きタバコなどの電子蒸気供給装置は、通常紙巻きタバコと同じサイズであり、マウスピースに吸引力を加えることによって液体貯蔵部からニコチンを含む蒸気をユーザーに吸引させることによって機能する。いくつかの電子蒸気供給装置は、ユーザーが吸い込みによる力を加えてヒーターコイルを加熱して、液体を気化させる際に作動する気流センサーを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある実施態様では動力電池と気化器とを含む電子蒸気供給装置が提供され、この気化器は加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み、隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持体外面を有してもよく、隙間を加熱エレメントと支持体外面との間に設けてもよい。さらに加熱エレメントと加熱エレメント支持体は、加熱ロッドを形成してもよい。
【0004】
別の実施態様では加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含む蒸気供給装置に使用するための気化器が提供され、隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。
【0005】
別の実施態様では液体貯蔵部と、液体を液体貯蔵部から液体を気化させるための加熱エレメントに吸い上げるように構成された吸い上げエレメントと、加熱エレメントによって製せられた気化された液体のための空気出口と、加熱エレメント支持体とを含む電子蒸気供給装置が提供され、隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。
【0006】
電子蒸気供給装置は加熱エレメントに動力を供給するための動力電池を含んでもよい。
【0007】
本開示がより良好に理解されるようにそして例示的実施態様がいかにして実施されるかを示すために添付図面を参照して以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子紙巻きタバコの側面斜視図である。
【図2】垂直コイルを有する電子紙巻きタバコの略式断面図である。
【図3】平行コイルを有する電子紙巻きタバコの略式断面図である。
【図4】加熱エレメントコイルの側面斜視図である。
【図5】窪んだ表面を有する円筒状の加熱エレメント支持体の側面斜視図である。
【図6】加熱エレメントコイルと窪んだ表面を有する加熱エレメント支持体の側面斜視図である。
【図7】溝を有する加熱エレメント支持体の側面斜視図である。
【図8】加熱エレメントコイルと溝を有する加熱エレメント支持体の側面斜視図である。
【図9】図7の加熱エレメント支持体の端面図である。
【図10】図8の加熱エレメントコイルと支持体の端面図である。
【図11】コイルと溝を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図12】コイルと環状の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図13】コイルと楕円の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図14】コイルと平坦な断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図15】コイルと4つの腕部がクロスした断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図16】コイルと8つの腕部がクロスした断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図17】コイルと八角形の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図18】コイルと三角形の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図19】コイルと正方形の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図20】コイルと六角形の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図21】コイルと五角形の断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図22】コイルと3つの円が一緒になった断面を有する加熱エレメント支持体の端面図である。
【図23】加熱エレメント支持体基板と加熱エレメントの前面図である。
【図24】加熱エレメント支持体とこれを通り抜ける加熱エレメントの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ある実施態様において動力電池と気化器とを含む電子蒸気供給装置が提供され、気化器は加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み、隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。
【0010】
加熱エレメントと支持体を別個に有することによって、加熱エレメントを小さく構成することが可能になる。このことは小さい加熱エレメントは効率的に加熱されるので有利である。加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に隙間を設けることによって、液体を気化のために隙間領域に集め、貯蔵することができる。また隙間は液体を加熱エレメントに吸い上げる機能を果たすことができる。また加熱エレメントと支持体との間に隙間を設けることは、露出する加熱エレメントの表面積が大きくなることを意味し、これにより加熱および気化のための表面積を大きくすることができる。
【0011】
加熱エレメントは加熱エレメント支持体の外側にあってもよい。さらに加熱エレメント支持体は支持体外面を含んでもよく、隙間を加熱エレメントと支持体外面との間に設けてもよい。
【0012】
加熱エレメントと加熱エレメント支持体は加熱ロッドを形成してもよい。加熱エレメント支持体は、例えば硬質の支持体であってもよく、および/または加熱エレメント支持体は中実であってもよい。硬質または中実の支持体によりより脆弱であるが、より効率的な加熱エレメントを使用することができるという利点が得られる。この支持体と加熱エレメントを組み合わせることにより、より頑丈な加熱ロッドが得られる。
【0013】
加熱エレメント支持体は多孔性であってもよい。例えば、加熱エレメント支持体は多孔性セラミック材を含んでもよい。多孔性の支持体を用いることにより液体を多孔性の支持体に貯蔵することができる。従って液体を簡単に加熱エレメントによる気化のために支持体と接触する加熱エレメントに移行させることができる。また加熱エレメントと支持体との間の隙間によって液体を多孔性の支持体から加熱エレメント上にそして貯蔵のための多孔性の支持体の両方に吸い上げることが可能になる。
【0014】
加熱エレメントは加熱エレメント支持体の周りに形成することができる。例えば加熱エレメントは加熱コイルであってもよい。さらに加熱コイルは支持体の周りに螺旋状に巻かれてもよい。加熱コイルは、例えばワイヤーコイルであってもよい。コイルターンと加熱エレメント支持体との間に隙間があってもよい。コイルターンと加熱エレメント支持体との間に複数の隙間があってもよい。
【0015】
支持体に巻かれた加熱エレメントを有することによって頑丈な構造が得られる。また支持体はワイヤーが支持体に巻かれるようにすることでコイルの作製を容易にする。コイルターンと支持体との間に隙間を設けることによって、液体を隙間に吸い上げ、気化のために隙間に保持することができる。特に液体をコイルターンの間のスペースおよびコイルターンと支持体との間の隙間内に吸い上げることができる。
【0016】
気化器はさらに気化キャビティーを含んでもよく、これは使用の際負圧領域になるように構成されている。加熱エレメントの少なくとも一部は、気化キャビティーの内側にあってもよい。さらに電子蒸気供給装置はマウスピースセクションを含んでもよく、気化器はマウスピースセクションの一部であってもよい。
【0017】
特にユーザーが電子蒸気供給装置を介して吸入した際に負圧領域になる気化キャビティーに加熱エレメントを有することによって、液体は直接気化され、ユーザーによって吸入される。
【0018】
加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであってもよい。さらに加熱エレメント支持体はこれに沿って長手方向に延びた側部流路を有してもよい。これとは別にまたはこれに加えて加熱エレメント支持体は、これに沿って長手方向に延びた側部流路を2つ以上含んでもよい。さらに側部流路は、加熱エレメント支持体の周りに実質的に均一に配分されてもよい。
【0019】
支持体の流路は支持体と加熱エレメントとの間に自然に隙間を供する。特にこのような隙間は加熱エレメントが支持体に巻かれたコイルである場合に形成されやすい。従って流路は液体を吸い上げ、貯蔵するために必要な隙間を供する。また露出する加熱エレメントの領域は流路に沿って増加し、これはこの領域での気化の増加につながる。
【0020】
加熱エレメント支持体は非円筒状であってもよい。加熱エレメント支持体は円筒状ではないが、円筒状のようなものであってもよい。加熱エレメント支持体は非円形の断面を有してもよい。さらに加熱エレメント支持体は窪んだ表面を有してもよい。
【0021】
コイルは形成されるときはワイヤーの剛性によって自然に円筒状になるので、非円筒状の支持体はコイルと支持体との間に自然に隙間ができるという利点を有する。これらの隙間は吸い上げ、液体の貯蔵および気化の増加につながる。窪んだ表面を有する円筒状の支持体は、窪んだ領域で支持体とコイルとの間に隙間を供する。横断面は長尺の長さ方向に対して直角な断面である。
【0022】
加熱エレメント支持体の断面形状は多角形であってもよい。例えば、加熱エレメント支持体の断面形状は3つの辺、4つの辺、5つの辺、6つの辺または8つの辺を有してもよい。
【0023】
これとは別に加熱エレメント支持体の断面形状は幅の狭い矩形であってもよい。これとは別に加熱エレメント支持体の断面形状は楕円形であってもよい。これとは別に加熱エレメント支持体の断面形状は3つの円が重なって一緒になったものと等しいものでもよい。
【0024】
これとは別に加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であってもよい。加熱エレメント支持体の断面形状は、4本の腕部がクロスした形状、または8本の腕部がクロスした形状であってもよい。
【0025】
これらの支持体の種々の形状によって、支持体とこれに巻かれた加熱エレメントコイルとの間に自然に隙間が生じる。これらの隙間は吸い上げ、液体の貯蔵および気化の増加につながる。
【0026】
これとは別に加熱エレメント支持体は平坦な基板であってもよい。さらに加熱エレメントは加熱エレメント支持体の一表面上にあってもよい。さらに加熱エレメントは加熱エレメント支持体を通り抜けてもよい。加熱エレメントは加熱エレメント支持体に包まれてもよい。さらに加熱エレメント支持体は穴を有する基板であってもよい。
【0027】
別の実施態様では液体貯蔵部と、液体を液体貯蔵部から液体を気化させるための加熱エレメントに吸い上げるように構成された吸い上げエレメントと、気化された液体が通過する空気出口と、加熱エレメント支持体とを含む電子蒸気供給装置が提供され、隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体との間に設けられている。電子蒸気供給装置は加熱エレメントに動力を供給するための動力電池を含んでもよい。
【0028】
図1を参照するとマウスピース2と胴体3とを含む電子紙巻きタバコ1の形状の電子蒸気供給装置1の実施態様が示されている。電子紙巻きタバコ1は円筒形状を有する従来の紙巻きタバコのような形状である。マウスピース2は空気出口4を有し、電子紙巻きタバコ1は、ユーザーが電子紙巻きタバコ1のマウスピース2を口に入れて、空気出口4を介して空気を引き込みながら吸入すると作動する。マウスピース2および胴体3は両方とも円筒状であり、互いに同軸に接続して従来の紙巻きタバコの形状になるように構成されている。
【0029】
図2は図1の電子紙巻きタバコ1の一例を示している。胴体3はバッテリー装置5部分と気化器6部分を含む2つの着脱自在の部品を含み、マウスピース2は液体貯蔵部7を含む。電子紙巻きタバコ1は組み立てられた状態に示されており、着脱自在の部品2、5、6がマウスピース2、気化器6、バッテリー装置5の順番で接続される。液体は液体貯蔵部7から気化器6へと吸い上げられる。バッテリー装置5はバッテリー装置5と気化器6との相互電気接続を介して気化器6に電力を供給する。気化器6は吸い上げられた液体を気化させ、その蒸気が空気出口4を通って出る。液体は例えばニコチン溶液であってもよい。
【0030】
バッテリー装置5は、バッテリー装置ケーシング8と、動力電池9と、電気接触部10と制御回路11とを含む。
【0031】
バッテリー装置ケーシング8は、第1端部12で開口した中空の円筒である。例えば、バッテリー装置ケーシング8はプラスチックであってもよい。電気接触部10はケーシング8の第1端部12に位置し、動力電池9および制御回路11はケーシング8の空洞内に位置する。動力電池9は、例えばリチウム電池であってもよい。
【0032】
制御回路11は圧力センサー13とコントローラー14とを含み、動力電池9によって動力が供給される。コントローラー14は圧力センサー13とインターフェースを取り、動力電池9から気化器6への電力の供給を制御するように構成されている。
【0033】
気化器6は気化器ケーシング15と、電気接触部16と、加熱エレメント17と、吸い上げエレメント18と、気化キャビティー19と、加熱エレメント支持体20とを含む。
【0034】
気化器ケーシング15は空気入り口21を有する両端が開口した中空の円筒である。例えば気化器ケーシング15はアルミニウム合金で形成してもよい。空気入り口21は気化器ケーシング15の第1端部22で気化器ケーシング15に設けられた穴である。電気接触部16は気化器ケーシング15の第1端部22に位置している。
【0035】
気化器ケーシング15の第1端部22は、バッテリー装置ケーシング8の第1端部12取り外し自在に接続されていて、気化器の電気接触部16がバッテリー装置の電気接触部10に電気的に接続されている。例えば、装置1は気化器ケーシング15がねじ式接続によってバッテリー装置ケーシング8に接続するように構成してもよい。
【0036】
図4および6に例示するように加熱エレメント17は、一本のワイヤーで形成され、加熱エレメントコイル23および2本のリード線24を含む。例えば、加熱エレメントはニクロムで形成されてもよい。コイル23はワイヤーが軸Aを中心に螺旋に形成されるワイヤーの部分である。コイル23の両端でワイヤーはその螺旋形状から離れ、リード線24を供する。リード線24は電気接触部16に接続され、これにより動力電池9によって供される電力をコイル23に送るように構成されている。
【0037】
コイル23のワイヤーの直径は約0.12mmである。コイル23の長さは約25mmであり、内径は約1mmであり、螺旋ピッチは約420ミクロメートル。コイルの連続するターン間の空隙は従って約300ミクロメートルである。
【0038】
加熱エレメント17は気化器ケーシング15の第2端部25の方に位置し、コイル23の軸Aが気化器ケーシング15の円筒軸Bに直角になるように配向されている。加熱エレメント17は、従って電子紙巻きタバコ1の長手方向軸Cに対して直角である。さらに装置1は、ユーザーが装置で吸い込みを行うときに装置を流れる空気流に対してコイルの軸Aが実質的に直交するように構成されている。ユーザーによる装置1の使用については下記でより具体的に説明する。
【0039】
吸い上げエレメント18はマウスピース2の液体貯蔵部7と接触する気化器ケーシング15から延びている。吸い上げエレメント18は、マウスピース2の液体貯蔵部7から加熱エレメント17へと方向Wに液体を吸い上げるように構成されている。より具体的には吸い上げエレメント18は、コイル23の第1端部から延び、気化器ケーシング15の第2端部25を通過し、コイルの第2端部に戻る多孔性材料からなる弓状部を含む。例えば、多孔性材料はニッケル発泡体であってもよく、発砲体の多孔度は後述する吸い上げが生じるような多孔度である。
【0040】
気化キャビティー19は、液体が気化される気化器ケーシング15の空洞にある領域である。加熱エレメント17、加熱エレメント支持体20および吸い上げエレメント18の一部26は気化キャビティー19内に配置されている。
【0041】
加熱エレメント支持体20は、加熱エレメント17を支持し、加熱エレメント17による液体の気化を促すように構成されている。加熱エレメント支持体20は内方支持体であり、図5および6に例示されている。支持体20はセラミック材からなる硬質の筒である。支持体20は加熱エレメントコイル23の螺旋内に同軸に配置され、コイル23より僅かに長く、これにより支持体20の両端がコイル23の両端から突出している。円筒状支持体20の直径は螺旋の内径とほぼ同じである。その結果、コイル23のワイヤーは支持体20と実質的に接触し、これにより支持され、コイル23の形状の維持しやすくなる。加熱エレメントコイル23は、加熱エレメント支持体20の周りにコイル状に巻かれる、または支持体を包む。支持体20と加熱エレメント17のコイルとの組み合わせによって図5および6に例示するように加熱ロッド27を供する。加熱ロッドについては図5および6を参照して下記に詳しく説明する。
【0042】
支持体20の表面28は、液体の供給を良好にしながら、吸い上げエレメント18から気化のための加熱エレメント17に液体を吸い上げるルートを供給する。支持体20の表面28は吸い上げられた液体を加熱エレメント17の熱に晒す表面領域も提供する。
【0043】
マウスピース2はマウスピースケーシング29を含む。マウスピースケーシング29は、中空の円筒であり、第1端部30で開口し、ケーシングの第2端部31の穴である空気出口4を含む。マウスピースケーシングは、例えば、プラスチックで形成してもよい。
【0044】
液体貯蔵部7はマウスピースケーシング29の空洞内に配置されている。例えば、液体貯蔵部は発泡体を含んでもよく、発砲体は気化を意図する液体で満たされる。液体貯蔵部7の断面積は、マウスピースケーシングの空洞より小さく、これによりマウスピースケーシング29の第1端部30と空気出口4との間に空気経路32を形成する。
【0045】
マウスピースケーシング29の第1端部30は、気化器ケーシング15の第2端部25に取り外し自在に接続されており、これにより液体貯蔵部7は気化器6から突出した吸い上げエレメント18の部分33と接触する。
【0046】
液体は液体貯蔵部7から吸い上げエレメント18によって吸収され、吸い上げエレメント18を介してルートWに沿って吸い上げられる。その後液体は、吸い上げエレメント18から加熱エレメント17のコイル23上におよびコイルに沿って、そして支持体20上におよび支持体に沿って吸い上げられる。
【0047】
マウスピースケーシング29、気化器ケーシング15およびバッテリー装置ケーシング8の隣接する中空の内部によって形成された連続した内方キャビティー34が電子紙巻きタバコ1内に存在する。
【0048】
使用の際、ユーザーはマウスピース2の第2端部31で吸い込みを行う。これにより電子紙巻きタバコ1の内方キャビティー34内、特に空気出口4で空気圧の降下が生じる。
【0049】
内方キャビティー34内の圧力降下は圧力センサー13によって検知される。圧力センサーによる圧力降下の検知に応じて、コントローラー14は動力電池9から電気接触部10、16を介して加熱エレメント17に電力を供給する。加熱エレメント17のコイルは、従って熱くなる。コイル17が熱くなると、気化キャビティー19内の液体が気化される。より具体的には加熱エレメント17上の液体が気化され、加熱エレメント支持体20上の液体が気化され、加熱エレメント17の間近にある吸い上げエレメント18の部分26の液体も気化させてもよい。
【0050】
また内方キャビティー34内の圧力降下によって、電子紙巻きタバコ1の外側からの空気が空気入り口21から内方キャビティーを介してルートFに沿って空気出口4へと引き込まれる。空気がルートFに沿って引き込まれると、気化キャビティー19と空気経路32を通過する。気化された液体は、従って空気経路32に沿った空気の移動によって搬送され、空気出口4から出て、ユーザーに吸入される。
【0051】
気化された液体を含む空気が空気出口4に搬送されると、蒸気の一部は、濃縮し、空気流内に微細な液滴の懸濁液を製する。さらにマウスピース2でユーザーが吸い込みを行うと気化器6を通って移動する空気が吸い上げエレメント18、加熱エレメント17および/または加熱エレメント支持体20から微細な液滴を持ち上げることができる。出口を通過した空気は、従って微細な液滴と気化された液体のエアロゾルを含む。
【0052】
また気化キャビティー19内の圧力降下は、液体貯蔵部7から吸い上げエレメント18に沿って気化キャビティー19内への液体の吸い上げをさらに促進させる。
【0053】
図3は図1の電子紙巻きタバコ1のさらなる例を示す。胴体3は単一の部品であり、ここではバッテリー装置50と称し、マウスピース2は液体貯蔵部51と気化器52とを含む。電子紙巻きタバコ1は組み立てられた状態に示されており、着脱自在の部品2、50が接続されている。液体は液体貯蔵部51から気化器52へと吸い上げられる。バッテリー装置50は、バッテリー装置50とマウスピース2との相互電気接続を介して気化器52に電力を供給する。気化器52は吸い上げられた液体を気化し、その蒸気は空気出口4から出る。液体は、例えばニコチン溶液であってもよい。
【0054】
バッテリー装置50は、バッテリー装置ケーシング53と、動力電池54と、電気接触部55と制御回路56とを含む。
【0055】
バッテリー装置ケーシング53は第1端部57で開口した中空の円筒である。例えば、バッテリー装置ケーシングはプラスチックであってもよい。電気接触部55はケーシング53の第1端部57に位置し、動力電池54および制御回路56はケーシング53の空洞内に位置している。動力電池54はリチウム電池であってもよい。
【0056】
制御回路56は、空気圧センサー58とコントローラー49とを含み、動力電池54によって動力が供給される。コントローラー49は、空気圧センサー58とインターフェースを取り、電気接触部55を介した動力電池54から気化器52への電力の供給を制御するように構成されている。
【0057】
マウスピース2はさらにマウスピースケーシング59と電気接触部60とを含む。マウスピースケーシング59は、第1端部61で開口し、ケーシング59の第2端部62の穴である空気出口4を有する中空の円筒である。またマウスピースケーシング59は、ケーシング59の第1端部61の近くに位置する穴である空気入り口63を含む。例えば、マウスピースケーシングはアルミニウムで形成してもよい。
【0058】
電気接触部60はケーシング59の第1端部に位置している。さらにマウスピースケーシング59の第1端部61は、バッテリー装置ケーシング53の第1端部57に取り外し自在に接続されていて、マウスピースの電気接触部60はバッテリー装置の電気接触部55と電気的に接続されるようになっている。例えば、装置1はマウスピースケーシング59がバッテリー装置ケーシング53にねじ止め接続によって接続するように構成してもよい。
【0059】
液体貯蔵部51は中空のマウスピースケーシング59内でケーシング59の第2端部62の方に配置されている。液体貯蔵部51は液体内に配置される多孔性材料からなる円筒状の管である。液体貯蔵部51の外周はマウスピースケーシング59の内周と合致する。中空の液体貯蔵部51は空気経路64を供する。例えば、液体貯蔵部51の多孔性材料は発泡体を含んでもよく、発砲体は気化される液体で実質的に満たされる。
【0060】
気化器52は加熱エレメント17と、吸い上げエレメント65と、加熱エレメント支持体20と気化キャビティー66とを含む。
【0061】
吸い上げエレメント65は多孔性材料からなる円柱管であり、マウスピースケーシング59内でケーシング59の第1端部61の方に配置されていて、液体貯蔵部51と当接するようになっている。吸い上げエレメント65の外周はマウスピースケーシング59の内周と合致する。吸い上げエレメント65は液体を方向Wにマウスピース2の液体貯蔵部51から加熱エレメント17に吸い上げるように構成されている。吸い上げエレメント65の多孔性材料は、例えば、ニッケル発泡体であってもよく、その発砲体の多孔度は、上述した吸い上げが生じるような多孔度である。液体Wが液体貯蔵部6から吸い上げエレメント65に吸い上げられると、液体を吸い上げエレメント65の多孔性材料に貯蔵することができる。従って、吸い上げエレメント65は液体貯蔵部51の延長部である。
【0062】
図4および6に例示するように加熱エレメント17は一本のワイヤーで形成され、加熱エレメントコイル23および2本のリード線24を含む。例えば、加熱エレメントはニクロムで形成されてもよい。コイル23はワイヤーが軸Aを中心に螺旋に形成されるワイヤーの部分である。コイル23の両端でワイヤーはその螺旋形状から離れ、リード線24を供する。リード線24は電気接触部16に接続され、これにより動力電池9によって供される電力をコイル23に送るように構成されている。
【0063】
コイル23のワイヤの直径は約0.12mmである。コイル23の長さは約25mmであり、内径は約1mmであり、螺旋ピッチは約420ミクロメートル。コイルの連続するターン間の空隙は従って約300ミクロメートルである。
【0064】
加熱エレメント17は吸い上げエレメント65の管の内側に位置し、コイル23の軸がマウスピースケーシング59の円筒軸Bに直角になるように配向されている。加熱エレメント17の軸Aは、従って電子紙巻きタバコ1の長手方向軸Cに対して直角である。さらに装置1は、ユーザーが装置で吸い込みを行うときに装置を流れる空気流Fに対してコイルの軸Aが実質的に直交するように構成されている。ユーザーによる装置1の使用については下記でより具体的に説明する。
【0065】
図3Aはコイル23でのマウスピース2の断面を示している。図3Aに例示するように吸い上げエレメント65の断面輪郭は、吸い上げエレメント65の内面65bの部分65aがコイル23と接触するように構成されている。これにより吸い上げエレメント65からコイル23に吸い上げられる液体のルートが設けられる。
【0066】
気化キャビティー66は液体が気化されるマウスピースケーシング59の空洞内のである。加熱エレメント17、加熱エレメント支持体20および吸い上げエレメント65の一部67は気化キャビティー66内に配置されている。
【0067】
加熱エレメント支持体20は、加熱エレメント17を支持し、加熱エレメント17による液体の気化を促すように構成されている。加熱エレメント支持体は内方の支持体であり、図5および6に例示されている。支持体20はセラミック材からなる硬質の筒である。支持体20は、加熱エレメントコイル23の螺旋内に同軸に配置され、コイル23より僅かに大きくなっているので、支持体20の両端はコイル23の両端から突出している。円筒状支持体20の直径は螺旋の内径とほぼ同じである。その結果、コイル23のワイヤは支持体20と実質的に接触し、これにより支持され、コイル23の形状を維持しやすくなる。加熱エレメントコイル23は、加熱エレメント支持体20の周りにコイル状に巻かれる、または支持体を包む。支持体20と加熱エレメント17のコイルとの組み合わせによって図5および6に例示するように加熱ロッド27を供する。加熱ロッドについては図5および6を参照して下記にて詳しく説明する。
【0068】
支持体20の表面28は、液体の供給を良好にしながら、吸い上げエレメント18から気化のための加熱エレメント17に液体を吸い上げるルートを供給する。支持体20の表面28は吸い上げられた液体を加熱エレメント17の熱に晒す表面領域も提供する。
【0069】
マウスピースケーシング59およびバッテリー装置ケーシング53の隣接する中空の内部によって形成された連続した内方キャビティー68が電子紙巻きタバコ1内に存在する。
【0070】
使用の際、ユーザーはマウスピース59の第2端部62で吸い込みを行う。これにより電子紙巻きタバコ1の内方キャビティー68内、特に空気出口4で空気圧の降下が生じる。
【0071】
内方キャビティー68内の圧力降下は、圧力センサー58によって検知される。圧力センサーによる圧力降下の検知に応じて、コントローラー49は動力電池54から電気接触部55、60を介して加熱エレメント17に電力を供給する。加熱エレメント17のコイルは、従って熱くなる。コイル17が熱くなると、気化キャビティー66内の液体が気化される。より具体的には加熱エレメント17上の液体が気化され、加熱エレメント支持体20上の液体が気化され、加熱エレメント17の間近にある吸い上げエレメント65の部分67の液体も気化させてもよい。
【0072】
また内方キャビティー68内の圧力降下によって、電子紙巻きタバコ1の外側からの空気が空気入り口63から内方キャビティーを介してルートFに沿って空気出口4へと引き込まれる。空気がルートFに沿って引き込まれると、気化された液体を拾いながら気化キャビティー66そして空気経路64を通過する。気化された液体は、従って空気経路64に沿った空気の移動によって搬送され、空気出口4から出て、ユーザーに吸入される。
【0073】
気化された液体を含む空気が空気出口4に搬送されると、蒸気の一部は、濃縮し、空気流内に微細な液滴の懸濁液を製する。さらにマウスピース2でユーザーが吸い込みを行うと気化器52を通って移動する空気が吸い上げエレメント65、加熱エレメント17および/または加熱エレメント支持体20から微細な液滴を持ち上げることができる。出口を通過した空気は、従って微細な液滴と気化された液体のエアロゾルを含む。
【0074】
図5および6を参照すると、加熱エレメント支持体20の円周方向外面28に窪みが設けられていて、複数の窪み70または凹部が表面28に存在している。複数の窪み70が設けられていることを考慮すると、支持体20は実質的に円筒状である。
【0075】
加熱エレメント20とコイル23との間のコイル23が表面28の窪み70と重なるところで隙間80が形成されている。より具体的には、コイル23のワイヤーが表面28の窪み70上を通過するところで、隙間80がワイヤーが実質的にその螺旋形状を維持することによりワイヤーとワイヤーの真下の表面28の領域との間に設けられている。隙間80は、従って支持体20の表面28とコイル23のワイヤーとの間でコイルの軸Aから半径方向に配置されている。各隙間80でのワイヤーと表面28との間の距離は、10ミクロメートル?500ミクロメートルの範囲内である。隙間80は、隙間80での毛管現象によって支持体20の長さ上およびこれに沿った液体の吸い上げを促進するように構成されている。
【0076】
円周面28の窪み70および/または隙間80は、気化する前に支持体20の表面28に液体が集まる領域を供し、これにより気化する前に貯蔵される液体用の領域を供する。また窪み70は、支持体20の表面積を大きくし、よって気化のためにコイル23に液体を晒すために支持体20によって供される表面積がさらに大きくなる。また窪み70は、これらの領域において気化する量を増加させるためにより多くのコイル23を露出させる。
【0077】
上述した実施態様に多くの変更例および変形例が可能である。例えば、図7?24は加熱エレメント17と加熱エレメント支持体20の異なる構成を示している。それぞれの場合において、1つ以上の隙間80が支持体20の外面28とコイル23のワイヤの間に設けられている。これらの隙間80は既に説明した利点を供する。図7?22はいかにして隙間80が支持体20の断面の輪郭において1つ以上の内方のずれ81によって供され、ずれの無い箇所の輪郭がコイル23の断面の内部輪郭となるかを示している。
【0078】
図7?10は加熱エレメント支持体20の異なる例を示している。図7および9は加熱エレメント支持体20単独を異なる角度から示している。図8および10は、支持体20に巻かれたコイル23を含む加熱ロッド29を異なる角度から示している。ここで加熱エレメント支持体20は実質的に円筒状であり、支持体20の外面28に支持体の長さに沿って延びた流路82または長手方向に延びた溝82を有する。各流路82は加熱エレメント支持体20の面に支持体20の長さに沿って延びた窪み70、81である。4つの流路82が加熱エレメント支持体20の円周に等間隔で配されている。
【0079】
図8および図10に示すようにコイル23が加熱エレメント支持体20に巻かれると、隙間80が経路82の箇所の支持体20の表面28と経路82と重なるコイル23の部分のワイヤとの間に設けられる。
【0080】
図11?22それぞれは、コイル23が周囲に巻かれ、コイル23と加熱エレメント支持体20との間に支持体20の断面形状によって供される1つ以上の隙間80を有する長尺の加熱エレメント支持体20の例を示している。各例は以下に説明するように異なる断面形状を有する。断面とは支持体20の長手方向に対して直角の面である。
【0081】
図11に示す例では加熱エレメント支持体20は、その長さに沿って延びた1つの流路82を含む窪み70を有する実質的に円筒状である。従って加熱エレメント支持体20の断面形状は、流路82のために小さい凹み81を有する円形である。隙間80は、コイル23が流路82と重なる箇所に設けられている。
【0082】
図12に示す例では加熱エレメント支持体20は、大部分が円形の断面形状を有する。これは長手方向に延びた窪み70、81を有する他の円筒形状に対応し、加熱エレメント支持体20の長さに沿って延びた平坦な面を有する。コイル23が加熱エレメント支持体20の周りに巻かれているが、コイル23のワイヤーの剛性によりコイル23が加熱エレメント支持体20の平坦な領域での形状をたどることはない。従って隙間80が平坦な部分の領域において加熱エレメント支持体20とコイル23との間に設けられる。
【0083】
図13に示す例では加熱エレメント支持体20は、楕円形の断面形状を有する。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれているが、コイル23のワイヤーの剛性によりコイル23はこの楕円より、丸みを帯びた形状を形成し、これにより加熱エレメント支持体20とコイル23との間に隙間80が設けられる。
【0084】
図14に示す例では加熱エレメント支持体20は断面形状が平坦な矩形である平坦な棒である。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれているが、コイル23のワイヤーの剛性によりコイル23はその矩形より、丸みを帯びた形状を形成し、これにより加熱エレメント支持体20とコイル23との間に隙間80が設けられる。
【0085】
図15に示す例では加熱エレメント支持体20は、4本の腕部が交差した断面形状を有し、これらの腕部は均一な間隔をおいて配されている。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれており、隙間80が隣接する腕部部分とコイル23との間に設けられる。
【0086】
図16に示す例では加熱エレメント支持体20は、8本の腕部が交差した断面形状を有し、これら腕部は均一な間隔をおいて配されている。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれ、隙間80が隣接する腕部部分とコイル23との間に設けられる。
【0087】
図17?21は、断面形状が多角形である加熱エレメント支持体20の例を示している。これらの例はそれぞれ辺の数が異なり、図17は八角形、図18は三角形、図19は正方形、図20は六角形、そして図21は五角形の断面形状を示している。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれ、断面形状の角に対応する支持体20の縁部で加熱エレメント支持体20と接触する。このようにしてより多くの辺を有する多角形は、コイル23と接触し、コイル23と加熱エレメント支持体20との間により多くの数の小さい隙間80を供する。これにより加熱エレメント支持体20とコイル23との間に最適量の接触および最適な隙間80の形成を供する断面形状の選択が可能になる。
【0088】
図22に示す例では加熱エレメント支持体20は、3つの円が重なって1つになった断面形状を有する。コイル23は加熱エレメント支持体20の周りに巻かれ、隙間80が隣接する円部分とコイル23との間に設けられている。
【0089】
各隙間80でのワイヤと表面28との間の距離は、上述したように10ミクロメートル?500ミクロメートルの範囲内である。しかしながら、その他の大きさの隙間80も可能である。
【0090】
コイル23のワイヤの厚みは、上述したように約0.12mmである。しかしながら、その他の直径のワイヤーも使用可能である。例えば、コイル23のワイヤの直径は0.05mm?0.2mmの範囲内であってもよい。さらにコイル23の長さは上述したように異なってもよい。例えば、コイル23の長さは20mm?40mmの範囲内でもよい。
【0091】
コイル23の内径は上述したように異なってもよい。例えば、コイル23の内径は0.5mm?2mmの範囲内でもよい。
【0092】
コイル23の螺旋ピッチは上述したように異なってもよい。例えば、ピッチは120ミクロメートル?600ミクロメートルの間であってもよい。
【0093】
さらにコイルターン間の隙間の距離は約300と上記で説明したが、異なる隙間距離も可能である。例えば、隙間は20ミクロメートル?500ミクロメートルの間であってもよい。
【0094】
隙間80の大きさは上述したように異なってもよい。
【0095】
流路82が加熱エレメント支持体20に設けられている場合、1つまたは4つ以外の数の流路を設けてもよい。
【0096】
流路82は円筒状の支持体20の表面28に沿った長手方向に延びた溝として説明した。しかしながら、流路82は、例えば、これとは別にまたは加えて円筒状の支持体20の表面28で支持体の軸を中心に螺旋状になった螺旋溝であってもよい。これとは別にまたは加えて流路82は支持体20の表面28の周囲に位置するリングであってもよい。
【0097】
いくつかの実施態様では支持体20は、コイル23の両端から突出するようにコイル23より僅かに長いと説明した。これとは別に支持体20はコイル23より短く、従ってコイルの境界内で全体が収まるようにしてもよい。
【0098】
加熱エレメント17はコイル23であることに限定されず、ジグザク形状などの別のワイヤー形状であってもよい。
【0099】
加熱ロッド29は長尺の加熱エレメント支持体20を含み、これにコイル23が巻かれ、多角形である支持体20の断面形状によりコイル23と加熱エレメント支持体20との間に設けられたいつ以上の隙間を有すると上述している。この場合、加熱エレメント支持体の断面形状20は、例えば3辺、4辺、5辺、6辺または8辺の多角形であってもよい。
【0100】
加熱エレメント支持体20は円筒状であればよく、円筒でなくてもよい。
【0101】
図23および24はさらに別の種類の加熱エレメント支持体20の例を示している。ここでもいずれの場合において、支持体20は支持体20と加熱エレメント17との間に自然に隙間80ができる形状になっている。これらの隙間80によって吸い上げ、液体の貯蔵および気化がしやすくなる。
【0102】
図23には加熱エレメント支持体20と加熱エレメント17が示されている。加熱エレメント支持体20は、実質的に平坦な基板であり、加熱エレメント17が基板の表面上にジグザク形状に配置されており、所定の基板の表面積に対して加熱エレメント17を最大限にしている。加熱エレメント支持体20は基板開口部83を有し、加熱エレメント17が基板開口部83と重なると、隙間80が加熱エレメント支持体20と加熱エレメント17との間に形成される。
【0103】
図24は図23に示したものと類似する例を示している。加熱エレメント支持体20は、基板開口部83とジグザク状の加熱エレメント17を含む平坦な基板である。この例では基板開口部83は、ジグザク状の加熱エレメント17の転換点に位置し、加熱エレメント17のワイヤーは対応するターンの箇所で基板開口部83に出入りし、これにより加熱エレメント17が平坦な基板の両面に位置する。隙間80が基板開口部83が位置する所で加熱エレメント17と基板との間に設けられている。
【0104】
いくつかの実施態様では加熱エレメント支持体20を多孔性セラミックなどの多孔性材料から作製して支持体20内で液体が貯蔵されるようにしてもよい。
【0105】
ここでは電子紙巻きタバコ1である電子蒸気供給装置を説明した。しかしながら、他の種類の電子蒸気供給装置も可能である。
【0106】
電子紙巻きタバコ1は上述した部材の順番に限定されず、制御回路11、56が装置の先端に位置する、または液体貯蔵部7、51がマウスピース2ではなく、電子紙巻きタバコ1の胴体3に位置するなど他の順番も採用することができる。
【0107】
気化器6、52は電子紙巻きタバコ1の胴体3の一部を形成してもよい。
【0108】
加熱エレメント支持体20が基板である場合、加熱エレメント17は基板に巻かれてもよい。さらに加熱エレメント17は加熱エレメント支持体20を出入りするように通過してもよい。
【0109】
圧力センサー13、58をここでは説明している。いくつかの実施態様では気流センサーをこれとは別にまたは加えてユーザーが装置1で吸い込みを行ったことを検知するために使用してもよい。
【0110】
ここでの気化キャビティー19、66についての記載を気化領域の記載として置き換えてもよい。
【0111】
図2の電子紙巻きタバコ1は、マウスピース2、気化器6およびバッテリー装置5といった3つの着脱自在の部品を含むものとして説明されている。これとは別に電子紙巻きタバコ1は、これらの部品2、6、5を1つの一体型ユニットとして組み合わせた構成としてもよい。言い換えればマウスピース2、気化器6およびバッテリー装置5は着脱自在でなくてもよい。さらなる変形例としてマウスピース2と気化器6は、1つの一体型ユニットであってもよく、または気化器6およびバッテリー装置5は、1つの一体型ユニットであってもよい。
【0112】
図3の電子紙巻きタバコ1は、マウスピース2とバッテリー装置50を含む胴体といった2つの着脱自在の部品を含むものとして説明されている。これとは別に電子紙巻きタバコ1はこれらの部品2、50を1つの一体型ユニットとして組み合わせた構成としてもよい。言い換えればマウスピース2および胴体3は、着脱自在でなくてもよい。
【0113】
いくつかの例を示し、説明したが、当業者には当然のことながら種々の変形例および変更例が本発明の範囲から逸脱せずに可能である。
【0114】
種々の問題の対処と技術の発展のため、本開示全体は種々の実施形態を例示的に示しており、これらの実施形態では特許請求された発明が実践され、優れた電子蒸気供給装置、を提供することができる。本開示の利点および特徴は実施形態の単なる代表的な具体例であり、包括的でも排他的でもない。これらは特許請求された特徴の理解と教示の単なる補助に提供されている。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は本開示を特許請求の範囲に規定されたとおりに限定するあるいは特許請求の範囲の均等物に限定すると考えるべきではなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用しても改変してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された構成要素、成分、特徴、部品、工程、手段他の組合せを適切に備えても、これらで構成されても、基本的にこれらで構成されてもよい。また本開示は、現在は特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明を含む。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は、多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である電子蒸気供給装置。
【請求項2】
前記加熱エレメントと加熱エレメント支持体は、加熱ロッドを形成することを特徴とする請求項1記載の電子蒸気供給装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記加熱エレメントは加熱コイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項7】
前記加熱コイルは加熱エレメント支持体の周りに螺旋状に巻かれていることを特徴とする請求項6記載の電子蒸気供給装置。
【請求項8】
コイルターンと加熱エレメント支持体との間に前記1つ以上の隙間があることを特徴とする請求項6または7記載の電子蒸気供給装置。
【請求項9】
前記気化器は、使用の際、負圧領域になるように構成されている気化キャビティーをさらに含むことを特徴とする請求項1、2、6乃至8いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項10】
前記加熱エレメントの少なくとも一部は、気化キャビティーの内側にあることを特徴とする請求項9記載の電子蒸気供給装置。
【請求項11】
マウスピースセクションを含み、前記気化器はマウスピースセクションの一部であることを特徴とする請求項1、2、6乃至10いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項12】
前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであることを特徴とする請求項1、2、6乃至11いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項13】
前記加熱エレメント支持体はこれに沿って長手方向に延びた1つ以上の側部流路を有することを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項14】
前記加熱エレメント支持体は、これに沿って長手方向に延びた側部流路を2つ以上含み、これら側部流路は、加熱エレメント支持体の周りに実質的に均一に配分されていることを特徴とする請求項13記載の電子蒸気供給装置。
【請求項15】
前記加熱エレメント支持体は窪んだ表面を有することを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項16】
前記加熱エレメント支持体の断面形状は多角形であることを特徴とする請求項12記載の電子蒸気供給装置。
【請求項17】
前記多角形は幅の狭い矩形であることを特徴とする請求項16記載の電子蒸気供給装置。
【請求項18】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり、前記加熱エレメント支持体の断面形状は楕円形であることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項19】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり、前記加熱エレメント支持体の断面形状は3つの円が重なって一緒になったものと等しいことを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項20】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり、前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項21】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は長手方向に細長いものであり、前記加熱エレメント支持体の断面形状は十字形状であり、前記十字形状は4本の腕部または8本の腕部を有することを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項22】
前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であることを特徴とする請求項1、2、6乃至11いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項23】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり、前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体を通り抜けていることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項24】
動力電池と気化器とを含み、この気化器は加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体とを含み、加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、1つ以上の隙間が加熱エレメントと加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、前記加熱エレメント支持体は平坦な基板であり、前記加熱エレメントは加熱エレメント支持体に包まれていることを特徴とする電子蒸気供給装置。
【請求項25】
前記加熱エレメント支持体は穴を有する基板であることを特徴とする請求項22、23または24記載の電子蒸気供給装置。
【請求項26】
さらに液体貯蔵部と、
液体を液体貯蔵部から液体を気化させるための加熱エレメントに吸い上げるように構成された吸い上げエレメントと、
加熱エレメントから気化された液体が通過する空気出口とを含み、
前記動力電池が前記加熱エレメントに動力を与えるためのものであることを特徴とする請求項1、2、6乃至25いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項27】
加熱エレメントと加熱エレメント支持体とを含み、
加熱エレメントは加熱エレメント支持体の支持体外面の上に位置し、
1つ以上の隙間が加熱エレメントと該加熱エレメントを支持するように構成された加熱エレメント支持体の支持体外面との間に設けられており、
前記加熱エレメント支持体は、多孔性セラミック材を含む硬質の支持体である、請求項1、2、6乃至26いずれか1項記載の電子蒸気供給装置に使用される気化器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-25 
出願番号 特願2015-522060(P2015-522060)
審決分類 P 1 651・ 113- ZDA (A24F)
P 1 651・ 536- ZDA (A24F)
P 1 651・ 16- ZDA (A24F)
P 1 651・ 121- ZDA (A24F)
P 1 651・ 537- ZDA (A24F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 宮崎 賢司白土 博之  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 窪田 治彦
莊司 英史
登録日 2016-07-01 
登録番号 特許第5960358号(P5960358)
権利者 ニコベンチャーズ ホールディングス リミテッド
発明の名称 電子蒸気供給装置  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 平木 祐輔  
代理人 平木 祐輔  
代理人 渡辺 敏章  

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