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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1346349
審判番号 不服2017-18404  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-11 
確定日 2018-11-15 
事件の表示 特願2014- 56041「RFIDタグ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日出願公開、特開2015-179363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成26年3月19日の出願であって,平成29年7月5日付けで拒絶の理由が通知され,同年9月8日に手続補正書が提出され,同年9月15日付けで拒絶査定(謄本送達日同年9月20日)がなされ,これに対して同年12月11日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成30年1月11日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 平成29年12月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年12月11日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について
A 補正の内容
平成29年12月11日になされた手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成29年9月8日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲,

「 【請求項1】
タグ本体(12)の内部に制御ユニット(13)と、リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル(14)とが設けられ、タグ本体(12)に書き換え可能な表示部(15)を備えているRFIDタグであって、
表示部(15)は、少なくとも2以上の表示エリア(16)に分割されており、
前記各表示エリア(16)に、個別に書き換え可能な不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられており、
個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換えて、表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき、
制御ユニット(13)に、書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部(20)と、不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)と、これら両者の作動状態を制御する制御部(22)とが設けられており、
記憶部(20)には、不揮発性表示媒体(17)で表示すべき定型表示データが予め格納されていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
リーダライタ(2)から書き換え指令を受信したとき、制御部(22)が書き換え指令で指定された表示エリア(16)の指定データと、書き換え指令で指定されて記憶部(20)から読み出した定型表示データとを表示部コントローラー(21)へ出力して、書き換えの対象となった不揮発性表示媒体(17)の表示内容を、表示部コントローラー(21)で個別に書き換える請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
リーダライタ(2)から表示部(15)に表示する非定型表示データを含む書き換え指令を受信したとき、
制御部(22)は、リーダライタ(2)から受信した非定型表示データを記憶部(20)に記憶したのち、書き換え指令で指定された表示エリア(16)の指定データと、記憶部(20)に記憶した非定型表示データとを表示部コントローラー(21)へ出力して、書き換えの対象となった不揮発性表示媒体(17)の表示内容を、表示部コントローラー(21)で個別に書き換える請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
表示部(15)が、表示面積が同じである2個の表示エリア(16)で構成されており、
各表示エリア(16)を構成する不揮発性表示媒体(17)の表示要素数が、同じに設定されている請求項1から3のいずれかひとつに記載のRFIDタグ。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
タグ本体(12)の内部に制御ユニット(13)と、リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル(14)とが設けられ、タグ本体(12)に書き換え可能な表示部(15)を備えているRFIDタグであって、
表示部(15)は、少なくとも2以上の表示エリア(16)に分割されており、
前記各表示エリア(16)に、個別に書き換え可能な不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられており、
個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換えて、表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき、表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ、
制御ユニット(13)に、書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部(20)と、不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)と、これら両者の作動状態を制御する制御部(22)とが設けられており、
記憶部(20)には、不揮発性表示媒体(17)で表示すべき定型表示データが予め格納されていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
リーダライタ(2)から書き換え指令を受信したとき、制御部(22)が書き換え指令で指定された表示エリア(16)の指定データと、書き換え指令で指定されて記憶部(20)から読み出した定型表示データとを表示部コントローラー(21)へ出力して、書き換えの対象となった不揮発性表示媒体(17)の表示内容を、表示部コントローラー(21)で個別に書き換える請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
リーダライタ(2)から表示部(15)に表示する非定型表示データを含む書き換え指令を受信したとき、
制御部(22)は、リーダライタ(2)から受信した非定型表示データを記憶部(20)に記憶したのち、書き換え指令で指定された表示エリア(16)の指定データと、記憶部(20)に記憶した非定型表示データとを表示部コントローラー(21)へ出力して、書き換えの対象となった不揮発性表示媒体(17)の表示内容を、表示部コントローラー(21)で個別に書き換える請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
表示部(15)が、表示面積が同じである2個の表示エリア(16)で構成されており、
各表示エリア(16)を構成する不揮発性表示媒体(17)の表示要素数が、同じに設定されている請求項1から3のいずれかひとつに記載のRFIDタグ。」(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法17条の2第4項の規定に適合している。

B 目的要件
本件補正は,上記「A 補正の内容」のとおり本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と,補正後の請求項とを比較すると,補正前の請求項1乃至4は,補正後の請求項1乃至4に対応する。

(2)本件補正は,下記の補正事項1よりなるものである。

<補正事項1>
補正前の請求項1における,「個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換えて、表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき」との特定事項における表示部(15)につき,補正後の請求項1において,さらに「表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ」との限定事項を加える補正。

(3)補正事項1について
補正事項1は,補正前の請求項1における表示部(15)が,「個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換え」ることよって,「表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき」,さらに表示内容の書き換えが終了した後には,「電力を消費することなく表示状態を保持することができ」ることを限定したものである。
したがって,上記補正事項1は限定的減縮を目的とするものであるから,本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に適合するものである。

C 独立特許要件
以上のように,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)以下に検討する。

1 本件補正発明
本件補正発明は,平成29年12月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
タグ本体(12)の内部に制御ユニット(13)と、リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル(14)とが設けられ、タグ本体(12)に書き換え可能な表示部(15)を備えているRFIDタグであって、
表示部(15)は、少なくとも2以上の表示エリア(16)に分割されており、
前記各表示エリア(16)に、個別に書き換え可能な不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられており、
個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換えて、表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき、表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ、
制御ユニット(13)に、書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部(20)と、不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)と、これら両者の作動状態を制御する制御部(22)とが設けられており、
記憶部(20)には、不揮発性表示媒体(17)で表示すべき定型表示データが予め格納されていることを特徴とするRFIDタグ。」

2 引用例
2-1 引用例1に記載された事項
原審における平成29年7月5日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2004-45638号公報(平成16年2月12日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で説明のために付加。以下同様。)

A 「【0002】
なお、本明細書中においては、「情報表示装置」なる語句は、ICカード情報表示器、表示機能付ICカード、個人情報を具備する情報機器といった、表示機能付ICカード又は情報機器の何れかの類を包含する総称である。」

B 「【0035】
同図において、1は情報表示装置、11、12は、電力供給なしに設定された期間表示を継続する表示面であって、表示面11と表示面12においてはその継続時間(表示期間)が異なる構成である。ここでは、表示面11は表示期間Xの間、表示面12は表示期間Yの間表示を継続するものとする(尚、X、Yは、X>Yを満たす任意の期間である。)。
【0036】
ここで、表示期間については、情報表示装置1の外部からの電力供給が停止したことを契機として時の経過に伴い、その計測が開始される。
なお、図1においては、表示面は二面であるが、別に複数あればよい(尚、複数の領域に区分でき、各領域毎にその表示を継続する期間が異なる複数の領域に区分される一面であっても、先の「表示面」が各「領域」に該当対応するわけであって、本発明はこれをも包含するものである。)。」

C 「【0040】
ここで、表示面11、12に表示される情報は、情報表示装置1の外部と通信を行って取得した情報の場合と、情報表示装置1内部のメモリ手段に保持した情報の場合とが考えられ、またその双方を組合せも可能である。
その際に、情報毎に何れの表示面に表示するのか(即ち、表示面11に表示するのか、表示面12に表示するのか)取決め若しくはその設計方針は、様々な態様が考えられる。
【0041】
例えば、情報表示装置1内部のメモリ手段に保持した情報を表示する場合には、その保持されたメモリ手段に、何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる情報(表示面番号情報、メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号など)も格納しておき、その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定する態様が考えられる(尚、情報ファイルのID番号の場合には、そのID番号と表示面の番号とを対応付ける対応表が別途必要となる。)。」

D 「【0047】
<情報表示装置の具体的構成>
図2は情報表示装置の実施例であり、(a)は情報表示装置の内部を部分的に示した模式図、(b)は情報表示装置の機能ブロック図である。
かかる図において、1、11、12は前述同様であるが、表示面11、12はそれぞれ、X=2年とした表示面、Y=1日とした表示面である。
【0048】
13は、アンテナ14が受けた信号から動作電力と外部の装置(端末)との送受信するデータ(情報・命令)とを抽出・変換するRF回路131(前述の変調部、符号化部もこれに内蔵される。)と、CPU132と、RAM133と、EEPROM134と、ROM135と、表示面11、表示面12を制御する表示制御回路136(例えば、既に述べたX,Yの値は、この表示制御回路136に設定され、この表示制御回路136で表示の維持・消去がなされる構成である。)と、電源回路137(前述の整流回路もこれに内蔵される。)とから構成され、情報表示装置1に実装された制御回路であり、14は外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナである。」

E 「【0050】
ここで、不揮発性メモリ(EEPROM134a)の論理構成としては、▲1▼ファイルにアクセスする為に必要となる鍵(ファイル用アクセス鍵)と、▲2▼情報をレコード構造で格納した情報ファイルと、▲3▼表示面アクセス制御情報とで構成され、揮発性メモリ(RAM133a)の論理構成としては、鍵の照合状態を示す照合状態メモリとして構成される。」

F 「【0067】
<情報登録端末による情報表示装置への情報の書込み及び情報の表示手順>
図7は、情報表示装置の表示面の時間的な変化を、(a)変化前、(b)変化後として示した模式図であり、図8乃至10は当該手順による、不揮発性メモリの論理構成につき、図8が初期状態で、図9、10がその順にそれに続く状態である(なお、図8乃至10においては、表示面アクセス制御情報は省略してある。)。
【0068】
ST1-1として、電磁波を出しているリーダライタ23に情報表示装置1を近づける。
ST1-2として、情報表示装置1が電磁波を受け、活性化する。
ST1-3として、情報登録端末21と情報表示装置1との間において通信を確立する。
【0069】
ST1-4として、情報登録端末21上にて、情報表示装置1所有者であるユーザが保険情報の登録を指示する。
ST1-5として、ユーザによりテンキー22へ保険番号(「0123456789」)及び暗号番号(「0123」)が入力される。
【0070】
ST1-6として、情報登録端末21は、入力された保険番号に基いて保険用データベース24aを検索して、当該ユーザの鍵IDを取り出し、鍵IDにて指定されたID(ID=1)(照合対象となる一方を格納したファイルID)と入力された暗証番号を付加した照合命令を、リーダライタ23を介して情報表示装置1に送信する。
【0071】
ST1-7として、情報表示装置1は、内部に格納しているID=1の鍵ファイルの内容(「0123」)と照合命令に付された暗証番号(「0123」)が等しい(又は照合成功となる関係を満たした(尚、以下同様。))場合に、照合状態メモリを「照合済み」状態に変更し、リーダライタ23を介して、情報登録端末21に正常終了を送信する。
【0072】
ST1-8として、情報登録端末21は、正常終了の送信を受けて、ユーザが指定した保険番号を用いて保険用データベース24aを検索し、当該ユーザの個人情報を読み出し、保険情報データベース24aにて指定されたファイルID毎に、当該指定に従い(医療用)一般情報ファイル又は(医療用)プライバシー情報ファイルへの書込み命令を、情報表示装置1に送信する。
【0073】
ST1-9として、情報表示装置1は、指定されたファイルIDの(医療用)一般情報ファイル及びプライバシー情報ファイルの書込みのアクセス権が照合要であること、及び照合状態メモリが「照合済み」であることを、順に確認した後に、送信されてきた情報を指定された(医療用)一般情報ファイル又はプライバシー情報ファイルの何れかに書込み、正常終了を情報登録端末21に返す。
【0074】
ST1-10として、情報登録端末21は入力された保険番号を用いて(保険用)データベース24aを検索して、該当するユーザの個人情報を読出し、当該個人情報の名称を付加して、保険用データベース24aにて指定された表示面番号に従い、その個人情報毎に、表示面11、表示面12の何れかに表示させる命令を、(その表示面番号と共に)情報表示装置1に送信する。
【0075】
ST1-11として、情報表示装置1は表示面11、12に関するアクセス権制御情報から、指定された表示面番号の表示面の書換に照合が必要であること、及び照合状態メモリが「照合済み」であることを確認して、送信されてきた情報毎に指定された表示面11又は表示面12の何れかに表示させる。
このST1-11が終了した段階での、情報表示装置1の表示面11、12の様子を示したのが図7(a)であり、情報ファイル状況を示したのが、図9である。」

2-2 引用発明

ア 上記記載事項Aから,引用例1には,“表示機能付きICカードである情報表示装置”について記載されているといえる。
また上記記載事項Dの「13は、アンテナ14が受けた信号から動作電力と外部の装置(端末)との送受信するデータ(情報・命令)とを抽出・変換するRF回路131(前述の変調部、符号化部もこれに内蔵される。)と、CPU132と、RAM133と、EEPROM134と、ROM135と、表示面11、表示面12を制御する表示制御回路136(例えば、既に述べたX,Yの値は、この表示制御回路136に設定され、この表示制御回路136で表示の維持・消去がなされる構成である。)と、電源回路137(前述の整流回路もこれに内蔵される。)とから構成され、情報表示装置1に実装された制御回路であり、14は外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナである。」との記載から,引用例1には,“制御回路13と,外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナ14とからなる,表示機能付きICカードである情報表示装置であって,前記制御回路13は,前記アンテナ14が受けた信号から動作電力と外部の装置との送受信するデータ(情報・命令)とを抽出・変換するRF回路131と,CPU132と,RAM133と,EEPROM134と,ROM135と,表示面11,表示面12を制御する表示制御回路136とから構成され”ることが記載されているといえる。

イ 上記記載事項Bの「1は情報表示装置、11、12は、電力供給なしに設定された期間表示を継続する表示面であって、表示面11と表示面12においてはその継続時間(表示期間)が異なる構成である。」との記載,及び同「表示面は二面であるが、別に複数あればよい」との記載から,引用例1には,情報表示装置は,“電力供給なしに,それぞれ異なる表示期間が設定された,表示面11と表示面12とを有し,前記表示面は複数あればよ”いことが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Cの「表示面11、12に表示される情報は、…(中略)…情報表示装置1内部のメモリ手段に保持した情報の場合とが考えられ」との記載,及び同「情報表示装置1内部のメモリ手段に保持した情報を表示する場合には、その保持されたメモリ手段に、何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる情報(表示面番号情報、メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号など)も格納しておき、その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定する態様が考えられる」との記載から,引用例1には,“前記表示面11及び表示面12に表示される情報は,情報表示装置内部のメモリ手段に保持した情報であり,情報毎に何れの表示面に表示するのかは,情報表示装置内部のメモリ手段に,何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる,表示面番号情報,メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号などの情報も格納しておき,その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定”することが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Eの「不揮発性メモリ(EEPROM134a)の論理構成としては、…(中略)…▲2▼情報をレコード構造で格納した情報ファイルと、▲3▼表示面アクセス制御情報とで構成され」との記載のうち,「情報ファイル」とは,上記ウで認定したところの,「メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号などの情報」の「情報ファイル」と同じものを意味し,また「不揮発性メモリ(EEPROM134a)」は,上記アで認定した「EEPROM134」と同じものであることは明らかであるから,引用例1には,“前記EEPROM134には,情報をレコード構造で格納した前記情報ファイルが記憶され”ていることが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Fの「情報登録端末21は,…(中略)…当該指定に従い(医療用)一般情報ファイル又は(医療用)プライバシー情報ファイルへの書込み命令を,情報表示装置1に送信する。」との記載,及び同「情報表示装置1は,…(中略)…送信されてきた情報を指定された(医療用)一般情報ファイル又はプライバシー情報ファイルの何れかに書込み,正常終了を情報登録端末21に返す。」との記載のうち,「(医療用)一般情報ファイル」や「(医療用)プライバシー情報ファイル」は,上記ウやエで認定した「情報ファイル」に対応するものといえるから,引用例1には,“情報登録端末から送信されてきた情報を前記情報ファイルに書込”むことが記載されているといえる。

カ 上記記載事項Fの「情報登録端末21は…(中略)…該当するユーザの個人情報を読出し,当該個人情報の名称を付加して,保険用データベース24aにて指定された表示面番号に従い,その個人情報毎に,表示面11,表示面12の何れかに表示させる命令を,(その表示面番号と共に)情報表示装置1に送信する。」との記載,及び同「情報表示装置1は表示面11,12に関するアクセス権制御情報から,…(中略)…送信されてきた情報毎に指定された表示面11又は表示面12の何れかに表示させる。」との記載から,引用例1には,“情報表示装置1は,送信されてきた表示面11,表示面12の何れかに表示させる表示面番号に従い,表示面11又は表示面12の何れかに情報を表示させる”ことが記載されているといえる。

キ 以上上記ア乃至カより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「制御回路13と,外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナ14とからなる,表示機能付きICカードである情報表示装置であって,前記制御回路13は,前記アンテナ14が受けた信号から動作電力と外部の装置との送受信するデータ(情報・命令)とを抽出・変換するRF回路131と,CPU132と,RAM133と,EEPROM134と,ROM135と,表示面11,表示面12を制御する表示制御回路136とから構成され,
電力供給なしに,それぞれ異なる表示期間が設定された,表示面11と表示面12とを有し,前記表示面は複数あればよく,
前記表示面11及び前記表示面12に表示される情報は,情報表示装置内部のメモリ手段に保持した情報であり,情報毎に何れの表示面に表示するのかは,情報表示装置内部のメモリ手段に,何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる,表示面番号情報,メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号などの情報も格納しておき,その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定し,
前記EEPROM134には,情報をレコード構造で格納した前記情報ファイルが記憶され,
情報登録端末から送信されてきた情報を指定された前記情報ファイルに書込み,
前記情報表示装置は,送信されてきた表示面11,表示面12の何れかに表示させる表示面番号に従い,表示面11又は表示面12の何れかに情報を表示させる
表示機能付きICカードである情報表示装置。」

2-3 引用例2に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2007-265337号公報(平成19年10月11日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G 「【0021】
本発明の実施形態のICカードは、リーダ/ライタ(外部通信手段)と非接触通信が可能なRFID(Radio Frequency Identification)カードに表示装置が設けられて基本構成される。図1に示すように、本実施形態のICカード1では、カード基板10に顔画像表示用の第1液晶表示装置12と文字画像表示用の第2液晶表示装置14が設けられている。」

H 「【0024】
なお、液晶表示装置12,14,16の代わりに、自発光型の有機ELディスプレイを使用してもよいし、あるいは、電子泳動方式、エレクトロクロミック方式、トナーディスプレイ方式、又はツイストボール方式などの表示方式を利用した電子ペーパーを使用してもよい。バックライトを使用しない薄型の表示装置であれば、上記した表示方式以外の方式を採用してもよい。」

3 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の,「リーダライタ」,「外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナ14」及び「EEPROM134」は,それぞれ本件補正発明の,「リーダライタ」,「リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル」及び「書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部」に相当する。

(2)引用発明の「前記アンテナ14が受けた信号から動作電力と外部の装置との送受信するデータ(情報・命令)とを抽出・変換するRF回路131と,CPU132と,RAM133と,EEPROM134と,ROM135と,表示面11,表示面12を制御する表示制御回路136とから構成され」る「制御回路13」と,本件補正発明の「書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部(20)と、不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)と、これら両者の作動状態を制御する制御部(22)とが設けられて」いる「制御ユニット(13)」とを対比する。
まず引用発明の「表示制御回路136」は「表示面11,表示面12を制御する」ものであることから,本件補正発明の「不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)」とは,両者とも“表示の制御を行う”点で共通するといえる。そして,引用発明の「CPU132」は,「情報表示装置」の「EEPROM134」と「表示制御回路136」との動作を制御するものであることは当業者に自明であり,本件補正発明の「これら両者」,すなわち「記憶部(20)」と「表示部コントローラー(21)」の「作動状態を制御する制御部(22)」と共通するものといえるから,上記(1)の対比に鑑み,引用発明の「制御回路13」と本件補正発明の「制御ユニット(13)」とは,下記の点で相違するものの,“制御ユニットに,書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部と,表示手段の表示状態を制御する表示部コントローラーと,これら両者の作動状態を制御する制御部とが設けられて”いる点で一致する。

(3)引用発明の「表示面11,表示面12」は,所定の「情報」が表示されるものであるから,これら両者を合わせて“表示部”といい得るものである。そして,引用発明の「前記表示面11及び前記表示面12に表示される情報」は,「情報表示装置内部のメモリ手段に保持した情報」であるから,当該メモリ手段に異なる情報が保持されれば,当該表示面11及び表示面12に表示される内容も書き換えられることとなるから,引用発明の「表示面11,表示面12」からなる表示部は,本件補正発明の「書き換え可能な表示部(15)」に相当するといえる。
また,引用発明の「表示機能付きICカードである情報表示装置」は,本件補正発明の「RFIDタグ」と,上位概念では“無線媒体”である点で一致するといえるから,上記(1)及び(2)の検討も踏まえれば,引用発明の「制御回路13と,外部のリーダライタなどの機器から電磁波を受けるアンテナ14とからな」り,「表示面11と表示面12とを有」する「表示機能付きICカードである情報表示装置」と,本件補正発明の「タグ本体(12)の内部に制御ユニット(13)と、リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル(14)とが設けられ、タグ本体(12)に書き換え可能な表示部(15)を備えているRFIDタグ」とは,下記の点で相違するものの,“本体の内部に制御ユニットと,リーダライタと無線通信を行うアンテナコイルとが設けられ,本体に書き換え可能な表示部を備えている無線媒体”の点で一致するといえる。

(4)引用発明の「表示面11,表示面12」は,「電力供給なしに,それぞれ異なる表示期間が設定され」るとともに,「前記表示面は複数あればよ」いものでもあるから,当該引用発明の「電力供給なしに,それぞれ異なる表示期間が設定された,表示面11と表示面12」と,本件補正発明の「少なくとも2以上の表示エリア(16)に分割されて」いる「表示部(15)」とは,“表示部は,少なくとも2以上の表示エリアに分割されて”いる点で一致するといえる。

(5)引用発明は,「前記表示面11及び前記表示面12に表示される情報は,情報表示装置内部のメモリ手段に保持した情報」であり,また,当該表示面11及び表示面12に当該情報を表示するためには,「情報毎に何れの表示面に表示するのかは,情報表示装置内部のメモリ手段に,何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる,表示面番号情報,メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号などの情報も格納しておき,その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定」するものである。そして,「送信されてきた表示面11,表示面12の何れかに表示させる表示面番号に従い,表示面11又は表示面12の何れかに情報を表示させる」ものであり,「手がかりとなる情報」によって,その表示面11及び表示面12それぞれの表示内容が書き換わるものであることから,当該表示面11及び表示面12からなる表示部は,“個別に書き換え可能な表示媒体”といい得るものである。
そうすると,引用発明の「前記情報表示装置は,送信されてきた表示面11,表示面12の何れかに表示させる表示面番号に従い,表示面11又は表示面12の何れかに情報を表示させる」ことと,本件補正発明の「前記各表示エリア(16)に、個別に書き換え可能な不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられ」ることとは,下記の点で相違するものの,“前記各表示エリアに,個別に書き換え可能な表示媒体が設けられ”ている点で一致するといえる。

(6)引用発明は,上記(5)で認定したように,表示面11と表示面12に個別に情報が書き換え可能なものであり,両者からなる表示部の表示内容,すなわち全体表示の表示内容が変更されるといえる。また,引用発明は,「電力供給なしに,それぞれ異なる表示期間が設定された,表示面11と表示面12とを有」するものでもあり,このことから,表示内容が書き換えられた後は,電力を消費することなく表示状態を保持しているといえることから,引用発明と本件補正発明とは,“個々の表示媒体の表示内容を個別に書き換えて,表示部の全体表示の表示内容を変更でき,表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ”る点で一致する。

(7)以上,(1)乃至(6)の検討から,引用発明と本件補正発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
本体の内部に制御ユニットと,リーダライタと無線通信を行うアンテナコイルとが設けられ,本体に書き換え可能な表示部を備えている無線媒体であって,
表示部は,少なくとも2以上の表示エリアに分割されており,
前記各表示エリアに,個別に書き換え可能な表示媒体が設けられており,
個々の表示媒体の表示内容を個別に書き換えて,表示部の全体表示の表示内容を変更でき,表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ,
制御ユニットに,書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部と,表示手段の表示状態を制御する表示部コントローラーと,これら両者の作動状態を制御する制御部とが設けられている
無線媒体。

〈相違点1〉
本件補正発明の無線媒体が,「RFIDタグ」であるのに対し,引用発明の無線媒体は,「表示機能付きICカード」である点。

〈相違点2〉
本件補正発明は,「不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられ」て,「制御ユニット(13)」の「表示部コントローラー(21)」は,当該「不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する」ものであるのに対し,引用発明は,「不揮発性表示媒体として電子ペーパーが設けられる」との特定がされておらず,「制御回路13」の「表示制御回路136」は,「表示面11,表示面12を制御する」ものである点。

〈相違点3〉
本件補正発明は,「記憶部(20)には、不揮発性表示媒体(17)で表示すべき定型表示データが予め格納されている」のに対し,引用発明は,「情報表示装置内部のメモリ手段」には,「前記表示面11及び前記表示面12に表示される情報」が保持されることや,「前記EEPROM134」に,「情報をレコード構造で格納した前記情報ファイルが記憶され」ることなどが特定されているものの,これらの「情報」が,定型表示データであるかについては特定されていない点。

4 判断
上記相違点につき検討する。

(1)相違点1について
まず相違点1について検討すると,引用発明も本件補正発明も,リーダライタとの無線通信を行うと共に,表示情報を受信してこれを表示する無線媒体としては共通していることから,本相違は単に呼称の違いによるものであって実質的な相違とはいえず,引用発明の表示機能付きICカードをRFIDタグとして使用することは当業者であれば適宜なし得たものである。

(2)相違点2について
次に相違点2について検討する。
引用例2には,上記記載事項G及びHで示したように,RFIDカードであるICカードの表示装置に,電子ペーパーを使用することが開示されており,一般にRFIDタグに不揮発性表示装置として電子ペーパーを用いることは,引用例2(なおこの文献は,出願人が出願前既に公知であったことを,特許文献1(明細書段落4)として提示するものである。)のほかにも,例えば特開2011-22720号公報(請求項4等参照。),特開2010-218256号公報(請求項1及び2等参照。),特開2011-53950号公報(請求項1及び3等参照。),特開2005-230309号公報(請求項2及び3等参照。)(以上,まとめてこれらを「周知例」という。)等に散見されるように,本願出願前の周知技術に過ぎず,また引用発明の「表示面11と表示面12」からなる表示部は,「電力供給なしに」表示が継続するものであることから,ここに不揮発性表示媒体として電子ペーパーを用いることは当業者にとって格別の創作力を必要としたとは認められず,引用発明の制御回路13をそのような不揮発性表示媒体の表示状態を制御するよう構成することも適宜なし得たものである。

(3)相違点3について
最後に相違点3について検討する。
引用発明は,まず「EEPROM134には,情報をレコード構造で格納した前記情報ファイルが記憶され」ており,「前記表示面11及び前記表示面12に表示される情報は,情報表示装置内部のメモリ手段に保持した情報であり,情報毎に何れの表示面に表示するのかは,情報表示装置内部のメモリ手段に,何れの表示面に表示するかを示す手がかりとなる,表示面番号情報,メモリ手段においてその表示される情報を格納する場所を示す情報ファイルのID番号などの情報も格納しておき,その手がかりとなる情報を元にして表示面を決定」するものである。すなわち,引用発明において,表示面11及び12に何らかの情報を表示するためには,予め記憶部にその表示すべき情報が記憶されていることが前提であって,当該表示をなすときには,「手がかりとなる情報」を用いている。そして当該表示すべきデータは,当該表示をどのような用途において用いるかに応じて適宜設計変更されるものであって,これを表示装置において周知慣用の定型文とすることも,当業者が適宜なし得たものである。
またこれを定型文としたことによる本件補正発明の効果は,不揮発性表示媒体に情報を表示させる場合,表示データそのものではなく,定型表示データを指定するためのデータを送信して,通信に時間がかからないようにすること(本願明細書段落31等)であるが,引用発明も表示の「手がかりとなる情報」のみを送る点において同等の効果を奏するといえることから,本相違による本件補正発明の奏する効果も格別顕著なものとはいえない。

以上検討したとおり,相違点1乃至3はいずれも格別なものではなく,またそのことによる効果も,引用発明においても奏される効果,若しくは当業者であれば普通に想起し得る程度のものに過ぎない。
したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用例2や周知例に記載されたような周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用例2や周知例に記載されたような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 本件補正についてのむすび

以上のとおり,本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成29年12月11日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記「第2 平成29年12月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 本件補正について」「A 補正の内容」の項の補正前の請求項1に記載されたとおりのものである。再掲すれば,次のとおり。

「 【請求項1】
タグ本体(12)の内部に制御ユニット(13)と、リーダライタ(2)と無線通信を行うアンテナコイル(14)とが設けられ、タグ本体(12)に書き換え可能な表示部(15)を備えているRFIDタグであって、
表示部(15)は、少なくとも2以上の表示エリア(16)に分割されており、
前記各表示エリア(16)に、個別に書き換え可能な不揮発性表示媒体(17)として電子ペーパーが設けられており、
個々の不揮発性表示媒体(17)の表示内容を個別に書き換えて、表示部(15)の全体表示の表示内容を変更でき、
制御ユニット(13)に、書き換え可能な不揮発性メモリで構成される記憶部(20)と、不揮発性表示媒体(17)の表示状態を制御する表示部コントローラー(21)と、これら両者の作動状態を制御する制御部(22)とが設けられており、
記憶部(20)には、不揮発性表示媒体(17)で表示すべき定型表示データが予め格納されていることを特徴とするRFIDタグ。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用例1:特開2004-45638号公報
引用例2:特開2007-265337号公報(周知技術を示す文献)

3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2並びにその記載事項は,前記第2の[理由]「C 独立特許要件」の「2 引用例」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]「C 独立特許要件」の「1 本件補正発明」で検討した本件補正発明から,「表示内容の書き換え終了後は電力を消費することなく表示状態を保持することができ」という限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]「C 独立特許要件」の「4 判断」に示したとおり,引用発明及び引用例2などに記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び引用例2などに記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-31 
結審通知日 2018-09-05 
審決日 2018-09-28 
出願番号 特願2014-56041(P2014-56041)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 RFIDタグ  

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