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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1346629
審判番号 不服2017-9667  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-30 
確定日 2018-11-28 
事件の表示 特願2013-544821「経皮エネルギー伝送システムにおいて使用可能な充電を正確に追跡するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日国際公開、WO2012/087816、平成26年 2月 3日国内公表、特表2014-502528〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年(平成22年)12月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 8月13日 :翻訳文提出
平成27年10月26日付け:拒絶理由通知書
平成28年 2月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 6月10日付け:拒絶理由通知書
平成28年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月31日付け:拒絶査定
平成29年 6月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年11月22日 :上申書の提出

第2 平成29年 6月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年 6月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「埋め込み可能な補助装置と、
再充電可能な電池パックと、
該埋め込み可能な補助装置および該再充電可能な電池パックに接続される制御装置と、を備える埋め込み可能な装置であって、
該制御装置が、電池セル温度を含む複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し、該埋め込み可能な補助装置の電力消費速度を測定し、該電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベルに達するまでの残り時間を計算し、該残り時間を使用者に伝達し、該電池パックが完全に充電されるまでの時間を外部ディスプレイに表示させ、前記電池セル温度に基づき、前記電池パックの充電速度を調節するように構成される、装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年12月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は次のとおりである。
「埋め込み可能な補助装置と、
再充電可能な電池パックと、
該埋め込み可能な補助装置および該再充電可能な電池パックに接続される制御装置と、を備える埋め込み可能な装置であって、
該制御装置が、電池セル温度を含む複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し、該埋め込み可能な補助装置の電力消費速度を測定し、該電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベルに達するまでの残り時間を計算し、該残り時間を使用者に伝達し、前記電池セル温度に基づき、前記電池パックの充電速度を調節するように構成される、装置。」

2 補正の適否
本件補正のうち、請求項6に対してする補正は、本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「制御装置」の制御内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2010/0076516号明細書(2010年3月25日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、引用文献1の日本語ファミリー文献である特表2010-504770号公報の該当箇所の記載を仮訳として援用した。(下線は、当審で付した。)

「【0001】The disclosure is directed to an implantable medical device for delivering a therapeutic output to a patient having a rechargeable electrical power source having a useful life; a therapeutic delivery device operatively coupled to the power source and adapted to deliver the therapeutic output to the patient; a power source recharge timing indicator for monitoring the remaining usage time before full drainage of the power source; and safe mode means to reduce the power consumption of the medical device, thereby preventing excessive power drainage from the power source which would result in damage to the power source and/or medical device and/or injury to the patient.」
(仮訳:本願明細書は、患者に治療を提供する移植可能な医療装置を開示する。当該医療装置は、耐用年数を有する再充電可能な電気的電源;前記電源と結合され、前記患者に治療を提供する治療提供装置;前記電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を監視する電源再充電タイミング表示器;及び前記医療装置の電力消費を低減し、それにより前記電源及び/又は移植可能な装置に損傷を生じ及び/又は前記患者に害を生じる前記電源からの過剰な電力の排流を防ぐセーフ・モード手段、を有する。)

「【0013】a power source recharge timing indicator operatively coupled to the power source, wherein the timing indicator includes means for determining and communicating when the remaining usage time before full drainage of the power source drops below a first predetermined level based on measurement of one or more physical characteristics of the power source and of the medical device; 」
(仮訳:前記電源と結合され、前記電源及び前記医療装置の1又は複数の物理的特性に基づき、前記電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間が第1の所定のレベルより下に降下するときを決定し伝達する手段を有する電源再充電タイミング表示器;)

「【0091】In another aspect of the invention a recharge timing indicator or power source recharge timing indicator is incorporated into the implantable medical device that indicates the remaining usage time left before full drainage of the rechargeable power source, based on the measurement of one or more physical characteristics of the power source and of the implanted medical device. The recharge timing indicator can include means for determining and communicating this timing indicator information to a user, e.g. a patient, a nurse, a clinician, or a close relative of the patient. Thus, when the remaining time until full discharge falls below a predetermined or preprogrammed level in the medical device, the timing indicator communicates or transmits a signal to the patient (for example, by audible sound, vibration or light) that the power source needs recharging. The predetermined time level can be, for example, 1 day, 2 days, 1 week, or some other time interval). Alternatively, the communication can be made externally, for example, to a nurse, operator, clinician, external programming device.」
(仮訳:本発明の別の態様では、再充電のタイミング表示器又は電源の再充電のタイミング表示器が、移植可能な治療装置に組み込まれる。タイミング表示器は、再充電可能な電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を、電源及び移植可能な医療装置の1又は複数の物理的特性の測定値に基づき表示する。再充電のタイミング表示器は、当該タイミング表示情報を決定しユーザー、例えば患者、看護師、臨床士、患者の近親者に伝達する手段を有する。従って、医療装置の完全に放電されるまでの残り時間が所定の又は予め設定されたレベルより下に降下すると、タイミング表示器は、電源の再充電が必要であることを示す信号を患者へ(例えば、可聴音、振動、又は光により)伝達又は送信する。所定の時間レベルは、例えば、1日、2日、1週間、又は他の時間間隔である。或いは、外部に、例えば、看護師、技師、臨床士、外部の設定装置に通知されてもよい。)

「【0092】In an embodiment the rechargeable power source is a rechargeable battery. 」
(仮訳:ある実施例では、再充電可能な電源は、再充電可能なバッテリーである。)

「【0093】In an embodiment the rechargeable battery is a Lithium-ion battery. 」
(仮訳:ある実施例では、再充電可能な電源は、リチウム・イオン・バッテリーである。)

「【0094】In an embodiment the remaining usage time is estimated from the ratio of the state of charge of the battery and (a running average of) charge requirement by the implantable medical device.」
(仮訳:ある実施例では、残り使用可能時間は、バッテリーの充電状態と移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)との比から推定される。)

「【0095】In an embodiment the state of charge of the battery is derived from measurable physical battery parameters such as battery voltage, battery impedance, and battery voltage relaxation time (see Pop, V.; Bergveld, H. J.; Notten, P. H. L., #State-of-Charge Indication in Portable Applications,# Industrial electronics, 2005. ISIE 2005. Proceedings of the IEEE International Symposium on, vol. 3, no. pp. 1007-1012, Jun. 20-23, 2005).」
(仮訳:ある実施例では、バッテリーの充電状態は、バッテリー電圧、バッテリーのインピーダンス、及びバッテリー電圧の緩和時間のような測定可能な物理的バッテリー・パラメーターから導出される(Pop, V.; Bergveld, H. J.; Notten, P. H. L., #State-of-Charge Indication in Portable Applications,# Industrial electronics, 2005. ISIE 2005. Proceedings of the IEEE International Symposium on, vol. 3, no. pp. 1007-1012, Jun. 20-23, 2005を参照)。)

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、移植可能な医療装置に関するものであり、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を監視することを課題としたものである(【0001】)。

b 移植可能な医療装置は、耐用年数を有する再充電可能な電気的電源、前記電源と結合され、前記患者に治療を提供する治療提供装置、前記電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を監視する電源再充電タイミング表示器を有し(【0001】)、さらに電源再充電タイミング表示器は電源と結合されている(【0013】)。

c 電源再充電タイミング表示器は、前記電源及び前記医療装置の1又は複数の物理的特性に基づき、前記電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間が第1の所定のレベルより下に降下するときを決定し伝達する手段を有しており(【0013】)、そして、バッテリーの充電状態は、バッテリー電圧、バッテリーのインピーダンス、及びバッテリー電圧の緩和時間のような測定可能な物理的バッテリー・パラメーターから導出され(【0095】)、残り使用可能時間は、バッテリーの充電状態と移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)との比から推定される(【0094】)のであるから、電源再充電タイミング表示器は、複数の測定可能な物理的バッテリー・パラメーターに基づいてバッテリーの充電状態を導出し、移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)を測定し、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定しているといえる。

d タイミング表示器は、医療装置の完全に放電されるまでの残り時間が所定の又は予め設定されたレベルより下に降下すると、電源の再充電が必要であることを示す信号を患者へ(例えば、可聴音、振動、又は光により)伝達又は送信する(【0091】)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「患者に治療を提供する治療提供装置と、
再充電可能な電気的電源と、
患者に治療を提供する治療提供装置および再充電可能な電気的電源に結合される電源再充電タイミング表示器と、
を備える移植可能な医療装置であって、
電源再充電タイミング表示器が、複数の測定可能な物理的バッテリー・パラメーターに基づいてバッテリーの充電状態を導出し、移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)を測定し、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定し、残り使用可能時間を患者に伝達する、装置。」

イ 引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である「V. Pop, et al., "State-of-Charge Indication in Portable Applications", Industrial Electronics, 2005. ISIE 2005. Proceedings of the IEEE International Symposium on, IEEE, 2005年, Vol.3, p.1007-1012」(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、仮訳は当審において訳したものを援用した。(下線は、当審で付した。)

「The two best known SoC indication methods will be described in this section[1]. The direct-measurement method is based on the measurement of battery variables such as the battery voltage (V), the battery impedance (Z), and the voltage relaxation time (τ) after application of a current step. The measured battery variable is directly translated into an SoC value using e.g. a look-up table or predetermined function. Most relations between battery variables and the SoC depend on the temperature (T). Therefore besides the voltage or impedance, the battery temperature should also be measured.」(1007頁右欄11行-22行)
(仮訳:この2つの最良のSoC(充電状態)表示方法は、このセクション[1]において説明される。直接測定方法は、電流ステップの適用後のバッテリー電圧(V)、バッテリーインピーダンス(Z)、および電圧緩和時間(τ)などのバッテリー変数の測定に基づく。測定されたバッテリー変数は、例えば、ルックアップテーブルまたは所定の関数を使用してSoC値に直接変換される。バッテリー変数とSoCとの間のほとんどの関係は温度(T)に依存する。したがって、電圧またはインピーダンス以外に、バッテリー温度も測定すべきである。)

ウ 引用文献3
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2001-155788号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

「【0028】前述したように、この電子カメラは、バッテリパック50が底面より取り外し自在に装着されるが、このバッテリバック50には、バッテリセル51、情報メモリ52および温度センサ53が内蔵されている。
【0029】バッテリセル51は、たとえばアルカリ、ニッケル水素、あるいはリチウムイオンなどの繰り返し充放電可能な電池である。情報メモリ52は、このバッテリセル51に関するバッテリ情報を格納するメモリデバイスである。この情報メモリ52に格納されるバッテリ情報としては、たとえば図3に示すように、(1)残量参照テーブル、(2)充放電回数、(3)充放電最終日付等が存在する。
【0030】残量参照テーブルは、電圧値と温度とから補正係数を求めるための補正情報であり、たとえば図4に示すような形式でバッテリ情報を保持する。図4において、たとえば電圧値が3Vで温度が20℃であれば、80%という補正係数が決定され、また、電圧値が同じ3Vでも温度が0℃であれば、20%という補正係数が決定される。なお、この補正係数は、バッテリセル51の満充電量から現在の残量を得るための補正係数である。
【0031】そして、システムコントローラ28は、バッテリセル51から供給される電力の電圧値、情報メモリ52に格納されたバッテリ情報および温度センサ53から出力される温度情報に基づいてバッテリ残量表示制御を実行する。
【0032】図5は、この実施形態の電子カメラにおけるバッテリ残量表示制御の動作手順を説明するためのフローチャートである。なお、これらの動作の制御はシステムコントローラ28によって行なわれる。
【0033】電子カメラ本体の電源が投入された時、あるいは、バッテリパック50が装着された時、システムコントローラ28は、まず、バッテリパック50の情報メモリ52に格納されたバッテリ情報を読み出す(ステップA1)。
【0034】次に、システムコントローラ28は、バッテリパック50のバッテリセル51から供給される電力の電圧値を検出し(ステップA2)、また、バッテリパック50の温度センサ53が出力する温度情報を入力する(ステップA3)。
【0035】ここで、システムコントローラ28は、この検出した電圧値と入力した温度情報とをもとに読み出したバッテリ情報を参照し、このバッテリ情報から補正係数を得てバッテリセル51の適正な残量を算出する(ステップA4)。
【0036】そして、システムコントローラ28は、この算出したバッテリセル51の適正な残量を表示すべくモノクローム液晶ディスプレイ(情報LCD)27に制御信号を出力する(ステップA5)。このモノクローム液晶ディスプレイ(情報LCD)27に表示させる残量情報として、システムコントローラ28は、たとえばバッテリセル51の残量と予め与えられた1回の撮影で消費される電力量とから撮影可能枚数を算出し、あるいは、バッテリセル51の現残量の満充電量に対する割合を算出する。
【0037】また、システムコントローラ28は、このバッテリ残量表示から一定時間が経過したかどうかを監視し(ステップA6)、一定時間が経過していれば(ステップA6のYES)、ステップA2?ステップA5までの処理を繰り返し、バッテリ残量表示を更新制御する。
【0038】このように、この電子カメラでは、バッテリパック50内の温度がバッテリ残量の算出に反映されるため、高性能なバッテリ残量表示が実現され、かつ、消耗品であるバッテリパック50内に高機能をもたせる必要がないため、コスト面の問題を生じさせることもない。」

エ 引用文献4
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平7-198807号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

「【0007】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の1実施例に係る電池残量算出装置の構成を示すブロック図である。図1において、1は1次電池、あるいは2次電池等の電池、3は電池1から電力を供給される負荷、5は電池1の消費電流値を検出するための抵抗である。電池1の近傍に電池1の温度Tを測定する温度センサ7を設ける。温度情報取込部9は、温度センサ7で測定されたアナログ信号からなる温度情報をデジタル信号に変換し、積分用係数算出部11に送る。
【0008】積分用係数算出部11は温度情報取込部9から送られる電池1の温度情報から電池残存容量係数K_(2) (T)と、電力消費係数K_(1) (T)を算出する。
【0009】図2は電池残存容量係数K_(2) (T)と、温度Tとの関係を示すグラフであり、
K_(2) (T)=T/80+3/4……(1)
の関係がある。
【0010】図3は電力消費係数K_(1) (T)と、温度Tとの関係を示すグラフであり、
K_(1) (T)=T/8000+3/400……(2)
の関係がある。ここで、電力量とは電流値と時間との積である。
【0011】積分用係数算出部11はこのような関係式を記憶しており、温度情報取込部9から送られる温度Tを基にして電池残存容量係数K_(2) (T)と、電力消費係数K_(1) (T)を算出して積分計算部19に送る。
【0012】電圧計13は抵抗5の両端の電圧を測定する。電圧電流変換部15は電圧計13から送られる基にして、抵抗5を流れる電流値を算出し、アナログ情報としてアナログデジタル変換部(A/D)17に送る。アナログデジタル変換部17は電圧電流変換部15から送られるアナログ情報をデジタル情報i_(d) に変換する。
・・・(略)・・・
【0016】つぎに、本実施例の動作について説明する。温度センサ7により電池1の温度Tが測定され、温度情報取込部9により、温度情報がデジタル信号に変換され、積分用係数算出部11により、電池残存容量係数K_(2) (T)と電力消費係数K_(1)(T)とが算出される。
【0017】一方、電圧計13の出力値から電圧電流変換部15は、抵抗5を流れる電流値を算出し、アナログデジタル変換部17によりデジタル値に変換される。積分計算部19は電池1の定格値X_(0) と積分用係数算出部11から送られてくる電池残存容量係数K_(2) (T)と電力消費係数K_(1) (T)、およびアナログデジタル変換部17から送られる電流値i_(d) を基にして、式(3)に従って電池残量Xを算出する。
【0018】このように、本実施例では電池1の温度を測定し、この温度を考慮して電池残量を算出することができる。なお、電池残存容量係数K_(2) (T)と電力消費係数K_(1) (T)は、式(1)、式(2)で示す以外のものを用いてもよい。
【0019】また、前述した実施例では、電池1の消費電流と電池1の温度を基にして積分計算部19が電池残量を算出するものであったが、電池1の消費電流と温度と電池残量の関係を示すテーブルを用意しておき、電池1の消費電流と温度を測定した後、このテーブルから電池残量を算出するようにしてもよい。」

オ 引用文献5
同じく原査定において例示され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2003-526308号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

「 【0004】
電源装置を通して引き出される電流の量が増大すると、電源装置の種々の構成要素の温度が上昇する。Layman他に付与された米国特許第5、712、795号は、電池温度をモニタすると共に電池の充電速度を制御して電池の使用年数を延長する方法を説明している。しかし、この技術は、電源装置の他の重要な構成要素を考慮していない。
他の電源装置構成要素に対しては、温度が上昇すると、供給することができる電力の最大量が減少する。従って、電源装置のいくつかの他の構成要素の温度をモニタすると共に供給される電力量を調節する方法及び装置が必要である。」

「 【0041】
図9A、図9B、及び、図9Cでは、パワーマネージメント手順250(図4)の代替実施形態の流れ図が示されている。この実施形態では、タイマ有効化手順254(図4)により、パワーマネージメント手順250が所定の間隔、例えば毎秒で周期的に実行される。この実施形態では、パワーマネージメント手順250は、電池が過熱することを防ぐために、オフライン・スイッチャ232から供給される電力量の調節と電池充電速度の調節とを調整する。
【0042】
段階332において、割込有効化手順254(図4)では、電源装置プロセッサ244(図4)は、1の値を有する高充電信号を出力することにより、充電速度回路270(図4)を高充電速度に構成し、ハイチャージ・フラグを1に設定し、タイマを有効化してパワーマネージメントシステム手順を呼び出す割込を発生させる。
割込(段階334)に応答して、段階336では、電源装置プロセッサ244(図4)が電池の温度を判断する。段階338は、電池温度が限界内であるかどうかを判断する。限界内でない場合、段階340は、充電速度回路を低充電速度に構成する。段階342では、ハイチャージ・フラグがゼロに等しく設定され、段階344は、段階334に進む前に次の割り込みを待つ。」

カ 引用文献6
同じく原査定において例示され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平5-227677号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)

「【0041】もし電池28の温度が40℃以上であり、かつ、ACアダプタ20が接続されていれば、信号VGはロウである。信号VGは上記温度が40℃以下になるまでロウであり、NORゲート166の出力はハイになっているため、NORゲート198の出力がロウになり、もしORゲート204の出力がロウであればVG信号がハイになることが可能である。つまり、ACアダプタ20が過熱状態の電池28に接続されているときには、電池28は高速充電が可能な温度に温度が下降するまで低速充電され、上記温度に下降したときに高速充電がされる。」

「【0048】
【発明の効果】本発明によると、高速及び低速の2種類の異なった速度で電池を充電することができる。また、高速充電中の過熱と損傷を避けるために特別の取り扱い及び制御をすることができ、特に高速充電時における電圧、電池の温度のようなパラメタの状態を検出して、ある充電速度から他の充電速度に最適な制御により切り替えることができる。さらに、電池がほとんど放電され尽くされているときに高速充電がされても、コンピュータの電圧が下がってしまうということがない。」

キ 引用文献7
同じく原査定において例示され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2010/014332号(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。なお、引用文献7の日本語ファミリー文献である特表2011-530271号公報の該当箇所の記載を仮訳として援用した。(下線は、当審で付した。)

「In some embodiments, depending on the voltage difference, the charger controller is capable of changing the first charge rate to the second charge rate. In some embodiments, depending on the rate of change of the voltage difference, the charger controller is capable of changing the first charge rate to the second charge rate. In some embodiments, the charger controller is further capable of monitoring a temperature of at least a portion of the lithium ion battery pack, and depending at least in part on at least one of the voltage difference or the rate of change of the voltage difference, and the temperature of the at least a portion of the lithium ion battery pack, changing the first charge rate to the second charge rate. In some embodiments, the charger controller is further capable of monitoring a temperature of at least a portion of the lithium ion battery pack, and calculating a rate of change of the temperature of the at least a portion of the lithium ion battery pack, and depending at least in part on at least one of the voltage difference or the rate of change of the voltage difference, and the rate of change of the temperature of the at least a portion of the lithium ion battery pack, changing the first charge rate to the second charge rate. In some embodiments, the redox shuttle comprises l,4-di-t-butyl-2,5-dimethoxybenzene, and the electrolyte composition comprises ethylene carbonate, diethyl carbonate, ethyl methyl carbonate, and lithium hexafluorophosphate.」(第3ページ第9-25行)
(仮訳:幾つかの実施形態において、電圧差に依存して、充電器コントローラは、第1の充電速度を第2の充電速度に変更することができる。幾つかの実施形態において、電圧差の変化率に依存して、充電器コントローラは、第1の充電速度を第2の充電速度に変更することができる。幾つかの実施形態において、充電器コントローラは、更に、リチウムイオンバッテリパックの少なくとも一部分の温度を監視することができ、かつ、電圧差又は電圧差の変化率、及びリチウムイオンバッテリパックの少なくとも一部分の温度のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に依存して、第1の充電速度を第2の充電速度に変更することができる。幾つかの実施形態において、充電器コントローラは、更に、リチウムイオンバッテリパックの少なくとも一部分の温度を監視することができ、リチウムイオンバッテリパックの少なくとも一部分の温度の変化率を計算することができ、電圧差又は電圧差の変化率、及びリチウムイオンバッテリパックの少なくとも一部分の温度の変化率のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に依存して、第1の充電速度を第2の充電速度に変更することができる。ある実施形態において、レドックスシャトルは、1,4-ジ-t-ブチル-2,5-ジメトキシベンゼンを含み、電解質組成物は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びヘキサフルオロリン酸リチウムを含む。)

「In operation, constant current is supplied to the lithium ion battery pack at the relatively higher first rate until at least one cell begins to shuttle. The onset of shuttling is associated with a rise in the voltage difference between the positive and negative terminals of the lithium ion battery pack, typically to a predetermined voltage range. Accordingly, either the rate of increase in voltage difference or the actual voltage difference may be used to determine when shuttling occurs, and hence when the charge rate should be changed to the second (lower) charge rate. In addition to monitoring the voltage difference between the positive and negative terminals, the temperature of one or more regions within the lithium ion battery pack may also be monitored; for example, as a backup and/or as an indicator of lithium ion battery pack failure. For example, the charger may be configured to further reduce, or stop, the charge rate in response to a rise in the lithium ion battery pack internal temperature (for example, either the rate of the measured temperature rise, or the measured temperature).」(第5ページ第9-21行)
(仮訳:動作中、少なくとも1つのセルがシャトルを開始するまで、一定の電流が、比較的高い第1の速度でリチウムイオンバッテリパックに供給される。シャトルの開始には、典型的には所定の電圧範囲まで、リチウムイオンバッテリパックの正極端子と負極端子との間の電圧差の上昇が関連している。したがって、電圧差の増加率又は実際の電圧差のいずれかを使用して、シャトルがいつ発生するか、したがっていつ充電速度が第2(より低い)の充電速度に変更されるべきであるかを決定することができる。正極端子と負極端子との間の電圧差の監視に加えて、例えば、バックアップとして、及び/又はリチウムイオンバッテリパック故障の指標として、リチウムイオンバッテリパック内の1つ以上の領域の温度を監視することもできる。例えば、充電器は、リチウムイオンバッテリパックの内部温度の上昇(例えば、測定温度の上昇速度又は測定温度のいずれか)に応じて、充電速度を更に低下、又は停止させるように構成することができる。)

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当審で付した。)
(ア)引用発明は、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を監視することを課題とした移植可能な医療装置に係る技術であり、本件補正発明と、技術分野及び課題が共通する。
(イ)引用発明の「患者に治療を提供する治療提供装置」は、移植可能な医療装置の一部として含まれるので(【0001】参照)、移植可能なものであることは明らかであり、本件補正発明の「埋め込み可能な補助装置」に相当する。また、引用発明の「移植可能な医療装置」は、本件補正発明の「埋め込み可能な装置」に相当する。
(ウ)引用発明の「再充電可能な電気的電源」は、再充電可能なバッテリーであり(【0092】)、具体的にはリチウム・イオン・バッテリーである(【0093】)から、本件補正発明の「再充電可能な電池パック」に相当する。
(エ)引用発明の「測定可能な物理的バッテリー・パラメーターに基づいてバッテリーの充電状態を導出し」は、本件補正発明の「電池セル温度を含む複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し」と「複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し」という限りにおいて共通する。
(オ)引用発明の「電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定し」は、本件補正発明の「該電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベルに達するまでの残り時間を計算し」と「該電池パックのエネルギーレベルの残り時間を計算し」という限りにおいて共通する。
(カ)引用発明の「残り使用可能時間を患者に伝達」は、本件補正発明の「該残り時間を使用者に伝達」に相当する。
(キ)上記(エ)?(カ)より、引用発明の「電源再充電タイミング表示器」は、「複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し、該電池パックのエネルギーレベルの残り時間を計算し、該残り時間を使用者に伝達」する限りにおいて、本件補正発明の「制御装置」と共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「埋め込み可能な補助装置と、
再充電可能な電池パックと、
該埋め込み可能な補助装置および該再充電可能な電池パックに接続される制御装置と、を備える埋め込み可能な装置であって、
該制御装置が、複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し、該電池パックのエネルギーレベルの残り時間を計算し、該残り時間を使用者に伝達するように構成される、装置。」

【相違点1】
「該制御装置が、複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し」ていることに関して、本件補正発明は、「電池セル温度を含む複数の測定基準に基づき該電池パックの充電レベルを割り出し」ているのに対し、引用発明は、測定可能な物理的バッテリー・パラメーターに基づいてバッテリーの充電状態を導出しているが、パラメータとしてバッテリー温度を含むか否か不明な点。
【相違点2】
「該制御装置」が、本件補正発明は、「埋め込み可能な補助装置の電力消費速度を測定し」ているのに対し、引用発明は、移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)を測定している点。
【相違点3】
「該制御装置が、該電池パックのエネルギーレベルの残り時間を計算し」ていることに関して、本件補正発明は、「電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベルに達するまでの残り時間を計算し」ているのに対し、引用発明は、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定している点。
【相違点4】
「制御装置」が、本件補正発明は、「該電池パックが完全に充電されるまでの時間を外部ディスプレイに表示させ、前記電池セル温度に基づき、前記電池パックの充電速度を調節するように構成される」のに対し、引用発明は、当該構成を有するか不明である点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
一般に、バッテリー温度を含む複数の測定基準に基づいてバッテリーの充電レベルを割り出すことは、本願の優先日前に周知技術である(必要であれば、上記引用文献1の段落【0095】で言及されている原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特に、1007頁右欄11行-22行を参照。)をはじめ,引用文献3(特に,段落【0028】-【0038】を参照。)及び引用文献4(特に、段落【0007】-【0019】を参照。)。
そして、引用文献1には、バッテリーの充電状態は、バッテリー電圧、バッテリーのインピーダンス、及びバッテリー電圧の緩和時間のような測定可能な物理的バッテリー・パラメーターから導出されること(段落【0095】)が記載されており、そもそもバッテリーの充電状態は、様々な測定可能な物理的バッテリー・パラメーターから導出されることが記載されている。
したがって、引用発明において、バッテリーの充電状態を導出する際に、測定可能な物理的バッテリー・パラメーターとして、上記周知技術であるバッテリー温度を採用して、上記相違点1の如く構成することは、当業者が容易にできたことである。

イ 相違点2について
引用発明は、電源再充電タイミング表示器が、複数の測定可能な物理的バッテリー・パラメーターに基づいてバッテリーの充電状態を導出し、移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)を測定し、電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定しているのであるから、引用発明における「移植可能な治療装置による充電要件(の移動平均)」は、本件補正発明おける「埋め込み可能な補助装置の電力消費速度」に相当するものであることは明らかである。したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、引用発明は、バッテリーの充電状態を導出し、それに基づいて電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間を決定するものであるから、その際に移植可能な治療装置による電力消費速度を測定すべきであることは、当業者であれば容易に想到すべき事項である。

ウ 相違点3について
本件補正発明の「電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベルに達するまでの残り時間を計算し」における「電池パックのエネルギーレベルが所定の閾値レベル」とは、電池パックのエネルギーレベルがゼロレベル、すなわち完全に使い果たしたレベルをも含むと考えるの自然である。そうすると、相違点3は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、引用発明において、「電源が完全に使い果たされるまでの残り使用可能時間」を「所定の閾値レベルまでの残り使用可能時間」とすることは、電源の使用可能である基準を完全に使い果たしたレベルまでとするか、ある程度残ったレベルまでとするかの違いであって、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項である。

エ 相違点4について
一般に,電池パックの充電において、電池セル温度に基づいて電池パックの充電速度を調節することは、本願の優先日前に周知技術であり(必要であれば、引用文献5の段落【0004】、【0041】、【0042】、引用文献6の段落【0041】、【0048】、及び引用文献7の第3ページ第9-25行、第5ページ第9-21行を参照。)、さらに、電池パックが完全に充電されるまでの時間をディスプレイに表示させることも、本願の優先日前に周知技術である(必要であれば、新たに例示する特開2007-325500号公報の段落【0098】-【0101】、新たに例示する特開平10-172616号公報の段落【0004】、【0011】-【0022】を参照。)。
そして、引用文献1には、再充電可能な電源は、再充電可能なバッテリーであり、さらリチウム・イオン・バッテリーであるに旨記載されているので(段落【0092】、【0093】)、引用発明の再充電可能なバッテリーは一般的なものであり、充電電池に関する上記周知技術を適用する課題を内在しているといえる。
したがって、引用発明に上記周知技術を適用して、上記相違点4の如く構成することは、当業者が容易にできたことである。
なお、請求人は、平成29年11月22日提出の上申書において、「引用文献1は、バッテリを備える埋め込み型医療デバイスに関するものです。これに対し、引用文献8(特開2007-325500号公報)及び引用文献9(特開平10-172616号公報)は、ビデオカメラ、ノート型コンピュータといった、携帯型電子機器のバッテリに関するものです(例えば、引用文献8の段落[0002]及び引用文献9の[0002])。ここで、埋め込み型医療デバイスのバッテリの構造は、携帯型電子機器のバッテリの構造とは、大きく異なります。つまり、埋め込み型医療デバイスのバッテリと携帯型電子機器のバッテリとの間には、密接した技術的関連性がないものと思料致します。従って、引用文献1に、引用文献8及び9を組み合わせる動機付けが当業者にはないものと思料致します。」と主張している。
しかし、既に述べたように引用発明の再充電可能なバッテリーは一般的なリチウム・イオン・バッテリーであり、引用文献9(特開平10-172616号公報)に記載のバッテリーもリチウム・イオン・バッテリーである(段落【0013】)ので、両者に密接した技術的関連性がないという請求人の主張は採用できない。

オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年12月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項6に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項6に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし7に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2010/0076516号明細書
引用文献2:V. Pop, et al., "State-of-Charge Indication in Portable Applications", Industrial Electronics, 2005. ISIE 2005. Proceedings of the IEEE International Symposium on, IEEE, 2005年, Vol.3, p.1007-1012
引用文献3:特開2001-155788号公報
引用文献4:特開平7-198807号公報
引用文献5:特表2003-526308号公報
引用文献6:特開平5-227677号公報
引用文献7:国際公開第2010/014332号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし7及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「該電池パックが完全に充電されるまでの時間を外部ディスプレイに表示させ、」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-02 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2013-544821(P2013-544821)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61N)
P 1 8・ 121- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 敬太白川 敬寛  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 林 茂樹
船越 亮
発明の名称 経皮エネルギー伝送システムにおいて使用可能な充電を正確に追跡するための方法および装置  
代理人 杉村 憲司  

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