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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1346674
審判番号 不服2016-18192  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-05 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2012-172378「基板吸着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月20日出願公開、特開2014-33057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年8月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 4月22日付け:拒絶理由通知書
同 年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 9月 5日付け:拒絶査定
同 年12月 5日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
平成30年 1月26日付け:当審の拒絶理由通知書
同 年 3月23日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 4月12日付け:当審の拒絶理由通知書(最後)
同 年 6月 5日 :意見書、手続補正書の提出

2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成30年6月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
基板が載置される基板載置領域と、該基板載置領域内に形成された開口と、該開口に連通する吸引穴とを有し、該吸引穴を介して真空吸引することにより前記基板載置領域内に前記基板を吸着して固定することができるステージと、
前記開口の近傍から離れて前記開口に対向するように前記吸引穴内に配置された先端部を有し、前記吸引穴内の真空吸引に伴って前記開口から前記先端部に向かって空気が流れるように、前記吸引穴の内周面との間に隙間ができるように配置され、前記基板載置領域内に載置された前記基板が前記開口を覆うように載置されているか否かを検出するために設けられたセンサと、
を備えたことを特徴とする、基板吸着装置。」(以下「本願発明」という)

3 拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

(1)平成30年4月12日付け拒絶理由通知
本件出願は、発明の詳細な説明の記載が以下の理由で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
平成30年3月23日付けの手続補正により、請求項1?3に係る発明は、「前記基板載置領域内に載置された前記基板が所定位置に載置されているか否かを検出することができるセンサ」を備えたものとなった。
そして、基板が「所定位置に載置されているか否か」を検出することは、ステージ上の基板吸着位置において、例えば、基板吸着位置を平面座標で表した場合に、基板がどの座標に位置しているかを検出するようなものが含まれると認められる。
しかし、発明の詳細な説明及び図面には、基板の載置されている位置の座標を検出するようなセンサを備えた実施例等は記載されていないため、発明の詳細な説明及び図面を見ても、請求項1?3に係る発明を当業者が実施できるものとは認められない。

(2)平成30年1月26日付け拒絶理由通知(理由1)
本件出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

1.特開平4-111339号公報

4 当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号
請求項1の記載は、平成30年6月5日提出の手続補正書により、「前記基板載置領域内に載置された前記基板が所定位置に載置されているか否かを検出することができるセンサ」が、「前記基板載置領域内に載置された前記基板が前記開口を覆うように載置されているか否かを検出するために設けられたセンサ」へと補正された。
そうすると、基板載置領域内に載置された基板を検出するセンサが、実際に検出する事項が、補正前は基板が「所定位置に載置されているか否か」であったのが、補正後は基板が「開口を覆うように載置されているか否か」となり、基板の位置座標まで検出するのではなく、基板が単に開口を覆っているか否かを検出するものとなり、請求項1ないし3に係る発明は、本件明細書の段落【0028】-【0029】及び本件図面の図1ないし3を見た当業者であれば、実施可能なものであると認められる。
よって、本件出願は、上記平成30年6月5日提出の手続補正書により、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものとなった。

(2)特許法第29条第1項第3号
上記(1)のとおり、平成30年4月12日付け拒絶の理由は解消したが、次に、先の拒絶理由通知である平成30年1月26日付け拒絶の理由の理由1が解消しているか検討する。

ア 引用文献
当審が通知した上記平成30年1月26日付け拒絶の理由で引用した特開平4-111339号公報(以下「引用文献1」という)には、次の事項が記載されている。(下線は理解の便のため、当審で付した)

(ア)「以下、本発明の一実施例を第1図ないし第4図によって詳細に説明する。
第1図は本発明に係る半導体ウエハ用ステージの要部を拡大して示す断面図、第2図は本発明に係る半導体ウエハ用ステージの平面図、第3図は本発明の半導体ウエハ用ステージに使用する光反射式距離測定器のセンサーを拡大して示す断面図、第4図は光反射式距離測定器を使用した場合の反射光量とギャップ距離との関係を示すグラフである。これらの図において前記第5図および第6図で説明したものと同一もしくは同等部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。これらの図において、11は光反射式距離測定器本体、12はこの光反射式距離測定器本体のセンサーとしての光ファイバで、この光反射式距離測定器本体11と光ファイバ12とによって光反射式距離測定器が構成されている。前記光ファイバ12はステージ本体3に穿設された貫通孔13内に装着されている。この貫通孔13は、ウェハ載置面3aに開口するようにステージ本体3を上下に貫通して穿設されており、ステージ本体3に多数、ウエハ載置面3aの全面にわたって設けられている。」(2ページ右上欄16行-左下欄17行)

(イ)「本実施例ではこの貫通孔13は真空吸着装置に連通され、貫通孔13から空気を吸引することによってウエハ1がウエハ載置面3aに真空吸着されるように構成されている。」(2ページ右下欄3-6行)

(ウ)「前記光ファイバ12は、第3図に示すように、径方向中央部にウエハ1の裏面へ光を照射する発光部14が設けられると共に、この発光部14の外側に、前記ウエハ1の裏面で反射した光が入射される受光部15が設けられている。また、この光ファイバ12は、先端をウエハ載置面3aから0.1?0.3μm程度離間させて前記貫通孔13内に装着されており、光反射式距離測定器本体11に接続されている。」(2ページ右下欄7-15行)

(エ)「前記光反射式距離測定器本体11は、受光部15での受光強度(ウェハ1の裏面で反射した光の量)によりウェハ1の裏面から光ファイバ12の先端までの距離(ギャップ距離)を測定し、」(2ページ右下欄17-20行)

(オ)「受光部15に入射される反射光は、第4図に示すように、ギャップ距離に比例してその光量が増大されるため、ウェハ1における光ファイバ12と対向する部分に歪みが生じていたりしてギャップ距離が長くなれば、前記反射光の光量がその分だけ増大される。光反射式距離測定器本体11は、この反射光の光量からギャップ距離を測定する構造である。」(3ページ左上欄3-10行)

(カ)上記摘記事項(ア)ないし(オ)を、技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。
「ウエハ載置面3aと、該ウエハ載置面3aに開口された貫通孔13とを有し、該貫通孔から空気を吸引することにより前記ウエハ載置面3aにウエハ1を真空吸着するステージ本体3と、
ステージ本体3に載置されたウエハ1の裏面で反射した光の量を検出することで、ウエハ1の裏面と光ファイバ12との間隔を測定するセンサーとしての光ファイバ12とを備え、
当該光ファイバ12は、先端を前記ウエハ載置面3aから0.1?0.3μm程度離間させ、貫通孔13から空気を吸引することによってウエハ1がウエハ載置面3aに真空吸着されるように前記貫通孔13内に装着された、
半導体ウエハ用ステージ」(以下「引用発明」という)

イ 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「ウエハ載置面3a」、「ステージ本体3」、「センサーとしての光ファイバ12」、「半導体ウエハ用ステージ」は、それぞれ本願発明の「基板が載置される基板載置領域」、「ステージ」、「センサ」、「基板吸着装置」に相当する。

(イ)引用発明の「ウエハ載置面3aに開口された貫通孔13」は、本願発明の「基板載置領域内に形成された開口と、該開口に連通する吸引穴」に相当する。

(ウ)引用発明の「該貫通孔から空気を吸引することにより前記ウエハ載置面3aにウエハ1を真空吸着する」ことは、本願発明の「該吸引穴を介して真空吸引することにより前記基板載置領域内に前記基板を吸着して固定する」ことに相当する。

(エ)引用発明の光ファイバ12が、「先端を前記ウエハ載置面3aから0.1?0.3μm程度離間させ」たことは、本願発明のセンサが、「前記開口の近傍から離れて前記開口に対向するように前記吸引穴内に配置された先端部を有」することに相当する。ここで、本願発明の開口の「近傍」については、本願発明において「近傍」が含まれる距離範囲が特定されているものでもないから、引用発明の光ファイバ12の先端が、ウエハ載置面3aから「0.1?0.3μm程度離間」している構成も、本願発明のセンサの先端部が「開口の近傍から離れて」いる構成と実質的に差違はないものと認められる。

(オ)引用発明の光ファイバ12が、「貫通孔13から空気を吸引することによってウエハ1がウエハ載置面3aに真空吸着されるように前記貫通孔13内に装着され」たことは、光ファイバ12と貫通孔13との間に、吸引時に空気が通過する隙間ができるような配置関係があり、貫通孔13の開口から流れた空気が、光ファイバ12の先端に向かって流れることは当然認識できるから、本願発明のセンサが、「前記吸引穴内の真空吸引に伴って前記開口から前記先端部に向かって空気が流れるように、前記吸引穴の内周面との間に隙間ができるように配置され」たことに相当する。

(カ)引用発明の光ファイバ12は、「ステージ本体3に載置されたウエハ1の裏面で反射した光の量を検出する」ように構成され、ウエハ1の裏面での反射光を受光して検出することが前提となっている。そうすると、引用発明の光ファイバ12は、反射光を受光して検出することで、ウエハ1がステージ本体3の貫通孔13を覆うように載置されたことを検出していることになる。また、逆に、引用発明の光ファイバ12は、反射光を受光しない場合は、当然、ウエハ1がステージ本体3の貫通孔13を覆うようには載置されていないことを検出していることになるものと認められる。
したがって、引用発明の光ファイバ12によるセンサは、本願発明のセンサと対比して、「基板載置領域内に載置された前記基板が前記開口を覆うように載置されているか否かを検出する」点も相当するものである。

(キ)審判請求人は、平成30年6月5日提出の意見書において、本願発明のセンサが、「前記基板が前記開口を覆うように載置されているか否かを検出するために設けられたセンサ」であって、引用文献1に記載された光ファイバ12は「ウエハ1の歪を光反射式距離測定器で高精度に測定するため」に設けられたものであるから、本願発明のセンサとは検出の目的が相違するので、検出に関しては相違する旨主張している。
しかし、本願発明における上記「ために設けられた」という特定事項が、目的を限定しようとする意図があることは理解できるものの、物の発明である本願発明に対して、引用発明も物の発明として捉えると、上記(カ)のとおり、引用発明の光ファイバ12も、ウエハ載置面3aに載置されたウエハ1が貫通孔13を覆うように載置されているか否かを検出できる機能を備えているものであるから、本願発明のセンサが目的を限定しているからといって、物としての機能・構造には実質的な差違は認められない。したがって、上記「ために設けられた」という特定事項が付加されたことにより、本願発明が引用発明と相違するとは言えず、審判請求人の上記主張により両者が異なるものとはいえない。

(ク)そうすると、引用発明は、
「基板が載置される基板載置領域と、該基板載置領域内に形成された開口と、該開口に連通する吸引穴とを有し、該吸引穴を介して真空吸引することにより前記基板載置領域内に前記基板を吸着して固定することができるステージと、
前記開口の近傍から離れて前記開口に対向するように前記吸引穴内に配置された先端部を有し、前記吸引穴内の真空吸引に伴って前記開口から前記先端部に向かって空気が流れるように、前記吸引穴の内周面との間に隙間ができるように配置され、前記基板載置領域内に載置された前記基板が前記開口を覆うように載置されているか否かを検出するために設けられたセンサと、
を備えた基板吸着装置。」
となるものであって、本願発明と一致するものである。

5 むすび
したがって、本願発明は公知の刊行物に記載された引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-27 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-16 
出願番号 特願2012-172378(P2012-172378)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01L)
P 1 8・ 113- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 篠原 将之
栗田 雅弘
発明の名称 基板吸着装置  
代理人 山本 俊則  

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