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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A47C 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 A47C |
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管理番号 | 1347339 |
審判番号 | 不服2018-842 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-22 |
確定日 | 2019-01-15 |
事件の表示 | 特願2012-238162号「椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 87414号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年10月29日の出願であって、平成28年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月8日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年5月8日に意見書及び手続補正書が提出(以下「手続補正A」という。)されたところ、同年10月3日付けで当該手続補正Aについて補正の却下の決定がされ、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。 これに対し、平成30年1月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 平成28年10月26日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第3 審判請求時の補正について 1 補正の内容 補正前の請求項1を以下のとおり補正する(以下、審判請求時の補正を「本件補正」という。)。 なお、下線部が補正で追加された事項である。 「【請求項1】 肘掛けとメモ台とを備える椅子において、前記肘掛けは、着席者の肘を受ける肘受部と該肘受部の下方に設けられて該肘受部を支持する肘受支持部とを有し、前記メモ台は、天板と該天板を支持する天板支持部とを有し、前記肘受支持部と前記肘受部との間に前記天板支持部の基部を挟み込むものであって、前記天板支持部の基部は固定手段により回動を規制された状態で前記肘受支持部に固定され、前記肘受部は前記固定手段とは異なる固定手段により前記肘受支持部に固定されていることを特徴とする椅子。」 2 補正の適否 本件補正は、請求項1に記載された天板支持部の基部と肘受支持部との固定態様及び肘受部と肘受支持部との固定態様についてそれぞれ限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下検討する。 (1)刊行物 (1-1)刊行物1の記載事項 平成29年10月3日付け補正の却下の決定において引用された特許第4578646号公報(以下「刊行物1」という。)には、「テーブル付き椅子」について図面とともに以下の事項が記載されている。下線は当審で付与した。以下同様。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 側脚の上端前部に切り欠きを設け、この切り欠きを覆うように側脚の上端に固着した肘掛けの前部と側脚の切り欠きの部分とにより、アームの一端側を水平方向に回動可能に枢支する枢軸の上下部を支持するようにし、前記アームの他端側上面にテーブルを垂直軸をもって枢着し、かつ、テーブルの上面を、その一側縁が肘掛けの外側面に沿う肘掛け外側位置と、前記一側縁が背凭れと離隔して対向する背凭れ前方位置とに移動可能としたことを特徴とするテーブル付き椅子。」 (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、テーブル付きの椅子、特にテーブルを座者の側方位置から前方位置に移動可能としたテーブル付き椅子に関する。」 (1c)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 このような従来のテーブル付き椅子は、一般に、教室等のように、周囲が比較的狭い環境で使用することを目的としており、比較的広い環境条件下において、椅子の前方位置ばかりでなく、側方位置においても、テーブルを移動させて使用したい場合には不向きである。 【0004】 本発明は、上述の問題点に鑑み、テーブルを前方位置だけではなく、側方位置にも移動させて使用することができ、しかもテーブルを強固に体裁よく支持できるようにしたテーブル付き椅子を提供することを目的としている。」 (1d)「【0017】 枢軸(23)の上端部は、切り欠き(20)の上方を覆うように前方に延出する肘掛け(5)の前端部下面に設けた凹孔(図示略)に嵌合され、枢軸(23)はその上下の端部を肘掛け(5)と閉塞部材(21)とにより、側方に傾倒しないように強固に両持ち支持されている。」 (1e)「【0019】 アーム(22)の先端部は、水平の円板状に形成され、その上に、放射状のリブ(24a)を形成した支持板(24)が、垂直軸(25)により回動可能に取り付けられている。支持板(24)上には、テーブル(6)の天板(26)が、図示していない取付ねじをもって水平に取り付けられている。」 (1f)「【0022】 【発明の効果】 請求項1記載の発明によれば、テーブルを、座者の前方位置において使用できるだけでなく、肘掛けの外側方に位置させた状態においても使用できるので、座者の離着席の妨げとなることがなく、有意義に使用できる。 また、アームの枢軸を肘掛けと側脚とにより強力に支持することができ、テーブルの支持が安定するとともに、枢軸の上端が肘掛けにより覆われ、外部に露呈しないので、見栄えがよい。」 (1g)刊行物1には以下の図が図示されている。 (1-2)刊行物1に記載された発明 上記摘示(1a)?(1g)より、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、図面において使用した符号は全角とし、符号に付されている括弧「( )」は省略した。 <引用発明> 側脚1の上端前部に切り欠き20を設け、この切り欠き20を覆うように側脚1の上端に固着した肘掛け5の前部と側脚1の切り欠き20の部分とにより、アーム22の一端側を水平方向に回動可能に枢支する枢軸23の上下部を支持するようにし、前記アーム22の他端側上面にテーブル6を垂直軸25をもって枢着し、かつ、テーブル6の上面を、その一側縁が肘掛け5の外側面に沿う肘掛け外側位置と、前記一側縁が背凭れ3と離隔して対向する背凭れ前方位置とに移動可能とし、アーム22の先端部の上に、支持板24が垂直軸25により回動可能に取り付けられており、支持板24上に、テーブル6の天板26が取り付けられているテーブル付き椅子A。 (1-3)刊行物2の記載事項 平成29年10月3日付け補正の却下の決定において引用された特開2009-11608号公報(以下「刊行物2」という。)には、「椅子用回動収納式テーブル」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2a)「【0001】 本発明は、観覧席等の椅子用の回動収納式テーブルに関するものである。」 (2b)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、観覧席は通常左右に複数席を連結された列を成し、前後にいくつかの列が並ぶ状態に設置されるものであるから、テーブルが使用状態で固定されていると、列と列の間を人が通り抜ける際にテーブルが妨げになってしまう。 【0005】 そこで、特許文献1に記載のようにテーブルを回動させて座の下方に収納することで、通路を広げ、また着席する際の人の動きを妨げないようにする構造とするのが一般的であるが、従来の回動収納構造は、複雑かつ大掛かりでコストが嵩み、しかも外観が煩雑であり、また可動部が傷付き易く、着席者の使用感も必ずしも好ましくないといった問題があった。 【0006】 それゆえ本発明は、テーブルの回動収納構造をシンプルかつコンパクトにすることでコストを削減し、かつ外観を美麗に保ち、可動部が傷付くのを防止し、着席者の使用感を心地よくすることを目的としている。」 (2c)「【0017】 この実施例の椅子用回動収納式テーブル1は、後述の図9?図11に示すように、例えば観覧席などに用いられる例えば座起立型の連結椅子12に、テーブルユニットとして装着されるもので、図1?図5に示すように、主要部品としてテーブル受け2と、テーブル軸受け3と、テーブル本体4とを具えており、そのテーブル受け2は、摺接部材5を嵌着されて有している。 ・・・ 【0020】 テーブル軸受け3は、テーブル本体4を回動させて収納する際の支持部となるものであり、・・・ ・・・ 【0022】 テーブル受け2は、椅子にボルトで固定されてテーブル軸受け3を回動可能に支持するものであり、・・・ ・・・ 【0031】 そしてこの適用例では、上記実施例の椅子用回動収納式テーブル1のテーブル受け2を、各椅子の右側に位置する脚12dの前部上端部の、座12bに向く側の側面に、上記ボルト穴2aを介して3本のボルトで固定している。」 (2d)刊行物2には以下の図が図示されている。 (2) 対比・判断 (2-1)対比 ア 引用発明の「肘掛け5」は、その構造、機能からみて,本願補正発明の「着席者の肘を受ける肘受部」に相当するといえ、以下同様に、「側脚1」は「肘受支持部」に、「肘掛け5」と「側脚1」を合わせた構成は「肘掛け」に、「テーブル6の天板26」は「天板」に、「支持板24」と「アーム22」を合わせた構成は「天板支持部」に、「テーブル付き椅子A」は「椅子」に相当するといえる。 イ 本願補正発明の「メモ台」は、「天板と該天板を支持する天板支持部とを有」するものであるから、上記アでの相当関係をも踏まえると、引用発明の「テーブル6の天板26」、「支持板24」及び「アーム22」を合わせた構成は、本願補正発明の「メモ台」に相当するとともに、「前記メモ台は、天板と該天板を支持する天板支持部とを有」するという構成にも相当するといえる。 ウ 引用発明の「テーブル付き椅子A」は、「肘掛け5」及び「側脚1」並びに「テーブル6の天板26」、「支持板24」及び「アーム22」を備えているから、上記ア、イでの相当関係をも踏まえると、本願補正発明の「肘掛けとメモ台とを備える椅子」にも相当するといえる。 エ 上記アで述べたように、引用発明の「肘掛け5」は本願補正発明の「着席者の肘を受ける肘受部」に相当し、引用発明の「側脚1」は本願補正発明の「肘受支持部」に相当し、引用発明の「肘掛け5」と「側脚1」を合わせた構成は本願補正発明の「肘掛け」に相当するといえるから、引用発明の「肘掛け5」と「側脚1」を合わせた構成は、本願補正発明の「前記肘掛けは、着席者の肘を受ける肘受部と該肘受部の下方に設けられて該肘受部を支持する肘受支持部とを有」するという構成にも相当するといえる。 以上を総合すると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 肘掛けとメモ台とを備える椅子において、前記肘掛けは、着席者の肘を受ける肘受部と該肘受部の下方に設けられて該肘受部を支持する肘受支持部とを有し、前記メモ台は、天板と該天板を支持する天板支持部とを有する椅子。 <相違点1> 本願補正発明は、「前記肘受支持部と前記肘受部との間に前記天板支持部の基部を挟み込むものであって、前記天板支持部の基部は固定手段により回動を規制された状態で前記肘受支持部に固定され」るものであるのに対して、引用発明は、「側脚1の上端に固着した肘掛け5の前部と側脚1の切り欠き20の部分とにより、アーム22の一端側を水平方向に回動可能に枢支する枢軸23の上下部を支持するように」されるものである点。 <相違点2> 本願補正発明は、「前記肘受部は前記固定手段とは異なる固定手段により前記肘受支持部に固定されている」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。 (2-2)判断 相違点1について検討する。 ア 引用発明は、「従来のテーブル付き椅子は、一般に、教室等のように、周囲が比較的狭い環境で使用することを目的としており、比較的広い環境条件下において、椅子の前方位置ばかりでなく、側方位置においても、テーブルを移動させて使用したい場合には不向きである」との問題点に鑑み、「テーブルを前方位置だけではなく、側方位置にも移動させて使用することができ、しかもテーブルを強固に体裁よく支持できるようにしたテーブル付き椅子を提供すること」を解決課題とするものということができる(摘示(1c))。 そして、かかる課題を解決するために、「側脚1の上端に固着した肘掛け5の前部と側脚1の切り欠き20の部分とにより、アーム22の一端側を水平方向に回動可能に枢支する枢軸23の上下部を支持するように」するという構成(以下「構成A」という。)を採用したものといえ(摘示(1a)の【請求項1】)、かかる構成を採用することにより、「テーブルを、座者の前方位置において使用できるだけでなく、肘掛けの外側方に位置させた状態においても使用できるので、座者の離着席の妨げとなることがなく、有意義に使用できる。また、アームの枢軸を肘掛けと側脚とにより強力に支持することができ、テーブルの支持が安定するとともに、枢軸の上端が肘掛けにより覆われ、外部に露呈しないので、見栄えがよい。」という作用効果が奏されるものということができる(摘示(1f))。 そうすると、引用発明の構成Aは、引用発明の課題解決のために必要不可欠な構成であるということもできる。 イ 引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を有するものとするためには、前記構成Aにおいて、少なくとも「アーム22の一端側を水平方向に回動可能に枢支する」構成に代えて、アーム22の回動を規制された状態で固定する構成を採用する必要があるところ、当該構成を採用すると、引用発明における「テーブルを前方位置だけではなく、側方位置にも移動させて使用することができ」るという主たる課題が解決できなくなるので、当業者といえども、当該構成を採用するという発想には至らないというべきである。 ウ なお、刊行物2には、「テーブル受け2と、テーブル軸受け3と、テーブル本体4とを具え」、「テーブル軸受け3は、テーブル本体4を回動させて収納する際の支持部となるものであり」、「テーブル受け2は、椅子にボルトで固定されてテーブル軸受け3を回動可能に支持するものであり」、「テーブル受け2を、各椅子の右側に位置する脚12dの前部上端部の、座12bに向く側の側面に、上記ボルト穴2aを介して3本のボルトで固定」している「椅子用回動収納式テーブル1」が記載(摘示(2c))されているところ(以下「刊行物2技術」という。)、刊行物2技術は、「テーブルの回動収納構造」に係る技術であるから、引用発明のようにテーブルを前方位置でも側方位置でも使用できるようにするものとはそもそも前提構成において大きく相違するばかりか、刊行物2技術は、「テーブルの回動収納構造をシンプルかつコンパクトにすることでコストを削減し、かつ外観を美麗に保ち、可動部が傷付くのを防止し、着席者の使用感を心地よくすることを目的」とする技術であり(摘示(2b))、上記アで述べた引用発明の課題とも相違するものであるから、当業者といえども、引用発明に刊行物2記載技術を適用するという発想には至らない。のみならず、刊行物2技術は、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を有していない。 したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び刊行物2技術に基づいて当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本願補正発明は、引用発明、引用文献2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (3)小括 以上より、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第4 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。そして、原査定の拒絶の理由は本件補正により解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-12-25 |
出願番号 | 特願2012-238162(P2012-238162) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(A47C)
P 1 8・ 55- WY (A47C) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
仁木 学 和田 雄二 |
発明の名称 | 椅子 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 林 道広 |
代理人 | 堅田 多恵子 |