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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41F
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41F
審判 一部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1347649
異議申立番号 異議2018-700064  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-25 
確定日 2018-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6168983号発明「LED・UV乾燥機の温度を監視する装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6168983号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項10について訂正することを認める。 特許第6168983号の請求項1,3ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6168983号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は,平成25年12月20日(パリ条約による優先権主張平成24年12月20日 独国)に特許出願され,平成29年7月7日に特許権の設定登録がされ,同月26日に特許掲載公報が発行され,平成30年1月26日にその請求項1,3ないし10に係る特許に対し,特許異議申立人 斎藤 喬(以下,単に,「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後,当審において,平成30年4月12日付けで取消理由を通知し,その指定期間内である同年7月13日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という。)がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正請求による訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,本件特許請求の範囲の請求項10の「所定の値との目標値・実際値比較を実行し,より大きなずれが生じると,LED・UV乾燥機のオフを行う」を「所定の値との目標値・実際値比較を実行し,所定の値からの所定のずれが生じると,LED・UV乾燥機のオフを行う」ものに訂正するものである。
ここで,訂正前の請求項10は,独立形式請求項であって他の請求項を引用するものでないから,上記訂正の請求は,一群の請求項毎に請求されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)本件訂正請求による請求項10についての訂正は,所定の値と目標値・実際値とを比較して,「より大きなずれ」が生じることにより,「LED・UV乾燥機のオフを行う」ものと特定されていたところの「より大きなずれ」が生じることという条件に代えて,「所定の値からの所定のずれ」が生じることという条件に代える内容の訂正を行うものである。
ここで,「より大きな」とは,何かと比較して大きいことを特定する場合に用いられるものであるところ,何と比較して「より大きなずれ」が生じることを特定しようとするのかが定かでないことから,比較の基準が明らかでない点で明瞭でない記載である。そして,当該記載を「所定の値からの所定のずれ」と訂正することによって,「所定の値と目標値・実際値とを比較して,「所定の値からの所定のずれ」が生じる場合と特定されることにより,予め定められたずれが生じた場合であることが明確に特定されることとなった。
したがって,本件訂正請求による訂正事項は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものといえる。
(2)願書に添付した本件特許明細書には,「【0016】この課題を解決するための本発明の方法によれば,LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,カバーの温度を,カバーに接触することにより又は非接触式に測定し,温度測定値を評価ユニットに供給し,そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し,所定の値からのずれが生じると,汚れを表示する信号を出力する」と記載されるとともに,「【0017】 この課題を解決するための本発明の方法によれば,LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,カバーの温度を,カバーに接触することにより又は非接触式に測定し,温度測定値を評価ユニットに供給し,そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し,より大きなずれが生じると,LED・UV乾燥機のオフを行う。」と記載されている。
(3)これらの記載によれば,本件特許明細書には,汚れを検出する「所定の値からの所定のずれ」よりも大きなずれが生じた場合に,LED・UV乾燥機のオフを行うことが記載されていることからすれば,結局本件特許明細書には,「所定の値から所定のずれ」が生じた場合にLED・UV乾燥機のオフを行うことが記載されているものというべきである。
してみると,本件訂正請求による訂正事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の全ての記載された技術事項との関係で新たな技術事項を導入するものではない。
(4)また,本件訂正請求による訂正により,請求項10に係る発明を実質的に拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかであるから,本件訂正請求による訂正事項は,同条第9項で準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
上記のとおりであるから,本件特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項10について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
特許第6168983号の請求項1,3ないし9に係る特許発明(以下,「本件特許発明1ないし9」などという。)及び本件訂正請求による訂正後の請求項10に係る訂正発明(以下,「本件訂正発明10」という。)は,それぞれつぎのとおりのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDのアセンブリを備え,
前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されており,
前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する,
UVインキ又は塗料を硬化する装置であって,
前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられていることを特徴とする,UVインキ又は塗料を硬化する装置。
【請求項2】
前記透過性のカバー(24)の温度差を把握するための,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサ(26,27;31,32,33)が設けられている,請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記温度センサ(26,27;31,32,33)は,目標値・実際値比較を実行するための評価ユニット(28)に接続されている,請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記温度センサ(26,27)は,前記透過性のカバー(24)に接触して配置されている,請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記温度センサ(31,32,33)は,非接触式に測定するように,前記透過性のカバー(24)から間隔を置いて配置されている,請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記複数のLED(21)と前記透過性のカバー(24)との間の光線路に,UV光線を集束するための第1の光学系(22)及び第2の光学系(23)が配置されている,請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備える枚葉輪転印刷機。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項9】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が,前記カバー(24)の温度を,前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し,
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し,
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し,
所定の値からのずれが生じると,汚れを表示する信号を出力する,
ことを特徴とする,LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。
【請求項10】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が,前記カバー(24)の温度を,前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し,
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し,
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し,
所定の値からの所定のずれが生じると,LED・UV乾燥機のオフを行う,
ことを特徴とする,LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。

第3 取消理由通知における取消理由及び取消理由で採用されなかった特許異議申立理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が通知した取消理由通知の取消理由の概要は,「特許異議申立書57頁下から3行?58頁1行に記載の理由」のとおり,すなわち「本件特許発明10の「より大きなずれが生じると,」については,比較の基準が不明確な表現であり,このような比較の基準が不明確な表現がある結果,本件特許発明10の発明の範囲が不明確となっている」から,請求項10に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。

2 特許法第29条第2項違反に係る異議申立理由
特許異議申立人は,証拠方法として甲1号証(特表2005-524989号公報),甲2号証(特開2011-42061号公報),甲3号証(特開2006-159417号公報),甲4号証(特開2007-42293号公報),甲5号証(特開2008-84568号公報)及び甲6号証(特開2006-145864方公報)を提出し,
(1)本件特許発明1について,(1-1)甲1号証に記載の発明並びに甲2号証及び甲3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(1-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(2)本件特許発明3について,(2-1)甲1号証に記載の発明並びに甲2号証及び甲3号証及び甲1号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(2-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(3)本件特許発明4について,(3-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証,甲3号証,甲4号証及び甲5号証に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(3-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(4)本件特許発明6について,(4-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証,甲3号証及び甲1号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(4-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項と甲1号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(5)本件特許発明7について,(5-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証及び甲3号証に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(5-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(6)本件特許発明8について,(6-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証及び甲3号証に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること,あるいは,(6-2)甲2号証記載の発明並びに甲4号証及び甲5号証の少なくとも一方に記載された技術事項と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(7)本件特許発明9について,(7-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証,甲3号証及び甲6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
(8)本件訂正発明10について,(8-1)甲1号証に記載の発明,甲2号証,甲3号証及び甲6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを,
主張し,請求項1,3,4,6ないし10に係る特許は,いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。

3 特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号違反に係る異議申立理由
本件特許発明1,5,9及び10について,特許明細書の発明の詳細な説明の記載によってサポートされておらず,また,これらの発明については,発明の詳細な説明において当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張し,請求項1,5,9及び10に係る特許は,いずれも特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであると主張している。

第4 取消理由についての当審の判断
1 本件訂正発明10について
上記第2の2において説示したように,本件訂正請求により請求項10の「より大きなずれ」を「所定の値からの所定のずれ」と訂正がなされた。そして,この訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,当該訂正により,「より大きな」という比較の基準が明確でない語句が「所定の値からの所定のずれ」という予め定められた値からの予め定められたずれという明確な語句に訂正された。
したがって,本件訂正発明10は,明確なものとなったから,取消理由で通知した請求項10に係る特許についての取消理由は解消した。

第5 取消理由に採用しなかったその他の特許異議申立理由についての検討
1 提出された証拠の記載
(1)甲1号証
本件特許に係る出願の優先日(パリ条約による優先権主張日:平成24年12月20日(以下同じ。))前に頒布された刊行物である甲1号証にはつぎの事項が記載されている。
ア 「【0017】
図2には,物質変換処理に使用可能な出力濃度の出力を生成できる固体発光モジュール20の可能な一例がさらに示されている。モジュール20は,基板24上に密集したアレイ26上に取り付けられた複数の固体発光器,例えばLEDチップ22を含み,物質変換処理を行うための高出力濃度の出力を生成する。アレイ上に構成されて物質変換処理を実現可能な波長を生成し,約50mW/cm^(2)以上の出力濃度の出力を生成するLEDチップが商業的に入手可能である。当業者は,LEDチップを,特定の物質変換用途のためのその波長出力に応じて選択できる。上述のように,LEDチップ22の間隔または密度は,物質変換処理の出力濃度要件に依存する。基板24は,電気的絶縁体として機能することもでき,熱伝導性であり,アルミナ(Al_(2)O_(3)),窒化アルミニウム(AlN),サファイア,炭化ケイ素(SiC),ダイアモンド,または酸化ベリリウム(BeO)などのセラミック材料,GaAs,Siまたは熱伝導のためのサーマルビア(thermal vias)または金属層を用いる積層ベースまたはその他の基板などの半導体材料で製造することができる。以後,熱伝導性の基板とは,これらの材料の任意の1つで製造されたものをいう。導電回路パターン28が,基板24の一表面上に形成されている。導電回路パターン28は,導電性材料,例えば銅,パラジウム,金,銀,アルミニウムまたはこれらの合金または層でできている。LEDチップ22は,半田,導電性接着剤または他の既知の金属結合技術によって基板24に取り付けられ,ワイヤ30などの適当な導電リードによって回路パターン28に電気的に接続されている。あるいは,LEDチップ22を基板24に直接形成してもよい。
【0018】
ワイヤ30は,ワイヤボンディング,フリップチップ,表面実装または他の結合技術を含む,任意のワイヤボンディングまたは電気接合技術によって,回路パターン28を介してLEDチップ22及び基板24に接続されている。回路パターン28は,厚膜または薄膜パッシブコンポーネント32への接続を含んでもよい。厚膜コンポーネント32をレーザトリミングして,アレイ26全体で均一な光強度を実現することができる。電源34が設けられ,回路パターン28に接続されてLEDチップ22に電力を供給する。電源34をコンピュータコントローラ36に接続し,またはコンピュータコントローラ36によって制御し,LEDチップ22が可変の回数または強度でオンオフまたはパルス駆動できるようにしてもよい。少なくとも1つの温度センサ37を,回路パターン28またはモジュールの他の要素(aspect)に既知の任意の方法で接続し,基板24またはモジュールの他の要素の温度をモニタしてもよい。センサ37を制御回路を介して電源に接続し,モジュール20の過熱を防ぐことができる。一般に,温度の閾値は約80℃である。よって,温度センサ37からの入力を使用して,リアルタイムの原位置での(in-situ)温度制御が提供できる。基板24をヒートシンク38に取り付けるか,あるいは基板をヒートシンクに熱結合させることにより,所望であれば,熱安定性及び熱拡散を実現できる。」
イ 「【0020】
図3に,密封された空冷LEDチップアレイによって,加工物体48,例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化することができる固体光装置46の可能な一例が示されている。硬化処理を実行するために,装置46は,約300nmから約400nmの間の波長の光を,約30から約200mW/cm^(2)の出力濃度で提供することができる。装置46は,基板50を含む。基板50は,上記の任意の材料で製造できるが,セラミックまたはアルミナで製造されるのが好ましい。LEDチップ52のアレイが基板50上に配置され,加工物体48よりわずかに大きい光パターンを生成する。このように大きい光パターンにより,加工物体48の端部において,下方に向かう適切なエッジ硬化が保証される。基板50は,モジュールハウジング54内に封入または取り付けられてもよい。結合剤56を用いて,基板50をハウジング54に取り付けることができる。結合剤56は,既知の商業的に入手可能な接着剤から選択できる。結合剤56は,熱伝導特性を有するものが好ましい。ハウジング54は,加工の容易な金属から製造でき,熱放散に対して優れた熱伝導体である。ガラスまたはプラスチック製のウィンドウ58が,モジュールハウジング54に形成されることにより,LEDチップ52によって生成された光が,このウィンドウを通過して加工物体48まで届く。ウィンドウ58は,高光透過性環境シール60によってモジュールハウジング54に封止されている。シール60は,任意の商業的に入手可能な接着シールでよい。端子62が基板50上に取り付けられまたは形成され,モジュールハウジング54の絶縁体68に取り付けられた応力除去電気接続部66を介して電源64に接続されている。オプションの温度センサ70がさらに基板50に設けられ,端子72及び絶縁体74を介して温度センサ読取り回路76に接続されている。温度センサ読取り回路76は電源64に接続され,LEDチップ52が過熱するのを防ぐ。モジュールハウジング54は,任意のコネクタ,例えばネジ(図示せず)により,ヒートシンク80に取り付けられる。ヒートシンク80は,任意の熱伝導材料,例えばアルミニウムなどからできた複数のフィンを有することができる。ファン82をヒートシンク80に接続し,ファン82によって周囲空気が取り込まれ,ヒートシンク80を通過して吹きぬけさせることができる。その後,加熱された空気はモジュール46の外に搬送される。硬化の多くが,約395nmの光波長で行われる。LEDチップ52は,好ましくは,意図される使用の硬化用途において硬化剤を活性化させる範囲に対応する範囲で光出力を生成する。LEDチップ52をパルス駆動してその出力強度を高め,特定硬化用途のための約400mW/cm^(2)以上の出力濃度を実現することができる。ただし,他の硬化用途では,別の光波長及び別の出力濃度の出力が要求される場合がある。」
ウ 「【0021】
図4から図6には,インライン物質変換の用途,例えばインクまたはコーティングの硬化などの高強度表面修正,またはイメージ露光の用途のために,複数の固体光モジュールを光バー84に組み込んだ実施形態が示されている。例えば,インターナショナルインク社(International Ink Co.米国ジョージア州ゲインズヴィル)製の低粘度紫外線硬化インク(Low Viscosity Ultraviolet Curing Ink)は,約350nmから約400nmの波長を用いて約200mW/cm^(2)で反応する。光バー84は直線状またはアレイ状に並んだ複数のモジュールを含み,軸Xに沿って延びている。光バー84は好ましくは軸Yに沿って,目標または加工物体に対して移動することにより,光の出力88が加工物体86に対して処理を行うことができる。なお,図示されないが,光バー84をサポート上に取り付け,光バー84を加工物体上で移動させてもよい。」
「【0023】
図5及び図6に示されるように,光バー84は,これに実装または配置された1つ以上の固体光モジュール90を含む。各モジュール90は,基板94上に実装または配置されたLEDチップ92の密集したアレイを含む。LEDチップ92は,処理の出力濃度に応じて,高密度アレイ状で,基板90に表面実装またはワイヤ接着できる。各基板94は好ましくは,上述のように,最適な熱移動材料によるプリント回路基板である。基板94は,好ましくは良好な熱伝導性を有する接着剤98によって,光バーハウジング96に取り付けることができる。モジュール90は,LEDチップ92によって生成される光出力がウィンドウ89を通過して加工物体86に向けられるように取り付けられている。電源100(図4)は,第1組のケーブル102によって電力を供給し,光バー84のすべてのモジュール90を一緒に,あるいは各モジュール90を別々に駆動する。各基板94は温度センサ104を含んでもよい。電源100は,第2組のケーブル106によって各基板94の温度を検出する。なお,第1組及び第2組のケーブル102,106は,簡略化して示されている。好ましくは,各モジュール90が別々に制御できるように,各モジュール90が固有の電力ケーブルの組を有する。各温度センサ104は,電源100に接続された温度検出回路108に接続されている。パワーインバスバー(power-in bus bar)110及びパワーアウトバスバー(power-out bus bar)112が,光バー84の電力入力及び出力接続部として機能する。
【0024】
光バー84の温度を制御するため,流体循環チャネルまたはコンジット114を使用して,冷却が必要な光バーの領域に流体を循環させてもよい。光バーハウジング96は,アルミニウムまたは銅などの上部及び下部金属プレート116及び118を含み,これらの間に流体循環チャネルまたはコンジット114を配置し,光バーハウジング96から熱が流体に移され,その後,流体が光バーハウジング96の外に搬送されるようにすることができる。あるいは,光バーハウジング96に複数のチャネル120(図6)を設け,冷却剤を第1のコンジット(図示せず)からこれらのチャネルを通過して供給し,冷却剤が光バーハウジング96に直接接触し,第2のコンジット(図示せず)を通過して光バーハウジング96から流出するようにしてもよい。これにより,冷却剤の乱流を発生させることができ,より大幅な熱移動が実現する。電源101(図4)は,温度及び許容できる光出力を検出することによって冷却剤を制御する。光バー84は,好ましくは閉じたアセンブリであり,物理的衝撃または気相または液相のいずれかの汚染物に起因し得る周囲ダメージからモジュール90を保護する。剛性カバー122が構造的な強度を提供しウィンドウ89を保持する。ウィンドウ89は,必要であれば,さらなるUV光透過のためにコーティングしてもよい。図6に示すように,LEDチップ92に近接して,またはLEDチップ92に関連づけて,少なくとも1つの光学要素124を設け,光出力88をZ軸に位置合わせしてもよい。光学要素124は,単一要素でも複数要素でもよく,各LEDチップ92ごとに分離されていてもよいし,複数または多数のLEDチップ92に対して作用するように設計してもよい。」
エ 「【0028】
図10には,50mW/cm^(2)以上の出力濃度の出力を要求する検査用途のための,反射/透過光学素子を利用する高強度光源の別の実施形態が示されている。モジュール160からの光は,第1の光学素子162,例えば融合型の(fused)テーパ入れ子式レンズペアまたは他の光学素子によって集光される。モジュール160は,基板163に表面実装されたLEDチップ161の密集したアレイを含む。光はさらに,第2光学素子166,例えば反射表面などを介して加工物体164に向けられる。蛍光発光検査の場合,モジュール160は,好ましくは,約300nmから約400nmの波長を有する光を生成する。第2光学素子166は,好ましくは,約380nmの光波長において95%以上を反射する高度反射ミラーであるとともに,450nmから600nmの蛍光波長において高度に透過性である。加工物体164からの蛍光波長は第2光学素子166を透過してカメラ168に供給され,カメラ168が蛍光波長を検出する。本実施形態の簡素化された光学系及びより高濃度の光出力により,従来技術の検査装置では,その複雑なデザイン及び限定された均一性及び出力濃度のために不可能であった用途が実現できる。図10及び図11の実施形態は,より高い光出力を供給し,例えば,クリーニング,殺菌及び他の高出力濃度の用途を実行する。例えば,1W/cm^(2)のコヒーレントパワーを1つ以上の光学装置162に供給して1mm^(2)から4mm^(2)のビームを形成することにより,光学的損失を無視して出力濃度を100倍増加させることができる。出力濃度をさらに増加させるには,アレイ状のダイオードレーザ装置を代わりに使用することができる。」
オ 「【0035】
図15は,投影リソグラフィ(projection lithography)のための,本発明の1つの可能な実施形態を示し,モジュール190が,マスクまたは液晶ディスプレイ192上の像をフォトポリマー加工物体194に投影し,マスクのポジティブまたはネガティブイメージを硬化されたフォトポリマーに形成する。液晶ディスプレイ192は,図4から図6に関して示され,記載されたように,電源(図示せず)に接続することができる。投影リソグラフィは,極めて均一性の高い光源を必要とする。モジュール190は,上述のように,LEDチップ198の密集したアレイを備える基板196と,空冷ヒートシンク200とを含む。50mW/cm^(2)以上の出力濃度の出力で投影処理を行うことのできる波長を生成するLEDチップが商業的に入手可能である。当業者であれば,特定の投影用途に対し,その波長出力に応じてLEDチップを選択できる。コリメーション光学素子202を設けて,LEDアレイからの光出力をコリメートすることができ,投影される像のサイズに応じて,縮小光学系204または拡大光学系206のいずれかが設けられる。
【0036】
図16は,クリーニングまたは表面修正のための,本発明の1つの可能な実施形態を示し,光学的拡大及びパルス技術の両方によって最大半導体光強度がさらに拡大されて,アブレーション,物質または分子の分離,及び他の効果に十分な出力濃度を達成する。モジュール208は,図4から図6に関して記載されたのと同様の電源を有するLEDチップ212の密集したアレイを備えた基板210を含む。単一または複数のレンズ214を設け,モジュール208からの光出力212の線形拡大を実現し,加工物体216に対して作用を実行する。
【0037】
本発明の発光モジュールは,高強度の紫外線光を要求する種々の用途において使用できる。例えば,少なくとも約40ミリ秒のあいだ印加された約400nm未満の波長の光の約10から20mW/cm^(2)の出力濃度を使用することで,無機質(mineral),ポリマーの蛍光発光用途及び医療の検査及び測定に発光モジュールを使用することができる。水の殺菌には,約254nmの波長の光を,約2から42mW/cm^(2)の出力濃度で提供でき,血液または他の生物学的物質の殺菌には,約325nmから約390nmの波長の光を約80mW/cm^(2)の出力濃度で提供できる。例えば,接着剤,塗料,インク,シール,絶縁保護コーティング,及びマスクのポリマー硬化においては,約300nmから約400nmの波長の光を,約30から300mW/cm^(2)の出力濃度で提供できる。例えば,回路及びプリンティングのためのイメージング露光には,約246nm,365nm,405nm及び436nmの波長の光を約25から300mW/cm^(2)の出力濃度で約6秒から30秒のあいだ供給する。高速プロトタイピング(rapid prototyping)のためのステレオリソグラフィの用途では,約325nmから約355nmの波長の光の約10mJ/cm^(2)以上の出力濃度を約20ナノ秒のあいだ提供する。例えばエポキシ樹脂や指紋などの屑除去のための有機クリーニングの用途では,約172nm及び約248nmの波長の光を,約60-500mJ/cm^(2)の出力濃度で約20ナノ秒のあいだ提供する。物質除去のためのフォトアブレーションでは,約400nm未満の波長の光を,約1E7W/cm^(2)の出力濃度で出力を約20ナノ秒のあいだ利用する。光は駆動回路によってパルス駆動することができ,光学素子は,おそらくは屈折率分布型平面レンズ物質によって,指向性及び均一性を高めることができる。」

カ 上記アの記載事項及び図2を参酌すると,「基板上に密集したアレイ上に取り付けられた複数の固体発光器,例えばLEDチップを含み,物質変換処理を行うための高出力濃度の出力を生成するモジュールであって,導電回路パターンが,基板の一表面上に形成され,電源が設けられ,回路パターンに接続されてLEDチップに電力を供給し,少なくとも1つの温度センサを,回路パターンまたはモジュールの他の要素に既知の任意の方法で接続し,基板またはモジュールの他の要素の温度をモニタし,センサを制御回路を介して電源に接続し,モジュールの過熱を防ぐことができるようにしたモジュール」の発明(以下,甲1の1発明という。)が記載されているものと認められる。
キ 上記イの記載事項及び図3を参照すると,「密封された空冷LEDチップアレイによって,加工物体,例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化することができる固体光装置であって,硬化処理を実行するために,装置は,約300nmから約400nmの間の波長の光を,約30から約200mW/cm^(2)の出力濃度で提供することができ,LEDチップのアレイが基板上に配置され,加工物体よりわずかに大きい光パターンを生成するものであり,基板は,モジュールハウジング内に封入または取り付けられており,ガラスまたはプラスチック製のウィンドウが,モジュールハウジングに形成されることにより,LEDチップによって生成された光が,このウィンドウを通過して加工物体まで届くようにされており,温度センサがさらに基板に設けられ,端子及び絶縁体を介して温度センサ読取り回路に接続され,温度センサ読取り回路は電源に接続され,LEDチップが過熱するのを防ぐようにされている固体光装置」の発明(以下,「甲1の2発明」という。)が記載されているものと認められる。
ク 上記ウの記載事項及び図4ないし6を参酌すると,「インクの硬化の用途のために,複数の固体光モジュールを光バーに組み込んだものであって,低粘度紫外線硬化インクは,約350nmから約400nmの波長を用いて約200mW/cm^(2)で反応するものであり,光バーは,これに実装または配置された1つ以上の固体光モジュールを含み,各モジュールは,基板上に実装または配置されたLEDチップの密集したアレイを含むものであり,光バーは,好ましくは閉じたアセンブリであり,剛性カバーが構造的な強度を提供しウィンドウを保持し,モジュールは,LEDチップによって生成される光出力がウィンドウを通過して加工物体に向けられるように,基板は,光バーハウジングに取り付けられ, 電源は,第1組のケーブルによって電力を供給し,光バーのすべてのモジュールを一緒に,あるいは各モジュールを別々に駆動し,各基板は温度センサを含み,電源は,第2組のケーブルによって各基板の温度を検出する光バー」の発明(以下,「甲1の3発明」という。)が記載されているものと認める。

(2)甲2号証
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲2号証にはつぎの事項が記載されている。
ア 「【0033】
本実施形態では,インクやコーティング剤が塗布された印刷対象物10に紫外線を照射して印刷対象物10上のインクやコーティング剤を硬化させる紫外線照射装置1を,印刷機20の表面処理ユニット29の圧胴32に対向させて配置させている。紫外線照射装置1は,回転する印刷対象物10に略均一に紫外線が照射できるように,光源として複数個の紫外線LED2(図1(a)を参照)を印刷対象物10の搬送方向と略垂直な圧胴32の幅に沿って並べたライン状の光出射面1a(図1(a)を参照)を備えている。紫外線照射装置1は,表面処理部23の圧胴32側に,紫外線照射装置1の紫外線LED2からの紫外線を,印刷部22にて各インクおよび表面処理部23にてニスを付着させた印刷対象物10に照射することにより,各インクやニスを硬化させる。紫外線が照射された印刷対象物10は,圧胴32の回転によって排紙部24側に搬送される。」
イ 「【0035】
印刷機20は,給紙部21から供給される印刷対象物10に対して各版に対応してそれぞれ印刷部22によりインクの付着および表面処理部23にてニスの付着を行った後,紫外線照射装置1によりインクおよびニスの硬化を行い排紙部24から取り出すことができる。」
ウ 「【0047】
本実施形態の紫外線照射装置1は,印刷対象物10が搬送される圧胴32を覆うように,印刷対象物10の搬送方向と略垂直方向に長尺で,内部が空洞な略直方体の金属(たとえば,ステンレス)製のカバー部材1bを備えている。紫外線照射装置1は,カバー部材1bの印刷対象物10と対向する一端面側に複数個の紫外線LED2を長尺の長手方向に沿って並べて配置させている。紫外線照射装置1の前記一端面側には,各紫外線LED2を保護し,各紫外線LED2からの紫外線を透過する石英ガラスなどからなる紫外線透過部材1cが設けられており,紫外線透過部材1cの表面が,紫外線LED2からの紫外線を出射させるライン状の光出射面1aとなる。」
エ 上記アないしウによれば,甲2号証には,「インクやコーティング剤が塗布された印刷対象物に紫外線を照射して印刷対象物上のインクやコーティング剤を硬化させる紫外線照射装置であって,印刷対象物が搬送される圧胴を覆うように,印刷対象物の搬送方向と略垂直方向に長尺で,内部が空洞な略直方体の金属(たとえば,ステンレス)製のカバー部材を備え,カバー部材の印刷対象物と対向する一端面側に複数個の紫外線LEDを長尺の長手方向に沿って並べて配置させ,前記一端面側には,各紫外線LEDを保護し,各紫外線LEDからの紫外線を透過する石英ガラスなどからなる紫外線透過部材が設けられており,紫外線透過部材の表面が,紫外線LEDからの紫外線を出射させるライン状の光出射面となることにより,回転する印刷対象物に略均一に紫外線が照射できるように,光源として複数個の紫外線LEDを印刷対象物の搬送方向と略垂直な圧胴の幅に沿って並べたライン状の光出射面を備え,表面処理部の圧胴側に,紫外線照射装置の紫外線LEDからの紫外線を,印刷部にて各インクおよび表面処理部にてニスを付着させた印刷対象物に照射することにより,各インクやニスを硬化させる紫外線照射装置」の発明(以下,「甲2発明という。)が記載されているものと認める。
オ 「【0007】
ところで,紫外線照射装置は,光源から出射した紫外線を効率よく印刷対象物上のインクに照射させるため,印刷対象物とできるだけ近接するように配置される傾向にある。この場合,印刷機が未硬化のインクが付着した印刷対象物を搬送する際に,紫外線照射装置の光出射面に,印刷対象物のインクの一部が付着する場合がある。
【0008】
ここで,紫外線LEDは,半導体発光素子からなる点光源であり,メタルハライドランプなどと比較して紫外線の照射エリアが狭い。そのため,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置は,複数個の紫外線LEDを並べて光出射面をライン状にしているが,メタルハライドランプなどを備えた紫外線照射装置の光出射面と比較して光出射面が小さく,光出射面に付着したインクの影響を受け易い傾向にある。すなわち,光源として紫外線LEDを備えた紫外線照射装置では,ライン状の光出射面にインクが付着すると,単なる光出射面の汚れだけでなく,付着硬化したインクが紫外線を遮光して印刷対象物上へのインクの硬化を十分に行うことができない恐れがある。
【0009】
このような,インクの硬化が不十分な印刷対象物上に次の印刷対象物が載せられると,重なっている印刷対象物の裏面に未硬化のインクが付いて汚れるインクの裏移りが生ずるなどの印刷品質の低下が生ずる場合がある。さらに,未硬化のインクにより印刷対象物同士が引っ付く場合もある。
【0010】
そのため,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置は,紫外線照射装置のライン状の光出射面を清掃するメンテナンスがより重要となる。ここでメンテナンスにあたっては,印刷機のオペレータが,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置を印刷機の内部から印刷機の外部に取り出し,紫外線照射装置のライン状の光出射面を清掃することになる。しかしながら,オペレータが清掃毎に印刷機から紫外線照射装置を取り出すため不便で時間的ロスが多い。また,紫外線照射装置のライン状の光出射面にインクの付着がいつ起こるかを予期することは難しく,紫外線照射装置の清掃頻度を多くすると印刷効率が低下し,清掃頻度を少なくすると印刷品質の低下をきたすというトレードオフの関係にある。特に,紫外線照射装置は,外部に紫外線が漏洩しないように印刷機の内部に配置される場合が多いことから,メンテナンスしにくく紫外線照射装置のライン状の光出射面を頻繁に清掃するのは容易ではなかった。
【0011】
本発明は,上述の事由に鑑みて為されたものであり,その目的は,複数個の紫外線LEDを並べて該紫外線LEDからの紫外線を出射するライン状の光出射面へ付着したインクなどを自動的に清掃が可能な紫外線照射装置を提供することにある。」
カ 上記オの記載からは,「印刷対象物とできるだけ近接するように配置される傾向にある。この場合,印刷機が未硬化のインクが付着した印刷対象物を搬送する際に,紫外線照射装置の光出射面に,印刷対象物のインクの一部が付着する場合があり,この場合に,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置は,複数個の紫外線LEDを並べて光出射面をライン状にしているが,メタルハライドランプなどを備えた紫外線照射装置の光出射面と比較して光出射面が小さく,光出射面に付着したインクの影響を受け易い傾向にあることから,光源として紫外線LEDを備えた紫外線照射装置では,ライン状の光出射面にインクが付着すると,単なる光出射面の汚れだけでなく,付着硬化したインクが紫外線を遮光して印刷対象物上へのインクの硬化を十分に行うことができない恐れがあるので,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置は,紫外線照射装置のライン状の光出射面を清掃するメンテナンスがより重要である」という技術事項が記載されているものと認められる。

(3)甲3号証について
本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3号証には,つぎの事項が記載されている。
ア 「【0090】
本発明においては,非吸収性支持体としては,各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ,各種プラスチックフィルムとしては,ポリエチレンテレフタレート(PET),延伸ポリスチレン(OPS),延伸ナイロン(ONy),延伸ポリプロピレン(OPP),ポリ塩化ビニル(PVC),各種ポリオレフィンフィルム,PEフィルム,TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては,ポリカーボネート,アクリル樹脂,ABS,ポリアセタール,PVA,ゴム類などが使用できる。また,金属類や,ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも,特に熱でシュリンク可能な,PETフィルム,OPSフィルム,OPPフィルム,ONyフィルム,PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は,有効となる。これらの基材は,インクの硬化収縮,硬化反応時の発熱などにより,フィルムのカール,変形が生じやすいばかりでなく,インク膜が基材の収縮に追従し難い。」
イ 「【0095】
図2は,本発明で用いることのできるインクジェット記録装置で,シリアルプリント方式で用いる要部の構成の一例を示す正面図である。記録装置1は,ヘッドキャリッジ2,記録ヘッド3,照射手段としてのフラッシュ光源4,プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は,基材20の下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は,紫外線を吸収する機能を有しており,基材20を通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果,高精細な画像を非常に安定に再現できる。」
ウ 「 【0099】
記録ヘッド3は,インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型のインクを,内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により,吐出口から基材20に向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出される活性光線硬化型のインクは色材,前記光重合性組成物(例えば脂環式エポキシ化合物,光酸発生剤,開始剤等を含有する)を含んで組成されており,紫外線の照射を受けることで,カチオン重合反応によって硬化する性質を有する。」
エ 上記アの記載から,「紫外線硬化インクが,紫外線の照射を受けて硬化する反応時に発熱する」ことが読み取れる。
オ 上記イ及びウによれば,「ヘッドキャリッジ,記録ヘッド,照射手段としてのフラッシュ光源,プラテン部等を備えて構成されるインクジェット記録装置であって,記録ヘッドにより吐出される活性光線硬化型のインクは色材,前記光重合性組成物を含んで組成されており,紫外線の照射を受けることで,カチオン重合反応によって硬化する性質を有するものであるインクジェット記録装置 」が記載されていると認められる。

(4)甲4号証について
本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲4号証には,つぎの事項が記載されている。
ア 「 【0021】
図1に示すように,本実施例の紫外線照射装置1は,内部に内部給電電極6を有する長尺な誘電体バリア放電ランプ本体を構成する複数のランプ容器2と,これらの複数のランプ容器2を保持し,外部電極として作用する導電性保持部3と,を有して構成されている。
【0022】
ランプ容器2は,石英ガラスのような光線透過性材料を用いて管状に形成されたもので,内部には従来技術と同様にキセノンのような希ガス,あるいはキセノン又はクリプトンのような希ガスと塩素系の混合ガス等の放電媒体5が封入されてランプ本体を構成している。このランプ容器2の中心軸部分には,軸方向に内部給電電極6が張設されている。この内部給電電極6には,例えば,細径のタングステンをコイル状に巻くことによって形成されたものが使用される。」
イ 「【0030】
この導電性保持部3は,比較的安価に入手可能なSUSやニッケル,熱伝導性のすぐれたアルミニウムを素材として用いられている。特にランプ容器2と接触する凹部3Aの壁面は鏡面仕上げにすることにより,この面に放射される紫外線を効果的に反射してランプ容器2の反対側の紫外線放射面から放出させることができ,紫外線孔10の放射効率を高めることができる。 」
ウ 「【0064】
具体的には,図8に示すように,本実施例の紫外線照射装置1は,異なる材料の2本の金属線を接続して1つの回路を形成して温度を測定する温度測定手段である熱電対22と,この熱電対22により測定された温度を計測する計測器24と,を有している。
【0065】
熱電対22は,導電性保持部3の上面の凹部3Aに対応する位置に設けられた挿通孔3aにそれぞれ装着されるようになっている。この挿通孔3aは,前記ランプ容器2が接触する凹部3Aに連通するように形成されており,前記熱電対22の基端部がランプ容器2の外表面に接触,あるいはランプ容器2の近傍に配設されるようになっている。
【0066】
また,熱電対22の他端側は,前記計測器24に接続されている。
熱電対22は,基端側に図示はしないが2つの接点を有し,これら2つの接点に温度差が生じることで電圧を発生することにより,ランプ容器2の温度を測定し,計測器24に出力する。
【0067】
計測器24は,熱電対22からの測定温度を取り込み,内部にタイマー等の時間計測手段を用いて取り込んだ測定温度に基づいて不点検出のための計測を行う。
【0068】
例えば,計測器24は,紫外線照射装置1のランプ容器2の点灯1分後,測定温度が50度以下の状態になると,不点信号を出力するようになっている。
そして,この不点信号を図示しない表示部,あるいは音声再生部に出力して不点信号に基づく表示あるいは音声を再生するように構成すれば,前記紫外線照射装置1が不点状態であることを使用者に告知することが可能である。」
エ 上記アないしウの記載によれば,甲4号証には,「内部に放電媒体が封入されてランプ本体を構成し石英ガラスのような光線透過性材料を用いて管状に形成されたランプ容器の温度を測定し計測器に出力する熱電対により,熱電対からの測定温度を取り込み,内部にタイマー等の時間計測手段を用いて取り込んだ測定温度に基づいて不点検出のための計測を行う計測器」が記載されている。

(5)甲5号証について
本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲5号証には,つぎの事項が記載されている。
ア 「【0012】
図1は,紫外線照射装置の実施の形態を説明するための構成図を示している。この図1にはペルチェ素子1と,外部電極2と,誘電体バリア放電ランプ3と,誘電体バリア放電ランプ3を構成する石英ガラス管4と内部電極5およびエキシマ生成ガス6と,が示されている。」
イ 「【0021】
図3は,図2に示した電源12とペルチェ素子1との接続における変形例を説明するための構成図を示している。この構成においては,電源12とペルチェ素子1との間に制御部10を挿入している。制御部10には温度検知するためのサーミスタ11が接続されており,このサーミスタ11は誘電体バリア放電ランプ3の長尺方向の温度分布を検知するために複数で配置されている。サーミスタ11の配置位置としては外部電極2の内部で誘電体バリア放電ランプ3の温度変化を良好に検知し得る位置を選択することが好ましい。
【0022】
サーミスタ11で検知された温度は制御部10へ温度の検知結果として入力され,この検知結果に基づいて制御部10ではペルチェ素子1へ供給する電力(電流)を制御する。具体的な制御としては,制御部10へ入力される,あらかじめ設定された温度となるように検知結果と設定温度との比較を制御部10の内部で繰返す。そしてこの繰返し制御により,両者の値が等しいかあるいは許容範囲内の差に収まった場合はその電力供給量を保持する。このようにして,複数のペルチェ素子1をそれぞれ制御することにより,誘電体バリア放電ランプ3のランプ軸方向の温度分布を設定した温度に均等に冷却し,維持することができる。」
ウ 上記ア及びイによれば,甲5号証には,「ペルチェ素子と,外部電極と石英ガラス管と内部電極及びエキシマ生成ガスにより構成される誘電体バリア放電ランプよりなる紫外線照射装置であって,電源とペルチェ素子との間に挿入された制御部には,誘電体バリア放電ランプの長尺方向の温度分布を検知するために,外部電極の内部で誘電体バリア放電ランプの温度変化を良好に検知し得る位置に複数配置されるサーミスタが接続されており,設定された温度となるように検知結果と設定温度との比較を制御部の内部で繰返し,この繰返し制御により,両者の値が等しいかあるいは許容範囲内の差に収まった場合はその電力供給量を保持するようにして,複数のペルチェ素子をそれぞれ制御することにより,誘電体バリア放電ランプのランプ軸方向の温度分布を設定した温度に均等に冷却し維持するように構成された紫外線照射装置」が記載されているものと認める。

(6)甲6号証
本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲6号証には,「【0024】 この紫外線露光機11も,図1に示した第1の実施形態の紫外線露光機1と同様に,紫外線の強度,明るさ,及び,温度を測定するセンサー4a,4bが,発光部2a,2bの近傍にそれぞれ配置されており,これらのセンサー4a,4bによる計測値がケーブル10a,10bを介して制御装置5に常時入力されるとともに,UV-LEDの出力条件の補正値が制御装置5によって演算,出力されるようになっており,処理対象物に対する紫外線の照射強度,明るさ,又は,温度を随意に制御できる構成となっている。」と記載されている。

2 特許法第29条第2項違反に係る異議申立理由についての当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 甲1号証記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如について
(ア)対比
a 本件特許発明1と甲1の1発明とを対比する。
(a)甲1の1発明の「基板上に密集したアレイ上に取り付けられた複数の固体発光器,例えばLEDチップを含」む「モジュール」は,本件特許発明1の「複数のLEDのアセンブリ」に相当する。
(b)甲1の1発明の「複数の固体発光器,例えばLEDチップを含む「モジュール」が「物質変換処理を行うための高出力濃度の出力を生成する」ことと本件特許発明1の「複数のLEDはUV光を放射するものであり」「UVインキ又は塗料を硬化する」こととは,複数のLEDが物質変換処理を行うための出力を生成するものである点で共通するものといえる。
(c)甲1の1発明の「少なくとも1つの温度センサを,回路パターンまたはモジュールの他の要素に既知の任意の方法で接続し,基板またはモジュールの他の要素の温度をモニタし」,「モジュールの過熱を防ぐことができる」ことと,本件特許発明1の「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられている」こととは,「装置の温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている」点で共通するものといえる。
(d)甲1の1発明の「モジュール」と本件特許発明1の「UVインキ又は塗料を硬化する装置」とは,共に「物質を変換処理する装置」である点で共通するものといえる。
(e)してみると,本件特許発明1と甲1の1発明とは,つぎの点で一致し,つぎの相違点で相違する。
<一致点>
「複数のLEDのアセンブリを備え,
前記複数のLEDは,複数のLEDが物質変換処理を行うための出力を生成するものであり,
物質を変換処理する装置であって,
装置の温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられていることを特徴とする物質を変換処理する装置」

<相違点1-1>
本件特許発明1の「複数のLED」は「UV光を放射するものであり」,「ハウジング内に配置」されており,「ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する」ものであるのに対して,甲1の1発明のモジュールのLEDがUV光を放射することは特定されておらず,LEDがハウジングに収納されるか否かも特定されない点
<相違点2-1>
本件特許発明1が「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられている」のに対して,甲1の1発明は「基板またはモジュールの他の要素の温度をモニタ」する「少なくとも1つの温度センサ」を備えるものである点
<相違点3-1>
本件特許発明1が「UVインキ又は塗料を硬化する装置」であるのに対して,甲1の1発明の「モジュール」は物質を変換処理する装置であるといえるものの,UVインキ又は塗料を硬化する装置であると特定されない点

b 本件特許発明1と甲1の2発明とを対比する。
(a)甲1の2発明の「密封された空冷LEDチップアレイによって,加工物体,例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化することができる固体光装置」であって,「硬化処理を実行するために,装置は,約300nmから約400nmの間の波長の光を,約30から約200mW/cm^(2)の出力濃度で提供することができ」,「LEDチップのアレイが基板上に配置され,加工物体よりわずかに大きい光パターンを生成するものであり,基板は,モジュールハウジング内に封入または取り付けられて」いることは,本件特許発明1の「複数のLEDのアセンブリを備え,前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されて」いる「装置」に相当する。
(b)甲1の2発明の「ガラスまたはプラスチック製のウィンドウが,モジュールハウジングに形成されることにより,LEDチップによって生成された光が,このウィンドウを通過して加工物体まで届くようにされて」いることは,ここでのLEDチップによって生成された光が「約300nmから約400nmの間の波長の光」すなわち「UV光」であって,「ガラスまたはプラスチック製のウィンドウ」がUV光線透過性カバーといえることから,本件特許発明1の「前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する」ことに相当する。
(c)甲1の2発明は,「約300nmから約400nmの波長の光」,すなわちUV光を用いて「例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化する」ものであるから,甲1の2発明の「加工物体,例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化することができる固体光装置」と本件特許発明1の「UVインキ又は塗料を硬化する装置」とは,「媒体表面に塗布された紫外線硬化性の加工物体を硬化する装置」である点で共通するものといえる。
(d)甲1の2発明の「温度センサがさらに基板に設けられ,端子及び絶縁体を介して温度センサ読取り回路に接続され,温度センサ読取り回路は電源に接続され,LEDチップが過熱するのを防ぐようにされている」ことと,本件特許発明1の「透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられていること」とは,共に「温度センサが設けられている」点で共通する。
(e)してみると,本件特許発明1と甲1の2発明とは,つぎの点で一致し,つぎの相違点で相違する。
<一致点>
「複数のLEDのアセンブリを備え,
前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されており,
前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する,
媒体表面に塗布された紫外線硬化性の加工物体を硬化する装置であって,
温度センサが設けられている
媒体表面に塗布された紫外線硬化性の加工物体を硬化する装置」
<相違点2-2>
本件特許発明1が「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている」のに対して,甲1の2発明の「温度センサ」は「基板に設けられ」,「LEDチップが過熱するのを防ぐようにされている」ものである点
<相違点3-2>
本件特許発明1が「UVインキ又は塗料を硬化する装置」であるのに対して,甲1の2発明は「加工物体,例えばCD/DVD記憶媒体のコーティングを硬化することができる固体光装置」である点

c 本件特許発明1と甲1の3発明とを対比する。
(a)甲1の3発明の「光バー」は,「好ましくは閉じたアセンブリであり,剛性カバーが構造的な強度を提供しウィンドウを保持する」構造を備えていることから,本件特許発明1の「ハウジング」に相当するものであり,甲1の3発明の「複数の固体光モジュール」の「基板上に実装または配置されたLEDチップの密集したアレイを含む」「各モジュール」は,本件特許発明1の「複数のLEDアセンブリ」に相当するものである。
そして,甲1の3発明の「光バー」は,「インクの硬化の用途のため」のものであって,「低粘度紫外線硬化インクは,約350nmから約400nmの波長を用いて」「反応する」ものであるから,「光バー」の「固体光モジュール」の「LEDチップ」はUV光を放射するものであるし,「光バー」は,UVインクを硬化するものであるといえる。
また,上記の点を踏まえると,甲1の3発明の「複数の固体光モジュールを光バーに組み込んだものであって,光バーは,これに実装または配置された1つ以上の固体光モジュールを含み,各モジュールは,基板上に実装または配置されたLEDチップの密集したアレイを含むものであり,光バーは,好ましくは閉じたアセンブリであり,剛性カバーが構造的な強度を提供しウィンドウを保持」していることは,本件特許発明1の「複数のLEDのアセンブリを備え,前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されて」いることに相当する。
(b)甲1の3発明の「モジュールは,LEDチップによって生成される光出力がウィンドウを通過して加工物体に向けられるように,基板は,光バーハウジングに取り付けられ」ていることは,本件特許発明1の「前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する」ことに相当する。
(c)本件特許発明1の「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられている」ことと,甲1の3発明の「各基板は温度センサを含み,電源は,第2組のケーブルによって各基板の温度を検出する」こととは,「温度を把握するための少なくとも一つのセンサが設けられている」点で共通する。
(d)してみると,本件特許発明1と甲1の3発明とは,つぎの一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
複数のLEDのアセンブリを備え,
前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されており,
前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する,
UVインキ又は塗料を硬化する装置であって,
温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられていることを特徴とする,
UVインキ又は塗料を硬化する装置」
<相違点2-3>
本件特許発明1が「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられている」のに対して,甲1の3発明は「各基板は温度センサを含み」,「各基板の温度を検出する」ものである点

(イ)相違点についての検討
a 上記のとおり,本件特許発明1と甲1の1発明,甲1の2発明又は甲1の3発明との対比によれば,各相違点2-1,2-2,2-3の点,すなわち,本件特許発明1が「透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている」のに対して,甲1の1ないし甲1の3発明の「温度センサ」はいずれも本件特許発明1の「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握するものに相当するものではない点で相違するものといえる。
b 甲1の1ないし甲1の3発明の「温度センサ」は,LEDチップやモジュール自体の過熱を防止することを目的とするものであって,甲1の1発明の温度センサーは,「基板及びモジュールの他の要素の温度をモニタする」とは記載されているものの,甲1の1発明の「モジュール」は「透過性カバー」に相当する構成を備えるものではないし,甲1の2発明及び甲1の3発明の「温度センサー」は,いずれも「基板」の温度を検出するものであって「ウィンドウ」自体の温度の把握を目的とするものではない。
c 上記1(2)で検討したように,甲2号証には,「印刷機が未硬化のインクが付着した印刷対象物を搬送する際に,紫外線照射装置の光出射面に,印刷対象物のインクの一部が付着する場合があり,光出射面にインクが付着すると付着硬化したインクが紫外線を遮光して印刷対象物上へのインクの硬化を十分に行うことができない恐れがあることから,紫外線LEDを備えた紫外線照射装置は,紫外線照射装置のライン状の光出射面を清掃するメンテナンスがより重要である」ことが記載されているものの,甲2号証に記載の事項から,「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握する必要性を導き出すことはできない。
d 上記1(3)で検討したように,甲3号証には,「紫外線硬化インクが,紫外線の照射を受けて硬化する反応時に発熱する」ことが読み取れるものの,当該記載によっても,「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握する必要性を導き出すことはできない。
e 上記1(4)及び(5)で検討したように,甲4号証及び甲5号証には,放電型の紫外線ランプのランプ容器の温度を測定するセンサを備えるものが記載されているものの,当該技術事項を甲1の1発明ないし甲1の3発明に適用するとしても,甲4号証及び甲5号証に記載の技術はいずれも,紫外線光源自体の温度を測定し,管理するものであるから,それをもって,甲1の2発明や甲1の3発明の「ウィンドウ」,すなわち,本件特許発明1の「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握するようにすることが容易に想到し得るものともいえない。
f 甲6号証には,本件特許発明1の「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握することについて記載も示唆もされていない。
g 上記aないしfによれば,甲1の1ないし甲1の3発明について,上記各相違点2-1,2-2及び2-3に係る本件発明1の発明特定事項となすことは,いずれも,当業者が容易に想到し得るものではない。
h してみると,本件特許発明1と甲1の1発明ないし甲1の3発明とのその余の相違点について検討するまでもなく,本件特許発明1は,甲1号証に記載の発明及び甲2ないし6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 甲2号証記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると
a 甲2発明は,「インクやコーティング剤が塗布された印刷対象物に紫外線を照射して印刷対象物上のインクやコーティング剤を硬化させる紫外線照射装置」であって「紫外線透過部材の表面が,紫外線LEDからの紫外線を出射させるライン状の光出射面となることにより,回転する印刷対象物に略均一に紫外線が照射できるように,光源として複数個の紫外線LEDを印刷対象物の搬送方向と略垂直な圧胴の幅に沿って並べたライン状の光出射面を備え,表面処理部の圧胴側に,紫外線照射装置の紫外線LEDからの紫外線を,印刷部にて各インクおよび表面処理部にてニスを付着させた印刷対象物に照射することにより,各インクやニスを硬化させ」るものであるから,本件特許発明1の「UVインキ又は塗料を硬化する装置」に相当する。
b 甲2発明の「印刷対象物が搬送される圧胴を覆うように,印刷対象物の搬送方向と略垂直方向に長尺で,内部が空洞な略直方体の金属(たとえば,ステンレス)製のカバー部材を備え,カバー部材の印刷対象物と対向する一端面側に複数個の紫外線LEDを長尺の長手方向に沿って並べて配置させ」ることは,本件特許発明1の「複数のLEDのアセンブリを備え,前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されて」いることに相当する。
c 甲2発明の「前記一端面側には,各紫外線LEDを保護し,各紫外線LEDからの紫外線を透過する石英ガラスなどからなる紫外線透過部材が設けられて」いることは,本件特許発明1の「前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する」ことに相当する。
d してみると,本件特許発明1と甲2発明とはつぎの点で一致し,つぎの相違点で相違する。
<一致点>
「複数のLEDのアセンブリを備え,
前記複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されており,
前記ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する,
UVインキ又は塗料を硬化する装置」
<相違点4>
本件特許発明1が「前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている」のに対して,甲2発明は「温度センサ」を備えるものではない点

(イ)相違点4についての検討
甲2号証には,温度センサについては記載されておらず,「紫外線LEDからの紫外線を透過する石英ガラスなどからなる紫外線透過部材」の温度を把握する必要性を示唆する記載はない。
そして,甲4号証及び甲5号証には,放電型の紫外線ランプのランプ容器の温度を測定するセンサを備えるものが記載されているものの,当該技術事項を甲2発明に適用するとしても,甲4号証及び甲5号証に記載の技術はいずれも,紫外線光源自体の温度を測定し,管理するものであるから,それをもって,甲2発明の「紫外線LED2からの紫外線を透過する石英ガラスなどからなる紫外線透過部材」,すなわち,本件特許発明1の「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」に相当するものの温度を把握するようにすることが容易に想到し得るものともいえない。
また,その他の甲1号証,甲3号証及び甲6号証に記載の事項から「ハウジングの出射窓」が有する「透過性のカバー」の温度を把握する必要性を導き出すことができないことは,上述のとおりである。
上記によれば,上記相違点4に係る本件特許発明1に係る構成は,当業者が容易に想到し得るものではない。
してみると,本件特許発明1は,甲2号証記載の発明及び甲1及び甲3ないし6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)本件特許発明3,4及び6ないし8について
請求項3,4及び6ないし8は,いずれも請求項1を引用するものであるから,本件特許発明3,4及び6ないし8と,甲1の1ないし甲1の3発明とは,少なくとも相違点2-1,2-2又は2-3の点で相違し,本件特許発明3,4及び6ないし8と甲2発明とは,少なくとも相違点4の点で相違するものである。
そして,これらの相違点に係る構成が容易に想到し得るものといえないことは,上記(1)で検討したとおりである。
以上のことからすれば,本件特許発明3,4及び6ないし8は,甲1号証に記載の発明及び甲2ないし6号証に記載の事項に基づいて,又は,甲2号証記載の発明及び甲1及び甲3ないし6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)本件特許発明9及び本件訂正発明10について
本件特許発明9及び本件訂正発明10は,いずれも「LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法」に係る発明であって,「前記カバーの温度を測定する」手順が特定されるものであるところ,上記(1)で検討したように,甲1ないし6号証のいずれの記載事項からも,「透過性のカバー」の温度を測定することを容易に想到し得るものとすることはできない以上,本件特許発明9及び本件訂正発明10は,甲1号証に記載の発明及び甲2ないし6号証に記載の事項に基づいて,又は,甲2号証記載の発明及び甲1及び甲3ないし6号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないことは明らかである。

(4)小括
以上のとおりであるから,特許異議申立人の主張する理由によっては,本件特許請求の範囲の請求項1,3及び4並びに6ないし10に係る特許が,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。

3 特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号違反に係る異議申立理由についての当審の判断
(1)本件特許発明1に対して
ア 特許異議申立人は,本件特許明細書の発明を実施するための形態(段落0022-0030)の記載には,本件特許発明1の「透過性カバーの温度を把握するための少なくとも1つのセンサ」に包含されるところの,非接触式の温度センサについては「温度センサ31?33は,複数のLED列21の間に配置されていて,非接触式にハウジング18内の温度を測定する」としか記載されておらず,測定対象が「ハウジング18内の温度」となっていることから,「前記透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つの非接触式のセンサが設けられている」事項について記載も示唆もされていないことを理由として,本件特許発明1は,本件特許明細書の発明の詳細な説明においてサポートされておらず,また,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,本件特許発明1について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。
イ 当審の判断
(ア)本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明の課題に関して以下の記載がある。(下線は,強調のため,当審で付加した。以下同じ。)
「【0005】
実地において,透過性のカバーが,例えば塵埃,蒸気又はインキミストにより汚される問題が生じる。このような汚れは,UV光の吸収を招き,ひいては透過性のカバーの加熱のばらつきを招く。これにより,一方では光線強度の弱化が生じ,他方では加熱のばらつきによるストレスクラックに基づく透過性のカバーの破損が生じる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は,所定の汚れ度合いに達した汚れが認識可能である方法及び装置を提供することである。 」
(イ)そして,当該課題を解決するための手段として,本件特許明細書の発明の詳細な説明に以下の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するための本発明の装置によれば,複数のLEDのアセンブリを備え,複数のLEDは,UV光を放射するものであり,かつハウジング内に配置されており,ハウジングの出射窓は,UV光線透過性のカバーを有する,UVインキ又は塗料を硬化する装置であって,透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けられている。
【0009】
好適には,透過性のカバーの温度差を把握するための,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサが設けられている。
【0010】
好適には,温度センサは,目標値・実際値比較を実行するための評価ユニットに接続されている。
【0011】
好適には,温度センサは,透過性のカバーに接触して配置されている。
【0012】
好適には,温度センサは,非接触式に測定するように,透過性のカバーから間隔を置いて配置されている。」
「【0016】
この課題を解決するための本発明の方法によれば,LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,カバーの温度を,カバーに接触することにより又は非接触式に測定し,温度測定値を評価ユニットに供給し,そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し,所定の値からのずれが生じると,汚れを表示する信号を出力する。」
(ウ)さらに,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には,本件発明の硬化に関して以下の記載がある。
「【発明の効果】
【0018】
本発明の格別な利点は,LEDの照射範囲における透過性のカバーの加熱が検知可能であることにある。なぜならば,UV光が「低温」であるにもかかわらず,透過性のカバー上の汚れが,UV光の吸収を招き,ひいては温度上昇,特にカバーの様々な位置の間で温度差を招くからである。温度の検知又は把握により,一方では汚れの度合いを特定することができ,他方では温度差に基づくカバー,例えばガラス板の破損を回避することができる。
【0019】
温度差を特定するために,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサが,カバーの温度を把握し,その情報を評価ユニットに伝送する。評価ユニットは,目標値-実際値比較に基づいて,カバーをクリーニングするための相応の信号を出力し,第2のステップで,LEDをオフするための信号を出力する。
【0020】
温度センサは,カバーに直に配置するか,又は非接触式に測定するためにLEDとカバーとの間の空間内でカバーから間隔を置いて配置してよい。 」
(エ)上記(ア)ないし(ウ)の記載によれば,本件発明は,「透過性のカバー」の「汚れは,UV光の吸収を招き,ひいては透過性のカバーの加熱のばらつきを招く」ことから,「所定の汚れ度合いに達した汚れが認識可能である方法及び装置を提供する」ことを目的として,透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つのセンサが設けることにより,「LEDの照射範囲における透過性のカバーの加熱」を「検知可能」とし,「温度の検知又は把握により,一方では汚れの度合いを特定することができ,他方では温度差に基づくカバー,例えばガラス板の破損を回避することができる」ものであると認められる。
(オ)上記(エ)に照らせば,「透過性のカバー」の温度を検出することにより,汚れの度合いを特定でき,もって,本件特許発明の課題を解決し得るものと認識できるものというべきである。
(カ)特許異議申立人は,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,「非接触で透過性のカバーの温度を把握するためのセンサーが設けられていることについては記載も示唆もされていないと主張しているが,上記(イ)のとおり「好適には,温度センサは,非接触式に測定するように,透過性のカバーから間隔を置いて配置されている」ことや「LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,カバーの温度を,カバーに接触することにより又は非接触式に測定」する点が明示的に記載されている。
そして,本件特許に係る出願の出願日において,非接触で温度を測定するセンサは,例を挙げるまでもなく周知・慣用手段であることは技術常識であって,当該技術常識に鑑みれば,本件特許発明において,非接触に透過性のカバーの温度を検出できるセンサーを備えるように構成することは,当業者が実施することができる程度の技術事項であるというべきである。
(キ)以上のとおりであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者は,本件特許発明1が課題を解決し得る範囲のものと認識するものといえるから,本件特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであり,また,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明1が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものといえるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

(2)本件特許発明5及び9並びに本件訂正発明10に対して
ア 特許異議申立人は,本件特許発明5及び9並びに本件訂正発明10に関しても,本件特許発明1に対してと同様の理由で,すなわち,本件特許発明5の「温度センサは,非接触式に透過性のカバーの温度を測定するように,前記透過性カバーから間隔をおいて配置されている」点並びに本件特許発明9及び本件訂正発明10の「相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,前記カバーの温度を,前記カバーに接触することにより又は非接触式に測定し」に関して,本件特許明細書の発明を実施するための形態の記載(段落0022-0030)には,非接触式の温度センサについては「温度センサ31?33は,複数のLED列21の間に配置されていて,非接触式にハウジング18内の温度を測定する」としか記載されておらず,「前記透過性のカバーの温度を把握するための少なくとも1つの非接触式のセンサが設けられている」事項について記載も示唆もされていないことを理由として,本件特許発明5及び本件特許発明9並びに本件訂正発明10は,本件特許明細書の発明の詳細な説明においてサポートされておらず,また,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,本件特許発明5及び本件特許発明9並びに本件訂正発明10について,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。
イ 当審の判断
上記(1)イで判断したとおり,本件特許明細書の記載に基づいて,当業者は,「透過性のカバー」の温度を検出することにより,汚れの度合いを特定でき,もって,本件特許発明の課題を解決し得るものと認識できるものというべきであり,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,「好適には,温度センサは,非接触式に測定するように,透過性のカバーから間隔を置いて配置されている」ことや「LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって,相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサが,カバーの温度を,カバーに接触することにより又は非接触式に測定」する点が明示的に記載されている。
そして,本件特許に係る出願の出願日において,非接触で温度を測定するセンサは,例を挙げるまでもなく周知・慣用手段であることは技術常識であって,当該技術常識に鑑みれば,本件特許発明において,非接触に透過性のカバーの温度を検出できるセンサーを備えるように構成することは,当業者が実施できる程度の技術事項であるというべきである。
してみると,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者は,本件特許発明5及び9並びに本件訂正発明10が課題を解決し得る範囲のものと認識するものといえるから,本件特許請求の範囲の請求項5並びに9及び10の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであり,また,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明5及び9並び人本件訂正発明10が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものといえるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
以上のとおりであるから,特許異議申立人が主張する理由によっては,本件特許請求の範囲の請求項1及び5並びに9及び10に係る特許が,特許法第36条第4項第1号又は第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものに該当するということはできない。

第6 むすび
以上検討したとおり,当審が通知した取消理由通知の理由,並びに,本件特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1及び3ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1及び3ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,上記結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDのアセンブリを備え、
前記複数のLEDは、UV光を放射するものであり、かつハウジング内に配置されており、
前記ハウジングの出射窓は、UV光線透過性のカバーを有する、
UVインキ又は塗料を硬化する装置であって、
前記透過性のカバー(24)の温度を把握するための少なくとも1つのセンサ(26,27;31,32,33)が設けられていることを特徴とする、UVインキ又は塗料を硬化する装置。
【請求項2】
前記透過性のカバー(24)の温度差を把握するための、相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つの温度センサ(26,27;31,32,33)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記温度センサ(26,27;31,32,33)は、目標値・実際値比較を実行するための評価ユニット(28)に接続されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記温度センサ(26,27)は、前記透過性のカバー(24)に接触して配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記温度センサ(31,32,33)は、非接触式に測定するように、前記透過性のカバー(24)から間隔を置いて配置されている、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記複数のLED(21)と前記透過性のカバー(24)との間の光線路に、UV光線を集束するための第1の光学系(22)及び第2の光学系(23)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備える枚葉輪転印刷機。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載のLED・UV乾燥機(14)を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項9】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が、前記カバー(24)の温度を、前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し、
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し、
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、
所定の値からのずれが生じると、汚れを表示する信号を出力する、
ことを特徴とする、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。
【請求項10】
LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法であって、
相互に間隔を置いて配置された少なくとも2つのセンサ(21)が、前記カバー(24)の温度を、前記カバー(24)に接触することにより又は非接触式に測定し、
温度測定値を評価ユニット(28)に供給し、
そのあとで所定の値との目標値・実際値比較を実行し、
所定の値からの所定のずれが生じると、LED・UV乾燥機のオフを行う、
ことを特徴とする、LED・UV乾燥機の透過性のカバーの汚れを認識する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-13 
出願番号 特願2013-263713(P2013-263713)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (B41F)
P 1 652・ 121- YAA (B41F)
P 1 652・ 536- YAA (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 外川 敬之  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 尾崎 淳史
藤本 義仁
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6168983号(P6168983)
権利者 ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 LED・UV乾燥機の温度を監視する装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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